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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】制汗剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/26 20060101AFI20220707BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20220707BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220707BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
A61K8/26
A61K8/365
A61K8/73
A61Q15/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018201800
(22)【出願日】2018-10-26
(65)【公開番号】P2020066612
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】岡 愛
(72)【発明者】
【氏名】尾本 百合子
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-070022(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146398(WO,A1)
【文献】特開2017-048140(JP,A)
【文献】特表2002-513745(JP,A)
【文献】特開2018-065799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/26
A61K 8/365
A61K 8/73
A61Q 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)制汗成分と、
(B)疎水化変性アルキルセルロースと、
(C)酒石酸と、
(D)ヒドロキシプロピルセルロースとを含有し、
前記(B)成分の含有量と、前記(C)成分の含有量との質量比(B)/(C)が、0.4~2.0であることを特徴とする制汗剤組成物。
【請求項2】
25℃における粘度が、1,800mPa・s~10,000mPa・sである請求項1に記載の制汗剤組成物。
【請求項3】
前記(A)成分の含有量が、6質量%~15質量%であり、
前記(B)成分の含有量が、0.1質量%~1.5質量%であり、
前記(C)成分の含有量が、0.3質量%~2.0質量%であり、
前記(D)成分の含有量が、0.1質量%~1.5質量%である請求項1から2のいずれかに記載の制汗剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制汗剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クロルヒドロキシアルミニウムなどの制汗効果を有する制汗成分を配合した制汗剤組成物が広く使用されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、長時間に及ぶ発汗により発汗量が増加すると、制汗成分は汗によって溶出し、その制汗効果が低下してしまう。これまでに、様々な化合物と組合せの検討などにより制汗効果の持続性を向上させた制汗剤組成物が提案されている(例えば、特許文献2~3参照)。
【0003】
また、クロルヒドロキシアルミニウムなどの制汗成分には、製造設備や容器などに使用されている金属に対する腐食性が高いという問題もある。この問題は、製剤の粘度上昇に伴って起こりやすくなる。
【0004】
したがって、優れた制汗効果を有し、制汗効果の持続性が良好であり、更に金属に対する腐食抑制効果や塗布性にも優れた制汗剤組成物は未だ提供されておらず、その速やかな開発が強く望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-095906号公報
【文献】特開2013-112642号公報
【文献】特開2017-048140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、優れた制汗効果を有し、制汗効果の持続性が良好であり、更に金属に対する腐食抑制効果や塗布性にも優れた制汗剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため本発明者が鋭意検討を重ねた結果、(A)制汗成分と、(B)疎水化変性アルキルセルロースと、(C)カルボキシ基を2個以上有する有機酸と、(D)ヒドロキシプロピルセルロースとを配合し、かつ、前記(B)成分の含有量と、前記(C)成分の含有量との質量比(B)/(C)が、0.4~2.0となるように配合したところ、優れた制汗効果を有する制汗成分が皮膚上に長時間滞留し、制汗効果を持続させることができ、更に、金属に対する腐食抑制効果が飛躍的に向上し、良好な塗布性も得られることを知見した。
