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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】エミッタおよび点滴灌漑用チューブ
(51)【国際特許分類】
   A01G 25/02 20060101AFI20220707BHJP
【FI】
A01G25/02 601K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018101332
(22)【出願日】2018-05-28
(65)【公開番号】P2019205361
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 一磨
(72)【発明者】
【氏名】小野 好貴
【審査官】川野 汐音
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-073236(JP,A)
【文献】特開2015-062369(JP,A)
【文献】国際公開第2017/103926(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0098514(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0166907(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 25/00-29/00
B05B 1/00- 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
灌漑用液体を流通させるチューブの内壁面における、前記チューブの内外を連通する吐出口に対応する位置に接合されて前記チューブ内の前記灌漑用液体を前記吐出口から定量的に前記チューブ外に吐出するためのエミッタであって、
エミッタ本体と、前記エミッタ本体に収容される台座とを有し、
前記エミッタ本体は、
前記灌漑用液体を取り入れるための取水部と、
前記取水部に連通し、前記灌漑用液体を減圧させながら流す減圧流路を形成するための減圧流路溝と、
前記減圧流路溝に連通し、前記台座を収容するための収容部と、
可撓性を有し、前記台座を前記収容部に収容した状態で、前記チューブ内の灌漑用液体の圧力を受けたときに前記台座に接近するダイヤフラム部と、を含み、
前記台座は、前記減圧流路溝から前記収容部内に流入した灌漑用液体を前記吐出口に向けて排出するための貫通孔を有し、
前記エミッタ本体と、前記台座とは、ヒンジ部を介して接続されている、
エミッタ。
【請求項2】
前記収容部は、前記エミッタが前記チューブに接合されたときに、前記エミッタ本体の前記チューブと接合される側の面に開口しており、
前記ヒンジ部は、前記チューブと接合される側の面と連続した前記エミッタ本体の側面に接続されており、
前記チューブが接合される側の面には、前記収容部の内周面および前記ヒンジ部が接続された前記側面を繋ぎ、前記ヒンジ部が圧入されるための溝が形成されている、
請求項1に記載のエミッタ。
【請求項3】
前記ヒンジ部は、前記エミッタが前記チューブに接合されたときに、前記チューブ内で前記灌漑用液体が流れる方向における上流側または下流側に位置する、前記エミッタ本体の側面に接続されている、請求項2に記載のエミッタ。
【請求項4】
前記エミッタ本体、前記台座および前記ヒンジ部は、一体成形されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のエミッタ。
【請求項5】
灌漑用液体を吐出するための吐出口を有するチューブと、
前記チューブの内壁面の前記吐出口に対応する位置に接合された、請求項1~4のいずれか一項に記載のエミッタと、を有する、
点滴灌漑用チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エミッタおよび当該エミッタを有する点滴灌漑用チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
以前から、植物の栽培方法の一つとして点滴灌漑法が知られている。点滴灌漑法とは、植物が植えられている土壌に点滴灌漑用チューブを配置し、点滴灌漑用チューブから土壌へ、水や液体肥料等の灌漑用液体を滴下する方法である。近年、点滴灌漑法は、灌漑用液体の消費量を最小限にすることが可能であるため、特に注目されている。
【0003】
点滴灌漑用チューブは、灌漑用液体が吐出される複数の貫通孔が形成されたチューブと、当該チューブの内壁面に接合され、各貫通孔から灌漑用液体を吐出するための複数のエミッタ(「ドリッパ」ともいう)とを有する(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
