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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】隊列走行システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20220707BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20220707BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20220707BHJP
   B60W 30/165 20200101ALI20220707BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20220707BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
G08G1/00 X
G08G1/16 A
G08G1/09 H
B60W30/165
B60W30/09
B62D6/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018145622
(22)【出願日】2018-08-02
(65)【公開番号】P2020021342
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】奥山 宏和
(72)【発明者】
【氏名】小島 信彦
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 直
(72)【発明者】
【氏名】安井 博文
(72)【発明者】
【氏名】山川 知也
(72)【発明者】
【氏名】川原 禎弘
(72)【発明者】
【氏名】武田 政義
(72)【発明者】
【氏名】米村 修一
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-163794(JP,A)
【文献】特開2010-198513(JP,A)
【文献】特開2017-013678(JP,A)
【文献】特開2001-301485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
G08G 1/16
G08G 1/09
B60W 30/165
B60W 30/09
B62D 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行車両と前記先行車両を自動運転によって追従する後続車両とが隊列を形成して走行する隊列走行システムであって、
前記先行車両は、
自車両の操舵に関する操舵情報を取得する操舵情報取得部と、
前記操舵情報を前記後続車両に送信する送信部とを備え、
前記後続車両は、
前記操舵情報を受信する受信部と、
前記操舵情報が障害物との衝突を回避する急操舵の実行を示すと前記障害物との衝突を回避する操舵角の制御を開始する自動運転制御部とを備える
隊列走行システム。
【請求項2】
前記先行車両において、
前記操舵情報取得部は、前記操舵情報として前記先行車両の操舵角を取得し、
前記送信部は、前記操舵情報取得部が取得した操舵角を前記操舵情報として送信し、
前記後続車両において、
前記自動運転制御部は、前記操舵情報に基づく操舵角の変化が正常範囲を超えている場合に前記先行車両が急操舵を実行したと判断する
請求項1に記載の隊列走行システム。
【請求項3】
前記先行車両において、
前記操舵情報取得部は、前記先行車両の前方に位置する障害物に前記先行車両が衝突するまでに要する時間である衝突予測時間を前記操舵情報として演算し、
前記送信部は、前記操舵情報取得部が演算した衝突予測時間を前記操舵情報として送信し、
前記後続車両において、
前記自動運転制御部は、前記操舵情報に基づく衝突予測時間が閾値よりも小さい場合に前記先行車両が急操舵を実行したと判断する
請求項1または2に記載の隊列走行システム。
【請求項4】
前記自動運転制御部は、前記障害物との衝突を回避する前記先行車両に向かって自車両が走行するように操舵角を制御する
請求項1~3のいずれか一項に記載の隊列走行システム。
【請求項5】
前記先行車両および前記後続車両は、
自車両の位置を含む位置情報を取得する位置情報取得部を有し、
前記送信部は、
前記位置情報取得部が取得した位置情報を前記後続車両に送信し、
前記自動運転制御部は、
前記受信部が受信した位置情報に基づく前記先行車両の位置を目標位置として自車両が走行するように操舵角を制御する
請求項4に記載の隊列走行システム。
【請求項6】
前記先行車両において、
前記操舵情報取得部は、前記先行車両の前方に位置する障害物に前記先行車両が衝突するまでに要する時間である衝突予測時間を前記操舵情報として演算し、
前記送信部は、前記操舵情報取得部が演算した衝突予測時間を前記操舵情報として送信し、
前記後続車両において、
前記自動運転制御部は、前記衝突予測時間の変化に基づいて前記先行車両において急操舵の実行が予測される場合に前記先行車両との車間距離を大きくする
請求項1~5のいずれか一項に記載の隊列走行システム。
【請求項7】
前記隊列走行システムは、
第1車両と、前記第1車両を先行車両とする後続車両である第2車両と、前記第2車両を先行車両とする後続車両である第3車両とを有するとともに、前記第3車両が前記第1車両の操舵情報を取得可能に構成されており、
前記第3車両の自動運転制御部は、
前記第1車両が急操舵を実行した場合に前記第2車両を自車両が追従するように操舵角を制御する
請求項1~6のいずれか一項に記載の隊列走行システム。
【請求項8】
前記隊列走行システムは、
