(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】剥離助剤
(51)【国際特許分類】
D21H 27/00 20060101AFI20220707BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
D21H27/00 F
C09K3/00 R
(21)【出願番号】P 2018527896
(86)(22)【出願日】2016-11-29
(86)【国際出願番号】 US2016063934
(87)【国際公開番号】W WO2017095783
(87)【国際公開日】2017-06-08
【審査請求日】2019-11-12
(31)【優先権主張番号】201510855299.3
(32)【優先日】2015-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515050220
【氏名又は名称】エコラブ ユーエスエイ インク
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウー ジア
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ ユリン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン シャオ
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-234495(JP,A)
【文献】特開平11-012981(JP,A)
【文献】特開昭57-176298(JP,A)
【文献】特開2008-033139(JP,A)
【文献】特開2006-307363(JP,A)
【文献】特開平06-049796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 27/00
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの無水コハク酸誘導体またはその塩を含む活性成分を含む、ペーパーウェブのクレープ加工プロセスで使用される剥離助剤であって、前記無水コハク酸誘導体は、構造式IまたはIIで表される化合物であり、
【化1】
式中、Rは、8~25個の炭素原子を有するアルキル部分またはアルケニル部分であり、
前記剥離助剤は、前記少なくとも1つの無水コハク酸誘導体、水溶性または水分散性界面活性剤、及び水を含む安定した水性組成物であり、
前記界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルコキシル化アルコール、またはそれらの組み合わせであり、
前記無水コハク酸誘導体と前記界面活性剤との全比率が1重量%~99重量%であり、水の比率が1重量%~99重量%であり、
前記少なくとも1つの無水コハク酸誘導体の前記界面活性剤に対する重量比は、1:0.05~1:20である、ペーパーウェブのクレープ加工プロセスで使用される剥離助剤。
【請求項2】
Rが、10~22個の炭素原子を有するアルキル部分またはアルケニル部分である、請求項1に記載のペーパーウェブのクレープ加工プロセスで使用される剥離助剤。
【請求項3】
Rが、15~20個の炭素原子を有するアルキル部分またはアルケニル部分である、請求項1に記載のペーパーウェブのクレープ加工プロセスで使用される剥離助剤。
【請求項4】
前記無水コハク酸誘導体
またはその塩は、式IまたはIIで表される化合物によって形成された一塩または二塩、及び一価または二価陽イオンから選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載のペーパーウェブのクレープ加工プロセスで使用される剥離助剤。
【請求項5】
前記無水コハク酸誘導体
またはその塩は、二塩である、請求項4に記載のペーパーウェブのクレープ加工プロセスで使用される剥離助剤。
【請求項6】
前記一価または二価陽イオンは、Na
+、K
+、NH
4
+、Mg
2+、及びCa
2+から選択される、請求項4に記載のペーパーウェブのクレープ加工プロセスで使用される剥離助剤。
【請求項7】
前記一価または二価陽イオンは、Na
+、K
+、及びNH
4
+から選択される、請求項6に記載のペーパーウェブのクレープ加工プロセスで使用される剥離助剤。
【請求項8】
前記無水コハク酸誘導体
