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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/16 20170101AFI20220707BHJP
   B01J 23/75 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
C01B32/16
B01J23/75 M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017150989
(22)【出願日】2017-08-03
(65)【公開番号】P2018024574
(43)【公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-05-21
(31)【優先権主張番号】10-2016-0099399
(32)【優先日】2016-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】515215276
【氏名又は名称】エスケー ジオ セントリック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】キム ジ-ミン
(72)【発明者】
【氏名】スン ミン-ジ
(72)【発明者】
【氏名】クウォン ヨン-タク
(72)【発明者】
【氏名】キム サン-ウク
(72)【発明者】
【氏名】キム オク-ユン
(72)【発明者】
【氏名】ソン スン-ラル
(72)【発明者】
【氏名】ソン ジュン-ユル
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-030887(JP,A)
【文献】国際公開第2016/144092(WO,A1)
【文献】特表2014-529576(JP,A)
【文献】特表2009-520673(JP,A)
【文献】特開2003-146635(JP,A)
【文献】特開2003-286015(JP,A)
【文献】特表2012-506312(JP,A)
【文献】特開2004-019018(JP,A)
【文献】特開2012-236727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
B01J 21/00-38/74
B82Y 30/00、40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器にカーボンナノチューブ及び触媒を所定の順序で、又は同時に供給し、流動化して流動床を形成する段階;及び
ソースガス及び前記触媒を反応させて、前記触媒上でカーボンナノチューブを成長させる段階;を含み、
前記流動化して流動床を形成する段階において、下記計算式1による最小流動化速度(minimum fluidization velocity)の差(ΔV)は5cm/s以下であり、かつ
前記カーボンナノチューブを成長させる段階において、下記計算式2による温度差(ΔT)は20℃以下である、カーボンナノチューブの製造方法:
[計算式1]
最小流動化速度の差(ΔV、cm/s)=|Vcat-VCNT product|
前記Vcatは触媒の最小流動化速度であり、前記V CNT productは流動床を形成する段階において反応器に供給するカーボンナノチューブの最小流動化速度である。
[計算式2]
温度差(ΔT、℃)=T-T
前記T及び前記Tは、前記流動床の底から最上部までの高さ範囲の中、任意に選ばれる異なる2個の高さでそれぞれ測定される流動床の温度を意味する。
【請求項2】
前記触媒の最小流動化速度は0.1cm/sから10cm/sである、請求項1に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項3】
前記触媒の粒子密度(particle density)は1,300kg/mから2,200kg/mである、請求項1に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項4】
前記触媒の直径は10μmから300μmである、請求項1に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項5】
前記流動床を形成する段階において、前記反応器に前記カーボンナノチューブ及び前記触媒を充填して充填層(initial bed)を形成する場合、前記充填層をこの直径に対する高さ(L/D)の比が1以上になるように形成する、請求項1に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項6】
