(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】有床義歯の製造方法、光造形用硬化性組成物、及び有床義歯製造用キット
(51)【国際特許分類】
A61C 13/10 20060101AFI20220707BHJP
A61C 13/01 20060101ALI20220707BHJP
A61C 13/15 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
A61C13/10
A61C13/01
A61C13/15
(21)【出願番号】P 2022508171
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2021007343
(87)【国際公開番号】W WO2021187056
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2020045974
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391003576
【氏名又は名称】株式会社トクヤマデンタル
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 昭子
(72)【発明者】
【氏名】山崎 達矢
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-521188(JP,A)
【文献】特表2012-505775(JP,A)
【文献】国際公開第2020/182969(WO,A1)
【文献】特開2008-146692(JP,A)
【文献】特開2011-201125(JP,A)
【文献】特開2012-227318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/00-13/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光造形のための第1の重合開始剤
及び該第1の重合開始剤とは異なる第2の重合開始剤を含む光造形用硬化性組成物を用い、3Dプリンターによ
る光造形によって
、人工歯配列凹部を有する義歯床であって、表面に、前記第2の重合開始剤を含む未重合部が存在する義歯床を作製し、
前記人工歯配列凹部内に人工歯を配列してから前記第2の重合開始剤を作用させて前記義歯床の表面に存在する
前記未重合部を重合させることにより
、接着剤を使用することなく前記人工歯と前記義歯床とを
直接接着することを特徴とする、有床義歯の製造方法。
【請求項2】
前記人工歯と前記義歯床とを嵌合させた状態で接着する請求項1記載の有床義歯の製造方法。
【請求項3】
前記第2の重合開始剤がラジカル重合開始剤である請求項
1又は2記載の有床義歯の製造方法。
【請求項4】
前記第2の重合開始剤が前記第1の重合開始剤の励起波長とは異なる励起波長を有する光重合開始剤である請求項
1又は2記載の有床義歯の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光造形3Dプリンターを用いた有床義歯の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有床義歯は患者の口腔形状に合わせて1つずつ手作業で作製されているため、作製のために多くの時間を必要とし、歯科医院、歯科技工所及び患者の負担が大きい。そのため、簡便な方法が望まれる。
【0003】
近年、CAD/CAMシステムを利用した義歯床および有床義歯の製造が提案されている。義歯床及び有床義歯の製造において、患者の口腔内3Dデータを取得し、CAD/CAMシステムを利用して義歯床及び有床義歯を作製することにより、作業の効率化が図られ、安定した品質の有床義歯を作製することが可能になるといったメリットがある。
【0004】
CAD/CAMシステムを利用して義歯床および有床義歯を作製する方法としては、種々の方法が開示されている。
【0005】
例えば、特許文献1はCAD/CAMシステムを利用して義歯床および有床義歯を設計し、ミリングブロックの切削加工により製造される方法が提案されている。
【0006】
また、特許文献2は、CAD/CAMシステムを利用して義歯床を製造し、義歯床に人工歯を歯科用複合レジンで接着して有床義歯を製造する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-155878号公報
【文献】特表2016-525150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の方法は、ミリングブロックを切削加工して製造する方法である。ミリングブロックは、出来るだけ多くの有床義歯形態に対応可能とするため大型でなければならない。また、多くの場合には、ミリングブロックから大量の材料を切削する必要がある。したがって、この方法では、除去される材料が無駄になるだけでなく、切削に用いるミリング工具の摩耗や切削加工に時間がかかるといった欠点がある。さらには、ミリングブロックは硬化体であることから、人工歯の接合には接着剤が必要であり、人工歯の接合にコストと手間がかかるといった欠点がある。
【0009】
また、特許文献2に記載の方法は、光造形3Dプリンターを用いた造形であり、まず義歯床と人工歯を各々造形する。義歯床の色調を着けられた光硬化系組成物からなる浴層で義歯床を造形し、人工歯色に着色された光硬化系組成物からなる浴層中で人工歯を造形する。造形した義歯床と人工歯をイソプロピルアルコールで洗浄した後に、歯科用接着剤を用いて義歯床と人工歯を接合することにより有床義歯を製造する。このように光造形によって有床義歯を製造する従来のプロセスでは、未硬化の樹脂を洗浄するプロセスが必要であり、かつ義歯床と人工歯の接合に接着剤が必要となるため、有床義歯の製造にコストと手間がかかるといった欠点がある。これは、事前に金型等で成形された従来の人工歯を用いた場合においても、造形した義歯床を洗浄する必要があり、義歯床と人工歯の接合には接着剤が必要であることから、同様の課題を有している。
【0010】
このように特許文献1および2に記載の方法では、義歯床と人工歯を接着剤を介して接着する必要があり、接着剤の塗布を作製者による作業で行うため、接着剤の塗布量が各人工歯においてばらつき易い。このため、これらの方法は、歯列の高さや位置にずれが生じ、かみ合わせが安定しないといった欠点を有する。
【0011】
したがって、有床義歯作製工程をより簡略化して短時間で作成可能且つかみ合わせの優れた有床義歯の作成方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねてきた。その結果、人工歯と光造形3Dプリンターにて光造形した義歯床とを接着する際に、該義歯床表面に存在する未重合の光造形用硬化性組成物からなる未重合部を重合させることにより接着すれば、有床義歯作製工程を簡略化でき短時間で作製可能となり、且つかみ合わせの優れた有床義歯とすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、人工歯と光造形3Dプリンターにて光造形した義歯床とを、該義歯床表面に存在する未重合の光造形用硬化性組成物からなる未重合部を重合させることにより接着することを特徴とする、有床義歯の製造方法である。
【0014】
本発明においては、人工歯と義歯床とを嵌合させた状態で接着することが好ましい。
【0015】
また、義歯床表面に存在する未重合の光造形用硬化性組成物からなる未重合部を、光造形のための第1の重合開始剤とは異なる接着のための第2の重合開始剤により重合させることが好ましく、第2の重合開始剤がラジカル重合開始剤であることがより好ましい。
【0016】
また、第2の重合開始剤として用いるラジカル重合開始剤が光造形のための第1の重合開始剤の励起波長とは異なる励起波長を有する光重合開始剤であることも好ましい。
【0017】
第二の本発明は、光造形のための第1の重合開始剤及び第1の重合開始剤とは異なる第2の重合開始剤を含有する光造形用硬化性組成物である。
【0018】
第三の本発明は、光造形のための第1の重合開始剤及び第2の重合開始剤とは異なる重合開始剤を含有する光造形用硬化性組成物、並びに人工歯からなる有床義歯製造用キットである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、有床義歯作製時間を短縮し、噛みあわせに優れた安定した品質の有床義歯を製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態に係る有床義歯の製造方法では、義歯床を、光造形3Dプリンターを用いた光造形にて製造する。一般的に、義歯床を光造形3Dプリンターで光造形した場合、光造形体の表面に未重合の光造形用硬化性組成物(以下、光造形材ともいう。)が残るため、これらを取り除くためにエタノールやイソプロピルアルコール等で洗浄を行う。本発明ではこの洗浄を敢えて行わずに、人工歯の配列を行い義歯床表面に残っている未重合の光造形材を有効利用して、義歯床と人工歯の接着を行う。この時、人工歯配列用の凹部分が形成された義歯床を形成することが好ましい。
【0021】
本実施形態において、「光造形」は、3Dプリンターを用いた三次元造形方法のうちの1種である。光造形の方式としては、SLA(Stereo Lithography Apparatus)方式、DLP(Digital Light Processing)方式、インクジェット方式などが挙げられる。本実施形態の光硬化性組成物は、SLA方式又はDLP方式の光造形に特に好適である。
