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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】X線検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20220707BHJP
【FI】
G01N23/046
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022502176
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 JP2021037106
【審査請求日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】P 2020191471
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512097042
【氏名又は名称】日本装置開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】木下 修
(72)【発明者】
【氏名】宮入 敏彦
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-344453(JP,A)
【文献】特開2004-117024(JP,A)
【文献】特開2017-223468(JP,A)
【文献】特開2011-069650(JP,A)
【文献】特開2020-041954(JP,A)
【文献】特開2009-257791(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0154727(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項5】
前記モータは、ステッピングモータまたはサーボモータであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のX線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業製品等の内部を非破壊で検査するためのX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工業製品等の被検査体の内部を非破壊で検査するためのX線検査装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のX線検査装置は、被検査体にX線を照射するX線発生器と、X線発生器との間に被検査体を挟むように配置されるエリアセンサ(二次元X線検出器)と、被検査体が搭載されるテーブルと、テーブルを回転させる回転機構と、エリアセンサを平行移動させる移動機構とを備えている。このX線検査装置で検査が行われる被検査体は比較的大きくなっている。そのため、このX線検査装置では、第1配置位置から第9配置位置までの9箇所の配置位置にエリアセンサを移動させると、エリアセンサによって被検査体の全体のX線画像を取得することが可能になっている。
【0003】
特許文献1に記載のX線検査装置で被検査体を検査するときには、まず、エリアセンサを第1配置位置に移動させて停止させ、その状態で、被検査体を一定速度で1回転させるとともにエリアセンサで一定角度ごとに複数枚のX線画像を連続的に取得する。その後、エリアセンサを第2配置位置に移動させて停止させ、その状態で、被検査体を一定速度で1回転させるとともにエリアセンサで一定角度ごとに複数枚のX線画像を連続的に取得する。その後、エリアセンサを第3配置位置に移動させて停止させ、その状態で、被検査体を一定速度で1回転させるとともにエリアセンサで一定角度ごとに複数枚のX線画像を連続的に取得する。その後、第4配置位置~第9配置位置に順次、エリアセンサを移動させて停止させ、その状態で、被検査体を一定速度で1回転させるとともにエリアセンサで一定角度ごとに複数枚のX線画像を連続的に取得する。
【0004】
また、特許文献1に記載のX線検査装置は、エリアセンサが第1配置位置、第2配置位置および第3配置位置のそれぞれに配置されているときに取得されたX線画像であって、被検査体に対するエリアセンサの相対回転方向において同じ角度で取得されたX線画像を繋ぎ合わせて合成して、合成X線画像を生成する。同様に、このX線検査装置は、エリアセンサが第4配置位置、第5配置位置および第6配置位置のそれぞれに配置されているときに取得されたX線画像であって、被検査体に対するエリアセンサの相対回転方向において同じ角度で取得されたX線画像を繋ぎ合わせて合成して、合成X線画像を生成する。
【0005】
また、このX線検査装置は、エリアセンサが第7配置位置、第8配置位置および第9配置位置のそれぞれに配置されているときに取得されたX線画像であって、被検査体に対するエリアセンサの相対回転方向において同じ角度で取得されたX線画像を繋ぎ合わせて合成して、合成X線画像を生成する。その後、このX線検査装置は、合成X線画像に対する所定の処理を行うとともに、処理後の合成X線画像に基づく所定の演算を行ってCT画像を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2017/203886号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のX線検査装置において、たとえば、エリアセンサが第1配置位置に配置されているときに取得されたX線画像A1(すなわち、被検査体の1回目の回転時に取得されたX線画像A1)と、エリアセンサが第2配置位置に配置されているときに取得されたX線画像B1(すなわち、被検査体の2回目の回転時に取得されたX線画像B1)と、エリアセンサが第3配置位置に配置されているときに取得されたX線画像C1(すなわち、被検査体の3回目の回転時に取得されたX線画像C1)とが繋ぎ合わされて合成X線画像が生成される場合、X線画像A1が取得されるときの、被検査体に対するエリアセンサの相対回転方向における被検査体の角度と、X線画像B1が取得されるときの、被検査体に対するエリアセンサの相対回転方向における被検査体の角度と、X線画像C1が取得されるときの、被検査体に対するエリアセンサの相対回転方向における被検査体の角度とがばらついていると、生成される合成X線画像の精度が低下する。
【0008】
すなわち、合成される3枚のX線画像A1~C1のそれぞれが取得されるときの、被検査体に対するX線検出器の相対回転方向における被検査体の角度がばらついていると、生成される合成X線画像の精度が低下する。また、合成X線画像の精度が低下すると、合成X線画像に基づいて生成されるCT画像の精度が低下する。
