(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】フルフラールの調製方法
(51)【国際特許分類】
C07D 307/50 20060101AFI20220707BHJP
C13B 10/00 20110101ALN20220707BHJP
【FI】
C07D307/50
C13B10/00
(21)【出願番号】P 2021503063
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 CN2019108189
(87)【国際公開番号】W WO2020192053
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】201910237443.5
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521020653
【氏名又は名称】広州楹鼎生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】劉運思
(72)【発明者】
【氏名】張睿哲
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-505105(JP,A)
【文献】特表2016-534707(JP,A)
【文献】米国特許第2739086(US,A)
【文献】中国特許出願公開第104557810(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107445926(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 307/50
C13B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)植物原料と-SO
3H官能基を含む酸とを混合して前処理を行うステップと、
(2)ステップ(1)で前処理して得た材料と有機酸とを混合し、蒸煮後に固液分離し、ヘミセルロース糖液を取得するステップと、
(3)反応釜の上部からステップ(2)で得たヘミセルロース糖液を導入するとともに、反応釜の下部から酢酸蒸気を通入し、糖液と酢酸蒸気とを逆流接触して反応させてフルフラール蒸気を生成し、
フルフラールの生成量が完全反応の40%~60%に達すると、反応釜の上部から
フルフラール蒸気を導出するとともに、ヘミセルロース糖液および酢酸蒸気を補充して反応を続け、導出し
たフルフラール蒸気を冷却
した後にフルフラールを含む溶液を取得するステップと、
を含む、フルフラールの調製方法。
【請求項2】
ステップ(1)に記載の-SO
3H官能基を含む酸はメタンスルホン酸および/またはエチルスルホン酸であ
る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(1)に記載の前処理の時間は0.5~1hである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(2)に記載の有機酸はギ酸、酢酸、または酪酸のうちの少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(2)に記載の蒸煮の温度は90~150℃であ
る、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(2)に記載の蒸煮の時間は0.1~1.5hである、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(2)に記載の前処理で得た材料と有機酸との固液質量比は1:(5~25)であ
る、請求項1~
6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(2)に記載の有機酸の質量濃度は50%~95%である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(3)に記載の反応釜は、複数層の棚段を含む反応釜である、請求項1~
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(3)に記載のヘミセルロース糖液は、反応釜に入る際の温度が160~200℃であ
る、請求項1~
9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(3)に記載の酢酸蒸気の温度は230~280℃である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(3)に記載の酢酸蒸気における酢酸の質量濃度は10%~20%である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(3)で得たフルフラールを含む溶液を精留した後、得た留出液に酢酸が含まれ、それを加熱して酢酸蒸気を形成してフルフラールの調製フローに使用する、請求項1~
