(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】開閉装置
(51)【国際特許分類】
A47K 13/12 20060101AFI20220707BHJP
【FI】
A47K13/12
(21)【出願番号】P 2018068542
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】古閑 一樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 弘明
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 綱基
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-088721(JP,A)
【文献】特開2010-201083(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0052811(US,A1)
【文献】特開平01-303115(JP,A)
【文献】特開2011-098048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/10-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体の前部に設けられた便鉢部の上方を覆う可動体の後部の左右それぞれにおいて左右方向を軸方向として前記可動体を回動可能に支持するヒンジ部と、
前記ヒンジ部の一方に設けられ、前記可動体を開方向へ付勢する第1付勢部と、
前記ヒンジ部の他方に設けられ、前記可動体を開方向へ駆動する駆動部と、
を備える開閉装置において、
前記駆動部は、前記可動体を開方向へ付勢する第2付勢部を有し、
前記駆動部によって前記可動体の開方向へ与えるトルクが、前記第1付勢部によるトルクよりも大き
く、
前記第1付勢部および前記第2付勢部は、前記可動体の開方向へ与えるトルクが同じとしてあることを特徴とする開閉装置。
【請求項2】
前記可動体は、便蓋または便座であることを特徴とする請求項
1に記載の開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器装置の便蓋および便座等の可動体を開閉する開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
便器装置に備え付けられる多くの便座および便蓋等の可動体は、便鉢部の上部開口を囲む上縁部に載せられ、便鉢部の上方を覆い、便器装置の後部において左右方向を軸方向とするヒンジ軸を備えるヒンジ部によって回動可能に支持されている。便器装置は、手動または電動で便座および便蓋を回動させることによって開閉させて使用される。
【0003】
例えば、特許文献1には、便座および便蓋の少なくともいずれかの一端および他端を支持する各ヒンジ軸において、便座および便蓋を開方向へ付勢する第1の付勢手段、第2の付勢手段および駆動モータを備える便器装置が開示されている。第1の付勢手段および駆動モータは例えば便蓋の左側に設けられており、第2の付勢手段は便蓋の右側に設けられている。第1の付勢手段の付勢力(付勢トルク)は第2の付勢手段よりも小さくしてあり、第1の付勢手段および駆動モータと、第2の付勢手段とにより、便蓋の左右双方へほぼ均等に付勢力が与えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の便器装置は、駆動モータに通電されておらず便蓋が閉状態の場合に、第1の付勢手段および第2の付勢手段が便蓋に与える付勢力の大小によって、便蓋に変形や変位が生じ、部分的または全体的に傾きが生じてしまう蓋然性がある。また、このような便蓋の傾きを抑制するために便蓋の剛性を高めようとすると、便蓋の重量が増加してしまう。更には、重量が増加した便蓋を開閉させるために大きな付勢力を確保しようとすると、第1の付勢手段、第2の付勢手段および駆動モータが大型化してしまう。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、便鉢部の上方を覆う可動体における傾きを抑制することができる開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る開閉装置は、便器本体の前部に設けられた便鉢部の上方を覆う可動体の後部の左右それぞれにおいて左右方向を軸方向として前記可動体を回動可能に支持するヒンジ部と、前記ヒンジ部の一方に設けられ、前記可動体を開方向へ付勢する第1付勢部と、前記ヒンジ部の他方に設けられ、前記可動体を開方向へ駆動する駆動部と、を備える開閉装置において、前記駆動部によって前記可動体の開方向へ与えるトルクが、前記第1付勢部によるトルクよりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、開閉装置は、便鉢部の上方を覆う可動体における傾きを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る開閉装置を含む便器装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】便蓋を開状態とした便器装置の外観を示す斜視図である。
