(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】搭乗橋
(51)【国際特許分類】
B64F 1/31 20060101AFI20220707BHJP
E01D 18/00 20060101ALI20220707BHJP
B63B 27/14 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
B64F1/31
E01D18/00 C
B63B27/14 101F
(21)【出願番号】P 2018085458
(22)【出願日】2018-04-26
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】赤山 優太
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 良祐
(72)【発明者】
【氏名】植田 一史
【審査官】姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0047352(US,A1)
【文献】米国特許第03391416(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64F 1/31
E01D 18/00
B63B 27/14
B64F 1/305
E04G 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送機器と乗降施設との間に配置される搭乗橋において、
高さの変更が可能な第1床部と、
前記第1床部とは異なる高さに配置される第2床部と、
前記第1床部と前記第2床部とを接続する折返し状の経路であって、スロープを含む経路であるスロープ経路と、
前記第1床部と前記第2床部とを接続する階段を含んだ経路であって
、かつ、前記スロープを含まない経路であり、前記スロープ経路よりも経路長が短い階段経路と、
を備えることを特徴とする搭乗橋。
【請求項2】
請求項1に記載の搭乗橋であって、
前記第1床部の高さの変更に連動して、当該第1床部と前記階段経路の踏み板との水平方向の間隔を調整する調整機構を備えることを特徴とする搭乗橋。
【請求項3】
請求項2に記載の搭乗橋であって、
前記調整機構は、
前記第1床部に設けられ、水平方向に伸縮可能な伸縮床部と、
前記第1床部の高さを変更させる力を受けて前記伸縮床部を伸縮させる第1動力伝達部と、
を備えることを特徴とする搭乗橋。
【請求項4】
請求項3に記載の搭乗橋であって、
前記第1動力伝達部は、
ガイドレールと、
前記伸縮床部と前記ガイドレールを連結しており、前記ガイドレールに沿って前記伸縮床部を移動させる連結部と、
を備えることを特徴とする搭乗橋。
【請求項5】
請求項2から4までの何れか一項に記載の搭乗橋であって、
前記調整機構は、
前記階段経路が備える複数の踏み板と、
複数の前記踏み板を支持するとともに、複数の前記踏み板に回転可能に連結された複数の支持フレームと、
を含んで構成された平行リンク機構を備え、
前記平行リンク機構は、前記第1床部の高さを変更させる力を受けて前記支持フレームが回転することで、前記第1床部と、前記階段経路の踏み板と、の水平方向の間隔を調整することを特徴とする搭乗橋。
【請求項6】
請求項5に記載の搭乗橋であって、
前記調整機構は、
前記第1床部と前記支持フレームをスライド可能に連結しており、前記第1床部の高さを変更させる力を前記支持フレームに伝達する第2動力伝達部を備えることを特徴とする搭乗橋。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の搭乗橋であって、
前記第1床部及び前記階段経路の少なくとも一方には、当該第1床部と前記階段経路の踏み板との水平方向の間隔を埋める補間ステップが収納可能に設けられていることを特徴とする搭乗橋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、輸送機器と乗降施設との間に配置される搭乗橋に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば飛行場又は港には様々な大きさの輸送機器が出入りする。そのため、これらの輸送機器と接続される搭乗橋には、輸送機器の大きさに応じて高さを調整する機構が設けられることがある。特許文献1は、この種の機構を備えた搭乗橋を開示する。
【0003】
