(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】電気音響変換器、アダプタ付き電気音響変換器及び音響機器
(51)【国際特許分類】
H04R 1/00 20060101AFI20220707BHJP
H04R 1/10 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
H04R1/00 317
H04R1/10 104Z
(21)【出願番号】P 2018077190
(22)【出願日】2018-04-12
【審査請求日】2021-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000115636
【氏名又は名称】リオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】吉川 教治
(72)【発明者】
【氏名】岩倉 行志
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-116755(JP,A)
【文献】特開2011-160175(JP,A)
【文献】特開2016-063276(JP,A)
【文献】特開2015-139041(JP,A)
【文献】特開2012-257049(JP,A)
【文献】特開2019-134237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号を機械振動に変換する電気機械変換器と、
外耳道を塞がずに耳甲介腔に装着可能であって、前記電気機械変換器を内部に収容するとともに該電気機械変換器による機械振動によって振動して音を発生させる筐体と、を備え、
前記筐体は、前記耳甲介腔に装着した際に前記外耳道側に位置する内側筐体部分と外界側に位置する外側筐体部分とを備え、前記筐体は、楕円体形状又は卵形形状であ
って、
前記電気機械変換器による機械振動によって前記内側筐体部分が振動板として音を発生させることを特徴とする電気音響変換器。
【請求項2】
前記筐体は、前記楕円体形状又は前記卵形形状としての幅が10mm以上14mm以下になることを特徴とする請求項1に記載の電気音響変換器。
【請求項3】
前記電気機械変換器は、前記筐体を、前記外耳道方向に振動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気音響変換器。
【請求項4】
前記電気機械変換器は、前記筐体に対して、該電気機械変換器の中心と該筐体の中心が一致する位置に配設されることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の電気音響変換器。
【請求項5】
前記外側筐体部分は、前記電気機械変換器につながるコードを挿通させるコード引出部を備えることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の電気音響変換器。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の電気音響変換器と、前記筐体に取り付けられるアダプタと、を備え、
前記アダプタは、前記筐体に吸着する基部と、前記基部に設けられた幹部とを備え、前記幹部の先端は、前記筐体を耳甲介腔に装着した際に耳甲介腔の上側の壁部に当接することを特徴とするアダプタ付き電気音響変換器。
【請求項7】
請求項1~5の何れか一項に記載の電気音響変換器
、又は請求項6に記載のアダプタ付き電気音響変換器を用いたことを特徴とする音響機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は装着者に音を伝える電気音響変換器及び音響機器に関するものであり、特に、電気機械変換器で生じる機械振動によって筐体を振動させて音を伝える電気音響変換器、及び電気音響変換器と音源とを含んで構成される音響機器に関する。
【背景技術】
【0002】
補聴器やイヤホンなどのように装着者に音を伝える電気音響変換器及び音響機器においては、従来、電気機械変換器で電気信号を機械振動に変換し、その機械振動で筐体を振動させることによって気導音(外耳道の空気を振動させて伝わる音)や骨導音(頭蓋骨を振動させて伝わる音)を発生させて聴覚に音を伝える、音口を持たないものが提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、骨導音を生じさせる骨伝導イヤホンが示されている。この骨伝導イヤホンは、楕円体状に形成されるとともに内側(特許文献1では正面側と称している)と外側(特許文献1では背面側と称している)に凸部を設けた形態をなす骨伝導振動部を有し、耳甲介腔に装着した際には、骨伝導振動部の長さ方向の一端部が耳珠及び耳甲介腔の壁部に圧接され、他端部が対珠及び耳甲介腔の壁部に圧接され、外側凸部が耳珠に圧接され、更に内側凸部が耳甲介腔の壁部における外耳道の入口周辺に圧接されるように構成されている。