【0008】
本発明は、本発明者による前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> (A)制汗成分と、
(B)疎水化変性アルキルセルロースと、
(C)カルボキシ基を2個以上有する有機酸と、
(D)ヒドロキシプロピルセルロースとを含有し、
前記(B)成分の含有量と、前記(C)成分の含有量との質量比(B)/(C)が、0.4~2.0であることを特徴とする制汗剤組成物である。
<2> 25℃における粘度が、1,800mPa・s~10,000mPa・sである前記<1>に記載の制汗剤組成物である。
<3> 前記(A)成分の含有量が、6質量%~15質量%であり、
前記(B)成分の含有量が、0.1質量%~1.5質量%であり、
前記(C)成分の含有量が、0.3質量%~2.0質量%であり、
前記(D)成分の含有量が、0.1質量%~1.5質量%である前記<1>から<2>のいずれかに記載の制汗剤組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れた制汗効果を有し、制汗効果の持続性が良好であり、更に金属に対する腐食抑制効果や塗布性にも優れた制汗剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(制汗剤組成物)
本発明の制汗剤組成物は、(A)制汗成分と、(B)疎水化変性アルキルセルロースと、(C)カルボキシ基を2個以上有する有機酸と、(D)ヒドロキシプロピルセルロースとを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0011】
<(A)制汗成分>
前記(A)成分の制汗成分は、主に、制汗効果を付与するために含有される。
【0012】
前記(A)成分の制汗成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、酢酸アルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウム、ブロモヒドロキシアルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウム/ジルコニウム、クロルヒドロキシアルミニウム/プロピレングリコール錯体、クロルヒドロキシアルミニウム/ジルコニウム・グリシン錯体、パラフェノールスルホン酸亜鉛、アラントインクロロヒドロキシアルミニウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、制汗効果に優れる点で、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、酢酸アルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウム、ブロモヒドロキシアルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウム/ジルコニウム、クロルヒドロキシアルミニウム/プロピレングリコール錯体、クロルヒドロキシアルミニウム/ジルコニウム・グリシン錯体、パラフェノールスルホン酸亜鉛が好ましく、クロルヒドロキシアルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウム/プロピレングリコール錯体、クロルヒドロキシアルミニウム/ジルコニウム・グリシン錯体がより好ましく、クロルヒドロキシアルミニウムが特に好ましい。
【0013】
前記(A)成分の制汗成分は、市販品を使用することもできる。
前記(A)成分の制汗成分の市販品としては、例えば、クロルヒドロキシアルミニウム水溶液(50%)(商品名:クロルヒドロキシアルミニウム、多木化学株式会社製)、クロルヒドロキシアルミニウム/プロピレングリコール錯体(商品名:REHYDROL II、SUMMIT REHIS社製)、硫酸アルミニウムカリウム(商品名:カリミョウバン、大明化学工業株式会社製)、アルミニウム・ジルコニウム・オクタクロロハイドレックスグリシン(商品名:Reach AZO-956G、SUMMIT REHIS社製)などが挙げられる。
【0014】
前記(A)成分の制汗成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、制汗効果、及び肌のつっぱり感のなさの点から、制汗剤組成物全量に対して、6質量%~15質量%が好ましく、10質量%~15質量%がより好ましい。前記含有量が、6質量%以上であると、制汗効果が良好であり、15質量%以下であると、肌のつっぱり感のなさが良好である。
【0015】
<(B)疎水化変性アルキルセルロース>
前記(B)成分の疎水化変性アルキルセルロースは、主に、制汗効果の持続性を向上させるために含有される。
【0016】
前記(B)成分の疎水化変性アルキルセルロースは、変性アルキルセルロースの疎水化物であり、下記一般式(1)で示される化合物が好ましい。
