(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】メディア巻き取り装置、印刷装置、及びメディアの巻き取り方法
(51)【国際特許分類】
B65H 23/06 20060101AFI20220707BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20220707BHJP
B65H 23/188 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
B65H23/06
B41J29/38
B65H23/188
(21)【出願番号】P 2018041988
(22)【出願日】2018-03-08
【審査請求日】2020-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飽田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 友裕
(72)【発明者】
【氏名】堀田 耕作
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-204146(JP,A)
【文献】特開2014-024643(JP,A)
【文献】特開2003-338033(JP,A)
【文献】特開2001-063884(JP,A)
【文献】特開2013-031953(JP,A)
【文献】特開2006-182496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 23/06-23/34
B41J 15/00-15/24
B41J 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送方向に送られる帯状のメディアを押圧して前記メディアにテンションを付加するテンションローラと、
前記テンションローラの前記搬送方向の下流側に設けられ、前記テンションローラによって押圧された前記メディアを折り返し、前記メディアに追従して回転可能な折り返しローラと、
前記折り返しローラの回転にブレーキをかけることが可能な負荷機構と、
前記折り返しローラで折り返された前記メディアを巻き取る巻き取り部と
を備え、
前記巻き取り部で巻き取られた前記メディアの径
が所定値以上になった場合、前記負荷機構により前記折り返しローラに掛けられるブレーキ力
が増加するように制御する
メディア巻き取り装置。
【請求項2】
前記負荷機構は、前記折り返しローラの回転を停止可能である
請求項1に記載のメディア巻き取り装置。
【請求項3】
前記折り返しローラは、前記メディアに接触する面が金属材料を用いて滑らかな状態に形成される
請求項1又は請求項2に記載のメディア巻き取り装置。
【請求項4】
前記テンションローラに巻かれる前記メディアの巻き付け角が所定の角度範囲となるように前記テンションローラに対して前記搬送方向の上流側で前記メディアを折り返す上流側折り返しローラを備える
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のメディア巻き取り装置。
【請求項5】
所定の搬送方向に送られる帯状のメディアに画像を形成する画像形成装置と、
前記画像が形成された前記メディアを巻き取る請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のメディア巻き取り装置と
を備える印刷装置。
【請求項6】
前記画像形成装置は、前記メディア巻き取り装置によって巻き取られた状態で前記画像が前記メディアの前記搬送方向に直交する幅方向に均一に配置されるように前記画像の形成位置を調整する
請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
所定の搬送方向に送られる帯状のメディアをテンションローラで押圧して前記メディアにテンションを付加することと、
前記テンションローラの前記搬送方向の下流側に折り返しローラが設けられ、前記メディアに追従して回転可能な前記折り返しローラの回転にブレーキをかけた状態で、当該折り返しローラにより、前記テンションローラによって押圧された前記メディアを折り返すことと、
前記折り返しローラで折り返された前記メディアを巻き取りローラで巻き取ることと、
前記巻き取りローラで巻き取られた前記メディアの径
が所定値以上になった場合、前記折り返しローラのブレーキ力
が増加するように制御することと