【0022】
SLA方式としては、スポット状のレーザー光やLED光を光造形用硬化性組成に照射することにより立体造形物を得る方式が挙げられる。SLA方式によって義歯床等の歯科補綴物を作製する場合、例えば、後述する光造形用硬化性組成物を容器に貯留し、光造形用硬化性組成物の液面に所望のパターンが得られるようにスポット状のレーザー光やLED光を選択的に照射して光造形用硬化性組成物を硬化させ、所望の厚みの硬化層を造形テーブル上に形成し、次いで、造形テーブルを降下または上昇させ、硬化層の上に1層分の光造形用硬化性組成物を供給し、同様に硬化させ、連続した硬化層を得る積層操作を繰り返せばよい。これにより、歯科補綴物等を作製することができる。
【0023】
DLP方式としては、面状の光を光造形用硬化性組成物に照射することにより立体造形物を得る方式が挙げられる。DLP方式によって立体造形物を得る方法については、例えば、特許第5111880号公報及び特許第5235056号公報の記載を適宜参照することができる。DLP方式によって義歯床等の歯科補綴物を作製する場合、例えば、光源として高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプなどのレーザー光以外の光を発射するランプやLEDなどを用い、光源と光造形用硬化性組成物の造形面との間に、複数のデジタルマイクロミラーシャッターを面状に配置した面状描画マスクを配置し、前記面状描画マスクを介して光造形用硬化性組成物の造形面に光を照射して所定の形状パターンを有する硬化層を順次積層させればよい。これにより、義歯床等の歯科補綴物を作製することができる。
【0024】
インクジェット方式としては、インクジェットノズルから光造形用硬化性組成物の液滴を基材に連続的に吐出し、基材に付着した液滴に光を照射することにより立体造形物を得る方式が挙げられる。インクジェット方式によって義歯床等の歯科補綴物を作製する場合、例えば、インクジェットノズルおよび光源を備えるヘッドを平面内で走査させつつ、インクジェットノズルから光造形用硬化性組成物を基材に吐出し、かつ吐出された光造形用硬化性組成物に光を照射して硬化層を形成し、これらの操作を繰り返して、硬化層を順次積層させればよい。これにより、義歯床等の歯科補綴物を作製することができる。
【0025】
光造形3Dプリンターの光源は、後述する光造形用硬化性組成を硬化し得るものであれば公知のものが何ら制限なく利用出来る。光源が照射する光としては、例えば、遠赤外線、赤外線、可視光線、近紫外線、紫外線等が挙げられる。これらの中でも、硬化作業の容易性および効率性の観点から、近紫外線または紫外線であることが好ましい。具体的には、350nm~410nmの範囲に極大波長を有するレーザー光やLEDなどを用いることができる。
【0026】
(光造形用硬化性組成物)
本発明における光造形用硬化性組成物は、公知のものが何ら制限なく利用出来、一般的に光硬化性モノマー、光造形のための第1の重合開始剤、その他の成分等によって構成される。以下に各成分の具体例を示す。
【0027】
<光硬化性モノマー>
光硬化性モノマーとしては、光照射により発生したラジカルやイオンなどの作用により硬化または重合可能なモノマーが使用される。重合性官能基として、ラジカル重合性基、カチオン重合性基、ラジカル重合性及びカチオン重合性の両方の重合性を有する官能基を有する従来公知のモノマーが制限なく利用できる。例えば、ラジカル重合性基としては、(メタ)アクリル基、ビニルエステル基、スチリル基などが挙げられ、カチオン重合性基としては、ビニルエーテル基、エポキシ、オキセタン等が挙げられ、ラジカル重合性及びカチオン重合性の両方の重合性を有する官能基としてはスチリル基等が挙げられる。
【0028】
中でもラジカル重合性基を有するモノマーが好ましく、入手のしやすさ、高い透明性による審美性の得やすさや生体安全性の高さといった観点から、(メタ)アクリル基を有するモノマー(以下(メタ)アクリル系モノマーともいう。)が好適に利用できる。
【0029】
(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、下記(1)~(3)に記載の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。
【0030】
(1)単官能重合性単量体
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のメタクリレート、及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等の単官能の(メタ)アクリレート系モノマー。
【0031】
(2)二官能重合性単量体
(i)芳香族化合物系のもの
2,2-ビス(メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(3-メタクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロポキシフェニル]プロパン(以下、bis-GMAと略記する)、2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(以下、D-2.6Eと略記する)、2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2(4-メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)-2(4-メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2(4-メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)-2-(4-メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらメタクリレートに対応するアクリレートのような-OH基を有する(メタ)アクリレート系モノマーと、ジイソシアネートメチルベンゼン、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族基を有するジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト等。
【0032】
(ii)脂肪族化合物系のもの
エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート(以下、3Gと略記する)、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレートおよびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらのメタクリレートに対応するアクリレートのような-OH基を有する(メタ)アクリレート系モノマーと、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物との付加体から得られるジアダクト;1,2-ビス(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)エチル;ウレタンジメタクリレート、ジウレタンジメタクリレート等。
【0033】
(3)三官能重合性単量体以上
トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールメタントリメタクリレート等の三官能メタクリレート及びこれらのメタクリレートに対応する三官能アクリレート等;ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の四官能(メタ)アクリレート系モノマー;ジイソシアネートメチルベンゼン、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン-2,4-ジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物とグリシドールジメタクリレートとの付加体から得られるジアダクト等。
【0034】
カチオン重合性基を有するモノマーとしては、ビニルエーテル化合物;エポキシ化合物、オキセタン化合物、テトラヒドロフラン、オキセパン等の環状エーテル化合物;ビシクロオルトエステル、スピロオルトエステル等の双環状オルトエステル化合物;スピロオルトカーボネート、環状カーボネート、1,3,5-トリオキサン、1,3-ジオキソラン、1,3-ジオキセパン、4-メチル-1,3-ジオキセパン、1,3,6-トリオキサシクロオクタン等の環状アセタール化合物;2,6-ジオキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,7-ジオキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン、6,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン等の双環状アセタール化合物が挙げられるが、特に歯科用途を考慮した場合、入手が容易でかつ体積収縮が小さく、重合反応がはやい点において、とりわけオキセタン化合物およびエポキシ化合物が好適に使用される。
【0035】
