(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】荷物の引寄せ装置及び引寄せ方法
(51)【国際特許分類】
B65G 67/24 20060101AFI20220707BHJP
B66F 9/06 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
B65G67/24
B66F9/06 F
(21)【出願番号】P 2018203655
(22)【出願日】2018-10-30
【審査請求日】2021-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516353364
【氏名又は名称】重車輛工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124316
【氏名又は名称】塩田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】内田 佳親
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 義則
(72)【発明者】
【氏名】岡部 利広
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-167191(JP,A)
【文献】特開平05-124735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 67/24
B66F 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台に積載されている荷物を前記荷台の搬出口寄りに引き寄せるための引寄せ装置であり、
前記荷物を前記荷台上から前記搬出口へ引き寄せる巻取り装置と、前記巻取り装置を支持
し、前記荷物を支持しない支持台とを備え、
前記支持台の、前記巻取り装置と前記荷物との間に前記巻取り装置に巻き取られるワイヤが経由する滑車が接続され、
前記巻取り装置は前記ワイヤの巻き取り時、前記荷物の前記搬出口側の端部が前記搬出口に接近する位置、または前記荷台外へ張り出し、前記支持台上に載らない位置にまで引き寄せ、
前記支持台のいずれかの部分に、前記巻取り装置による前記ワイヤの巻き取り時に前記支持台の移動を阻止するための反力受け部が装着されていることを特徴とする荷物の引寄せ装置。
【請求項2】
前記ワイヤは前記支持台上の、前記荷台の上面より上の位置から前記荷台側へ架設されていることを特徴とする請求項1に記載の荷物の引寄せ装置。
【請求項3】
請求項1、もしくは請求項2に記載の荷物の引寄せ装置を前記荷台のいずれかの縁に隣接させて配置する工程と、
前記滑車を経由させて前記巻取り装置の
前記ワイヤを前記荷物に連結する工程と、
前記巻取り装置の前記ワイヤを巻き取り、前記荷物を前記支持台側へ
、前記荷物の前記搬出口側の端部が前記搬出口に接近する位置、または前記荷台外へ張り出し、前記支持台上に載らない位置にまで引き寄せる工程とを含むことを特徴とする荷物の引寄せ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の荷台に積載されて搬出場所に搬入された荷物を荷台の搬出口寄りに引き寄せるために使用される荷物の引寄せ装置、及びそれを使用した引寄せ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンテナ等の車両の荷台内に積載されて建設現場や倉庫等の搬出場所に搬入された荷物が設置場所にそのまま据え付ければよいよう、予め組み立てられている場合、荷物は一定の寸法に組み立てられ、人力での移動が困難な質量を持つことが多い。
【0003】
この関係で、搬出場所には荷物を荷台から機械的に引き出すためのウィンチ等の引出し装置が設置される(特許文献1、2参照)。搬出場所では荷物は搬入されたときの形状(形態)を維持したまま引き出されるため、荷物の搬出口となる荷台の後方等には基本的に引き出された荷物を一時的に受ける受け台(ステージ)を設置することが必要になる(特許文献1)。荷台から受け台上に引き出された荷物はフォークリフト等の移動手段を用いてストックヤード等、目的の他の場所へ移動させられる(特許文献1の段落0045)。
【0004】
