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特許7101079接点部材およびその製造方法、ならびに押釦スイッチ用部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】接点部材およびその製造方法、ならびに押釦スイッチ用部材
(51)【国際特許分類】
   H01H 1/06 20060101AFI20220707BHJP
   H01H 11/04 20060101ALI20220707BHJP
   H01H 1/023 20060101ALI20220707BHJP
   H01H 1/025 20060101ALI20220707BHJP
   H01H 1/04 20060101ALI20220707BHJP
   H01H 13/52 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
H01H1/06 J
H01H1/06 H
H01H1/06 K
H01H11/04 C
H01H1/023 B
H01H1/025
H01H1/04 B
H01H13/52 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018150954
(22)【出願日】2018-08-10
(65)【公開番号】P2020027710
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】武藤 泰寛
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-134241(JP,A)
【文献】特開平07-288054(JP,A)
【文献】特開2017-045629(JP,A)
【文献】特開2002-008469(JP,A)
【文献】実開昭59-053717(JP,U)
【文献】特開平07-014454(JP,A)
【文献】特開2010-113936(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/372276(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 1/06
H01H 11/04
H01H 1/023
H01H 1/025
H01H 1/04
H01H 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に凹凸状の表面を有する導電接点を備え、
前記凹凸状の表面を構成する複数個の凹部の周囲に存在する凸部が平面または曲面をなし、
前記凸部が前記平面の部分を有する場合に、前記平面の部分の面積は、前記導電接点の平面投射面積から前記平面の部分の面積を除く領域の面積よりも小さく、
前記導電接点は貴金属の層であり、
前記貴金属層に対して、非貴金属体、ゴム状弾性体を順に備え、
前記ゴム状弾性体と前記非貴金属体との第1接合面、および前記非貴金属体と前記貴金属層との第2接合面がともに凹凸状である接点部材。
【請求項2】
前記凹凸状の表面を形成している複数個の凹部は曲面状である請求項1に記載の接点部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の接点部材を製造する方法であって、
導電接点に凹凸状の表面を形成するための金型を、前記導電接点の表面にプレスして前記凹凸状の表面を形成するプレス工程を含み、
前記プレス工程に先立ち、
非貴金属体の表面に、前記導電接点としての貴金属層を形成する貴金属層形成工程と、
前記非貴金属体とゴム状弾性体とを接合する接合工程と、
を、さらに行う接点部材の製造方法。
【請求項4】
前記プレス工程より後に、前記接点部材の外形に打ち抜く打ち抜き工程を、さらに含む請求項に記載の接点部材の製造方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の接点部材を備える押釦スイッチ用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接点部材および当該接点部材の製造方法、ならびに当該接点部材を備える押釦スイッチ用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回路基板上の接点に対して接離可能な押釦スイッチ用部材として、金めっき接点を備えたものが知られている(特許文献1を参照)。また、金めっき接点と回路基板上の接点との間に異物が存在することによる導通不良が生じることを防止するため、金めっき接点に孔を備えた押釦スイッチ用部材も知られている(特許文献2を参照)。さらに、回路基板上のダストやオイルステインの影響を受けにくい低コストで長寿命な押釦スイッチ用部材を得るため、金属シート状にアイランド状に金めっきを施し、金めっきの領域以外をエッチングして凹部となした押釦スイッチ用部材も知られている(特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平07-014454号公報