【化1】
ただし、前記一般式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、及びアルコキシ基のいずれかを示し、前記R、前記R、及び前記Rから選択される少なくとも一つはアルコキシ基を示し、nは100~10,000の整数を示す。
【0017】
前記アルコキシ基は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。これらの中でも、疎水性が高い点から、長鎖アルコキシ基が好ましく、炭素数が12以上の長鎖アルコキシ基がより好ましく、炭素数が12以上22以下の長鎖アルコキシ基が特に好ましい。
【0018】
前記アルコキシ基としては、例えば、ドデシロキシ基(ラウロキシ基)、トリデシロキシ基、テトラデシロキシ基(ミリスチロキシ基)、ペンタデシロキシ基、ヘキサデシロキシ基(セチロキシ基)、ヘプタデシロキシ基、オクタデシロキシ基(ステアロキシ基)、ノナデシロキシ基、エイコシロキシ基、ヘンエイコシロキシ基、ドコシロキシ基などが挙げられる。これらの中でも、制汗効果の持続性の点から、オクタデシロキシ基(ステアロキシ基)が好ましい。
【0019】
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0020】
前記(B)成分の疎水化変性アルキルセルロースの動粘度としては、25℃で、20mm/s~300mm/sが好ましく、使用性の点から、70mm/s~110mm/sがより好ましい。前記動粘度は、ウベローデ型粘度計を用いて測定することができる。
【0021】
前記(B)成分の疎水化変性アルキルセルロースとしては、例えば、疎水化ヒドロキシアルキルセルロースなどが挙げられる。
前記疎水化ヒドロキシアルキルセルロースとしては、例えば、ドデシロキシヒドロキシアルキルセルロース(ラウロキシヒドロキシアルキルセルロース)、トリデシロキシヒドロキシアルキルセルロース、テトラデシロキシヒドロキシアルキルセルロース(ミリスチロキシヒドロキシアルキルセルロース)、ペンタデシロキシヒドロキシアルキルセルロース、ヘキサデシロキシヒドロキシアルキルセルロース(セチロキシヒドロキシアルキルセルロース)、ヘプタデシロキシヒドロキシアルキルセルロース、オクタデシロキシヒドロキシアルキルセルロース(ステアロキシヒドロキシアルキルセルロース)、ノナデシロキシヒドロキシアルキルセルロース、エイコシロキシヒドロキシアルキルセルロース、ヘンエイコシロキシヒドロキシアルキルセルロース、ドコシロキシヒドロキシアルキルセルロース、エチルヒドロキシアルキルセルロースなどが好ましく挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、制汗効果の持続性の点から、オクタデシロキシヒドロキシアルキルセルロース(ステアロキシヒドロキシアルキルセルロース)が好ましい。
【0022】
前記(B)成分の疎水化変性アルキルセルロースは、市販品を使用することもできる。
前記(B)成分の疎水化変性アルキルセルロースの市販品としては、例えば、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名:サンジェロース60M、サンジェロース60L、サンジェロース90M、サンジェロース90L、以上、大同化成工業株式会社製)、エチルヒドロキシエチルセルロース(BERMOCOLL EHM、アクゾノーベル株式会社製)などが挙げられる。
【0023】
前記(B)成分の疎水化変性アルキルセルロースの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、制汗効果の持続性、及び肌のつっぱり感のなさの点から、制汗剤組成物全量に対して、0.1質量%~1.5質量%が好ましく、0.1質量%~0.9質量%がより好ましい。前記含有量が、0.1質量%以上であると、制汗効果の持続性が良好であり、1.5質量%以下であると、肌のつっぱり感のなさが良好である。
【0024】
<(C)カルボキシ基を2個以上有する有機酸>
前記(C)成分のカルボキシ基を2個以上有する有機酸は、主に、制汗効果の持続性向上、及び製造設備や容器などに使用される金属に対する腐食を抑制するために含有される。
【0025】
前記(C)成分のカルボキシ基を2個以上有する有機酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マロン酸、リンゴ酸、イソクエン酸、オキサロ酢酸、EDTA、ペンテト酸などが好ましく挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、腐食抑制、制汗効果の持続性、及び剤の外観に優れる点で、酒石酸、クエン酸がより好ましく、酒石酸が特に好ましい。
前記カルボキシ基を2個以上有する有機酸は、塩の態様であってもよい。前記塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ナトリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム等のアルカリ土類金属塩などが挙げられる。