を含むメディアの巻き取り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メディア巻き取り装置、印刷装置、及びメディアの巻き取り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロール状に巻かれた紙等のメディアを繰り出して画像等を形成する印刷装置では、画像形成後のメディアを巻き取る巻き取り装置が設けられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような巻き取り装置では、メディアの搬送距離が長くなる場合、テンションローラ等によりメディアに掛かるテンションを制御している。
【0005】
このとき、メディアに付与するテンションを高くし過ぎると、テンションによりメディアが幅方向に収縮し、巻き取り部においてシワが発生する場合がある。一方、メディアに付与されるテンションを低くし過ぎると、巻き取り部での巻き取り位置が幅方向に変動し、メディアを巻き取った状態において幅方向の端面の一部が突出する場合がある。このため、メディアを巻き取る際のシワの発生を抑制し、かつ巻き取り位置の変動を抑制することが求められている。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、メディアを巻き取る際のシワの発生を抑制し、かつ巻き取り位置の変動を抑制することが可能なメディア巻き取り装置、印刷装置、及びメディアの巻き取り方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るメディア巻き取り装置は、所定の搬送方向に送られる帯状のメディアを押圧して前記メディアにテンションを付加するテンションローラと、前記テンションローラによって押圧された前記メディアを折り返し、前記メディアに追従して回転可能な折り返しローラと、前記折り返しローラの回転に負荷をかけることが可能な負荷機構と、前記折り返しローラで折り返された前記メディアを巻き取る巻き取り部とを備える。
【0008】
本発明によれば、テンションローラから巻き取り部までの搬送経路に折り返しローラを配置することにより、搬送経路を短くすることができる。テンションローラから巻き取り部までのメディアの搬送経路が長くなると、同じテンションが掛かる場合でも、メディアの幅方向の中央部分にシワが生じやすくなる。一方、テンションローラから巻き取り部までの搬送経路に折り返しローラが設けられても、負荷をかけることなくメディアの移動に追従して回転する場合には、同様にメディアの幅方向の中央部分にシワが生じやすくなる。これに対して、本発明によれば、負荷機構により、折り返しローラの回転に負荷をかけることができる。折り返しローラの回転に負荷をかけることにより、メディアの搬送に対して負荷がかかるため、シワの発生を未然に抑制できる。また、メディアに対してより強いテンションを付与することができるため、巻き取り位置の変動を抑制できる。
【0009】
上記のメディア巻き取り装置において、前記負荷機構は、前記折り返しローラの回転を停止可能であってもよい。
【0010】
これにより、メディアが幅方向に縮むことをより確実に抑制できるため、シワの発生を抑制できる。
【0011】
上記のメディア巻き取り装置において、前記折り返しローラは、前記メディアに接触する面が金属材料を用いて滑らかな状態に形成されてもよい。
【0012】
これにより、メディアに対してシワの発生を抑制しつつ、メディアを円滑に搬送することができる。
【0013】
上記のメディア巻き取り装置は、前記テンションローラに巻かれる前記メディアの巻き付け角が所定の角度範囲となるように前記テンションローラに対して前記搬送方向の上流側で前記メディアを折り返す上流側折り返しローラを備えてもよい。
【0014】
これにより、上流側折り返しローラと折り返しローラとの間でテンションローラに対する巻き付け角を所定の角度範囲とすることができるため、メディアの搬送経路の複雑化を抑制できる。
【0015】
本発明に係る印刷装置は、所定の搬送方向に送られる帯状のメディアに画像を形成する画像形成装置と、前記画像が形成された前記メディアを巻き取る上記のメディア巻き取り装置とを備える。
【0016】
本発明によれば、画像を形成した後のメディアを巻き取る際に、シワの発生を抑制し、巻き取り位置の変動を抑制することができるため、高品質の印刷物を形成することができる。
【0017】
上記の印刷装置において、前記画像形成装置は、前記メディア巻き取り装置によって巻き取られた状態で前記画像が前記メディアの前記搬送方向に直交する幅方向に均一に配置されるように前記画像の形成位置を調整してもよい。
【0018】
これにより、メディアに形成される画像の厚みにより、メディアを巻き取った状態で幅方向に厚さを均一にすることができる。
【0019】