特許文献1には、本体と、ヒンジを中心として本体に対して移動可能なフラップとを含むエミッタが記載されている。このフラップは、本体と同様の、好ましくは同一の材料で形成されている。また、このフラップは、フレーム内に配置された膜(ダイヤフラム)を有する。エミッタが組み立てられた作動状態において、本体の凹部がヒンジを中心に回転したフラップの膜によって覆われる。凹部は、フレームハウジングに設けられたリムを周縁部として本体に形成される。フラップの膜がリムに押しつけられることによって、圧力調整チャンバが形成される。圧力調整チャンバから流出する液体の流量は、圧力変動に起因して膜が弾性的に撓むことによって調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/093882号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のエミッタでは、フラップが開かれた状態で、フラップと本体とが一体成形される。そして、本体に形成された凹部がフラップの膜によって覆われることにより、エミッタから吐出される液体の流量を調整する圧力調整チャンバが構成される。したがって、エミッタを作動状態とするために、ヒンジを中心としてフラップを回転させる工程や、回転させたフラップを薬品による接着や熱による溶着等によって本体に係合させる工程等、複数の工程が必要となる。このように複数の工程はエミッタの製造コストを上昇させるため、製造コストを抑えることが要望されている。特に、フラップを接着や溶着等によって本体に係合する工程は製造コストを大きく上昇させるので、製造工程で接着や溶着等を必要としないエミッタが要望されている。
【0007】
本発明の目的は、製造コストを低減可能なエミッタおよび点滴灌漑用チューブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエミッタは、灌漑用液体を流通させるチューブの内壁面における、前記チューブの内外を連通する吐出口に対応する位置に接合されて前記チューブ内の前記灌漑用液体を前記吐出口から定量的に前記チューブ外に吐出するためのエミッタであって、エミッタ本体と、前記エミッタ本体に収容される台座とを有し、前記エミッタ本体は、前記灌漑用液体を取り入れるための取水部と、前記取水部に連通し、前記灌漑用液体を減圧させながら流す減圧流路を形成するための減圧流路溝と、前記減圧流路溝に連通し、前記台座を収容するための収容部と、可撓性を有し、前記台座を前記収容部に収容した状態で、前記チューブ内の灌漑用液体の圧力を受けたときに前記台座に接近するダイヤフラム部と、を含み、前記台座は、前記減圧流路溝から前記収容部内に流入した灌漑用液体を前記吐出口に向けて排出するための貫通孔を有し、前記エミッタ本体と、前記台座とは、ヒンジ部を介して接続されている。
【0009】
本発明に係る点滴灌漑用チューブは、灌漑用液体を吐出する吐出口を有するチューブと、前記チューブの内壁面の前記吐出口に対応する位置に接合された、本発明に係るエミッタと、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造コストを低減可能なエミッタおよび点滴灌漑用チューブを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係る点滴灌漑用チューブの断面図である。
図2図2は、台座を収容部に収容した後のエミッタを表側(取水部を有する側の面)から見た斜視図である。
図3図3A、Bは、台座を収容部に収容した後のエミッタの構成を示す図である。
図4図4A~Cは、台座を収容部に収容した後のエミッタの構成を示す図である。
図5図5は、台座を収容部に収容する前のエミッタを表側から見た斜視図である。
図6図6A、Bは、台座を収容部に収容する前のエミッタの構成を示す図である。
図7図7A~Cは、台座を収容部に収容する前のエミッタの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明における実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
[点滴灌漑用チューブおよびエミッタの構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係る点滴灌漑用チューブ100の断面図である。
【0014】
図1に示されるように、点滴灌漑用チューブ100は、チューブ110およびエミッタ120を有する。
【0015】
チューブ110は、灌漑用液体を流すための管である。灌漑用液体の例には、水、液体肥料、農薬およびこれらの混合液が含まれる。チューブ110において、灌漑用液体を流す方向については、特に限定されない。また、チューブ110の材料は、特に限定されない。本実施の形態では、チューブ110の材料は、ポリエチレンである。
【0016】
