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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】コンロバーナ
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/64 20060101AFI20220707BHJP
【FI】
F23D14/64 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017098608
(22)【出願日】2017-05-18
(65)【公開番号】P2018194235
(43)【公開日】2018-12-06
【審査請求日】2020-01-21
【審判番号】
【審判請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】中村 悠輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕康
【合議体】
【審判長】林 茂樹
【審判官】山崎 勝司
【審判官】平城 俊雅
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-243118(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1675302(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと燃焼用空気とを混合させた混合ガスを、複数の炎口が形成されたバーナヘッドに導いて燃焼させるコンロバーナにおいて、
前記燃料ガスと前記燃焼用空気とを混合させて前記混合ガスを生成する混合通路と、
前記混合通路の開口端に取り付けられて該開口端よりも小さな流入口が形成されたダンパープレートと、
前記流入口の外側から前記混合通路内に向けて前記燃料ガスを噴射するガス噴射ノズルと、
前記混合通路が接続されると共に、前記バーナヘッドが載置されて、前記混合通路から流入した前記混合ガスを前記バーナヘッドに供給するバーナボディと
を備え、
前記混合通路は、前記開口端から所定距離範囲に通路内径が維持された直管部と、前記直管部から前記バーナボディに向かって通路内径が縮径された縮径部と、前記縮径部から前記バーナボディに向かって通路内径が拡径された拡径部とを有するベンチュリー形状に形成されており、
前記ダンパープレートは、
前記流入口の周辺の部分が、前記混合通路側に向かって縮径するテーパー形状に形成されると共に、前記テーパー形状の終端が前記流入口となっており、
前記テーパー形状の終端が、前記直管部の長さの半分よりも短い距離の範囲内で、前記開口端から前記混合通路内に入り込んだ位置となる状態で、前記混合通路に取り付けられている
ことを特徴とするコンロバーナ。
【請求項2】
請求項1に記載のコンロバーナにおいて、
前記混合通路のベンチュリー形状は、前記開口端側から前記バーナボディ側に向かって通路内径が縮径した後、該通路内径が縮径する傾きよりも小さな傾きで前記通路内径が拡径する形状となっており、
前記ダンパープレートの前記流入口の周辺でテーパー形状に形成された部分の傾きは、前記混合通路のベンチュリー形状が前記開口端側から前記バーナボディ側に向かって縮径する傾きと同じ、若しくは大きい傾きとなっている
ことを特徴とするコンロバーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合通路で燃料ガスと燃焼用空気とを混合させて、生成した混合ガスを燃焼させるコンロバーナに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料ガスと燃焼用空気との混合ガスを燃焼させるコンロバーナは広く使用されている。このコンロバーナは、混合ガスを燃焼させる複数の炎口が形成されたバーナヘッドと、バーナヘッドが載置されるバーナボディと、バーナボディに接続された混合通路と、混合通路の開口端に向けて燃料ガスを噴射するガス噴射ノズルとを備えている。混合通路の内部は、開口端からバーナボディに向かって断面積が一旦小さくなった後、次第に断面積が拡大するベンチュリー形状となっており、ガス噴射ノズルから混合通路の開口端に向けて燃料ガスを噴射すると、燃料ガスが周囲の空気を巻き込みながら開口端から混合通路内に流入する。そして、混合通路内で燃料ガスと燃焼用空気とが混合して混合ガスが生成される。上述したように混合通路内はベンチュリー形状に形成されているので、混合通路内を通過する際に燃料ガスおよび燃焼用空気の流速が一旦増加した後に減少することとなって、燃料ガスと燃焼用空気との混合が促進される。こうして混合通路内で生成された混合ガスが、バーナボディを介してバーナヘッドに供給されて、バーナヘッドに設けられた複数の炎口から流出する。その混合ガスに点火することによって、バーナヘッドの周囲に炎が形成されて混合ガスが燃焼する。