特許文献1の例では荷物を荷台から一旦、受け台上に完全に引き出した後、受け台上からフォークリフトに支持させ、他の場所へ移動させる作業の流れになるため、受け台は全荷物のフォークリフトによる移動が完了するまで、荷台の後方に配置され続けることになる。受け台は荷台から完全に引き出された荷物を仮支持する役目を果たすため、受け台は荷物の全長が完全に載るだけの長さを持つ必要がある。
【0005】
従って荷物の他の場所への移動完了までは荷台の後方に、荷物の全長分の長さを持つ受け台が占有し続けるため、フォークリフトと地上での作業者は受け台の位置を迂回しなければならず、受け台はフォークリフトと作業者の移動可能領域(移動の自由度)を制限する状態を招いている。
【0006】
また荷物を受け台上から他の場所へ移動させるには、荷物を荷台から完全に受け台上に引き出す必要があり、荷物の全長が荷台から張り出すまで荷物を引き出すことになるため、荷物の引き出し作業には時間を要する。その分、フォークリフトの待機(稼働しない)時間が長くなり、フォークリフトの稼働効率が低下し易い。
【0007】
なお、フォークリフトは受け台の荷台側とは反対側の位置で待機させられることがあるため(
図10、段落0045)、荷台の後方には少なくとも荷物の全長分の長さを持つ受け台の全長と、爪を含めたフォークリフトの全長に、フォークリフトが受け台に接近した位置から待機した位置までの距離を加えた長さの空間(敷地)を必要とする。
【0008】
荷台の後方に受け台を設置せずに、フォークリフトの往復動を利用して荷物を荷台から引き出す方法もある(特許文献2)。但し、荷台の前方側(運転席側)にある荷物を引き出すには、荷台の後方から荷物までの距離に相当するフォークリフトの移動距離を荷台の後方に確保する必要があるため、受け台を設置する場合と同等程度の区間を荷台の後方に確保しなければならない。またこの方法は労働安全衛生法での用途外使用に当たる可能性があるため、安全性の面からも疑問がある。
【0009】
この他、荷物を一時的に受ける(載せる)パレットと、荷物を荷台の後方へ引き寄せるウィンチを搭載した荷下ろし台(荷下ろし装置)を荷台の後方に設置し、荷物をパレット上に載せた後にパレットごと、荷物をフォークリフトで支持し、移動させる方法がある(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2010-265061号公報(請求項1、段落0033~0046、
図9、
図10)
【文献】特開2008-127028号公報(段落0067~0071、
図38~
図43)
【文献】特開平5-124735号公報(請求項1、段落0011~0021、
図1、
図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献3では荷下ろし台上に、荷下ろし台から分離可能に載置されたパレット上に荷物を完全に載せて移動させることから、荷下ろし台が荷物の全長分の長さを持つ必要がある点では特許文献1と変わりはない。従って荷物が荷台の長さ方向に長い形状である場合には、特許文献1と同じ問題に直面する。
【0012】
本発明は上記背景より、フォークリフトと地上での作業者の移動可能領域の制限を低減可能な荷物の引寄せ装置及び引寄せ方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の荷物の引寄せ装置は、荷台に積載されている荷物を前記荷台の搬出口寄りに引き寄せるための引寄せ装置であり、
前記荷物を前記荷台上から前記搬出口へ引き寄せる巻取り装置と、前記巻取り装置を支持し、前記荷物を支持しない支持台とを備え、
前記支持台の、前記巻取り装置と前記荷物との間に前記巻取り装置に巻き取られるワイヤが経由する滑車が接続され、
前記巻取り装置が、前記ワイヤの巻き取り時、前記荷物の前記搬出口側の端部が前記搬出口に接近する位置、または前記荷台外へ張り出し、前記支持台上に載らない位置にまで引き寄せ、
前記支持台のいずれかの部分に、前記巻取り装置による前記ワイヤの巻き取り時に前記支持台の移動を阻止するための反力受け部が装着されていることを構成要件とする。
請求項2に記載の荷物の引寄せ装置は、請求項1の引寄せ装置において、前記ワイヤが前記支持台上の、前記荷台の上面より上の位置から前記荷台側へ架設されていることを構成要件とする。
【0014】
支持台2は
