(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】避圧調整ユニット
(51)【国際特許分類】
F24F 13/14 20060101AFI20220707BHJP
F24F 13/10 20060101ALI20220707BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
F24F13/14 A
F24F13/10 E
F24F7/06 C
(21)【出願番号】P 2018187965
(22)【出願日】2018-10-03
【審査請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】岩村 卓嗣
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭64-001344(JP,U)
【文献】特開平06-109154(JP,A)
【文献】特開平10-220854(JP,A)
【文献】特開平03-028642(JP,A)
【文献】特開平02-097844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/14
F24F 13/10
F24F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過陰圧調整装置と過陽圧調整装置を備えた避圧調整ユニットであって、
過陰圧調整装置は、
開閉する過陰圧調整パネルを備え、
過陰圧調整パネルは、回転軸に軸着された回転開閉パネルであり、常閉であって、一定の開放抵抗が設けられており、
過陽圧調整装置は、周囲に設けられた周面材と上面に設置された吸気方向に開口する開閉板とを備えた昇降型の逃がし弁を備えており、
開放抵抗以上の陰圧が発生した場合に過陰圧パネルが回動して開となり、過陽圧調整装置の開閉板が開口して吸気し、想定以上の陽圧が発生した場合に昇降型の逃がし弁が上昇して排気することを特徴とする避圧調整ユニット。
【請求項2】
過陰圧調整パネルに設けられる開放抵抗は、回転軸に取り付けられたバランスウェイトであることを特徴とする請求項1記載の避圧調整ユニット。
【請求項3】
過陰圧調整装置は、開閉する過陰圧調整パネルに対して室内側にフィルターを配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の避圧調整ユニット。
【請求項4】
昇降型の逃がし弁の昇降は、案内ポールに取り付けられたリニアブッシュによって昇降が案内されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の避圧調整ユニット。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載された避圧調整ユニットが天井に設置された陽圧または陰圧に保たれたクリーンルーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
空調管理技術に関する。特に、室内の気圧変動に対応する技術である。
【背景技術】
【0002】
クリーンルーム等では、室内の気圧を陽圧あるいは陰圧に保つように制御されていることがある。
設定された気圧に保つように特許文献1(特開2013-170766号公報)がある。特許文献1には、吸気側と排気側にエア圧を測定する圧力センサを設けてエアの流量を制御する空調設備が提案されている。このような空調設備でコントロールできない場合、異常な気圧の増減があった場合には、部屋構造の弱いところが破れることがあり、異常対応をする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
室内の異常な気圧変動を調整する装置を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1.過陰圧調整装置と過陽圧調整装置を備えた避圧調整ユニットであって、
過陰圧調整装置は、
開閉する過陰圧調整パネルを備え、