またはその塩は、ラウリルコハク酸もしくは無水コハク酸、ペンタデシルコハク酸もしくは無水コハク酸、ヘキサデシルコハク酸もしくは無水コハク酸、ヘキサデセニルコハク酸もしくは無水コハク酸、オクタデシルコハク酸もしくは無水コハク酸、オクタデセニルコハク酸もしくは無水コハク酸、ヘキサデシルコハク酸二カリウムもしくは二ナトリウム、オクタデシルコハク酸二カリウムもしくは二ナトリウム、ヘキサデセニルコハク酸二カリウムもしくは二ナトリウム、オクタデセニルコハク酸二カリウムもしくは二ナトリウム、またはそれらの組み合わせである、請求項1~4のいずれか1項に記載のペーパーウェブのクレープ加工プロセスで使用される剥離助剤。
【請求項9】
前記剥離助剤は、安定した水性乳剤、安定した水溶液、または安定した濃縮物である、請求項1~8のいずれか1項に記載のペーパーウェブのクレープ加工プロセスで使用される剥離助剤。
【請求項10】
前記剥離助剤は、脂肪酸、レシチン、アルコキシル化アルキルフェノール、または(ポリ)C
5~C
20アルファ-オレフィンを更に含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のペーパーウェブのクレープ加工プロセスで使用される剥離助剤。
【請求項11】
前記剥離助剤は、アルコキシル化脂肪酸を更に含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のペーパーウェブのクレープ加工プロセスで使用される剥離助剤。
【請求項12】
前記少なくとも1つの無水コハク酸誘導体
またはその塩の前記界面活性剤に対する重量比は、1:0.5~1:10である、請求項1~11のいずれか1項に記載のペーパーウェブのクレープ加工プロセスで使用される剥離助剤。
【請求項13】
前記少なくとも1つの無水コハク酸誘導体
またはその塩の前記界面活性剤に対する重量比は、1:0.5~1:5である、請求項1~11のいずれか1項に記載のペーパーウェブのクレープ加工プロセスで使用される剥離助剤。
【請求項14】
前記剥離助剤は、前記少なくとも1つの無水コハク酸誘導体
またはその塩、水溶性または水分散性界面活性剤、水、及びpH調節剤からなる、請求項1に記載のペーパーウェブのクレープ加工プロセスで使用される剥離助剤。
【請求項15】
ペーパーウェブをクレープ加工する方法であって、
a)請求項1~14のいずれか1項に記載の剥離助剤を、回転式クレープ加工シリンダーに塗布することと、
b)前記ペーパーウェブの前記クレープ加工シリンダーへの効果的な接着のために、前記ペーパーウェブを前記クレープ加工シリンダーに押圧することと、
c)ドクターブレードを用いて前記ペーパーウェブを前記クレープ加工シリンダーから取り除くことと、を含む、方法。
【請求項16】
製紙プロセスでペーパーウェブをクレープ加工するための、請求項1~14のいずれか1項に記載の剥離助剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離助剤に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2015年11月30日出願の同時係属中国特許出願第2015/10855299.3号の国際特許出願であり、その開示は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0003】
ティッシュペーパー、トイレットペーパー、または紙タオルのようないくつかの紙製品の製造等の製紙プロセスで、ペーパーウェブは、柔軟さ、容量、強度、及び吸収性等の望ましい特徴を与えるために、従来、クレープ加工プロセスに供される。クレープ加工プロセスは、ペーパーウェブを、ヤンキードライヤーとして知られている装置等の回転式クレープ加工装置に接着させることと、クレープ加工することと、その後にドクターブレードを用いて接着したペーパーウェブをドライヤーから取り除くこととを含む。ペーパーウェブのドライヤーからの均一な剥離を容易にするために、剥離助剤がシリンダー上に噴霧される。この剥離助剤は、ペーパーウェブの均一な剥離に役立ち、また、ブレードを円滑にし、過剰摩耗から保護する。
【0004】
剥離助剤、特に、油性剥離助剤は、製紙プロセスで広く使用されている。伝統的な油性剥離助剤は、主成分として炭化水素油または天然油を含む。炭化水素油は、通常、様々な純度で石油蒸留プロセスから得られるが、天然油は、大豆油、コーン油、オリーブ油等の植物油から得られる。適切な界面活性剤パッケージを有する異なる等級/源油を選択することによって、異なる剥離性能を有する油性剥離助剤が、調製され得る。
【0005】