前記流動床を形成する段階において、前記流動床内に含まれる前記カーボンナノチューブ対前記触媒の重量比が1:0.5から1:1になるようにこれらを前記反応器に供給する、請求項1に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
カーボンナノチューブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、カーボンナノチューブは電気または電子分野、エネルギー分野、高分子複合材料分野など、様々な分野で広く利用されている。
【0003】
このようなカーボンナノチューブは、アーク放電法(arc discharge)、レーザー蒸発法(laser ablation)、化学気相蒸着法(chemical vapor deposition)などによって合成されるところ、例えば化学気相蒸着法では、いわゆる流動化方法を用いて合成することができる。
【0004】
通常、流動化方法を用いたカーボンナノチューブの合成は、キャリアガス及び炭化水素ガスで触媒を流動化しながら互いに反応させる方法を意味する。
【0005】
かかる方法により、炭化水素の炭素成分が触媒内に溶け入り、触媒の表面上に析出されながらカーボンナノチューブが成長することになるが、このとき、カーボンナノチューブとして生成がなされないか、炭化水素の熱分解により触媒の表面にコークス(coke)、すなわち有機物に空気を遮断して加熱した際に、揮発成分がすべて抜け出して残る炭素質物質を形成するが、これにより触媒の活性が低下する問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一具体例では、平均長さをさらに広い範囲で調節できながら優れた収率、優れた経済性、及び優れた作業性を実現するカーボンナノチューブの製造方法を提供する。
【0007】
しかし、本発明の達しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に限らず、言及していない他の課題等は、下記の記載から通常の技術者に明確に理解されるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一具体例では、反応器にカーボンナノチューブ及び触媒を所定の順序で、又は同時に供給し、流動化して流動層を形成する段階;を含み、下記計算式1による最小流動化速度(minimum fluidization velocity)の差(ΔV)は5cm/s以下であるカーボンナノチューブの製造方法を提供する。
【0009】
前記製造方法は、炭素供給源の触媒反応の生成物として前記触媒上で成長して得られるカーボンナノチューブとは別に、炭素供給源の反応が開始する前に前記反応器にカーボンナノチューブを供給して流動化することで、前記製造方法では、今後供給される炭素供給源であるソースガスと前記触媒とが反応して熱が発生するとしても、前記反応器内で流動しながら流動床を形成するカーボンナノチューブが前記熱を効果的に分散させることができる。
【0010】
それにより、前記触媒の表面にコークスが生じる現象を防ぎ、この活性をさらに長時間維持できる利点があるため優れた収率、優れた経済性、及び優れた作業性を実現することができる。
【0011】
また、それにより、前記ソースガス及び前記触媒の反応時間をさらに広い範囲で調節することができ、前記製造方法により製造されるカーボンナノチューブの平均長さをさらに広い範囲で調節することができる。
【0012】
前記流動床を形成する段階において、前記反応器に供給するカーボンナノチューブは、前記反応器内で流動しながら熱を分散させることができる。
【0013】
具体的に、前記反応器に供給するカーボンナノチューブは、前記触媒と今後供給されるソースガスとの反応に直接に関与せず、炭素供給源及び触媒の反応が開始する前から前記反応器内で流動しながら前記反応により発生する熱を分散させる役割を行うことができる。
【0014】
前記製造方法において、下記計算式1による最小流動化速度(minimum fluidization velocity)の差(ΔV)は、例えば約5cm/s以下であってもよいし、具体的には0から約3cm/sであってもよい:
【0015】
[計算式1]
最小流動化速度間の差(ΔV、cm/s)=|Vcat-VCNT product|
前記Vcatは触媒の最小流動化速度であり、前記VCNT productは流動床を形成する段階において反応器に供給するカーボンナノチューブの最小流動化速度である。
【0016】
それにより、前記触媒自体またはこの周りで発生する熱を効果的に分散させることができるため、前記触媒の活性を長時間維持することができる。
【0017】
前記触媒の最小流動化速度は、例えば約0.1cm/sから約10cm/sであってもよいし、具体的には約0.2cm/sから約2.0cm/sであってもよい。