本発明に係るメディアの巻き取り方法は、所定の搬送方向に送られる帯状のメディアをテンションローラで押圧して前記メディアにテンションを付加することと、前記メディアに追従して回転可能な折り返しローラの回転に負荷をかけた状態で、当該折り返しローラにより、前記テンションローラによって押圧された前記メディアを折り返すことと、前記折り返しローラで折り返された前記メディアを巻き取ることとを含む。
【0020】
本発明によれば、テンションローラから巻き取り部までの搬送経路に折り返しローラを配置することにより、搬送経路を短くすることができる。また、負荷機構により、折り返しローラの回転に負荷をかけることにより、メディアの搬送に対して負荷をかけることができ、シワの発生を未然に抑制できる。また、メディアに対してより強いテンションを付与することができるため、巻き取り位置の変動を抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、メディアを巻き取る際のシワの発生を抑制し、巻き取り位置の変動を抑制することが可能なメディア巻き取り装置、印刷装置、及びメディアの巻き取り方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る印刷装置の一例を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、メディア巻き取り装置の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、折り返しローラの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、メディア巻き取り装置の動作を示す図である。
【
図5】
図5は、メディア巻き取り装置の動作を示す図である。
【
図6】
図6は、比較例に係るメディアの巻き取り状態の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、比較例に係るメディアの巻き取り状態の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係るメディアの巻き取り状態の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本実施形態に係る印刷装置の画像形成装置により画像を形成する動作の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るメディア巻き取り装置、印刷装置、及びメディアの巻き取り方法の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0024】
図1は、本実施形態に係る印刷装置100の一例を模式的に示す図である。
図1に示す印刷装置100は、帯状のメディアMを搬送し、メディアMの画像形成面である第1面Maに文字や図形等の画像を形成する。本実施形態では、メディアMとして、例えば布帛が用いられる場合を例に挙げるが、これに限定されず、紙、樹脂フィルム等、他の種類のメディアであってもよい。
図1に示すように、印刷装置100は、繰り出し装置10と、画像形成装置20と、巻き取り装置(メディア巻き取り装置)30とを備える。
【0025】
繰り出し装置10は、ロール状に巻かれたメディアMを画像形成装置20へと繰り出す。繰り出し装置10は、フレーム11と、回転駆動部12と、繰り出しローラ13と、案内ローラ14と、テンションローラ15と、テンション調整機構16と、案内ローラ17、18と、を有する。回転駆動部12は、例えばモータ等の駆動源を有し、繰り出しローラ13を回転させる。繰り出しローラ13は、メディアMがロール状に巻かれた状態であり、回転駆動部12の駆動力により回転することでメディアMを繰り出す。案内ローラ14は、繰り出しローラ13から繰り出されるメディアMを折り返す。テンションローラ15は、案内ローラ14で折り返されたメディアMにテンションを付与する。テンション調整機構16は、テンションローラ15からメディアMに付与されるテンションを調整する。案内ローラ17、18は、テンションローラ15で折り返されたメディアMを繰り出し装置10の外部に送り出す。
【0026】
画像形成装置20は、繰り出し装置10から繰り出されたメディアMの第1面Maに画像を形成し、当該メディアMを巻き取り装置30に送る。画像形成装置20は、メディア搬送機構21と、噴射ヘッド22と、導入ローラ23と、メディア押圧ローラ24と、メディア剥離ローラ25とを有する。メディア搬送機構21は、ベルト部材21aと、ベルト駆動ローラ21b、21cとを有する。ベルト部材21aは、