図1に示すように荷台10の後方、または幅方向片側等に配置され、引き寄せられるべき荷物12には巻取り装置3のワイヤ4が直接、もしくは間接的に接続される。一端が巻取り装置3に接続されたワイヤ4は支持台2の滑車5を経由し、ワイヤ4の他端が荷物12、もしくは荷物12を梱包した梱包材に直接、または梱包材を支持しているパレット7等の受け材に間接的に接続される。「荷物12にワイヤ4が間接的に接続される」とは、ワイヤ4が後述の張力材41を介して荷物12に接続されるようなことも含む趣旨である。以下ではワイヤ4等が梱包材や受け材に接続される場合を含め、「ワイヤ4(の他端)が荷物12に接続される」と言う。
【0015】
巻取り装置3は、他端が荷物12に接続されたワイヤ4を巻き取ることにより荷物12を荷台10の搬出口11まで移動させる。「搬出口11」は荷台10の、荷物12が搬出される側の出口(開口部)を指す。巻取り装置3は荷物12を、その荷台10の搬出口11側の端部が搬出口11に接近する位置、または荷台10外に面する位置まで移動させ、支持台2上には載せない。支持台2は巻取り装置3を設置し、他端が荷物12に接続されたワイヤ4の巻き取りにより荷物12を搬出口11まで引き寄せる目的で使用される。
【0016】
「引き寄せる」とは、主に荷物12の搬出口11側の端部が搬出口11に接近する位置等に到達するまで、巻取り装置3が荷物12を引き寄せることを言うが、荷物12、またはパレット7の荷重が支持台2に作用しない程度に荷物12が搬出口11から荷物12外へ張り出すまで引き寄せることを含む。
【0017】
搬出口11から荷物12外への荷物12の搬出(引き出し)と、その後の目的の場所であるストックヤード等への移動は例えば異なるフォークリフトが担当するか、同一のフォークリフトが担当する。後者の場合、フォークリフトは搬出時と移動時に独立して使用される。「異なるフォークリフト」とは、
図9に示すように荷物12搬出用の搬出用フォークリフト8と他の場所への移動用の移動用フォークリフト9が異なり、搬出用フォークリフト8が荷物12を引き出した後、移動用フォークリフト9に荷物12を預けるときには一時的に2台のフォークリフト8、9が互いに直交等、交差した状態で荷台10の後方等に配置されることを言う。「搬出時と移動時が独立して使用される」とは、搬出時に使用されたフォークリフト8が荷物12を搬出し、荷物12を他の仮受け台に支持させた後、同一のフォークリフト8が荷物12の移動用に使用されることを意味する。
【0018】
荷物12が搬出口11に接近する位置等にまで巻取り装置3が荷物12を引き寄せ、荷物12が搬出口11から張り出すまで荷物12を引き出さないことで、支持台2は荷物12の全長分の長さを持つ必要がない。支持台2が荷物12の全長分の長さを持つ必要がないことで、支持台2自体の質量は荷物の全長分の長さを持つ場合との対比では大幅に抑えられる。その上で、支持台2が例えば下方に車輪24を持つ場合には、支持台2の移動が人力で自在に行えるため、支持台2を搬出口11位置から不在にすることと、搬出口11位置に戻すことを時間を要さずに、手軽(効率的)に行える利点がある。車輪24を持たない場合には、支持台2は軌道上の走行や滑り等の手段で移動させられる。
【0019】
荷台10からの荷物12の搬出(引き出し)とその後の移動はフォークリフト8が、または搬出用フォークリフト8と移動用フォークリフト9が担当することで、荷物12の搬出をするとき以降は支持台2は荷台10の後方等、搬出口11側に留まる必要がなく、支持台2を不在にすることができるため、荷物12の搬出時、搬出口11には荷物12とフォークリフト8、9が配置されればよい。
【0020】
荷台10から荷物12を搬出口11へ引き寄せた支持台2がフォークリフト8、9による荷物12の移動時に搬出口11から不在になることで、支持台2が搬出口11位置に留まる場合のように支持台2がフォークリフト8、9と地上での作業者の移動可能領域(移動の自由度)を制限することが緩和され、フォークリフト8、9と作業者自身の移動効率が向上する。搬出口11にまで引き寄せられた荷物12のフォークリフト8、9による移動の際には、支持台2を不在にした状態で例えば搬出用フォークリフト8の搬出口11側へ向けた前進による荷物12の搬出口11からの引き出しと、移動用フォークリフト9による荷物12の支持とその場所からの移動の作業が行われる。
【0021】