12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
(1)植物原料と-SO
3H官能基を含む酸とを混合して前処理を0.5~1h行うステップであって、前記-SO
3H官能基を含む酸はメタンスルホン酸および/またはエチルスルホン酸であるステップと、
(2)1:(5~25)の固液質量比に従ってステップ(1)で前処理して得た材料と質量濃度が50%~95%の有機酸とを混合し、90~150℃で0.1~1.5h蒸煮した後に固液分離し、ヘミセルロース糖液を取得するステップであって、前記有機酸は、ギ酸、酢酸、または酪酸のうちの少なくとも1種であるステップと、
(3)ステップ(2)で得たヘミセルロース糖液を160~200℃に加熱した後、それを複数層の棚段を含む反応釜の上部から反応釜に導入するとともに、反応釜の下部から質量濃度が10%~20%で、温度が230~280℃の酢酸蒸気を通入し、糖液と酢酸蒸気とを逆流接触して反応させてフルフラール蒸気を生成し、フルフラールの生成量が完全反応の40%~60%に達すると、フルフラール蒸気を導出するとともに、ヘミセルロース糖液および酢酸蒸気を補充して反応を続け、導出したフルフラール蒸気を冷却した後にフルフラールを含む溶液を取得し、それを精留した後、得た留出液に酢酸が含まれ、それを加熱して酢酸蒸気を形成してフルフラールの調製フローに使用するステップと、
を含む、請求項1~
13のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルフラール調製の分野に関し、例えば、フルフラールの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルフラールの生産は、主に植物原料中のペントサンを用い、植物繊維には、主にセルロース、ヘミセルロース、リグニンが含まれている。まず、ヘミセルロースに含まれるペントサンを加水分解してペントースを生成し、更に、ペントースを脱水してフルフラールを生産する。
【0003】
現在、フルフラールの工業生産において、普遍的には強酸を触媒として用い、加水分解の過程において、高圧水蒸気を用いて加水分解によるフルフラールおよび他の揮発性副生成物を加水分解釜から取り出し、アルデヒドガスを形成する。アルデヒドガスには、一般的に4%~6%のフルフラール、1%~2%の酢酸、更に少量の低沸点物質が含まれている。アルデヒドガスは凝縮された後に初留塔に入り、塔底でフルフラールと水との共沸物を得て、初留塔頂から酢酸および少量のフルフラールを含む工業廃水を排出する。
【0004】
CN102329287Aは、キシロース母液を用いてフルフラールを調製する新たなプロセスおよび専用設備を開示し、調製過程において、まず、重量部に従ってキシロース母液および硫酸溶液を秤量し、混合液をフルフラール転化蒸留一体塔が属する反応釜に入れ、直接蒸気加熱分配器により反応釜に蒸気を通入し、キシロースは硫酸の作用で脱水してフルフラールに転化し、反応が終了した後、反応釜に蒸気を通入することを停止し、ジャケット内に蒸気を送り反応釜を加熱し、後続の蒸留、分離の操作を行う。
【0005】
CN103193737Aは、植物材料を原料としてフルフラールを調製してリグニンとセルロース系バイオエタノール(Cellulosic bioethanol)とを共生産する方法を開示し、ヘミセルロースを加水分解してペントースを調製し、ペントース液を予熱し、噴射昇温、脱水環化、アルデヒドガスのフラッシュ蒸留と放圧、蒸留、および精留分離等のステップを順に含み、主留分のフルフラールを得る。該方法は、硫酸、酢酸溶液、硝酸溶液、塩酸、固体超強酸の水溶液等の酸液を用いて植物材料のヘミセルロースに含まれるペントサンをペントースに加水分解する。
【0006】
CN105503790Aは、トウモロコシの穂軸やトウモロコシの藁を原料としてフルフラールを調製する方法を開示し、トウモロコシの藁およびトウモロコシの穂軸を前処理し、希硫酸溶液で藁およびトウモロコシの穂軸内のヘミセルロースを分離抽出し、最後に、高温高圧によりフルフラールに転化する。
【0007】
CN102659723Aは、高粗繊維植物の農業副産物を用いてフルフラールを調製する方法を開示し、前処理後の原料を加水分解タンクで加水分解し、加水分解過程において、硫酸とリン酸とを混合した酸性触媒を使用することと、加水分解タンクに高温蒸気を導入し、加水分解タンクを加熱して加水分解の生成物であるフルフラールをガスストリッピングすることと、ガスストリッピングしたフルフラールをフルフラール相分離器に入れ、粗フルフラールおよびフルフラール残渣を得ることとを含む。該方法は、硫酸とリン酸とを組み合わせた酸性触媒を用いて原料を加水分解するとともに、超音波処理で補助し、フルフラールの生産性を向上させる。