オキセタン化合物としては、従来公知のものが制限なく利用できるが、具体的に例示すれば、トリメチレンオキサイド、3-メチル-3-オキセタニルメタノール、3-エチル-3-オキセタニルメタノール、3-エチル-3-フェノキシメチルオキセタン、3,3-ジエチルオキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシルオキシ)オキセタン等の1つのオキセタン環を有すもの;1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチルオキシ)ベンゼン、4,4'-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチルオキシ)ビフェニール、4,4'-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチルオキシメチル)ビフェニール、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)ジフェノエート、トリメチロールプロパントリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル等、が挙げられる。あるいは下記に示す化合物等のオキセタン環を2つ以上有す化合物も挙げられる。
【0036】
【0037】
特に得られる硬化体の物性の点から、単量体1分子中にオキセタン環を2つ以上有するものが好適に使用される。
【0038】
また、エポキシ化合物としては従来公知のものが制限なく利用できるが、具体的に例示すれば、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリジジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル、ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、1,2,7,8-ジエポキシオクタン、2,2-ビス[4-グリシジルオキシフェニル]プロパン、1,4-(3,4-エポキシシクロへキシルメトキシメチル)ベンゼン、ビス(4-グリシジルオキシフェニル)メタン、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3',4'-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルオキシラン、エチレングリコール-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、4-ビニルシクロヘキセンオキシド、リモネンモノオキシド、4-エチルシクロヘキセンオキシド、4-メチルオキシメチルシクロヘキセンオキシド、4-ベンジルオキシメチルシクロヘキセンオキシド、1,2,5,6-ジエポキシシクロオクタン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシラート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)メタン、1,4-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルオキシメチル)ベンゼン、1,4-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルオキシメチル)ビフェニル、メチルビス[2-(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル)エチル]フェニルシラン、ジメチルビス[(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル)メチル]シラン、メチル[(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル)メチル][2-(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル)エチル]シラン、1,4-フェニレンビス[ジメチル[2-(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル)エチル]]シラン、1,2-エチレンビス[ジメチル[2-(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル)エチル]]シラン、ジメチル[2-(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル)エチル]シラン、1,3-ビス[2-(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル)エチル]-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、2,5-ビシクロ[2.2.1]ヘプチレンビス{ジメチル[2-(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル)エチル]}シラン、1,6-へキシレンビス{ジメチル[2-(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル)エチル]}シラン、等が挙げられる。あるいは下記に示す化合物等も挙げられる。
【0039】
【0040】
中でもカチオン重合活性が高いことから、シクロヘキセンオキシド基等の脂環式エポキシ基を有するものが好ましい。また、機械的強度等の硬化体物性の観点から、該エポキシ基を2個以上、好適には2~8個有する化合物が特に好ましい。
【0041】
これら重合性単量体の中でも光造形に適した粘度に調製可能な点から、複数の種類のものを併用して用いるのが好ましい。特に、単官能のものと二官能あるいは三官能以上のものを組み合わせて用いる場合、該二官能あるいは三官能以上のものを多く配合することにより、得られる効果体の強度や耐久性などの機械的物性も良好なものとすることが出来るので好ましい。また、必要に応じて二官能および三官能以上モノマーは加熱処理してオリゴマー化したものを使用することが出来る。いずれの場合も過剰な添加により、粘度が上がり過ぎると光造形には不向きである。
【0042】
<光造形のための第1の重合開始剤>
光造形のための第1の重合開始剤としては、光重合開始剤を用いる。光重合開始剤は、光の作用により活性化して、光硬化性モノマーの重合を開始させる。本発明の有床義歯の製造方法では、光重合開始剤を含む光造形用硬化性組成物を用い、3Dプリンターにより有床義歯の形状を造形するが、本発明において光造形のための光重合開始剤とは、3Dプリンターによる光造形に利用される光重合開始剤である。光重合開始剤としては、例えば、光の作用によりラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤のほか、光で酸を発生する光酸発生剤(以下光カチオン重合開始剤ともいう。)が挙げられる。光重合開始剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
光ラジカル重合開始剤の具体例を示すと、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等のベンジルケタール類、ベンゾフェノン、アントラキノン、チオキサントン等のジアリールケトン類、ジアセチル、ベンジル、カンファーキノン、9,10-フェナントラキノン等のα-ジケトン類、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドなどのアシルホスフィンオキサイド類等が使用できる。
【0044】
上記光ラジカル重合開始剤は、光造形3Dプリンターの光源波長に合わせて任意に選択することが出来る。例えば、光源が405nmの光造形3Dプリンターを用いて造形する場合、400nm付近に吸収を持つアシルホスフィンオキサイド類が好ましく、その中でも活性が高いことから、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドなどのビスアシルホスフィンオキサイド類がより好ましい。
【0045】
光ラジカル重合開始剤の配合量は、特に限定されないが、重合速度や硬化体の機械的物性の観点から、光硬化性モノマー100質量部に対して、0.01~10質量部の範囲であるのが好ましい。特に0.05~5質量部であるのが好ましく、より好ましくは0.1~2質量部である。
【0046】
なお、光ラジカル重合開始剤には、しばしば還元性の化合物が添加されるが、その例としては、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチル、N-メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノベンズアルデヒドなどの第三級アミン類、2-メルカプトベンゾオキサゾール、1-デカンチオール、チオサルチル酸、チオ安息香酸などの含イオウ化合物、N-フェニルアラニンなどを挙げることができる。
【0047】
還元性の化合物の配合量は、光硬化性モノマー100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.05~5質量部、特に好ましくは0.1~2質量部である。
【0048】
本発明で用いられる光カチオン重合開始剤は光照射によりカチオン重合性基を有するモノマーに対する重合開始種を発生するものが用いられる。特に光照射によってブレンステッド酸又はルイス酸等を発生する光酸発生剤が好適に用いられる。
【0049】
そのような光カチオン重合開始剤として、ジアゾニウム塩系化合物、鉄-アレーン錯体塩系化合物、ジアリールヨードニウム塩系化合物、スルホニウム塩系化合物、ピリジニウム塩系化合物、スルホン酸エステル化合物、およびハロメチル置換-S-トリアジン有導体等が挙げられる。
【0050】