また支持台2が荷物12を搬出口11まで引き寄せ、搬出口11位置から不在にさせられた後、搬出口11位置にフォークリフト8が配置され、フォークリフト8、9が搬出口11の荷物12を他の場所へ移動させることで、支持台2の荷物引き寄せの役割とフォークリフト8、9の荷物移動の役割が明確に区別される。この結果、支持台2による荷物12の引き寄せ作業と、支持台2を不在にしてフォークリフト8、9による荷物12の移動作業をする上での無駄な待機時間が省略されるため、それぞれの作業効率の向上が図られる。
【0022】
特に荷物12が搬出口11にまで支持台2が荷物12を引き寄せた後に、支持台2が荷台10の後方から不在になることで、支持台2が荷台10の後方に留まる場合より、フォークリフト8による荷物12の搬出口11からの引き出し作業時のフォークリフト8の移動の自由度が増す。結果としてフォークリフト8の搬出口11側へ向けた前進と後退の繰り返しにより搬出口11に近い位置にある荷物12の搬出口11からの引き出し(搬出)作業をすることができるため、フォークリフト8を利用した荷物12の引き出し作業効率も向上する。
【0023】
加えて支持台2(巻取り装置3)が荷物12の全長分を搬出口11から引き出す必要がないことで、荷物12の全長分を搬出口11から引き出す場合との対比では支持台2(巻取り装置3)による荷台10内の荷物12の搬出口11までの引き寄せに要する時間は短縮され、フォークリフト8、9の待機(稼働しない)時間も短縮される。
【0024】
ワイヤ4は巻取り装置3に巻き取られることで、荷台10上の荷物12を支持台2側へ引き寄せるから、ワイヤ4は荷台10の上面より上の位置(レベル)から荷台10側へ架設されることが合理的である。従ってワイヤ4が経由する滑車5の上部(頂部)は荷台10の上面の高さ以上の高さに位置することが適切である。滑車5の上部が荷台10の上面より下方に位置しても、ワイヤ4が荷台10上の荷物12を支持台2側へ引き寄せることは可能であるが、ワイヤ4の張力の水平成分しか荷物12の引き寄せに利用されないため、ワイヤ4に付与すべき張力の効率が低下することによる。滑車5の上部を荷台10の上面の高さ以上の高さに位置させるとすれば、滑車5の支持台2への軸支位置より下方に巻取り装置3を設置し、支持台2に固定することになる。
【0025】
巻取り装置3がワイヤ4を巻き取り、ワイヤ4に張力を作用させているとき、支持台2の巻取り装置3を固定している箇所には張力の反力が作用し、この反力は滑車5を経由したワイヤ4の両側にも作用する。このため、荷物12の質量によっては支持台2は路面や床面から浮き上がろうとし、荷台10から遠ざかる向きに移動しようとすることが想定される。この移動は支持台2の下方に車輪24が接続されている場合に生じ易い。
【0026】
例えば滑車5の上部(頂部)が荷台10の上面より上に位置するように滑車5が支持台2に軸支され、この滑車5の下方(鉛直下方)に巻取り装置3が設置された場合、滑車5と巻取り装置3との間の区間にあるワイヤ4の張力は巻取り装置3を浮き上がらせる(上向きに引き上げる)ように作用する。この力は巻取り装置3を固定している支持台2に作用するため、反力受け部6はこの支持台2を浮き上がらせようとする上向きの力に抵抗可能な状態に、支持台2以外の他の固定物、または定着物から支持台2の反力を受けられる位置に固定される。固定物は支持台2との対比で質量が相対的に大きく、支持台2が設置されている路面等上に実質的に固定されていると言える物体を指し、車両等を含む。定着物は車止め等、路面等中に埋設される等により路面等上に定着されている物体を指す。
【0027】
一方、滑車5の上部(頂部)が荷台10の上面より上に位置するように滑車5が支持台2に軸支され、この滑車5から下方へかけ、支持台2側から荷台10側へ向かってワイヤ4が張架され、その先に巻取り装置3が設置された場合、滑車5と巻取り装置3との間の区間にあるワイヤ4は鉛直方向に対して傾斜する。この場合、ワイヤ4の張力は鉛直成分と水平成分を持ち、巻取り装置3(支持台2)に鉛直方向上向きと、水平方向のフォークリフト8向きに作用するため、張力は巻取り装置3(支持台2)を浮き上がらせながら、荷台10側からフォークリフト8側へ移動させようとする。
【0028】
支持台2に滑車5の上部(頂部)が
図1に示すように荷台10の上面より上の位置(レベル)と、巻取り装置3が設置された位置(レベル)の2箇所(2段)に接続された場合にも、下段側の滑車5と巻取り装置3との間の区間にはワイヤ4の張力が水平方向に作用し、巻取り装置3には支持台2をフォークリフト8側へ引き寄せようとする水平力が作用する。上段側の滑車5と下段側の滑車5との間の区間のワイヤ4の張力は鉛直方向に作用し、下段側の滑車5を経てワイヤ4が接続される巻取り装置3(支持台2)に上向きに作用し、支持台2を浮き上がらせようとする。