【0026】
前記(C)成分のカルボキシ基を2個以上有する有機酸は、市販品を使用することもできる。
前記(C)成分のカルボキシ基を2個以上有する有機酸の市販品としては、例えば、酒石酸(製造専用)(磐田化学工業株式会社製)、L-酒石酸(扶桑化学工業株式会社製)、コハク酸(東京化成工業株式会社製)などが挙げられる。
【0027】
前記(C)成分のカルボキシ基を2個以上有する有機酸の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、腐食抑制、制汗効果の持続性、及び剤の外観の点から、制汗剤組成物全量に対して、0.3質量%~2.0質量%が好ましく、0.4質量%~1.0質量%がより好ましい。前記含有量が、0.3質量%以上であると、腐食抑制、及び制汗効果の持続性が良好であり、2.0質量%以下であると、腐食抑制、及び剤の外観が良好である。
【0028】
<質量比(B)/(C)>
前記(B)成分の含有量(質量%)と、前記(C)成分の含有量(質量%)との質量比(B)/(C)は、制汗効果の持続性、及び腐食抑制の点から、0.4~2.0であり、0.4~1.2が好ましい。前記質量比(B)/(C)が、0.4未満であると、制汗効果の持続性が不十分となることがあり、2.0を超えると、腐食抑制が不十分となることがある。
【0029】
<(D)ヒドロキシプロピルセルロース>
前記(D)成分のヒドロキシプロピルセルロースは、主に、塗布性を向上させるために含有される。
【0030】
前記(D)成分のヒドロキシプロピルセルロースは、市販品を使用することもできる。
前記(D)成分の(D)成分のヒドロキシプロピルセルロースの市販品としては、例えば、NISSO HPC-H、NISSO HPC-M、NISSO HPC-L(以上、日本曹達株式会社製)、L-HPC(信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0031】
前記(D)成分のヒドロキシプロピルセルロースの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、制汗剤組成物全量に対して、0.1質量%~1.5質量%が好ましく、1.2質量%~1.5質量%がより好ましい。前記含有量が、0.1質量%以上1.5質量%以下であると、塗布性が良好である。
【0032】
<その他の成分>
前記制汗剤組成物は、前記(A)~(D)の各成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を配合することができる。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、油脂化合物、ワックス化合物、シリコーン化合物、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、界面活性剤、高分子化合物、酸化防止剤、色素、乳化安定剤、pH調整剤、防腐剤、紫外線吸収剤、キレート剤、保湿剤、増粘剤、清涼剤、抗炎症剤、イソプロピルセルロース等の殺菌剤、アミノ酸、ビタミン剤、香料、各種植物抽出エキスなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分は、市販品を使用することもできる。
前記その他の成分の前記制汗剤組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0033】
-pH-
前記制汗剤組成物の25℃におけるpHとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3~4.5が好ましい。前記pHが、3以上4.5以下であると、制汗効果、及び制汗効果の持続性が良好である。
【0034】
-粘度-
前記制汗剤組成物の粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、25℃において、1,800mPa・s~10,000mPa・sが好ましく、3,000mPa・s~5,000mPa・sがより好ましい。前記粘度が、1,800mPa・s以上10,000mPa・s以下であると、塗布性が良好である。
【0035】
前記粘度は、前記制汗剤組成物を25℃に調温し、例えば、BM型粘度計(No.4ローター又はNo.3ローター使用)にセットし、ローターを回転数30rpmで回転させ、ローターの回転開始から1分間後に測定することができる。
【0036】
-剤型-
前記制汗剤組成物の剤型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、固形状タイプ、半固形状タイプ、ジェル状タイプなどが挙げられる。これらの中でも、水分に溶解した状態で肌に塗布されることが効果発現に有効であり、高密着に塗布でき、高い制汗効果が発現できる点から、ジェル状タイプが好ましい。
前記固形状タイプとしては、例えば、スティックタイプ、シートタイプなどが挙げられる。