【0009】
ここで、たとえば、被検査体が搭載されるテーブルの回転位置を検知するためのエンコーダの検知結果に基づいてエリアセンサでのX線画像の取得タイミングを制御することで、合成される3枚のX線画像A1~C1のそれぞれが取得されるときの、被検査体に対するX線検出器の相対回転方向における被検査体の角度のばらつきを抑制することは可能である。しかしながら、被検査体を1回転させる間に多数枚のX線画像を取得する場合(たとえば、0.36°ごとに1000枚のX線画像を取得する場合)、エンコーダの検知結果に基づいてエリアセンサでのX線画像の取得タイミングを制御していたのでは、被検査体を高速で回転させることは困難であり、その結果、X線画像の取得時間が長くなる。
【0010】
そこで、本発明の課題は、被検査体に対してX線発生器およびX線検出器を一定速度で相対的に回転させながらX線画像を一定周期で連続的に取得するとともに、被検査体に対するX線検出器の相対回転方向における所定の角度で取得された複数枚のX線画像の合成を行うX線検査装置において、CT画像の生成に用いられるX線画像であって、合成される複数枚のX線画像のそれぞれが取得されるときの、被検査体に対するX線検出器の相対回転方向における被検査体の角度のばらつきを抑制することが可能であっても、X線画像の取得時間を短縮することが可能なX線検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本願発明者は、種々の検討を行った。その結果、本願発明者は、被検査体に対してX線検出器を相対回転させるためのモータとX線検出器とが電気的に接続される制御部に、モータドライバに入力されるモータ駆動信号を出力するコントローラと、コントローラにモータ駆動信号の出力を開始させるコントローラ起動信号を生成する起動信号生成回路と、起動信号生成回路を制御する生成回路制御部とを設けること、また、X線検出器に、CT画像の生成に使用されるX線画像の取得を開始する前であって、かつ、モータが起動する前からX線画像の取得を開始させるとともに、X線画像の取得タイミングを示す周期的な取得タイミング信号を出力させること、さらに、生成回路制御部に、モータを起動させるためのモータ起動信号を取得タイミング信号に基づいて生成させること、さらにまた、起動信号生成回路に、取得タイミング信号とモータ起動信号とに基づいてコントローラ起動信号を生成させるとともに、起動信号生成回路からコントローラにコントローラ起動信号を直接入力して、モータを起動させることで、取得タイミング信号の出力タイミングとほぼ同じタイミングで毎回モータを起動させることが可能になることを知見するに至った。
【0012】
また、たとえば、CT画像を生成するために、被検査体を1回、回転させたときに得られる被検査体の第1のX線画像と、その後、被検査体を一旦停止させた後再度、1回、回転させたときに得られる被検査体の第2のX線画像とを合成する場合、本願発明者は、上記の内容に加えて、モータの回転速度が一定速度になって被検査体の回転速度が一定速度になった後に取得されたX線画像を第1のX線画像および第2のX線画像としてCT画像の生成に用いることで、モータを比較的高速で回転させても(すなわち、被検査体を比較的高速で回転させても)、第1のX線画像が取得されるときの、被検査体に対するX線検出器の相対回転方向における被検査体の角度と、第2のX線画像が取得されるときの、被検査体に対するX線検出器の相対回転方向における被検査体の角度とのばらつきが生じにくくなることを知見するに至った。
【0013】
すなわち、本願発明者は、種々の検討を行った結果、上記の内容を実施することで、CT画像の生成に用いられるX線画像であって、合成される複数枚のX線画像のそれぞれが取得されるときの、被検査体に対するX線検出器の相対回転方向における被検査体の角度のばらつきを抑制することが可能であっても、X線画像の取得時間を短縮することが可能になることを知見するに至った。
【0014】
本発明のX線検査装置は、かかる新たな知見に基づくものであり、X線発生器と、X線発生器との間に被検査体を挟むように配置され被検査体のX線画像を取得するX線検出器と、被検査体の外周側で被検査体に対してX線発生器およびX線検出器が相対回転するようにX線発生器とX線検出器とを回転させるかまたは被検査体を回転させる回転機構と、X線発生器とX線検出器とが電気的に接続される制御部とを備え、被検査体に対してX線発生器およびX線検出器を一定速度で相対的に回転させながらX線画像を一定周期で連続的に取得してCT画像を生成するX線検査装置であって、回転機構は、制御部に電気的に接続される駆動源としてのモータを備え、X線検出器は、CT画像の生成に使用されるX線画像の取得を開始する前であってモータが起動する前からX線画像の取得を開始するとともに、X線画像の取得タイミングを示す周期的な取得タイミング信号を出力し、制御部は、モータに電力を供給するモータドライバと、モータドライバに入力されるモータ駆動信号を出力するコントローラと、コントローラにモータ駆動信号の出力を開始させるコントローラ起動信号を生成する起動信号生成回路と、起動信号生成回路を制御する生成回路制御部とを備え、生成回路制御部には、取得タイミング信号に基づいて生成されるとともに取得タイミング信号の出力タイミングで信号レベルが変化する一定周期のオンオフ信号である第1信号が、取得タイミング信号の出力開始後から入力されるか、または、取得タイミング信号が入力され、生成回路制御部は、生成回路制御部に第1信号が入力される場合には、モータを起動させるためのモータ起動信号を第1信号に基づいて生成して起動信号生成回路に対して出力し、生成回路制御部に取得タイミング信号が入力される場合には、モータ起動信号を取得タイミング信号に基づいて生成して起動信号生成回路に対して出力し、起動信号生成回路には、第1信号および取得タイミング信号の少なくともいずれか一方が入力され、起動信号生成回路は、モータ起動信号が入力された後の、取得タイミング信号の出力タイミングでコントローラ起動信号を生成してコントローラに対して出力し、CT画像は、モータの回転速度が一定速度になった後に取得された複数枚のX線画像に基づいて生成されることを特徴とする。
【0015】
本発明のX線検査装置では、X線検出器は、CT画像の生成に使用されるX線画像の取得を開始する前であってモータが起動する前からX線画像の取得を開始するとともに、X線画像の取得タイミングを示す周期的な取得タイミング信号を出力する。また、本発明では、制御部は、モータドライバに入力されるモータ駆動信号を出力するコントローラと、コントローラにモータ駆動信号の出力を開始させるコントローラ起動信号を生成する起動信号生成回路と、起動信号生成回路を制御する生成回路制御部とを備えている。