これらの中でも、ジアリールヨードニウム塩系化合物及びスルホニウム塩系化合物が、重合活性が特に高い点で優れている。ジアリールヨードニウム塩系化合物の具体例を例示すれば、ジフェニルヨードニウム、ビス(p-クロロフェニル)ヨードニウム、ジトリルヨードニウム、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム、p-イソプロピルフェニル-p-メチルフェニルヨードニウム、ビス(m-ニトロフェニル)ヨードニウム、p-tert-ブチルフェニルフェニルヨードニウム、p-メトキシフェニルフェニルヨードニウム、ビス(p-メトキシフェニル)ヨードニウム、p-オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウム、p-フェノキシフェニルフェニルヨードニウム等のカチオンと、クロリド、ブロミド、p-トルエンスルホナート、トリフルオロメタンスルホナート、テトラフルオロボレート、テトラキスペンタフルオロフェニルボレート、テトラキスペンタフルオロフェニルガレート、ヘキサフルオロフォスフェート、ヘキサフルオロアルセナート、ヘキサフルオロアンチモネート等のアニオンからなるジアリールヨードニウム塩系化合物が挙げられる。
【0051】
また、スルホニウム塩系化合物としては、ジメチルフェナシルスルホニウム、ジメチルベンジルスルホニウム、ジメチル-4-ヒドロキシフェニルスルホニウム、ジメチル-4-ヒドロキシナフチルスルホニウム、ジメチル-4,7-ジヒドロキシナフチルスルホニウム、ジメチル-4,8-ジヒドロキシナフチルスルホニウム、トリフェニルスルホニウム、p-トリルジフェニルスルホニウム、p-tert-ブチルフェニルジフェニルスルホニウム、ジフェニル-4-フェニルチオフェニルスルホニウム等のカチオンと、クロリド、ブロミド、p-トルエンスルホナート、トリフルオロメタンスルホナート、テトラフルオロボレート、テトラキスペンタフルオロフェニルボレート、テトラキスペンタフルオロフェニルガレート、ヘキサフルオロフォスフェート、ヘキサフルオロアルセナート、ヘキサフルオロアンチモネート等のアニオンとからなるスルホニウム塩系化合物が挙げられる。
【0052】
光カチオン重合開始剤の配合量は、光照射により重合を開始しうる量であれば特に制限されることはないが、適度な重合の進行速度と得られる硬化体の各種物性(例えば、耐候性や硬度)を両立させるために、前記した光硬化性モノマー100質量部に対し、好ましくは0.001~10質量部であり、より好ましくは0.01~5質量部である。
【0053】
その他、必要に応じて近紫外~可視域に吸収をもつ化合物を増感剤として、上記光酸発生剤に加えてさらに配合してもよい。このような増感剤として用いられる化合物は、例えばアクリジン系色素、ベンゾフラビン系色素、アントラセン、ペリレン等の縮合多環式芳香族化合物、フェノチアジン等が挙げられる。
【0054】
これら増感剤のなかでも、重合活性が良好な点で、縮合多環式芳香族化合物が好ましく、さらに、少なくとも1つの水素原子を有する飽和炭素原子が縮合多環式芳香族環と結合した構造を持つ縮合多環式芳香族化合物が好適である。
【0055】
このような少なくとも1つの水素原子を有する飽和炭素原子が縮合多環式芳香族環と結合した構造を持つ縮合多環式芳香族化合物を具体的に例示すると、1-メチルナフタレン、1-エチルナフタレン、1,4-ジメチルナフタレン、アセナフテン、1,2,3,4-テトラヒドロフェナントレン、1,2,3,4-テトラヒドロアントラセン、ベンゾ[f]フタラン、ベンゾ[g]クロマン、ベンゾ[g]イソクロマン、N-メチルベンゾ[f]インドリン、N-メチルベンゾ[f]イソインドリン、フェナレン、4,5-ジメチルフェナントレン、1,8-ジメチルフェナントレン、アセフェナントレン、1-メチルアントラセン、9-メチルアントラセン、9-エチルアントラセン、9-シクロヘキシルアントラセン、9,10-ジメチルアントラセン、9,10-ジエチルアントラセン、9,10-ジシクロヘキシルアントラセン、9-メトキシメチルアントラセン、9-(1-メトキシエチル)アントラセン、9-ヘキシルオキシメチルアントラセン、9,10-ジメトキシメチルアントラセン、9-ジメトキシメチルアントラセン、9-フェニルメチルアントラセン、9-(1-ナフチル)メチルアントラセン、9-ヒドロキシメチルアントラセン、9-(1-ヒドロキシエチル)アントラセン、9,10-ジヒドロキシメチルアントラン、9-アセトキシメチルアントラセン、9-(1-アセトキシエチル)アントラセン、9,10-ジアセトキシメチルアントラセン、9-ベンゾイルオキシメチルアントラセン、9,10-ジベンゾイルオキシメチルアントラセン、9-エチルチオメチルアントラセン、9-(1-エチルチオエチル)アントラセン、9,10-ビス(エチルチオメチル)アントラセン、9-メルカプトメチルアントラセン、9-(1-メルカプトエチル)アントラセン、9,10-ビス(メルカプトメチル)アントラセン、9-エチルチオメチル-10-メチルアントラセン、9-メチル-10-フェニルアントラセン、9-メチル-10-ビニルアントラセン、9-アリルアントラセン、9,10-ジアリルアントラセン、9-クロロメチルアントラセン、9-ブロモメチルアントラセン、9-ヨードメチルアントラセン、9-(1-クロロエチル)アントラセン、9-(1-ブロモエチル)アントラセン、9-(1-ヨードエチル)アントラセン、9,10-ジクロロメチルアントラセン、9,10-ジブロモメチルアントラセン、9,10-ジヨードメチルアントラセン、9-クロロ-10-メチルアントラセン、9-クロロ-10-エチルアントラセン,9-ブロモ-10-メチルアントラセン、9-ブロモ-10-エチルアントラセン、9-ヨード-10-メチルアントラセン、9-ヨード-10-エチルアントラセン、9-メチル-10-ジメチルアミノアントラセン、アセアンスレン、7,12-ジメチルベンズ(A)アントラセン、7,12-ジメトキシメチルベンズ(a)アントラセン、5,12-ジメチルナフタセン、コラントレン、3-メチルコラントレン、7-メチルベンゾ(A)ピレン、3,4,9,10-テトラメチルペリレン、3,4,9,10-テトラキス(ヒドロキシメチル)ペリレン、ビオランスレン、イソビオランスレン、5,12-ジメチルナフタセン、6,13-ジメチルペンタセン、8,13-ジメチルペンタフェン、5,16-ジメチルヘキサセン、9,14-ジメチルヘキサフェン等が挙げられる。
【0056】
また上記以外の縮合多環式芳香族化合物としては、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、ナフタセン、ベンズ[a]アントラセン、ピレン、ペリレン等が挙げられる。
【0057】
増感剤の添加量は、組み合わせる他の成分や重合性単量体の種類によって異なるが、前記した光カチオン重合開始剤1モルに対し、増感剤が0.001~20モルであることが好ましく、0.005~10モルであることがより好ましい。
【0058】
光造形のための第1の重合開始剤としての光重合開始剤は、3Dプリンターの光源に対して励起し触媒活性を発揮するものであればこれらの例に限定されるものではない。これらは単独でも用いられるし、2種以上を併用しても良い。
【0059】
<その他成分>
本発明では、光硬化性モノマーの粘度調整および義歯床に機械的強度を付与する目的で、その他成分として、フィラーを添加してもよい。フィラーとしては公知のものが特に制限はなく利用でき、無機フィラーや有機フィラー、有機無機複合フィラーなどが挙げられる。
【0060】
例えば無機フィラーとしては、石英、シリカ、アルミナ、シリカチタニア、シリカジルコニア、ランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス等の金属酸化物類を挙げることができる。
【0061】
上記無機フィラーは、ラジカル重合性単量体とのなじみを向上させ、また、機械的強度や耐水性を向上させる観点から、シランカップリング剤に代表される表面処理剤で表面処理されることが好ましい。
【0062】
前記表面処理の方法としては、公知の方法を挙げることができ、また、前記シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどを挙げることができる。なお、前記フィラーとしては、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0063】
無機フィラーの粒径は特に限定されるものではないが、平均粒子径が0.001~100μmであることが好ましく、0.01~10μmであるのがより好ましく、さらに、得られる硬化体の機械的強度の向上と研磨性の確保を勘案すると0.1~5μmであることが特に好ましい。
【0064】
有機フィラーとしては、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、高度に架橋したPMMAビーズ、ポリ(メタクリル酸メチル/エチル)、ポリ(メタクリル酸メチル/ブチル)、ゴム変性PMMA、架橋ポリアクリレート、熱可塑性及び架橋ポリウレタン、粉砕した本発明の重合性化合物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート及びポリエポキシドなどを挙げることができる。
【0065】
有機フィラーの粒径は特に限定されるものではないが、平均粒子径は0.1~200μmであることが好ましく、1~100μmであるのがより好ましく、さらに、得られる硬化体の機械的強度も勘案すると5~75μmであることが特に好ましい。
【0066】
また、有機無機複合フィラーとしては、前記した無機フィラーと、光硬化性モノマーとして前記したモノマーをあらかじめ複合化したもの等が挙げられる。有機無機複合フィラーの粒径は、特に限定されるものではないが、平均粒子径が0.1~200μmであることが好ましく、1~100μmであるのがより好ましく、さらに、得られる硬化体の機械的強度も勘案すると5~75μmであることが特に好ましい。