前記半固形状タイプとしては、例えば、クリームタイプなどが挙げられる。
前記ジェル状タイプとしては、例えば、ジェルタイプなどが挙げられる。
これらの中でも、ジェルタイプが好ましい。
【0037】
前記制汗剤組成物は、ボトル容器に充填し、容器を用いてそのまま塗布するジェル製剤、指先や手を使用して塗布するジェル製剤に用いることができる。
【0038】
-容器-
前記容器としては、例えば、ジェル用ボトル容器などが挙げられる。
前記ジェル用ボトル容器としては、例えば、ブローボトル(材質:EVOH/HDPE(積層)、内容量:約40mL、胴径:約36mm(オーバル)、高さ:約113mm、株式会社吉野工業所製)、中栓(材質:LDPE、外径:約10mm、高さ:約17mm、株式会社吉野工業所製)、キャップ(材質:PP、外径:約34mm(オーバル)、高さ:約28mm、株式会社吉野工業所製)、又は、ボトル(商品名:TOMII、材質:HDPE ナチュラル、内容量:約34mL、胴径:長径約39mm、短径約24mm(オーバル)、高さ:約76mm、竹本容器株式会社製)、中栓(商品名:TO キャップ用ノズルB、材質:PE ナチュラル、外径:約12mm、高さ:約13mm、竹本容器株式会社製)、キャップ(商品名:TO キャップ、材質:AS/PP ホワイト、外径:長径約37mm、短径約23mm(オーバル)、高さ:約22mm、竹本容器株式会社製)などを使用することができる。
【0039】
-製造方法-
前記制汗剤組成物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記(A)~(D)成分、前記その他の成分、及び水(制汗剤組成物の全体が100質量%となるように残量配合)を混合して製造することができる。具体的には、エタノール中に(C)成分を投入して、均一に溶解させた後、(B)成分、水、及びその他の成分を投入し、その後、(A)成分を投入し、均一に溶解後、(D)成分を投入して、均一に溶解及び混合して制汗剤組成物を得ることができる。
前記制汗剤組成物を調製する装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、剪断と全体混合できる複数の撹拌羽根(プロペラ、タービン、ディスパー等)を備えた撹拌装置などが挙げられる。なお、前記(A)~(D)成分、及び前記その他の成分は、制汗剤組成物を作製するにあたり、それぞれ単独で使用してもよく、また、2種以上の成分を含む混合物の状態で使用してもよい。
【0040】
-用途-
本発明の制汗剤組成物は、制汗成分が皮膚上へ長時間滞留し、優れた制汗効果が持続するだけでなく、金属に対する腐食抑制効果にも優れ、また、塗布性も良好であり、更に、肌のつっぱり感のなさ、及び剤の外観も良好であり、例えば、化粧料、医薬品、医薬部外品等に幅広く用いることができ、制汗剤、防臭剤、制汗防臭剤、デオドラント剤により好適であり、足用の制汗剤などに特に好適である。
【実施例
【0041】
以下に、本発明を実施例、比較例、及び処方例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明は下記実施例、及び処方例に制限されるものではない。
【0042】
実施例、比較例、及び処方例に記載の各成分の含有量は質量%で示し、全て純分換算した値である。
また、(B)成分の含有量(質量%)と、(C)成分の含有量(質量%)との質量比(B)/(C)は、小数点以下第2位を四捨五入し、小数点以下第1位まで求め、記載した。
【0043】
(実施例1~13、及び比較例1~8)
下記表1~表5に示す組成、及び含有量の制汗剤組成物を以下の方法で調製した。
エタノール中に(C)成分又は(C)成分の比較成分を投入して、均一に溶解させた後、(B)成分又は(B)成分の比較成分、精製水、及び香料を投入した。その後、(A)成分を投入し、均一に溶解後、(D)成分を投入して、均一に溶解及び混合して制汗剤組成物を得た。得られた制汗剤組成物のpHを日本薬局法に定められている汎用方法で測定したところ、25℃におけるpHは、3~4.5であった。
【0044】
次に、実施例1~13、及び比較例1~8の制汗剤組成物を下記仕様のジェル用容器に40mL充填した。
-ジェル用容器-
・ ブローボトル(材質:EVOH/HDPE(積層)、内容量:約40mL、胴径:約36mm(オーバル)、高さ:約113mm、株式会社吉野工業所製)
・ 中栓(材質:LDPE、外径:約10mm、高さ:約17mm、株式会社吉野工業所製)
・ キャップ(材質:PP、外径:約34mm(オーバル)、高さ:約28mm、株式会社吉野工業所製)
【0045】
作製した実施例1~13、及び比較例1~8の制汗剤組成物について、以下のようにして、「制汗効果」、「制汗効果の持続性」、「塗布性」、「腐食抑制」、「肌のつっぱり感のなさ」、及び「剤の外観」を評価した。結果を表1~表5に示した。
【0046】
<制汗効果>