【0016】
さらに、本発明では、生成回路制御部は、生成回路制御部に、取得タイミング信号に基づいて生成されるとともに取得タイミング信号の出力タイミングで信号レベルが変化する一定周期のオンオフ信号である第1信号が、取得タイミング信号の出力開始後から入力される場合には、モータを起動させるためのモータ起動信号を第1信号に基づいて生成して起動信号生成回路に対して出力し、生成回路制御部に取得タイミング信号が入力される場合には、モータ起動信号を取得タイミング信号に基づいて生成して起動信号生成回路に対して出力する。
【0017】
すなわち、本発明では、生成回路制御部は、生成回路制御部に第1信号が入力される場合には、間接的に、取得タイミング信号に基づいてモータ起動信号を生成して起動信号生成回路に対して出力し、生成回路制御部に取得タイミング信号が入力される場合には、直接的に、取得タイミング信号に基づいてモータ起動信号を生成して起動信号生成回路に対して出力する。
【0018】
さらにまた、本発明では、起動信号生成回路は、モータ起動信号が入力された後の、取得タイミング信号の出力タイミングでコントローラ起動信号を生成してコントローラに対して出力する。すなわち、本発明では、起動信号生成回路は、取得タイミング信号とモータ起動信号とに基づいてコントローラ起動信号を生成してコントローラに直接入力する。また、本発明では、起動信号生成回路からコントローラにコントローラ起動信号を直接入力することで、モータを起動させている。そのため、本発明では、取得タイミング信号の出力タイミングとほぼ同じタイミングで毎回モータを起動させることが可能になる。
【0019】
また、本発明では、CT画像は、モータの回転速度が一定速度になった後に取得された複数枚のX線画像に基づいて生成されている。すなわち、本発明では、CT画像は、被検査体に対するX線検出器の相対回転速度が一定速度になった後に取得された複数枚のX線画像に基づいて生成されている。
【0020】
そのため、本発明では、モータを比較的高速で回転させても(すなわち、被検査体に対してX線検出器を比較的高速で相対回転させても)、CT画像の生成に用いられるX線画像であって、合成される複数枚のX線画像のそれぞれが取得されるときの、被検査体に対するX線検出器の相対回転方向における被検査体の角度のばらつきを抑制することが可能になる。すなわち、本発明では、CT画像の生成に用いられるX線画像であって、合成される複数枚のX線画像のそれぞれが取得されるときの、被検査体に対するX線検出器の相対回転方向における被検査体の角度のばらつきを抑制することが可能であっても、X線画像の取得時間を短縮することが可能になる。
【0021】
本発明において、たとえば、起動信号生成回路には、取得タイミング信号が入力され、起動信号生成回路は、第1信号を生成して生成回路制御部に対して出力し、生成回路制御部には、第1信号が入力される。
【0022】
本発明において、たとえば、生成回路制御部には、生成回路制御部への第1信号の入力開始後、第1信号の周期が安定するまでの第1信号のパルスの数以上の基準パルス数が予め記憶され、生成回路制御部は、生成回路制御部への第1信号の入力開始後の第1信号のパルスの数をカウントするとともに、第1信号のパルスの数が基準パルス数に到達すると、モータ起動信号を生成して起動信号生成回路に対して出力する。
【0023】
本発明において、生成回路制御部は、モータ起動信号を生成する前に、コントローラをコントローラ起動信号の入力待ち状態とするためのコントローラ待機信号を生成してコントローラに対して出力することが好ましい。このように構成すると、コントローラに入力されるノイズの影響によってコントローラが誤動作して、モータ駆動信号の出力を誤って開始するのを防止することが可能になる。したがって、コントローラ起動信号が入力されたタイミングで確実に、コントローラにモータ駆動信号の出力を開始させることが可能になる。
【0024】
本発明において、モータは、たとえば、ステッピングモータまたはサーボモータである。本願発明者の検討によると、モータがステッピングモータであって、オープンループ制御される場合には、コントローラ内で生成されるクロック信号に応じてモータが一定速度で回転するため、モータがサーボモータであって、フィードバック制御される場合と比較して、CT画像の生成に用いられるX線画像であって、合成される複数枚のX線画像のそれぞれが取得されるときの、被検査体に対するX線検出器の相対回転方向における被検査体の角度のばらつきを効果的に抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明では、被検査体に対してX線発生器およびX線検出器を一定速度で相対的に回転させながらX線画像を一定周期で連続的に取得するとともに、被検査体に対するX線検出器の相対回転方向における所定の角度で取得された複数枚のX線画像の合成を行うX線検査装置において、CT画像の生成に用いられるX線画像であって、合成される複数枚のX線画像のそれぞれが取得されるときの、被検査体に対するX線検出器の相対回転方向における被検査体の角度のばらつきを抑制することが可能であっても、X線画像の取得時間を短縮することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施の形態にかかるX線検査装置の機械構成の概略図である。
図2図1に示すX線検査装置の概略構成を説明するためのブロック図である。
図3図2に示すPCでの合成処理を説明するための図である。
図4図2に示す制御部の構成およびモータの起動方法を説明するためのブロック図である。
図5図2に示すモータの起動時のタイミングチャートの一例である。
図6】本発明の他の実施の形態にかかる制御部の構成およびモータの起動方法を説明するためのブロック図である。
図7】本発明の他の実施の形態にかかる制御部の構成およびモータの起動方法を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0028】
(X線検査装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるX線検査装置1の機械構成の概略図である。図2は、図1に示すX線検査装置1の概略構成を説明するためのブロック図である。
【0029】
本形態のX線検査装置1は、工業製品等の被検査体2の内部を非破壊で検査するための装置である。具体的には、X線検査装置1は、エンジンブロック等の比較的大きな被検査体2を検査するための装置である。X線検査装置1は、被検査体2にX線を照射するX線発生器3と、X線発生器3との間に被検査体2を挟むように配置されるとともに被検査体2のX線画像を取得するX線検出器4とを備えている。本形態のX線検出器4は、エリアセンサ(二次元X線検出器)である。したがって、以下では、X線検出器4を「エリアセンサ4」とする。