過陰圧調整パネルは、回転軸に軸着された回転開閉パネルであり、常閉であって、一定の開放抵抗が設けられており、
過陽圧調整装置は、周囲に設けられた周面材と上面に設置された吸気方向に開口する開閉板とを備えた昇降型の逃がし弁を備えており、
開放抵抗以上の陰圧が発生した場合に過陰圧パネルが回動して開となり、過陽圧調整装置の開閉板が開口して吸気し、想定以上の陽圧が発生した場合に昇降型の逃がし弁が上昇して排気することを特徴とする避圧調整ユニット。
2.過陰圧調整パネルに設けられる開放抵抗は、回転軸に取り付けられたバランスウェイトであることを特徴とする1.記載の避圧調整ユニット。
3.過陰圧調整装置は、開閉する過陰圧調整パネルに対して室内側にフィルターを配置したことを特徴とする1.又は2.記載の避圧調整ユニット。
4.昇降型の逃がし弁の昇降は、案内ポールに取り付けられたリニアブッシュによって昇降が案内されることを特徴とする1.~3.のいずれかに記載の避圧調整ユニット。
5.1.~4.のいずれかに記載された避圧調整ユニットが天井に設置された陽圧または陰圧に保たれたクリーンルーム。
【発明の効果】
【0006】
1.本発明は、室内の気圧が異常変動した場合に、無動力で吸気あるいは排気して、室内の気圧を一定の範囲に保つことができる避圧装置ユニットを実現した。
2.薬剤の製剤室や実験室、電算気室など陽圧や陰圧に管理している部屋用に適用することができる。
3.本発明は、特に、天井に設置できる避圧調整ユニットである。天井材は上から吊っている構造が多く、軽い材料で構成されている。壁や床などよりも支持力が小さく、気圧変動の影響を受けやすいので、天井に設置して、天井の破損防止をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】避圧調整ユニットの作動状態を示す図。
図2(a)は、通常状態、
図2(b)は過陰圧状態、
図2(c)は過陽圧状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、室内に異常な気圧変動が生じた場合に、吸気あるいは排気を行う避圧調整ユニットである。
本発明の避圧調整ユニットは、過陰圧調整装置と過陽圧調整装置を備えている。
過陰圧調整装置は、開閉する過陰圧調整パネルを備えており、過陰圧調整パネルは通常は常閉であって、大きな陰圧が発生すると開となる。例えば、過陰圧調整パネルは、回転軸に軸着された回転開閉パネルであり、バランスウェイトなどで一定の開放抵抗が設けられている。さらに、過陰圧調整パネルに対して室内側には吸気が通過するフィルターを配置して、クリーンルームなど汚染しないようにする。
過陽圧調整装置は、周囲に設けられた周面材と上面に設置された吸気方向に開口する開閉板とを備えた昇降型の逃がし弁を備えている。例えば、枡を逆さにしたような立方体が上下に昇降するタイプの逃がし弁である。立方体の天井面になる上面には吸気方向に開口する開閉板が設けられている。
この避圧調整ユニットは、開放抵抗以上の陰圧が発生した場合に過陰圧調整パネルが回動して開となり、開口して吸気して異常な陰圧の発生を回避する。
また、想定以上の陽圧が発生した場合に、過陰圧調整パネルが閉じた状態となり、昇降型の逃がし弁が上昇して、隙間から排気することでき、異常な陽圧の発生を回避する。
本発明の避圧調整ユニットは、室内の気圧が想定以上に変動した際に、その変動圧によって吸気/排気できる構造であって、電気などの動力を必要としないので、停電などの非常事態でも作動することができる。
【0009】
本避圧調整ユニットの概略を
図1に示す。
避圧調整ユニット1は、過陰圧調整装置2と過陽圧調整装置3を備えている。避圧調整ユニット1は、例えば建物の天井9に設置される。過陰圧調整装置2は室外側、過陽圧調整装置3は室内側に配置されている。避圧調整ユニット1の筐体の天井には、過陰圧調整パネル4が設けられ、下部側側面には排気用開口13が設けられている。
避圧調整ユニット1の筐体は、陰圧調整用筐体11と陽圧調整用筐体12に分離可能に設けられている。陰圧調整用筐体11は、過陰圧調整装置2の筐体であり、陽圧調整用筐体12は過陽圧調整装置3の筐体である。