チューブ110の管壁には、チューブ110の軸方向において所定の間隔(例えば、200mm以上500mm以下)で灌漑用液体を吐出するための複数の吐出口111が形成されている。吐出口111の開口部の直径は、灌漑用液体を吐出できれば特に限定されない。本実施の形態では、吐出口111の開口部の直径は、1.5mmである。内壁面112の吐出口111に対応する位置には、エミッタ120がそれぞれ接合される。チューブ110の軸方向に垂直な断面形状および断面積は、チューブ110の内部にエミッタ120を液漏れなく配置できれば特に限定されない。
【0017】
点滴灌漑用チューブ100は、エミッタ120のチューブと接合される側の面(裏面125)を内壁面112に接合することによって作製される。チューブ110とエミッタ120との接合方法は、特に限定されない。チューブ110とエミッタ120との接合方法の例には、チューブ110またはエミッタ120を構成する樹脂材料の溶着、接着剤による接着が含まれる。吐出口111は、チューブ110とエミッタ120とを接合した後に形成されてもよいし、接合前に形成されてもよい。
【0018】
図2図3A、B、図4A~Cは、台座122を収容部135に収容した後の本実施の形態に係るエミッタ120の構成を示す図である。図2は、エミッタ120を表側(取水部131を有する側の面)から見た斜視図である。図3Aは、エミッタの平面図であり、図3Bは、底面図である。図4Aは、エミッタ120の正面図であり、図4Bは、図3Aに示されるA-A線の断面図であり、図4Cは、左側面図である。
【0019】
図1図2図3A、Bおよび図4A~Cに示されるように、エミッタ120は、吐出口111を覆うようにチューブ110の内壁面112に接合されている。エミッタ120の形状は、内壁面112に密着して、吐出口111を覆うことができれば特に限定されない。本実施の形態では、チューブ110の軸方向に垂直なエミッタ120の断面における、内壁面112に接合する裏面の形状は、内壁面112に沿うように、内壁面112に向かって凸の略円弧形状である。エミッタ120の平面視形状は、図3Aに示されるように、四隅がR面取りされた略矩形状である。本実施の形態では、エミッタ120の長辺方向の長さは19mmであり、短辺方向の長さは8mmであり、高さは2.7mmである。エミッタ120の大きさは、特に限定されず、吐出口111から吐出される灌漑用液体の所望の量に基づいて、適宜決定されればよい。
【0020】
本実施の形態において、エミッタ120は、可撓性を有する材料で成形されている。エミッタ120の材料の例には、樹脂、エラストマーおよびゴムが含まれる。樹脂の例には、ポリエチレンおよびシリコーンが含まれる。エミッタ120の可撓性は、弾性を有する樹脂材料の使用によって調整できる。エミッタ120の可撓性の調整方法の例には、弾性を有する樹脂の選択、硬質の樹脂材料に対する弾性を有する樹脂材料の混合比の調整が含まれる。
【0021】
図1図2図3A、B、図4A~Cに示されるように、エミッタ120は、エミッタ本体121と、エミッタ本体121に収容される台座122とを有する。エミッタ本体121および台座122は、ヒンジ部123を介して接続されている。台座122は、エミッタ120がチューブ110に接合される前に、吐出口111と対向する裏面125側から、エミッタ本体121の収容部135に収容される。
【0022】
エミッタ本体121は、取水部131と、第1接続流路142となる第1接続溝132と、減圧流路143となる減圧溝133と、第2接続流路144となる第2接続溝134とを有する。エミッタ本体121に台座122が収容されることによって、流量調整部137および吐出部138が形成される。エミッタ本体121の表面124には、取水部131が開口している。一方、エミッタ本体121の裏面125には、第1接続溝132、減圧溝133、第2接続溝134および収容部135が開口している。
【0023】
エミッタ120がチューブ110に接合されることにより、第1接続溝132、減圧溝133および第2接続溝134は、それぞれ第1接続流路142、減圧流路143および第2接続流路144となる。これにより、取水部131、第1接続流路142、減圧流路143、第2接続流路144、流量調整部137および吐出部138によって構成され、取水部131と吐出部138とを繋ぐ流路が形成される。この流路は、取水部131から吐出部138まで灌漑用液体を流通させる。
【0024】
取水部131は、エミッタ本体121の表面124の半分以上の領域に配置されている。本実施の形態では、2つの取水部131が、エミッタ120の短軸方向の両端部に配置されている(図3A)。取水部131が配置されていない表面124の領域には、流量調整部137が配置されている。取水部131は、取水側スクリーン部146および複数の取水用貫通孔147を有する。
【0025】
取水側スクリーン部146は、エミッタ120に取り入れられる灌漑用液体中の浮遊物が取水用凹部148内に侵入することを防止する。取水側スクリーン部146は、チューブ110内に対して開口しており、取水用凹部148および凸条149を有する。
