(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】ハフニアナノ粒子、その分散体、樹脂複合体および製造方法、
(51)【国際特許分類】
C01G 27/02 20060101AFI20220707BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220707BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20220707BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20220707BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20220707BHJP
【FI】
C01G27/02
C08L101/00
C08K9/04
B82Y30/00
B82Y40/00
(21)【出願番号】P 2018109260
(22)【出願日】2018-06-07
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000219912
【氏名又は名称】東京インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】戸田 明宏
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-028998(JP,A)
【文献】特開2003-137551(JP,A)
【文献】特開2007-223881(JP,A)
【文献】特開2011-236110(JP,A)
【文献】特表2007-520364(JP,A)
【文献】特表2015-520093(JP,A)
【文献】国際公開第2018/173574(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 25/00ー47/00
C01G 1/00ー23/08
C01G 49/10ー99/00
C08L 1/00ー101/14
C08K 3/00ー13/08
B82Y 5/00ー99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数が3以上22以下の水酸基不含有カルボン酸および
炭素数が6以上22以下の水酸基含有
脂肪族カルボン酸で表面処理されていることを特徴とするハフニアナノ粒子。
【請求項2】
前記水酸基不含有カルボン酸が脂肪族モノカルボン酸または芳香族モノカルボン酸であることを特徴とする請求項1記載のハフニアナノ粒子。
【請求項3】
請求項1または2に記載のハフニアナノ粒子を、有機溶媒、モノマーおよび重合性オリゴマーから選ばれた少なくとも一つを含有する分散媒中に分散してなることを特徴とす
るハフニアナノ粒子
分散体。
【請求項4】
請求項1または2に記載のハフニアナノ粒子を、樹脂中に分散してなることを特徴とする
樹脂複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハフニアナノ粒子、ハフニアナノ粒子分散体、ハフニアナノ粒子分散樹脂複合体およびハフニアナノ粒子の製造方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属酸化物のナノ粒子は、光学材料、電子部品材料、磁気記録材料、触媒材料、紫外線や近赤外吸収材料など様々な材料の高機能化や高性能化に寄与するものとして非常に注目されている。
【0003】
そのうち、ハフニウムの酸化物であるハフニアについては、希少であることもあってその用途についての検討事例は多くはないが、特許文献1には、平均粒子径が3 0 ~ 1 0 0 n m であることを特徴とする結晶質ハフニアゾルが開示され、「単分散であり結晶質であるため他材料との均一な混合が可能であり、表面積が大きいために固溶しやすく、さらに光散乱が小さいという特徴をもつため耐火物、絶縁体、誘電体、コーティング、光学材料、研磨剤、触媒、固溶体、焼結体、その他多種多様なセラミックスの原材料として好適に使用できる。」とされている。
【0004】
さらに、近年、高エネルギーX線用の高速応答性を有するプラスチックシンチレーターへの適用について報告がなされてきている(非特許文献1~3)。 例えば、非特許文献3では、超臨界水熱合成により表面を有機修飾したハフニアナノ粒子をプラスチックシンチレーターに導入することによりプラスチックシンチレーターの高速応答性を損なうことなく高エネルギー線の検出感度を向上させることに成功している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】APPLIED PHYSICS LETTERS Vol.104,174104(2014年)