【0018】
前記範囲内の最小流動化速度を有することで、前記反応器に供給されるカーボンナノチューブ及び前記製造方法により得られる、あらゆるカーボンナノチューブとさらに均一に混合することができ、それによりソースガスとの反応によって発生する前記触媒周りの熱を効果的に分散させることができる。
【0019】
前記カーボンナノチューブを成長させる段階において、下記計算式2による温度差(ΔT)は、例えば約20℃以下であってもよいし、具体的には約0℃から約15℃であってもよい:
【0020】
[計算式2]
温度差(ΔT、℃)=T-T
前記T及び前記Tは、前記流動床の底から最上部までの高さ範囲の中、任意に選ばれる異なる2個の高さでそれぞれ測定される流動床の温度を意味する。
【0021】
それにより、熱の蓄積を防ぎ、前記触媒の表面上にコークスが生じる現象を効果的に減じることができる。
【0022】
前記カーボンナノチューブを成長させる段階において、前記成長の完了したカーボンナノチューブを得た後、前記流動床内に存在する前記流動床を形成する段階において、前記反応器に供給したカーボンナノチューブを別途分類して除去する必要がない。
【0023】
それにより、製造工程が単純となり、優れた効率性及び優れた経済性を実現することができる。
【発明の効果】
【0024】
前記カーボンナノチューブの製造方法は、平均長さをさらに広い範囲で調節できながら優れた収率、優れた経済性及び優れた作業性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施例1及び比較例2によるカーボンナノチューブの製造方法において、反応時間による各触媒の活性度合いを示したグラフである。
図2】本発明の実施例1及び比較例3によるカーボンナノチューブの製造方法において、流動床の高さによる温度を示したグラフである。
図3】本発明の一具体例によるカーボンナノチューブの製造方法において、充填層の直径に対する高さの比による収率を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書において、所定の具体例または/及びこれに含まれた所定の構成要素がある構成要素を「含む」とするとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くことではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0027】
本明細書において、以下に記載の上部(または下部)または記載の上(または下)に任意の構成が形成されるか位置するということは、任意の構成が前記記載の上面(または下面)に接して形成されるか位置することを意味するだけでなく、前記記載と記載の上に(または下に)形成された任意の構成との間に他の構成を含まないことを限定するのではない。
【0028】
本明細書で使われる度合いの用語「~(する)段階」または「~の段階」は「~のための段階」を意味しない。
【0029】
本明細書で使われる度合いの用語として「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造及び物質の許容誤差が提示されるとき、その数値で、またはその数値に近い意味で使われて、本発明の理解のために正確であるか絶対的な数値が言及された開示の内容を、非良心的な侵害者が不当に利用することを防ぐために使われてもよい。
【0030】
以下、添付図面を参考にして、本発明の具体例について本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。但し、本発明は、複数の異なる形態に実現することができるものであって、下記に記載の具体例等は、本発明を具体的に例示するか説明するためのものに過ぎず、ここに説明する具体例に限定されない。
【0031】
本発明の一具体例では、カーボンナノチューブの製造方法を提供する。前記製造方法は、反応器にカーボンナノチューブ及び触媒を所定の順序で、又は同時に供給し、流動化して流動床を形成する段階;を含み、下記計算式1による最小流動化速度(minimum fluidization velocity)の差(ΔV)は5cm/s以下である。
【0032】
従来、カーボンナノチューブを製作する流動化方法は、反応空間で初期流動層または流動床を形成する物質としてキャリアガスなどを含む所定のガス及び触媒のみを使用しており、このような流動層または流動床で炭素供給源を触媒と反応させてカーボンナノチューブを製作したが、これら反応の進行に従って触媒周りで熱が分散せず、蓄積されながら触媒の表面にコークス(coke)が生じて触媒の活性が低下しやすい問題が存在した。
【0033】