【0030】
また、X線検査装置1は、エリアセンサ4で取得されたX線画像を取り込んで処理するPC(パーソナルコンピュータ)5と、被検査体2が搭載されるテーブル7と、テーブル7を回転させる回転機構8と、エリアセンサ4を平行移動させる移動機構9とを備えている。回転機構8は、テーブル7を回転させる駆動源して、モータ10を備えている。移動機構9は、エリアセンサ4を平行移動させる駆動源として、モータ11を備えている。X線発生器3とエリアセンサ4とモータ10、11とは、制御部12に電気的に接続されている。
【0031】
X線発生器3は、たとえば、被検査体2に向かって円錐状のX線を射出する。X線発生器3の光軸は、水平方向と平行になっている。エリアセンサ4は、二次元カメラである。エリアセンサ4の検出面4aは、正方形状に形成されている。X線発生器3の光軸に平行な方向を前後方向とすると、検出面4aは、前後方向に直交するように配置されている。また、上下方向と前後方向とに直交する方向を左右方向とすると、エリアセンサ4は、正方形状に形成される検出面4aの4辺のうちの2辺が上下方向と平行になり、残りの2辺が左右方向と平行になるように配置されている。
【0032】
テーブル7は、X線発生器3とエリアセンサ4との間に被検査体2が配置されるように、前後方向においてX線発生器3とエリアセンサ4との間に配置されている。回転機構8は、上下方向を回転の軸方向としてテーブル7を回転させる。すなわち、回転機構8は、被検査体2の外周側で被検査体2に対してX線発生器3およびエリアセンサ4が相対回転するように、テーブル7に搭載される被検査体2を回転させる。移動機構9は、エリアセンサ4を左右方向および上下方向へ平行移動させる。以下では、被検査体2に対するX線発生器3およびエリアセンサ4の相対回転の方向を「相対回転方向」と記載する場合がある。
【0033】
エリアセンサ4の検出面4aを含む平面を仮想投影面VPとし、X線発生器3が射出するX線によって仮想投影面VPに投影される被検査体2の全体の投影像を仮想投影像VIとすると、検出面4aは、上下方向および左右方向において仮想投影像VIよりも小さくなっている。本形態では、9箇所にエリアセンサ4を移動させると、エリアセンサ4によって被検査体2の全体のX線画像を取得することが可能になる。
【0034】
具体的には、被検査体2の下端側部分の右端側が投影される第1配置位置4Aと、被検査体2の下端側部分の左右方向の中央部が投影される第2配置位置4Bと、被検査体2の下端側部分の左端側が投影される第3配置位置4Cと、被検査体2の上下方向の中心部分の右端側が投影される第4配置位置4Dと、被検査体2の中心部分が投影される第5配置位置4Eと、被検査体2の上下方向の中心部分の左端側が投影される第6配置位置4Fと、被検査体2の上端側部分の右端側が投影される第7配置位置4Gと、被検査体2の上端側部分の左右方向の中央部が投影される第8配置位置4Hと、被検査体2の上端側部分の左端側が投影される第9配置位置4Iとの9箇所にエリアセンサ4を移動させると、エリアセンサ4によって被検査体2の全体のX線画像を取得することが可能になる。
【0035】
(X線画像の取得方法およびX線画像の処理方法)
図3は、図2に示すPC5での合成処理を説明するための図である。
【0036】
X線検査装置1で被検査体2の検査を行うときには、まず、エリアセンサ4を第1配置位置4Aに移動させて停止させる。その状態で、テーブル7に搭載された被検査体2を一定速度で1回転させるとともにエリアセンサ4で一定角度ごとにX線画像A1~A1000(図3参照)を連続的に取得する。すなわち、被検査体2に対してX線発生器3およびエリアセンサ4を一定速度で相対的に回転させながらX線画像A1~A1000を一定周期で連続的に取得する。本形態では、0.36°ごとに1000枚のX線画像A1~A1000を順次、取得する。ただし、取得するX線画像の枚数は、1000枚未満であっても良いし、1000枚を超えても良い。
【0037】
その後、エリアセンサ4を第1配置位置4Aから第2配置位置4Bへ移動させて停止させる。その状態で、被検査体2を一定速度で1回転させるとともにエリアセンサ4で0.36°ごとに1000枚のX線画像B1~B1000(図3参照)を連続的に取得する。その後、エリアセンサ4を第2配置位置4Bから第3配置位置4Cへ移動させて停止させる。その状態で、被検査体2を一定速度で1回転させるとともにエリアセンサ4で0.36°ごとに1000枚のX線画像C1~C1000(図3参照)を連続的に取得する。
【0038】
X線画像A1、B1、C1は、被検査体2に対するエリアセンサ4の相対回転方向において同じ角度で取得されたX線画像である。X線画像A1、B1、C1を右側からこの順番で配置して繋ぎ合わせて合成すると、被検査体2の下端側部分の、相対回転方向における原点位置のX線画像となる。同様に、X線画像A2、B2、C2は、相対回転方向において同じ角度で取得されたX線画像である。X線画像A2、B2、C2を右側からこの順番で配置して繋ぎ合わせて合成すると、被検査体2の下端側部分の、相対回転方向における原点位置から0.36°ずれた位置のX線画像となる。
【0039】
すなわち、「n」を1から1000までの整数とすると、X線画像An、Bn、Cnは、相対回転方向において同じ角度で取得されたX線画像であり、X線画像An、Bn、Cnを右側からこの順番で配置して繋ぎ合わせて合成すると、被検査体2の下端側部分の、相対回転方向における原点位置から(0.36×(n-1))°ずれた位置のX線画像となる。また、X線画像An、Bn、Cnのそれぞれは、被検査体2の下端側部分の、相対回転方向における原点位置から(0.36×(n-1))°ずれた位置のX線画像であるとともに、被検査体2の下端側部分の、左右方向で分割されたX線画像である。
【0040】
相対回転方向の一定角度ごとに360°に亘って取得された、被検査体2の下端側部分の、左右方向で分割された複数枚のX線画像を一列分X線画像P1とすると、一列分X線画像P1をエリアセンサ4が取得すると、エリアセンサ4を第4配置位置4Dへ移動させて停止させる。その後、上述した動作と同様の動作を行って、第4配置位置4Dに配置されたエリアセンサ4でX線画像D1~D1000を取得し、第5配置位置4Eに配置されたエリアセンサ4でX線画像E1~E1000を取得し、第6配置位置4Fに配置されたエリアセンサ4でX線画像F1~F1000を取得する。
【0041】