【
図3】ケーシングおよび便蓋における便蓋開閉装置を部分的に拡大した斜視図である。
【
図4】ケーシングおよび便座における便座開閉装置を部分的に拡大した斜視図である。
【
図5】
図5(a)および
図5(b)は便蓋開閉装置によって作用するトルクについて説明するための模式図である。
【
図6】
図6(a)および
図6(b)は便座開閉装置によって作用するトルクについて説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに
図1から
図6を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
図1は実施形態に係る開閉装置を含む便器装置100の外観を示す斜視図であり、
図2は便蓋4を開状態とした便器装置100の外観を示す斜視図である。便器装置100は、便器本体1、ケーシング2、便蓋4および便座5等を備える。便器本体1は、前端F側に便鉢部11、便鉢部11後方の後部に部品配置部12を有する。以下の説明において、便器装置100について左右方向は、便器装置100の前後方向に対して直交する水平方向であり、左および右は、前端F側から便器装置100を見て定義されているものとする。
【0012】
便鉢部11は、汚物を受けるための鉢状の受け面11a、および受け面11aの上部開口の周囲に形成されたリム部11bを有し、リム部11bに便座5が載せ置かれる。受け面11aには、例えば、前端Fから見て左上部の後方から前方へ向けて洗浄水が吐出される。受け面11aに吐出された洗浄水は、受け面11aに沿って一方向に旋回しつつ下方へ流下して受け面11aを洗い流し、受け面11aの底に接続される排水路(図示略)から汚物とともに排出される。
【0013】
部品配置部12は、上端部12aの高さが便鉢部11のリム部11bとほぼ同じであり、上端部12aにはケーシング2が載せ置かれる。ケーシング2には、不図示の複数の機能部品が収容される。機能部品には、例えば、便器洗浄装置や、洗浄水供給装置、着座者の局部を洗浄する局部洗浄装置、便座5を暖める便座暖房装置、便鉢部11内へ温風を送出する送風装置、および洗浄泡供給装置等が含まれる。
【0014】
ケーシング2は、箱状または皿状等をなし、上述のような機能部品を収容して構成されている。ケーシング2は、前後方向の幅が便器本体1の後端部から便鉢部11の後縁部付近に亘っており、左右方向の幅が便器本体1の左右方向の全幅に亘っている。ケーシング2は、周縁部2aで部品配置部12の上端部12aに載せ置かれる。便蓋4の後部に対応するケーシング2の後部には、便蓋4を回動可能に支持する便蓋開閉装置6が設けられている。また、便座5の後部に対応するケーシング2の前後方向における中途部には、便蓋4を回動可能に支持する便座開閉装置7が設けられている。便蓋開閉装置6および便座開閉装置7は、本発明における開閉装置に相当する。
【0015】
便蓋4は、便座5および便器本体1の便鉢部11の上方を覆う平板状の天板4a、並びに便座5の前方および左右の側方を覆う側板4bを備える。天板4aは、四隅に丸みを帯びた平面視矩形状をなし、前後方向の寸法が便器装置100の前部から後部に亘っている。左右の側板4bの底辺は、前方および左右の側方において便鉢部11のリム部11bに添っており、便器装置100の前後方向の中途部から後部にかけてケーシング2の周縁部における上面に添っている。便蓋4の後端部40は、便蓋開閉装置6によって、左右方向の軸まわりに回動可能に支持されている。
【0016】
便座5は、便器本体1の便鉢部11のリム部11bの上方を覆う座部5aおよび基端部5bを有し、ケーシング2に設けられた便座開閉装置7によって、左右方向の軸まわりに回動可能に支持されている。座部5aは、便鉢部11における受け面11aの上部開口に対応する孔を有する円環板状に形成されており、底面がリム部11bに接触する。基端部5bは、座部5aに連続する矩形板状であり、便座開閉装置7に連結するために、右側の後部にアーム部51、および左側の後部にアーム部52を有する。アーム部51および52は、後方に延びており、便座開閉装置7に対応する位置に形成されている。
【0017】
