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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】燃料電池用単位セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0247 20160101AFI20220707BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20220707BHJP
   H01M 8/1004 20160101ALI20220707BHJP
   H01M 8/0204 20160101ALI20220707BHJP
   H01M 8/023 20160101ALI20220707BHJP
【FI】
H01M8/0247
H01M8/10 101
H01M8/1004
H01M8/0204
H01M8/023
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018131212
(22)【出願日】2018-07-11
(65)【公開番号】P2019140081
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】10-2018-0016449
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 正 イク
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1530787(KR,B1)
【文献】特開2008-243572(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0220833(US,A1)
【文献】特開2010-212061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜‐電極接合体と、
前記膜‐電極接合体の一面に配置されるガス拡散層と、
前記ガス拡散層から離隔するように配置される分離板と、
前記ガス拡散層と前記分離板を弾性的に支持し、且つ電気的に連結するように、前記ガス拡散層と前記分離板との間に介在され、反応ガスを移送するための反応ガス流路を提供する少なくとも一つのコイルばねとを含み、
前記コイルばねは、前記反応ガス流路の上流側から下流側に行くほど前記反応ガス流路の気孔率が高くなるように配置され、
前記コイルばねは、前記反応ガス流路の上流側から下流側に行くほど前記コイルばねのうちばねのピッチが長いコイルばねが位置するように配置されることを特徴とする燃料電池用単位セル。
【請求項2】
前記コイルばねは、それぞれ、軸方向が前記膜‐電極接合体の厚さ方向と垂直になるように配置されることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用単位セル。
【請求項3】
前記コイルばねは、それぞれ、前記分離板に固定されることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用単位セル。
【請求項4】
前記コイルばねは、それぞれ、前記分離板に溶接されることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池用単位セル。
【請求項5】
前記コイルばねは、それぞれ、前記分離板に接着材によって接着されることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池用単位セル。
【請求項6】
前記分離板は、前記コイルばねのいずれか一つが係止される少なくとも一つの係止突起を備えることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池用単位セル。
【請求項7】
前記コイルばねは、それぞれ、前記反応ガス流路の区間に応じてばねのピッチが異なるように前記係止突起に係止されることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池用単位セル。
【請求項8】
前記コイルばねは、前記反応ガス流路の上流側から下流側に行くほどばねのピッチが長くなるように配置されることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用単位セル。
【請求項9】
膜‐電極接合体と、
前記膜‐電極接合体の一面に配置されるガス拡散層と、
前記ガス拡散層から離隔するように配置される分離板と、
前記ガス拡散層と前記分離板を弾性的に支持し、且つ電気的に連結するように、前記ガス拡散層と前記分離板との間に介在され、反応ガスを移送するための反応ガス流路を提供する少なくとも一つのコイルばねとを含み、