【0004】
そして特許文献2には、棒状の骨伝導スピーカ部とリング状の振動伝達部を備える受話装置が開示されている。ここで骨伝導スピーカ部は、その長手方向の一端が支持部を介して振動伝達部と結合し、珠間切痕付近から耳介の外側に突出する構成をしており、振動伝達部は、耳珠と対珠に圧接される大きさで形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-222682号公報
【文献】特開2007-103989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで最近は、電気音響変換器から発せられる振動に基づく音(例えば音楽など)を聴きながら周囲の音も聴取したいとする要望がある。しかし特許文献1の骨伝導イヤホンを耳甲介腔に装着すると、外耳道は塞がれることになる。このため、この電気音響変換器を使用しながら周囲の音をそのまま聴取することは困難である。一方、特許文献2の受話装置は、振動伝達部をリング形状等にすることより、耳甲介腔に装着した状態でも外耳道は開放されていて、電気音響変換器による音を聴きながら周囲の音声を聴取することが可能であるとされている。しかし、骨伝導スピーカ部は珠間切痕の外側に配置されるので、外部へ音が放出され易い構造である。
【0007】
本発明はこのような問題点を解決することを課題とするものであり、電気信号に基づく振動によって得られる音を聴きながら周囲の音も聴取することができるとともに、筐体の振動による外界への放射音(音漏れ)を抑制でき、また耳甲介腔への装着も容易な、電気音響変換器及び音響機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明における電気音響変換器は、電気信号を機械振動に変換する電気機械変換器と、外耳道を塞がずに耳甲介腔に装着可能であって、前記電気機械変換器を内部に収容するとともに該電気機械変換器による機械振動によって振動して音を発生させる筐体と、を備え、前記筐体は、前記耳甲介腔に装着した際に前記外耳道側に位置する内側筐体部分と外界側に位置する外側筐体部分とを備え、前記筐体は、楕円体形状又は卵形形状であって、
前記電気機械変換器による機械振動によって前記内側筐体部分が振動板として音を発生させることを特徴とする。
【0009】
このような電気音響変換器において、前記筐体は、前記楕円体形状又は前記卵形形状としての幅が10mm以上14mm以下になることが好ましい。
【0010】
そして前記電気機械変換器は、前記筐体を、前記外耳道の方向に振動させることが好ましい。
【0011】
また前記電気機械変換器は、前記筐体に対して、該電気機械変換器の中心と該筐体の中心が一致する位置に配設されることが好ましい。
【0012】
そして前記外側筐体部分は、前記電気機械変換器につながるコードを挿通させるコード引出部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明において、電気機械変換器によって振動する筐体は、外耳道を塞がずに耳甲介腔に装着されるものであるため、音響機器として使用しながら周囲の音を気導音として聴取することができる。また、外側筐体部分にコード引出部を設ける場合は、耳甲介腔に装着した際にコード引出部が珠間切痕に収まるように位置するので、耳甲介腔に簡単に且つ安定的に装着することができる。
【0014】
また、電気機械変換器によって筐体を振動させる電気音響変換器においては、電気機械変換器を駆動させた際、耳甲介腔の壁部に当接する内側筐体部分のみならず、内側筐体部分に対向する外側筐体部分も振動するため、外側筐体部分の振動が空気に伝わって周囲に音が漏れることがある。一方、本発明の筐体は楕円体形状又は卵形形状のように外形が全体的にほぼ曲面で形成された形状であって、かつ小型であるため、筐体の大きさと比較して十分離れた位置では前記筐体が振動したときに内側筐体部分の振動により発生する音と外側筐体部分の振動により発生する音が互いに打ち消され、周囲への音漏れを抑える効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に従う電気音響変換器(イヤホン)の一実施形態を示した図であって、(a)は斜視図であり、(b)は楕円体形状における互いに直交する3つの半軸に関する説明図であり、(c)は正面図であり、(d)は側面図である。