これに、本発明の一具体例による製造方法は、前述した従来の流動化方法と違って、反応空間である前記反応器に触媒とともに前記カーボンナノチューブを所定の順序で、又は同時に供給し、これらを流動化して流動床を形成することができる。すなわち、前記製造方法では、炭素供給源の触媒反応の生成物として前記触媒上で成長して得られるカーボンナノチューブとは別に、炭素供給源の反応が開始する前に前記反応器に所定のカーボンナノチューブを供給して流動化する。
【0034】
その結果、前記製造方法では、今後供給される炭素供給源であるソースガスと前記触媒とが反応して熱が発生するとしても、これらの反応が開始する前から前記反応器内で流動しながら流動床を形成するカーボンナノチューブが前記熱を効果的に分散させることができるため、前記触媒の表面にコークスが生じる現象を防ぎ、この活性をさらに長時間維持できる利点があるため優れた収率、優れた経済性及び優れた作業性を実現することができる。
【0035】
また、それにより、前記ソースガス及び前記触媒の反応時間をさらに広い範囲で調節することができ、前記製造方法により製造されるカーボンナノチューブの平均長さをさらに広い範囲で調節することができて、例えば短い平均長さを有するカーボンナノチューブからさらに長い平均長さを有するカーボンナノチューブを容易に製造することができるので、これを様々な用途に適用することができる。
【0036】
前記製造方法では、反応器にカーボンナノチューブ及び触媒を所定の順序で、又は同時に供給し、流動化して流動床を形成することができる。前記反応器に前記カーボンナノチューブ及び前記触媒を供給する手順は特に定めておらず、これらのうちいずれかを先に供給するか、または同時に供給することもできる。
【0037】
前記反応器は、カーボンナノチューブを製造するための設備または装置に具備された反応空間であり、この技術分野で公知された種類を用いることができ、特に制限されない。
【0038】
前記反応器は、カーボンナノチューブ用製造設備または装置の一部品であり、例えば、外気と遮断された内部空間を含む反応器であってもよいし、前記製造設備または装置は、触媒供給部;ソースガス供給部;キャリアガス供給部;ガス排出部;カーボンナノチューブ回収部などをさらに備えることができる。
【0039】
前記流動床を形成する段階において、前記反応器に供給するカーボンナノチューブは、前記反応器内で流動しながら熱を分散させることができる。
【0040】
具体的に、前記反応器に供給するカーボンナノチューブは、前記触媒と今後供給されるソースガスとの反応に直接に関与せず、炭素供給源及び触媒の反応が開始する前から前記反応器内で流動しながら前記反応により発生する熱を分散させる役割を行うことができる。それにより、触媒の表面にコークスが生じる現象を防ぎ、触媒の活性を長時間維持することができる。
【0041】
前記反応器に供給するカーボンナノチューブは、例えば横断面の平均直径が約13nmから約16nmであってもよいし、また平均長さが約3.0μmから約5.5μmであってもよいが、これに限らず、この技術分野で公知された種類を好適に用いることができる。
【0042】
前記触媒は、例えば溶液担持法(impregnation method)、噴霧乾燥法などにより作られるし、また例えば、Al、SiOなどのような酸化物担持体に金属触媒が担持された多孔性触媒であってもよいし、Fe、Ma、Fe、Mo、Co、Yr、Ni及びこれらの組み合わせからなる群で選択された少なくとも一つを含むことができるが、これに制限されない。
【0043】
前記製造方法において、下記計算式1による最小流動化速度(minimum fluidization velocity )の差(ΔV)は、例えば約5cm/s以下であってもよいし、具体的には0から約3cm/sであってもよい:
【0044】
[計算式1]
最小流動化速度間の差(ΔV、cm/s)=|Vcat-VCNT product|
前記Vcatは触媒の最小流動化速度であり、前記VCNT productは流動床を形成する段階において反応器に供給するカーボンナノチューブの最小流動化速度である。具体的に、前記VCNT productは、ソースガス及び触媒間の反応が開始する前に前記触媒上で成長するカーボンナノチューブとは別に、前記反応器に供給するカーボンナノチューブの最小流動化速度である。
【0045】
前記最小流動化速度とは、前記反応器内の流速を増加する際に、前記触媒またはカーボンナノチューブが流動し始める時点の流速を意味する。前記最小流動化速度は、例えば触媒またはカーボンナノチューブの流動化速度を増加しながら、流動床の圧力降下が一定となる時点の速度を測定して得られる。
【0046】