前記コイルばねは、前記反応ガス流路の上流側から下流側に行くほど前記反応ガス流路の気孔率が高くなるように配置され、
前記コイルばねは、前記反応ガス流路の上流側から下流側に行くほど前記コイルばねの重ね合わせ率が低くなるように配置されることを特徴とする燃料電池用単位セル。
【請求項10】
膜‐電極接合体と、
前記膜‐電極接合体の一面に配置されるガス拡散層と、
前記ガス拡散層から離隔するように配置される分離板と、
前記ガス拡散層と前記分離板を弾性的に支持し、且つ電気的に連結するように、前記ガス拡散層と前記分離板との間に介在され、反応ガスを移送するための反応ガス流路を提供する少なくとも一つのコイルばねとを含み、
前記コイルばねは、前記反応ガス流路の上流側から下流側に行くほど前記反応ガス流路の気孔率が高くなるように配置され、
前記コイルばねは、前記反応ガス流路の上流側から下流側に行くほど前記コイルばねの配置間隔が長くなるように配置されることを特徴とする燃料電池用単位セル。
【請求項11】
膜‐電極接合体と、
前記膜‐電極接合体の一面に配置されるガス拡散層と、
前記ガス拡散層から離隔するように配置される分離板と、
前記ガス拡散層と前記分離板を弾性的に支持し、且つ電気的に連結するように、前記ガス拡散層と前記分離板との間に介在され、反応ガスを移送するための反応ガス流路を提供する少なくとも一つのコイルばねとを含み、
前記コイルばねは、前記反応ガス流路の上流側から下流側に行くほど前記反応ガス流路の気孔率が高くなるように配置され、
前記コイルばねは、前記反応ガス流路の上流側から下流側に行くほど前記コイルばねのうちばねワイヤの直径が小さいコイルばねが位置するように配置されることを特徴とする燃料電池用単位セル。
【請求項12】
膜‐電極接合体と、
前記膜‐電極接合体の一面に配置されるガス拡散層と、
前記ガス拡散層から離隔するように配置される分離板と、
前記ガス拡散層と前記分離板を弾性的に支持し、且つ電気的に連結するように、前記ガス拡散層と前記分離板との間に介在され、反応ガスを移送するための反応ガス流路を提供する少なくとも一つのコイルばねとを含み、
前記コイルばねは、前記反応ガス流路の上流側から下流側に行くほど前記反応ガス流路の気孔率が高くなるように配置され、
前記コイルばねは、前記反応ガス流路の上流側から下流側に行くほど前記コイルばねのうち直径が小さいコイルばねが位置するように配置されることを特徴とする燃料電池用単位セル。
【請求項13】
前記コイルばねは、それぞれ、軸方向が前記反応ガスの流動方向と予め定められた角度をなすように配置されることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用単位セル。
【請求項14】
前記コイルばねのうち少なくとも一部は、軸方向が前記反応ガスの流動方向と平行になるように配置されることを特徴とする請求項13に記載の燃料電池用単位セル。
【請求項15】
前記コイルばねのうち少なくとも一部は、軸方向が前記反応ガスの流動方向と垂直になるように配置されることを特徴とする請求項13に記載の燃料電池用単位セル。
【請求項16】
膜‐電極接合体と、
前記膜‐電極接合体の一面に配置されるガス拡散層と、
前記ガス拡散層から離隔するように配置される分離板と、
前記ガス拡散層と前記分離板を弾性的に支持し、且つ電気的に連結するように、前記ガス拡散層と前記分離板との間に介在され、反応ガスを移送するための反応ガス流路を提供する少なくとも一つのコイルばねとを含み、
前記コイルばねのうち少なくとも一部は、電流密度が高い領域に行くほど前記反応ガス流路の気孔率が低くなるように配置されることを特徴とする燃料電池用単位セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用単位セルに係り、より詳しくは、反応ガス流路の気孔率を設計目的に応じて精度よく調節できるように構造を改善した燃料電池用単位セルに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池スタックは、燃料電池車両のメインパワー(Main Power)供給源であり、水素と酸素の酸化還元反応により電気を生成する装置である。
一般的に、燃料電池スタックは、膜‐電極接合体(MEA:Membrane‐Electrode Assembly)と、膜‐電極接合体の両面にそれぞれ配置された分離板などを含む多数の単位セルが積層されてなる。
膜‐電極接合体は、高分子電解質膜と、高分子電解質膜の一面に配置されるアノード電極と、高分子電解質膜の他面に配置されるカソード電極などを備える。分離板は、水素をアノード電極に供給するための水素チャンネルと、空気をカソード電極に供給するための空気チャンネルと、冷却水を流動させるための冷却水チャンネルなどを備える。