【0008】
上記フルフラールを調製するフローにおいて、いずれも無機強酸を触媒として使用するが、該タイプの触媒は酸性が強く、得られた廃液を効果的に処理しにくく、環境に大きなストレスを与える。一方、有機酸を触媒として用いてフルフラールを調製する場合、ペントースの転化率が高くないという問題があり、原材料中の有価物の浪費を招き、生産コストを増加する。また、ヘミセルロース糖液からフルフラールを調製する反応バランスが限られ、従来の糖液からフルフラールを調製するフローにおいて、フルフラール蒸気の放出時間はいずれも反応が終了した後であり、フルフラールの収率が低く、原料の多くが反応しておらず、原料の利用率が高くない。そのため、関連する植物原料からフルフラールを調製するプロセスフローを改良する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以下は、本明細書で詳細に説明する主題の概要である。本概要は、特許請求の範囲を制限するものではない。
【0010】
本発明の目的は、ヘミセルロース内のペントサンの加水分解率を大幅に向上させるとともに、フルフラールの収率を向上させるフルフラールの調製方法を提供することを含む。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は以下の技術案を講じる。
【0012】
本発明は、
(1)植物原料と-SO3H官能基を含む酸とを混合して前処理を行うステップと、
(2)ステップ(1)で前処理して得た材料と有機酸とを混合し、蒸煮後に固液分離し、ヘミセルロース糖液を取得するステップと、
(3)反応釜の上部からステップ(2)で得たヘミセルロース糖液を導入するとともに、反応釜の下部から酢酸蒸気を通入し、糖液と酢酸蒸気とを逆流接触して反応させてフルフラール蒸気を生成し、反応が終了した後、反応釜の上部からフルフラール蒸気を導出し、冷却後にフルフラールを含む溶液を取得するステップと、
を含むフルフラールの調製方法を提供する。
【0013】
本発明は、ステップ(1)に記載の前処理の前に、まず、植物原料を粉砕し、その後、粉砕した原料と-SO3H官能基を含む酸とを混合して前処理を行う。
【0014】
本発明によれば、ステップ(1)に記載の-SO3H官能基を含む酸はメタンスルホン酸および/またはエチルスルホン酸である。
【0015】
本発明によれば、ステップ(1)に記載の前処理は常温で行われる。
【0016】
本発明によれば、ステップ(1)に記載の前処理の時間は0.5~1hであり、例えば、0.5h、0.6h、0.7h、0.8h、0.9h、または1h、および上記数値間の具体的な点の値であってもよく、紙面の都合と簡明のために、本発明では網羅的に列挙しない。
【0017】
本発明によれば、ステップ(2)に記載の有機酸はギ酸、酢酸、または酪酸のうちの少なくとも1種であり、例えば、ギ酸、酢酸、または酪酸のうちのいずれか1種であってもよく、典型的であるが非限定的な組み合わせは、ギ酸および酢酸、ギ酸および酪酸、酢酸および酪酸、ギ酸、酢酸および酪酸である。
【0018】
本発明によれば、ステップ(2)に記載の蒸煮の温度は90~150℃であり、例えば、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃、または150℃、および上記数値間の具体的な点の値であってもよく、紙面の都合と簡明のために、本発明では網羅的に列挙しない。
【0019】
本発明によれば、ステップ(2)に記載の蒸煮の時間は0.1~1.5hであり、例えば、0.1h、0.3h、0.5h、0.8h、1h、1.3h、または1.5h、および上記数値間の具体的な点の値であってもよく、紙面の都合と簡明のために、本発明では網羅的に列挙しない。
【0020】
本発明によれば、ステップ(2)に記載の前処理で得た材料と有機酸との固液質量比は1:(5~25)であり、例えば、1:5、1:8、1:10、1:13、1:15、1:18、1:20、1:23、または1:25、および上記数値間の具体的な点の値であってもよく、紙面の都合と簡明のために、本発明では網羅的に列挙しない。
【0021】
本発明によれば、ステップ(2)に記載の有機酸の質量濃度は50%~95%であり、例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%、および上記数値間の具体的な点の値であってもよく、紙面の都合と簡明のために、本発明では網羅的に列挙しない。
【0022】
本発明によれば、ステップ(3)に記載の反応釜は、複数層の棚段を含む反応釜である。
【0023】