【0029】
支持台2(巻取り装置3)がワイヤ4から主に上向きの力を受ける場合、反力受け部6は支持台2が上向きの力を受けても浮き上がりを生じないように支持台2以外の固定物等に係止し得る位置に、支持台2に固定されればよい。具体的には反力受け部6は固定物としての荷台10、もしくは荷台10を支持する車両の一部、またはフォークリフト8に、あるいは上記した定着物に、支持台2が浮き上がろうとするときに反力受け部6が上向きに係止する位置に、支持台2に固定(接合)される。
【0030】
これに対し、支持台2がワイヤ4から上向きの力とフォークリフト8側へ向かう水平力を受ける場合、上記した固定物、または定着物に上向きとフォークリフト8側に同時に係止する位置に、支持台2に接続されれば、ワイヤ4からの二方向の力に対して抵抗し、支持台2は元の位置に留まることができる。
【0031】
但し、上記のように搬出口11付近にある荷物12の、搬出口11からの引き出し(搬出)にはフォークリフト8が使用され、フォークリフト8は支持台2を荷台10との間に挟む位置に停車することから、反力受け部6が支持台2の、フォークリフト8の爪81が差し込まれる位置に装着(固定)されれば、支持台2が浮き上がり等をしようとするときに反力受け部6がフォークリフト8に上向きとフォークリフト8側に同時に係止することができる。この結果、荷台10や車両等に、反力受け部6が係止し得る部分(部位)がない場合にも確実に、少なくとも上向きに係止する状態を得ることができる。
【0032】
「フォークリフト8の爪81が差し込まれる位置」は例えばフォークリフト8の爪81がフォークリフト8の本体(車体)に対して降下しきったときの位置に対応した位置であり、この位置に爪81に係止し得る反力受け部6が装着される。「フォークリフト8の爪81が差し込まれる」のであるから、反力受け部6は主に筒形状に形成される。フォークリフト8の爪81はフォークリフト8が支持台2に対して荷台10の反対側へ後退し、爪81が反力受け部6内に差し込まれた状態から荷台10側へ前進することで、支持台2が浮き上がり等をしようとするときに反力受け部6に下向きに、または下向きと荷台10側に係止し得る。
【0033】
反力受け部6にはフォークリフト8の支持台2側への前進(直進運動)によりフォークリフト8の爪81が反力受け部6内に挿入され、そのまま爪81が支持台2が浮き上がり等をしようとするときに反力受け部6に下向きに係止可能な状態になる。爪81が反力受け部6に下向きに係止することで、巻取り装置3が荷物12を支持台2側へ引き寄せ、支持台2のフォークリフト8寄りの部分が反力を受けて浮き上がろうとするときに、この浮き上がり(上向きの移動)を爪81が拘束し、支持台2の安定性を確保する。
【0034】
爪81は支持台2がフォークリフト8側へ移動しようとするときに反力受け部6に荷台10側へも係止することがあり、その場合には反力受け部6が爪81に、フォークリフト8側に係止するため、ワイヤ4の張力の水平成分、または水平力が支持台2をフォークリフト8側へ移動させようとするときに、反力受け部6(支持台2)はフォークリフト8に係止し、フォークリフト8側へは移動できなくなる。
【0035】
荷物12の引寄せ装置1を用いた荷台10からの荷物12の引寄せは、引寄せ装置1を荷台10のいずれかの縁に隣接させて配置する工程と、滑車5を経由させて巻取り装置3のワイヤ4を荷物12に連結する工程と、巻取り装置3のワイヤ4を巻き取り、荷物12を支持台2側へ、荷物12の搬出口11側の端部が搬出口11に接近する位置、または荷台10外へ張り出し、支持台2上に載らない位置にまで引き寄せる工程とを経て行われる(請求項3)。「荷台のいずれかの縁」は主に荷台10の長さ方向(長辺方向)の後方であるが、幅方向(短辺方向)の側方であることもある。
【0036】
「ワイヤ4の荷物12への連結」はワイヤ4を上記したパレット7を含む荷物12に直接、連結することと、荷物12に直接、連結されたベルト等の張力材41を介して荷物12に間接的に連結することを含む。巻取り装置3がワイヤ4を巻き取るときには、巻き取りに伴う支持台2の移動を拘束するために、支持台2のいずれかの部分に固定されている反力受け部6が上記した荷台10やフォークリフト8等、支持台2以外の固定物や定着物に係止させられる。
