IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NOK株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-無人航空機の防振構造 図1
  • 特許-無人航空機の防振構造 図2
  • 特許-無人航空機の防振構造 図3
  • 特許-無人航空機の防振構造 図4
  • 特許-無人航空機の防振構造 図5
  • 特許-無人航空機の防振構造 図6
  • 特許-無人航空機の防振構造 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】無人航空機の防振構造
(51)【国際特許分類】
   B64C 25/60 20060101AFI20220707BHJP
   B64C 25/64 20060101ALI20220707BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20220707BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20220707BHJP
   F16F 9/02 20060101ALI20220707BHJP
   F16F 1/373 20060101ALI20220707BHJP
   F16F 15/023 20060101ALI20220707BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
B64C25/60
B64C25/64
B64C39/02
F16F7/00 F
F16F9/02
F16F7/00 H
F16F1/373
F16F15/023 Z
F16F15/08 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018111587
(22)【出願日】2018-06-12
(65)【公開番号】P2019214256
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】岩田 直也
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0245516(US,A1)
【文献】国際公開第2009/157567(WO,A1)
【文献】実開昭59-142536(JP,U)
【文献】中国実用新案第206679252(CN,U)
【文献】特開2017-193208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 25/60
B64C 25/64
B64C 39/02
F16F 7/00
F16F 9/02
F16F 1/373
F16F 15/023
F16F 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人航空機の機体本体に固定された筒状の固定脚部と、
前記固定脚部の下端部に上下方向スライド可能に抜け止めされて連結されたロッド状の可動脚部と、
前記可動脚部の下端部に設けられて前記無人航空機の着陸時に接地する円盤状のゴム足接触部と、
前記固定脚部の外周面を覆うように前記固定脚部に取り付けられた環状の取付部と、前記取付部から下方に向けて設けられて弾性変形することにより緩衝作用を発揮する薄肉筒状の可撓部とを有するゴム足と、
を備え、
前記可動脚部が自重によりスライドストロークの下限に位置する前記無人航空機の飛行時には、前記ゴム足接触部と前記ゴム足との間に間隙を形成して前記ゴム足の下端部を大気解放し、
前記ゴム足接触部が接地して前記可動脚部が上方へスライド移動する前記無人航空機の着陸時には、前記ゴム足接触部が前記ゴム足と接触して前記可撓部を弾性変形させるとともに、前記ゴム足の下端開口部を閉塞して前記ゴム足の内部空間に空気を封入した空気ばねを設け、前記可撓部の弾性変形による緩衝作用と前記空気ばねの圧縮による緩衝作用とを発揮させる、
無人航空機の防振構造。
【請求項2】
請求項1記載の防振構造において、
前記固定脚部の外周面には溝状の係合部が設けられ、
前記取付部は、その内周面に設けた突起状の係合部が前記溝状の係合部に嵌り合うことによって前記固定脚部に取り付けられている、
ことを特徴とする無人航空機の防振構造。
【請求項3】
請求項1または2記載の防振構造において、
前記ゴム足は、前記内部空間に封入した一部の空気を大気側へ放出する空気逃がし穴を備えることを特徴とする無人航空機の防振構造。
【請求項4】
請求項3記載の防振構造において、
前記ゴム足は、前記内部空間と前記空気逃がし穴との間に、圧力損失を発生せるオリフィス流路を備えることを特徴とする無人航空機の防振構造。
【請求項5】
請求項4記載の防振構造において、
前記オリフィス流路は、前記ゴム足の内周面に螺旋状の溝として設けられていることを特徴とする無人航空機の防振構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人航空機の防振構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農薬散布や空中撮影といった分野で所謂ドローンなどと称される小型の無人航空機の活用が広がっており、今後も、建築、土木または輸送など、利用分野の拡大が予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-193208公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無人航空機は、飛行ユニットおよびセンサー・カメラ等の作動機器の組み合わせからなる精密機器である。しかしながら精密機器は衝撃加重に対し脆弱である。したがって無人航空機の着陸時、衝撃吸収が十分に行われないことにより、転倒や破損が問題になっている。これを避けるため、人によるハンドキャッチ着陸が推奨されるが、人によらない無人での着陸信頼性の確保が望まれる。