【0026】
取水用凹部148の深さは特に限定されず、エミッタ120の大きさによって適宜設定される。取水用凹部148の底面上には凸条149が形成されている。また、取水用凹部148の底面には取水用貫通孔147が形成されている。
【0027】
凸条149は、取水用凹部148の底面上に配置されている。凸条149の配置および数は、取水用凹部148の開口部側から灌漑用液体を取り入れつつ、灌漑用液体中の浮遊物の侵入を防止できれば特に限定されない。本実施の形態では、凸条149は、エミッタ120の短軸方向に沿って配置され、かつエミッタ120の長軸方向に配列されている。また、隣接する凸条149間の距離は、前述の機能を発揮できれば特に限定されない。また、凸条149は、エミッタ120の表面124から取水用凹部148の底面に向かうにつれて幅が小さくなるように形成されていてもよいし、エミッタ120の表面124から取水用凹部148の底面まで同じ幅に形成されていてもよい。
【0028】
取水用貫通孔147は、取水用凹部148の底面に形成されている。取水用貫通孔147の形状および数は、取水用凹部148の内部に取り込まれた灌漑用液体をエミッタ本体121内に取り込むことができれば特に限定されない。本実施の形態では、取水用貫通孔147は、取水用凹部148の底面の長軸方向に沿って形成された1つの長孔である。それぞれの長孔は、複数の凸条149により覆われているため、表側から見た場合、1つの取水用貫通孔147は、多数の貫通孔に分かれているように見える。
【0029】
チューブ110内を流れてきた灌漑用液体は、取水側スクリーン部146によって浮遊物が取水用凹部148内への侵入が防止されつつ、エミッタ120内に取り込まれる。
【0030】
第1接続溝132(第1接続流路142)は、取水用貫通孔147(取水部131)と、減圧溝133とを接続する。第1接続溝132は、エミッタ120の裏面125の外縁部に沿って略U字状に形成されている。第1接続溝132の中央部付近には、減圧溝133が接続されている。チューブ110およびエミッタ120が接合されることにより、第1接続溝132とチューブ110の内壁面112とにより、第1接続流路142が形成される。取水部131から取り込まれた灌漑用液体は、第1接続流路142を通って、減圧流路143に流れる。
【0031】
減圧溝133(減圧流路143)は、第1接続溝132(第1接続流路142)と、第2接続流路144とを接続する。減圧溝133(減圧流路143)は、取水部131から取り入れられた灌漑用液体の圧力を減圧させて、当該灌漑用液体を流量調整部137に導く。減圧溝133は、裏面125の中央部分に、長軸方向に沿って配置されている。減圧溝133の上流端は第1接続溝132に接続されており、下流端には流量調整部137に連通した第2接続溝134が接続されている。減圧溝133の形状は、前述の機能を発揮できれば特に限定されない。本実施の形態では、減圧溝133の平面視形状は、ジグザグ形状である。減圧溝133は、内側面から突出する略三角柱形状の凸部139が灌漑用液体の流れる方向に沿って交互に配置されている。凸部139は、平面視したときに、先端が減圧溝133の中心軸を超えないように配置されている。チューブ110およびエミッタ120が接合されることにより、減圧溝133とチューブ110の内壁面により、減圧流路143が形成される。取水部131から取り込まれた灌漑用液体は、減圧流路143により減圧されて流量調整部137に導かれる。
【0032】
第2接続溝134(第2接続流路144)は、減圧溝133(減圧流路143)と、流量調整部137とを接続する。第2接続溝134は、エミッタ120の裏面125側においてエミッタ120の長軸方向に沿って直線状に形成された溝である。第2接続溝134の上流端は減圧溝133に接続されており、第2接続溝134の下流端は流量調整部137(収容部135)に接続されている。チューブ110とエミッタ120とが接合されることにより、第2接続溝134とチューブ110の内壁面112とによって、第2接続流路144が形成される。減圧流路143により減圧された灌漑用液体は、第2接続流路144を通って、流量調整部137に流れる。
【0033】
図5図7は、台座を収容部に収容する前のエミッタ120の構成を示す図である。図5は、台座を収容部に収容する前のエミッタ120を表側から見た斜視図である。図6Aは、台座を収容部に収容する前のエミッタの平面図であり、図6Bは、底面図である。図7Aは、台座を収容部に収容する前のエミッタ120の正面図であり、図7Bは、図6Aに示されるA-A線の断面図であり、図7Cは、右側面図である。
【0034】
流量調整部137は、流れてきた灌漑用液体の流量を調整する。流量調整部137は、エミッタ120の取水部131が配置されていない領域に配置されている。図5図6A、B、図7A~Cに示されるように、流量調整部137は、収容部135と、台座122と、連通孔151と、ダイヤフラム部152とを含む。