特許文献1の搭乗橋は、踊り場と、平行リンク式階段と、結合リンクと、を備える。踊り場は、航空機の乗降口に連結させる箇所の床部である。平行リンク式階段は、一端が踊り場に回転可能に連結されるとともに他端が地面に接触する。結合リンクは、踊り場と平行リンク式階段を連結するとともに、踊り場及び平行リンク式階段の両方に回転可能に連結される。特許文献1の搭乗橋は、踊り場との連結箇所を回転中心として平行リンク式階段を回転させたときに、結合リンクのみが回転し、踊り場は回転しないように構成されている。これにより、踊り場が傾くことを防止しつつ、階段の高さを変更することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、近年ではバリアフリーの観点から、2つの地点を階段ではなくスロープで接続することがある。しかし、輸送機器又は乗降施設によっては、搭乗橋の高低差が大きくなるため、この場合はスロープの距離が長くなり乗客の負担が大きくなる。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、スロープが必要な乗客に対応しつつ、スロープが不要な乗客が長距離を移動しなくてもよい構成を有する搭乗橋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、以下の構成の搭乗橋が提供される。即ち、この搭乗橋は、輸送機器と乗降施設との間に配置される。この搭乗橋は、第1床部と、第2床部と、スロープ経路と、階段経路と、を備える。前記第1床部は、高さの変更が可能である。前記第2床部は、前記第1床部とは異なる高さに配置される。前記スロープ経路は、前記第1床部と前記第2床部とを接続する折返し状の経路であって、スロープを含む経路である。前記階段経路は、前記第1床部と前記第2床部とを接続する階段を含んだ経路であって、かつ、前記スロープを含まない経路であり、前記スロープ経路よりも経路長が短い。
【0009】
階段を通行できない搭乗者にとってはスロープ経路は必要であるが、スロープ経路は長距離になるため別の搭乗者にとって負担となることがある。この点、スロープ経路に加えて階段経路を設けることで、階段を通行できない搭乗者及び長距離の歩行を避けたい搭乗者の双方に合わせた経路を有する搭乗橋が実現できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スロープが必要な乗客に対応しつつ、スロープが不要な乗客が長距離を移動しなくてもよい構成を有する搭乗橋を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る搭乗橋の概略斜視図。
【
図2】第1実施形態に係る調整機構を備えた階段経路を示す側面断面図。
【
図4】第2実施形態に係る調整機構を備えた階段経路を示す側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに、
図1を参照して、本実施形態に係る搭乗橋1について説明する。
図1は、搭乗橋1の概略斜視図である。
【0013】
図1に示すように、搭乗橋1は、輸送機器経路101と、乗降施設経路102と、を接続する。輸送機器経路101は、輸送用機器の乗降口に接続される経路である。本実施形態の搭乗橋1は、船舶に接続される構成であるが、飛行機等の他の乗物に接続される構成であってもよい。乗降施設経路102は、乗降施設の出入口に接続される経路である。乗降施設とは、輸送機器の乗客が待機したり各種手続きを行う場所である。乗客は、乗降施設及び搭乗橋1を介して、輸送機器に乗降する。
【0014】
搭乗橋1は、第1接続室10と、第2接続室20と、スロープ経路34と、階段経路37と、を備える。第1接続室10は、輸送機器経路101に接続される部分である。第1接続室10は、略箱状であり、床部、壁部、及び天井が形成されるとともに、乗客が出入り可能な開口部が複数形成されている。第1接続室10に形成された床部が第1床部11に相当する。また、第1接続室10は、輸送機器経路接続部12と、スロープ経路接続部13と、階段経路接続部14と、を備える。
【0015】