【0003】
また、近年では、コンロバーナを大型化することなく、燃焼火力を増加させることが要請されるようになっている。燃焼火力を増加させるためには、ガス噴射ノズルから噴射する燃料ガスの最大流量を増加させると共に、燃料ガスと一緒に混合通路内に流入する燃焼用空気の流量も増加させる必要がある。そこで、混合通路の開口端に取り付けられたダンパープレートの流入口を大きくしたり、ガス噴射ノズルの周辺に空間を確保したりする等、様々な工夫をすることによって、ガス噴射ノズルから噴出した燃料ガスが周囲の空気を効率よく巻き込めるようにしたコンロバーナが提案されている(特許文献1、特許文献2など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-120020号公報
【文献】特開2016-023817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、コンロバーナの大きさがそのままでは、燃料ガスの最大流量および燃焼用空気の最大流量を増加させても、最大火力時にバーナヘッドの周囲に形成される炎が不均一になってしまうという問題があった。
【0006】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題に対応してなされたものであり、コンロバーナを大型化させなくても、最大火力を増加させることが可能で、尚且つ、バーナヘッドの周囲に均一な炎が形成されるコンロバーナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために本発明のコンロバーナは次の構成を採用した。すなわち、
燃料ガスと燃焼用空気とを混合させた混合ガスを、複数の炎口が形成されたバーナヘッドに導いて燃焼させるコンロバーナにおいて、
前記燃料ガスと前記燃焼用空気とを混合させて前記混合ガスを生成する混合通路と、
前記混合通路の開口端に取り付けられて該開口端よりも小さな流入口が形成されたダンパープレートと、
前記流入口の外側から前記混合通路内に向けて前記燃料ガスを噴射するガス噴射ノズルと、
前記混合通路が接続されると共に、前記バーナヘッドが載置されて、前記混合通路から流入した前記混合ガスを前記バーナヘッドに供給するバーナボディと
を備え、
前記混合通路は、前記開口端から所定距離範囲に通路内径が維持された直管部と、前記直管部から前記バーナボディに向かって通路内径が縮径された縮径部と、前記縮径部から前記バーナボディに向かって通路内径が拡径された拡径部とを有するベンチュリー形状に形成されており、
前記ダンパープレートは、
前記流入口の周辺の部分が、前記混合通路側に向かって縮径するテーパー形状に形成されると共に、前記テーパー形状の終端が前記流入口となっており、
前記テーパー形状の終端が、前記直管部の長さの半分よりも短い距離の範囲内で、前記開口端から前記混合通路内に入り込んだ位置となる状態で、前記混合通路に取り付けられている
ことを特徴とする。
【0008】
かかる本発明のコンロバーナにおいては、混合通路が、次のようなベンチュリー形状に形成されている。先ず、開口端から所定距離範囲は通路内径が維持された直管部となっており、直管部からはバーナボディに向かって通路内径が縮径された縮径部となっている。そして縮径部からはバーナボディに向かって通路内径が拡径される拡径部が形成されたベンチュリー形状となっている。また、混合通路の開口端にはダンパープレートが取り付けられており、ダンパープレートには、開口端よりも小さな流入口が設けられている。流入口の周辺の部分は、混合通路側に向かって縮径するテーパー形状に形成されると共に、テーパー形状の終端が流入口となっている。そして、ダンパープレートは、テーパー形状の終端(すなわち、流入口)が、直管部の長さの半分よりも短い距離の範囲内で、開口端から混合通路内に入り込んだ位置となる状態で、混合通路の開口端に取り付けられている。
【0009】