【0035】
収容部135は、略円柱形状の凹部である。収容部135は、エミッタ120がチューブ110に接合されたときに、エミッタ本体121のチューブ110と接合される側の面に開口している。収容部135の内周面153には、台座122を固定するための突起154が配置されている。突起154の数は、前述の機能を発揮できれば特に限定されない。本実施の形態では、突起154の数は、6個である。また、突起154の形状も、前述の機能を発揮できれば特に限定されない。本実施の形態では、突起154の形状は、略台形柱形状である。収容部135には、第2接続流路144から流れてきた灌漑用液体がチューブ110の吐出口111から吐出される量を調整するために台座122(図1を参照)が配置される。収容部135に台座122が配置され、突起154によって固定された後に、エミッタ120は、チューブ110の内壁面112に接合される。
【0036】
台座122は、円環状の部材である。台座122は、エミッタ本体121の裏面125に開口し、エミッタ120がチューブ110に接合されたときにチューブ110の吐出口111に面する吐出部138(図1を参照)に連通する連通孔151と、台座122の外周側と連通孔151とを連絡する一本の連絡溝155とを有する。
【0037】
図1に示されるように、エミッタ120がチューブ110の内壁面112に接合されたとき、収容部135に配置された台座122と、台座122の上面に対向したダイヤフラム部152とによって、チューブ110内の灌漑用液体の圧力に応じて、エミッタ120(台座122)の連通孔151から吐出される灌漑用液体の流量を調整するための流量調整部137が構成される。本実施の形態では、ダイヤフラム部152の平面視形状は、円形状である。本実施の形態において、ダイヤフラム部152は、エミッタ本体121の他の構成(取水部131、第1および第2接続流路142、144、減圧流路143など)と一体に成形されている。ダイヤフラム部152を含むエミッタ120は、例えば射出成形によって製造される。
【0038】
ダイヤフラム部152は、エミッタ120の他の構成と一体に成形されているため、可撓性を有する。ダイヤフラム部152は、エミッタ120がチューブ110の内壁面112に接合された状態において、チューブ110内の灌漑用液体の圧力によって台座122の上面側(台座122のダイヤフラム部152と対向する側の面)へ向かって変形する。
【0039】
ヒンジ部123は、エミッタ本体121および台座122を接続する。ヒンジ部123の形状および大きさは、前述の機能を発揮できる範囲内において適宜に設定できる。本実施の形態では、ヒンジ部123は、裏面125と連続した側面126に接続されている。ヒンジ部123は、エミッタ本体121の長軸方向(灌漑用液体が流れる方向における)の側面に配置されていてもよいし、エミッタ本体121の短軸方向の側面126に配置されていてもよい。ヒンジ部123は、灌漑用液体の流れを阻害しない観点から、灌漑用液体が流れる方向における上流側または下流側の側面126に接続されていることが好ましい。
【0040】
ヒンジ部123は、台座122を収容部135に収容するとき折り曲げられ、エミッタ本体121および台座122から切り離されることはない。また、前述したように、エミッタ120の裏面125がチューブ110の内壁面112に接合される。そこで、本実施の形態では、エミッタ120の裏側の面がチューブ110の内壁面112に対して適切に接合されるために、エミッタ本体121の裏面125には、ヒンジ部123を収容するための溝156が形成されている。
【0041】
溝156は、エミッタ120をチューブ110に接合する際に、ヒンジ部123を収容する。溝156の形状は、ヒンジ部123を収容できれば特に限定されない。本実施の形態では、溝156の幅は、ヒンジ部123の幅よりも僅かに小さく形成されている。エミッタ120をチューブ110に接合するときには、台座122を収容部135に収容するとともに、ヒンジ部123を溝156に収容する。このとき、溝156の幅はヒンジ部123の幅よりも僅かに小さく形成されているため、溝156に対してヒンジ部123を圧入しながら収容する。
【0042】
ここで、チューブ110内の灌漑用液体の圧力に応じたダイヤフラム部152の動作について説明する。
【0043】
チューブ110内に灌漑用液体が送液される前は、ダイヤフラム部152に灌漑用液体の圧力が加わらないため、ダイヤフラム部152は変形していない(図1を参照)。
【0044】
チューブ110内に灌漑用液体が送液され始めると、チューブ110内の灌漑用液体の圧力が上昇し始め、ダイヤフラム部152が変形し始める。灌漑用液体の圧力が比較的低い場合は、ダイヤフラム部152の変形は比較的小さく、ダイヤフラム部152は、台座122の上面に接触しない。この状態では台座122の連通孔151が閉塞されないため、第2接続流路144からダイヤフラム部152と台座122の上面との間の空間に流れてきた灌漑用液体は、連通孔151から吐出部138へ吐出される。