輸送機器経路接続部12は、第1接続室10に形成された開口部及びその周囲であり、輸送機器経路101に接続される部分である。スロープ経路接続部13は、第1接続室10に形成された開口部及びその周囲であり、スロープ経路34に接続される部分である。階段経路接続部14は、第1接続室10に形成された開口部及びその周囲であり、階段経路37に接続される部分である。階段経路接続部14は輸送機器経路接続部12を挟んでスロープ経路接続部13の反対側に形成されている。なお、輸送機器経路接続部12、スロープ経路接続部13、及び階段経路接続部14が第1接続室10に接続される位置は、本実施形態とは異なっていてもよい。例えば、輸送機器経路接続部12、スロープ経路接続部13、及び階段経路接続部14のうち少なくとも2つが第1接続室10の同じ側(例えば、
図1の紙面奥側)に接続されていてもよい。
【0016】
第2接続室20は、第1接続室10とは異なる高さに配置されている。第2接続室20は、略箱状であり、床部、壁部、及び天井が形成されるとともに、乗客が出入り可能な開口部が複数形成されている。第2接続室20に形成された床部が第2床部21に相当する。また、第2接続室20は、乗降施設経路接続部22と、スロープ経路接続部23と、階段経路接続部24と、を備える。
【0017】
乗降施設経路接続部22は、第2接続室20に形成された開口部及びその周囲であり、乗降施設経路102に接続される部分である。乗降施設経路接続部22は、輸送機器経路接続部12とは反対側に形成されているが、異なる位置に形成されていてもよい。スロープ経路接続部23は、第2接続室20に形成された開口部及びその周囲であり、スロープ経路34に接続される部分である。スロープ経路接続部13とスロープ経路接続部23は同じ側に形成されている。階段経路接続部24は、第2接続室20に形成された開口部及びその周囲であり、階段経路37に接続される部分である。階段経路接続部24は、平面視で階段経路接続部14と対向する位置に形成されている。階段経路接続部24は、乗降施設経路接続部22を挟んでスロープ経路接続部23の反対側に形成されている。なお、乗降施設経路接続部22、スロープ経路接続部23、及び階段経路接続部24が第2接続室20に接続される位置は、本実施形態とは異なっていてもよい。例えば、乗降施設経路接続部22、スロープ経路接続部23、及び階段経路接続部24のうち少なくとも2つが第2接続室20の同じ側(例えば、
図1の紙面手前側)に接続されていてもよい。従って、乗降施設経路接続部22及びスロープ経路接続部23は、第1接続室10と第2接続室20との間に形成されていてもよい。
【0018】
第1接続室10及び第2接続室20は、同じ床部支持台車31上に設けられている。この構成により第1接続室10及び第2接続室20を一体的に移動させることができる。なお、第1接続室10と第2接続室20が別の台車に設けられていてもよいし、車輪を持たない構造体に設けられてもよい。
【0019】
また、床部支持台車31には、第1支持機構32及び第2支持機構33が設けられている。第1支持機構32は第1接続室10を支持する機構である。具体的には第1支持機構32は、床部支持台車31から延びる支持フレームと、支持フレームと第1接続室10とを接続する接続構造と、を備えている。第2支持機構33も同様に、支持フレームと接続構造とを備えている。
【0020】
また、本実施形態では、第1支持機構32は第1接続室10の高さを調整可能に構成されている。具体的には支持フレームが第1接続室10をスライド可能に支持しており、
図2に示す昇降アクチュエータ51の動力により、第1接続室10の高さを調整することができる。なお、第2支持機構33は第2接続室20の高さを調整することができない。2つの接続室のうち一方のみが高さ調整可能であれば、高さ調整可能な方が第1接続室10に相当し、他方が第2接続室20に相当する。また、第1接続室10は、輸送機器側であってもよいし、乗降施設側であってもよい。なお、2つの接続室のうち両方が高さ調整可能であれば、任意の一方が第1接続室10に相当し、他方が第2接続室20に相当する。また、第1接続室10は、第2接続室20より下方に配置されていてもよいし、上方に配置されていてもよい。
【0021】
スロープ経路34は、第1接続室10と第2接続室20を接続する経路であって、スロープを含むとともに階段を含まない経路である。スロープ経路34には、平坦な経路又は車椅子が走行可能な僅かな段差が含まれていてもよい。スロープ経路34は、第1スロープ部34aと、第2スロープ部34bと、折返し部34cと、を備える。
【0022】