【0003】
アノード電極には、水素貯蔵タンクから供給された高純度の水素が分離板の水素チャンネルを介して流入し、カソード電極には、空気圧縮機、その他の空気供給装置によって供給された大気中の空気が分離板の空気チャンネルを介して流入する。そうすると、アノード電極では、水素の酸化反応が進み、水素イオン(Proton)と電子(Electron)が生成され、このように生成された水素イオンと電子は、それぞれ、高分子電解質膜と分離板を介してカソード電極に移動する。また、カソード電極では、アノード電極から移動した水素イオンおよび電子と、空気供給装置によって供給された空気中の酸素が参加する還元反応が進み、水が生成され、且つ電子の流れによる電気エネルギーが生成される。
【0004】
一方、近年、分離板に空気チャンネルを形成する代わりに、分離板とガス拡散層との間に成形多孔体または発泡性多孔体を介在させて成形多孔体または発泡性多孔体により空気を移送するように設けられた単位セルが開発され使用されている。このように、成形多孔体または発泡性多孔体を用いて空気を移送するための空気流路を構成する場合には、単位セルの設計目的に応じて成形多孔体または発泡性多孔体の気孔率が調節されなければならない。しかし、発泡性多孔体は、ランダムな幾何学形状を有するため、単位セルの設計目的に応じて気孔率を精度よく調節することが難しいという問題がある。また、成形多孔体の作製には、作製工法上、金型が求められる。したがって、成形多孔体は、金型の設置に多くの費用がかかるという問題と、成形多孔体を設計目的に応じて最適化する過程で形状の変更が必要な場合に、金型の構造変更のためにさらなる費用がかかるという問題などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-229289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の従来技術の問題を解決するためになされたものであり、反応ガス流路の気孔率を設計目的に応じて精度よく調節できるように構造を改善した燃料電池用単位セルを提供することを目的とする。
また、本発明は、反応ガス流路の気孔率を反応ガス流路の区間別に異なるように調節できるように構造を改善した燃料電池用単位セルを提供することを目的とする。
さらに、本発明は、単位セル内の構成要素間の接触状態を安定的に維持できるように構造を改善した燃料電池用単位セルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の燃料電池用単位セルは、膜‐電極接合体と、前記膜‐電極接合体の一面に配置されるガス拡散層と、前記ガス拡散層から離隔するように配置される分離板と、前記ガス拡散層と前記分離板を弾性的に支持し、且つ電気的に連結するように、前記ガス拡散層と前記分離板との間に介在され、反応ガスを移送するための反応ガス流路を提供する少なくとも一つのコイルばねとを含むことを特徴とする。
【0008】
前記コイルばねは、それぞれ、軸方向が前記膜‐電極接合体の厚さ方向と垂直になるように配置されることを特徴とする。
【0009】
前記コイルばねは、それぞれ、前記分離板に固定されることを特徴とする。
【0010】
前記コイルばねは、それぞれ、前記分離板に溶接されることを特徴とする。
【0011】
前記コイルばねは、それぞれ、前記分離板に接着材によって接着されることを特徴とする。
【0012】
前記分離板は、前記コイルばねのいずれか一つが係止される少なくとも一つの係止突起を備えることを特徴とする。
【0013】
前記コイルばねは、それぞれ、前記反応ガス流路の区間に応じてばねのピッチが異なるように前記係止突起に係止されることを特徴とする。
【0014】
前記コイルばねは、前記反応ガス流路の区間に応じて前記反応ガス流路の気孔率が異なるように、前記コイルばねのピッチ、前記コイルばねの直径、前記コイルばねの重ね合わせ率、ばねワイヤの直径のうち少なくとも一つが互いに異なることを特徴とする。
【0015】
前記コイルばねは、前記反応ガス流路の上流側から下流側に行くほど前記反応ガス流路の気孔率が高くなるように配置されることを特徴とする。
【0016】
前記コイルばねは、前記反応ガス流路の上流側から下流側に行くほどばねのピッチが長くなるように配置されることを特徴とする。
【0017】
前記コイルばねは、前記反応ガス流路の上流側から下流側に行くほど前記コイルばねのうちばねのピッチが長いコイルばねが位置するように配置されることを特徴とする。
【0018】
前記コイルばねは、前記反応ガス流路の上流側から下流側に行くほど前記コイルばねの重ね合わせ率が低くなるように配置されることを特徴とする。
【0019】