【0067】
なお、本発明において、フィラーの平均粒子径はレーザー回折・散乱法により測定したメジアン径である。具体的には、エタノール、水とエタノールの混合溶媒や界面活性剤を含む水等の、フィラーが良好に分散し、且つ有機フィラーや有機無機複合フィラーが溶解または膨潤しない分散媒を使用し、フラウンホーファー回折法により平均粒子径を測定する。
【0068】
フィラーの形状は、特に限定されず、球状、略球状、異形状若しくは不定形でもよいが、粘度調整のしやすさの観点から球状であることが好ましい。また、機械的強度を向上させる目的で細孔を有するフィラーを用いてもよい。
【0069】
これらフィラーの中でも、PMMAが光造形用硬化性組成物に良好な機械的特性を与える点で好ましく、流動性の調整のしやすさの観点からPMMAの分子量は約10,000~400,000g/molのものが好ましい。
【0070】
フィラーの配合は任意であり特に限定されるものではないが、その配合量は、光造形用硬化性組成物中のフィラー以外の成分の合計100質量部に対して、好ましくは0~300質量部、より好ましくは2~200質量部、特に好ましくは5~100質量部の範囲である。
【0071】
本発明において、光造形用硬化性組成物には、1つ以上の光安定剤を含んでいてもよい。具体的には特に制限はなく、例えばハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ジブチルヒドロキシトルエンなどを挙げることができる。
【0072】
また、審美性の観点から歯肉に近い色調に着色するために顔料または顔料の組み合わせを含む顔料組成物を任意選択で含んでいてもよい。顔料は3Dプリンターによる光造形を妨げず、変色しにくいものであれば特に限定されない。さらに、耐光性の観点から紫外線吸収剤を含んでいてもよい。
【0073】
<人工歯接着のための第2の重合開始剤>
本発明の有床義歯の製造方法では、光造形した義歯床と人工歯とを、該義歯床表面に存在する未重合の光造形用硬化性組成物からなる未重合部を重合させることにより接着するために、前述の光造形のための第1の重合開始剤以外の第2の重合開始剤がさらに用いられてもよい。特に、光造形のための第1の重合開始剤とは異なる第2の重合開始剤が用いられることで、義歯床と後述する人工歯との接着をより強固にすることができる。このような第2の重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤として熱重合開始剤や光重合開始剤等がある。
【0074】
熱重合開始剤としては、有機過酸化物、無機過酸化物、アゾ化合物類が挙げられる。
【0075】
有機過酸化物の具体例としては、ケトンパーオキサイドとしては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド及びシクロヘキサノンパーオキサイド等が挙げられる。ハイドロパーオキサイドとしては、例えば、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド及び1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。ジアシルパーオキサイドとしては、例えば、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド及びラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。ジアルキルパーオキサイドとしては、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン及び2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3-ヘキシン等が挙げられる。パーオキシケタールとしては、例えば、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン及び4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレリックアシッド-n-ブチル等が挙げられる。パーオキシエステルとしては、例えば、α-クミルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、2,2,4-トリメチルペンチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート及びt-ブチルパーオキシバレリックアシッド等が挙げられる。パーオキシジカーボネートとしては、例えば、ジ-3-メトキシパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカーボネート及びジアリルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0076】
また、無機過酸化物としてはペルオキソ二硫酸塩、アルカリ金属の過酸化物、アルカリ土類金属の過酸化物、遷移金属の過酸化物等の公知の無機過酸化物を適用することができる。前記ペルオキソ二硫酸塩としては、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アルミニウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等が挙げられる。前記アルカリ金属の過酸化物としては、過酸化リチウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム等が挙げられる。前記アルカリ土類金属の過酸化物としては、過酸化マグネシウム、過酸化カルシウム、過酸化バリウム等が挙げられる。前記遷移金属の過酸化物としては、過酸化亜鉛、過酸化カドミウム、過酸化水銀等が挙げられる。
【0077】
またアゾ化合物としては、例えば、2,2-アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、4,4-アゾビス-4-シアノバレリック酸、1,1-アゾビス-1-シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル-2,2-アゾビスイソブチラート、2,2-アゾビス-(2-アミノプロパン)ジヒドロクロライド等が挙げられる。
【0078】
第2の重合開始剤である熱重合開始剤は、光造形用硬化性組成物に予め配合されてもよい。つまり、光造形用硬化性組成物は、光造形のための第1の重合開始剤及び第1の重合開始剤とは異なる第2の重合開始剤である熱重合開始剤を含有する構成とされていてもよい。予め配合する場合、上記熱重合開始剤のなかでも光造形用硬化性組成物の安定性および重合活性の観点から、アゾ化合物類が好ましく、中でも1,1-アゾビス-1-シクロヘキサンカルボニトリルがより好ましい。
【0079】
また、熱重合開始剤は光造形硬化性組成物の保存安定性の点から、光造形によって得られた義歯床表面の未重合部に後から添加しても良い。後から添加する方法は特に制限されないが、人工歯表面に塗布・付着させ、該人工歯を未重合部に接触させることで未重合部に溶解させる方法が好ましい。後から添加する場合、上記熱重合開始剤のなかでも、有機過酸化物が好ましく、中でもジアシルパーオキサイドが好ましい。中でも反応性および溶解性の点からベンゾイルパーオキサイドがより好ましく用いられる。
【0080】
熱重合開始剤の使用量は、光硬化性モノマー100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましい。
【0081】
これら熱重合開始剤を活性化し、義歯床と人工歯の接着をより強固なものとするためには、加熱しても良い。加熱温度、加熱時間は、作成される有床義歯の性能が損なわれない範囲であれば特に問題はないが、熱重合開始剤の半減期によって決定すればよい。より具体的には熱重合開始剤の半減期が1時間以下となる温度で1時間加熱すればよい。加熱方法は公知の方法が特に制限なく利用出来るが、具体例として、乾燥機、真空乾燥機、送風乾燥器、インキュベーター、イナードオーブン等を用いる事ができる。
【0082】
また、上記有機過酸化物は、重合促進剤と組み合わせることで、加熱温度を下げられるか、常温で活性化することができる。
【0083】
重合促進剤として具体的には、アミン類、スルフィン酸及びその塩、銅化合物、スズ化合物等が挙げられる。
【0084】
重合促進剤として用いるアミン類は、脂肪族アミン及び芳香族アミンに分けられる。脂肪族アミンとしては、例えば、n-ブチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-オクチルアミン等の第一級脂肪族アミン;ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、N-メチルエタノールアミン等の第二級脂肪族アミン;N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-n-ブチルジエタノールアミン、N-ラウリルジエタノールアミン、2一(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N-メチルジエタノールアミンジ(メタ)アクリレート、N-エチルジエタノールアミンジ(メタ)アクリレート、トリエタノールアミンモノ(メタ)アクリレート、トリエタノールアミンジ(メタ)アクリレート、トリエタノールアミントリ(メタ)アクリレート、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の第三級脂肪族アミン等が挙げられる。