こうすれば、流入口から混合通路内に流入しようとする空気の流れがスムーズになるので、流入口を大きくしなくても、混合通路内に流入する空気の流量を増加させることができる。加えて、ダンパープレートは、テーパー形状の終端(すなわち、流入口)が直管部の長さの半分よりも短い距離の範囲内で、開口端から混合通路内に入り込んだ位置となる状態で、混合通路の開口端に取り付けられている。また、開口端の直管部分は、テーパー形状の終端の流入口よりも大きく形成されているから、テーパー形状の部分が、開口端の直管部分の内側の広い空間の中に突き出していることになる。その結果、流入口に向かう空気および燃料ガスの流れは、ダンパープレートのテーパー形状の部分で増速した後、流入口から流出すると、直管部分の内側の広い空間に流出することになり、空気および燃料ガスの流れが半径方向に急激に広がる結果、急激に減速する。このテーパー形状の部分での増速、および流入口から流出した後の急激な減速によって燃料ガスと燃焼用空気とがある程度に混合された後、混合通路内の直管部から縮径部を通過する際に再び増速し、更に縮径部から拡径部を通過する際に再び減速することによって、更に混合が促進されることになる。その結果、流入口から流入する燃料ガスおよび燃焼用空気の流量が増加しても、それらを混合通路内で十分に混合させることが可能となるので、バーナヘッドの周囲に均一な炎が形成される状態を維持したままで、コンロバーナの最大火力を増加させることが可能となる。
【0014】
また、上述したように、流入口の周辺がテーパー形状に形成された本発明のコンロバーナにおいては、流入口の周辺のテーパー形状を、混合通路のベンチュリー形状に対して次のような形状としても良い。先ず、混合通路のベンチュリー形状は、開口端側からバーナボディ側に向かって通路内径が縮径した後、通路内径が縮径する傾きよりも小さな傾きで通路内径が拡径する形状としておく。そして、ダンパープレートの流入口の周辺に形成されたテーパー形状の部分は、混合通路のベンチュリー形状が開口端側からバーナボディ側に向かって縮径する傾きと同じ傾き、若しくは大きな傾きで縮径するようにしても良い。
【0015】
ダンパープレートの流入口の周辺に形成されたテーパー形状の傾きを小さくすればするほど、流入口が混合通路内に大きく入り込んだ状態となり、流入口から、混合通路内のベンチュリー形状の部分までの距離が確保できなくなる。これに対して、テーパー形状の傾きを、ベンチュリー形状で開口端側からバーナボディ側に向かって通路内径が縮径する部分の傾きと同じ、若しくは大きな傾きとしておけば、流入口からベンチュリー形状までの距離を確保することができる。そのため、流入口から流入した燃料ガスおよび燃焼用空気が、混合通路のベンチュリー形状の部分に達するまでに、ある程度まで混合させることができるので、混合通路のベンチュリー形状の部分では、燃料ガスと燃焼用空気とを十分に混合させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施例のコンロバーナ10の構造を示す縦断面図である。
図2】本実施例のコンロバーナ10にダンパープレート16を取り付ける様子を示す斜視図である。
図3】コンロバーナ10の最大火力を増大させるために、ダンパープレート16の流入口の内径を拡大した様子を示す断面図である。
図4】従来のダンパープレート26で流入口26oを大きくすると、混合通路11内での燃料ガスと燃焼用空気との混合が不十分となる理由についての説明図である。
図5】本実施例のダンパープレート16の断面形状を示した説明図である。
図6】本実施例のダンパープレート16では、コンロバーナ10の最大火力を増大させても混合ガスの混合が悪化しない理由を示した説明図である。
図7】第1変形例のダンパープレート16の断面形状を示した説明図である。
図8】第2変形例のダンパープレート16の断面形状を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本実施例の温度検出装置100を搭載したガスコンロ1の構造を示す断面図である。ガスコンロ1は、コンロ本体(図示せず)の上面を覆って設けられ且つバーナ用開口3aが形成された天板3と、バーナ用開口3aに臨んで設けられて、燃料ガスを燃焼させることによって調理容器を加熱するコンロバーナ10と、鍋などの調理容器が置かれる五徳5などを備えている。また、コンロバーナ10とバーナ用開口3aとの隙間は円環状のバーナリング4で塞がれている。
【0018】
コンロバーナ10は、円環形状に形成されたバーナボディ12と、バーナボディ12に接続された混合通路11と、バーナボディ12の上面に載置された円環形状のバーナヘッド13などを備えている。バーナヘッド13は、アルミニウム合金や真鍮などによる鍛造あるいはダイカストによって形成されており、外周部の下面側には複数の溝(炎口溝)が形成されている。そして、バーナヘッド13をバーナボディ12に載置すると、バーナヘッド13に形成された複数の炎口溝とバーナボディ12の上面との間に複数の炎口13aが形成される。また、バーナボディ12の上部には、円環形状に形成された板金製のバーナキャップ14が取り付けられており、バーナキャップ14の中央からは、温度センサー15が突設されている。温度センサー15は図示しないバネによって上方に付勢されており、五徳5上に調理容器が置かれると、調理容器の底面に当接した状態となって調理容器の温度を検出する。