【0045】
灌漑用液体の圧力が設定値を超えると、さらにダイヤフラム部152の変形量が増大し、ダイヤフラム部152が台座122の上面と密着する。ただし、ダイヤフラム部152が台座122の上面に密着している場合であっても、台座122の連絡溝155は閉塞されない。そのため、第2接続流路144から流れてきた灌漑用液体は、連絡溝155を流れて連通孔151から吐出される。よって、ダイヤフラム部152が台座122の上面に密着している場合であっても、一定量以上の灌漑用液体が吐出部138へ吐出される。
【0046】
このような構成により、チューブ110内の灌漑用液体の圧力に関わらず、連通孔151から吐出される灌漑用液体の量を一定量以上確保できる。すなわち、本実施の形態に係る点滴灌漑用チューブ100は、灌漑用液体の圧力が低圧および高圧のいずれの場合であっても、一定量以上の灌漑用液体をチューブ110外に吐出できる。
【0047】
なお、連絡溝155の幅については特に限定されない。連絡溝155の幅は、例えば灌漑用液体の圧力が設定値を超えた場合に連通孔151から吐出されることが望ましい灌漑用液体の量に基づいて決定されればよい。
【0048】
(効果)
以上のように、本実施の形態に係るエミッタ120は、エミッタ120がチューブ110に接合されたときにチューブ110内と連通する取水部131と、灌漑用液体を減圧させながら流す減圧流路(減圧流路143)を形成するための減圧流路部(減圧溝133)と、チューブ110内の灌漑用液体の圧力に応じて灌漑用液体の流量を調整するための流量調整部(台座122、ダイヤフラム部152)と、エミッタ120がチューブ110に接合されたときに吐出口111に面する吐出部138とを備える。流量調整部は、台座122と、台座122を収容する収容部135と、台座122に開口し、吐出部138に連通する連通孔151と、可撓性を有するとともに台座122とは離れて配置され、チューブ110内の灌漑用液体の圧力を受けたときに台座122に接近するダイヤフラム部(ダイヤフラム部152)とを有する。そして、ダイヤフラム部はヒンジ部を介してエミッタ本体と接続されている。
【0049】
このような構成により、本実施の形態に係るエミッタ120は、例えば従来のエミッタ本体に対して移動可能なフラップをエミッタ本体と一体成形し、ヒンジを中心としてフラップを回転させた後、フラップをエミッタ本体に接着や溶着によって係合することでダイヤフラム部を形成する場合と比較して、コストを抑えて製造できる。具体的には、接着や溶着によりフラップをエミッタ本体に係合させる工程を省略できるので、その分の製造コストを低減できる。
【0050】
また、本実施の形態では、接着や溶着により台座122をエミッタ本体(収容部135)に接合させることなく、台座122を収容部135に配置するという簡易な工程を経てエミッタ120をチューブ110の内壁面112に接合させることができるため、接着や溶着により台座122をエミッタ本体(収容部135)に接合させる場合に比べて製造コストを低減できる。さらには、エミッタ120が、ヒンジ部を有することにより、エミッタ120をチューブ110の内壁面112に接合させる工程で、エミッタ120とチューブ110の内壁面112との溶着がより強固なものとなる。
【0051】
すなわち、本実施の形態では、接着や溶着により台座122をエミッタ本体(収容部135)に接合させることなく、台座122を収容部135に配置するという簡易な工程を経てエミッタ120をチューブ110の内壁面112に接合させることができるため、接着や溶着により台座122をエミッタ本体(収容部135)に接合させて上記クリアランスを確保する場合に比べて製造コストを低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、流出する液体の流量を調整できるエミッタを、製造コストを抑えて提供できる。したがって、点滴灌漑や耐久試験等の、長期の滴下を要する技術分野への上記エミッタの普及および当該技術分野のさらなる発展が期待される。
【符号の説明】
【0053】
100 点滴灌漑用チューブ
110 チューブ
111 吐出口
112 内壁面
120 エミッタ
121 エミッタ本体
122 台座
123 ヒンジ部
131 取水部
132 第1接続溝
133 減圧溝
134 第2接続溝
135 収容部
137 流量調整部
138 吐出部
139 凸部
142 第1接続流路
143 減圧流路
144 第2接続流路
146 取水用スクリーン部
147 取水用貫通孔
148 取水用凹部
149 凸条
151 連通孔
152 ダイヤフラム部
153 内周面
154 突起
155 連絡溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7