【0037】
ワイヤ4の巻き取りによる荷物12の引き寄せ時には、巻取り装置3は荷物12が荷台10の搬出口11に面する、または接近する位置にまで荷物12を移動させる。荷物12の搬出口11への移動後、支持台2は引き寄せた荷物12への役目を終えるため、一旦、荷台10後方の位置から他の場所へ移動させられる。支持台2の他の場所への移動後、支持台2があった位置にフォークリフト8が移動させられ、フォークリフト8が荷物12を長さ方向に引き出す。このフォークリフト8は前記した搬出用フォークリフトになる。荷物12は全長の一部、または全長に相当する分が引き出される。
【0038】
荷物12の引き出し後、前記した移動用フォークリフト9が荷物12に対して荷物12の長さ方向に交差する方向、例えば幅方向に移動(前進)し、搬出用フォークリフト8に代わって荷物12を支持したところで、荷物12を目的の場所へ移動させる。搬出用フォークリフト8が荷物12を引き出した後、一時的に仮受け台に荷物12を預けることができる場合には、移動用フォークリフト9が搬出用フォークリフト8を兼ねることができる。
【発明の効果】
【0039】
荷物を荷台上から搬出口へ引き寄せる巻取り装置と、巻取り装置を支持する支持台とを備え、巻取り装置は荷物が搬出口に接近する位置にまで荷物を引き寄せ、搬出口から張り出すまで荷物を引き出さないため、支持台は荷物の全長分の長さを持つ必要がなく、支持台自体の質量を荷物の全長分の長さを持つ場合より大幅に抑えることができる。また荷台からの荷物の搬出(引き出し)とその後の移動はフォークリフトが担当するため、荷物の搬出時以降、支持台は搬出口側に留まる必要がなく、支持台を不在にすることができる。
【0040】
この結果、支持台が搬出口位置に留まる場合の、支持台がフォークリフトと地上での作業者の移動可能領域(移動の自由度)を制限することが緩和されるため、フォークリフトと作業者自身の移動効率が向上する。また支持台の荷物引き寄せの役割とフォークリフトの荷物移動の役割が明確に区別され、支持台による荷物の引き寄せ作業と、支持台を不在にしてフォークリフトによる荷物の移動作業をする上での無駄な待機時間が省略されるため、それぞれの作業効率も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】巻取り装置が設置された支持台(引寄せ装置)を荷台の後方に隣接させ、支持台の後方に支持台の浮き上がりと移動を拘束するフォークリフトが配置され、フォークリフトの爪が反力受け部内に挿入されたときの様子を示した立面(側面)図である。
【
図4】荷台から
図1に示す支持台の巻取り装置を用いて荷物を荷台の搬出口まで移動させ始めたときの様子を示した立面図である。
【
図5】巻取り装置が荷物を荷台の搬出口まで移動させたときの様子を示した立面図である。
【
図6】移動させた荷物に関して役目を終えた支持台(引寄せ装置)を荷台から他の場所へ移動させているときの様子を示した立面図である。
【
図7】搬出口まで移動している荷物を搬出用フォークリフトが搬出口から引き出し始めたときの様子を示した立面図である。
【
図8】荷物を搬出用フォークリフトが搬出口から引き出している最中の様子を示した立面図である。
【
図9】(a)は搬出用フォークリフトが荷物を搬出口から引き出し、移動用フォークリフトが荷物を支持したときの様子を示した立面図、(b)は(a)の側面図である。
【
図10】(a)は移動用フォークリフトが荷物を他の場所へ移動させるときの様子を示した立面図、(b)は(a)の平面図である。
【
図11】支持台が荷台の搬出口に戻り、次の荷物の引き寄せの準備ができた様子を示した立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1はコンテナ等の荷台10に積載されている荷物12を荷台10上から搬出口11へ引き寄せる巻取り装置3と、巻取り装置3を支持する支持台2とを備え、支持台2の、巻取り装置3と荷物12との間に巻取り装置3に巻き取られるワイヤ4が経由する滑車5が接続され、支持台2のいずれかの部分に、巻取り装置3によるワイヤ4の巻き取り時に支持台2の移動を阻止するための反力受け部6が装着された荷物12の引寄せ装置1の製作例を示す。
【0043】