専門パネラー6名に対し、前腕内側部の1.5cm四方に試料として各制汗剤組成物を30mg塗布し、38℃、相対湿度40%環境下において15分間馴化した。その後、発汗計(商品名:SKN-2000、株式会社西澤電機計器製作所製)を用いて試料塗布部、及び試料未塗布部の発汗量を測定し、下記式から制汗率を求めた。専門パネラー6名の平均値の結果から、下記評価基準に基づいて、「制汗効果」を評価した。
【数1】
[評価基準]
◎ : 制汗効果が高い(制汗率が、50%以上100%以下)。
○ : 制汗効果がやや高い(制汗率が、30%以上50%未満)。
△ : 制汗効果がやや低い(制汗率が、10%以上30%未満)。
× : 制汗効果が低い(制汗率が、0%以上10%未満)。
【0047】
<制汗効果の持続性>
専門パネラー20名に対し、腋窩に各制汗剤組成物を0.3g塗布し、乾燥させた。その後、高温条件下(38℃、40%RH環境下)でエアロバイク(登録商標)による運動を30分間実施した。その後、3時間経った後に再び同温湿度環境下に入り、エアロバイク(登録商標)による運動を30分間実施した後、制汗効果があったか回答し、下記評価基準に基づいて、「制汗効果の持続性」を評価した。
[評価基準]
◎ : 制汗効果の持続性効果が高い(「制汗効果の持続性が良い」と回答した人が、17名~20名)。
○ : 制汗効果の持続性効果がやや高い(「制汗効果の持続性が良い」と回答した人が、11名~16名)。
△ : 制汗効果の持続性効果がやや低い(「制汗効果の持続性が良い」と回答した人が、6名~10名)。
× : 制汗効果の持続性効果が低い(「制汗効果の持続性が良い」と回答した人が、5名以下)。
【0048】
<塗布性>
各制汗剤組成物をガラスバイアル瓶に50g入れ、25℃に調温した。その後、BM型粘度計を用いて、No.4ローター又はNo.3ローターを使用し、30rpmで1分間の条件で各制汗剤組成物の粘度を測定し、下記評価基準に基づいて、「塗布性」を評価した。
[評価基準]
◎ : 塗布性が高い(粘度が3,000mPa・s以上5,000mPa・s未満)。
○ : 塗布性がやや高い(粘度が1,800mPa・s以上3,000mPa・s未満または粘度が5,000mPa・s以上10,000mPa・s未満)。
△ : 塗布性がやや低い(粘度が10,000mPa・s以上)。
× : 塗布性が低い(粘度が1,800mPa・s未満)。
【0049】
<腐食抑制>
SUS304テストピースを紙やすりで研磨処理し、精製水で洗浄した後、乾燥させた。前述の処理を行ったテストピースの2.5cm×1.5cmに各制汗剤組成物を0.1g塗布し、25℃、相対湿度60%環境下で、テストピースを水平に置き、7日間保存した。テストピースの表面状態を観察し、下記評価基準に基づいて、「腐食抑制」効果を評価した。
[評価基準]
◎ : 腐食抑制効果が高い(腐食面積が塗布面積の1%未満)。
○ : 腐食抑制効果がやや高い(腐食面積が塗布面積の1%以上3%未満)。
△ : 腐食抑制効果がやや低い(腐食面積が塗布面積の3%以上5%未満)。
× : 腐食抑制効果が低い(腐食面積が塗布面積の5%以上)。
【0050】
<肌のつっぱり感のなさ>
専門パネラー20名に対し、腋窩に各制汗剤組成物を0.3g塗布し、乾燥させた後、下記評価基準に基づいて、「肌のつっぱり感のなさ」を評価した。
[評価基準]
◎ : 肌のつっぱり感がない(専門パネラー20名中16名以上20名以下が肌のつっぱり感がないと回答)。
○ : 肌のつっぱり感がややない(専門パネラー20名中11名以上15名以下が肌のつっぱり感がないと回答)。
△ : 肌のつっぱり感がややある(専門パネラー20名中6名以上10名以下が肌のつっぱり感がないと回答)。
× : 肌のつっぱり感がある(専門パネラー20名中5名以下が肌のつっぱり感がないと回答)。
【0051】
<剤の外観>
各制汗剤組成物をガラスバイアル瓶に50g入れ、室温(25℃)下で外観を観察し、下記評価基準に基づいて、「剤の外観」を評価した。
[評価基準]
◎ : 剤の外観が良い(透明の液状である)。
○ : 剤の外観がやや良い(半透明の液状である)。
△ : 剤の外観がやや悪い(白濁した液状である)。
× : 剤の外観が悪い(析出物が沈殿した液状である)。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
【表5】
【0057】
(処方例1)
下記表6の組成に従って、上記実施例、及び比較例と同様にして制汗剤組成物を調製し、各評価を行なった。
【表6】
【0058】
前記実施例、比較例、及び処方例で使用した各成分の詳細について、下記表7に示す。
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の制汗剤組成物は、制汗成分が皮膚上へ長時間滞留し、優れた制汗効果が持続するだけでなく、金属に対する腐食抑制効果にも優れ、また、塗布性も良好であり、更に、肌のつっぱり感のなさ、及び剤の外観も良好であり、例えば、化粧料、医薬品、医薬部外品等に幅広く用いることができ、制汗剤、防臭剤、制汗防臭剤、デオドラント剤により好適であり、足用の制汗剤などに特に好適である。