【文献】特開2010-113936号公報
【文献】US2016/0372276A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記公知の押釦スイッチ用部材には、次のような問題がある。特許文献1に開示される押釦スイッチ用部材は、上述したように、回路基板上の異物によって導通不良が生じやすい。特許文献2に開示される押釦スイッチ用部材は、接点の面内に孔が開いているので、ゴムと接点とを接着したときに、接着剤が孔を埋めてしまい、異物に対する導通不良の効果が失われてしまう。さらに、特許文献2に開示される押釦スイッチ用部材は、孔を有する分だけ接点の面積が少なくなるので、導通不良を生じるリスクが高い。
【0005】
本発明は、上記課題を解決すること、すなわち、回路基板上の異物の影響を受けにくく、接点の面積を減らすことなく高い導通を実現可能な接点部材および当該接点部材を備える押釦スイッチ用部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る接点部材は、一端に凹凸状の表面を有する導電接点を備え、前記凹凸状の表面を構成する複数個の凹部の周囲に存在する凸部が平面または曲面をなし、前記凸部が前記平面の部分を有する場合に、前記平面の部分の面積は、前記導電接点の平面投射面積から前記平面の部分の面積を除く領域の面積よりも小さい。
【0007】
(2)別の実施形態に係る接点部材では、好ましくは、前記凹凸状の表面を形成している複数個の凹部は曲面状である。
【0008】
(3)別の実施形態に係る接点部材では、好ましくは、前記導電接点は貴金属の層である。
【0009】
(4)別の実施形態に係る接点部材は、好ましくは、前記貴金属層に対して、非貴金属体、ゴム状弾性体を順に備える
【0010】
(5)別の実施形態に係る接点部材では、好ましくは、前記ゴム状弾性体と前記非貴金属体との第1接合面、および前記非貴金属体と前記貴金属層との第2接合面がともに凹凸状である
【0011】
(6)本発明の一実施形態に係る接点部材の製造方法は、上述のいずれかの接点部材を製造する方法であって、導電接点に凹凸状の表面を形成するための金型を、前記導電接点の表面にプレスして前記凹凸状の表面を形成するプレス工程を含む。
【0012】
(7)別の実施形態に係る接点部材の製造方法は、好ましくは、前記プレス工程に先立ち、非貴金属体の表面に、前記導電接点としての貴金属層を形成する貴金属層形成工程と、前記非貴金属体とゴム状弾性体とを接合する接合工程とを、さらに行う。
【0013】
(8)別の実施形態に係る接点部材の製造方法は、好ましくは、前記プレス工程より後に、前記接点部材の外形に打ち抜く打ち抜き工程を、さらに含む。
【0014】
(9)本発明の一実施形態に係る押釦スイッチ用部材は、上述のいずれかの接点部材を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、回路基板上の異物の影響を受けにくく、接点の面積を減らすことなく高い導通を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る接点部材の斜視図(1A)および該接点部材の平面図(1B)をそれぞれ示す。
図2図2は、図1(1B)のA-A線で接点部材を切断した際のA-A線断面図およびその拡大図を示す。
図3図3は、回路基板の接点の表面に異物が存在する場合に、接点部材の貴金属の層が接点に接触する状況を示す。
図4図4は、図1(1B)における平面視の接点部材を、凹部33と凸部32とが区別可能となるように示す。
図5図5は、本発明の第2実施形態に係る接点部材の図3と同視の断面図(5A)および当該断面図における代表的な数種の凸部を拡大した拡大断面図(5B,5C,5D)をそれぞれ示す。
図6図6は、図5の接点部材の凹凸状の表面側から見た図であって、凸部における平面および曲面と、凸部の領域内に配置される複数の凹部とを区別可能に表した平面図を示す。
図7図7は、本発明の実施形態に係る接点部材を製造する主な工程のフローを示す。
図8図8は、図7のフローにおける各工程を断面図で示す。
図9図9は、図1の接点部材を備える押釦スイッチ用部材の縦断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
1.接点部材
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る接点部材の斜視図(1A)および該接点部材の平面図(1B)をそれぞれ示す。図2は、図1(1B)のA-A線で接点部材を切断した際のA-A線断面図およびその拡大図を示す。
【0019】