【0019】
混合通路11は、一端側がバーナボディ12に接続されているが、他端側は開口端11oとなっている。混合通路11の形状は、開口端11oからバーナボディ12に向かって所定距離までは通路内径が維持されているが、その後は、通路内径が縮径した後、拡径するベンチュリー形状となっている。そして、そのベンチュリー形状は、通路内径が縮径する傾き(すなわち、単位長さ辺りの通路内径の減少量)よりも、通路内径が拡径する傾き(すなわち、単位長さ辺りの通路内径の増加量)の方が小さくなる形状に形成されている。尚、以下では、混合通路11の開口端11oから所定範囲で通路内径が維持されている部分を、直管部11aと称し、開口端11oからバーナボディ12に向かって通路内径が縮径されている部分を縮径部11bと称し、通路内径が拡径されている部分を拡径部11cと称することがあるものとする。また、混合通路11の縮径部11bおよび拡径部11cをまとめて、ベンチュリー形状部分と称することがあるものとする。
【0020】
また、混合通路11の開口端11oには、中央に流入口16oが形成されたダンパープレート16が取り付けられている。そして、ダンパープレート16の外側には、ダンパープレート16の流入口16oに向かって燃料ガスを噴射するガス噴射ノズル18が設けられている。ガス噴射ノズル18から噴射された燃料ガスは、周囲の空気を巻き込みながらダンパープレート16の流入口16oから混合通路11内に流入する。そして、混合通路11のベンチュリー形状部分(縮径部11bおよび拡径部11c)を通過する際に、燃料ガスと空気とが混合して混合ガスが生成されて、バーナボディ12に流入した後、バーナヘッド13の炎口13aから流出する。この混合ガスに、図示しない点火プラグで点火することによって、コンロバーナ10の燃焼が開始される。
【0021】
図2は、混合通路11の開口端11oに取り付けられるダンパープレート16の形状を示した斜視図である。図示されるように、ダンパープレート16は、短い円筒形状の胴部16aと、胴部16aの一端側が内側に向けて折り曲げられることによって形成された円環形状のフランジ部16bとを備えており、フランジ部16bの中央には流入口16oが形成されている。更に、流入口16oの周辺部分には、胴部16a側に向かってテーパー形状となった縮径部16cが形成されている。このような形状のダンパープレート16が、ダンパープレート16の胴部16aで混合通路11の直管部11aを覆うようにして、混合通路11の開口端11oに取り付けられる。
【0022】
図2に示したように、本実施例のダンパープレート16は、流入口16oが胴部16a側に入り込んだ位置に設けられており、尚且つ、流入口16oの周辺には縮径部16cが形成されている。本実施例のダンパープレート16がこのような形状となっているのは、ダンパープレート16の流入口16oを大きくする方法では、コンロバーナ10の最大火力を増加させることが困難となりつつあり、もはや限界となっているためである。以下、この理由について詳しく説明する。
【0023】
図3に示されるように、従来のダンパープレート26を備えたコンロバーナ10では、ダンパープレート26の中央に形成された流入口26oを大きくすることによって、最大火力を増加させることが一般的に行われてきた。図3(a)には、従来のダンパープレート26の断面形状が示されている。図示されるように、従来のダンパープレート26も、本実施例のダンパープレート16と同様に、円筒形状の胴部26aと、円環形状のフランジ部26bとを備えており、フランジ部26bの中央には流入口26oが形成されている。しかし、図2に示した本実施例のダンパープレート16とは異なって、流入口26oはフランジ部26bの面位置に設けられており、流入口26oの周囲には縮径部16cが設けられていない。
【0024】