相対回転方向の一定角度ごとに360°に亘って取得された、上下方向における被検査体2の中心部分の、左右方向で分割された複数枚のX線画像を一列分X線画像P2とすると、一列分X線画像P2をエリアセンサ4が取得すると、エリアセンサ4を第7配置位置4Gへ移動させる。その後、同様の動作を行って、第7配置位置4Gに配置されたエリアセンサ4でX線画像G1~G1000を取得し、第8配置位置4Hに配置されたエリアセンサ4にX線画像H1~H1000を取得し、第9配置位置4Iに配置されたエリアセンサ4でX線画像I1~I1000を取得する。
【0042】
X線画像I1~I1000をエリアセンサ4が取得すると、エリアセンサ4による被検査体2のX線画像の取得が終了する。すなわち、相対回転方向の一定角度ごとに360°に亘って取得された、被検査体2の上端側部分の、左右方向で分割された複数枚のX線画像を一列分X線画像P3とすると、一列分X線画像P3をエリアセンサ4が取得すると、エリアセンサ4による被検査体2のX線画像の取得が終了する。
【0043】
PC5は、エリアセンサ4で取得されたX線画像を順次、取り込む。PC5は、一列分X線画像P1を取り込むと(すなわち、X線画像A1~A1000、B1~B1000、C1~C1000を取り込むと)、まず、一列分X線画像P1の中の、被検査体2に対するエリアセンサ4の相対回転方向における同じ角度で取得された複数枚のX線画像を左右方向で繋ぎ合わせて合成する合成処理を相対回転方向の一定角度ごとに実行する。
【0044】
具体的には、PC5は、図3(B)に示すように、3枚のX線画像A1、B1、C1を右側からこの順番で配置して繋ぎ合わせて合成し、合成X線画像X1を生成する。同様に、PC5は、3枚のX線画像A2、B2、C2を右側からこの順番で配置して繋ぎ合わせて合成し、合成X線画像X2を生成する。また、PC5は、3枚のX線画像A1000、B1000、C1000が繋ぎ合わされた合成X線画像X1000が生成されるまで、同様の合成処理を行う。すなわち、PC5は、3枚のX線画像An、Bn、Cnを右側からこの順番で配置して繋ぎ合わせて合成し、1000個の合成X線画像Xnを生成する。
【0045】
その後、PC5は、360°分の合成X線画像X1~X1000に基づく所定の演算を行ってCT画像を生成するCT画像生成処理を実行する。また、PC5は、一列分X線画像P2を取り込み、一列分X線画像P2に対する合成処理およびCT画像生成処理を同様に行う。また、PC5は、一列分X線画像P3を取り込み、一列分X線画像P3に対する合成処理およびCT画像生成処理を同様に行う。すなわち、本形態では、一列分X線画像P1~P3ごとにCT画像が生成される。
【0046】
(モータの起動方法)
図4は、図2に示す制御部12の構成およびモータ10の起動方法を説明するためのブロック図である。図5は、図2に示すモータ10の起動時のタイミングチャートの一例である。
【0047】
上述のように、回転機構8は、モータ10を備えている。本形態のモータ10は、ステッピングモータ(パルスモータ)である。制御部12は、モータ10の制御に関連する構成として、モータ10に電力を供給するモータドライバ17と、モータドライバ17に入力されるモータ駆動信号を出力するコントローラ18と、コントローラ18にモータ駆動信号の出力を開始させるコントローラ起動信号を生成する起動信号生成回路15と、起動信号生成回路15を制御する生成回路制御部としてのPLC(Programmable
Logic Controller、シーケンサ)16とを備えている。
【0048】
なお、コントローラ18は、図4に示すように、モータドライバ17の外部に設けられていても良いし、モータドライバ17に内蔵されていても良い。すなわち、コントローラ18とモータドライバ17とが別体になっていても良いし、コントローラ18とモータドライバ17とが一体になっていても良い。また、起動信号生成回路15は、図4に示すように、コントローラ18の外部に設けられていても良いし、コントローラ18に内蔵されていても良い。すなわち、起動信号生成回路15とコントローラ18とが別体になっていても良いし、起動信号生成回路15とコントローラ18とが一体になっていても良い。また、コントローラ18および起動信号生成回路15がモータドライバ17に内蔵されていても良い。すなわち、起動信号生成回路15とコントローラ18とモータドライバ17とが一体になっていても良い。
【0049】
また、本形態では、上述のように、3枚のX線画像An、Bn、Cnが合成処理において合成される。X線画像Anが取得されるときの、被検査体2に対するエリアセンサ4の相対回転方向における被検査体2の角度と、X線画像Bnが取得されるときの、被検査体2に対するエリアセンサ4の相対回転方向における被検査体2の角度と、X線画像Cnが取得されるときの、被検査体2に対するエリアセンサ4の相対回転方向における被検査体2の角度とのばらつきが抑制されるように、本形態では、第1配置位置4A~第3配置位置4Cのそれぞれにエリアセンサ4が配置されている状態において、以下のように、モータ10を起動させて、被検査体2の回転を開始させる。また、第4配置位置4D~第9配置位置4Iのそれぞれにエリアセンサ4が配置されている状態においても、同様に、モータ10を起動させて、被検査体2の回転を開始させる。
【0050】
まず、エリアセンサ4は、CT画像の生成に使用されるX線画像の取得を開始する前からX線画像の取得を開始する。具体的には、エリアセンサ4は、モータ10が起動する前からX線画像の取得を開始する。そのため、モータ10が起動するまで(モータ10が回転を開始するまで)は、同じX線画像がエリアセンサ4によって取得される。また、エリアセンサ4は、X線画像の取得タイミングを示す周期的な取得タイミング信号を起動信号生成回路15に対して出力する。
【0051】
上述のように、X線画像は一定周期で連続的に取得されるため、取得タイミング信号は、エリアセンサ4に内蔵される水晶発振器等が発生させたクロック信号に基づいて生成される一定周期の信号である(図5参照)。エリアセンサ4は、取得タイミング信号に応じてX線画像を取得する。具体的には、エリアセンサ4は、取得タイミング信号の出力タイミングでX線画像を取得する。取得タイミング信号の周期は、取得タイミング信号の出力が開始されてから所定時間が経過すると安定する。すなわち、取得タイミング信号の周波数は、取得タイミング信号の出力開始後、所定時間が経過すると安定する。
【0052】
起動信号生成回路15には、取得タイミング信号が入力される。取得タイミング信号の信号電圧は、PLC16での処理に適した信号電圧よりも低くなっている。また、取得タイミング信号の出力時間(立上り時間)は、PLC16での処理に適した信号の出力時間よりも短くなっている。起動信号生成回路15は、PLC16での処理に適した信号となるように、取得タイミング信号の増幅および取得タイミング信号の出力時間の延長をハード的に行って、第1信号を生成する。すなわち、起動信号生成回路15は、取得タイミング信号に基づいて第1信号を生成する。図5に示すように、第1信号は、取得タイミング信号の出力タイミングで信号レベルが変化する一定周期のオンオフ信号である。また、第1信号は、矩形波状のオンオフ信号である。