前記狭い範囲内の最小流動化速度間の差を有することで、前記触媒が前記反応器に供給するカーボンナノチューブとさらに均一に混合することができるため、前記触媒自体またはこの周りで発生する熱をさらに効果的に分散させることができ、それにより前記触媒の活性を長時間維持することができる。
【0047】
前記触媒の最小流動化速度は、例えば約0.1cm/sから約10cm/sであってもよいし、具体的には約0.2cm/sから約2.0cm/sであってもよい。
【0048】
前記範囲内の最小流動化速度を有することで、前記反応器に供給されるカーボンナノチューブ及び前記製造方法により得られる、あらゆるカーボンナノチューブとさらに均一に混合することができ、それによりソースガスとの反応によって前記触媒の周りで発生する熱を効果的に分散させることができる。
【0049】
具体的に、前記触媒の最小流動化速度が前記範囲から外れる場合、前記触媒は前述のカーボンナノチューブらと均一に混合されず前記触媒同士に集まっていることとなり、これら周りで発生する熱は、分散されずに蓄積されながら前記触媒上にコークスが生じ、それによりこの活性が低下しやすくなる。
【0050】
前記触媒の粒子密度(particle density)は、約1,300kg/cmから約2,200kg/cmであってもよい。前記粒子密度は、例えばメスシリンダーに前記触媒で所定の嵩を満たして、満たされた前記触媒の重さを測定し、次いで、密度が分かっている液体、例えば密度が1g/cmである蒸溜水で前記メスシリンダー内の隙間を満たした後、満たされた液体の嵩を測定して、測定された値から一般的な物理学法則により前記触媒の粒子密度を計算することができるが、これに限定されない。
【0051】
前記範囲内の粒子密度を有することで、後述の粒子径とともに前記触媒の最小流動化速度を好適に調節して、前記流動床内で他の成分らと均一に混合させることができ、それにより前記触媒に発生する熱をさらに効果的に分散させることができる。
【0052】
前記触媒は、例えば球状であってもよいし、この粒子径は約10μmから約300μmであってもよい。前記直径は、例えば粒子サイズ分析器(particle size analyzer、Horiba社)を用いて測定することができる。
【0053】
前記範囲の粒子径を有することで、前述の粒子密度とともに前記触媒の最小流動化速度を好適に調節して、前記流動床内で他の成分らと均一に混合させることができ、それにより前記触媒に発生する熱をさらに効果的に分散させることができる。
【0054】
前記流動床を形成する段階において、前記キャリアガス、前記ソースガスまたはこれらを全て供給して、前記カーボンナノチューブ及び前記触媒を流動化することができる。
【0055】
例えば、前記キャリアガス及び前記ソースガスを所定の順序で供給するか、またはこれらを同時に供給することができ、所定の順序に従って供給する場合、供給する手順は特に制限されず、具体的にはこれらを同時に供給することができる。
【0056】
また、例えば、前記キャリアガス及び前記ソースガスを前記カーボンナノチューブ及び前記触媒より先に供給するか、または後で供給することができ、具体的には前記カーボンナノチューブ及び前記触媒より先に供給することができる。
【0057】
前記キャリアガスは、水素、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、ゼノン及びこれらの組み合わせからなる群で選択される少なくとも一つを含むことができる。
【0058】
前記流動床は、例えば約10cmから約150cmの高さを有するように形成できるが、これに制限されず、発明の目的及び用途によって好適に変更することができる。
【0059】
前記流動床は、例えばこの横断面が巨視的な観点で円形であってもよいし、前記横断面は、例えば約10cmから約100cmの直径を有するように形成できるが、これに制限されず、発明の目的及び用途によってこの形象または/及び直径を好適に変更することができる。
【0060】
前記流動床を形成する段階において、前記流動床内に含まれる前記カーボンナノチューブ対前記触媒の重量比が約1:0.5から約1:1になるように、これらを前記反応器に供給することができる。
【0061】
前記範囲内の重量比になるように、前記カーボンナノチューブ及び前記触媒を前記反応器に供給することで、優れた生産効率及び優れた経済性を実現することができる。
【0062】
前記範囲内の重量比から外れて、前記カーボンナノチューブの供給が少なすぎる場合には前記流動床内の熱を分散させる度合いが小さすぎるし、前記触媒の供給が少なすぎる場合には収率が低すぎて、非経済的である問題がある。
【0063】
前記製造方法において、前記流動床を形成する段階において前記反応器に前記カーボンナノチューブ及び前記触媒を充填して充填層(initial bed)を形成する場合、前記充填層をこの直径に対する高さ(L/D)の比が例えば、1以上になるように形成することができ、具体的には約1から約1.5になるように形成することができる。