【
図2】
図1に示すイヤホンが備える電気機械変換器の構造を示した図であって、(a)は分解斜視図であり、(b)は組み立て後の斜視図である。
【
図4】
図1に示すイヤホンを耳甲介腔に装着した状態を示す図である。
【
図5】
図1に示すイヤホンに取り付けられるアダプタを示した図であって、(a)はアダプタの斜視図であり、(b)はアダプタをイヤホンに取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図6】アダプタを取り付けたイヤホンを耳甲介腔に装着した状態を示す図である。
【
図7】本発明に従うイヤホンを備えた補聴器(音響機器)の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明に従う電気音響変換器の一つである、イヤホンの一実施形態について説明する。
図1(a)、(c)に示すように本実施形態のイヤホン1は、電気機械変換器2と、電気機械変換器2に接続されるコード3と、電気機械変換器2を内部に収容する筐体4と、筐体4に連結しコード3の引き出し口となるコード引出部5とを備えている。
【0017】
電気機械変換器2は、コード3を介して伝えられる電気信号を機械振動に変換するものである。本実施形態の電気機械変換器2は、特許第5653543号に記載されている電気機械変換器と同様の構成となる、バネの復元力を利用したバランスド・アーマチュア型の電気機械変換器である。
【0018】
ここで、電気機械変換器2の具体的な構成について
図2(a)、(b)を参照しながら説明する。電気機械変換器2は、対をなす磁石10~13と、これらの磁石10~13による磁束を導くヨーク14、15と、コード3からの電気信号が供給されるコイル16とを一体的に配置した構造部を備えている。また構造部の厚み方向中央部には、この構造部の内部空間を貫く内側部17aと、この内側部から両側に突出した第1の外側部17b及び第2の外側部17cとを有し、内側部のうち互いに逆向きの磁束が導かれる2つの領域を介して構造部と磁気回路を構成するアーマチュア17が設けられている。またアーマチュア17の両端部には、第1の外側部17bと構造部との間に挟持され、磁気回路の磁気力によるアーマチュア17の変位に応じた復元力を第1の外側部17bに付与する第1の弾性機構18、19と、第2の外側部17cと構造部との間に挟持され、アーマチュア17の変位に応じた復元力を第2の外側部17cに付与する第2の弾性機構20,21が設けられている。また第1及び第2の弾性機構18~21の各々は、アーマチュア17を挟みつつアーマチュア17の変位方向に対称配置された1対の弾性部材を含んでいて、構造部は、弾性部材がそれぞれ取り付けられる複数の弾性部材取付部を有し、1対の弾性部材の各々は、一端が第1又は第2の外側部17b、17cに係合し、他端が弾性部材取付部に係合した状態で配置される。なお、電気機械変換器2のその他の構成については、特許第5653543号のものと同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0019】
このような電気機械変換器2は、アーマチュア17の第1及び第2の外側部17b、17cが筐体4に固定支持される。そしてコード3を介して電気信号が印加されると、上述した構造部とアーマチュア17との間に駆動力が発生してアーマチュア17が相対的に変位する一方、アーマチュア17を支持する第1及び第2の弾性機構18~21からの復元力によってアーマチュア17は元の位置に戻される。このため、電気信号に応じた機械振動がアーマチュア17に生じるとともに、この機械振動がアーマチュア17から筐体4に伝わるため、筐体4を振動させることができる。
【0020】
そして筐体4は、
図1(a)に示すように、イヤホン1を装着者の耳甲介腔に装着した際に内側(装着者の外耳道側)に位置し、耳甲介腔の壁部に当接する内側筐体部分40と、内側筐体部分40に対向し、耳甲介腔に装着した際に外界側に位置する外側筐体部分41と、外側筐体部分41に連結するとともにコード3を挿通させるコード引出部5とを備えている。本実施形態の内側筐体部分40と外側筐体部分41は、その内側において、
