(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】天井構造及び天井構造において使用される連結部材用位置調節部材
(51)【国際特許分類】
E04B 9/18 20060101AFI20220707BHJP
E04B 9/06 20060101ALI20220707BHJP
E04B 9/20 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
E04B9/18 A
E04B9/06 E
E04B9/20 D
(21)【出願番号】P 2017231444
(22)【出願日】2017-12-01
【審査請求日】2020-12-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 三洋工業株式会社本社において平成29年12月1日に開催された記者会見において配布された資料
(73)【特許権者】
【識別番号】000177139
【氏名又は名称】三洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【氏名又は名称】八木田 智
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(72)【発明者】
【氏名】金井 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】高石 幸寿
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】白崎 了悟
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-040036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/18
E04B 9/06
E04B 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の躯体と、天井板、野縁及び野縁受けを含む天井とを剛性の高い連結部材を用いて躯体の上下方向で一体的に緊結して成る天井構造において、
躯体における前記天井の上方に架け渡された支持部材に、前記連結部材の上部を上下方向にスライド可能にガイドできる位置調節部材を設け、
前記位置調節部材で前記連結部材をガイドしながら前記天井を構成する野縁受けの高さに合うように前記連結部材の高さを調節した後、前記連結部材の上部を前記支持部材に緊結し、かつ、前記連結部材の下部を前記野縁受けに緊結するように構成され
、かつ、
前記位置調節部材が、背板の両側から立ち上がる一対の側板を有する断面コ字状に形成された位置調節用金具を備え、
前記位置調節用金具の前記背板を、前記支持部材の適当な位置に緊結することにより、前記一対の側板の間で前記連結部材をガイドし、かつ、前記一対の側板に前記連結部材を緊結することができるように構成されている
ことを特徴とする天井構造。
【請求項2】
前記位置調節部材が、前記支持部材に沿って移動可能に構成され、
前記位置調節部材の前記支持部材に対する位置を確定した後に、前記位置調節部材を前記支持部材に緊結することができるように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の天井構造。
【請求項3】
前記位置調節部材が、前記位置調節用金具と別体に構成された板状体から成る金具保持用板をさらに備え、
前記位置調節用金具と前記金具保持用板とを前記支持部材の一部を挟んで連結可能に構成し、それにより、該位置調節部材が前記支持部材に沿って移動可能となり、
前記支持部材に対する前記位置調節部材の位置を確定した後、前記位置調節部材の位置調節用金具を前記支持部材に緊結することができるように構成されている
ことを特徴とする請求項
1に記載の天井構造。
【請求項4】
前記支持部材がリップみぞ形鋼から成り、
前記金具保持用板が前記リップみぞ形鋼の内側に配置され、前記位置調節用金具が前記リップみぞ形鋼の外側に配置され、前記金具保持用板と前記位置調節用金具とを、前記リップみぞ形鋼のリップを挟んで連結することができるように構成されている
ことを特徴とする請求項
3に記載の天井構造。
【請求項5】
建物の躯体に架け渡された支持部材と、天井板、野縁及び野縁受けを含む天井の野縁受けとを、剛性の高い連結部材を用いて躯体の上下方向で一体的に緊結して成る天井構造において使用される
連結部材用の位置調節部材であって、
前記位置調節部材が、