図1における時計回りに回動可能である。ベルト部材21aは、メディアMのうち画像が形成される第1面Maとは反対側の第2面Mbを支持する。ベルト部材21aの外周面には、例えばメディアMを貼り付けるための粘着剤等が形成される。メディア搬送機構21は、ベルト駆動ローラ21b、21cがベルト部材21aを回転させることにより、画像形成装置20においてメディアMを搬送方向に移動させつつ支持する。押圧ローラ24は、メディアMをベルト部材21aに押圧する。剥離ローラ25は、画像形成装置20の下流側に搬送されたメディアMをベルト部材21aから剥離する。導入ローラ23は、巻き取り装置30へメディアMを導入する。
【0027】
噴射ヘッド22は、例えば不図示のキャリッジに保持されており、メディアMの搬送方向に交差する走査方向に往復移動可能に設けられる。噴射ヘッド22は、不図示のノズルからメディアMの第1面Maに対して画像形成用のインクを噴射する。噴射ヘッド22は、メディアMの第1面Maにインクを吐出することで、メディアMの第1面Maに画像を形成する。噴射ヘッド22は、例えばこのようなノズルがメディアMの搬送方向に沿って並んでいる。なお、噴射ヘッド22の構成については、上記に限定するものではない。
【0028】
巻き取り装置30は、画像形成装置20から送られた画像形成後のメディアMを巻き取る。
図2は、巻き取り装置30の一例を示す図である。
図2に示すように、巻き取り装置30は、フレーム31と、加熱部32と、中継ローラ33と、上流側折り返しローラ34と、テンションローラ35と、テンション調整機構36と、折り返しローラ37と、回転駆動部38と、巻き取りローラ(巻き取り部)39とを有する。
【0029】
加熱部32は、メディアMの第1面Maに吐出されたインクを加熱して乾燥させ、画像をメディアMに定着させる。加熱部32は、例えばメディアMの搬送方向に沿って複数配置されている。中継ローラ33は、メディアMの第1面Maに接触し、加熱部32により加熱されたメディアMを上流側折り返しローラ34に送る。中継ローラ33は、搬送方向へのメディアMの移動に追従して回転する従動ローラである。メディアMの第1面Maに形成された画像が上記の加熱部32において定着しているため、中継ローラ33によりメディアMを折り返す際に画像の状態を保持できる。
【0030】
上流側折り返しローラ34は、中継ローラ33に対して、図中上方に配置される。上流側折り返しローラ34は、メディアMの第1面Maの裏面である第2面Mbに接触し、メディアMを下方に折り返す。上流側折り返しローラ34は、搬送方向へのメディアMの移動に追従して回転する従動ローラである。
【0031】
テンションローラ35は、上流側折り返しローラ34で折り返されたメディアMの第1面Maを押圧してメディアMにテンションを付加する。テンションローラ35は、搬送方向へのメディアMの移動に追従して回転する従動ローラである。テンションローラ35は、テンション調整機構36により変位可能に設けられる。
【0032】
テンション調整機構36は、テンションローラ35を変位させることで、メディアMに付与されるテンションを調整する。テンション調整機構36は、テンションバー36aと、エアシリンダ機構36bとを有する。テンションバー36aは、一端がテンションローラ35に連結され、他端が軸部36cに連結される。テンションバー36aは、エアシリンダ機構36bにより、軸部36cを中心として回動可能である。テンションバー36aが軸部36cを中心として回動することにより、テンションローラ35を変位させる。エアシリンダ機構36bは、一端(例えば、上側端部)が軸部36dに支持され、他端(例えば、下側端部)がテンションバー36aの連結部36eに連結される。エアシリンダ機構36bは、テンションバー36aを駆動する。
【0033】
折り返しローラ37は、テンションローラ35によって押圧されたメディアMを巻き取りローラ39側に折り返す。折り返しローラ37としては、例えばブレーキローラが用いられる。折り返しローラ37の構成については、後述する。折り返しローラ37は、メディアMの移動に追従して回転可能である。折り返しローラ37は、テンションローラ35の上方に配置され、上流側折り返しローラ34と並んで配置される。折り返しローラ37と、上記した上流側折り返しローラ34とは、テンションローラ35におけるメディアMの巻き付け角が所定の角度範囲となるように配置される。
【0034】
回転駆動部38は、例えばモータ等の駆動源を有し、巻き取りローラ39を回転させる。巻き取りローラ39は、折り返しローラ37で折り返されたメディアMを巻き取り、ロール状に保持する。
【0035】
図3は、折り返しローラ37の一例を示す図である。