しかしながら、近年、世界的な原油の継続的な価格上昇により、油性剥離助剤のコストが大幅に上昇している。これは、油性剥離助剤の開発に対する最大の課題のうちの1つである。石油系油の疎水性のため、最終ティッシュ及び/またはタオル紙製品中の油は、吸収性の低下を引き起こし得、すなわち、最終紙製品の水または水溶液を吸収する能力が低下し得る。既存の油性剥離助剤の処方最適化に対して、多大な努力がなされている。一方では、より適切な原材料の必須条件が、既存の製品中の油及び界面活性剤等の主成分について評価されている。他方では、総コストを更に削減するために既存の処方の微調整が試されている。
【0006】
CN101184799Aは、1つ以上の(ポリ)C5~C20アルファ-オレフィン及び1つ以上の界面活性剤を含む剥離助剤を開示する。剥離製剤中の合成潤滑油PAOの使用は、有効性及び効率性の観点から、製紙適用を改善し、ティッシュの通気乾燥(TAD)生地からの剥離を提供した。界面活性剤は、脂肪酸、アルコキシル化アルコール、アルコキシル化脂肪酸、スクロース及びグルコースエステル、ならびにそれらの誘導体、及びポリエチレングリコール、ならびにそれらの混合物から選択された。
【0007】
加えて、いくつかの非油性剥離助剤製品は、製紙プロセスにおける剥離助剤の組成物を変化させることによって開発されている。例えば、WO01/74581A1は、ペーパーウェブをヤンキードライヤーから剥離するためのクレープ加工プロセスで有用な非油性剥離助剤を開示し、そこで、剥離助剤は、次の式、R-(OC3H6)y(OC2H4)zOHによって表される非油性化学化合物であった。非油性化学化合物は、例えば、アルコキシル化アルキルフェノール、アルコキシル化脂肪酸、アルコキシル化アルコール等を含んだ。加えて、剥離助剤は、任意に、0~約20重量%の1つ以上の乳化界面活性剤を含み得る。
【0008】
CN1176655Aは、アルコール、脂肪酸または油、レシチン、水溶性または水分散性界面活性剤、及び水からなる安定した乳剤を含むレシチン系水性剥離助剤組成物を開示する。この組成物中のレシチンの溶媒として脂肪酸、油等を使用することによって、レシチンの良好な分散が得られた。
【0009】
更に、WO2011/058086は、C16~C20脂肪酸またはその塩を含む剥離剤を、加熱されたシリンダーの表面に塗布することを含む製紙プロセスを開示する。剥離剤が、約2~約50%のC16~C20脂肪酸またはその塩、約5~約50%のアルコール、約0~約75%の油、約1~約5%の界面活性剤、及び約1~約50%の水を含むことがこの参考文献で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2011/058086号
【文献】米国特許出願公開第2006/0272787号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/0102130号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、少なくとも1つの無水コハク酸誘導体が剥離助剤の製剤に使用される場合、結果として得られる剥離助剤は、低コストを有するだけでなく、伝統的な剥離助剤よりも良好な剥離性能ももたらすことが見出された。本発明の剥離助剤組成物は、ペーパーウェブのクレープ加工適用における剥離助剤としての使用、かつペーパーウェブをその製造で使用される生地から剥離するための生地剥離剤としての使用に特に適切である。
【0012】
したがって、本発明の第1の態様は、少なくとも1つの無水コハク酸誘導体を含有する活性成分を含む、ペーパーウェブのクレープ加工プロセスで使用される剥離助剤を提供する。
【0013】
本発明の第2の態様は、新規のペーパーウェブクレープ加工法を提供する。
【0014】
本発明の第3の態様は、製紙プロセスでペーパーウェブをクレープ加工するための無水コハク酸誘導体の使用に関する。
【0015】
本発明の他の態様及び修正ならびに他の利点は、本明細書の以下の詳細な説明及び付属の特許請求の範囲から明らかになり得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】比較例1に従う同じ試験条件下での様々な剥離助剤の引き剥し効果の比較である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