【文献】第75回応用物理学会秋季学術講演会 講演予稿集 18p-PA6-19
【文献】IEEE Transactions on Nuclear Science ,Volume:65, Issue:4, April 2018,1012-1017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のハフニアゾルは平均粒子径が30~100nmと大きいため透明性を要求される用途には適用困難で、樹脂材料等への分散性にも問題があると考えられる。
【0008】
また、非特許文献2または3の表面を有機修飾したハフニアナノ粒子は粒子径も小さく樹脂等への分散性も改善されてはいるが、それでも樹脂の種類によっては分散性が十分とはいえなかった。 例えば、非特許文献2の
図2によると、ハフニア粒子10重量%添加のプラスチックシンチレーターでは透明性がかなり小さくなっていることが分かる。 さらに、その製造においては、超臨界ないし亜臨界状態の水を媒体として水熱反応させるため、反応温度を300~400℃、反応圧力を20~40MPaといった特殊な条件にする必要がある。
【0009】
従って、本発明は、有機溶媒、モノマー、樹脂等への分散性に優れたハフニアナノ粒子、その分散体および樹脂複合体、並びにそのハフニアナノ粒子の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討した結果、オキシ塩化ハフニウムとカルボン酸をアミン化合物の存在下水熱反応させることによってカルボン酸で表面処理されたハフニアナノ粒子を製造できること、さらに、その得られたナノ粒子が有機溶媒等への分散性に優れることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1) 炭素数が3以上22以下の水酸基不含有カルボン酸および炭素数が6以上22以下の水酸基含有脂肪族カルボン酸で表面処理されていることを特徴とするハフニアナノ粒子、
(2) 前記水酸基不含有カルボン酸が脂肪族モノカルボン酸または芳香族モノカルボン酸であることを特徴とする(1)記載のハフニアナノ粒子、
(3) (1)または(2)に記載のハフニアナノ粒子を、有機溶媒、モノマーおよび重合性オリゴマーから選ばれた少なくとも一つを含有する分散媒中に分散してなることを特徴とするハフニアナノ粒子分散体、
(4) (1)または(2)に記載のハフニアナノ粒子を、樹脂中に分散してなることを特徴とする樹脂複合体、
である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カルボン酸で表面処理されたハフニアナノ粒子を簡便な装置を用い、比較的温和な条件下で製造することができる。 このハフニアナノ粒子は、表面処理されているため、有機溶媒、モノマー、重合性オリゴマー、樹脂等への分散性に優れている。 従って、このハフニアナノ粒子をモノマーや重合性オリゴマーに分散させて重合させることによって、高屈折率で透明な材料を得ることが可能となるため、高屈折率レンズ材料、高屈折率ハードコート材料などへ適用できる。 また、樹脂中に分散させてそれらの樹脂に機能を付加したり、光学的または機械的物性を改良したりできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明における実施例1のX線回折図である。
【
図2】本発明における実施例3のX線回折図である。
【
図3】本発明における比較例1のX線回折図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更実施の形態が可能である。
【0015】
本発明のハフニアナノ粒子の製造方法は、オキシ塩化ハフニウム水溶液とカルボン酸およびアミン化合物のアルカリ水溶液とを混合する工程と、その得られた混合物を水熱反応に供する工程と、を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明で用いるアミン化合物としては、非芳香族アミンが用いられる。 非芳香族アミンとしては、脂肪族アミンがあげられる。 例えば、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン等の1級アミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジオクチルアミン等の2級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の3級アミンが例示できる。