図3に示すように、折り返しローラ37は、ローラ本体71と、スピンドル72と、ブレーキパッド73と、エア供給部74と、調整弁75とを有する。ローラ本体71は、円柱状であり、メディアMに接触する面が金属材料を用いて滑らかな状態に形成される。なお、ローラ本体71の表面を構成する材料は、金属材料に限定されず、ゴム等の樹脂材料であってもよいし、他の材料であってもよい。また、ローラ本体71の表面が金属材料を用いて形成される場合、ローラ本体71の表面の少なくとも一部にゴム等の樹脂材料を配置したり、溶射等によりローラ本体71の表面を粗く形成してもよい。これにより、メディアMの搬送に対して負荷を掛けやすくすることができる。
【0036】
スピンドル72は、ローラ本体71と一体で設けられ、ローラ本体71の回転軸の両端から突出して設けられる。ブレーキパッド73は、スピンドル72を囲う位置に配置される。ブレーキパッド73は、スピンドル72に対して回転軸の放射方向に移動可能である。ブレーキパッド73は、スピンドル72側に移動することにより、スピンドル72の外周面を押圧可能である。ブレーキパッド73は、スピンドル72の外周面を押圧することにより、ローラ本体71の回転に負荷をかけることが可能である。
【0037】
エア供給部74は、ブレーキパッド73にエアAを供給することで、ブレーキパッド73を駆動する。調整弁75は、エア供給部74からブレーキパッド73に供給されるエアAの流量を調整する。エアAの流量を調整することにより、スピンドル72に対するブレーキパッド73の押圧力を調整可能である。調整弁75は、ブレーキパッド73の押圧力を調整することにより、ローラ本体71の回転に対する負荷を調整可能である。例えば、調整弁75は、ブレーキパッド73の押圧力を調整することにより、ローラ本体71の回転を停止可能である。調整弁75によるエアAの流量の調整は、例えば印刷装置100の不図示の制御装置により行ってもよいし、作業者により手動で行ってもよい。このように、ブレーキパッド73、エア供給部74及び調整弁75は、折り返しローラ37の回転に負荷をかけることが可能な負荷機構を構成している。
【0038】
次に、上記のように構成された印刷装置100の動作を説明する。まず、印刷装置100の動作を行う前に、メディアMの設置を行う。例えば作業者の手作業により、繰り出し装置10の繰り出しローラ13にロール状のメディアMを取り付ける。次に、ロール状のメディアMから端部を引き出し、メディアMの搬送経路に順に配置させた後、巻き取り装置30の巻き取りローラ39に巻き付ける。これにより、メディアMの設置が完了し、メディアMが搬送可能な状態となる。
【0039】
メディアMが搬送可能な状態となった後、メディアMに形成する画像の画像データと、動作開始指示とが印刷装置100に入力された場合、印刷装置100は、繰り出し装置10の繰り出しローラ13及び巻き取り装置30の巻き取りローラ39を回転させて、メディアMを搬送させる。また、画像形成装置20の噴射ヘッド22を走査方向に往復移動させながら、メディアMに対してインクの噴射を行わせる。噴射されたインクは、メディアMの第1面Maに付着する。これにより、メディアMの第1面Maには、インクによって画像が形成される。画像が形成されたメディアMは、巻き取り装置30に搬送される。
【0040】
巻き取り装置30に搬送されたメディアMは、加熱部32により第1面Maが加熱される。これにより、インクが乾燥し、画像が第1面Maに定着する。メディアMは、第1面Maに画像が定着した状態で中継ローラ33に搬送される。中継ローラ33は、メディアMの第1面Maに接触した状態で当該メディアMの移動に追従して回転する。メディアMは、中継ローラ33によって折り返されて上流側折り返しローラ34に案内される。上流側折り返しローラ34に搬送されたメディアMは、上流側折り返しローラ34によって下方に折り返され、テンションローラ35によって上方に折り返される。テンションローラ35によって折り返されたメディアMは、折り返しローラ37によって巻き取りローラ39側に折り返され、当該巻き取りローラ39に巻き取られる。
【0041】
図4及び
図5は、巻き取り装置30の動作を示す図である。
図4に示すように、巻き取りローラ39における巻き取り量が所定量よりも少ない場合、折り返しローラ37をメディアMの搬送速度に追従して回転させる。巻き取り量の所定量としては、例えば実験値、シミュレーション値、実測値等に基づいて設定することができる。
【0042】
また、巻き取りローラ39における巻き取り量が所定量以上になった場合、
図5に示すように、折り返しローラ37の調整弁75を調整してエアAの流量を増加させることで、ブレーキパッド73(
図3参照)の押圧力を増加させ、折り返しローラ37の回転に負荷をかける。調整弁75の調整は、印刷装置100の不図示の制御装置により行ってもよいし、作業者が手作業で行ってもよい。なお、この場合、調整弁75を調整することで、例えば折り返しローラ37の回転を停止させてもよい。折り返しローラ37の回転に負荷をかける場合、当該負荷は、例えば巻き取りローラ39におけるメディアMの巻き径によらず一定とすることができる。なお、メディアMの搬送開始の段階から折り返しローラ37の回転に負荷をかけておいてもよい。