【0053】
本形態の第1信号は、取得タイミング信号の出力タイミングでオンになった後、次の取得タイミング信号の出力タイミングの前にオフになるオンオフ信号であり、第1信号の周期と取得タイミングの周期とが等しくなっている。すなわち、第1信号の周波数と取得タイミングの周波数とが等しくなっている。また、第1信号の信号電圧は、たとえば、取得タイミング信号の信号電圧の7倍となっており、第1信号のオン時間は、たとえば、取得タイミング信号の出力時間の250倍となっている。
【0054】
起動信号生成回路15は、PLC16に対して第1信号を出力する。上述のように、取得タイミング信号の周期は、取得タイミング信号の出力開始後、所定時間が経過すると安定するため、第1信号の周期も、第1信号の出力開始後(すなわち、取得タイミング信号の出力開始後)、所定時間が経過すると安定する。すなわち、第1信号の周波数は、第1信号の出力開始後、所定時間が経過すると安定する。
【0055】
PLC16には、第1信号が入力される。具体的には、エリアセンサ4から取得タイミング信号の出力が開始されて、起動信号生成回路15で第1信号が生成されると、PLC16に直ちに第1信号が入力される。すなわち、PLC16には、取得タイミング信号の出力開始後から第1信号が入力される。より具体的には、取得タイミング信号の出力開始直後からPLC16に第1信号が入力される。PLC16への第1信号の入力が開始されると、PLC16は、エリアセンサ4によるX線画像の取得が開始されたことを認識する。
【0056】
PLC16には、PLC16への第1信号の入力開始後(すなわち、起動信号生成回路15からの第1信号の出力開始後、起動信号生成回路15への取得タイミング信号の入力開始後)、第1信号の周期が安定するまでの第1信号のパルスの数以上の基準パルス数が予め記憶されている。たとえば、PLC16への第1信号の入力開始後、第1信号の周期が安定するまでの第1信号のパルスの数は「50」となっており、PLC16には、基準パルス数として「100」が予め記憶されている。
【0057】
PLC16は、PLC16への第1信号の入力開始後の第1信号のパルスの数をカウントするとともに、カウントした第1信号のパルスの数が基準パルス数に到達すると、モータ10を起動させるためのモータ起動信号を生成して起動信号生成回路15に対して出力する。すなわち、PLC16は、第1信号に基づいてモータ起動信号を生成して起動信号生成回路15に対して出力する。モータ起動信号は、図5に示すように、ワンショット信号(ワンパルス信号)である。
【0058】
また、PLC16は、モータ起動信号を生成する前に、コントローラ18をコントローラ起動信号の入力待ち状態とするためのコントローラ待機信号(すなわち、コントローラ18をモータ駆動信号の出力開始待ち状態とするためのコントローラ待機信号)を生成してコントローラ18に対して出力する。具体的には、PLC16は、PLC16に第1信号が入力されると、コントローラ待機信号を生成してコントローラ18に対して出力する。コントローラ待機信号は、ワンショット信号である。
【0059】
起動信号生成回路15は、コントローラ18に電気的に接続されている。起動信号生成回路15は、モータ起動信号が入力されると、コントローラ起動信号を生成してコントローラ18に対して出力する。具体的には、起動信号生成回路15は、図5に示すように、モータ起動信号が入力された後の、取得タイミング信号の最初の出力タイミング(発生タイミング)でコントローラ起動信号を生成してコントローラ18に対して出力する。
【0060】
より具体的には、起動信号生成回路15は、モータ起動信号の立上りエッジが検出された後の(モータ起動信号のフラグが立った後の)、取得タイミング信号の最初の出力タイミングでコントローラ起動信号を直ちに生成してコントローラ18に対して出力する。すなわち、起動信号生成回路15は、モータ起動信号の立上りエッジが検出された後の、第1信号の立上りエッジが最初に検出された瞬間にコントローラ起動信号を生成してコントローラ18に対して出力する。コントローラ起動信号は、ワンショット信号である。
【0061】
コントローラ18は、コントローラ起動信号が入力されると、モータドライバ17に対するモータ駆動信号の出力を直ちに開始する。すなわち、コントローラ18は、コントローラ起動信号が入力された瞬間に、モータドライバ17に対するモータ駆動信号の出力を開始する。モータ駆動信号は、矩形波状のオンオフ信号(パルス信号)である。モータ駆動信号は、コントローラ18に内蔵される水晶発振器等が発生させたクロック信号に基づいて生成される。なお、コントローラ18にコントローラ待機信号が入力済みであることが、コントローラ18がモータ駆動信号を出力するための条件となっている。
【0062】
モータ駆動信号が入力されたモータドライバ17は、直ちにモータ10に電力を供給する。また、モータ駆動信号が入力されたモータドライバ17は、モータ駆動信号に応じて動作し、モータ10に電力を供給する。モータ駆動信号の周期は、モータ10の加速領域においては次第に短くなっていき、モータ10の回転速度が一定速度になると一定になる。
【0063】
被検査体2に対するエリアセンサ4の相対回転方向における被検査体2の原点位置を0°の位置とすると、モータ10は、たとえば、被検査体2が相対回転方向の反対方向へ15°回転した位置で停止している(図5参照)。コントローラ18にコントローラ起動信号が入力されると、モータ10は回転を開始する(すなわち、テーブル7およびテーブル7に搭載される被検査体2は回転を開始する)。被検査体2が相対回転方向の0°の位置に到達するときには、モータ10の回転速度は一定速度になっており、被検査体2の回転速度は一定速度になっている。
【0064】
本形態では、被検査体2が相対回転方向の0°の位置に到達する前から、エリアセンサ4によってX線画像が取得されているが、被検査体2が相対回転方向の0°の位置に到達した後、エリアセンサ4によって取得されるX線画像がCT画像の生成に使用される。すなわち、被検査体2が相対回転方向の0°の位置に到達すると、CT画像生成用のX線画像の取得が開始される。また、CT画像は、モータ10の回転速度が一定速度になった後(すなわち、被検査体2の回転速度が一定速度になった後)に取得された複数枚のX線画像に基づいて生成される。