用語「ティッシュペーパーウェブ、ペーパーウェブ、ウェブ、ペーパーシート、シート、及び紙製品」は全て、水性製紙用完成紙料を形成するステップと、この完成紙料を長網ワイヤ等の有孔表面上に堆積させるステップと、重力または真空補助排水のいずれかによって水を完成紙料から除去するステップと、を含むプロセスによって作製された紙を指す。プロセスの最終ステップでは、望ましいテクスチャ特徴が、TAD生地もしくはクレープ加工、またはそれらの組み合わせによって紙に与えられ、シートが乾燥させられる。本発明で使用され得る抄紙機及び製紙プロセスの例が、例えば、US5,944,954及びWO2013/070542に開示されており、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。ある実施形態では、本発明は、繊維のスラリーを作製することと、ティッシュウェブを長網ワイヤ上に形成することと、ティッシュウェブを押圧区分で脱水することと、可撓性ブレード(例えば、クレープ加工またはドクターブレード)を使用してティッシュウェブをクレープ加工シリンダー(例えば、ヤンキードライヤー)に対してクレープ加工することと、を含むティッシュ作製プロセスで使用される。ある実施形態では、本発明は、単層もしくは多層ティッシュまたは紙タオルを調製するために使用され得る。しかしながら、本発明の剥離助剤が、他の既知の製紙プロセスで、かつティッシュ及び/またはタオル紙製品を製造するための他の既知の抄紙機で使用され得ることを理解されたい。
【0018】
ティッシュは、化学及び機械型の木材パルプ、植物繊維、再生繊維、及びポリプロピレン等の合成繊維を含む様々な種類の天然及び合成繊維から成り得る。ティッシュはまた、カオリン粘土、二酸化チタン、及び/または炭酸カルシウム等の微粒子フィラーから成り得る。
【0019】
本明細書全体を通して、用語「組成物」は、剥離助剤、濃縮物、溶液、乳剤等を特に含む、本明細書に列挙される少なくとも1つの成分または原料から成る。
【0020】
本明細書における全てのパーセンテージ、割合、及び比率は、特別の定めのない限り、重量による。
【0021】
本発明による剥離助剤、及びその乳剤または溶液は、その主な有効成分として活性成分を含む。本明細書において「活性成分」は、剥離性能において決定的な役割を果たす成分を指す。先行技術、例えば、CN1176655A、WO0174581、CN101184799、US6562194、US8071667、及びJP2005/076141において、活性成分に加えて、剥離助剤は、概して、安定した乳剤または分散を形成するように活性成分を援助するために界面活性剤を含むことも述べられる。そのような界面活性剤は、活性成分とは異なり、概して、例えば、脂肪酸、アルコキシル化脂肪酸、アルコキシル化アルコール、アルコキシル化アルキルフェノール、油及び脂肪酸の硫酸塩及びスルホン酸塩、スクロース及びグルコースエステル、ならびに誘導体、及び脂肪族エステル、エトキシ化脂肪族エステル、ならびにグリセロールエステル等である。原理上、これらの参考文献で述べられる界面活性剤及び特定の例はまた、本発明に適用可能であり、したがって、これらの参考文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0022】
本発明の第1の態様は、少なくとも1つの無水コハク酸誘導体を含有する活性成分を含む、ペーパーウェブのクレープ加工プロセスで使用される剥離助剤を提供する。
【0023】
本発明による無水コハク酸誘導体は、構造式IまたはIIを有する無水コハク酸、及びその対応する塩からなる群から選択され、
【化1】
式中、Rは、8~25個の炭素原子を有するアルキル部分またはアルケニル部分である。ある実施形態では、Rは、10~22個の炭素原子を有するアルキル部分またはアルケニル部分である。ある実施形態では、Rは、15~20個の炭素原子を有するアルキル部分またはアルケニル部分である。ある実施形態では、Rは、アルキル部分である。ある実施形態では、無水コハク酸誘導体は、コハク酸、無水コハク酸、またはコハク酸塩である。
【0024】
ある実施形態では、上述の通りに無水コハク酸によって形成された一塩または二塩、及び一価または二価陽イオンを使用することが可能である。適切な一価または二価陽イオンの例は、Na+、K+、NH4
+、Mg2+、Ca2+である。ある実施形態では、一価または二価陽イオンは、Na+、K+、及びNH4
+である。ある実施形態では、無水コハク酸誘導体は、コハク酸塩である。ある実施形態では、無水コハク酸誘導体は、Na+、K+、及びNH4
+等の一価陽イオンを有する式IIの無水コハク酸誘導体によって形成された一塩または二塩である。ある実施形態では、無水コハク酸誘導体は、二塩である。
【0025】
ある実施形態では、無水コハク酸誘導体またはその塩は、水溶性である。ある実施形態では、少なくとも約1,000mgの無水コハク酸誘導体またはその塩は、25℃で約1リットルの水に溶解する。