【0010】
過陰圧調整装置2は、陰圧調整用筐体11の天井部に回転軸42に軸着された過陰圧調整パネル4(41)が設けられている。過陰圧調整パネル41は左右に設けられているが、数は、1以上で複数設けることができる。過陰圧調整装置2の内部には、必要に応じてフィルター5が配置される。避圧調整ユニットをクリーンルームなど室内の清浄性を保つ必要があるところに設置する場合に、フィルターを配置する。
【0011】
過陰圧調整パネル4は、室内側の気圧が設定以上に低下した場合に回転して、吸気できるように構成されている。図示の事例では、回転軸42を長片4aと短片4bの間に設けてある。短片4b側にバランスウェイト44が取り付けてある。この調整用の負荷は、バネや回転抵抗など適宜選択することができる。また、回転軸にバランスウェイト取り付け用の腕を付けて、錘を取り付けることもできる。錘の重さを調整する、あるいは、錘の位置を変えるなどして、負荷を調整することができる。
室内の気圧が低下して、長片と短片に印加する陰圧の差が設定以上になったときに、過陰圧調整パネルが回転して、開口し、吸気することとなる。
なお、ストッパー43を設けて、回転制限を行っている。
【0012】
過陽圧調整装置3は、陽圧調整用筐体12の内部に設けた昇降型の逃がし弁6と筐体の下部側面に設けた排気用開口13を有している。
昇降型の逃がし弁6は陽圧調整用筐体12の内周面に沿うように設けられた箱体である。
この箱体は、下部側が開口されており、天井部に開閉板7が設けられている。この箱体は、枡を逆さにしたイメージである。
開閉板は吸気側に開口し、排気時には閉鎖され、上方回動はストッパーなどでできない構成である。基本は常閉とするが、必ずしも常閉である必要はなく、開閉抵抗は必要がない。逃がし弁6には調整錘65が設置されている。排気用開口13の下端よりも下方に着座66が設けられていて、逃がし弁6の下端が着座66に設置して、密閉状態となっている。
通常時には昇降型の逃がし弁6の下端は排気用開口13を閉鎖する位置にある。室内の気圧が想定以上に上昇した場合、逃がし弁6は上昇して排気用開口13を開放し、排気されることとなる。
【0013】
この避圧調整ユニット1の作動状態を
図2に示す。
図2(a)は、通常状態であり、
図2(b)は過陰圧状態、
図2(c)は過陽圧状態を示している。
通常状態(a)では、吸気も排気もおこなわれない状態であるので、過陰圧調整パネル41a、41bは閉じており、逃がし弁6の下端は着座66に密着していて、吸排気は行われない。
過陰圧状態(b)では、過陰圧調整パネル41は、バランスウェイト44に抗して下側に回動して開口して、吸気する。その時、逃がし弁6の天井部にある開閉板7も下向きに回動して、通風する。
過陽圧状態(c)では、実内側から押し上げられて逃がし弁6は上昇し、排気用開口13と室内が連通して、排気されることとなる。
【実施例】
【0014】
避圧調整ユニット1の実施例を
図3、4に示す。
平面図と側面図を用いて、通常時(a)、過陰圧時(b)、過陽圧時(c)の状態を示している。
避圧調整ユニット1は、上部に設置した過陰圧調整装置2と下部に設置した過陽圧調整装置3とから構成される。
本実施例では、陰圧調整用筐体11の上部に過陰圧調整パネル41、内部にヘパフィルター51が設けられている。3枚の過陰圧調整パネル41が回転軸42に取り付けられている。回転軸42の一端にバランスウェイト44が取り付けられている。陰圧調整用筐体11の内部にはストッパー43が設けられており、過陰圧調整パネル41が回転して当接する。陰圧調整用筐体11の内部で、過陰圧調整パネル41の下方にはヘパフィルター51が設けられている。通常雰囲気で良ければヘパフィルター51を設ける必要はない。
【0015】
陽圧調整用筐体12には、筐体の側面下部に排気用開口13が設けられ、筐体内部には昇降できる逃がし弁6が設けられている。
逃がし弁6は箱形で周壁と天井で構成され、下方は開口している。天井部には、開閉板7が設けられている。逃がし弁6はリニアブッシュ64が取り付けられ、案内杆63にリニアブッシュ64が挿通して、案内昇降される。逃がし弁6には調整錘65が設けられている。