第1車両と、前記第1車両を先行車両とする後続車両である第2車両と、前記第2車両を先行車両とする後続車両である第3車両とを有するとともに、前記第3車両が前記第1車両の操舵情報を取得可能に構成されており、
前記第3車両の自動運転制御部は、
前記第1車両が急操舵を実行した場合に前記障害物との衝突を回避する前記先行車両に向かって自車両が走行するように操舵角を制御する
請求項1~6のいずれか一項に記載の隊列走行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先行車両と先行車両を自動運転によって追従する後続車両とが隊列を形成して走行する隊列走行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1のように、複数の車両で隊列を組んで走行する隊列走行を自動運転により実現する技術が知られている。こうした隊列走行においては、車両間での相互通信により車速や車間距離などが一定に保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-81899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、先行車両に続く後続車両では先行車両の軌跡をなぞるように後続車両を走行させる追従制御が行われている。そのため、たとえば障害物との衝突を回避するために先行車両において緊急的な急操舵が実行されると後続車両でも急操舵が実行されてしまう。
【0005】
本発明は、先行車両が障害物との衝突を回避する急操舵を実行した場合に後続車両が急操舵を実行することなく障害物との衝突を回避することのできる隊列走行システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する隊列走行システムは、先行車両と前記先行車両を自動運転によって追従する後続車両とが隊列を形成して走行する隊列走行システムであって、前記先行車両は、自車両の操舵に関する操舵情報を取得する操舵情報取得部と、前記操舵情報を前記後続車両に送信する送信部とを備え、前記後続車両は、前記操舵情報を受信する受信部と、前記操舵情報が障害物との衝突を回避する急操舵の実行を示すと前記障害物との衝突を回避する操舵角の制御を開始する自動運転制御部とを備える。
【0007】
上記構成によれば、先行車両において障害物との衝突を回避する急操舵が実行されると、後続車両においては先行車両よりも早いタイミングで障害物との衝突を回避する操舵角の制御が開始される。これにより、先行車両よりも小さい操舵角の変化で障害物との衝突を回避することができる。その結果、後続車両については急操舵を実行することなく障害物との衝突を回避することができる。
【0008】
上記隊列走行システムは、前記先行車両において、前記操舵情報取得部は、前記操舵情報として前記先行車両の操舵角を取得し、前記送信部は、前記操舵情報取得部が取得した操舵角を前記操舵情報として送信し、前記後続車両において、前記自動運転制御部は、前記操舵情報に基づく操舵角の変化が正常範囲を超えている場合に前記先行車両が急操舵を実行したと判断することが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、先行車両の操舵角の変化に基づいて急操舵を実行したか否かが判断されることから、たとえば先行車両の位置に基づいて急操舵についての判断がなされる構成に比べて、先行車両が急操舵を実行したか否かの判断結果についての信頼度を高めることができる。
【0010】
上記隊列走行システムは、前記先行車両において、前記操舵情報取得部は、前記先行車両の前方に位置する障害物に前記先行車両が衝突するまでに要する時間である衝突予測時間を前記操舵情報として演算し、前記送信部は、前記操舵情報取得部が演算した衝突予測時間を前記操舵情報として送信し、前記後続車両において、前記自動運転制御部は、前記操舵情報に基づく衝突予測時間が閾値よりも小さい場合に前記先行車両が急操舵を実行したと判断することが好ましい。
【0011】
上記構成のように、先行車両の衝突予測時間の変化に基づいて急操舵を実行したか否かを判断することも可能である。
上記隊列走行システムにおいて、前記自動運転制御部は、前記障害物との衝突を回避する前記先行車両に向かって自車両が走行するように操舵角を制御することが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、後続車両においては障害物との衝突を回避する先行車両に向かって走行するように操舵角が制御されることから、先行車両が急操舵を行った直後から操舵角を変化させることができる。これにより、後続車両について障害物との衝突を回避するための操舵角の変化を小さくすることができる。
【0013】
上記隊列走行システムにおいて、前記先行車両および前記後続車両は、自車両の位置を含む位置情報を取得する位置情報取得部を有し、前記送信部は、前記位置情報取得部が取得した位置情報を前記後続車両に送信し、前記自動運転制御部は、前記受信部が受信した位置情報に基づく前記先行車両の位置を目標位置として自車両が走行するように操舵角を制御することが好ましい。上記構成によれば、障害物との衝突を回避する先行車両へと向かう後続車両をより高い精度のもとで走行させることができる。
【0014】
上記隊列走行システムは、前記先行車両において、前記操舵情報取得部は、前記先行車両の前方に位置する障害物に前記先行車両が衝突するまでに要する時間である衝突予測時間を前記操舵情報として演算し、前記送信部は、前記操舵情報取得部が演算した衝突予測時間を前記操舵情報として送信し、前記後続車両において、前記自動運転制御部は、前記衝突予測時間の変化に基づいて前記先行車両において急操舵の実行が予測される場合に前記先行車両との車間距離を大きくすることが好ましい。
【0015】