第1スロープ部34aは、第1接続室10のスロープ経路接続部13に接続されている。第2スロープ部34bは、第2接続室20のスロープ経路接続部23に接続されている。第1スロープ部34a及び第2スロープ部34bは、平面視で互いに平行となるように配置されているが、平行でなく、角度をなすように配置されていてもよい。また、第1スロープ部34a及び第2スロープ部34bには、床だけでなく壁及び天井が形成されているが、壁又は天井は省略することもできる。また、本実施形態のスロープ勾配は1/12以下であるが、それより大きいスロープ勾配であってもよい。
【0023】
折返し部34cは、第1スロープ部34a及び第2スロープ部34bを接続しており、折返し状の経路が形成されている。また、折返し部34cの高さは、第1接続室10の高さと第2接続室20の高さの間である。折返し部34cは折返し部支持台車35上に設けられている。これにより、搭乗橋1全体を移動させることができる。また、折返し部支持台車35には、第3支持機構36が設けられている。第3支持機構36は、第1支持機構32等と同様に、支持フレームと、接続構造と、を備えている。第3支持機構36は、折返し部34cの高さを調整可能であってもよいし、高さを調整できない構成であってもよい。
【0024】
このように、スロープ経路34を備えることにより、階段を用いることなく、第1接続室10と第2接続室20の間を移動することができる。
【0025】
階段経路37は、第1接続室10と第2接続室20とを接続する直線状かつ階段を含んだ経路である。階段経路37はスロープ経路34と異なり迂回をしないため、階段経路37の経路長はスロープ経路34の経路長よりも当然短いため、経路長を短くすることができる。また、上述のように、階段経路接続部14と階段経路接続部24は平面視で対向するように配置されており、それらが直線状の経路で接続されているため、階段経路37の構造を単純にしつつ、最短経路で階段経路接続部14と階段経路接続部24を接続することができ、経路長を一層短くすることができる。また、平面視において、階段経路37と、第1スロープ部34a又は第2スロープ部34bと、は略90度をなすように配置されている。なお、階段経路37は、階段を含んだ経路であれば、直線状の経路でなくともよい。例えば、階段経路37の途中に踊り場が設けられていてもよい。このような場合であっても、階段経路37の経路長はスロープ経路34の経路長よりも当然短くなる。
【0026】
このように、スロープ経路34に加えて、経路長が短い階段経路37を備えることで、搭乗橋1は以下の効果を奏する。即ち、スロープ経路34を備えることで、階段を通行できない搭乗者に対しても搭乗橋1が利用可能となる。更に、階段経路37を備えることで、階段が不要な搭乗者が無駄に長距離を歩く必要がなくなるため、搭乗者の負担を軽減できる。
【0027】
次に、上記の搭乗橋1の階段経路37の詳細な構成について2つの例を挙げて説明する。1つ目の例を第1実施形態と称し、2つ目の例を第2実施形態と称する。初めに、
図2及び
図3を参照して、第1実施形態について説明する。
図2は、調整機構40を備えた階段経路37を示す側面断面図である。
図3は、階段経路37の平面図である。なお、
図3では、図面を見易くするために、第1床部11側の部材にドットを付している。
【0028】
階段経路37は、支持フレーム52と、踏み板53を備えている。支持フレーム52は、傾斜して配置されている。支持フレーム52は、踏み板53の幅方向(
図3を参照)の一側に2つ、他側に2つの合計4本配置される。なお、支持フレーム52の本数及び構成は異なっていてもよい。踏み板53は、搭乗者が通行する際に足で踏む部分であり、支持フレーム52に沿って配置されている。踏み板53は、ピン等の固定具により支持フレーム52に固定されている。
【0029】
上述のように、第1床部11は昇降アクチュエータ51の動力及び第1支持機構32により、高さが調整される。このとき、第1床部11は、上下方向のみに移動し、水平方向には移動しない。そのため、第1床部11が上昇した場合は、第1床部11から踏み板53までの距離が長くなる。一方、第1床部11が下降した場合は、第1床部11から踏み板53までの距離が短くなり、第1床部11と踏み板53とが衝突する可能性がある。従って、第1床部11の高さの変更に応じて、第1床部11の水平方向の位置を調整する必要がある。この調整を行う機構を調整機構と称し、第1実施形態では符号40を付して説明する。
図2に示すように、調整機構40は、伸縮床部41と、第1動力伝達部42と、を備える。
【0030】