【0064】
このとき、前記充填層は、キャリアガスまたはソースガスなどが供給される前に、前記反応器に前記カーボンナノチューブ及び前記触媒をパッキング(packing)して形成される所定の層を意味する。
【0065】
前記範囲内の充填層の直径に対する高さの比を有するように形成することで、前記反応器内に形成される流動床が十分であり、熱がさらに容易に分散される。
【0066】
具体的に、前記直径に対する高さの比が約1未満である場合、熱を分散させる度合いが小さすぎるし、約1.5超である場合、熱を分散させる性能が向上する度合いが微々たるものであるにもかかわらず、設備または装置の製作に要する費用が大きく増加し非経済的である。
【0067】
前記製造方法は、前記ソースガス及び前記触媒を反応させて、前記触媒上でカーボンナノチューブを成長させる段階;をさらに含むことができる。
【0068】
前記ソースガスは炭素供給源であり、例えば炭化水素を含むことができ、前記炭化水素は、例えば炭素数10個以下または炭素数6個以下の炭化水素化合物を用いることができ、具体的にはメタン、エタン、エチレン、エタノール、アセチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、ブタジエン、ペンタン、ペンテン、シクロペンタジエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、及びこれらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも一つを含むことができるが、これに限定されない。
【0069】
前記カーボンナノチューブは、例えば前記ソースガスが前記金属を含む触媒に吸着して分解されて、分解して生成された炭素原子らが前記触媒内に溶解及び拡散し、次いで、触媒上で浸出(precipitation)される過程を通じて成長することができるが、これに限定されない。
【0070】
また、前記カーボンナノチューブを成長させる段階において、前記成長させるカーボンナノチューブの成長時間は、前記ソースガス及び前記触媒間の反応時間を調節して調節することができ、前記反応時間は約5分から約1時間であってもよいが、これに制限されない。
【0071】
前記成長させるカーボンナノチューブの成長時間を調節して、成長が完了して得るカーボンナノチューブの平均長さを少なくても3.0μm以上に形成することができる。
【0072】
前述のように、前記製造方法では、前記触媒の活性が長時間維持されるため、別の追加工程なしにも前記ソースガス及び前記触媒の反応時間を調節して、全体的な観点で、一回の工程を通じて製造されるカーボンナノチューブの平均長さをさらに広い範囲で調節することができる。
【0073】
前記製造方法により、例えば平均長さの短いカーボンナノチューブのみならず、平均長さのさらに長いカーボンナノチューブ、例えば平均長さが少なくても3.0μm以上、具体的には平均長さが約3.0μmから約5.5μmで長いカーボンナノチューブをさらに高い収率で、効率的かつ経済的に製造することができるが、これに限定されない。
【0074】
前記カーボンナノチューブを成長させる段階において、下記計算式2による温度差(ΔT)は、例えば約20℃以下であってもよいし、具体的には約0℃から約15℃であってもよい:
【0075】
[計算式2]
温度差(ΔT、℃)=T-T
前記T及び前記Tは、前記流動床の底から最上部までの高さ範囲の中、任意に選ばれる異なる2個の高さでそれぞれ測定される流動床の温度を意味する。すなわち、具体的に前記Tは、前記流動床の底から最上部までの高さ範囲の中でばれる所定の高さで測定した流動床の温度であり、前記Tは、前記高さ範囲の中で選ばれる前記Tを測定した前記所定の高さと異なる高さで測定した流動床の温度である。
【0076】
また、例えば前記T及び前記Tを測定した高さ間の差は、約10cmから約800cmであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0077】
前述のように、前記触媒上で成長して得られるカーボンナノチューブとは別に、前記触媒及び前記ソースガスとの発熱反応が進める前、または同時に前記反応器にカーボンナノチューブを供給して流動させることで、前記発熱反応によって発生する熱を効果的に分散させることができ、それにより触媒の活性を効果的に向上させることができる。
【0078】
その結果、前記計算式2による温度差、すなわち前記流動床の底から最上部までの高さ範囲の中、任意に選ばれる異なる2個の地点、すなわち異なる高さで測定される前記流動床の温度差が前記範囲内の狭い水準に実現することができ、それにより熱の蓄積を防ぎ、前記触媒の表面上にコークスが生じる現象を効果的に減らすことができる。