前記コイルばねは、前記反応ガス流路の上流側から下流側に行くほど前記コイルばねの配置間隔が長くなるように配置されることを特徴とする。
【0020】
前記コイルばねは、前記反応ガス流路の上流側から下流側に行くほど前記コイルばねのうちばねワイヤの直径が小さいコイルばねが位置するように配置されることを特徴とする。
【0021】
前記コイルばねは、前記反応ガス流路の上流側から下流側に行くほど前記コイルばねのうち直径が小さいコイルばねが位置するように配置されることを特徴とする。
【0022】
前記コイルばねは、それぞれ、軸方向が前記反応ガスの流動方向と予め定められた角度をなすように配置されることを特徴とする。
【0023】
前記コイルばねのうち少なくとも一部は、軸方向が前記反応ガスの流動方向と平行になるように配置されることを特徴とする。
【0024】
前記コイルばねのうち少なくとも一部は、軸方向が前記反応ガスの流動方向と垂直になるように配置されることを特徴とする。
【0025】
前記コイルばねのうち少なくとも一部は、電流密度が高い領域に行くほど前記反応ガス流路の気孔率が低くなるように配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、反応ガスを移送する反応ガス流路の気孔率をコイルばねを用いて調節することで、反応ガス流路の気孔率を単位セルの設計目的に応じて精度よく調節することができ、ガス拡散層と分離板との間の電気抵抗を電流密度に応じて精度よく調節することができる。
また、ガス拡散層の永久収縮変形をコイルばねの弾性復元により補償し、単位セル内の構成要素間の接触状態を安定的に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の好ましい実施形態による燃料電池用単位セルの積層構造を説明するための斜視図である。
図2】膜‐電極接合体の積層構造を説明するための断面図である。
図3】コイルばねの概略的な形状を説明するための図である。
図4】コイルばねが複数の列をなすように配置された状態を示す図である。
図5】aは、図4に示すコイルばねが反応ガスの流動方向と平行になるように配置された状態を示す図である。bは、図4に示すコイルばねが反応ガスの流動方向と垂直になるように配置される状態を示す図である。
図6】コイルばねがジグザグ状に折り畳まれて配置された状態を示す図である。
図7】コイルばねが螺旋状に折り畳まれて配置された状態を示す図である。
図8】コイルばねが第1の分離板に溶接された状態を示す図である。
図9】aは、コイルばねが第1の分離板の係止突起に係止された状態を示す図であり、b、cも同様に、コイルばねが第1の分離板の係止突起に係止された状態を示す図である。
図10】a~cは、コイルばねが互いに重ね合わされるように配置される状態を示す図である。
図11】コイルばねを用いて反応ガス流路の気孔率を調節する方法を説明するための図である。
図12】コイルばねを用いて反応ガス流路の気孔率を調節する方法を説明するための図である。
図13】コイルばねを用いて反応ガス流路の気孔率を調節する方法を説明するための図である。
図14】コイルばねを用いて反応ガス流路の気孔率を調節する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の好ましい実施形態による燃料電池用単位セルの積層構造を説明するための斜視図であり、図2は膜‐電極接合体の積層構造を説明するための断面図である。
図1に示す通り、本発明の好ましい実施形態による燃料電池用単位セル1(以下、「単位セル1」とする)は、膜‐電極接合体10と、膜‐電極接合体10の一面に配置される第1のガス拡散層20と、膜‐電極接合体10の他面に配置される第2のガス拡散層30と、第1のガス拡散層20の一面から離隔するように配置される第1の分離板40と、予め定められた方向に沿って交互に形成されるランド部52とチャンネル部54とを備え、第2のガス拡散層30の一面に配置される第2の分離板50と、第1のガス拡散層20と第1の分離板40との間に介在される少なくとも一つのコイルばね60などを含む。
【0029】
先ず、図2に示す通り、膜‐電極接合体10は、電解質膜12と、電解質膜12の一面に配置されるカソード電極14と、電解質膜12の他面に配置されるアノード電極16などを備える。かかる膜‐電極接合体10は、通常の単位セル1の膜‐電極接合体10と同じ構造を有するため、膜‐電極接合体10に関するより詳細な説明は省略する。
次に、図1に示す通り、第1のガス拡散層20は、カソード電極14に比べて単位セル1の外側の方に位置するようにカソード電極14の一面に配置される。図1に示す通り、これに対応して、第2のガス拡散層30は、アノード電極16に比べて単位セル1の外側に位置するようにアノード電極16の一面に配置される。かかるガス拡散層20、30は、通常の単位セルのガス拡散層と同じ構造を有するため、第1のガス拡散層20と第2のガス拡散層30に関するより詳細な説明は省略する。