上記構成のように、先行車両において障害物との衝突を回避するために急操舵の実行が予測される場合に予め先行車両との車間距離を大きくすることにより、後続車両について障害物を回避する操舵をより緩やかなものにすることができる。
【0016】
上記隊列走行システムにおいて、前隊列走行システムは、第1車両と、前記第1車両を先行車両とする後続車両である第2車両と、前記第2車両を先行車両とする後続車両である第3車両とを有するとともに、前記第3車両が前記第1車両の操舵情報を取得可能に構成されており、前記第3車両の自動運転制御部は、前記第1車両が急操舵を実行した場合第2車両を自車両が追従するように操舵角を制御してもよい。
【0017】
上記構成によれば、第1車両が急操舵を実行した場合、第3車両は、第1車両よりも小さな操舵角の変化で障害物との衝突を回避する第2車両を追従する。これにより、第2車両のみならず第3車両についても第1車両よりも小さな操舵角の変化で障害物との衝突を回避することができる。
【0018】
上記隊列走行システムにおいて、前記隊列走行システムは、第1車両と、前記第1車両を先行車両とする後続車両である第2車両と、前記第2車両を先行車両とする後続車両である第3車両とを有するとともに、前記第3車両が前記第1車両の操舵情報を取得可能に構成されており、前記第3車両の自動運転制御部は、前記第1車両が急操舵を実行した場合に前記障害物との衝突を回避する前記先行車両に向かって自車両が走行するように操舵角を制御してもよい。
【0019】
上記構成によれば、第1車両が急操舵を実行した場合、第3車両は、その第1車両に向かって走行する。これにより、第2車両よりも小さな操舵角の変化で障害物との衝突を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態において、隊列走行システムの一実施形態の概略構成を模式的に示す図。
図2】第1実施形態において、各車両における車両制御装置の構成を示す機能ブロック図。
図3】第1実施形態において、周辺状況検出部の検出範囲を模式的に示す図。
図4】第1実施形態において、第1車両が急操舵を行う状況の一例を模式的に示す図。
図5】第1実施形態において、第1車両が急操舵した場合における各車両の制御態様の一例を示すタイミングチャート。
図6】第1実施形態において、障害物との衝突を回避する各車両の様子の一例を模式的に示す図。
図7】第1実施形態において、(a)障害物との衝突を回避する第1車両の軌跡の一例を示す図、(b)障害物との衝突を回避する第2車両および第3車両の軌跡の一例を示す図。
図8】第2実施形態において、障害物との衝突を回避する各車両の様子の一例を模式的に示す図。
図9】第2実施形態において、障害物との衝突を回避する第3車両の軌跡の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
図1図7を参照して、隊列走行システムの第1実施形態について説明する。
図1に示すように、隊列走行システムは、複数の車両10の間で各車両10の車両制御装置20が相互通信することにより各車両10の車速や操舵角、位置関係などを把握し、1つ前を走行する車両10を先行車両として後続車両が先行車両の後面を追従する。この隊列走行システムでは、車速が最高速度以下の範囲で制御されるとともに車間距離Lがその時々の車速に応じた適正距離に制御される。また、この隊列走行システムでは、先行車両において障害物との衝突を緊急的に回避する急操舵が行われると、後続車両においてはその障害物との衝突を回避する衝突回避制御が開始される。この隊列走行システムにおいて、先頭の車両10は、自動運転によって走行する車両であってもよいし、ドライバーが運転する車両であってもよい。一方、先頭の車両10以外の車両10は自動運転によって先行車両を追従する車両である。図1において、中央の車両10は、先頭の車両10に対する後続車両であり、かつ、最後尾の車両10に対する先行車両である。
【0022】
図2に示すように、複数の車両10の各々は、車両の運転を制御する車両制御装置20を備えている。車両制御装置20は、各種機能部として、通信部21、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信部22、周辺状況検出部23、走行状況検出部24、地図データベース25、走行経路設定システム26、および、運転支援部30を備えている。これらの各種機能部は、車載ネットワーク28を介して互いに電気的に接続されている。
【0023】
通信部21は、隊列を形成する車両間で相互に通信可能に構成されている。通信部21は、車載ネットワーク28に出力された自車両に関する各種情報を自車両のIDを関連付けた運転情報として他車両に送信する送信部として機能する。また、通信部21は、他車両が送信した運転情報を受信する受信部として機能するとともに、その受信した他車両の運転情報を車載ネットワーク28に出力する。運転情報の内容については後述する。
【0024】
GNSS受信部22は、図示しない3以上のGNSS衛星からのGNSS信号を受信し、その受信したGNSS信号に基づく自車両の現在地(例えば緯度および経度)を示すGNSS情報を取得する。GNSS受信部22は、そのGNSS情報を車載ネットワーク28に出力する。
【0025】
周辺状況検出部23は、レーダー部や撮像部などで構成されており、自車両の周辺状況を示す情報を検出する。
図3に示すように、レーダー部は、例えば、自車両11が走行している車線51の前方車両13や車線51に隣接する車線52,53を走行する周辺車両14が検出されるように自車両11の周辺が検出範囲に設定されている。レーダー部は、例えば、自車両11の周辺に検出波としてミリ波を出射するミリ波レーダーや自車両11の周辺に検出波として赤外線光を出射するレーザーレーダーによって構成される。レーダー部は、出射した検出波の反射波に基づいて、周辺に位置する障害物の自車両11に対する距離および相対速度を示す障害物情報を取得する。撮像部は、前方車両13や周辺車両14が撮像されるように自車両11の周辺が撮像範囲に設定されている。撮像部は、自車両11の周辺を撮像した画像情報を取得する。周辺状況検出部23は、自車両11の周辺状況を示す情報として、これら障害物情報および画像情報を車載ネットワーク28に出力する。