伸縮床部41は、第1床部11の一部であり、水平方向に伸縮可能な機構を有する。伸縮床部41は、固定床41aと、可動床41bと、を備える。可動床41bは、固定床41aに対して水平方向に移動可能に構成されている。可動床41bを移動させる構成としては、例えば固定床41aに溝を形成し、その溝に入り込む突起を可動床41bに形成すればよい。
【0031】
また、以下の説明において、踏み板53の幅方向及び上下方向の何れとも直交する方向(即ち、平面視で第1床部11と第2床部21が並ぶ方向)を、
図2に示すように前後方向と称する。また、階段経路37の前後方向のうち、第1床部11側を第1側、第2床部21側を第2側と称する。
【0032】
図2に示すように、第1動力伝達部42は、ガイドレール42aと、可動アーム42bと、連結部42cと、を備える。ガイドレール42aは支持フレーム52と平行であって、支持フレーム52よりも第2側に配置されている。ガイドレール42aには、長手方向に沿ってレール溝421が形成されている。また、レール溝421は、上方向に移動するに従って第2側に移動するように傾斜した溝と表現することもできる。レール溝421は、踏み板53の幅方向の外側の面に形成されている。なお、支持フレーム52とガイドレール42aとが一体的に形成されていてもよい。つまり、踏み板53を挟むように2つの細長状の平板を配置し、この平板に踏み板53を固定するとともに、この平板にレール溝421を形成する。なお、ガイドレール42aは階段経路37に沿う直線状の部材であるが、曲線状の部材であってもよい。ただし、ガイドレール42aは、階段経路37と同様に、第2側に近づくに従って上側に近づく形状であることが好ましい。
【0033】
可動アーム42bは、可動床41bに接続されており、可動床41bと一体的に動くように構成されている。
図3に示すように、可動アーム42bは、踏み板53の幅方向の外側であって、更に支持フレーム52及びガイドレール42aよりも外側に位置している。そのため、可動アーム42bは、支持フレーム52及び踏み板53等と干渉することがない。
【0034】
連結部42cは、可動アーム42bの先端に取り付けられている。連結部42cはレール溝421に嵌まり込んでいる。従って、連結部42cはレール溝421に沿って移動する。ここで、第1床部11が上昇した場合、それに応じて伸縮床部41、可動アーム42b、及び連結部42cが上昇する。レール溝421は上方向に移動するに従って第2側に移動する形状であるため、
図2の鎖線に示すように、連結部42cは上昇するに従って第2側へ移動する。その結果、可動床41bが第2側に移動する。そのため、固定床41aと踏み板53との間の隙間を、可動床41bによって埋めることができる。
【0035】
第1床部11を下降させた場合も同様に、連結部42cがレール溝421に案内されることで第1側へ移動するため、可動床41bも第1側に移動する。そのため、可動床41b(第1床部11)と踏み板53との衝突を防止できる。また、伸縮床部41の上下方向の可動範囲、及び、前後方向の伸縮範囲は、以下の第1条件及び第2条件を満たすように定められている。即ち、第1条件とは、第1床部11の可動範囲の下限において、伸縮床部41の第2側の端部(即ち、可動床41bが最も第1側に縮んだときの可動床41bの第2側の端部)と、その高さの踏み板53の第1側の端部と、が干渉(衝突)しないことである。第2条件とは、第1床部11の可動範囲の上限において、伸縮床部41の第2側の端部(即ち、可動床41bが最も伸びたときの可動床41bの第2側の端部)と、その高さの踏み板53の第1側の端部と、の隙間が所定以下(乗客が問題なく通過できる程度以下)となることである。可動範囲及び伸縮範囲を定める構造は様々であるが、例えば可動範囲又は伸縮範囲の限界位置に、それ以上移動することを規制するロックを設ければよい。
【0036】
また、可動床41bは、専用のアクチュエータではなく、第1床部11を上昇させるための昇降アクチュエータ51を動力源とし、第1床部11を昇降させるための力の一部を用いて前後方向に移動する。そのため、部品コストを下げることができるとともに、第1床部11の昇降と、可動床41bの前後方向の移動と、を同期させることができる。
【0037】
次に、
図4及び
図5を参照して第2実施形態について説明する。
図4は、調整機構60を備えた階段経路37を示す側面断面図である。
図5は、階段経路37の平面図である。なお、
図5では、図面を見易くするために、第1床部11側の部材にドットを付している。
【0038】