【0030】
図1に示すように、第1の分離板40は、第1のガス拡散層20に比べて単位セル1の外側に位置するように、第1のガス拡散層20の一面から予め定められた間隔だけ離隔するように配置される。第1の分離板40の形状は、特に限定されない。例えば、図1に示すように、第1の分離板40は平板形状を有してもよい。
次に、第2の分離板50は、第2のガス拡散層30に比べて単位セル1の外側に位置するように、第2のガス拡散層30の一面に配置される。かかる第2の分離板50は、予め定められた方向に沿って交互に形成されたランド部52とチャンネル部54とを備える。ランド部52とチャンネル部54の形状は、特に限定されない。例えば、図1に示すように、ランド部52は谷形状を有してもよく、チャンネル部54は山形状を有してもよい。
【0031】
図1に示すように、かかる第2の分離板50は、ランド部52が第2のガス拡散層30の一面に載置されるとともに、チャンネル部54が第2のガス拡散層30の一面から離隔するように第2のガス拡散層30の一面に配置されてもよい。そうすると、それぞれのチャンネル部54と第2のガス拡散層30との間には反応ガスと生成水などを移送するための分離板チャンネル流路70が形成され、ある単位セル1のそれぞれのランド部52と前記単位セル1と接する他の単位セル1の第1の分離板40との間には冷却水Cなどを移送するための冷却水流路80が形成される。
【0032】
分離板チャンネル流路70を介して移送可能な反応ガスの種類は、特に限定されない。例えば、分離板チャンネル流路70は、水素を移送できるように構成されてもよい。この場合に、分離板チャンネル流路70の入口(図示せず)は、水素供給ライン(図示せず)に連結されてもよい。水素供給ラインは、水素供給源(図示せず)から供給された水素を分離板チャンネル流路70の入口に向かって移送できるように設けられる。そうすると、分離板チャンネル流路70の入口を介して供給された水素は、第2のガス拡散層30を介してアノード電極16に伝達された後、水素イオンと電子とに分離される。また、分離板チャンネル流路70の出口は、水素再循環ライン(図示せず)に連結されてもよい。水素再循環ラインは、分離板チャンネル流路70の出口から排出された水素を水素供給ラインに再伝達できるように設けられる。そうすると、アノード電極16での酸化反応に参加しなかった残水素は、分離板チャンネル流路70の出口および水素再循環ラインを介して水素供給ラインに再伝達される。
【0033】
図3はコイルばねの概略的な形状を説明するための図である。
図3に示すように、コイルばね60は、予め定められた直径D1を有するばねワイヤ62が螺旋状に巻取られて形成される。かかるコイルばね60は、単位セル1の設計目的に応じて予め定められたピッチPと直径D2を有するように形成されてもよい。
コイルばね60は、第1のガス拡散層20の一面と第1の分離板40を弾性支持するとともに電気的に連結することができるように、第1のガス拡散層20の一面と第1の分離板40との間に介在される。例えば、図1に示すように、コイルばね60は、コイルばね60の軸方向が膜‐電極接合体10の厚さ方向と垂直になるように、第1のガス拡散層20の一面と第1の分離板40との間に介在されてもよい。かかるコイルばね60は、第1のガス拡散層20と第1の分離板40との間隔を予め定められた距離だけ維持することで、第1のガス拡散層20と第1の分離板40との間の空間に反応ガスと生成水などを移送するための反応ガス流路90を構成することができる。
【0034】
反応ガス流路90を介して移送可能な反応ガスの種類は、特に限定されない。例えば、反応ガス流路90は、空気を移送できるように構成されてもよい。この場合に、反応ガス流路90の入口(図示せず)は、空気供給ライン(図示せず)に連結されてもよい。空気供給ラインには、外部の空気を反応ガス流路90の入口に向かってポンピング可能な空気圧縮機(図示せず)などが設置されてもよい。そうすると、反応ガス流路90の入口を介して供給された空気中の酸素は、第1のガス拡散層20を介してカソード電極14に伝達された後、第1の分離板40を介して伝達された電子と電解質膜12を介して伝達された水素イオンと結合される。かかる水素イオン、電子および酸素が参加する還元反応によると、電気エネルギーおよび生成水が生成される。また、反応ガス流路90の出口は、空気排出ライン(図示せず)に連結される。そうすると、カソード電極14での還元反応に参加しなかった残空気と生成水などは、反応ガス流路90の出口および空気排出ラインを介して外部に排出される。
【0035】