【0065】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、エリアセンサ4は、CT画像の生成に使用されるX線画像の取得を開始する前であってモータ10が起動する前からX線画像の取得を開始するとともに、X線画像の取得タイミングを示す周期的な取得タイミング信号を出力している。また、本形態では、PLC16は、取得タイミング信号から生成される第1信号に基づいて、モータ10を起動させるためのモータ起動信号を生成して起動信号生成回路15に対して出力している。
【0066】
さらに、本形態では、起動信号生成回路15は、モータ起動信号が入力された後の、取得タイミング信号の最初の出力タイミングで、コントローラ18にモータ駆動信号の出力を開始させるコントローラ起動信号を生成してコントローラ18に対して出力している。すなわち、本形態では、起動信号生成回路15は、取得タイミング信号とモータ起動信号とに基づいてコントローラ起動信号を生成してコントローラ18に直接入力している。また、本形態では、起動信号生成回路15からコントローラ18にコントローラ起動信号を直接入力することで、モータ10を起動させている。
【0067】
そのため、本形態では、たとえば、PLC16がコントローラ起動信号を生成してコントローラ18に直接入力する場合と比較して、コントローラ起動信号の遅延や変動を抑制することが可能になり、その結果、取得タイミング信号の出力タイミングとほぼ同じタイミングで毎回モータ10を起動させることが可能になる。また、本形態では、CT画像は、モータ10の回転速度が一定速度になった後に取得された複数枚のX線画像に基づいて生成されており、CT画像の生成に用いられるX線画像は、エリアセンサ4の内部で生成されるクロック信号に応じた一定周期で取得され、CT画像の生成に用いられるX線画像が取得される際には、モータ10は、コントローラ18の内部で生成されるクロック信号に応じた一定速度で回転している。
【0068】
したがって、本形態では、モータ10を比較的高速で回転させても(すなわち、被検査体2を比較的高速で回転させても)、CT画像の生成に用いられるX線画像であって、合成処理で合成される3枚のX線画像のそれぞれが取得されるときの、被検査体2に対するエリアセンサ4の相対回転方向における被検査体2の角度のばらつきを抑制することが可能になる。すなわち、本形態では、CT画像の生成に用いられるX線画像であって、合成処理で合成される3枚のX線画像のそれぞれが取得されるときの、被検査体2に対するエリアセンサ4の相対回転方向における被検査体2の角度のばらつきを抑制することが可能であっても、X線画像の取得時間を短縮することが可能になる。
【0069】
本形態では、PLC16は、モータ起動信号を生成する前に、コントローラ18をコントローラ起動信号の入力待ち状態とするためのコントローラ待機信号を生成してコントローラ18に対して出力している。また、本形態では、コントローラ18にコントローラ待機信号が入力済みであることが、コントローラ18がモータ駆動信号を出力するための条件となっている。そのため、本形態では、コントローラ18に入力されるノイズの影響によってコントローラ18が誤動作して、モータ駆動信号の出力を誤って開始するのを防止することが可能になる。したがって、本形態では、コントローラ起動信号が入力されたタイミングで確実に、コントローラ18にモータ駆動信号の出力を開始させることが可能になる。
【0070】
(制御部およびモータの起動方法の変形例1)
図6は、本発明の他の実施の形態にかかる制御部12の構成およびモータ10の起動方法を説明するためのブロック図である。
【0071】
上述した形態において、起動信号生成回路15は、第1信号を生成しなくても良い。この場合には、制御部12は、図6に示すように、取得タイミング信号に基づいて第1信号をハード的に生成するハード回路20を備えている。この変形例では、エリアセンサ4は、ハード回路20に対して取得タイミング信号を出力し、ハード回路20は、第1信号をPLC16に対して出力する。また、起動信号生成回路15には、たとえば、ハード回路20から取得タイミング信号が入力される。起動信号生成回路15は、上述した形態と同様に、モータ起動信号が入力された後の、取得タイミング信号の最初の出力タイミングでコントローラ起動信号を生成してコントローラ18に対して出力する。
【0072】
なお、この変形例において、起動信号生成回路15に、エリアセンサ4から直接、取得タイミング信号が入力されても良い。また、起動信号生成回路15には、取得タイミング信号に加えて、または、取得タイミング信号に代えて、ハード回路20から第1信号が入力されても良い。ハード回路20から起動信号生成回路15に第1信号のみが入力される場合には、起動信号生成回路15は、モータ起動信号が入力された後の、第1信号の立上りエッジが最初に検出されたタイミングでコントローラ起動信号を生成してコントローラ18に対して出力する。この場合であっても、起動信号生成回路15は、モータ起動信号が入力された後の、取得タイミング信号の最初の出力タイミングでコントローラ起動信号を生成してコントローラ18に対して出力することになる。
【0073】
(制御部およびモータの起動方法の変形例2)
図7は、本発明の他の実施の形態にかかる制御部12の構成およびモータ10の起動方法を説明するためのブロック図である。
【0074】
図6に示す変形例において、PLC16で取得タイミング信号を処理することができるのであれば、図7に示すように、制御部12は、ハード回路20を備えていなくても良い。この変形例では、PLC16に取得タイミング信号が入力される。PLC16は、取得タイミング信号に基づいてモータ起動信号を生成して起動信号生成回路15に対して出力する。
【0075】
この変形例では、たとえば、PLC16に、PLC16への取得タイミング信号の入力開始後、取得タイミング信号の周期が安定するまでの取得タイミング信号の信号数以上の基準信号数が予め記憶されている。PLC16は、PLC16への取得タイミング信号の入力開始後の取得タイミング信号数をカウントするとともに、カウントした取得タイミング信号の信号数が基準信号数に到達すると、モータ起動信号を生成して起動信号生成回路15に対して出力する。起動信号生成回路15は、上述した形態と同様に、モータ起動信号が入力された後の、取得タイミング信号の最初の出力タイミングでコントローラ起動信号を生成してコントローラ18に対して出力する。
【0076】
(他の実施の形態)
上述した形態において、取得タイミング信号の信号電圧がPLC16での処理に適した信号電圧となっている場合には、起動信号生成回路15は、取得タイミング信号の出力時間の延長のみをハード的に行っても良い。また、取得タイミング信号の出力時間がPLC16での処理に適した信号の出力時間となっている場合には、起動信号生成回路15は、取得タイミング信号の増幅のみをハード的に行っても良い。