【0079】
前記カーボンナノチューブを成長させる段階において、前記流動床内の圧力は、約1barから約3barに形成することができるが、これに制限されない。
【0080】
また、前記カーボンナノチューブを成長させる段階において、前記流動床内の平均温度は、前記ソースガス及び前記触媒間の反応を進める温度に形成することができ、前記温度は、この技術分野で公知された範囲で発明の目的及び用途によって好適に選択されることができ、特に制限されない。
【0081】
前記製造方法において、前記触媒上でカーボンナノチューブの成長が完了した場合、これを回収する段階;をさらに含むことができる。
【0082】
前記カーボンナノチューブを回収する段階は、この技術分野で公知された条件及び方法によって行うことができ、特に制限されない。
【0083】
前記カーボンナノチューブを成長させる段階において、前記成長の完了したカーボンナノチューブを得た後、前記流動床内に存在する前記流動床を形成する段階において前記反応器に供給したカーボンナノチューブを別途分類して除去する必要がない。
【0084】
前記流動床を形成する段階において、前記反応器にカーボンナノチューブ以外の他の放熱性物質、例えば黒煙などを供給する場合には前記成長が完了して得るカーボンナノチューブとこれを分類して除去する追加工程が要求されるため、製造工程が複雑になり非効率的で経済性が低下しうる。
【0085】
前記製造方法では、前記反応器にカーボンナノチューブを供給して前記成長が完了して得るカーボンナノチューブとこれを分類する必要がないため、製造工程が単純になり、優れた効率性及び優れた経済性を実現することができる。
【0086】
以下では、本発明の具体的な実施例らを提示する。但し、下記に記載の実施例等は、本発明を具体的に例示するか説明するためのものに過ぎず、これをもって本発明が制限されてはならない。
【実施例
【0087】
実施例1
カーボンナノチューブ製造装置に具備された反応器に、キャリアガスとして水素及び窒素を炭素供給源であるソースガスとしてエチレンとともに供給して、カーボンナノチューブ;及びAl担体にCo及びFeが担持された触媒として、粒子密度は1,300kg/m3で、粒子径は130μmであり、最小流動化速度は1.1cm/sである触媒(SK自体製作)を供給し、これらを前記反応器内で流動化して流動床を形成した。このとき、前記キャリアガス及びソースガスを供給する前に、前記カーボンナノチューブ及び前記触媒が充填されて形成した充填層の縦横比は1であり、前記流動床内に含まれる前記カーボンナノチューブ対前記触媒の重量比は1:0.6であった。
【0088】
次いで、前記反応器内の流動床で前記エチレンを前記触媒と30分間反応させて前記触媒上でカーボンナノチューブを成長させており、前記カーボンナノチューブが成長する間の前記流動床の圧力は1barから3barに形成した。
【0089】
次いで、成長の完了したカーボンナノチューブを反応器の分散板に配設されたスタンドパイプ(standpipe)を通じて分離して回収しており、回収して得たカーボンナノチューブの平均長さは3.4μm、この横断面の平均直径は15nmであった。
【0090】
比較例1(反応器にカーボンナノチューブを別途供給しない場合)
流動床を形成する段階においてカーボンナノチューブを供給せず、カーボンナノチューブを成長させる段階において反応器内の流動床で前記エチレンを前記触媒と20分間反応させて、前記触媒上でカーボンナノチューブを成長させたことを除いては、実施例1と同じ条件及び方法でカーボンナノチューブを最終に回収しており、回収して得たカーボンナノチューブの平均長さは2.5μm、この横断面の平均直径は15nmであった。
【0091】
具体的に、前記触媒は、前記20分間エチレンと反応した後、触媒上にコークスが多く形成されて非活性化されており、その後はそれ以上反応を続くことができなかった。
【0092】
比較例2(最小流動化速度の差が大きい場合)
流動床を形成する段階において、Al担体にCo及びFeが担持された触媒として粒子密度は1,300kg/m3で、粒子径は375μmであり、最小流動化速度は9.5cm/sである触媒(SK自体製作)を供給したことを除いては、実施例1と同じ条件及び方法でカーボンナノチューブを最終に回収しており、回収して得たカーボンナノチューブの平均長さは2.7μm、この横断面の平均直径は15nmであった。
【0093】
比較例3(充填層の直径に対する高さの比が小さい場合)
充填層の縦横比が0.7であるものと形成したことを除いては、実施例1と同じ条件及び方法でカーボンナノチューブを最終に回収しており、回収して得たカーボンナノチューブの平均長さは2.8μm、この横断面の平均直径は15nmであった。