背板の両側から立ち上がる一対の側板を有する断面コ字状に形成された位置調節用金具と、
前記位置調節用金具と別体に構成された板状体から成る金具保持用板と
を備え、
前記位置調節用金具と前記金具保持用板とを前記支持部材の一部を挟んで連結可能に構成し、それにより、該位置調節部材が前記支持部材に沿って移動可能となり、
前記支持部材に対する前記位置調節部材の位置を確定した後、前記位置調節部材の位置調節用金具を前記支持部材に緊結し、
次いで、前記位置調節用金具の側板間で前記連結部材をガイドしながら前記天井を構成する野縁受けの高さに合うように前記連結部材の高さを調節した後、前記連結部材の上部を前記位置調節用金具の側板を介して前記支持部材に緊結し、かつ、前記連結部材の下部を前記野縁受けに緊結することができるように構成した
ことを特徴とする天井構造において
使用される連結部材用位置調節部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の躯体に天井を剛に緊結してなる天井構造及び天井構造において使用される連結部材用位置調節部材に関する。
【背景技術】
【0002】
地震等による天井落下事故を防止するための天井構造としては、天井板を無くす直天井構造、既存の吊天井に対してブレースを設けて補強する補強吊り天井構造の他、建物と天井と一体化し剛な天井とする準構造化天井構造等がある。
特に、音楽ホール等のように音響性能を必要する建物では、音をより良く反射させるために天井板として重い材料を使用することが多いため天井落下防止のための構造は重要である。
特許文献1には、天井板の揺れを低減させるためにブレースを設けた補強吊天井構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の天井構造によればブレースを設けることによって吊天井構造における天井板の揺れを低減させることはできるものの、音楽ホール等では、天井裏にスピーカー等の音響設備を導入することが求められるため、複数のブレースが天井裏に設けられていることは望ましくない。
また、上記したように音楽ホール等で使用される天井板は、それ自体が重いものが多い上に、天井裏に音響設備等の重量物を配置する可能性があるため吊天井構造よりも剛性が強い準構造化天井構造又はそれに準ずる構造を採用することが望ましい。
しかし、吊ボルトを使用しない準構造化天井構造では、大引鋼等の剛性の高い連結部材を用いて建物の躯体に設けられた梁部材と、天井板、野縁及び野縁受けを含む天井とを一体になるよう緊結する必要があるところ、音楽ホール等では、音響性能を高めるために天井板に段差を設ける等、音響に適した独特な形状を採用することが多く、場所により躯体の梁部材と野縁受けとの間の間隔が異なるため、連結部材の高さ調節や位置調節が難しいという問題がある。
本発明は、上記した従来の問題点を解決し、大引鋼等の剛性の高い連結部材を用いて建物の躯体と天井とを、躯体の上下方向で連結して一体化する準構造化天井構造等の天井構造において、施工時に容易に、野縁受けの位置や高さに合わせて、前記連結部材の高さや位置を調節することが可能な天井構造及び天井構造において使用される連結部材用位置調節部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した目的を達成するために、本発明に係る天井構造は、建物の躯体と、天井板、野縁及び野縁受けを含む天井とを剛性の高い連結部材を用いて躯体の上下方向で一体的に緊結して成る天井構造において、躯体における前記天井の上方に架け渡された支持部材に、前記連結部材の上部を上下方向にスライド可能にガイドできる位置調節部材を設け、前記位置調節部材で前記連結部材をガイドしながら前記天井を構成する野縁受けの高さに合うように前記連結部材の高さを調節した後、前記連結部材の上部を前記支持部材に緊結し、かつ、前記連結部材の下部を前記野縁受けに緊結するように構成されていることを特徴とする.
また、前記位置調節部材を、前記支持部材に沿って移動可能に構成し、前記位置調節部材の前記支持部材に対する位置を確定した後に、前記位置調節部材を前記支持部材に緊結することができるように構成してもよい。
さらにまた、前記位置調節部材として、背板の両側から立ち上がる一対の側板を有する断面コ字状に形成された位置調節用金具を設け、前記位置調節用金具の前記背板を、前記支持部材の適当な位置に緊結することにより、前記一対の側板の間で前記連結部材をガイドし、かつ、前記一対の側板に前記連結部材を緊結することができるように構成することもできる。