【0085】
また、芳香族アミンとしては、例えば、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジメチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,4-ジメチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-エチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-イソプロピルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-t-ブチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジイソプロピルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジ-t-ブチルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-m-トルイジン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-3,4-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-4-エチルアニリン、N,N-ジメチル-4-イソプロピルアニリン、N,N-ジメチル-4-t-ブチルアニリン、N,N-ジメチル-3,5-ジ-t-ブチルアニリン、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸メチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸n-ブトキシエチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-ジメチルアミノ安息香酸ブチル等が挙げられる。これらの中でも、組成物に優れた硬化性を付与できる観点から、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸n-ブトキシエチル及び4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾフェノンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく用いられる。
【0086】
重合促進剤として用いられるスルフィン酸及びその塩としては、例えば、p-トルエンスルフィン酸、p-トルエンスルフィン酸ナトリウム、p-トルエンスルフィン酸カリウム、p-トルエンスルフィン酸リチウム、p-トルエンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウム等が挙げられ、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p-トルエンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウムが好ましい。
【0087】
重合促進剤として用いられる銅化合物としては、例えば、アセチルアセトン銅、酢酸第2銅、オレイン酸銅、塩化第2銅、臭化第2銅等が好適に用いられる。
【0088】
重合促進剤として用いられるスズ化合物としては、例えば、ジ-n-ブチル錫ジマレート、ジーn一オクチル錫ジマレート、ジ-n-オクチル錫ジラウレート、ジ-n-ブチル錫ジラウレート等が挙げられる。中でも好適なスズ化合物は、ジ-n-オクチル錫ジラウレート及びジ-n-ブチル錫ジラウレートである。
【0089】
これら重合促進剤の中でも反応性及び保存安定性の観点から、第三級芳香族アミンが好ましく、その中でも、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジンが最も好ましい。また、これら重合促進剤は、必要に応じて2種類以上用いてよい
これら重合促進剤の配合方法は特に制限されないが、予め光造形樹脂に配合しておくことが好ましい。予め光造形樹脂に配合しておくことで、作成した義歯床の未重合部に残留し、人工歯表面の有機過酸化物が重合促進剤と接触することで人工歯と義歯床を接着できる。
【0090】
重合促進剤の配合量は光硬化性モノマー100質量部に対して、0.1~1質量部が好ましい。
【0091】
第2の重合開始剤として光重合開始剤を用いても良い。このような光重合開始剤としては光造形のための光重合開始剤として挙げたものを用いることができ、光造形のための光重合開始剤として用いるものと異なるものを選択すればよい。具体的には光造形のための第1の重合開始剤とは異なる波長の光によって励起し、重合を開始できるものである。特に光造形のための第1の重合開始剤の重合開始に有効な吸収波長の上限よりも30nm以上長い重合開始に有効な吸収波長の下限を有するものが好ましい。光造形のための第1の重合開始剤の励起波長よりも長い励起波長を有するものを第2の重合開始剤として利用することで波長を限定したLEDライトを使用することにより、短時間かつより強固に義歯床と人工歯を接着することができる。
【0092】
このような光重合開始剤の具体例を示すと、光造形のための光重合開始剤がビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドの場合、第2の重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤がαジケトン、還元性の化合物が第三級アミンの組み合わせが好ましく、カンファーキノンと芳香族第三級アミンの組み合わせがより好ましい。具体的にはカンファーキノンと4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチルの組み合わせがより好ましい。第2の重合開始剤である光重合開始剤の配合方法は特に制限されていないが、予め光造形用硬化性組成物に配合することがより好ましい。つまり、光造形用硬化性組成物は、光造形のための第1の重合開始剤及び第1の重合開始剤とは異なる第2の重合開始剤である光重合開始剤を含有する構成とすることがより好ましい。
【0093】
これら第2の重合開始剤としての光重合開始剤及び還元性の化合物の配合量は、上記光造形のための第1の重合開始剤の場合と同様である。第2の重合開始剤がカンファーキノンと4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチルとの組み合わせの場合、その配合量は光硬化性モノマー100質量部に対して、カンファーキノン0.1~1質量部、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸メチル0.1~1質量部の範囲であることが好ましい。
【0094】
本発明において光造形用硬化性組成物は、光造形による義歯床などの歯科補綴物の作製に対する適性の観点から、E型粘度計を用いて測定された、25℃、50rpmにおける粘度を光造形の方式に応じて適宜調整してもよい。
【0095】
例えば、SLA方式により義歯床などの歯科補綴物を作製する場合、前記粘度は、50mPa・s~1500mPa・sであることが好ましく、50mPa・s~1000mPa・sであることがより好ましい。DLP方式により義歯床などの歯科補綴物を作製する場合、前記粘度は、50mPa・s~500mPa・sであることが好ましく、50mPa・s~250mPa・sであることがより好ましい。インクジェット方式により義歯床などの歯科補綴物を作製する場合、前記粘度は、20mPa・s~500mPa・sであることが好ましく、20mPa・s~100mPa・sであることがより好ましい。
【0096】
<人工歯>
人工歯としては、アクリル系樹脂性のレジン歯、及び硬質レジン歯などが挙げられ、充填材等を含有していてもよい。人工歯は市販のものを用いることができるし、CAD/CAMシステムを用いて作成された形状データに基づいて、光造形法、粉末焼結積層法、熱溶解積層法などの3次元造形やNC加工(切削加工)により作製したものを用いることができる。例えば、光造形法により人工歯を作製する場合には、歯冠色に着色した前述の光造形用硬化性組成物を用いることができる。また、人工歯は、1歯ずつのものでも良いし、2歯以上が連結した連結人工歯であってもよい。
【0097】
また、人工歯は義歯床と嵌合する形状を持っていてもよい。人工歯と義歯床とを嵌合させた状態で接着することにより、義歯床と人工歯の接着を強固にするだけでなく、人工歯を正しい位置に確実に配列することが可能になる。嵌合する形状とは、義歯床の人工歯配列部、好ましくは凹形状となった配列部分と人工歯基部がスナップフィット形状になっており、材料の弾性を利用することで、機械的に脱落を防ぐ形状となっている。スナップフィットのロック形状としては、カンチレバーロック、プラナーロック、トラップロック、トーショナルロック、アニュラーロックなどを用いることができる。アニュラーロックは、キャッチとエッジが円筒状に連なった形状であり、人工歯と義歯床の篏合形状として好適である。例えば、人工歯側面に円筒状に連なるうね(エッジ)を有する人工歯を用い、義歯床の人工歯配列凹部側面に人工歯側面のエッジと対となる円筒状の凹み形状(キャッチ)を付与し、人工歯のエッジと義歯床のキャッチの篏合により、義歯床に対して人工歯を正しい位置に工程することができる。
【0098】
<義歯床>