便座5は、基端部5bにおいて、例えば局部洗浄装置等を収容するようにしてもよい。局部洗浄装置は、座部5aの中央方向へ前進し、基端部5bの内部へ後退するノズルを有し、ノズルを前進および後退させる駆動機構が基端部5bの内部に収容されているようにすればよい。
【0018】
図3は、ケーシング2および便蓋4における便蓋開閉装置6を部分的に拡大した斜視図である。便蓋開閉装置6は、第1便蓋ヒンジ部61および第2便蓋ヒンジ部62を有する。第1便蓋ヒンジ部61は、ケーシング2の後部における右寄りの位置に設けられている。また第2便蓋ヒンジ部62は、ケーシング2の後部における左寄りの位置に設けられている。第1便蓋ヒンジ部61は、第1ヒンジ軸61aおよび第1付勢部61bを備える。第1ヒンジ軸61aは、左右方向を軸方向とし、ケーシング2側において回動可能に支持されている。
【0019】
便蓋4の後端部40における右寄りの位置には、第1ヒンジ軸61aを挿通する軸通孔(図示略)を有する円筒状の連結部41が設けられている。第1ヒンジ軸61aは、連結部41に挿通した状態で、軸まわりにおける連結部41との相対的な回転が拘束されている。第1付勢部61bは、巻きばね、またはねじりコイルばね等のトルク発生手段を有しており、第1ヒンジ軸61aを回動させる付勢力(トルク)を発生する。第1付勢部61bは、便蓋4を開方向へ回動させるように付勢している。
【0020】
第2便蓋ヒンジ部62は、第2ヒンジ軸62aおよび駆動部63を備える。第2ヒンジ軸62aは、左右方向を軸方向とし、ケーシング2側において回動可能に支持されており、第1ヒンジ軸61aと同軸に設けられている。便蓋4の後端部40における左寄りの位置には、第2ヒンジ軸62aを挿通する軸通孔(図示略)を有する円筒状の連結部42が設けられている。第2ヒンジ軸62aは、連結部42に挿通した状態で、軸まわりにおける連結部42との相対的な回転が拘束されている。
【0021】
駆動部63は、駆動モータ63aおよび第2付勢部63bを有する。駆動モータ63aは、例えば直流モータ等であり、ユーザのボタン操作等によって通電し、便蓋4の開閉の両方向へトルクを発生し、第2ヒンジ軸62aを回動させる。第2付勢部63bは、巻きばね、またはねじりコイルばね等のトルク発生手段を有しており、第2ヒンジ軸62aを回動させる付勢力(トルク)を発生する。第2付勢部63bは、便蓋4を開方向へ回動させるように付勢している。
【0022】
第1付勢部61bおよび第2付勢部63bは、ともに発生するトルクが同一としてあり、駆動部63の駆動モータ63aに通電されていない状態でも常に付勢力(トルク)を発生している。便蓋4が閉状態であるとき、第1付勢部61bおよび第2付勢部63bによって便蓋4に開方向へのトルクが作用しているが、便蓋4の自重によって閉方向へトルクが生じているため、便蓋4が開くことはない。
【0023】
駆動部63の駆動モータ63aが通電されると、第1付勢部61b、第2付勢部63bおよび駆動モータ63aによって発生するトルクが、便蓋4の自重によって働くトルクを上回り、便蓋4が開くように機能する。第1便蓋ヒンジ部61および第2便蓋ヒンジ部62は、便蓋4の回動速度に比例する粘性抵抗等によって回動時に抵抗トルクを生じるダンパー部品を備えていてもよい。
【0024】
図4は、ケーシング2および便座5における便座開閉装置7を部分的に拡大した斜視図である。便座開閉装置7は、第1便座ヒンジ部71および第2便座ヒンジ部72を有する。第1便座ヒンジ部71は、ケーシング2の前後方向の中途部における右寄りの位置に設けられている。また第2便座ヒンジ部72は、ケーシング2の前後方向の中途部における左寄りの位置に設けられている。第1便座ヒンジ部71は、第1ヒンジ軸71aおよび第1付勢部71bを備える。第1ヒンジ軸71aは、左右方向を軸方向とし、ケーシング2側において回動可能に支持されている。
【0025】
便座5の基端部5bの後部右側に設けたアーム部51は、第1ヒンジ軸71aを挿通する軸通孔(図示略)を有する。第1ヒンジ軸71aは、アーム部51に挿通した状態で、軸まわりにおけるアーム部51との相対的な回転が拘束されている。第1付勢部71bは、巻きばね、またはねじりコイルばね等のトルク発生手段を有しており、第1ヒンジ軸71aを回転させる付勢力(トルク)を発生する。第1付勢部71bは、便座5を開方向へ回動させるように付勢している。
【0026】
第2便座ヒンジ部72は、第2ヒンジ軸72aおよび駆動部73を備える。第2ヒンジ軸72aは、左右方向を軸方向とし、ケーシング2側において回動可能に支持されており、第1ヒンジ軸71aと同軸に設けられている。基端部5bの後部における左側に設けたアーム部52は、第2ヒンジ軸72aを挿通する軸通孔(図示略)を有する。第2ヒンジ軸72aは、アーム部52に挿通した状態で、軸まわりにおけるアーム部52との相対的な回転が拘束されている。