逃がし弁6は通常では排気用開口13を塞ぐ状態になっている。
【0016】
通常状態(a)では、過陰圧調整パネル41は閉鎖状態であり、バランスウェイト44は下向きになっている。逃がし弁6は下方に位置していて、排気用開口13は閉鎖状態にある。なお、この通常状態は、設置箇所によって異なり、負圧に管理されている部屋、陽圧に管理されている部屋、そして、それぞれの管理気圧によって異なる。また、異常となる気圧変動も異なるので、過陰圧調整パネル用のバランスウェイトと逃がし弁用の調整錘を調整する。
【0017】
過陰圧時(b)では、バランスウェイト44に抗して過陰圧調整パネル41が回転して、開口して吸気状態となる。その時、逃がし弁6の開閉板7も下方に回動して、室内と外部は連通し、室内側に吸気される。吸気によって過陰圧状態が解消されると、バランスウェイト44が勝って、過陰圧調整パネル41は、閉鎖する。開閉板7も閉鎖状態に復帰する。
【0018】
過陽圧時(c)では、過陰圧調整パネル41は閉鎖状態を維持し、逃がし弁6は、調整錘以上の室内側の昇圧を受けて上昇する。上昇に伴い排気用開口13は室内側と連通することとなり、排気される。排気に伴い室内の気圧は下がり、逃がし弁6は下降し、排気用開口13が閉鎖されると過陽圧調整は終了する。
箱形の逃がし弁は、スムーズに昇降する必要があるので、本実施例はリニアブッシュを使用して、傾きなどの障害が発生せずに昇降できる構成としている。昇降案内機構としてこれ以外にも使用できる。
【0019】
図4に過陽圧調整装置の要部を示す。
方形の陽圧調整用筐体12、陽圧調整用筐体12の下部側面に排気用開口13が設けられている。筐体の底板14の中央部には開口17が設けられ、室内側に向いている。開口17の周縁にはパッキン15が設けられている。
底板14から案内稈63が立設されている。陽圧調整用筐体12の中間に枠体18が設けられていて案内稈63が貫通しているとともに、内側にパッキン16が設けられている。枠体18は逃がし弁6が通常位置にあるときに逃がし弁6の天井板62の裏面が当接する高さに設定してあり、パッキン16に接触する。案内稈63の上端は陽圧調整用筐体12に取り付けられているL形支持板19に取り付けられている。
逃がし弁6の天板62は、箱体の周板61よりも大きく、枠体18に設けられているパッキン16に当接する大きさである。また、逃がし弁6の周板61には、リニアブッシュ64が取り付けられ、リニアブッシュの貫通孔には案内稈63が挿通している。逃がし弁6には、自重のほか調整錘65が設けられていて、逃がし弁6の浮き上がり抵抗となる。
【0020】
逃がし弁6は、リニアブッシュ64によって昇降可能に陽圧調整用筐体12に取り付けられており、通常状態と過陰圧状態では逃がし弁6の下端はパッキン15に当接し、天板62の周板61からはみ出した部分はパッキン16に当接して、逃がし弁6と陽圧調整用筐体12の隙間はない状態となっている。したがって、この状態では、通常時にも吸気時にも排気用開口13からエア漏れすることは無い。
過陽圧時には、逃がし弁6は上昇し、排気用開口13と室内が連通して、余分なエアが排出され、室内の気圧が設定許容内に低下すると、逃がし弁が下降して、通常状態となる。なお、過陽圧状態では、過陰圧調整パネル41は閉鎖しており、エア漏れしない。
したがって、この避圧調整ユニット1は、動力を使用することなく、室内の異常な気圧変動に対応することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 避圧調整ユニット
11 陰圧調整用筐体
12 陽圧調整用筐体
13 排気用開口
14 底板
15、16 パッキン
17 開口
18 枠体
19 L形支持板
2 過陰圧調整装置
3 過陽圧調整装置
4 過陰圧調整パネル
41 過陰圧調整パネル
42 回転軸
43 ストッパー
44 バランスウェイト
5 フィルター
51 ヘパフィルター
6 逃がし弁
61 周板
62 天板
63 案内杆
64 リニアブッシュ
65 調整錘
66 着座
7 開閉板
9 天井