図4はコイルばねが複数の列をなすように配置された状態を示す図であり、図5aは図4に示すコイルばねが反応ガスの流動方向と平行になるように配置された状態を示す図であり、図5bは図4に示すコイルばねが反応ガスの流動方向と垂直になるように配置される状態を示す図である。
図6はコイルばねがジグザグ状に折り畳まれて配置された状態を示す図であり、図7はコイルばねが螺旋状に折り畳まれて配置された状態を示す図である。
コイルばね60の配置方法は、特に限定されない。
例えば、図4に示すように、複数のコイルばね60が複数の列をなすように配置されてもよい。この場合に、コイルばね60は、軸方向が反応ガス流路90を通過する空気の流動方向と予め定められた角度をなすように配置されてもよい。例えば、図5aに示すように、コイルばね60のうち少なくとも一つは、軸方向が空気の流動方向と平行になるように配置されてもよい。例えば、図5bに示すように、コイルばね60のうち少なくとも一つは、軸方向が空気の流動方向と垂直になるように配置されてもよい。
【0036】
例えば、図6に示すように、少なくとも一つのコイルばね60がジグザグ状に折り畳まれて配置されてもよい。
また、図7に示すように、少なくとも一つのコイルばね60が螺旋状に折り畳まれて配置されてもよい。
図8はコイルばねが第1の分離板に溶接された状態を示す図であり、図9a~cはコイルばねが第1の分離板の係止突起に係止された状態を示す図である。
コイルばね60は、予め定められた位置を維持できるように、第1の分離板40に固定されることが好ましい。
例えば、図8に示すように、コイルばね60は、予め定められた溶接点Wが第1の分離板40の一面に溶接され固定されてもよい。
【0037】
例えば、図9aおよびbに示すように、第1の分離板40は、一面に突出形成される少なくとも一つの係止突起42を備えてもよく、コイルばね60は、かかる係止突起42に係止され固定されてもよい。特に、図9cに示すように、コイルばね60は、区間別にピッチP1、P2、P3が異なるように係止突起42に係止され固定されてもよい。
図10a~cはコイルばねが互いに重ね合わされるように配置される状態を示す図である。
コイルばね60の設置間隔は、特に限定されない。
例えば、図10a~cに示すように、コイルばね60は、互いに隣接して位置したコイルばね60が予め定められた重ね合わせ率だけ重ね合わされるように配置されたり予め定められた間隔だけ離隔するように配置されてもよい。コイルばね60の重ね合わせとは、コイルばね60の配置間隔がコイルばね60の直径D2に比べて小さくてコイルばね60が互いに重なるように配置された状態を言う。
【0038】
図11図14はコイルばねを用いて反応ガス流路の気孔率を調節する方法について説明するための図である。
反応ガス流路90の気孔率は、反応ガス流路90の全容積に対してコイルばね60によって占有されていない空間の容積の割合であり、反応ガス流路90の全容積に対してコイルばね60が占有する容積の割合に反比例する。すなわち、反応ガス流路90の気孔率は、反応ガス流路90の全容積に対してコイルばね60が占有する容積の割合が低くなるほど高くなる。したがって、反応ガス流路90の気孔率は、反応ガス流路90の全容積に対してコイルばね60が占有する容積の割合を調節することで調節することができる。
これに鑑みて、コイルばね60は、単位セル1の設計目的に応じて反応ガス流路90が予め定められた気孔率を有するように設けられてもよい。コイルばね60を用いて反応ガス流路90の気孔率を調節する方法は、特に限定されない。例えば、ばねワイヤの直径D1、コイルばね60のピッチP、コイルばね60の直径D2、コイルばね60の重ね合わせ率のうち少なくとも一つを調節することで、反応ガス流路90の気孔率を予め定められた目標気孔率に精度よく調節してもよい。
【0039】
一方、反応ガス流路90を通過する空気の流量は、反応ガス流路90の上流92から下流94側に行くほど漸進的に小さくなる。これにより、反応ガス流路90の上流92側に行くほど湿気が正常水準に比べて少ないドライアウト(dry out)が頻繁に発生し、反応ガス流路90の下流94側に行くほど湿気が正常水準に比べて多いフラッディング(flooding)が頻繁に発生する。ここで、反応ガス流路90の上流92とは、反応ガス流路90の入口と隣接した領域を言い、反応ガス流路90の下流94とは、反応ガス流路90の出口と隣接した領域を言う。
かかる問題を解決するために、コイルばね60は、反応ガス流路90の上流92側から下流94側に行くほど反応ガス流路90の気孔率が高くなるように配置されてもよい。そうすると、反応ガス流路90の上流92では、低い気孔率によって空気の拡散性が低下し、反応ガス流路90の下流94では、高い気孔率によって空気の拡散性が増加する。これにより、コイルばね60は、空気の流量の高低によるドライアウトとフラッディングを最小化することができる。