【0026】
走行状況検出部24は、自車両の走行状況に関する各種の情報を検出する。走行状況検出部24は、例えば、車速を検出する車速センサー、加減速度を検出する加減速度センサー、ステアリングの操舵角を検出する操舵角センサーなどを含んでいる。走行状況検出部24は、各センサーの検出値を検出値情報として車載ネットワーク28に出力する。
【0027】
地図データベース25は、交差点や分岐点などを示すノードとノード間を繋ぐ道路区間であるリンクとによって構成された地図情報を有するデータベースであり、自車両に搭載された記憶装置に記憶されている。地図情報には、例えば、各ノードの位置や種別などを含むノード情報、および、各リンクの種別やリンク長に加えて車線数や曲率、勾配などを含むリンク情報が含まれている。なお、地図データベース25は、車両と通信可能な施設などのコンピューターに記憶される構成であってもよい。
【0028】
走行経路設定システム26は、自車両が走行する経路である走行経路を設定し、その設定した走行経路を示す経路情報を車載ネットワーク28に出力する。走行経路設定システム26は、例えばナビゲーションシステムであり、ドライバーが操作可能な操作装置や地図情報に基づく地図を表示する表示装置によって構成されている。走行経路設定システム26は、例えば、操作装置を通じて目的地が入力されると、GNSS受信部22が出力するGNSS情報と地図データベース25の地図情報とに基づいて現在地から目的地までの走行経路を設定する。なお、走行経路設定システム26は、通信部21と通信可能な施設などに設けられてもよい。この場合、経路情報は、通信部21が受信し、通信部21によって車載ネットワーク28に出力される。また、経路情報は、代表する車両において走行経路設定システム26が出力した経路情報が通信部21を介して他車両に送信されることにより、隊列を形成する複数の車両において共有される構成であってもよい。
【0029】
運転支援部30は、車載ネットワーク28に出力された各種情報を取得し、その取得した各種の情報、および、メモリーに記憶したプログラムや各種のデータに基づいて各種の処理を実行する。運転支援部30は、ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、或いは、それらの組み合わせ、を含む回路として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリーを含み、メモリーは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリーすなわちコンピューター可読媒体は、汎用または専用のコンピューターでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0030】
運転支援部30は、自車両に関する各種情報を取得する取得部として、周辺情報取得部31、走行情報取得部32、位置情報取得部33、および、衝突予測時間取得部34を備えている。運転支援部30は、各取得部31~34が取得した情報に基づいて制御対象40を制御し、自動運転により自車両を走行させる自動運転制御部35を備えている。
【0031】
周辺情報取得部31は、周辺状況検出部23が出力した障害物情報および画像情報に基づいて自車両の周辺情報を取得する。周辺情報取得部31は、例えば、画像情報に対して所定の識別処理を行うことにより画像情報内の物体を識別し、それら識別した物体と障害物情報内の障害物とを関連付けることにより周辺情報を取得する。
【0032】
例えば、図3に示すように、自車両11に対して前方車両13が存在する場合、周辺情報には、前方車両13についての情報に自車両11との車間距離Laおよび相対速度などが含まれている。また、自車両11の側方や後方など、自車両11の周辺を複数の周辺車両14が走行している場合、周辺情報には、これら周辺車両14の各々についての情報に自車両11との距離および相対速度などが含まれている。また、周辺情報取得部31は、画像情報に対する識別処理を通じて道路標識や自車線位置などを認識し、走行中の道路における最高速度や走行中の車線の位置などを周辺情報として取得する。周辺情報取得部31は、こうして取得した周辺情報を車載ネットワーク28および通信部21を通じて他車両に送信する。
【0033】
走行情報取得部32は、自車両の走行状況を示す走行情報を取得する。走行情報取得部32は、周辺状況検出部23が出力した画像情報に対する識別処理を通じ、自車両が走行している車線における自車両の横位置、および、当該車線の延在方向に対する自車両の相対角度を走行情報として取得する。また走行情報取得部32は、走行状況検出部24が車載ネットワーク28に出力した検出値情報に基づき、自車両の車速、加減速度、操舵角などを走行情報として取得する。走行情報取得部32は、これら自車両の横位置、相対角度、車速、加減速度、および、操舵角を走行情報として車載ネットワーク28および通信部21を通じて他車両に送信する。
【0034】
位置情報取得部33は、自車両および他車両の位置などを示す位置情報を取得する。位置情報取得部33は、GNSS受信部22が車載ネットワーク28に出力したGNSS情報と通信部21が受信した他車両のGNSS情報とを取得する。位置情報取得部33は、自車両および他車両のGNSS情報に基づいて、隊列における各車両の位置や自車両の隊列内順序などを位置情報として取得する。位置情報取得部33は、位置情報の一部である自車両のGNSS情報や隊列内順序などを車載ネットワーク28および通信部21を通じて他車両に送信する。