本発明によれば、ステップ(3)に記載のヘミセルロース糖液は、反応釜に入る際の温度が160~200℃であり、例えば、160℃、165℃、170℃、175℃、180℃、185℃、190℃、195℃、または200℃、および上記数値間の具体的な点の値であってもよく、紙面の都合と簡明のために、本発明では網羅的に列挙しない。
【0024】
本発明によれば、ステップ(3)に記載の酢酸蒸気の温度は230~280℃であり、例えば、230℃、235℃、240℃、245℃、250℃、255℃、260℃、265℃、270℃、275℃、または280℃、および上記数値間の具体的な点の値であってもよく、紙面の都合と簡明のために、本発明では網羅的に列挙しない。
【0025】
本発明によれば、ステップ(3)に記載の酢酸蒸気における酢酸の質量濃度は10%~20%であり、例えば、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または20%、および上記数値間の具体的な点の値であってもよく、紙面の都合と簡明のために、本発明では網羅的に列挙しない。
【0026】
本発明によれば、ステップ(3)においてフルフラールの生成量が完全反応の40%~60%に達すると、フルフラール蒸気を導出するとともに、ヘミセルロース糖液および酢酸蒸気を補充して反応を続ける。
【0027】
従来のフルフラール調製におけるフルフラール蒸気を一度に放出するプロセスフローにおいて、フルフラール蒸気の放出時間はいずれも反応が終了した後であり、フルフラールの収率が35%~45%であり、収率が比較的低い。本発明は、フルフラール蒸気を複数回放出するフローを採用し、反応の終点の前の(40%~60%)に達してからフルフラール蒸気を導出し始め、半連続的な放出方式で、反応をより徹底させ、フルフラールの収率を向上させる。
【0028】
本発明によれば、ステップ(3)で得たフルフラールを含む溶液を精留した後、得た留出液に酢酸が含まれ、それを加熱して酢酸蒸気を形成してフルフラールの調製フローに使用する。
【0029】
好ましい技術案として、本発明に係るフルフラールの調製方法は、
(1)植物原料と-SO3H官能基を含む酸とを混合して前処理を0.5~1h行うステップであって、前記-SO3H官能基を含む酸はメタンスルホン酸および/またはエチルスルホン酸であるステップと、
(2)1:(5~25)の固液質量比に従ってステップ(1)で前処理して得た材料と質量濃度が50%~95%の有機酸とを混合し、90~150℃で0.1~1.5h蒸煮した後に固液分離し、ヘミセルロース糖液を取得するステップであって、前記有機酸は、ギ酸、酢酸、または酪酸のうちの少なくとも1種であるステップと、
(3)ステップ(2)で得たヘミセルロース糖液を160~200℃に加熱した後、それを複数層の棚段を含む反応釜の上部から反応釜に導入するとともに、反応釜の下部から質量濃度が10%~20%で、温度が230~280℃の酢酸蒸気を通入し、糖液と酢酸蒸気とを逆流接触して反応させてフルフラール蒸気を生成し、フルフラールの生成量が完全反応の40%~60%に達すると、フルフラール蒸気を導出するとともに、ヘミセルロース糖液および酢酸蒸気を補充して反応を続け、導出したフルフラール蒸気を冷却した後にフルフラールを含む溶液を取得し、それを精留した後、得た留出液に酢酸が含まれ、それを加熱して酢酸蒸気を形成してフルフラールの調製フローに使用するステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0030】
関連技術と比べ、本発明は、少なくとも以下の有益な効果を有する。
(1)本発明は、まず、-SO3H官能基を含む酸を用いて常温で植物原料を前処理し、その後、有機酸を用いて蒸煮してヘミセルロース内のペントサンを加水分解してペントースを生成し、前処理後に、ヘミセルロース内のペントサンの加水分解率が99%以上に達することができ、原料中の有価物の効率的な使用を実現し、生産コストを低減する。
(2)本発明は、フルフラール蒸気をバッチで半連続的に放出するフローを採用し、調製反応をより徹底させ、フルフラールの収率が65%~75%に達し、関連技術における一度に放出するプロセスと比べて30%程度向上させ、該方法は、同様に持続的かつ安定した生産に寄与し、生産フローの効率を向上させる。
(3)本発明は、留出液を加熱して酢酸蒸気を形成した後、更にフルフラールの調製に用いることで、留出液の処理費用が省かれるとともに、原料利用率を向上させる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
詳細な説明を閲読し理解することで、他の態様も理解できる。
【0032】
本発明を理解しやすくするために、本発明は以下のような実施例を挙げる。当業者であれば、以下の実施例は本発明を理解するためのものに過ぎず、本発明を具体的に限定するものではないことを理解すべきである。