【0017】
また、アミノ基を2個以上もつもの、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、N,N‘-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、テトラエチレンペンタミン等や、水酸基を持つもの、例えば、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、メチルジエタノールアミン、エチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、アミノカルボン酸化合物、例えば、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、リシン等のα-アミノ酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン-N,N’,N‘-三酢酸、トリエチレンテトラミン-N,N,N’,N‘’,N‘’’,N‘’‘-六酢酸、1,3-プロパンジアミン-N,N,N’,N‘-四酢酸等が例示できる。
【0018】
前記のアミン化合物の中では、水溶性で反応性が高いものが好ましく、脂肪族の総炭素数が2~12の1級、2級または3級のアルキルアミン、総炭素数が2~12のアルキレンジアミン、または総炭素数が2~12のアルカノールアミンが好ましく用いられるが、特に総炭素数が2~12のアルカノールアミン好ましい。
【0019】
好ましいアルカノールアミンの具体例として、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、メチルジエタノールアミン、エチルジエタノールアミン等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。 これらのアルカノールアミンのうち、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびこれらの混合物が中間体として生成すると考えられるハフニウム-アミン錯体の保存安定性をより高めることができるため、特に好ましい。
【0020】
本発明で用いるアミン化合物の使用量は、オキシ塩化ハフニウムに対し1~4倍モルである。 1倍モル未満では錯体の生成が不十分となり、4倍モル超では反応しないアミン化合物が残存する。
【0021】
前記カルボン酸は、ハフニアナノ粒子表面に疎水性を与えるものであれば選ぶものではなく、その1種又または2種以上を使用できるが、有機溶媒、モノマー、樹脂等への分散性を考慮すると水酸基含有脂肪族カルボン酸の少なくとも1種を含有するのが好ましい。
【0022】
前記水酸基含有カルボン酸としては、飽和、不飽和を問わず、枝分かれまたはフェニル基等の芳香族置換基を有してもよい炭素数が6から22の水酸基含有脂肪族モノカルボン酸が好ましく、具体的には、メバロン酸、パントイン酸、2-ヒドロキシデカン酸、3-ヒドロキシヘキサン酸、2-ヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸等が例示される。
【0023】
本発明においては、前記水酸基含有脂肪族カルボン酸に加えて水酸基を含有しないカルボン酸(水酸基不含有カルボン酸)を用いるのが好ましい。 この水酸基不含有カルボン酸としては、脂肪族および芳香族のモノカルボン酸が挙げられ、脂肪族であれば、飽和、不飽和を問わず、枝分かれまたはフェニル基等の芳香族置換基を有してもよい炭素数が3から22のモノカルボン酸であり、有機溶媒、モノマー等への分散性を考慮するとその炭素数は6から22が好ましい。 より具体的には、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、オクチル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘネイコサン酸、ドコサン酸等の飽和モノカルボン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、魚油を鹸化分解して得られる脂肪酸等の不飽和脂肪酸およびそれらの幾何異性体、並びに、3-フェニルプロピオン酸、桂皮酸等が例示される。 また、水酸基不含有芳香族モノカルボン酸は、芳香環にカルボン酸残基が直接結合しているモノカルボン酸で、安息香酸、トルイル酸等が例示される。
【0024】