本実施形態に係る接点部材1は、一端に凹凸状の表面31を有する導電接点を備える。凹凸状の表面31を構成する複数個の凹部33の周囲に存在する凸部32が平面または曲面をなす。凸部32は、凹部33と対比したときに、凹凸状の表面31から外方向に突出している部分である。図1に示す接点部材1では、凸部32は、複数の凹部33の周囲に位置する連続した面であり、図2の断面視にて平面若しくは外方向にわずかに突出する曲面となっている。なお、凸部32は、凹部33の配置状況によっては、2以上に分断された領域でも良い。また、凹凸状の表面31を構成する複数個の凹部33は、断面視にて内方に窪む曲面となっている。より具体的には、凹部33は、凸部32から内方に窪む半球面状の凹部である。凹部33の底部を曲面とすると、図3に示す接点41への接触の際に、異物Mが凹部33から接点41上に落下しやすく、凹部33に異物Mが挟まるリスクを低減できる。接点部材1の導電接点は、好ましくは、貴金属の層30である。また、接点部材1は、好ましくは、貴金属の層30における凹凸状の表面31を備える一端側とは反対側の面に、非貴金属体20、ゴム状弾性体10を順に備える。貴金属の層30、非貴金属体20およびゴム状弾性体10は、好ましくは、ゴム状弾性体10から貴金属の層30に向かって厚さが薄くなるが、ゴム状弾性体10より非貴金属体20の方が厚くても良い。
【0020】
図2に示すように、凹部33同士の間隔P(凹部33,33の底部間の距離)は、好ましくは、凹部33の開口面の直径Dより大きい。凸部32が所定の間隔をもった領域だからである。凹凸状の表面31は、例えば、P=0.5~2.0mm、D=0.2~0.6mm、凹部33の深さ=0.1~1.0mmになるように形成できる。凹部33は、凹凸状の表面31内において、どのように配置されていても良い。例えば、凹部33は、凹凸状の表面31の平面視において、格子状、同心円状のような規則正しい配置構造にて形成されても良く、それとは逆に不規則な配置構造にて形成されていても良い。さらに、複数個の凹部33は、互いに同じ形状あるいは同じ寸法を有していても良く、それとは逆に少なくとも1つの凹部33が他の凹部33と異なる形状あるいは寸法を有していても良い。
【0021】
接点部材1において、好ましくは、ゴム状弾性体10と非貴金属体20との第1接合面15、および非貴金属体20と貴金属の層30との第2接合面25は、共に凹凸状である。かかる構成は、後述する接点部材1の製造工程に主に起因する。ただし、当該製造方法に依らず、凹凸状の第1接合面15および第2接合面25を形成することもできる。例えば、次のような製造方法を用いて、第1接合面15および第2接合面25を有する接点部材1を製造することもできる。一端の面を凹凸状にしたゴム状弾性体10と、ゴム状弾性体10の当該一端の面に密着可能な凹凸状の面を持つ非貴金属体20とを互いの凹凸状の面にて接合し、非貴金属体20の他端に別の凹凸状の面を形成しておき、そこに貴金属の層30をコートする。
【0022】
(1)ゴム状弾性体
ゴム状弾性体10は、弾性変形可能な材料、いわゆるエラストマーであれば、天然ゴム、合成ゴム、さらには合成樹脂であっても良い。ゴム状弾性体10の好ましい材料は、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を含む。これらの中でも、ゴム状弾性体10の材料としては、シリコーンゴムあるいはウレタンゴムがより好ましい。
【0023】
ゴム状弾性体10は、この実施形態では、直径より厚さの小さい円板形状であるが、円板以外の形態、例えば、直径以上の厚さを持つ円柱、あるいは一端面を三角形あるいは四角形以上の多角形とする多角形の板若しくは多角柱の形状を有する部材でも良い。
【0024】
(2)非貴金属体
非貴金属体20は、貴金属の層30と異なる材料であって、好ましくは貴金属を主材としないものであれば、特に制約はないが、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、タングステン(W)、ステンレススチール(SUS)のいずれ一種あるいはそれらの任意の合金から好適に成る。非貴金属体20の一例としては、Cu、Ni、Znを主とする合金(いわゆる「洋白」と称する合金)からより好適に構成される。また、非貴金属体20(例えば、Cuあるいは洋白)の表面に、下地めっき層(Niを主とするめっき層)を形成してから、下記の貴金属の層30を形成することもできる。下地めっき層を構成する好適な金属としては、Cu、Zn、Sn、Cr、NiおよびAgを含む合金を例示でき、非貴金属体20として洋白を用いる場合には、洋白の表面に、Zn、CuおよびCrを含む合金から成る下地めっき層を形成するのが好ましく、Ni、AgおよびSnを含む合金(ただし、Agは主材ではない。)から成る下地めっき層を形成するのがより好ましい。また、貴金属の層30としてAuを用いる場合には、下地めっき層として、CuあるいはNiが好ましく、特にNiが好ましい。このとき、CuあるいはNi以外の金属がわずかに含まれていても良い。非貴金属体20は、ゴム状弾性体10と同様に、直径より厚さの小さい円板形状であるが、円板以外の形態でも良い。