上記の第1実施形態では、第1床部11が前後方向に移動することで、第1床部11と踏み板53の間隔を小さくする構成である。これに対し、第2実施形態では、踏み板53が前後方向に移動することで、第1床部11と踏み板53の間隔を小さくする構成である。
【0039】
第2実施形態では、支持フレーム52及び踏み板53は、接続具54により相対回転可能に接続されている。更に、支持フレーム52は、第2床部21に対しても接続具54により相対回転可能に接続されている。このように、支持フレーム52及び踏み板53を含んで平行リンク機構61が構成されている。また、支持フレーム52が回転しても第2床部21が回転しないように、第2床部21は固定されている。この構成により、第2床部21との接続箇所を回転中心として支持フレーム52を回転させることで、
図4の鎖線に示すように、踏み板53を前後方向に移動させることができる。
【0040】
第2実施形態の階段経路37においても、支持フレーム52を回転させるための専用のアクチュエータは存在せず、第1床部11を昇降する動力が第2動力伝達部62により伝達されることで、支持フレーム52が回転する。つまり、第1床部11と踏み板53の間隔は、平行リンク機構61と、第2動力伝達部62と、により調整されることとなる。そのため、これらを合わせて調整機構60と称する。
【0041】
図4に示すように、第2動力伝達部62は、延出部62aと、接触部62bと、を備える。延出部62aは、第1床部11から第2側に延びるように形成されており、第1床部11と一体的に動作する。延出部62aは、踏み板53の幅方向の外側であって支持フレーム52よりも更に外側に位置している。そのため、延出部62aは支持フレーム52及び踏み板53と干渉しない。接触部62bは、延出部62aに接続されており、支持フレーム52の下面に接触している。接触部62bは、支持フレーム52に対してスライド可能に構成されている。
【0042】
接触部62bが支持フレーム52の下方に接触していることにより、支持フレーム52の自重による下方への回転が抑制される。そのため、支持フレーム52を傾斜姿勢で安定させることができる。この状態から第1床部11が上昇した場合、
図4の鎖線に示すように、支持フレーム52は接触部62bから上方向の力を受けることで上方に回転する。これにより、踏み板53が第1側に移動する。以上により、第1床部11が上昇した場合であっても、第1床部11と踏み板53の間隔が大きくなり過ぎることを防止できる。また、第1床部11が下降した場合、接触部62bの下降に伴って支持フレーム52が自重により下側に回転するため、踏み板53を第2側に移動させることができる。従って、第1床部11と踏み板53の干渉を防止できる。
【0043】
図4の鎖線に示すように、支持フレーム52の回転だけでは、第1床部11と踏み板53の間隔があまり小さくならない場合がある。そのため、本実施形態の第1床部11には、補間ステップ71が取り付けられている。補間ステップ71は第1床部11に対して回転可能となるようにヒンジ等を用いて取り付けられている。補間ステップ71の回転軸は、踏み板53の幅方向と平行である。補間ステップ71は、第1床部11上に載置されることで収納されている収納状態(
図4の実線)と、回動されることで第1床部11と踏み板53の間隔を埋める動作状態(
図4の鎖線)と、を切替可能に構成されている。
【0044】
補間ステップ71は、作業者等が状況に応じて手動で回転させる。この構成に代えて、アクチュエータにより補間ステップ71を回転させることもできる。また、第1床部11を昇降する力を伝達することで、補間ステップ71を回転させることもできる、なお、補間ステップ71は、第1床部11側ではなく踏み板53側に設けてもよい。また、補間ステップ71は、例えば内部にスライド可能な板が格納されたスライド式ステップなどの伸縮可能な調整機能を有していてもよい。その場合は、第1床部11と踏み板53の水平方向の間隔が大きい場合にも、簡単な構成で第1床部11の高さの変更に連動して水平方向の間隔を調整できる。
【0045】
以上に説明したように、上記実施形態の搭乗橋1は、輸送機器と乗降施設との間に配置される。この搭乗橋1は、第1床部11と、第2床部21と、スロープ経路34と、階段経路37と、を備える。第1床部11は、高さの変更が可能である。第2床部21は、第1床部11とは異なる高さに配置される。スロープ経路34は、第1床部11と第2床部21とを接続する折返し状の経路であって、スロープを含む経路である。階段経路は、第1床部11と第2床部21とを接続する階段を含んだ経路であって、スロープ経路34よりも経路長が短い。