【0027】
駆動部73は、駆動モータ73aおよび第2付勢部73bを有する。駆動モータ73aは、例えば直流モータ等であり、ユーザのボタン操作等によって通電し、便座5の開閉の両方向へトルクを発生し、第2ヒンジ軸72aを回動させる。第2付勢部73bは、巻きばね、またはねじりコイルばね等のトルク発生手段を有しており、第2ヒンジ軸72aを回動させる付勢力(トルク)を発生する。第2付勢部73bは、便座5を開方向へ回動させるように付勢している。
【0028】
第1付勢部71bおよび第2付勢部73bは、ともに発生するトルクが同一としてあり、駆動部73の駆動モータ73aに通電されていない状態でも常に付勢力(トルク)を発生している。便座5が閉状態であるとき、第1付勢部71bおよび第2付勢部73bによって便座5に開方向へのトルクが作用しているが、便座5の自重によって閉方向へトルクが生じているため、便座5が開くことはない。
【0029】
駆動部73の駆動モータ73aが通電されると、第1付勢部71b、第2付勢部73bおよび駆動モータ73aによって発生するトルクが、便座5の自重によって働くトルクを上回り、便座5が開くように機能する。第1便座ヒンジ部71および第2便座ヒンジ部72は、便座5の回動速度に比例する粘性抵抗等によって回動時に抵抗トルクを生じるダンパー部品を備えていてもよい。
【0030】
次に便器装置100における便蓋開閉装置6および便座開閉装置7の作用について説明する。
図5(a)および
図5(b)は、便蓋開閉装置6によって作用するトルクについて説明するための模式図である。
図5(a)は便蓋4を斜視図で表し、
図5(b)は便蓋4を側面図で表しており、ともに便蓋4が閉状態となっているものとする。
【0031】
第1付勢部61bによる付勢トルクTc1および第2付勢部63bによる付勢トルクTc2は、便蓋4の開方向に働いており、同等のトルク値となっている。また、便蓋4の自重による発生トルクTcとの関係はTc>Tc1+Tc2となっており、便蓋4は閉状態を維持する。駆動モータ63aによる駆動トルクTcmが加わることによって、Tc<Tc1+Tc2+Tcmとなり、便蓋4が開方向へ回動する。
【0032】
便蓋4が閉状態では、第1付勢部61bによる付勢トルクTc1および第2付勢部63bによる付勢トルクTc2が便蓋4に作用しており、Tc1=Tc2であることから、左右で付勢トルクのバランスが取れている。これにより、便蓋開閉装置6は、便蓋4において左右のいずれか一方が浮き上がるような変形および変位による傾きの発生を抑制することができる。
【0033】
また便蓋4には、Tc、Tc1およびTc2が作用し、
図5(b)において前後方向における中途部が上方へ撓むような内力が働いている状態にある。便蓋4は、側板4bによって剛性が高まり、中途部が上方へ撓むような変形が抑制されている。
【0034】
とくに、便蓋4が便器装置100の前端部から後端部に亘って形成されている場合、便蓋4の重量が大きくなり、第1付勢部61bによる付勢トルクTc1および第2付勢部63bによる付勢トルクTc2も大きくなる傾向にある。上述のようにTc1=Tc2とすることで、便蓋開閉装置6は、付勢トルクのバランスをとって変形および変位による傾きの発生を抑制することができるので、天板4aおよび側板4bの厚み寸法を小さくして、便蓋4の重量の増加を抑制することができる。
【0035】
便蓋4を開方向へ回動させる際に、第1便蓋ヒンジ部61にはTc1のトルクが与えられ、第2便蓋ヒンジ部62にはTcm+Tc2のトルクが与えられ、Tc1<Tc2+Tcmの関係となっている。便蓋開閉装置6は、駆動モータ63aによる便蓋4の駆動時の駆動トルクTcmを大きくすれば、第1付勢部61bによる付勢トルクTc1および第2付勢部63bによる付勢トルクTc2を小さく設定することができ、便蓋4における変形および変位による傾きの発生を抑制することができる。
【0036】
図6(a)および
図6(b)は便座開閉装置7によって作用するトルクについて説明するための模式図である。
図6(a)は便座5を斜視図で表し、
図6(b)は便座5を側面図で表しており、ともに便座5が閉状態となっているものとする。
【0037】
第1付勢部71bによる付勢トルクTs1および第2付勢部73bによる付勢トルクTs2は、便座5の開方向に働いており、同等のトルク値となっている。また、便座5の自重による発生トルクTsとの関係はTs>Ts1+Ts2となっており、便座5は閉状態を維持する。駆動モータ73aによる駆動トルクTsmが加わることによって、Ts<Ts1+Ts2+Tsmとなり、便座5が開方向へ回動する。
【0038】