【0025】
(3)貴金属の層
貴金属の層30は、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)またはオスミウム(Os)の一種若しくは複数、あるいはこれら例示の金属を主とする合金から成る。貴金属の層30は、好ましくは、導電性に優れ、低硬度で塑性変形しやすく、薄膜形成容易な材料から構成され、例えば、Auからより好ましく構成される。また、Auにコバルト(Co)あるいはNiを添加した硬質金めっきの他、Pd-Ni合金(Pdに対して少量のNiを添加した合金)も好適に例示できる。
【0026】
図3は、回路基板の接点の表面に異物が存在する場合に、接点部材の貴金属の層が接点に接触する状況を示す。
【0027】
回路基板40上に形成された接点41の上に、接点部材1と接点41との電気的な接続を阻害する異物M(絶縁性若しくは絶縁性とまでは言えないまでも接点41やそれと接触する導電接点よりも電気抵抗の大きな異物)が存在する場合でも、凹凸状の表面31の形状は、異物Mが凹部33に位置する確率が高くなるような形状となっている。これは、後述するように、凸部32は、その突出側の面を曲面または平面としていて、平面を有する場合でも、その平面の部分の面積は、凹凸状の表面31を平面上に投射させた平面投射面積の内の当該平面の部分の面積を除く領域の総面積(例えば、複数の凹部33の平面投射面積)よりも小さくしているからである。また、凸部32の先端が曲面である場合には、異物Mが凸部32の先端と接点41と挟まれた際に、凹部32側に移動しやすいからである。この結果、異物Mが凹部33の空間内に収まる大きさであって、凹凸状の表面31に1個の異物Mが存在している場合、異物Mが凹部33に位置して接点41と貴金属の層30との電気的な接続を阻害しない確率を50%未満とするという目的を達成できる。「平面投射面積」は、平面視面積とも称し、例えば、接点部材1を回路基板40上に投影するときの対象部分(凹凸状の表面31、凹部33など)の投射面積(若しくは投影面積とも称しても良い)をいう。これは、後述の接点部材1aでも同様である。
【0028】
図4は、図1(1B)における平面視の接点部材を、凹部33と凸部32とが区別可能となるように示す。
【0029】
貴金属の層30の凹凸状の表面31の平面上に投射させた平面投射面積は、図4に示す大きな円の面積であって、小円状の凹部33の平面投射面積(=S2)と、斜線で示す部分の面積(=S1)との和である。S1<S2となるように、凹凸状の表面31に凹部33を形成すると、前述のように、凹部33の空間に収まるような小さな異物Mが凹凸状の表面31の領域内に1個存在したときでも、凹部33に異物Mが位置する確率を50%超とすることができる。
【0030】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る接点部材について説明する。なお、第1実施形態と共通する部分については、重複した説明を省略することがある。
【0031】
図5は、本発明の第2実施形態に係る接点部材の図3と同視の断面図(5A)および当該断面図における代表的な数種の凸部を拡大した拡大断面図(5B,5C,5D)をそれぞれ示す。
【0032】
第2実施形態に係る接点部材1aは、複数の凹部33と、凹部33の周囲に連続して形成されている凸部32aとを有する。複数の凹部33は、非貴金属体20側に曲面状に窪む形状を有する。凸部32aは、その先端部分を曲面および/または平面とした形状である。図5では、凸部32aの一部に平面を、別の一部を曲面としている例を示す。領域b1,b2,b3の凸部32aは、ほぼ同じ断面形状を有しており、その先端に平面を備えず、全体を曲面(C1)とする山の形状を有する。領域b4の凸部32aは、その先端を平面(F2)とし、その周囲を曲面(C2)とする山の形状を有する。曲面(C2)は、(5C)の断面視にて、平面(F2)から凹部33の方向に向かって窪むような1つの頂点を持つ急峻な曲線状に形成されている。領域b5の凸部32aは、その先端を平面(F2)よりも小さな平面(F3)とし、その周囲を曲面(C3)とする山の形状を有する。曲面(C3)は、(5D)の断面視にて、平面(F3)から先端側に膨らむような1つの頂点を持つ曲線状に形成されている。凸部32aが曲面の場合には、凸部32aは接点41に点接触若しくは線接触可能である。一方、凸部32aがその先端部分に平面を有する場合には、凸部32aは接点41に面接触可能である。
【0033】
図6は、図5の接点部材の凹凸状の表面側から見た図であって、凸部における平面および曲面と、凸部の領域内に配置される複数の凹部とを区別可能に表した平面図を示す。
【0034】