【0094】
実験例
前記実施例1及び前記比較例1から3による各カーボンナノチューブの様々な物性を評価して下記表1に記載した。
【0095】
評価方法
実験例1:カーボンナノチューブの平均直径及び長さ
測定方法:前記実施例1及び前記比較例1から3による各カーボンナノチューブ30個をSDS(Sodium Dodacyl Sulfate)2wt%溶液に超音波均質機(sonicator)を利用して分散させた後、TEM(Transmission Electron Microscopy)を利用して直径を測定し、これらの平均値を計算して平均直径を得た。
【0096】
また、前記各30個のカーボンナノチューブに対してSEM(Scanning Electron Microscope)を利用して長さを測定し、これらの平均値を計算して平均長さを得た。
【0097】
実験例2:最小流動化速度及びこれらの間の差異
測定方法:前記実施例1及び前記比較例1から2で使用した触媒各々に対して、直径15cmの透明アクリルで製作された流動化Cold Modelで流動化速度の増加による流動床圧力降下を測定して、前記圧力降下が一定となる時点の流動化速度をそれぞれ測定し、最小流動化速度として評価した。
【0098】
次いで、下記計算式1に代入して最小流動化速度差を計算した:
【0099】
[計算式1]
最小流動化速度の差(ΔV、cm/s)=|Vcat-VCNT product|
前記Vcatは触媒の最小流動化速度であり、前記Vcat-VCNT productは流動床を形成する段階において反応器に供給するカーボンナノチューブの最小流動化速度である。
【0100】
実験例3:カーボンナノチューブの合成収率
測定方法:前記実施例1及び前記比較例1から3において、秤を利用して反応器に供給した触媒の重さをそれぞれ測定して、成長が完了され回収して得たカーボンナノチューブそれぞれの重さを測定し、下記計算式3に代入して合成収率を計算した。
【0101】
[計算式3]
合成収率(Yield、%)={(回収して得たカーボンナノチューブの重さ)-(触媒の重さ)}/(供給された炭化水素内の炭素の重さ)×100
実験例4:カーボンナノチューブの純度
測定方法:TGA(Thermogravimetric Analysis、TA社@500)を利用して10℃/min、Air条件下で、常温から900℃まで昇温して残留量を測定することで、前記実施例1及び前記比較例1から3による各カーボンナノチューブの純度を、この技術分野で公知された計算式に従って計算した。
【0102】
【表1】
【0103】
前記表1に記載されたように、前記実施例1によるカーボンナノチューブは、平均長さが3.0μm以上で長く、合成収率はいずれも35.0%以上で優れており、純度も80.0%以上で優れていることを明確に確認した。
【0104】
一方、前記比較例1から3によるカーボンナノチューブは、平均長さがより短くて、合成収率及び純度がより低いことを確認しており、特に比較例1によるカーボンナノチューブの場合、触媒の活性の維持時間が一番短くて、成長が完了されて得たカーボンナノチューブの平均長さ、合成収率及び純度がいずれも劣ることを確認した。
【0105】
図1において、本発明の実施例1及び比較例2によるカーボンナノチューブの製造方法において、反応時間によって各触媒の活性度合いが変わるグラフを示す。ソースガスであるエチレンと触媒の反応がより円滑に進めるほど反応器内のエチレン含量が低くなり、それによりエチレン含量が低いほど触媒の活性がさらに長く維持されることを示す。
【0106】
図1に示したように、実施例1の場合、比較例2に比べて反応時間が長くなるほど反応器内のエチレン含量がさらに低いので、触媒の活性が低下せず、さらに長く維持することが確認できる。
【0107】
また、図2は、本発明の実施例1及び比較例2によるカーボンナノチューブの製造方法において、流動床の高さによって温度が変わるグラフを示す。
【0108】
図2に示したように、実施例1の場合、比較例2に比べて流動床の高さによる温度差が大きくなくて、それによりソースガスと触媒との反応によって発生する熱はさらに効果的に分散されることが確認できる。
【0109】
また、図3において、本発明の一具体例によるカーボンナノチューブの製造方法において、充填層の直径に対する高さの比が変わるにつれて収率が変わるグラフを示す。前記充填層の直径に対する高さの比が増加するほど収率は増加するが、約1.5を超えてからは増加する度合いが微々たるものであることが分かる。
【0110】
前記表1においても同様、充填層の縦横比が1である実施例1の場合、縦横比が0.7である比較例3に比べて収率が優れていることが確認できる。

図1
図2
図3