【0046】
階段を通行できない搭乗者にとってはスロープ経路34は必要であるが、スロープ経路34は長距離になるため別の搭乗者にとって負担となることがある。この点、スロープ経路34に加えて階段経路37を設けることで、階段を通行できない搭乗者及び長距離の歩行を避けたい搭乗者の双方に合わせた経路を有する搭乗橋1が実現できる。
【0047】
また、上記実施形態の搭乗橋1は、第1床部11の高さの変更に連動して、当該第1床部11と階段経路37の踏み板53との水平方向の間隔を調整する調整機構40,60を備える。
【0048】
第1床部11の高さを変更した場合、第1床部11と踏み板53の水平方向の間隔を調整する必要が生じるが、両者を連動させることで、個別の位置調整が不要となる。
【0049】
また、上記実施形態の搭乗橋1において、調整機構40は、伸縮床部41と、第1動力伝達部42と、を備える。伸縮床部41は、第1床部11に設けられ、水平方向に伸縮可能である。第1動力伝達部42は、第1床部11の高さを変更させる力を受けて伸縮床部41を伸縮させる。
【0050】
これにより、第1床部11を昇降させる力を伸縮床部41の伸縮にも用いることができるので、上下方向と水平方向の移動を確実に連動させることができる。
【0051】
また、上記実施形態の搭乗橋1において、第1動力伝達部42は、ガイドレール42aと、連結部42cと、を備える。連結部42cは、伸縮床部41とガイドレール42aを連結しており、ガイドレール42aに沿って伸縮床部41を移動させる。
【0052】
これにより、ガイドレール42aを設けることで、簡単な構成で上下方向と水平方向の移動を連動させることができる。
【0053】
また、上記実施形態の搭乗橋において、調整機構60は、複数の踏み板53と、複数の支持フレーム52と、を含んで構成された平行リンク機構61を備える。支持フレーム52は、複数の踏み板53を支持するとともに、複数の踏み板53に回転可能に連結される。平行リンク機構61は、第1床部11の高さを変更させる力を受けて支持フレーム52が回転されることで、第1床部11と、階段経路の踏み板53と、の水平方向の間隔を調整する。
【0054】
これにより、平行リンク機構61を用いることで、踏み板53の向きを変えずに階段経路37を回転させることができる。
【0055】
また、上記実施形態の搭乗橋1においては、調整機構60は、第1床部11と支持フレーム52をスライド可能に連結しており、第1床部11の高さを変更させる力を支持フレーム52に伝達する第2動力伝達部62を備える。
【0056】
これにより、第1床部11と支持フレーム52を連結することで、簡単な構成で両者を連動させることができる。
【0057】
また、上記実施形態の搭乗橋1において、第1床部11及び階段経路37の少なくとも一方には、当該第1床部11と階段経路37の踏み板53との水平方向の間隔を埋める補間ステップ71が収納可能に設けられている。
【0058】
これにより、水平方向の間隔が大きい場合は補間ステップ71を使って埋めることができ、不要な場合は収納しておくことができる。
【0059】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0060】
上記実施形態では、第1床部11を昇降させる力の一部を用いて、第1床部11又は踏み板53の一方を水平方向に移動させる構成である。これに代えて、第1床部11の昇降とは別のアクチュエータを用いて、第1床部11又は踏み板53を水平方向に移動させることもできる。また、調整機構40,60とは異なる機構で、第1床部11を昇降させる力の一部を用いて、第1床部11又は踏み板53の一方を水平方向に移動させることもできる。
【0061】
上記実施形態では、第1床部11と踏み板53の一方のみを水平方向に移動させるが、両方を水平方向に移動させることもできる。具体的には、第1実施形態の調整機構40と、第2実施形態の調整機構60と、をともに備えることで、第1床部11と踏み板53の両方を水平方向に移動させることができる。
【符号の説明】
【0062】
1 搭乗橋
10 第1接続室
11 第1床部
20 第2接続室
21 第2床部
34 スロープ経路
37 階段経路
40,60 調整機構
41 伸縮床部
42 第1動力伝達部
51 昇降アクチュエータ
52 支持フレーム
53 踏み板
61 平行リンク機構
62 第2動力伝達部