【0005】
人航空機の着陸時に無人航空機に入力する衝撃を低減することができ、もって無人航空機が転倒したり破損したりするのを抑制することができる無人航空機の防振構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
無人航空機の防振構造は、無人航空機の機体本体に固定された筒状の固定脚部と、前記固定脚部の下端部に上下方向スライド可能に抜け止めされて連結されたロッド状の可動脚部と、前記可動脚部の下端部に設けられて前記無人航空機の着陸時に接地する円盤状のゴム足接触部と、前記固定脚部の外周面を覆うように前記固定脚部に取り付けられた環状の取付部と、前記取付部から下方に向けて設けられて弾性変形することにより緩衝作用を発揮する薄肉筒状の可撓部とを有するゴム足と、を備え、前記可動脚部が自重によりスライドストロークの下限に位置する前記無人航空機の飛行時には、前記ゴム足接触部と前記ゴム足との間に間隙を形成して前記ゴム足の下端部を大気解放し、前記ゴム足接触部が接地して前記可動脚部が上方へスライド移動する前記無人航空機の着陸時には、前記前記ゴム足接触部が前記ゴム足と接触して前記可撓部を弾性変形させるとともに、前記ゴム足の下端開口部を閉塞して前記ゴム足の内部空間に空気を封入した空気ばねを設け、前記可撓部の弾性変形による緩衝作用と前記空気ばねの圧縮による緩衝作用とを発揮させる。
【発明の効果】
【0011】
人航空機の脚部にゴム足が設けられるとともにゴム足の内部に空気ばねが設けられているため、これらゴム足および空気ばねが発揮する緩衝作用により、無人航空機の着陸時に無人航空機に入力する衝撃を低減することが可能とされる
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1施の形態に係る防振構造を備える無人航空機の説明図
図2】同防振構造の断面斜視図
図3】同防振構造の断面図
図4】(A)および(B)とも同防振構造の作動状態を示す断面図
図5の実施の形態に係る防振構造の断面斜視図
図6の実施の形態に係る防振構造の断面斜視図
図7】同防振構造に備えられるゴム足の単体断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すように、実施の形態に係る無人航空機1は、機体本体11および機体本体11に連結された脚部21を備える小型の無人航空機である。機体本体11は、受信機、フライトコントローラー、プロペラ、モーター、バッテリーなど無人航空機を飛行させ制御するための機器を搭載しており、図では機体本体11のフレーム部12と所要数のプロペラ13とを示している。一方、脚部21は無人航空機1の離着陸時に機体本体11を保護すべく機体本体11を安定的に支持するものであって、同一構造の脚部21が無人航空機1の平面上3箇所ないし4箇所以上に亙って例えば各プロペラ13の直下位置などに設けられている。機体本体11には、センサーやカメラなど各種の作動機器(図示せず)が搭載される。無人航空機1は無人マルチコプターもしくは無人回転翼機とも称され、また、所謂ドローンなどとも称される。
【0014】
図2および図3に示すように、脚部21は、機体本体11の下面に固定される固定脚部31と、固定脚部31の下端部外周に保持されたゴム足41と、固定脚部31の下端部に上下方向スライド可能に連結された可動脚部51とを備えている。
【0015】
固定脚部31は、筒状ないしシリンダ状を呈し、機体本体11のフレーム部12の下面に下方へ向けて固定されている。
【0016】
ゴム足41は、所定のゴム状弾性体によって筒状に成形され、当該ゴム足41を固定脚部31に取り付けるための環状の取付部42を備え、この取付部42の下側に下方へ向けて、作動時(衝撃吸収時)に弾性変形することにより緩衝作用を発揮する薄肉筒状の可撓部43が一体に設けられている。
【0017】
このうち、取付部42は、その内周面に設けた突起状の係合部44が固定脚部31の外周面に設けた溝状の係合部32に係合することにより固定脚部31に取り付けられているが、その取付け手段としては、係合無しの圧入や接着もしくは締結バンドによる固定などであっても良い。
【0018】
可撓部43は、その下方から押圧荷重が加えられたとき外周方向へ膨らむように弾性変形しやすいよう、その下端先端部45が先窄まりの形状とされている。
【0019】
可動脚部51は、固定脚部31の内周側にスライド可能に差し込まれるロッド状の部品とされ、その上端部に設けた円盤状ないしピストン状の係合部52が固定脚部31の内周面に設けた段差状の係合部33に係合することにより固定脚部31に対し抜け止めされている。
【0020】
また、可動脚部51の下端部には、ゴム足41の下方に配置され、ゴム足41に対し接離可能に接触する円盤状のゴム足接触部53が設けられている。
【0021】
このゴム足接触部53は、定常時、図示するようにゴム足41の下端先端部45との間に上下方向の間隙cを形成することによりゴム足41の下端開口部46を大気開放している。また、ゴム足接触部53はその作動時、図4(A)に示すようにゴム足41の下端先端部45と接触し、ゴム足41の下端開口部46を閉塞してゴム足41の内部空間47に空気(図示せず)を封入する。したがってここに、封入される空気による空気ばね61が設けられ、ゴム足41は空気袋として作用する。