図6では、凹部33を白色、凸部32aの平面の部分(F)を黒色、凸部32aの曲面の部分(C)を黒点の分散でそれぞれ示している。曲面の部分(C)は、異物Mと接したときに凹部33に異物Mを導きやすい部分である。平面の部分(F)は、異物Mを接点41との間で挟む可能性のある領域である。黒色で示す平面の部分(F)の面積(S1)を、凹凸状の表面31の平面投射面積(S1)に対して50%未満にする、すなわち、曲面の部分(C)と凹部33の平面投射面積(S2)よりS1を小さくすることにより、凹部33に収まる大きさの1個の異物Mが凹凸状の表面31の中に存在したときでも、接点41に対する導通不良になる確率を50%未満に低減するという目的を達成できる。なお、凸部32aのどの部分の断面をみても曲面の部分(C)となるように凸部32aを形成するのがさらに好ましい。その方が、異物Mを凹部33内に導きやすくなるからである。
【0035】
2.接点部材の製造方法
次に、本発明の実施形態に係る接点部材の製造方法について説明する。
【0036】
図7は、本発明の実施形態に係る接点部材を製造する主な工程のフローを示す。図8は、図7のフローにおける各工程を断面図で示す。
【0037】
接点部材の製造方法の一例は、図7(7A)に示すように、非貴金属体20の表面に、導電接点としての貴金属の層30を形成する貴金属層形成工程(S110)と、非貴金属体20とゴム状弾性体10とを接合する接合工程(S120)と、導電接点としての貴金属の層30に凹凸状の表面31を形成するための金型を、貴金属の層30の表面にプレスして凹凸状の表面31を形成するプレス工程(S130)と、接点部材1の外形に打ち抜く打ち抜き工程(S140)と、を含む。なお、接点部材1の大きさを減じる必要が無い場合には、S140を省略することもできる。それは、以下の図7(7B)に示すフローでも同様である。
【0038】
また、接点部材の製造方法の別の例は、図7(7B)に示すように、非貴金属体20とゴム状弾性体10とを接合する接合工程(S100)と、非貴金属体20の表面に、導電接点としての貴金属の層30を形成する貴金属層形成工程(S110)と、導電接点としての貴金属の層30に凹凸状の表面31を形成するための金型を、貴金属の層30の表面にプレスして凹凸状の表面31を形成するプレス工程(S130)と、接点部材1の外形に打ち抜く打ち抜き工程(S140)と、を含む。
【0039】
以下、図7(7A)のフローを例に、図8に基づいて各製造工程を詳述する。
【0040】
(1)貴金属層形成工程(S110)
この工程は、非貴金属体20の表面に、導電接点としての貴金属の層30を形成する工程である。この工程では、貴金属層付き非貴金属体50が得られる(a1を参照)。貴金属の層30を形成する方法は、めっき(電解めっき、無電解めっきのいずれでも可)、蒸着、スパッタリング、CVD、貴金属を含む溶剤の塗布(刷毛塗り、スプレーなどのいずれも可)、インクジェット方式等による印刷などを例示でき、特に、めっきをより好適に例示できる。
【0041】
(2)接合工程(S120)
この工程は、非貴金属体20とゴム状弾性体10とを接合する工程である。非貴金属体20は、ここでは、貴金属層付き非貴金属体50の一部である。この工程を実施することにより、ゴム状弾性体10、非貴金属体20および貴金属の層30の三層構造の接合体51が得られる(a2を参照)。
【0042】
(3)プレス工程(S130)
この工程は、貴金属の層30に凹凸状の表面31を形成するための金型62を、貴金属の層30の表面にプレスして凹凸状の表面31を形成する工程である。金型62は、より具体的には、パンチと称する凸状の金型である。この工程では、凹状の金型60の内部に、貴金属の層30が上になるように接合体51を入れ、接合体51の上方の空間61に金型62を入れた後に、両金型60,62の型締めが行われる。金型62における接合体51と接触する面には、凹凸状の表面31を形成可能な凹凸面63が形成されている(a3を参照)。
【0043】
プレス工程後に、貴金属の層30に凹凸状の表面31が形成された成形体70が得られる(a4を参照)。ゴム状弾性体10がプレス工程時にクッション材として機能するため、ゴム状弾性体10と非貴金属体20との第1接合面15、および非貴金属体20と貴金属の層30との第2接合面25が共に凹凸状になる。このような接合面15,25は、ゴム状弾性体10、非貴金属体20および貴金属の層30が強固に接合するのに寄与する。
【0044】
(4)打ち抜き工程(S140)
この工程は、プレス工程より後に、接点部材1の外形に打ち抜く工程である。具体的には、貫通穴81を備えた治具80上に成形体70を載せて、成形体70の上方から、パンチ85の軸部86が貫通穴81に向けて押し込まれる(a5を参照)。軸部86の外方向の一端には、好ましくは、軸部86より大径のフランジ部87が形成されている。この工程を経て、接点部材1が得られる(a6を参照)。
【0045】