【0035】
衝突予測時間取得部34は、周辺情報取得部31が取得した周辺情報に基づいて、自車両の前方に位置する障害物に自車両が衝突するまでに要する時間である衝突予測時間TTCを演算する。衝突予測時間取得部34は、演算した衝突予測時間TTCを衝突予測時間情報として車載ネットワーク28および通信部21を通じて他車両に送信する。
【0036】
自動運転制御部35は、上述した周辺情報、走行情報、位置情報、および、衝突予測時間情報などに基づいて制御対象40を制御することで自動運転走行を具現化する。例えば、自動運転制御部35は、車載ネットワーク28に出力された経路情報に基づき目的地までの自動運転走行を実行可能に構成されている。また例えば、自動運転制御部35は、先行車両を追従する追従制御を実行可能に構成されている。追従制御は、通常の隊列走行時における後続車両の制御態様であり、その時々の車速に応じた適正距離に車間距離を保持した状態で先行車両の後面を追従し、先行車両の軌跡をなぞるように後続車両を走行させる制御である。
【0037】
制御対象40は、例えば、駆動アクチュエーター、ブレーキアクチュエーター、操舵アクチュエーター、灯火システムに組み込まれたリレーなどで構成される。駆動アクチュエーターは、エンジンやモーター、トランスミッションなどで構成されるパワートレインシステムに組み込まれており、該パワートレインシステムの出力を制御する。ブレーキアクチュエーターは、自車両のブレーキシステムに組み込まれており、ブレーキシステムによる制動力を制御する。操舵アクチュエーターは、自車両のステアリングシステムに組み込まれており、ステアリングの操舵角を制御する。灯火システムは、制動灯や方向指示器などで構成されており、リレーは、方向指示器の点灯・非点灯を制御する。
【0038】
自動運転制御部35は、駆動アクチュエーターおよびブレーキアクチュエーターを制御することにより車速制御を行う車速制御部として機能する。例えば、自動運転制御部35は、前方車両13との車間距離Laおよび相対速度に基づいて車間距離Laが車速に応じた適正距離となる加減速度を演算し、その演算した加減速度を具現化する制御指示値を駆動アクチュエーターおよびブレーキアクチュエーターに出力する。
【0039】
自動運転制御部35は、操舵アクチュエーターを制御することにより操舵角制御を行う操舵角制御部として機能する。操舵角制御において、自動運転制御部35は、例えば、自車両の横位置が車線の中央となるように操舵アクチュエーターを制御する。
【0040】
また例えば、自動運転制御部35は、前方に障害物が突然出現して衝突予測時間TTCが閾値TTC1よりも小さくなると、減速と急操舵とにより障害物との衝突を回避する緊急回避制御を実行する。閾値TTC1は、障害物との衝突を回避するには急操舵の実行が必要となる衝突予測時間(急操舵必要時間)である。自動運転制御部35は、周辺情報に基づいて現在の走行位置から左右方向の各々について幅寄せ可能な領域を把握しており、緊急回避制御においてはその領域の範囲内を車両が走行するように、また、一般的なドライバーが操作可能な範囲内で操舵角が変化するように操舵角を制御する。緊急回避制御は、衝突予測時間TTCが閾値TTC1以下になると開始され、自車両を幅寄せして障害物との衝突を回避したのちにその障害物の側方を自車両が通過するまで継続する。
【0041】
後続車両において、自動運転制御部35は、通信部21を通じて取得する先行車両の運転情報に基づいて当該先行車両における急操舵の実行を認識すると、先行車両の急操舵の原因となった障害物との衝突を回避しつつ先行車両を追従する衝突回避制御を開始する。衝突回避制御において、自動運転制御部35は、先行車両よりも小さい操舵角の変化で障害物との衝突を回避するように自車両を走行させる。
【0042】
自動運転制御部35は、リレーを制御することにより灯火制御を行う。灯火制御において、自動運転制御部35は、例えば、緊急回避制御および衝突回避制御において、自車両を幅寄せする際にその幅寄せする方向の方向指示器が点灯するようにリレーを制御する。
【0043】
自動運転制御部35は、上述した加減速度の制御指示値や操舵角の制御指示値、方向指示器への動作指示などを含む制御情報を車載ネットワーク28および通信部21を通じて他車両に送信する。なお、運転情報は、車載ネットワーク28および通信部21を通じて他車両に送信された各種情報、すなわち周辺情報、走行情報、位置情報、衝突予測時間情報、および、制御情報などで構成されている。
【0044】
上記車両制御装置20を有する各車両10は、上述した運転情報を共有することにより、互いの位置関係などを把握しながら、車速を最高速度以下に保持しつつ車間距離がその時々の車速に応じた適正距離に保持されるように隊列走行する。
【0045】
図4~7を参照して、上述した衝突回避制御について、隊列の先頭を走行する車両において緊急回避制御が行われた場合を例にとって説明する。
図4を参照して先頭の車両において緊急回避制御が実行される状況の一例について説明する。図4に示すように、左側車線61と右側車線62とを有する片側2車線の道路を第1車両100、第2車両200、および、第3車両300が隊列走行している。第1車両100は、隊列の先頭を経路情報に基づき目的地まで自動運転で走行する車両であり、第2車両200は自動運転により第1車両100を追従する車両であり、第3車両300は自動運転により第2車両200を追従する車両である。緊急回避制御は、第1車両100の前に障害物65が突然出現して衝突予測時間TTCが閾値TTC1以下になった場合に行われる。
【0046】
図5および図6を参照して第1車両100が緊急回避制御を実行した場合に各車両において実行される処理の流れについて説明する。