また、図3(a)には、このような従来のダンパープレート26が取り付けられた混合通路11内で、燃料ガスおよび燃焼用空気が混合して混合ガスが生成される様子が概念的に示されている。先ず、燃料ガスは、図中に実線の矢印で示したように、ダンパープレート26の外側に設けたガス噴射ノズル18から流入口26oに向けて噴射される。すると、燃料ガスの流れに巻き込まれるようにして周囲の空気も流入口26oから流入する。図中に示した破線の矢印は空気の流れを表している。また、こうして流入口26oから流入した燃料ガスおよび空気は、混合通路11の縮径部11bで一旦増速した後、拡径部11cで減速することによって混合しながら、バーナボディ12(図1参照)に供給される。図中に示した一点鎖線の矢印は、混合通路11内を流れる燃料ガスおよび空気の流れを表している。
【0025】
図3(a)中に破線の矢印で示したように、混合通路11内に流入する空気の流量は、ダンパープレート26の流入口26oによって制限されている。このため、コンロバーナ10の最大火力を増加させようとして、ガス噴射ノズル18から噴射する燃料ガスの流量を増加させても、それに見合うだけは空気の流量を増加させることができない。そこで、従来は、ダンパープレート26の流入口26oの内径D0を大きくすることによって、空気の流量を増加させてきた。図3(b)に示したように、ダンパープレート26を流入口26oの内径D0がより大きな内径D1のものに変更すれば、流入口26oから流入する空気を増加させることができるので、燃料ガスの流量増加に合わせて空気の流量も増加させることができる。しかし、このような方法を用いて最大火力の増加を繰り返してきた結果、近年では、最大火力を増加させようとすると、バーナヘッド13に形成される炎が不均一になってしまうようになり、最大火力を増加させるにも限界が生じていた。そして、このような限界が生じる理由は、次のような回避し難い現象が生じるためであると考えられてきた。
【0026】
まず、混合通路11が同じなら、燃料ガスおよび空気の流量を増加させればさせるほど、混合通路11内での流速は増加する。すると、流入口26oから流入した燃料ガスおよび空気が混合通路11を通過してバーナボディ12(図1参照)に達するまでの時間が短くなる。その結果、混合通路11内で燃料ガスと燃焼用空気とが混合するために必要な時間が確保できなくなって、混合が不十分なまま、バーナボディ12に流入することになり、バーナヘッド13に形成された複数の炎口13a間で、流出する混合ガスの濃度にバラツキが生じる。そのため、バーナヘッド13に形成される炎が不均一になってしまうものと考えられてきた。もちろん、混合通路11の通路内径を大きくすれば混合通路11内での流速が減少するので、最大火力時でも混合に必要な時間を確保することが可能となるが、そうすると今度は、中火力時あるいは小火力時での流速が下がりすぎてしまい、混合通路11内で燃料ガスと燃焼用空気とが混合することが困難となってしまう。従って、コンロバーナ10の最大火力は、混合通路11の長さによってある程度の制限を受けてしまい、ダンパープレート26の流入口26oを大きくするなどの方法では、コンロバーナ10の最大火力を増加させようとしても限界があると考えられてきた。
【0027】
しかし、本願の発明者らは、ダンパープレート26の流入口26oを大きくした時に混合が不十分になる理由は、混合に必要な時間が確保できなくなるためではなく、別の理由によることを見出した。本実施例のダンパープレート16は、このような新たな知見に基づいて完成されたものである。本実施例のダンパープレート16を用いれば、混合通路11内での混合を悪化させることなく、燃料ガスおよび燃焼用空気の流量を増加させて、コンロバーナ10の最大火力を更に増加させることが可能となる。そこで、先ず始めに、本願の発明者らが見出した新たな知見、すなわち、ダンパープレート26の流入口26oを大きくした時に混合が不十分になる理由について説明し、その後、本実施例のダンパープレート16を用いれば、混合通路11内での混合を悪化させることなく燃料ガスおよび燃焼用空気の流量を増加させることが可能な理由について説明する。
【0028】
図4は、従来のダンパープレート26で流入口26oを大きくしたときに、燃料ガスと燃焼用空気との混合が不十分になるメカニズムを示した説明図である。図4(a)には、流入口26oを大きくした場合に、流入口26oから流入する空気の流れが示されている。また、参考として、図4(b)には、流入口26oを大きくする前の状態で、流入口26oから流入する空気の流れが示されている。
【0029】
図4(a)と図4(b)とを比較すれば明らかなように、流入口26oを大きくすると、流入口26oから流入した後の空気の流れには大きな違いが生じる。すなわち、流入口26oを大きくする前の図4(b)の状態では、流入口26oから流入した空気には、混合通路11の直管部11aで半径方向に広がるような流れが生じている。これに対して、流入口26oを大きくした後の図4(a)の状態では、流入口26oから流入した空気は、混合通路11の直管部11aに沿って流れることとなって、半径方向に広がるような流れは生じていない。