【0022】
上記構成の無人航空機1における防振構造においては、その定常時(無人航空機1の飛行時)、図2および図3に示したように脚部21は接地しておらず、可動脚部51はその自重によりスライドストロークの下限に位置している。したがってゴム足接触部53とゴム足41の下端先端部45との間に間隙cが形成され、ゴム足41の下端開口部46が大気開放されている。
【0023】
そして、この状態から、無人航空機1が着陸しようとして脚部21が接地し脚部21に衝撃加重が入力すると図4(A)に示すように、可動脚部51が衝撃加重を受けて上方へスライドし、ゴム足接触部53がゴム足41の下端先端部45と接触し、ゴム足41の下端開口部46を閉塞し、ゴム足41の内部空間47に空気を封入する。
【0024】
また、この状態から更に衝撃加重が入力すると図4(B)に示すように、可動脚部51が更に上方へスライドし、ゴム足接触部53がゴム足41の下端先端部45を押圧してゴム足41の可撓部43を弾性変形させ、同時に、ゴム足41の内部空間47に封入した空気を圧縮して、空気ばね61によるばね作用を発揮させる。
【0025】
したがって、ゴム足41が衝撃加重の入力時に弾性変形することにより緩衝作用が発揮されるとともに、空気ばね61が衝撃加重の入力時に圧縮されることにより緩衝作用が発揮されるため、着陸時の衝撃加重を有効に低減することが可能とされる。
【0026】
尚、図4(B)の状態から無人航空機1が離陸すると、可動脚部51が自重によりゆっくりと図3の状態へ復帰する。したがって再度の着地に備えることができる。また、復帰動によりゴム足41の下端開口部46が再度大気開放されるため、ゴム足41の内部空間47へ侵入するダスト類があったとしてもこれを飛行中に下端開口部46から排出することができる。
【0027】
上記実施の形態に係る防振構造は、その構成を以下のように付加・変更することが考えられる。
【0028】
(1)図5に示すように、固定脚部31の下端部と可動脚部51のゴム足接触部53との間に、可動脚部51をスライドストロークの下限位置へ復帰動させる復帰ばね71を介装する。これによれば、可動脚部51をスライドストロークの下限位置へ確実に復帰動させることができる。
【0029】
(2)図5に示すように、ゴム足41の可撓部43に、内部空間47に封入した一部の空気を大気側へ放出する空気逃がし穴48を設ける。これによれば、穴48の大小や形成数などによって、空気ばね61のばね特性を調節することができる。
【0030】
(3)図5に示すように、固定脚部31の上端部に、この固定脚部31を機体本体11へ着脱可能に連結するための雌ねじ等よりなる連結部34を設ける。これによれば、脚部21が交換可能とされるため、脚部21を別仕様の防振構造を備える脚部と容易に交換することができる。
【0031】
(4)上記実施の形態に係る防振構造において、筒状ないしシリンダ状を呈する固定脚部31の内部空間を密閉構造とすれば、ここに第2の空気ばねが設定されることになる。したがってこの場合、図5に示すように固定脚部31の周面にも、その内部空間36に封入した一部の空気を大気側へ放出する空気逃がし穴35を設けることが考えられる。また、固定脚部31の内部に空気ばねを設定しない場合は、空気逃がし穴35の開口面積を大きく設定することにより内部空間36を大気開放する。
【0032】
(5)図6および図7に示すように、固定脚部31の外周面に気密的に接触するゴム足41の取付部42の内周面に、空気の通過時に圧力損失を発生させる溝状のオリフィス流路を設け、このオリフィス流路49を介してゴム足41の内部空間47とゴム足41の取付部42に設けた空気逃がし穴48とを連通させる。これによれば、オリフィス流路49において発生する圧力損失によって緩衝効果を高めることができ、また、オリフィス流路49の流路長さや流路断面積を変更することにより、発生する圧力損失の大きさを調節することができる。
【0033】
オリフィス流路49の流路長さを長く設定するには図7に示すように、オリフィス流路49を螺旋状の溝として形成するのが好適である。また、螺旋状の溝を多条ねじの形状としたり、或いは正方向ねじおよび逆方向ねじを互いに交差させる形状としたりすることも考えられる。
【0034】
(6)固定脚部31と可動脚部51の間に軸受(図示せず)を介装する。これによれば、固定脚部31に対する可動脚部51のスライドストロークを円滑化することができる。
【0035】
(7)固定脚部31および可動脚部51の材質としては、金属系であっても良いが、特にこれを樹脂系の材質とする。これによれば、固定脚部31および可動脚部51、延いては脚部21全体の重量を軽減することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 無人航空機
11 機体本体
12 フレーム部
13 プロペラ
21 脚部
31 固定脚部
32,33,44,52 係合部
34 連結部
35,48 空気逃がし穴
36,47 内部空間
41 ゴム足
42 取付部
43 可撓部
45 下端先端部
46 下端開口部
49 オリフィス流路
51 可動脚部
53 ゴム足接触部
61 空気ばね
71 復帰ばね
c 間隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7