本発明において、義歯床は、全部床義歯(いわゆる総入れ歯)用の義歯床であってもよいし、局部床義歯(いわゆる部分入れ歯)用の義歯床であってもよい。また、義歯床は、上顎用義歯の義歯床であってもよいし、下顎用義歯の義歯床であってもよいし、上顎用義歯床と下顎用義歯床とのセットであってもよい。
【0099】
本発明において、義歯床の製造方法としては、CAD/CAMシステムにより義歯床を作製する公知の方法であってもよく、例えば、人工歯の三次元形状を示す人工歯形状データを取得する工程と、人工歯形状データを用いて有床義歯の三次元モデルを作成する工程と、有床義歯の三次元モデルから人工歯形状データに対応する形状部分を削除し人工歯配列凹部を付与することにより、義歯床の三次元形状を示す義歯床形状データを作成する工程と、義歯床形状データに基づいて義歯床を製作する工程と、を含んでいればよい。義歯床形状データを作成する工程において、人工歯に付与された形状と対となるスナップフィット形状を義歯床の人工歯配列凹部に付与してもよい。
【0100】
義歯床を製作する工程においては、義歯床形状データが入力された三次元プリンターを用いて義歯床を製作する。本工程において使用し得る三次元プリンターは、SLA方式、DLP方式、インクジェット方式などの光造形を採用することができる。
【0101】
従来の光造形3Dプリンターを用いた造形では、3Dプリンターによる造形後に、イソプロピルアルコール等の溶媒を用いて洗浄を行い、未重合のモノマーを除去するが、本発明においては、当該洗浄を行わないことにより、光造形で得られた造形物の表面に存在する未重合の光造形用硬化性組成物を利用して人工歯の接着を行うことができる。
【0102】
<義歯床と人工歯の接着工程>
本発明の有床義歯の製造方法においては、光造形した義歯床と人工歯とを義歯床表面に存在する未重合の光造形用硬化性組成物からなる未重合部を重合させることにより接着する工程を含む。この場合、光造形した後の義歯床は洗浄せずにそのまま人工歯を配列し、その後、光造形用硬化性組成物に対応した波長の光を照射することによって、未重合の光造形用硬化性組成物を重合させて人工歯を義歯床に接着することが出来る。さらには、第2の重合開始剤を光造形用硬化性組成物に存在させておくことにより、未重合の光造形用硬化性組成物を第2の重合開始剤により重合させることができ、人工歯の接着をより強固にすることが可能になる。具体的な接着工程は、第2の重合開始剤の配合の有無、第2の重合開始剤の種類によって以下のように分けられる。
【0103】
[1]第2の重合開始剤を用いない場合
光造形用光硬化性組成物を用いて義歯床を光造形3Dプリンターで作製する。得られた義歯床は装置から取り出した後、洗浄せずに未重合の光造形用硬化性組成物が義歯床表面に存在している状態で人工歯の配列を行う。次に、光造形用光硬化性組成物中の光造形のための第1の重合開始剤に対応した波長の光を照射することが可能な照射器を用いて、義歯床に光照射し義歯床と人工歯の接着を行う。つまり、人工歯接着のための重合開始剤として、光造形のための第1の重合開始剤を用いる。
【0104】
[2]第2の重合開始剤を用いる場合
第2の重合開始剤としては、第1の重合開始剤とは異なる光重合開始剤を用いることが好ましい。光造形とは異なる励起波長にて重合開始する光重合開始剤を含むアクリル系光硬化性樹脂を用いて、義歯床を光造形3Dプリンターで作製する。得られた義歯床は装置から取り出した後、洗浄せずに人工歯の配列を行う。次に、第2の重合開始剤としての光重合開始剤に対応した光波長を照射することが可能な照射器を用いて、義歯床に光照射し義歯床と人工歯の接着を行う。
【0105】
具体例としては、例えば光源が405nmの光造形プリンターによって重合硬化可能な光造形のための光重合開始剤としてビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(重合開始に有効な吸収波長:紫外~420nm)など含む他に、405nmの光照射により重合活性を実質的に生じない第2の重合開始剤としての光重合開始剤としてカンファーキノン(重合開始に有効な吸収波長:450~490nm)などを含む光造形用硬化性組成物を用意する。次いで用意した光造形用硬化性組成物を用い、405nmの光源を有する光造形3Dプリンターによる義歯床の造形を行う。得られた義歯床は装置から取り出した後、洗浄せずに未重合の光造形用硬化性組成物が義歯床表面に存在している状態で人工歯の配列を行う。次いで、光造形用光硬化性組成物中のその他の光重合開始剤であるカンファーキノンによる重合を行うために470nmの波長の光を照射することが可能な光照射器を用い、光照射を行うことで義歯床と人工歯の接着を行う。
【0106】
光造形のための第1の重合開始剤としての光重合開始剤のほかに、光造形の際に重合活性を生じない第2の重合開始剤としての光重合開始剤を含むことにより、人工歯接着の際にその他の光重合開始剤に対応する光照射を行うことで高い重合活性が得られ、義歯床と人工歯をより強固に接着することができる。
【実施例】
【0107】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。用いた材料を以下に示す。
【0108】
<化合物>
光硬化性モノマー;
メチルメタクリレート、
ウレタンジメタクリレート、
2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(以下、D-2.6Eと略記する)、
トリメチロールプロパントリメタクリレート。
光重合開始剤(重合開始に有効な吸収波長);
ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド (紫外~420nm)
カンファーキノン (450~490nm)
還元性の化合物;
4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチル
フィラー;
PMMA(分子量100,000~400,000):根上工業社製、D250ML、平均粒子径36μm
【0109】
<人工歯>
アクリル系樹脂性の人工歯;
市販人工歯: ニューエース前歯及びミリオン臼歯(山八歯材工業社製)
カスタム人工歯: ニューエース前歯及びミリオン臼歯形状を基に人工歯側面周囲を連なる高さ1mmの凸形状(スナップフィットのためのエッジ構造)を付与したカスタム人工歯
カスタム人工歯は、モデルスキャナ(デンタルウィングス社製、3シリーズ)を用いニューエース前歯及びミリオン臼歯の3次元データを取得し、得られた3次元データの人工歯側面の人工歯基底面から1mmの位置を連なるように高さ1mmの凸形状を付与することでカスタム人工歯の3次元データを作成した。PMMA製のレジンディスク(山八歯材工業社製、製品名レジンディスク)を切削加工機DWX-50(ローランド ディージー社製)にセットし、カスタム人工歯の3次元データに基づいてレジンディスクを切削加工し、エッジを有するカスタム人工歯を作製した。
【0110】
<有床義歯の設計および義歯床の3次元データ作成方法>
上顎有床義歯を作製するための上顎有床義歯の設計および上顎義歯床の3次元データは、以下の通り作成した。
【0111】
上顎無歯顎模型と対合する下顎模型(14本の歯牙を有する)を用意し、モデルスキャナ(デンタルウィングス社製、3シリーズ)を用い、上顎無歯顎模型と下顎模型の3次元データを取得した。また、モデルスキャナを用い、使用する人工歯(前歯及び臼歯、合計14歯)の3次元データを取得した。得られた上顎無歯顎模型の3次元データに対して、14歯の人工歯の3次元データを理想的な位置に配置した後に、下顎模型の3次元データと全ての人工歯がかみ合うように上顎無歯顎模型に配置した人工歯データの位置を調整し、無歯顎粘膜面に合わせて義歯床形状を付与し、有床義歯(総義歯)の3次元データを作成した。最後に、有床義歯(総義歯)の3次元データから人工歯の形状データを削除し、人工歯配列凹部を有する上顎義歯床の3次元データを作成した。
【0112】
評価方法を以下に示す。
【0113】
<有床義歯作製時間の評価>
義歯床作製時間、洗浄工程時間、人工歯接着又は作製時間の合計を有床義歯作製時間とし、その長さを比較した。
【0114】
(有床義歯床作製時間)
光造形又は切削加工により義歯床を造形する際に、3Dプリンター又は切削加工機が実際に駆動した時間を義歯床作製時間とした。
【0115】
(洗浄工程時間)
洗浄作業に要した時間を洗浄工程時間とした。洗浄工程が無い場合は、無とした。
【0116】
(人工歯接着又は作製時間)
造形した義歯床に対して、接着剤の塗布(必要な場合のみ)、人工歯の配置、人工歯接着の為の重合作業、又は義歯床上への人工歯の光造形に要した時間、を人工歯接着又は作製時間とした。
【0117】
<有床義歯の噛みあわせ評価>
有床義歯の噛みあわせは、有床義歯(上顎総義歯)と下顎模型の噛みあわせを目視で観察し、下記の基準で評価した。
A: 非常に良い。上顎総義歯のすべての人工歯が咬合接触している。
B: 良い。上顎総義歯の8歯以上の人工歯が咬合接触しており、がたつきが生じない。
C: 一部がたつきがある。上顎総義歯の4~7歯が咬合接触しているおり、僅かにがたつきが生じる。
D: がたつきが多い。上顎総義歯の3歯以下が咬合接触しており、2か所の咬合接触を支点にがたつきを生じる。
【0118】
<人工歯と義歯床の接着性評価>
実施例記載の方法で接着評価用の試験片を作製し、接着性の評価を行った。
【0119】
接着性の評価は、次の方法にて行った。あらかじめ有床義歯(上顎総義歯)の右側中切歯の中央に穴をあけておき、上記で得られた試験片の歯にS字フックをつけ、10Kgの重りをかけ、義歯床を手で引張上げた時の接着度合いを下記の基準で評価を行った。
A: 30秒以上引っ張っても取れない。