図5に示すように、第1車両100、第2車両200、および、第3車両300は、相互通信により互いの運転情報を共有しながら車間距離Lで隊列走行している。第1車両100の自動運転制御部35は、衝突予測時間TTCが閾値TTC1以下であるかを繰り返し判断しており、衝突予測時間TTCが閾値TTC1以下になると(ステップS101)緊急回避制御にともなう急操舵を実行する(ステップS102)。この急操舵時における操舵角の変化は、一般的なドライバーの通常運転時に取り得る範囲を超える変化である。緊急回避制御の実行中、自車両の操舵に関する操舵情報として操舵角の検出値および操舵角の制御指示値を含む運転情報が第1車両100から第2車両200および第3車両300へと逐一送信される(ステップS103)。
【0047】
第2車両200および第3車両300において、自動運転制御部35は、第1車両100が送信した運転情報を受信すると、操舵角の変化が正常範囲を超えているか否かを判定する。そして自動運転制御部35は、操舵角の変化が正常範囲を超えている場合に第1車両100における急操舵の実行を認識する(ステップS201,S301)。操舵角の変化は、連続して受信した2つの運転情報における操舵角の制御指示値の偏差であってもよいし、操舵角の検出値の偏差であってもよい。また、操舵角の変化は、同じ運転情報における操舵角の検出値と操舵角の制御指示値との偏差であってもよい。急操舵を認識した各自動運転制御部35は、第1車両100よりも小さい操舵角の変化で障害物65との衝突を回避しつつ先行車両を追従する衝突回避制御を開始する(ステップS202,302)。上述した正常範囲は、一般的なドライバーの通常運転時に取り得る範囲であって、車速にかかわらず一定の範囲であってもよいし、車速が速いほど狭くなる範囲であってもよい。車速に応じて正常範囲が変化する場合、自動運転制御部35は、車速に応じた正常範囲が規定された正常範囲データをメモリーの所定領域に保持しており、その時々の車速に応じた正常範囲を正常範囲データから選択して急操舵が実行されたか否かの判断を行う。こうした構成によれば、急操舵についての判断をその時々の車速に応じて適切に行うことができる。
【0048】
図6の最上段に示すように、第2車両200での衝突回避制御(ステップS202)において、自動運転制御部35は、障害物65との衝突を回避する第1車両100に向かって自車両が走行するように操舵角を制御する。例えば、自動運転制御部35は、第1車両100からの運転情報に含まれている第1車両100の位置を目標位置に設定し、その目標位置に向かって自車両が走行するように操舵角を制御する。この際、自動運転制御部35は、衝突回避制御を開始する直前の車速を維持してもよいし、減速度が過度に大きくならない程度に徐々に減速して第1車両100との車間距離を保持するようにしてもよい。また、第3車両300での衝突回避制御(ステップS302)において、自動運転制御部35は、第2車両200を追従するように自車両を走行させる。
【0049】
やがて、第1車両100が障害物65の側方を通過すると(ステップS104)、第1車両100の自動運転制御部35は、自車両の周辺情報に基づいて障害物65の側方を通過したことを認識し、緊急回避制御から通常制御に復帰する(ステップS105)。また、第1車両100の自動運転制御部35は、障害物65の側方を通過したことを示す周辺情報を含んだ運転情報を第2車両200および第3車両300に送信する(ステップS106)。通常制御に復帰した第1車両100の自動運転制御部35は、図6の最上段に示すように自車両が左側車線61の中央位置へ復帰するように操舵角を制御したのち、図6の2段目以降に示すように自車両が左側車線61を所定の車速で走行するように車速制御や操舵角制御などを行う。
【0050】
一方、第2車両200の自動運転制御部35は、衝突回避制御において、第1車両100からの運転情報(ステップS106)に基づいて第1車両100が障害物65の側方を通過したことを認識すると、そのときの第1車両100の位置を自車両の最終目標位置として操舵角を制御する。第2車両200の自動運転制御部35は、障害物65との衝突を回避することを優先させつつ、最終目標位置に向かって自車両が走行するように操舵角を制御する。そして、第2車両200が最終目標位置に到達して障害物65の側方を通過すると(ステップS204)、第2車両200の自動運転制御部35は、衝突回避制御を終了して通常の追従制御に復帰する(ステップS205)。すなわち、第2車両200の自動運転制御部35は、図6の2段目以降に示すように第1車両100を第2車両200が追従するように車速制御や操舵角制御などを実行する。なお、最終目標位置は、障害物が移動した場合には、周辺情報に基づく障害物65の移動方向に沿って変更されてもよい。
【0051】
他方、第3車両300の自動運転制御部35は、衝突回避制御において、障害物65との衝突を回避することを優先させつつ、上述した第2車両200を追従するように自車両を走行させる。そして、第3車両300が障害物65の側方を通過すると(ステップS303)、衝突回避制御を終了して通常の追従制御に復帰する(ステップS304)。すなわち、第3車両300の自動運転制御部35は、図6の3段目以降に示すように第2車両200を自車両が追従するように車速制御や操舵角制御などを実行する。
【0052】
第1実施形態の隊列走行システムによれば以下に示す作用効果を得ることができる。