【0043】
図6及び
図7は、比較例に係るメディアMの巻き取り状態の一例を示す図である。メディアMを巻き取る際、メディアMに付与するテンションを高くし過ぎると、テンションによりメディアMが幅方向に収縮し、
図6に示すように、巻き取りローラ39においてシワSが発生する場合がある。一方、メディアMに付与されるテンションを低くし過ぎると、巻き取りローラ39での巻き取り位置が幅方向に変動し、
図7に示すように、メディアMを巻き取った状態において幅方向の端面の一部が突出し、突出部Tが形成される場合がある。
【0044】
これに対して、本実施形態では、例えばメディアMを巻き取る際、テンションローラ35から巻き取りローラ39までのメディアMの搬送経路に折り返しローラ37を配置することにより、
図5に示すように、当該搬送経路を短くすることができる。テンションローラ35から巻き取りローラ39までの搬送経路が長くなると、同じテンションが掛かる場合でも、メディアMの幅方向の中央部分にシワが生じやすくなる。一方、テンションローラ35から巻き取りローラ39までの搬送経路に折り返しローラ37が設けられても、負荷をかけることなくメディアMの移動に追従して回転する場合には、同様にメディアMの幅方向の中央部分にシワが生じやすくなる。これに対して、本発明によれば、負荷機構(ブレーキパッド73、エア供給部74及び調整弁75)により、折り返しローラ37の回転に負荷をかけることができる。折り返しローラ37の回転に負荷をかけることにより、メディアMの搬送に対して負荷がかかるため、シワの発生を未然に抑制できる。また、メディアMに対してより強いテンションを付与することができるため、巻き取り位置の変動を抑制できる。
【0045】
図8は、本実施形態に係るメディアMの巻き取り状態の一例を示す図である。メディアMの搬送方向についてテンションが付与される距離が区切されることで、テンションローラ35によるテンションを強くしても、メディアMが幅方向に縮むことを抑制できる。これにより、
図8に示すように、メディアMを巻き取り時のシワの発生を抑制できる。
【0046】
また、メディアMを巻き取る際、巻き取られたメディアMの径が大きくなるに従って、幅方向についての巻き取り位置の変動を防ぐために要するテンションが大きくなる。しかしながら、本実施形態の構成では、メディアMに対してより強いテンションを付与することができるため、メディアMの巻き径が大きくなっても、巻き取りローラ39における巻き取り位置の変動を抑制可能となる。そのため、
図8に示すように、メディアを巻き取った状態において、幅方向の端部の一部が突出することを抑制できる。
【0047】
なお、巻き取りローラ39における巻き取り量が所定量よりも多くなった場合、例えば折り返しローラ37の回転を停止させてもよい。この場合、メディアMが折り返しローラ37に押し付けられた状態で表面を滑るように通過するため、テンションローラ35と折り返しローラ37との間で例えばメディアMが幅方向に収縮して波打った状態となる場合でも、メディアMが平滑化される。これにより、巻き取り時のシワの発生がより確実に抑制される。
【0048】
図9は、本実施形態に係る印刷装置100の画像形成装置20により画像を形成する動作の一例を示す図である。画像形成装置20において、メディアMのうち幅方向の一方の端辺側に画像が偏って形成される場合、画像を構成するインクの厚みにより、巻き取り装置30でメディアMを巻き取る際に、幅方向の一方の厚さが他方の厚さに比べて厚くなり、シワ等が形成される場合がある。
【0049】
そこで、
図9に示すように、画像を形成する際、画像形成装置20は、巻き取り装置30によって巻き取られた状態で画像がメディアMの幅方向に均一に配置されるように画像の形成位置を調整することができる。例えば、画像形成装置20は、メディアMの幅方向の一方の端辺側に1つの画像Qを形成した後、メディアMの幅方向の他方の端辺側に1つの画像Qを形成する。このような動作をメディアMの搬送方向について繰り返し行うことにより、巻き取り装置30によって巻き取られた状態において、画像がメディアMの幅方向に均一に配置されることになり、メディアMの厚さが幅方向について均一となる。したがって、上記の折り返しローラ37によりメディアMの搬送方向についてテンションが付与される距離を区切ることと相俟って、メディアMを巻き取った状態において、シワ等の発生を確実に抑制できる。
【0050】