また、前記位置調節部材として、前記位置調節用金具と別体に構成された板状体から成る金具保持用板をさらに設け、前記位置調節用金具と前記金具保持用板とを前記支持部材の一部を挟んで連結可能に構成し、それにより、該位置調節部材が前記支持部材に沿って移動可能とし、前記支持部材に対する前記位置調節部材の位置を確定した後、前記位置調節部材の位置調節用金具を前記支持部材に緊結することができるように構成することもできる。
さらにまた、前記支持部材をリップみぞ形鋼で構成し、前記金具保持用板を前記リップみぞ形鋼の内側に配置し、前記位置調節用金具を前記リップみぞ形鋼の外側に配置して、前記金具保持用板と前記位置調節用金具とを、前記リップみぞ形鋼のリップを挟んで連結することができるように構成してもよい。
また、上記した目的を達成するために、本発明に係る天井構造において使用される連結部材用位置調節部材は、建物の躯体に架け渡された支持部材と、天井板、野縁及び野縁受けを含む天井の野縁受けとを、剛性の高い連結部材を用いて躯体の上下方向で一体的に緊結して成る天井構造において使用される前記連結部材用位置調節部材であって、前記位置調節部材が、背板の両側から立ち上がる一対の側板を有する断面コ字状に形成された位置調節用金具と、前記位置調節用金具と別体に構成された板状体から成る金具保持用板とを備え、前記位置調節用金具と前記金具保持用板とを前記支持部材の一部を挟んで連結可能に構成し、それにより、該位置調節部材が前記支持部材に沿って移動可能となり、前記支持部材に対する前記位置調節部材の位置を確定した後、前記位置調節部材の位置調節用金具を前記支持部材に緊結し、次いで、前記位置調節用金具の側板間で前記連結部材をガイドしながら前記天井を構成する野縁受けの高さに合うように前記連結部材の高さを調節した後、前記連結部材の上部を前記位置調節用金具の側板を介して前記支持部材に緊結し、かつ、前記連結部材の下部を前記野縁受けに緊結することができるように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る天井構造は、建物の躯体と、天井板、野縁及び野縁受けを含む天井とを剛性の高い連結部材を用いて躯体の上下方向で一体的に緊結して成る天井構造において、躯体における前記天井の上方に架け渡された支持部材に、前記連結部材の上部を上下方向にスライド可能にガイドできる位置調節部材を設け、前記位置調節部材で前記連結部材をガイドしながら前記天井を構成する野縁受けの高さに合うように前記連結部材の高さを調節した後、前記連結部材の上部を前記支持部材に緊結し、かつ、前記連結部材の下部を前記野縁受けに緊結するように構成されているので、一般的なフラットな天井板は勿論のこと、音楽ホール等で採用される複雑な形状の天井板であっても、天井板の形状に合わせて連結部材の上下方向位置を容易に調節して準構造化天井構造を容易に得ることができる。また、このように剛性の高い連結部材で躯体と野縁受けとを緊結する天井構造を採用することにより、天井構造体全体の強度が向上するのは勿論のこと、ブレース等の障害物がないので天井裏に音響設備等を設置することも容易になる。
また、前記位置調節部材を、また、前記位置調節部材を、前記支持部材に沿って移動可能に構成し、前記位置調節部材の前記支持部材に対する位置を確定した後に、前記位置調節部材を前記支持部材に緊結することができるように構成することにより、施工時に、連結部材の上下方向位置だけでなく、水平方向位置も容易に調節することが可能になる。
さらにまた、前記位置調節部材として、背板の両側から立ち上がる一対の側板を有する断面コ字状に形成された位置調節用金具を設け、前記位置調節用金具の前記背板を、前記支持部材の適当な位置に緊結することで、前記一対の側板の間で前記連結部材をガイドし、かつ、前記一対の側板に前記連結部材を緊結することができるように構成することにより、位置調節用金具の側板は、連結部材の上下方向位置を調節している時はガイドとして機能し、連結部材を固定する時には、梁部材と連結部材とを緊結するためのブラケットとして機能するようになり、簡単な構造で、連結部材の上下位置の調節と、連結部材の緊結を行うことが可能になる。
また、前記位置調節部材として、前記位置調節用金具と別体に構成された板状体から成る金具保持用板をさらに設け、前記位置調節用金具と前記金具保持用板とを前記支持部材の一部を挟んで連結可能に構成し、それにより、該位置調節部材が前記支持部材に沿って移動可能とし、前記支持部材に対する前記位置調節部材の位置を確定した後、前記位置調節部材の位置調節用金具を前記支持部材に緊結することができるように構成した場合、このように前記位置調節用金具と前記金具保持用板とを前記梁部材の一部を挟んで連結可能に構成することで、位置調節部材を梁部材に沿って動かすことが容易になり、位置調節部材の水平方向の位置決めが容易になる。