なお、成形体70をそのまま接点部材1として使用可能であれば、打ち抜き工程(S140)を行わなくても良い。さらに、図8では、貫通穴81および軸部86が1個ずつしか描かれていないが、複数個の貫通穴81を備えた治具80に、貫通穴81の数と同数の軸部86を備えたパンチ85を押し込んで、成形体70から複数個の接点部材1を打ち抜くこともできる。
【0046】
接点部材の製造方法は、少なくともプレス工程(S130)を有していれば、必ずしも他の工程を要しない。例えば、導電性に優れる導電接点の一端に凹凸状の表面31を形成する際には、非貴金属体20の表面に貴金属の層30を形成する必要はない。さらには、ゴム状弾性体10を非貴金属体20に接合する必要もない。上述の製造方法は、接点部材1のみならず、接点部材1aにも同様に適用できる。
【0047】
3.押釦スイッチ用部材
次に、本発明の実施形態に係る押釦スイッチ用部材について説明する。
【0048】
図9は、図1の接点部材を備える押釦スイッチ用部材の縦断面図を示す。
【0049】
図9に示すように、押釦スイッチ用部材90は、回路基板40上に配置され、回路基板40の方向(図9の下方向)及びその逆方向(図9の上方向)に弾性的に往復可動する部材である。押釦スイッチ用部材90は、好ましくは、略直方体若しくは略円柱形状のキートップ91と、キートップ91の径方向外側にスカート形状に接続されるドーム部93と、ドーム部93よりも上記径方向外側に接続されていて回路基板40に固定されるフランジ部94とを備える。キートップ91は、回路基板40と対向する下面に、回路基板40の方向に突出する下方突出部92を備える。回路基板40は、下方突出部92と対向する位置に、互いに非接触状態の複数の接点41,41を備える。一方、下方突出部92は、その先端であって接点41,41と接触可能な位置に、接点部材1を備える。接点部材1は、凹凸状の表面31を接点41,41に対向させるように下方突出部92に接合されている。接合方法は、接着、熱融着、嵌め込み、ねじ込み等の如何なる方法をも含み得る。
【0050】
キートップ91の上方から押圧していないときには、接点部材1と接点41,41とは非接触状態を維持している。キートップ91の上から押圧していき、その押圧がある閾値を超えたときには、ドーム部93が急激に変形(座屈)して、接点部材1が接点41,41に接触する。この接触によって、接点41から接点部材1を通じてもう一方の接点41へと通電経路が形成されるので、スイッチがON(若しくはOFF)となる。キートップ91への押圧を解除すると、ドーム部93は自身の弾性力によって元の形状に戻るため、キートップ91は上昇する。この結果、接点部材1は、接点41,41と離れる。
【0051】
押釦スイッチ用部材90は、この実施形態では、ゴム材料にて一体成形された部材である。しかし、押釦スイッチ用部材90は、ゴム材料にて一体成形された部材ではなく、少なくともドーム部93のみをゴム材料で形成されていれば、如何なる材料で構成されていても良い。押釦スイッチ用部材90を構成するゴム材料としては、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を用いるのが好ましい。上記材料の候補の内では、特に、シリコーンゴムが好ましい。また、ドーム部93の形状は、縦断面視にて、外側に突出する逆椀形状、あるいはドーム部93の内側に突出する逆扇形状であっても良い。さらに、ドーム部93は、円錐台状、角錐台状といった如何なる形状を有する部材でも良い。
【0052】
4.その他の実施形態
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0053】
例えば、貴金属以外の導電性に優れる層を備える部材を導電接点に用いても良い。例えば、アルミニウムあるいはタングステンから成る導電接点を用いても良い。導電接点の凹凸状の表面31と反対側の面に、非貴金属体20、ゴム状弾性体10を順に備えるのではなく、非貴金属体20のみ、ゴム状弾性体10のみを備えても良い。さらには、導電接点のみを接点部材1としても良い。
【0054】
上述の各実施形態の複数の構成要素は、互いに組み合わせ不可能な場合を除いて、自由に組み合わせ可能である。例えば、押釦スイッチ用部材90は、接点部材1aを備えても良い。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る接点部材は、例えば、スイッチの電気接点に利用できる。
【符号の説明】
【0056】
1,1a・・・接点部材、10・・・ゴム状弾性体、15・・・第1接合面、20・・・非貴金属体、25・・・第2接合面、30・・・貴金属の層(導電接点の一例)、31・・・凹凸状の表面、32,32a・・・凸部、33・・・凹部、62・・・金型、90・・・押釦スイッチ用部材、S1・・・平面の部分の面積、S・・・導電接点の平面投射面積、S2・・・平面の部分の面積を除く領域の面積。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9