(1-1)図7(a)に示すように、第1車両100においては衝突予測時間TTCが閾値TTC1以下になると緊急回避制御が行われるため、第1車両100の軌跡100aは左側車線61の中央位置から障害物65の側方へとクランク状に延びる形状を有する。一方、図7(b)に示すように、第2車両200は第1車両100での急操舵の実行を認識するとその第1車両100に向かって走行するため、第2車両200の軌跡200aは左側車線61の中央位置から障害物65の側方へと直線状に延びる形状を有する。また、衝突回避制御において第2車両200を追従する第3車両300の軌跡300aは、第2車両200の軌跡200aと同じとなる。すなわち、第2車両200および第3車両300においては、衝突回避制御が実行されることにより障害物65との衝突を回避する操舵角の制御を第1車両100よりも早いタイミング(衝突予測時間TTCが大きいタイミング)で開始することができる。その結果、第2車両200および第3車両300については、第1車両100よりも小さい操舵角の変化のもとで、すなわち急操舵を実行することなく障害物65との衝突を回避することができる。
【0053】
(1-2)後続車両の自動運転制御部35は、先行車両の操舵角の変化が正常範囲から逸脱している場合に先行車両での急操舵を認識する。そのため、先行車両における急操舵の実行が操舵角の変化に基づいて判断されることにより、例えば運転情報に含まれている先行車両の位置の変化に基づいて急操舵の実行が判断される場合よりも誤差が小さく、急操舵について信頼度の高い判断結果を早いタイミングで得ることができる。
【0054】
(1-3)第2車両200の自動運転制御部35は、衝突回避制御において、緊急回避制御を実行中の先行車両に向かって自車両が走行するように操舵角を制御する。こうした構成によれば、第1車両100が急操舵を実行した直後、すなわち第2車両200にて障害物65が捉えられるまえから障害物65との衝突を回避する操舵角の制御を実行することができる。その結果、衝突回避制御における操舵角の変化を小さくすることができ、安定した車両姿勢のもとで障害物65との衝突を回避することができる。
【0055】
(1-4)第2車両200の自動運転制御部35は、第1車両100からの運転情報に基づく第1車両100の位置を目標位置として自車両の操舵角を制御している。これにより、障害物65との衝突を回避する第1車両100に向かう第2車両200を高い精度のもとで走行させることができる。
【0056】
(1-5)第3車両300の自動運転制御部35は、衝突回避制御において、第2車両200を追従する追従制御を実行する。こうした構成によれば、第2車両200のみならず、第3車両300についても第1車両100よりも小さい操舵角の変化で障害物65との衝突を回避することができる。そのうえ、第3車両300については一連の制御に実質的な変化がないことから、こうした作用効果を簡易な構成のもとで得ることができる。
【0057】
(第2実施形態)
図8および図9を参照して隊列走行システムの第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態の隊列走行システムは、第3車両300についての衝突回避制御の制御態様が異なるだけであり、第1実施形態における隊列走行システムと主要な構成が同じである。そのため、第2実施形態においては、第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、第1実施形態と同様の部分については同様の符号を付すことによりその詳細な説明は省略する。
【0058】
図8に示すように、第3車両300の自動運転制御部35は、衝突回避制御において、第2車両200を追従する制御ではなく、障害物65との衝突を回避する第1車両100に向かって自車両が走行するように操舵角を制御する。例えば、第3車両300の自動運転制御部35は、受信した第1車両100の運転情報に基づいて緊急回避制御中の第1車両100の位置を目標位置に設定し、その目標位置に向かって自車両が走行するように操舵角を制御する。すなわち、第3車両300においては、第1車両100の急操舵の直後から障害物65との衝突を回避するように操舵角が変化するとともに、障害物65の側方を通過した第1車両100の位置を自車両の最終目標位置として操舵角が制御される。
【0059】
第2実施形態の隊列走行システムによれば、以下に示す作用効果が得られる。
(2-1)図9に示すように、第3車両300においては、障害物65との衝突を回避する操舵角の制御を第2車両200よりも早いタイミングで(衝突予測時間TTCが大きいタイミング)で開始することができる。これにより、第3車両300の軌跡300aは、第2車両200の軌跡200aよりも傾斜の緩いものとなる。その結果、第3車両300について、第1車両100よりも小さい操舵角の変化のもとで、さらには第2車両200よりも小さい操舵角の変化のもとで障害物65との衝突を回避することができる。
【0060】
上記第1および第2実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。第1実施形態、第2実施形態、および、以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0061】
・衝突回避制御において、自動運転制御部35は、障害物65との衝突を回避する先行車両に向かって自車両が走行するように操舵角を制御する構成では、第1車両100の位置を自車両の目標位置として操舵角を制御する構成に限られない。例えば、自動運転制御部35は、自車両の前方を撮像した画像情報から取得される周辺情報、すなわち自車両の前方領域における先行車両の位置に基づいて操舵角を制御してもよい。この場合、自動運転制御部35は、その画像情報内における先行車両の位置が中央部分に位置するように操舵角を制御する。
【0062】
・衝突回避制御において、自動運転制御部35は、障害物65との衝突を回避する先行車両に向かって自車両が走行するように操舵角を制御する構成に限られない。例えば、自動運転制御部35は、衝突回避制御における操作角の変化について一定の設定値が定められていてもよい。こうした設定値は、その時々の車速に応じて選択される構成であってもよい。この場合、自動運転制御部35は、車速に応じた設定値が規定された操舵角設定データをメモリーの所定領域に保持しており、その時々の車速に応じて操舵角設定データから選択された設定値で衝突回避制御を実行する。