図3に示すような、アーマチュア17の第1及び第2の外側部17b、17cが嵌まり込む凹部43を備えている。そして内側筐体部分40と外側筐体部分41は、例えば接着剤等を使用して、アーマチュア17の第1及び第2の外側部17b、17cを固定支持した状態で結合されている。なお筐体4は、音の出口となる音口を持たないものであって、コード引出部5におけるコード3を挿通させるための孔を除いて内側筐体部分40及び外側筐体部分41に開口は設けられていない。なお、コード引出部5の開口をシールすることにより筐体4の内部を密閉することもできる。また、コード引出部5を別部材とし、コード3と一体成形して、外側筐体部分41に設ける構造にすることもできる。
【0021】
内側筐体部分40は、楕円体形状又は卵形形状をなすように形作られている。ここで本明細書等における楕円体形状とは、
図1(b)に示すように、xyz直交座標の原点に中心を置いたときに、下記の式(数1)を満たす曲面の少なくとも一部のことをいう。ここで、下記の式(数1)におけるa、b、cは、互いに直交する3つの半軸の長さであって、aはx方向における半軸長であり、bはy方向における半軸長であり、cはz方向における半軸長である。なお、楕円体形状には、2つの半軸長が等しい回転楕円体形状や、3つの半軸長が等しい球体形状も含まれる。また卵形形状とは、例えば2次元平面における放物線や懸垂線(カテナリー曲線)などの曲線を、対称軸で回転させた際に形成される曲面の少なくとも一部のことをいう。本実施形態における内側筐体部分40は、半軸長b及びcが等しい回転楕円体をxz平面に沿って半分に切断した形状(半回転楕円体形状)で形作られている。そして外側筐体部分41も、内側筐体部分40と同一の半回転楕円体形状で形作られている。すなわち本実施形態の筐体4は、コード引出部5を除いて単一の回転楕円体として形成されている。なお本実施形態では、
図1(d)に示すように内側筐体部分40と外側筐体部分41の半軸長が一致していて、両者の合わせ位置Mは筐体4のセンターになっているが、これに限るものではない。
【0022】
【0023】
このような内側筐体部分40と外側筐体部分41で構成される筐体4に対して、上述した電気機械変換器2は、
図1(d)に示すように、電気機械変換器2の中心が筐体4の中心に一致する位置に配設されている。また電気機械変換器2が機械振動する方向は、内側筐体部分40と外側筐体部分41の合わせ位置Mのラインに対して垂直方向であって、内側筐体部分40と外側筐体部分41は、
図1(d)において矢印で示す方向(耳甲介腔に装着した際に、外耳道に向かう方向)に振動する。
【0024】
なお、楕円体形状における3つの半軸長a、b、cの値や卵形形状の曲線を規定する値は任意に選択することが可能であるが、後述するように本実施形態のイヤホン1は、耳甲介腔に装着した際に筐体4が外耳道を塞がない(筐体4は外耳道の入口の一部まで及んでいてもよいが、外耳道の入口を完全に覆っていない)大きさで形成されるものであり、その範囲でこれらの値が選択される。また、筐体4が大きすぎると、耳甲介腔に装着した際に筐体4が耳甲介腔の壁部に強く押し当たって不快感を伴うことになり、筐体4が小さすぎると、電気機械変換器2も小さくなって十分な出力が得られないうえ、耳甲介腔に装着した際の安定性が悪くなる。このような課題について検討を重ねた結果、楕円体形状又は卵形形状としての幅を10mm以上14mm以下にすることが好ましいことが見出された。なおこの数値範囲は、
図1(c)に示す楕円体形状では直径2a、2b、2cが何れも10mm以上14mm以下になることを意味している。そして、この幅の更に好ましい範囲は12mm以上14mm以下であった。また形状としては、略球形状とすることが好ましかった。
【0025】
また本実施形態のコード引出部5は円筒状であって、直径は3~4mm程度としている。
【0026】
このような形態になるイヤホン1は、
図4に示すようにして使用される。具体的には、
図4に示す耳甲介腔100の下部に筐体4を引っ掛けるようにしつつ、コード引出部5は珠間切痕101に入れて、耳甲介腔100に装着する。この状態において筐体4は、外耳道の入口102(
図4においてハッチングを付した部位)を塞いでいないため、外耳道は外界に対して開放された状態にある。またこのとき、
図1(a)に示した内側筐体部分40は、耳甲介腔100の壁部に当接している。また、外側筐体部41の両側は、耳珠及び対珠の内側壁部に当接している。
【0027】