【0033】
本発明の具体的な実施形態に使用される植物原料は、藁、トウモロコシの穂軸、樹皮、竹、トウモロコシの穂軸、綿実殻、バガス、ふすまの皮等から選ばれるが、これらに限定されず、他のバイオベースの植物原料は同様に本発明に適用される。
【0034】
本発明は、前処理の前に、まず、上記植物原料を2×1.5×0.5cm程度の小塊に粉砕し、その後、前処理の操作を行う。
【0035】
本発明の具体的な実施形態において、-SO3H官能基を含む酸の添加量について具体的に限定せず、前処理過程において植物原料をその中に浸漬すればよく、前処理が完了した後に固液分離し、前処理後の原料に対して後続のフルフラールを調製する操作を行い、-SO3H官能基を含む酸は繰り返し使用することができる。
【実施例】
【0036】
以下は、本発明の典型的であるが非限定的な具体的な実施例である。
【0037】
[実施例1]
(1)常温でトウモロコシの穂軸をメタンスルホン酸に浸漬して前処理を0.5h行い、その後、1:25の固液質量比で前処理を経て得た材料と質量濃度が50%のギ酸とを混合し、150℃に昇温して0.5h蒸煮し、得たスラリーを濾過した後、ヘミセルロース糖液を取得した。
【0038】
(2)ステップ(1)で得たヘミセルロース糖液を180℃に加熱した後、それを複数層の棚段を含む反応釜の上部から反応釜に導入するとともに、反応釜の下部から質量濃度が20%で、温度が250℃の酢酸蒸気を通入し、糖液と酢酸蒸気とを逆流接触して反応させてフルフラール蒸気を生成し、フルフラールの生成量が完全反応の50%に達すると、フルフラール蒸気を導出するとともに、ヘミセルロース糖液および酢酸蒸気を補充して反応を続け、導出したフルフラール蒸気を冷却した後にフルフラールを含む溶液を取得し、それを精留した後、得た留出液に酢酸が含まれ、それを加熱して酢酸蒸気を形成してフルフラールの調製フローに使用した。
【0039】
検出により、植物原料中のペントサンの加水分解率が99.3%であり、フルフラールの収率が72%であった。
【0040】
[実施例2]
(1)常温でバガスをエチルスルホン酸に浸漬して前処理を1h行い、その後、1:5の固液質量比で前処理を経て得た材料と質量濃度が95%の酢酸とを混合し、90℃に昇温して1.5h蒸煮し、得たスラリーを濾過した後、ヘミセルロース糖液を取得した。
【0041】
(2)ステップ(1)で得たヘミセルロース糖液を200℃に加熱した後、それを複数層の棚段を含む反応釜の上部から反応釜に導入するとともに、反応釜の下部から質量濃度が15%で、温度が280℃の酢酸蒸気を通入し、糖液と酢酸蒸気とを逆流接触して反応させてフルフラール蒸気を生成し、フルフラールの生成量が完全反応の40%に達すると、フルフラール蒸気を導出するとともに、ヘミセルロース糖液および酢酸蒸気を補充して反応を続け、導出したフルフラール蒸気を冷却した後にフルフラールを含む溶液を取得し、それを精留した後、得た留出液に酢酸が含まれ、それを加熱して酢酸蒸気を形成してフルフラールの調製フローに使用した。
【0042】
検出により、植物原料中のペントサンの加水分解率が99.5%であり、フルフラールの収率が66%であった。
【0043】
[実施例3]
(1)常温で竹をエチルスルホン酸に浸漬して前処理を0.8h行い、その後、1:15の固液質量比で前処理を経て得た材料と質量濃度が70%の酪酸とを混合し、100℃に昇温して1h蒸煮し、得たスラリーを濾過した後、ヘミセルロース糖液を取得した。
【0044】
(2)ステップ(1)で得たヘミセルロース糖液を180℃に加熱した後、それを複数層の棚段を含む反応釜の上部から反応釜に導入するとともに、反応釜の下部から質量濃度が10%で、温度が230℃の酢酸蒸気を通入し、糖液と酢酸蒸気とを逆流接触して反応させてフルフラール蒸気を生成し、フルフラールの生成量が完全反応の55%に達すると、フルフラール蒸気を導出するとともに、ヘミセルロース糖液および酢酸蒸気を補充して反応を続け、導出したフルフラール蒸気を冷却した後にフルフラールを含む溶液を取得し、それを精留した後、得た留出液に酢酸が含まれ、それを加熱して酢酸蒸気を形成してフルフラールの調製フローに使用した。
【0045】
検出により、植物原料中のペントサンの加水分解率が99.5%であり、フルフラールの収率が75%であった。
【0046】
[実施例4]
(1)常温でトウモロコシの藁をメタンスルホン酸とエチルスルホン酸との混合液に浸漬して前処理を0.7h行い、その後、1:20の固液質量比で前処理を経て得た材料と質量濃度が60%の酢酸とを混合し、95℃に昇温して1h蒸煮し、得たスラリーを濾過した後、ヘミセルロース糖液を取得した。
【0047】