【0063】
・衝突回避制御においては、急操舵を行ったときの先行車両の衝突予測時間TTCよりも、その障害物65に対する衝突予測時間TTCが大きいときに後続車両において操舵角が変化すればよい。そのため、後続車両の自動運転制御部35は、先行車両の急操舵を認識すると、衝突回避制御として、先行車両の衝突予測時間TTCや自車両の車速や先行車両に対する車間距離に基づいて障害物65に対する衝突予測時間TTCを演算し、その衝突予測時間TTCが制御開始値以下であるか否かの判断を開始する。そして自動運転制御部35は、衝突予測時間TTCが制御開始値以下になることを条件として操舵角を変化させてもよい。なお、制御開始値は、予め定めた値であってもよいし、その時々の車速が大きいほど大きくなる値であってもよい。
【0064】
・操舵情報は、操舵角の検出値や操舵角の制御指示値など、自車両の操舵角に直接的に関与するものに限らず、例えば、車両の位置であってもよい。換言すれば、走行情報取得部32および自動運転制御部35に限らず、例えば、位置情報取得部33が操舵情報取得部としても機能してもよい。こうした構成において、後続車両の自動運転制御部35は、先行車両の位置の変化に基づいて急操舵の実行について判断する。
【0065】
・緊急的な急操舵が実行される場合は衝突予測時間TTCが急激に小さくなることから、操舵情報は、例えば、衝突予測時間TTCであってもよい。換言すれば、衝突予測時間取得部34が操舵情報取得部として機能してもよい。こうした構成において、後続車両の自動運転制御部35は、先行車両の衝突予測時間TTCの変化に基づいて急操舵が実行されたか否かを判断する。
【0066】
・後続車両の自動運転制御部35は、先行車両が送信した運転情報に含まれる情報を選択的に用いて先行車両における急操舵の有無を判断してもよい。
例えば、後続車両の自動運転制御部35は、先行車両における急操舵の有無を操舵角の検出値および操舵角の制御指示値に加えて衝突予測時間TTCに基づいて判断してもよい。具体的には、操舵角の変化が正常範囲を超えており、かつ、障害物との衝突を回避するには急操舵の実行が必要となる衝突予測時間である閾値TTC1よりも先行車両の衝突予測時間TTCが小さいことを条件に先行車両における急操舵の実行を認識してもよい。
【0067】
また例えば、後続車両の自動運転制御部35は、先行車両の位置の変化と衝突予測時間TTCとに基づいて先行車両の急操舵を判断してもよい。具体的には、先行車両の位置が横方向へ急激に変化し、かつ、閾値TTC1よりも先行車両の衝突予測時間TTCが小さいことを条件に先行車両における急操舵の実行を認識してもよい。
【0068】
こうした構成によれば、例えば、先行車両がドライバーの運転する車両である場合にそのドライバーが障害物との衝突を回避することを目的とせずに急操舵を行ったとしても、後続車両においては、その急操舵が障害物との衝突を回避するための急操舵として認識されることがない。すなわち、後続車両における急操舵の誤認識が回避される可能性を高めることができ、先行車両が急操舵を実行したか否かの判断結果についての信頼度をさらに高めることができる。
【0069】
・後続車両の自動運転制御部35は、先行車両における衝突予測時間TTCの変化、すなわち障害物への先行車両の接近態様に基づいて急操舵の実行が予測される場合には、衝突回避制御の一部として事前に減速して先行車両との車間距離を大きくする制御を開始してもよい。例えば、自動運転制御部35は、先行車両の衝突予測時間TTCが第2閾値である減速開始時間TTC2(>TTC1(第1閾値))以下にあり、かつ、衝突予測時間TTCが減少している場合、先行車両に障害物が接近しているものとして先行車両に対する車間距離を大きくする。また例えば、自動運転制御部35は、衝突予測時間TTCの減少率が通常減少率よりも大きい場合に先行車両との車間距離を大きくする。このとき、自動運転制御部35は、その時々の車速に応じた分だけ車間距離を大きくしてもよいし、衝突予測時間TTCの変化が大きいほど車間距離を大きくしてもよい。また、減速開始時間TTC2は、車速にかかわらず一定の値であってもよいし、車速が大きいほど大きな値であってもよい。通常減少率は、一定の値であってもよいし、自車両の車速が大きいほど小さい値であってもよい。そして、後続車両においては、減速開始後における自車両の衝突予測時間TTCが閾値TTC1よりも大きい回避開始時間TTC3に到達すると障害物との衝突を回避する操舵が開始される。こうした構成によれば、先行車両において急操舵の実行が予測される場合に車間距離が大きくなるから、先行車両が急操舵により衝突を回避した障害物との衝突をより緩やかな操舵で回避することができる。
【0070】
・隊列走行システムは、複数の車両10で構成されていればよく、2つの車両で構成されていてもよいし、4以上の車両で構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0071】
10…車両、11…自車両、13…前方車両、14…周辺車両、20…車両制御装置、21…通信部、22…GNSS受信部、23…周辺状況検出部、24…走行状況検出部、25…地図データベース、26…走行経路設定システム、28…車載ネットワーク、30…運転支援部、31…周辺情報取得部、32…走行情報取得部、33…位置情報取得部、34…衝突予測時間取得部、35…自動運転制御部、40…制御対象、51,52,53…車線、61…左側車線、62…右側車線、65…障害物、100…第1車両、200…第2車両、300…第3車両、100a,200a,300a…軌跡。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9