【0077】
上述した形態において、PLC16に、PLC16への第1信号の入力開始後、第1信号の周期が安定するまでの第1信号のエッジの数以上の基準エッジ数が予め記憶されていても良い。この場合には、PLC16は、PLC16への第1信号の入力開始後の第1信号のエッジの数をカウントするとともに、カウントした第1信号のエッジの数が基準エッジ数に到達すると、モータ起動信号を生成して起動信号生成回路15に対して出力する。
【0078】
上述した形態において、モータ10は、サーボモータであっても良い。ただし、本願発明者の検討によると、モータ10が、オープンループ制御されるステッピングモータである場合には、コントローラ18の内部で生成されるクロック信号に応じてモータ10が一定速度で回転するため、モータ10がフィードバック制御されるサーボモータである場合と比較して、CT画像の生成に用いられるX線画像であって、合成される3枚のX線画像のそれぞれが取得されるときの、被検査体2に対するエリアセンサ4の相対回転方向における被検査体2の角度のばらつきを効果的に抑制することが可能になる。なお、モータ10がサーボモータであっても、トルク制御と速度制御とが行われる高速応答性に優れるサーボモータであれば、モータ10がステッピングモータである場合と同様の効果を得ることは可能である。
【0079】
上述した形態において、起動信号生成回路15は、モータ起動信号が入力された後の、取得タイミング信号の最初の出力タイミングでコントローラ起動信号を生成しなくても良い。たとえば、起動信号生成回路15は、モータ起動信号が入力された後の、取得タイミング信号の2回目の出力タイミングや3回目の出力タイミングでコントローラ起動信号を生成しても良い。また、上述した形態において、PLC16は、コントローラ待機信号を生成しなくても良い。
【0080】
上述した形態において、第1信号は、取得タイミング信号の出力タイミングでオンになった後、次の取得タイミング信号の出力タイミングでオフになるオンオフ信号であっても良い。すなわち、第1信号の周期は、取得タイミング信号の周期の2倍の周期であっても良い。また、第1信号の周期は、取得タイミング信号の周期の3倍等の整数倍の周期であっても良い。
【0081】
上述した形態において、PC5は、合成処理後に、合成X線画像X1を上下方向で分割して複数の帯状のX線画像である帯状X線画像にする分割処理を実行するとともに、分割処理後に、帯状X線画像に基づく所定の演算を行ってCT画像を生成するCT画像生成処理を実行しても良い。同様に、PC5は、一列分X線画像P2に対して合成処理後に分割処理を行っても良いし、一列分X線画像P3に対して合成処理後に分割処理を行っても良い。分割処理は、上記の特許文献1に記載された分割処理と同様に行われる。
【0082】
また、上述した形態において、PC5は、エリアセンサ4から取り込んだ一列分X線画像を上下方向で複数に分割する(具体的には、複数枚のX線画像のそれぞれを上下方向で分割する)分割処理を実行するとともに、分割処理後に、上下方向において同じ位置にある分割後のX線画像であって被検査体2の回転方向の同じ角度で取得された複数枚のX線画像を左右方向で繋ぎ合わせて帯状のX線画像に合成する合成処理を被検査体2の回転方向の一定角度ごとに実行し、合成処理後に、上下方向において同じ位置にある360°分の帯状のX線画像に基づく所定の演算を行ってCT画像を生成するCT画像生成処理を実行しても良い。これらの一連の処理は、上記の特許文献1に記載された処理と同様に行われる。
【0083】
上述した形態において、エリアセンサ4の検出面4aは、上下方向および左右方向において仮想投影像VIより大きくなっていても良い。この場合には、たとえば、テーブル7に搭載された被検査体2を一定速度で1回転させるとともにエリアセンサ4で一定角度ごとに複数枚のX線画像を連続的に取得する動作を複数回行う。各動作間では、モータ10を一旦停止させてから、再度、起動させる。この動作をたとえば、10回行う場合には、各回で取得されたX線画像の中の、被検査体2に対するエリアセンサ4の相対回転方向における同じ角度で取得された10枚のX線画像を重ねわせて合成するとともに積算平均する合成処理を相対回転方向の一定角度ごとに実行する。
【0084】
この場合には、10枚のX線画像が重ねわせて合成されるとともに積算平均されるため、合成処理後のX線画像のノイズを低減することが可能になる。したがって、合成処理後の複数枚のX線画像に基づいて生成されるCT画像の精度を高めることが可能になる。また、この場合であっても、CT画像の生成に用いられるX線画像であって、合成処理で合成される10枚のX線画像のそれぞれが取得されるときの、被検査体2に対するエリアセンサ4の相対回転方向における被検査体2の角度のばらつきを抑制することが可能になるため、合成処理後のX線画像の精度を高めることが可能になる。
【0085】
上述した形態において、回転機構8は、X線発生器3およびエリアセンサ4を回転させても良い。また、上述した形態において、移動機構9は、上下方向および左右方向へ被検査体2を平行移動させても良い。さらに、上述した形態において、X線検出器4は、ラインセンサ(一次元X線検出器)であっても良い。また、上述した形態において、X線発生器3の光軸は、水平方向に対して傾いていても良い。
【符号の説明】
【0086】
1 X線検査装置
2 被検査体
3 X線発生器
4 エリアセンサ(X線検出器)
8 回転機構
10 モータ
12 制御部
15 起動信号生成回路
16 PLC(生成回路制御部)
17 モータドライバ
18 コントローラ
【要約】
【課題】CT画像の生成に用いられるX線画像であって、合成される複数枚のX線画像のそれぞれが取得されるときの、被検査体に対するX線検出器の相対回転方向における被検査体の角度のばらつきを抑制することが可能であり、かつ、X線画像の取得時間を短縮することが可能なX線検査装置を提供する。【解決手段】このX線検査装置では、X線検出器(4)は、モータ(10)が起動する前からX線画像の取得を開始して、周期的なX線画像の取得タイミング信号を出力し、生成回路制御部(16)は、取得タイミング信号から生成される第1信号に基づいてモータ起動信号を生成し、起動信号生成回路(15)は、モータ起動信号が入力された後の、取得タイミング信号の出力タイミングでコントローラ起動信号を生成してコントローラ(18)に対して出力する。CT画像は、モータ(10)の回転速度が一定速度になった後に取得された複数枚のX線画像に基づいて生成される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7