ワイヤ4はワイヤ4の張力が荷物12の引き寄せに有効に利用されるよう、荷台10の上面より上の位置(レベル)から荷台10側へ架設され、荷物12に、または荷物12を支持している搬送用のパレット7等に接続される。そのために、支持台2の上面は荷台10の上面と同等程度の高さに設定され、支持台2の上面寄りの位置に滑車5が軸支される。支持台2の上面側に滑車5が軸支される関係で、滑車5の下方に巻取り装置3が設置される。
【0044】
支持台2は滑車5を支持する部分と巻取り装置3を支持する部分を必要とするため、支持台2は基本的に巻取り装置3を支持する下部枠21と、滑車5を支持する上部枠22を縦枠23で連結した直方体等、立体的な形状に組み立てられる。下部枠21は水平二方向を向いて配置され、互いに接合される枠材21aからなり、上部枠22も水平二方向を向いて配置され、互いに接合される枠材22aからなる。下部枠21上には巻取り装置3が設置されるため、枠材21aのみでは巻取り装置3を安定させて支持することが難しい場合には、二方向の枠材21aの上に、巻取り装置3が載置される平板が固定される。
【0045】
支持台2(引寄せ装置1)が荷台10上の荷物12を荷台10の搬出口11まで引き寄せた(移動させた)後、その荷物12の搬出口11外への引き出し(張り出し)と他の場所への搬出(移動)は荷台10の搬出口11に対向して配置されるフォークリフト(以下、搬出用フォークリフト)8が担当する。この関係で、荷物12を搬出口11まで移動させた後の支持台2は搬出口11から一時的に不在にさせられるため、支持台2は路面や床面上を走行可能になるよう、例えば下部枠21下方の複数箇所に車輪24が接続される。
【0046】
上部枠22に支持される滑車5からワイヤ4を直接、巻取り装置3に接続することもできるが、図面ではワイヤ4が水平な状態で巻取り装置3に巻かれるよう、上部枠22に支持される上部の滑車5の下方にも下部の滑車5を配置し、支持台2に軸支させている。この関係で、ワイヤ4は支持台2の後方側(荷台10の反対側)を経由して巻取り装置3に接続される。上部の滑車5と下部の滑車5を経由するワイヤ4の張力が無駄なく荷物12に伝達される上では、上部の滑車5と下部の滑車5は実質的に同一鉛直面内に配置され、同一方向を向いた水平軸回りに軸支される。
【0047】
上部と下部の滑車5、5の支持(軸支)方法は問われないが、図面では
図1、
図2に示すように上部枠22のいずれかの部分に上部の支持材25を固定し、この支持材25の下方の、下部枠21の上方位置に下部の支持材25を固定し、各支持材25に上部の滑車5と下部の滑車5を水平軸回りに軸支させている。この場合、上部の支持材25は例えば
図2に示すように上部枠22の並列する枠材22a、22a間に架設される架設材26に固定され、下部の支持材25は隣接する縦枠23、23間に架設される架設材26に固定される。
【0048】
巻取り装置3に接続されたワイヤ4は下部の滑車5と上部の滑車5を経由し、荷物12等に直接、接続されるか、または図示するように荷物12等に接続されたベルト等の張力材41に接続される。ワイヤ4の巻き取りによる荷台10上の荷物12の搬出口11への引き寄せ時には巻取り装置3に、ワイヤ4の、上部の滑車5と下部の滑車5との間の区間に生じる鉛直方向の張力と、下部の滑車5と巻取り装置3との間の区間に生じる水平方向の張力が作用し、巻取り装置3は上方への浮き上がりと荷台10の反対側への水平移動を生じようとする。この二方向の力は巻取り装置3を固定している支持台2に作用する。
【0049】
この二方向の力に対して支持台2を安定させる目的で、支持台2のいずれかの部分に支持台2の移動を阻止するための反力受け部6が装着される。反力受け部6は支持台2の、荷台10、もしくは車両等、または路面に定着されている定着物等に係止する位置に装着(固定)されることもあるが、図面では支持台2を荷台10との間に挟む位置に停車する搬出用フォークリフト8の爪81が差し込まれる位置に反力受け部6を装着している。この場合、反力受け部6は爪81が差し込まれるよう、
図3に示すように筒形状に形成される。
図3では反力受け部6の断面形状を爪81の断面形状に合わせ、角柱状に形成しているが、反力受け部6の断面形状は問われない。
【0050】
支持台2(引寄せ装置1)を浮き上がらせようとする力に対しては、反力受け部6は搬出用フォークリフト8の爪81等には上向きに係止し、支持台2を荷台10の反対側へ移動させようとする力に対しては、反力受け部6は搬出用フォークリフト8の爪81等には搬出用フォークリフト8側へ係止することで、抵抗する。反力受け部6が搬出用フォークリフト8側へ係止する場合、反力受け部6は爪81の搬出用フォークリフト8本体寄りの部分に係止するため、反力受け部6は支持台2の搬出用フォークリフト8寄りの部分に固定される。