【0030】
ここで、図4(b)の空気の流れに着目すると、流入口26oから流入する空気は流入口26oで一旦絞られて流速が増加した後、混合通路11の直管部11aで半径方向に広がって流速が低下していることになる。この流速が増減する動きは、ちょうど、混合通路11のベンチュリー形状部分(すなわち、縮径部11bおよび拡径部11c)で燃料ガスと燃焼用空気とが増速した後に減速することによって混合する動きと同じである。このことから、流入口26oを大きくする前の図4(b)の状態では、混合通路11の直管部11aでも、燃料ガスと燃焼用空気との混合が進んでいるものと考えられる。
【0031】
これに対して、流入口26oを大きくした後の図4(a)の状態では、流入口26oを大きくしたことによって流入口26oを通過する際の流速が上がらず、更に、流入口26oを通過した後も半径方向に広がる流れが生じないので、流れが減速することもない。その結果、混合通路11の直管部11aでは、燃料ガスと燃焼用空気との混合が進んでいないものと考えられる。このことから、流入口26oを大きくしたことによって、燃料ガスと燃焼用空気との混合が不十分になっていた本当の理由は、混合通路11内を通過する時間が短くなったためではなく、流入口26oを大きくしたことによって、混合通路11の直管部11aでの混合が進まなくなったためであると考えられる。逆に言えば、混合通路11の直管部11aでの混合を阻害することなく、流入口26oから流入する空気量を増加させることができれば、混合通路11内を通過する時間が短くなっても、燃料ガスと燃焼用空気とを混合通路11内で十分に混合させることが可能と考えられる。本実施例のダンパープレート16は、このような着想に基づいて、様々な方法を工夫することによって完成されたものである。
【0032】
図5(a)は、本実施例のダンパープレート16の詳細な断面形状を示す説明図である。また、図5(b)には、参考として、流入口26oを大きくする前の従来のダンパープレート26の断面形状も示されている。図5(a)と図5(b)とを比較すれば明らかなように、本実施例のダンパープレート16は、従来のダンパープレート26に対して、流入口16oが、開口端11oから混合通路11側に入り込んだ位置に形成されている。そして、流入口16oの周囲には、混合通路11側に向かってテーパー形状に形成された縮径部16cが形成されている。但し、流入口16oの大きさは、従来のダンパープレート26の流入口26oの大きさと同じとなっている。こうすれば、流入口16oを通過する空気の流れがスムーズになるので、流入口16oを大きくしなくても、流入口16oから流入する空気の流量を増加させることが可能と考えられる。また、流入口16oの大きさは流入口26oの大きさと同じなので、混合通路11の直管部11aで燃料ガスと燃焼用空気とを混合させることも可能と考えられる。
【0033】
図6は、図5(a)に示した本実施例のダンパープレート16と、図5(b)に示した従来のダンパープレート26(すなわち、流入口26oの大きさを大きくする前のダンパープレート26)とで、流入口16oあるいは流入口26oを通過する空気の流れを比較した説明図である。また、図6(a)および図6(b)には、それぞれ流入口16oおよび流入口26oを通過する空気の流れが破線の矢印によって示されている。図6(a)に示されるように、本実施例のダンパープレート16では、流入口16oの周辺にテーパー形状の縮径部16cが形成されているので、流入口16oに流入しようとする空気の流れがスムーズになる。その結果、図6(b)に示した流入口26oの大きさを大きくする前のダンパープレート26よりも、流入する空気の流量を増加させることができる。
【0034】
その一方で、流入口16oの大きさは、図6(b)に示した従来のダンパープレート26の流入口26oと同じ大きさとなっているので、流入口16oを通過した空気には、従来のダンパープレート26の場合と同様に、混合通路11の直管部11aで半径方向に広がる流れが生じている。すなわち、本実施例のダンパープレート16でも、混合通路11の直管部11aで燃料ガスと燃焼用空気との混合が進んでいることになる。更に加えて、本実施例のダンパープレート16では、従来のダンパープレート26に対して流入口16oの大きさが大きくなっていないにも拘わらず、空気の流量が増加するので、流入口16oを通過する際の空気の流速は、従来のダンパープレート26の場合よりも速くなる。その結果、流入口16oを通過する際には従来のダンパープレート26の場合よりも大きく増速し、通過した後にも従来のダンパープレート26の場合より大きく減速することになるので、混合通路11の直管部11aでの混合がより一層促進されることになる。このように、本実施例のダンパープレート16を用いれば、流入口16oから流入する空気の流量を増加させながら、尚且つ、混合通路11の直管部11aで燃料ガスと燃焼用空気との混合を促進させることができる。その結果、コンロバーナ10の最大火力を増加させながら、尚且つ、バーナヘッドの周囲に均一な炎を形成することが可能となる。