(2)ステップ(1)で得たヘミセルロース糖液を170℃に加熱した後、それを複数層の棚段を含む反応釜の上部から反応釜に導入するとともに、反応釜の下部から質量濃度が13%で、温度が270℃の酢酸蒸気を通入し、糖液と酢酸蒸気とを逆流接触して反応させてフルフラール蒸気を生成し、フルフラールの生成量が完全反応の60%に達すると、フルフラール蒸気を導出するとともに、ヘミセルロース糖液および酢酸蒸気を補充して反応を続け、導出したフルフラール蒸気を冷却した後にフルフラールを含む溶液を取得し、それを精留した後、得た留出液に酢酸が含まれ、それを加熱して酢酸蒸気を形成してフルフラールの調製フローに使用した。
【0048】
検出により、植物原料中のペントサンの加水分解率が99.6%であり、フルフラールの収率が70%であった。
【0049】
[実施例5]
(1)常温で樹皮をメタンスルホン酸に浸漬して前処理を0.6h行い、その後、1:12の固液質量比で前処理を経て得た材料と質量濃度が75%の酢酸とを混合し、110℃に昇温して1h蒸煮し、得たスラリーを濾過した後、ヘミセルロース糖液を取得した。
【0050】
(2)ステップ(1)で得たヘミセルロース糖液を180℃に加熱した後、それを複数層の棚段を含む反応釜の上部から反応釜に導入するとともに、反応釜の下部から質量濃度が17%で、温度が250℃の酢酸蒸気を通入し、糖液と酢酸蒸気とを逆流接触して反応させてフルフラール蒸気を生成し、フルフラールの生成量が完全反応の45%に達すると、フルフラール蒸気を導出するとともに、ヘミセルロース糖液および酢酸蒸気を補充して反応を続け、導出したフルフラール蒸気を冷却した後にフルフラールを含む溶液を取得し、それを精留した後、得た留出液に酢酸が含まれ、それを加熱して酢酸蒸気を形成してフルフラールの調製フローに使用した。
【0051】
検出により、植物原料中のペントサンの加水分解率が99.2%であり、フルフラールの収率が68%であった。
【0052】
[比較例1]
実施例1と比べ、前処理のステップを除去した以外は実施例1の条件と全く同じであった。即ち、有機酸を直接使用して植物原料を蒸煮した。
【0053】
検出により、本比較例における植物原料中のペントサンの加水分解率が85.8%であった。
【0054】
[比較例2]
実施例1と比べ、ステップ(2)におけるフルフラールが完全に反応してからフルフラール蒸気を導出した以外は実施例1のステップおよび条件と全く同じであった。
【0055】
検出により、本比較例におけるフルフラールの収率が43%であった。
【0056】
[比較例3]
実施例1と比べ、ステップ(1)の前処理におけるメタンスルホン酸を塩酸に置き換えた以外は実施例1のステップおよび条件と全く同じであった。
【0057】
検出により、本比較例における植物原料中のペントサンの加水分解率が87.3%であった。
【0058】
[比較例4]
実施例1と比べ、ステップ(1)の前処理におけるメタンスルホン酸を酢酸に置き換えた以外は実施例1のステップおよび条件と全く同じであった。
【0059】
検出により、本比較例における植物原料中のペントサンの加水分解率が86.8%であった。
【0060】
実施例1~5から分かるように、本発明に係る方法を採用し、フルフラールの調製過程において原料中の有価物の効率的な使用を実現するとともに、フルフラールの収率を大幅に向上させることができ、植物原料中のペントサンの加水分解率は99%以上に達し、フルフラールの収率は65%以上に達することができる。
【0061】
比較例1から分かるように、前処理を行わない場合、植物原料中のペントサンの加水分解率が85.8%のみであり、実施例1と比べて著しく低下し、有機酸を触媒としてフルフラールを調製する時、-SO3H官能基を含む酸を用いて植物原料を前処理するステップは、ヘミセルロース内のペントサンの加水分解を効果的に促進し、原料利用率を向上させることができることを意味する。
【0062】
比較例2から分かるように、フルフラール蒸気を一度に放出する場合のフルフラールの収率が43%のみであるが、実施例1におけるフルフラールの収率が72%に達し、29%向上し、フルフラール蒸気をバッチで半連続的に放出するフローはフルフラールの収率を大幅に向上させることができることを意味する。
【0063】
比較例3および比較例4から分かるように、メタンスルホン酸を塩酸および酢酸に置き換えて前処理を行う場合、植物原料中のペントサンの加水分解率はそれぞれ87.3%および86.8%のみであり、前処理過程において、-SO3H官能基を含む酸が、ペントサンの加水分解率の向上に対して代替できない作用を果たすことを意味する。
【0064】
本発明は、上記実施例により本発明の詳細なプロセス装置およびプロセスフローを説明するが、本発明は上記詳細なプロセス装置およびプロセスフローに限定されるものではなく、すなわち、本発明は上記詳細なプロセス装置およびプロセスフローに依存して実施しなければならないことを意味するものではないことを、出願人より声明する。