以上のように、本実施形態に係る巻き取り装置30は、所定の搬送方向に送られる帯状のメディアMを押圧してメディアMにテンションを付加するテンションローラ35と、テンションローラ35によって押圧されたメディアMを折り返し、メディアMに追従して回転可能な折り返しローラ37と、折り返しローラ37の回転に負荷をかけることが可能な負荷機構としてのブレーキパッド73、エア供給部74及び調整弁75と、折り返しローラ37で折り返されたメディアMを巻き取る巻き取りローラ39とを備える。
【0051】
また、本実施形態に係るメディアMの巻き取り方法は、所定の搬送方向に送られる帯状のメディアMをテンションローラ35で押圧してメディアMにテンションを付加することと、メディアMに追従して回転可能な折り返しローラ37の回転に負荷をかけた状態で、当該折り返しローラ37により、テンションローラ35によって押圧されたメディアMを折り返すことと、折り返しローラ37で折り返されたメディアMを巻き取ることとを含む。
【0052】
したがって、テンションローラ35から巻き取りローラ39までのメディアMの搬送経路に折り返しローラ37を配置することにより、当該搬送経路を短くすることができる。テンションローラ35から巻き取りローラ39までの搬送経路が長くなると、同じテンションが掛かる場合でも、メディアMの幅方向の中央部分にシワが生じやすくなる。一方、テンションローラ35から巻き取りローラ39までの搬送経路に折り返しローラ37が設けられても、負荷をかけることなくメディアMの移動に追従して回転する場合には、同様にメディアMの幅方向の中央部分にシワが生じやすくなる。これに対して、本発明によれば、負荷機構(ブレーキパッド73、エア供給部74及び調整弁75)により、折り返しローラ37の回転に負荷をかけることができる。折り返しローラ37の回転に負荷をかけることにより、メディアMの搬送に対して負荷がかかるため、シワの発生を未然に抑制できる。また、メディアMに対してより強いテンションを付与することができるため、巻き取りローラ39における巻き取り位置の変動を抑制できる。
【0053】
本実施形態に係る巻き取り装置30において、負荷機構であるブレーキパッド73、エア供給部74及び調整弁75は、折り返しローラ37の回転を停止可能であってもよい。これにより、メディアMが幅方向に縮むことをより確実に抑制できるため、シワの発生を抑制できる。
【0054】
本実施形態に係る巻き取り装置30において、折り返しローラ37は、メディアMに接触する面が金属材料を用いて滑らかな状態に形成されてもよい。これにより、メディアMに対してシワの発生を抑制しつつ、メディアMを円滑に搬送することができる。
【0055】
本実施形態に係る巻き取り装置30は、テンションローラ35に巻かれるメディアMの巻き付け角が所定の角度範囲となるようにテンションローラ35に対して搬送方向の上流側でメディアMを折り返す上流側折り返しローラ34を備えてもよい。これにより、上流側折り返しローラ34と折り返しローラ37との間でテンションローラ35に対する巻き付け角を所定の角度範囲とすることができるため、メディアMの搬送経路の複雑化を抑制できる。
【0056】
本実施形態に係る印刷装置100は、所定の搬送方向に送られる帯状のメディアMに画像を形成する画像形成装置20と、画像が形成されたメディアMを巻き取る上記の巻き取り装置30とを備える。
【0057】
したがって、画像を形成した後のメディアMを巻き取る際に、シワの発生を抑制し、巻き取り位置の変動を抑制することができるため、高品質の印刷物を形成することができる。
【0058】
本実施形態に係る印刷装置100において、画像形成装置20は、巻き取り装置30によって巻き取られた状態で画像がメディアMの搬送方向に直交する幅方向に均一に配置されるように画像の形成位置を調整してもよい。これにより、メディアMに形成される画像の厚みにより、メディアMを巻き取った状態で幅方向に厚さを均一にすることができる。
【0059】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0060】
10 繰り出し装置
11,31 フレーム
12,38 回転駆動部
13 繰り出しローラ
20 画像形成装置
21 上流側搬送ローラ
22 噴射ヘッド
23 下流側搬送ローラ
30 巻き取り装置
32 加熱部
33 中継ローラ
34 上流側折り返しローラ
35 テンションローラ
36 テンション調整機構
36a テンションバー
36b エアシリンダ機構
36c,36d 軸部
36e 連結部
37 折り返しローラ
39 巻き取りローラ
71 ローラ本体
72 スピンドル
73 ブレーキパッド
74 エア供給部
75 調整弁
100 印刷装置
M メディア
Q 画像
S シワ
T 突出部
Ma 第1面
Mb 第2面