B: 30秒引っ張ると取れる。
C: 人工歯がすぐに脱離した。
【0120】
(実施例1)
有床義歯として、上顎有床義歯を作製した。
【0121】
まず、表1記載の光造形用光硬化性組成物を用いて、光造形3Dプリンター(Formlabs社 Form2 照射波長405nm)にて、前記の有床義歯の設計および義歯床の3次元データ作成方法によって市販人工歯に合わせて設計し得られた上顎義歯床データの光造形を行い、人工歯配列用の凹形状を持つ上顎義歯床を作製した。その後、得られた義歯床は洗浄をせず、市販人工歯を凹部分に配列し、40℃のお湯に浸漬させた状態で、歯科技工用重合装置(モリタαライトV 波長400~408nm、465~475nm)で3分間光照射し、人工歯と義歯床を接着し、有床義歯の作製を行った。その後、有床義歯作製時間の評価および有床義歯の噛み合わせ評価を行った。
【0122】
また、同様に光造形3Dプリンター(Formlabs社 Form2 照射波長405nm)にて縦30mm×横30mm×高さ10mmで市販人工歯の上顎右側中切歯を配列できる凹形状を持つ義歯床を造形した。その後、得られた義歯床は洗浄をせず、市販人工歯を凹部分に配列し、40℃のお湯に浸漬させた状態で、歯科技工用重合装置(モリタαライトV 波長400~408nm、465~475nm)で3分間光照射し、人工歯と義歯床を接着し、試験片の作製を行った。その後、接着性の評価を行った。
【0123】
評価結果を表2に示す。
【0124】
(実施例2)
表1記載の光造形用光硬化性組成物を用いて、光造形3Dプリンター(Formlabs社 Form2 照射波長405nm)にて前記の有床義歯の設計および義歯床の3次元データ作成方法によってスナップフィットのためのエッジ構造を有するカスタム人工歯に合わせて設計し得られた上顎義歯床データの光造形を行い、人工歯配列用の凹形状に人工歯に付与されたエッジ構造に対応するキャッチ構造を持つ上顎義歯床を作製した。その後、得られた義歯床は洗浄をせず、上記カスタム人工歯を凹部分に嵌め込むように配列し、40℃のお湯に浸漬させた状態で、歯科技工用重合装置(モリタαライトV 波長400~408nm、465~475nm)で3分間光照射し、人工歯と義歯床を接着し有床義歯の作製を行った。その後、有床義歯作製時間の評価および有床義歯の噛み合わせ評価を行った。
【0125】
また、光造形3Dプリンター(Formlabs社 Form2 照射波長405nm)にて縦30mm×横30mm×高さ10mmで上顎右側中切歯を配列できる凹形状を持つ義歯床を造形した。この時、凹形状は用いるカスタム人工歯のスナップフィットのためのエッジ構造に対応するキャッチ構造を付与するように3次元データを作成し、造形した。その後、得られた義歯床は洗浄をせず、カスタム人工歯を凹部分に配列し、40℃のお湯に浸漬させた状態で、歯科技工用重合装置(モリタαライトV 波長400~408nm、465~475nm)で3分間光照射し、人工歯と義歯床を接着し、試験片の作製を行った。その後、接着性の評価を行った。
【0126】
評価結果を表2に示す。
【0127】
(実施例3)
表1記載の光造形用光硬化性組成物を用いて、光造形3Dプリンター(Formlabs社 Form2 照射波長405nm)にて、前記の有床義歯の設計および義歯床の3次元データ作成方法によって市販人工歯に合わせて設計し得られた上顎義歯床データの光造形を行い、人工歯配列用の凹形状を持つ上顎義歯床を作製した。その後、得られた義歯床は洗浄をせず、市販人工歯を凹部分に配列し、40℃のお湯に浸漬させた状態で、歯科技工用重合装置(モリタαライトV 波長400~408nm、465~475nm)で3分間光照射し、人工歯と義歯床を接着し、有床義歯の作製を行った。その後、有床義歯作製時間の評価および有床義歯の噛み合わせ評価を行った。
【0128】
また、同様に光造形3Dプリンター(Formlabs社 Form2 照射波長405nm)にて縦30mm×横30mm×高さ10mmで市販人工歯の上顎右側中切歯を配列できる凹形状を持つ義歯床を造形した。その後、得られた義歯床は洗浄をせず、市販人工歯を凹部分に配列し、40℃のお湯に浸漬させた状態で、歯科技工用重合装置(モリタαライトV 波長400~408nm、465~475nm)で3分間光照射し、人工歯と義歯床を接着し、試験片の作製を行った。その後、接着性の評価を行った。その後、接着性の評価を行った。
【0129】
評価結果を表2に示す。
【0130】
(比較例1)
アクリル系樹脂製の義歯床切削加工用レジンディスクであるイボベース(イボクラール社製)を切削加工機(ローランド社 DWX-50)に取り付け、前記の有床義歯の設計および義歯床の3次元データ作成方法によって市販人工歯に合わせて設計し得られた上顎義歯床データを用いて、切削加工により人工歯配列用の凹形状を持つ上顎義歯床を作製した。その後、仮接着剤として歯科用複合レジンである株式会社松風製のビューティフルIIを各凹部に少量(0.1~0.3g)築盛した後、市販人工歯を、仮接着剤が築盛された凹部に配列した後、可視光照射器(光源波長470nm)で30秒照射し、仮接着剤を硬化させ、上顎義歯床に市販人工歯を仮接着させた。次に、アクリル系レジンとしてヘレウスクルツァー社製パラエクスプレスウルトラ(化学重合型義歯床用レジン)を義歯床と人工歯の隙間に流し込み重合させて、人工歯と義歯床を接着し有床義歯の作製を行った。その後、有床義歯作製時間の評価および有床義歯の噛み合わせ評価を行った。
【0131】
また同様に、切削加工機(ローランド社 DWX-50)を用いて縦30mm×横30mm×高さ10mmで市販人工歯の上顎右側中切歯を配列できる凹形状を持つ義歯床を作製した。その後、仮接着剤として歯科用複合レジンである株式会社松風製のビューティフルIIを凹部に少量(0.1~0.3g)築盛した後、市販人工歯を、仮接着剤が築盛された凹部に配列した後、可視光照射器(光源波長470nm)で30秒照射し、仮接着剤を硬化させ、義歯床に仮接着させた。次に、アクリル系レジンとしてヘレウスクルツァー社製パラエクスプレスウルトラ(化学重合型義歯床用レジン)を義歯床と人工歯の隙間に流し込み重合させて、人工歯と義歯床を接着し、試験片の作製を行った。その後、接着性の評価を行った。
【0132】
評価結果を表2に示す。
【0133】
(比較例2)
表1記載の光造形用光硬化性組成物を用いて、光造形3Dプリンター(Formlabs社 Form2 照射波長405nm)にて、前記の有床義歯の設計および義歯床の3次元データ作成方法によって市販人工歯に合わせて設計し得られた上顎義歯床データの光造形を行い、人工歯配列用の凹形状を持つ上顎義歯床を作製した。その後、得られた義歯床をイソプロピルアルコールの洗浄浴につけ、2回洗浄し、乾燥を行った。その後、仮接着剤として歯科用複合レジンである株式会社松風製のビューティフルIIを各凹部に少量(0.1~0.3g)築盛した後、市販人工歯を、仮接着剤が築盛された凹部に配列した後、可視光照射器(光源波長470nm)で30秒照射し、仮接着剤を硬化させ、義歯床に仮接着させた。次に、アクリル系レジンとしてヘレウスクルツァー社製パラエクスプレスウルトラ(化学重合型義歯床用レジン)を義歯床と人工歯の隙間に流し込み重合させて、人工歯と義歯床を接着し有床義歯の作製を行った。その後、有床義歯作製時間の評価および有床義歯の噛み合わせ評価を行った。
【0134】
また同様に、光造形3Dプリンター(Formlabs社 Form2 照射波長405nm)にて縦30mm×横30mm×高さ10mmで市販人工歯の上顎右側中切歯を配列できる凹形状を持つ義歯床を造形した。その後、イソプロピルアルコールの洗浄浴につけ、2回洗浄し、乾燥を行った。その後、仮接着剤として歯科用複合レジンである株式会社松風製のビューティフルII各凹部に少量(0.1~0.3g)築盛した後、市販人工歯を、仮接着剤が築盛された凹部に配列した後、可視光照射器(光源波長470nm)で30秒照射し、仮接着剤を硬化させ、義歯床に仮接着させた。次に、アクリル系レジンとしてヘレウスクルツァー社製パラエクスプレスウルトラ(化学重合型義歯床用レジン)を義歯床と人工歯の隙間に流し込み重合させて、人工歯と義歯床を接着し、試験片の作製を行った。その後、接着性の評価を行った。
【0135】
評価結果を表2に示す。
【0136】
(比較例3)
表1記載の光造形用光硬化性組成物を用いて、光造形3Dプリンター(Formlabs社 Form2 照射波長405nm)にて、前記の有床義歯の設計および義歯床の3次元データ作成方法によって市販人工歯に合わせて設計し得られた上顎義歯床データの光造形を行い、人工歯配列用の凹形状を持つ上顎義歯床を作製した。得られた上顎義歯床をイソプロピルアルコールの洗浄浴につけ、2回洗浄し、乾燥を行った。その後、市販人工歯を凹部分に配列し、40℃のお湯に浸漬させた状態で、歯科技工用重合装置(モリタαライトV 波長400~408nm、465~475nm)で3分間光照射し、有床義歯の作製を行った。その後、有床義歯作製時間の評価および有床義歯の噛み合わせ評価を行った。
【0137】
また同様に、光造形3Dプリンター(Formlabs社 Form2 照射波長405nm)にて縦30mm×横30mm×高さ10mmで市販人工歯の上顎右側中切歯を配列できる凹形状を持つ義歯床を造形した。その後、得られた義歯床はイソプロピルアルコールの洗浄浴につけ、2回洗浄し、乾燥を行った。その後、市販人工歯を凹部分に配列し、40℃のお湯に浸漬させた状態で、歯科技工用重合装置(モリタαライトV 波長400~408nm、465~475nm)で3分間光照射し、試験片の作製を行った。その後、接着性の評価を行った。
【0138】
評価結果を表2に示す。
【0139】