さらにまた、前記支持部材をリップみぞ形鋼で構成し、前記金具保持用板を前記リップみぞ形鋼の内側に配置し、前記位置調節用金具を前記リップみぞ形鋼の外側に配置して、前記金具保持用板と前記位置調節用金具とを、前記リップみぞ形鋼のリップを挟んで連結することができるように構成することにより、位置調節部材を確実にリップに沿って移動させることが可能になり、位置調節部材の水平方向の位置決めが確実に、しかも、容易になる。
また、本発明に係る天井構造において使用される連結部材用位置調節部材は、建物の躯体に架け渡された支持部材と、天井板、野縁及び野縁受けを含む天井の野縁受けとを、剛性の高い連結部材を用いて躯体の上下方向で一体的に緊結して成る天井構造において使用される前記連結部材用位置調節部材であって、前記位置調節部材が、背板の両側から立ち上がる一対の側板を有する断面コ字状に形成された位置調節用金具と、前記位置調節用金具と別体に構成された板状体から成る金具保持用板とを備え、前記位置調節用金具と前記金具保持用板とを前記支持部材の一部を挟んで連結可能に構成し、それにより、該位置調節部材が前記支持部材に沿って移動可能となり、前記支持部材に対する前記位置調節部材の位置を確定した後、前記位置調節部材の位置調節用金具を前記支持部材に緊結し、次いで、前記位置調節用金具の側板間で前記連結部材をガイドしながら前記天井を構成する野縁受けの高さに合うように前記連結部材の高さを調節した後、前記連結部材の上部を前記位置調節用金具の側板を介して前記支持部材に緊結し、かつ、前記連結部材の下部を前記野縁受けに緊結することができるように構成されているので、音楽ホール等で採用される複雑な形状の天井板であっても、天井板の形状に合わせて連結部材の上下方向位置及び横方向位置を容易に調節して準構造化天井構造を容易に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】(a)~(f)は本発明に係る天井構造において使用される連結部材用位置調節部材を構成する位置調節用金具の正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図及び底面図を示している。
【
図2】(a)~(f)は本発明に係る天井構造において使用される連結部材用位置調節部材を構成する金具保持板の正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図及び底面図を示している。
【
図3】(a)~(c)は、金具保持板を、リップ溝形鋼に嵌入する行程を示している。
【
図4】(a)は、リップ溝形鋼のリップを挟んで金具保持板と位置調節用金具を連結した状態を正面から見た図、(b)は(a)におけるX-X断面図である。
【
図5】位置調節用金具における側板の間に連結部材を配置した状態を示す
図4(b)に対応する図である。
【
図6】(a)及び(b)は、位置調節用金具を使用して連結部材の位置を調節する状態を示す図である。
【
図7】位置調節部材Aを用いて構成した準構造化天井構造の一実施例を示す図である。
【
図8】位置調節部材Aを用いて構成した準構造化天井構造の別の実施例を示す図である。
【
図9】位置調節部材Aを用いて構成した準構造化天井構造のさらに別の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面に示した一実施例を参照して、本発明に係る天井構造及び天井構造において使用される連結部材用位置調節部材の実施の形態を説明していく。
【0009】
本実施例においては、位置調節部材Aは、
図1に示す位置調節用金具1と
図2に示す金具保持用板10とから成る。
図1において、(a)は本発明に係る位置調節部材における位置調節用金具の正面図、(b)は同位置調節用金具の背面図、(c)は同位置調節用金具の左側面図、(d)は同位置調節用金具の右側面図、(e)は同位置調節用金具の平面図、(f)は同位置調節用金具の底面図を示している。
図2において、(a)は本発明に係る位置調節部材における金具保持用板の正面図、(b)は同金具保持用板の背面図、(c)は同金具保持用板の左側面図、(d)は同金具保持用板の右側面図、(e)は同金具保持用板の平面図、(f)は同金具保持用板の底面図を示している。
【0010】