水酸基不含有カルボン酸は、ハフニアナノ粒子表面に疎水性を与え、その有機溶媒等中での分散安定性に寄与し、水酸基含有脂肪族カルボン酸においては、その水酸基が、特に分散媒がカルボニル基を有する有機溶媒、モノマーまたは重合性オリゴマーである場合に、カルボニル基との水素結合により分散体の安定性に寄与するものと考えられる。
【0025】
本発明のハフニアナノ粒子の製造方法では、前記アミン化合物および前記カルボン酸のアルカリ水溶液に、オキシ塩化ハフニウム水溶液を混合し、その得られた混合物を水熱反応に供する。
【0026】
本発明の水熱反応は、密閉容器中で140~300℃、好ましくは200~300℃で行われる。 200℃未満では反応が遅いため(反応時間が24時間を超える場合がある)実際的ではなく、300℃を超えると装置が大掛かりなものとなる。
【0027】
水熱反応後、定法により精製して本発明のハフニアナノ粒子を得ることができる。 例えば、反応液の上澄み液除去、濾過と溶媒洗浄、または溶媒中での超音波洗浄と遠心分離により精製し、乾燥することによって、白色粉末として本発明のハフニアナノ粒子を得ることができる。
【0028】
このようにして得られたハフニアナノ粒子は、粒子径が数nm~数10nmの単分散したものとなるが、その平均粒子径は1~20nmが好ましく、分散体の透明性を考慮すると1~10nmがより好ましい。
【0029】
なお、本発明において、平均粒子径は、粉末X 線回折データから結晶子サイズをScherrer式により求め、その値と同等であるとした。
【0030】
本発明のハフニアナノ粒子は、上述したとおり水酸基含有カルボン酸と水酸基不含有カルボン酸とで表面処理されている場合、特に有機溶媒、モノマー、樹脂等への分散性に優れる。
【0031】
これらカルボン酸による表面処理量は、得られたハフニアナノ粒子に対して5質量%以上30質量%以下である。 5質量%未満では有機溶媒、モノマー等への分散性が不十分で、30質量%を超えると屈折率低下が著しくなるため好ましくない。 ここで、カルボン酸の表面処理量は、窒素雰囲気下40℃/分の速度で900℃まで昇温したときの質量減少率とした。
【0032】
さらに、本発明のハフニアナノ粒子は、その表面が疎水化され、凝集しにくいため、有機溶媒、モノマー、樹脂等への分散性に優れている。 従って、例えば超音波ホモジナイザーを用いることにより有機溶媒中に容易に均一分散させることができるばかりでなく、モノマーや重合性オリゴマーに分散させてから重合させたり、樹脂に分散させたりすることによってハフニアナノ粒子が樹脂中に微分散した樹脂複合体を得ることができる。 なお、本発明のハフニア分散体および樹脂複合体には、その目的に応じて酸化防止剤、離型剤、重合開始剤、染顔料、分散剤等を含有してもよい。
【0033】
前記の有機溶媒としては、例えば、エタノール、2-プロパノール、ブタノール、オクタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類が好適に用いられ、これらの溶媒のうち1 種または2 種以上を用いることができる。
【0034】
前記のモノマーおよび重合性オリゴマーとしては、ラジカル重合性、縮重合性、開環重合性等のいずれであっても使用できる。 例えば、ラジカル重合性のモノマーとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル系モノマー、グリシジル基、イソシアネート基、ビニルエーテル基等の反応性官能基を持つ(メタ)アクリル系モノマー、スチレン等のビニル系モノマー等、縮重合性のモノマーとしてはポリアミドやポリエステルを形成するモノマー、ポリイソシアネートとポリオールおよびポリチオールとの組み合わせ等、開環重合性のモノマーとしてはエポキシ系モノマー等が好適に使用できる。 また、重合性オリゴマーとしては、ウレタンアクリレート系オリゴマー、エポキシアクリレート系オリゴマー、アクリレート系オリゴマー等が好適に使用できる。
【0035】
本発明のハフニアナノ粒子は、モノマーまたは重合性オリゴマーに分散させてから重合させたり、樹脂中に分散させることによって樹脂複合体を得ることができるが、分散性に優れるため高屈折率で透明性を要求される用途、機械的物性を向上させる用途等に好適に用いられる。
【0036】
ここで、本発明のハフニアナノ粒子を分散させる樹脂としては、熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリ(メタ)アクリレート、ポリフェニレンエーテル、ポリウレタン、ポリスチレン、環状ポリオレフィン、ポリカーボネートなどから選ばれた1種または2種以上が好ましく用いられる。
【実施例】
【0037】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 なお、実施例および比較例中の% は質量%を意味する。