【0040】
このように反応ガス流路90の上流92側から下流94側に行くほど反応ガス流路90の気孔率が高くなるようにコイルばね60を配置する方法は、特に限定されない。
例えば、図11に示すように、コイルばね60のうち少なくとも一部は、反応ガス流路90の上流92側から下流94側に行くほど、コイルばね60の重ね合わせ率が低くなるように配置されてもよい。換言すれば、コイルばね60は、反応ガス流路90の上流92側から下流94側に行くほど、コイルばね60の配置間隔が長くなるように配置されてもよい。
例えば、図12に示すように、コイルばね60のうち少なくとも一部は、反応ガス流路90の上流92側から下流94側に行くほど、コイルばね60のうちピッチPが長いコイルばね60が位置するように配置されてもよい。
【0041】
図13に示すように、コイルばね60のうち少なくとも一部は、反応ガス流路90の上流92側から下流94側に行くほど、コイルばね60の重ね合わせ率が低くなり、且つコイルばね60のうちピッチPが長いコイルばね60が位置するように配置されてもよい。
例えば、図14に示すように、コイルばね60のうち少なくとも一部は、反応ガス流路90の上流92側から下流94側に行くほど、ピッチPが長くなるように配置されてもよい。
コイルばね60のうち少なくとも一部は、反応ガス流路90の上流92側から下流94側に行くほど、コイルばね60のうちばねワイヤの直径D1が小さいコイルばね60が位置するように配置されてもよい。
【0042】
コイルばね60のうち少なくとも一部は、反応ガス流路90の上流92側から下流94側に行くほど、コイルばね60のうち直径D2が小さいコイルばね60が位置するように配置されてもよい。
一方、コイルばね60は、反応ガス流路90の上流92側から下流94側に行くほど反応ガス流路90の気孔率が高くなるように配置されると説明しているが、これに限定されるものではない。すなわち、コイルばね60は、反応ガス流路90の区間に応じて反応ガス流路90の気孔率が異なるように、ばねワイヤの直径D1、コイルばね60のピッチP、コイルばね60の直径D2、コイルばね60の重ね合わせ率のうち少なくとも一つが互いに異なるように配置されてもよい。
コイルばね60は、電流密度が高い領域に行くほど反応ガス流路90の気孔率が低くなるように配置されてもよい。換言すれば、コイルばね60は、電流密度が高い領域に行くほど反応ガス流路90の全容積に対してコイルばね60が占有する容積の割合が高くなるように配置される。そうすると、電流密度が高い領域に行くほど、コイルばね60が第1のガス拡散層20および第1の分離板40と接触する面積が増加する。これにより、コイルばね60は、電流密度が高い領域で第1のガス拡散層20と第1の分離板40との間の電気抵抗を下げることで、高い電気抵抗によるオーム(ohmic)損失を最小化することができる。
【0043】
上述のように、単位セル1は、第1のガス拡散層20と第1の分離板40との間にコイルばね60を介在させることで、コイルばね60を用いて第1のガス拡散層20と第1の分離板40との間に反応ガス流路90を形成することができる。かかる単位セル1は、反応ガス流路90の全容積に対してコイルばね60が占有する容積の割合を調節することで、反応ガス流路90の気孔率を単位セル1の設計目的に応じて精度よく調節することができ、第1のガス拡散層20と第1の分離板40との間の電気抵抗を電流密度に応じて精度よく調節することができる。また、単位セル1は、製造時から長時間が経つにつれてガス拡散層20、30が永久収縮変形される場合に、第1のガス拡散層20と第1の分離板40との間で単位セル1に作用する締結力によって弾性収縮された状態で配置されていたコイルばね60が弾性復元される。したがって、単位セル1は、製造時から長時間が経ってもコイルばね60の弾性復元によってガス拡散層20、30の永久収縮変形が補償されることで、単位セル1内の構成要素間の接触状態が安定的に維持される。
【0044】
以上、本発明に関する好ましい実施例を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の属する技術分野を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1 単位セル
10 膜‐電極接合体
12 電解質膜
14 カソード電極
16 アノード電極
20 第1のガス拡散層
30 第2のガス拡散層
40 第1の分離板
42 係止突起
50 第2の分離板
52 ランド部
54 チャンネル部
60 コイルばね
62 ばねワイヤ
70 分離板チャンネル流路
80 冷却水流路
90 反応ガス流路
92 上流
94 下流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
図14