図1に示すように、前記位置調節用金具1は、背板2と、背板2の両側において立ち上がる一対の側板3及び4を備えた断面コ字状の板体で構成されている。
背板2の上部は、前記側板3及び4より若干上方(
図1における上方)に突出し、かつ、側板3及び4と反対方向に曲げられ位置合わせ用係止部5を構成している。
背板2には、金具保持用板10と位置調節用金具1とをボルト及びナットで連結するための連結孔6及び7が形成されている。また、背板2には、位置決め後に、それを後述する躯体に架け渡された梁部材等の支持部材20にビス等によって緊結するための複数の緊結孔8が形成されている。
さらに位置調節用金具1の側板3及び4には、それぞれ、それらを後述する連結部材25と緊結するための複数の緊結孔9が形成されている。
図2に示すように、前記金具保持用板10は、背板11と、背板11の両側において立ち上がる一対の補強フランジ12及び13を備えた板体で構成されている。
背板11の一対の対向する角部は、前記支持部材20の内側に金具保持用板10を嵌入し易くすることができるように、切欠部11aが形成されている。
上記したように構成された背板11には、位置調節用金具1の連結孔6及び7と対応する位置に連結孔14及び15が形成されている。
【0011】
次に、上記した位置調節部材Aを使用して、建物の躯体と、天井とを剛性の高い連結部材によって、躯体の上下方向で一体的に緊結して成る準構造化天井構造について説明をしていく。
建物の躯体には、角形鋼、C形鋼、リップ溝形鋼、H形鋼、又はL字鋼等から成る梁部材としての支持部材20が架け渡されており、前記天井は、複数並べて配置された野縁21と、前記野縁21の下面に取り付けられた天井板22と、前記野縁21の上面に前記野縁21と直交する方向に配置され、前記野縁21にクリップ材を介して連結される野縁受け22とから成る(
図6参照)。
本発明に係る準構造化天井構造においては、前記支持部材20と、前記野縁受け22とが、角形鋼、C形鋼、リップ溝形鋼、H形鋼、又はL字鋼等からなる剛性の高い連結部材25によって一体的に連結される。
【0012】
図3(a)~(c)は、金具保持用板10を、支持部材20に取り付ける行程を示している。尚、この実施例では、支持部材20はリップ溝形鋼から成る。
始めに、金具保持用板10をその切欠き部11aが上下方向に位置するように回転させ(
図3(a))、該金具保持用板10を、その片側からリップ20aの内側に入れ(
図3(b))、全体がリップ20aの内側に入った後に、その連結孔14及び15が垂直方向に並ぶように回転させる(
図3(c))。前記金具保持用板10の寸法は、
図3(c)に示す状態において、少なくとも、その上部及び下部がリップ20aと重なるように決められている。
上記したように金具保持用板10をリップ溝形鋼20の内側に入れた後、位置調節用金具1を、その係止部5がリップ溝形鋼20の上側角部に係止するように、リップ溝形鋼20の前面に配置し、位置調節用金具1の連結孔6及び7と、金具保持用板10の連結孔14及び15との位置が合致するように金具保持用板10と位置調節用金具1との位置を調節し、次いで、ボルト及びナットを用いて前記連結孔6及び14並びに7及び15を介して、位置調節用金具1及び金具保持用板2を連結する(
図4参照。)
この状態において、位置調節用金具1と金具保持用板10とは、リップ溝形鋼20のリップ20aを挟んで連結されているため、支持部材A(位置調節用金具1及び金具保持用板10)は、リップ溝形鋼20から外れることはないが、リップ20aに沿って左右に動かすことができる。
この状態で、位置調節部材Aを、リップ溝形鋼20における連結部材25を設ける位置に移動させ、位置決め後に、位置調節用金具1の背板2に設けられている緊結孔8を介して、ビス等の適当な留め具(図示せず)で支持部材20であるリップ溝形鋼20に緊結する。
【0013】
次いで、位置調節用金具1の側壁3及び4間に、連結部材25を配置する。この連結部材25は、上記したように、躯体の支持部材20と、天井の野縁受け23とを、準構造化の基準(即ち、振動固定周期0.1秒以下)を満たす強度で連結するものであり(
図5参照)、例えば、角形鋼、C形鋼、リップ溝形鋼、H形鋼、又はL字鋼を使用することができる。
この状態において連結部材25は、位置調節用金具1によって、その左右方向の位置が固定され、位置調節用金具1の側壁3及び4に沿って上下方向にのみ移動できる状態にある。
この状態で、連結部材25の下部を、支持部材20であるリップ溝形鋼20の下方に位置する野縁受け22の高さに合わせる。
図6(a)は連結部材25の上下方向に位置合わせをする前の状態、