そして、コード3を介して電気機械変換器2に電気信号が印加されると、構造部とアーマチュア17との間で生じる機械振動に応じて筐体4が振動し、その振動により内側筐体部分40自体が振動板として音を発生する。すなわち、イヤホン1によって、筐体4の振動により音を発生させることができ、印加した電気信号に応じた音を聴覚に伝えることができる。また外耳道は筐体4で塞がれていないため、イヤホン1から伝えられる音とともに周囲の音も聴取することができる。筐体4は楕円体形状又は卵形形状であって、かつ小型であるため、筐体4の大きさと比較して十分離れた位置では筐体4が振動したときに内側筐体部分40の振動により発生する音と外側筐体部分41の振動により発生する音が互いに打ち消されるため、周囲への音漏れを抑える効果も得られる。一方、外耳道へ伝わる音については、筐体4の大きさと比較して外耳道までの距離が短いため、内側筐体部分40と外側筐体部分41の外耳道までの距離の差が影響するため、ほとんど打ち消されない。
【0028】
また、本実施形態においては、コード3を挿通させたコード引出部5を、珠間切痕101の窪みに合わせて耳甲介腔100に装着することができるため、コード3を、耳甲介腔100の外側へ自然と引き出すことができる。また、コード引出部5が珠間切痕101に収まるため、耳甲介腔100に装着した際に筐体4を安定的に保持することができる。また、本実施形態のイヤホン1が備える、バネの復元力を利用したバランスド・アーマチュア型の電気機械変換器2は、高出力で筐体4を振動させることができるため、内側筐体部分40を耳甲介腔100の壁部にそれ程強く当接させずとも筐体4の振動により十分に音を伝えることができる。すなわち、従来の電気機械変換器は出力される振動が小さいために、聴覚に対して音を伝えるには筐体を耳甲介腔の壁部等に強く押し当てなければならず、長時間使用していると不快感を伴うことがあったが、本実施形態では上述した電気機械変換器2を使用しているため、この不快感も抑えることができる。
【0029】
なお、上述したイヤホン1は、筐体4を耳甲介腔100の下部に掛けるようにして装着するものであるため、例えば屋外で使用したり運動をしながら使用すると、安定しない場合がある。この場合は、例えば筐体4の下部に粘着性を有するテープなどを使用して、イヤホン1が耳甲介腔100で動かないようにすればよい。また、
図5(a)に示すようなアダプタ200を取り付けて使用してもよい。本実施形態のアダプタ200は、例えばシリコーン等の高分子エラストマーで形成されていて、球冠状をなし吸盤のように機能する基部201と、基部201から偏心して起立する略円柱状の幹部202とで構成されている。そして、
図5(b)に示すように基部201を筐体4の上部に吸着させ、それを
図6に示すようにして耳甲介腔100に装着する。この状態において、幹部202の先端は耳甲介腔100の上側の壁部(対耳輪付近の壁部)に当接するため、筐体4は基部201によって下側の対珠と耳珠とに向けて押圧される。すなわち筐体4は、耳甲介腔100において上下に挟まれるようにして保持されるため、運動時であっても安定的に使用することができる。
【0030】
以上、本発明に従う電気音響変換器の一実施形態であるイヤホンについて説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に従う範疇で種々の変更を加えたものも含む。例えば、上述した外側筐体部分41は、内側筐体部分40と同一の半回転楕円体形状であったが、内側筐体部分40とは相違する半軸となる楕円体形状にしてもよい。また、基本となる形を複数組み合わせた形状(例えば大部分は楕円体としたうえで一部に平坦面を設けた形状など)を採用してもよい。
【0031】
また本発明に従う電気音響変換器を用いた音響機器は、オーディオ機器に限らず補聴器であってもよい。このような補聴器としては、例えば
図7(a)に示すように、上述した如き筐体300と、この筐体300に細径電線コード301を介して接続される本体部302とを備える耳かけ型の補聴器が挙げられる。このような耳かけ型の補聴器は、
図7(b)に示すように、本体部302を耳介の後方に位置させた状態で細径電線コード301を耳介に掛けるとともに筐体300を耳甲介腔100に挿入することによって装着することができる。また
図7(c)に示すように、上述したアダプタ200を取り付けて使用してもよい。また、イヤホンとして使用する場合にこのような耳かけ型の構成を採用してもよく、この場合は、例えば本体部にBluetooth(登録商標)の如き無線通信機能を持たせることで、上述したコード3を使用しないコードレスイヤホンを実現することができる。また筐体4に気導音用の音口を持たないため、防水機能を持たせた電気音響変換器及び音響機器も容易に実現することができる。
【符号の説明】
【0032】
1:イヤホン(電気音響変換器)
2:電気機械変換器
3:コード
4:筐体
40:内側筐体部分
41:外側筐体部分
5:コード引出部