便座5が閉状態では、第1付勢部71bによる付勢トルクTs1および第2付勢部73bによる付勢トルクTs2が便座5に作用しており、Ts1=Ts2であることから、左右で付勢トルクのバランスが取れている。これにより、便座開閉装置7は、便座5において左右のいずれか一方が浮き上がるような変形および変位による傾きの発生を抑制することができる。
【0039】
また便座5には、Ts、Ts1およびTs2が作用し、
図6(b)において前後方向における中途部が上方へ撓むような内力が働いている状態にある。便座5は、座部5a等における板厚によって剛性が高まり、中途部が上方へ撓むような変形が抑制されている。
【0040】
とくに、便座5が便器装置100の前端部から後端部寄りの位置まで形成されている場合、便座5の重量が大きくなり、第1付勢部71bによる付勢トルクTs1および第2付勢部73bによる付勢トルクTs2も大きくなる傾向にある。また、便座5の内部に機能部品を収容する場合にも、便座5の重量が大きくなり、第1付勢部71bによる付勢トルクTs1および第2付勢部73bによる付勢トルクTs2も大きくなる傾向にある。上述のようにTs1=Ts2とすることで、便座開閉装置7は、付勢トルクのバランスをとって変形および変位による傾きの発生を抑制することができるので、座部5aおよび基端部5bの厚み寸法を小さくして、便座5の重量の増加を抑制することができる。
【0041】
便座5を開方向へ回動させる際に、第1便座ヒンジ部71にはTs1のトルクが与えられ、第2便座ヒンジ部72にはTsm+Ts2のトルクが与えられ、Ts1<Ts2+Tsmの関係となっている。便座開閉装置7は、駆動モータ73aによる便座5の駆動時の駆動トルクTsmを大きくすれば、第1付勢部71bによる付勢トルクTs1および第2付勢部73bによる付勢トルクTs2を小さく設定することができ、便座5における変形および変位による傾きの発生を抑制することができる。
【0042】
次に、実施形態に係る開閉装置である便蓋開閉装置6および便座開閉装置7の特徴を説明する。
本発明の実施形態の開閉装置は、便器本体1の前部に設けられた便鉢部11の上方を覆う可動体(便蓋4または便座5)の後部の左右それぞれにおいて左右方向を軸方向として可動体を回動可能に支持するヒンジ部を有する。便蓋開閉装置6におけるヒンジ部は、第1便蓋ヒンジ部61および第2便蓋ヒンジ部62であり、便座開閉装置7におけるヒンジ部は、第1便座ヒンジ部71および第2便座ヒンジ部72である。便蓋開閉装置6は、ヒンジ部の一方に設けられ、便蓋4を開方向へ付勢する第1付勢部61bと、ヒンジ部の他方に設けられ、便蓋4を開方向へ駆動する駆動部63とを備える。駆動部63によって、便蓋4の開方向へ与えるトルクが、第1付勢部61bによるトルクよりも大きい。また、便座開閉装置7は、ヒンジ部の一方に設けられ、便座5を開方向へ付勢する第1付勢部71bと、ヒンジ部の他方に設けられ、便座5を開方向へ駆動する駆動部73とを備える。駆動部73によって、便座5の開方向へ与えるトルクが、第1付勢部71bによるトルクよりも大きい。これにより、開閉装置は、可動体の駆動時の駆動トルクを大きくすれば、第1付勢部61bおよび71bによる付勢トルクを小さく設定することができ、可動体における変形および変位による傾きの発生を抑制することができる。
【0043】
また駆動部63は、便蓋4を開方向へ付勢する第2付勢部63bを有し、駆動部73は、便座5を開方向へ付勢する第2付勢部73bを有する。便蓋開閉装置6において、第1付勢部61bおよび第2付勢部63bは、便蓋4の開方向へ与えるトルクが同じとしてある。また、便座開閉装置7において、第1付勢部71bおよび第2付勢部73bは、便座5の開方向へ与えるトルクが同じとしてある。これにより、開閉装置は、可動体において、左右のいずれか一方が浮き上がるような変形および変位による傾きの発生を抑制することができる。
【0044】
上述の実施形態においては、便蓋4および便座5の双方に、モータ駆動による開閉装置を設けたが、便蓋4および便座5のいずれか一方に設けるようにしてもよい。また、上述の実施形態においては、便蓋4は、前後方向の幅が便器装置100の前端Fから後端部に亘っているが、便座5のように、便蓋4の後端部が、便鉢部11の後部から便器装置100の後端部までの間の位置にあるようにしてもよい。
【0045】
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【符号の説明】
【0046】
4 便蓋(可動体)、 5 便座(可動体)、 6 便蓋開閉装置(開閉装置)、
61 第1便蓋ヒンジ部(ヒンジ部)、 61b,71b 第1付勢部、
62 第2便蓋ヒンジ部(ヒンジ部)、 63,73 駆動部、
63b,73b 第2付勢部、 7 便座開閉装置(開閉装置)、
71 第1便座ヒンジ部(ヒンジ部)、 72 第2便座ヒンジ部(ヒンジ部)