【0051】
反力受け部6が搬出用フォークリフト8に二方向に係止する場合、支持台2は
図1に示すように荷台10(車両)と搬出用フォークリフト8との間に挟まれた状態で、荷物12の搬出口11への引き寄せ作業が行われる。以下、
図4~
図11に基づいて荷物12の引き寄せから、搬出口11から引き出した荷物12の他の場所への移動までの作業手順を説明する。荷物12は梱包材等に保護された状態の場合もあるが、荷台10内の移動時の損傷を防止し、搬出後のフォークリフト(以下、移動用フォークリフト)9による移動の便宜より、荷物12は原則的には図示するように梱包された状態で、荷台10上をスライドし、搬出用フォークリフト8の爪81による支持に適したパレット7に載置される。
【0052】
荷台10上の荷物12の搬出口11への引き寄せは
図4に示すように上記した張力材41をパレット7の一部に接続した後、
図5に示すようにワイヤ4を巻取り装置3が巻き取ることにより行われる。荷物12の搬出口11側の端部が搬出口11に面する位置にまで移動したところで、その荷物12に対する支持台2の役目は終えるため、
図6に示すように搬出用フォークリフト8は支持台2の移動を拘束していた場所から後退させられて反力受け部6への係止状態が解除され、支持台2は一旦、搬出口11に隣接する位置以外の別の場所へ移動させられる。このとき、パレット7に接続されていた張力材41は上記の搬出用フォークリフト8による引き出し用に利用可能であるため、基本的には残される。
【0053】
その後、
図7に示すように支持台2を拘束していた搬出用フォークリフト8が搬出口11へ接近させられ、搬出口11付近にある荷物12のパレット7に搬出用フォークリフト8の爪81、または爪81を昇降自在に支持するマスト等が接続される。ここで、搬出用フォークリフト8の爪81等を前記の張力材41とは別の張力材を介してパレット7に接続してもよいが、支持台2による荷物12の引き寄せ時に使用された張力材41は搬出用フォークリフト8による引き出し時にも利用可能であるため、この張力材41に搬出用フォークリフト8の爪81等が接続される。
【0054】
パレット7への爪81等の接続後、搬出用フォークリフト8は
図8に示すように後退し、荷物12の長さ方向の多くの部分が搬出口11から張り出すまで荷物12を引き出す。荷物12は搬出用フォークリフト8による引き出し後には荷台10側の端部が荷台10上に載った状態にあり、荷物12は搬出用フォークリフト8の爪81と荷台10に支持され、搬出用フォークリフト8の爪81と荷台10との間の、荷物12の下方が開放した状態にある。
【0055】
その後、
図9-(a)、(b)に示すように荷物12を引き出した搬出用フォークリフト8とは別の、荷物12の移動用の移動用フォークリフト9が搬出用フォークリフト8とは直交等、交差する方向に移動させられ、移動用フォークリフト9の爪91がパレット7の下方に差し込まれる。このまま移動用フォークリフト9の爪91が上昇することで、パレット7が搬出用フォークリフト8と荷台10から浮き、搬出用フォークリフト8に代わり、移動用フォークリフト9に支持される。
【0056】
移動用フォークリフト9がパレット7を支持した状態からは、
図10-(a)、(b)に示すように移動用フォークリフト9がパレット7(荷物12)を別の場所、例えばストックヤード、または建設現場等に移動させる。
【0057】
その後は
図11に示すように支持台2が荷台10の搬出口11に隣接させられると共に、支持台2の移動が搬出用フォークリフト8に拘束され、荷物12の搬出開始時の
図4の状態に復帰し、次の荷物12の搬出の準備が整えられる。以下、
図5~
図10の手順が繰り返される。
【符号の説明】
【0058】
1……引寄せ装置、
2……支持台、21……下部枠、21a……枠材、22……上部枠、22a……枠材、23……縦枠、24……車輪、25……支持材、26……架設材、
3……巻取り装置、
4……ワイヤ、41……張力材、
5……滑車、
6……反力受け部、
7……パレット、
8……(搬出用)フォークリフト、81……爪、
9……(移動用)フォークリフト、91……爪、
10……荷台、11……搬出口、
12……荷物。