図6(b)は連結部材25の上下方向の位置合わせが終わった状態を各々示している。
連結部材25の上下方向に位置合わせが終了した後、連結部材25の上部は、位置調節用金具1の側壁3及び4に設けられた複数の緊結孔9を介してビス等の適当な留め具(図示せず)で位置調節用金具1の側壁3及び4に緊結され、連結部材25の下部は野縁受け23に、ビス等の適当な留め具(図示せず)で緊結される。
これにより、支持部材20と野縁受け23とが剛に緊結された、即ち、躯体と天井とが剛に緊結された準構造化天井構造を得ることができる。
【0014】
上記したように、本実施例によれば、位置調節部材Aを構成する位置調節用金具1と金具保持用板10とをリップを挟むように連結することによって、位置調節部材Aがリップ溝形鋼から外れて落下する心配なく、簡単に、左右方向に位置調節をすることが可能になり、かつ、固定後の位置調節部材Aの位置調節用金具1の一対の側壁3及び4の間で連結部材24をガイドすることによって連結部材24は、位置連れを生じさせることなく、上下位置を簡単に調節することが可能になる。
【0015】
次に、
図7~9を参照して、上記したように構成された位置調節部材Aを用いて構成した準構造化天井構造の幾つかの実施例を説明する。
ここで説明する実施例においては、位置調節部材Aにおける位置調節用金具1は
図4~
図6に示した実施例とは上下が逆向きに使用されている
図中、
図1~6と同じ構成部材には、同一の符号を付す。
図7において、天井は、水平に配置した複数の野縁21の下面に天井板22を固定し、野縁21に野縁受け23を耐震クリップ等で連結して成り、躯体には、支持部材20が掛渡されている。
前記野縁受け23と、前記支持部材20とが連結部材25により剛に連結されている。
連結部材25の上部は、位置調節部材Aを介して、支持部材20にビス等で緊結されており、連結部材25の下部は野縁受け23にビス等で緊結されている。
。
【0016】
図8では、天井は、段を付けて天井板22を配置してなり、各天井板22は野縁21に固定され、各野縁受け23は野縁21に耐震クリップ等で連結されている。段付き部分では、上側に位置する野縁受け23aと、下側に位置する野縁受け23bとが垂直方向に配置された野縁受け23cで連結されている。
躯体には、支持部材20が掛渡されている。
上記したように構成された前記野縁受け23と、前記支持部材20とが連結部材25により剛に連結されている。
連結部材25の上部は、位置調節部材Aを介して、支持部材20にビス等で緊結されており、連結部材25の下部は野縁受け23にビス等で緊結されている。
また、上側に位置する野縁受け23aは、段付き部を超えて延設され、下側に位置する野縁受け23bに固定された連結部材25に、その端部が固定されるように構成されている。
【0017】
図9では、天井は、角度を付けて天板22を配置してなり、各天井板22は野縁21に固定され、各野縁受け23は野縁21に耐震クリップ等で連結されている。
前記野縁受け23と、前記支持部材20とが連結部材25により剛に連結されている。
連結部材25の上部は、位置調節部材Aを介して、支持部材20にビス等で緊結されており、連結部材25の下部は野縁受け23にビス等で緊結されている。
【0018】
本実施例では、位置調節部材Aを位置調節用金具1と金具保持用板2とで構成し、位置調節用金具1と金具保持用板2とでリップ溝形鋼のリップを挟むように構成されているが、位置調節部材Aの構成は本実施例に限定されることなく、例えば、金具保持用板を設けずに、位置調節用金具のみで構成し、梁部材の適当な位置で位置調節用金具1を梁部材に緊結してもよい。この場合、必須ではないが位置調節用金具1自身に、梁部材のリップ等を挟むことができるフック等を一体的に形成することもできる。
また、本実施例では、位置調節部材Aを、梁部材に直接設け、梁部材に連結部材を緊結するように構成した例を説明しているが、この構成は本実施例に限定されることなく、例えば、梁部材等に別体の支持部材を設け、当該支持部材に位置調節部材Aを取り付けて連結部材を緊結するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0019】
A 位置調節部材
1 位置調節用金具
2 背板
3 側板
4 側板
5 位置合わせ用係止部
6 連結孔
7 連結孔
8 緊結孔
9 緊結孔
10 金具保持用板
11 背板
11a 切欠き部
12 補強フランジ
13 補強フランジ
14 連結孔
15 連結孔
20 支持部材
21 野縁
22 天井板
23 野縁受け
25 連結部材