【0038】
本発明においてハフニウムナノ粒子の平均粒子径は、X線回折装置(株式会社リガク製、全自動多目的X線回折装置 SmartLab)を用い、測定条件を、X線管電圧40kV、X線管電電流30mA、走査範囲2 θは10.0-65.0°とし、X 線回折測定の2θ=28.4付近の(11-1) 面による回折強度からその半価幅βを求め、下記数式1のScherrer式において、Scherrer定数Kを0.9、X線管球の波長λを1.54056として結晶子サイズDを求め、その値とした。
【0039】
(数1)
D=K ・λ/(β・cosθ)
【0040】
また、有機溶媒またはモノマー中での分散性は、合成したハフニア粒子に10%濃度になるように種々の有機溶媒またはモノマーを添加し、超音波洗浄器(アズワン株式会社製単周波超音波洗浄器 MCS-6)による数分の処理後、目視により、透明なものを○、白濁または沈降するものを×として評価した。
【0041】
(実施例1)
ジエタノールアミン5.8g、オクタン酸3.0g、リシノール酸1.5g、48%水酸化カリウム水溶液4.5gを含有する混合液に、オキシ塩化ハフニウム8水和物8.0gおよび純水8.0gの混合溶液を添加し、得られた混合物をオートクレーブ中で220℃、10時間の水熱処理を行った。 水熱処理後、上澄み液を除去し、白色沈殿物をアセトンおよび純水で洗浄、ポアサイズ3μmフィルタで濾過し、得られた白色物を60℃で一昼夜真空乾燥を行い、4.24gの白色粉末を得た。カルボン酸の表面処理量は、PerkinElmer社製の熱質量測定装置TGA8000により、窒素雰囲気下40℃/分の速度で900℃まで昇温した質量減少率から14.23%であった。
【0042】
(実施例2)
ジエタノールアミン5.8g、オクタン酸2.9g、リシノール酸1.1g、3-フェニルプロピオン酸0.75g、48%水酸化カリウム水溶液4.5gを含有する混合液に、オキシ塩化ハフニウム8水和物8.0gおよび純水8.0gの混合溶液を添加し、得られた混合物をオートクレーブ中で220℃、10時間の水熱処理を行った。 水熱処理後、上澄み液を除去し、白色沈殿物をアセトンおよび純水で洗浄、ポアサイズ3μmフィルタで濾過し、得られた白色物を60℃で一昼夜真空乾燥を行い、4.40gの白色粉末を得た。 実施例1と同様に質量減少率を測定したところ、カルボン酸の表面処理量は14.04%であった。
【0043】
(実施例3)
ジエタノールアミン5.8g、オクタン酸4.2g、48%水酸化カリウム水溶液4.5gを含有する混合液に、オキシ塩化ハフニウム8水和物8.0gおよび純水8.0gの混合溶液を添加し、得られた混合物をオートクレーブ中で220℃、10時間の水熱処理を行った。 水熱処理後、上澄み液を除去し、白色沈殿物をアセトンおよび純水で洗浄、ポアサイズ3μmフィルタで濾過し、得られた白色物を60℃で一昼夜真空乾燥を行い、4.53gの白色粉末を得た。実施例1と同様に質量減少率を測定したところ、カルボン酸の表面処理量は12.32%であった。
【0044】
(比較例1)
市販の酸化ハフニウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いた。
【0045】
【0046】
表1には実施例1~3および比較例1のハフニアナノ粒子の分散性および結晶子径を記載しているが、実施例は比較例と比べいずれも有機溶媒、モノマー等への分散性が良好なことが分かる。 また、水酸基不含有カルボン酸のオクタン酸と水酸基含有カルボン酸であるリシノール酸とで表面処理されている場合(実施例1)や、水酸基不含有カルボン酸のオクタン酸およびフェニルプロピオン酸と水酸基含有カルボン酸のリシノール酸とで、表面処理されている場合(実施例2)では、特に優れた分散性を示している。
【0047】
さらに、実施例1(
図1:オクタン酸とリシノール酸による表面処理)と実施例3(
図2:オクタン酸のみの表面処理)のX線回折図を比較すると、スペクトル(結晶子径)はほとんど同じであるにもかかわらず、分散性は大きく異なることから、明らかに水酸基含有カルボン酸であるリシノール酸の効果が現れていると考えられる。 一方、比較例1(
図3)は表面処理がなされておらず、結晶子径がそもそも大きいので分散しない。
【0048】
(製造例1)
スチレンモノマー42.5部および2-アクリロイルオキシエチルサクシネート7.5部に、実施例1のハフニアナノ粒子を50部加えて超音波分散させた後、重合開始剤(V-601:富士フィルム和光純薬株式会社製)を1.5部添加し、アルゴン雰囲気下50℃で3日間重合させることにより透明な硬化物を得た。