【0035】
また、以上に説明したように、本実施例のダンパープレート16は、流入口16oを通過する際に増速した空気の流れを、混合通路11の直管部11aで減速させることによって、直管部11aでも燃料ガスと燃焼用空気とを混合させている。従って、燃料ガスと燃焼用空気とを混合させるためには、流入口16oから流入した後の直管部11aの長さは、ある程度の長さがあった方が望ましい。このような観点からすると、ダンパープレート16は次のような形状としておくことが望ましい。
【0036】
先ず、図5(a)に示したように、本実施例のダンパープレート16は、流入口16oが混合通路11の内側まで入り込んだ位置に設けられているが、混合通路11の開口端11oから測って、流入口16oが混合通路11の内側に入り込む距離LIは、混合通路11の直管部11aの長さLの半分よりも短くしておくことが望ましい。また、図5(a)では、流入口16oの周辺にはテーパー形状の縮径部16cが形成されているものとしているが、このテーパー形状の傾き(すなわち、単位長さ辺りの縮径量)は、傾きが小さくなるほど流入口16oが混合通路11の内側に入り込むことになる。従って、縮径部16cのテーパー形状の傾きは、混合通路11の縮径部11bの傾きと同程度、もしくは縮径部11bの傾きよりも大きな傾きとしておくことが望ましい。
【0037】
上述した本実施例のダンパープレート16には、幾つかの変形例が存在している。以下では、これらの変形例について、本実施例との相違点を中心として簡単に説明する。
【0038】
上述した実施例では、流入口16oの周囲に形成された縮径部16cは、テーパー形状であるものとして説明した。しかし、縮径部16cの形状は、混合通路11の方向に向かって縮径する形状であれば、必ずしもテーパー形状である必要は無い。例えば、図7(a)に示すようなアール形状の縮径部16cとしたり、図7(b)に示すような逆アール形状の縮径部16cとしたりすることも可能である。これらの場合でも、流入口16oから流入する空気の流れがスムーズになるので、流入する空気の流量を増加させることができ、それでいながら、流入後は半径方向に広がる流れも生じるので、混合通路11の直管部11a内で燃料ガスと燃焼用空気との混合も促進させることができる。
【0039】
また、上述した実施例では、流入口16oが混合通路11の内側まで入り込んだ位置に設けられているものとして説明した。しかし、流入口16oの周囲に、混合通路11の方向に向かって縮径する縮径部16cを設けることができるのであれば、必ずしも混合通路11の内側まで入り込んだ位置に、流入口16oを設ける必要も無い。例えば、図8(a)に示したように、流入口16oが混合通路11の外側にあるようなダンパープレート16とすることもできるし、あるいは、図8(b)に示したように、上述した本実施例のダンパープレート16を、混合通路11の開口端11oから少し離した状態として、流入口16oが混合通路11の内側まで入り込まないような状態で取り付けるようにしても良い。これらの場合でも、流入口16oから流入する空気の流れがスムーズになるので、流入する空気の流量を増加させることができ、それでいながら、混合通路11の直管部11a内で燃料ガスと燃焼用空気との混合も促進させることが可能となる。
【0040】
以上、本実施例および変形例のコンロバーナ10について説明したが、本発明は上記の実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1…ガスコンロ、 10…コンロバーナ、 11…混合通路、
11a…直管部、 11b…縮径部、 11c…拡径部、
11o…開口端、 12…バーナボディ、 13…バーナヘッド、
13a…炎口、 14…バーナキャップ、 15…温度センサー、
16…ダンパープレート、 16a…胴部、 16b…フランジ部、
16c…縮径部、 16o…流入口、 18…ガス噴射ノズル、
100…温度検出装置。
図1
図2
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図5
図6
図7
図8