【0026】
ある実施形態では、二塩を無水コハク酸誘導体から形成する間に、2つのカルボキシル基は、同じもしくは異なる一価陽イオンと、または二価陽イオンと結合し得る。ある実施形態では、一塩を無水コハク酸誘導体から形成する間に、他の遊離カルボキシル基は、アルキル等の適切な炭化水素基でエステル結合を更に形成することができる。ある実施形態では、エステル結合を有する無水コハク酸は、水溶性である。ある実施形態では、エステル結合を有する少なくとも約1,000mgの無水コハク酸誘導体は、25℃で約1リットルの水に溶解する。
【0027】
無水コハク酸誘導体の非限定的な例は、ラウリルコハク酸または無水コハク酸、ペンタデシルコハク酸または無水コハク酸、ヘキサデシルコハク酸または無水コハク酸、ヘキサデセニルコハク酸または無水コハク酸、オクタデシルコハク酸または無水コハク酸、オクタデセニルコハク酸または無水コハク酸、ヘキサデシルコハク酸二カリウムもしくは二ナトリウム、オクタデシルコハク酸二カリウムもしくは二ナトリウム、ヘキサデセニルコハク酸二カリウムもしくは二ナトリウム、及びオクタデセニルコハク酸二カリウムもしくは二ナトリウムである。
【0028】
ある実施形態では、本発明による無水コハク酸誘導体は、単独で、または剥離助剤中の1つ以上の活性成分と組み合わせて使用される。
【0029】
本発明の無水コハク酸誘導体は、当業者に知られている方法または技術に基づいて調製され得る。例えば、「Hydrogenation of maleic anhydride to succinic anhydride over CeO2 modified Ni/γ-Al2O3 catalysts」、INDUSTRIAL CATALYSIS、Vol.22 No.9、Sept.2014を参照されたい。
【0030】
ある実施形態では、剥離助剤は、前述の少なくとも1つの無水コハク酸誘導体を含有する活性成分、水溶性または水分散性界面活性剤、及び水を含む安定した水性組成物である。ある実施形態では、水性組成物は、前述の少なくとも1つの無水コハク酸誘導体を含有する活性成分、水溶性または水分散性界面活性剤、及び水からなる。水性組成物は、安定した水性乳剤、または安定した水溶液であり得る。安定した水溶液の場合、組成物は、少なくとも1つの無水コハク酸誘導体を含有する活性成分、水溶性または水分散性界面活性剤、及び水に加えて、適切な量のNaOH等のpH調節剤を含むことができる。
【0031】
別の実施形態では、必要に応じて、剥離助剤はまた、少なくとも1つの無水コハク酸誘導体を含有する前述の活性成分、及び水溶性または水分散性界面活性剤を含む安定した濃縮組成物であり得る。ある実施形態では、安定した濃縮組成物は、少なくとも1つの無水コハク酸誘導体を含有する前述の活性成分、及び水溶性または水分散性界面活性剤からなる。
【0032】
したがって、ある実施形態では、剥離助剤は、該少なくとも1つの無水コハク酸誘導体、水溶性または水分散性界面活性剤、及び水、ならびに任意にpH調節剤からなり得る。
【0033】
ある実施形態では、本発明による剥離助剤組成物はまた、例えば、ホワイトオイル、脂肪酸、レシチン、アルコキシル化アルキルフェノール、アルコキシル化脂肪酸、及び(ポリ)C5~C20アルファ-オレフィンを含む、他の活性成分を含み得る。これらの他の活性成分は、それらが生成物の均一性及び安定性に悪影響を与えないという条件で、任意に添加されることが評価されるべきである。その結果として、無水コハク酸誘導体の比率は、全ての活性成分の総重量に基づいて、1~99重量%、1~95重量%、10~95重量%、20~95重量%、35~95重量%、50~95重量%、または60~95重量%等の約1~100重量%の範囲にあり得る。
【0034】
ある実施形態では、界面活性剤は、非イオン性、陽イオン性、陰イオン性、両性、または両性イオン界面活性剤であり得る、水溶性または水分散性界面活性剤である。界面活性剤の非限定的な例としては、例えば、モノオレイン酸ソルビタンまたはモノラウリン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸エステル及びラウリン酸エステル等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルコキシル化アルコール、他の脂肪酸、アルコキシル化脂肪酸、アルコキシル化アルキルフェノール、油及び脂肪酸の硫酸塩及びスルホン酸塩、スクロース及びグルコースエステル、ならびにそれらの誘導体、及び脂肪族エステル、エトキシ化脂肪族エステル、ならびにグリセロールエステル等が挙げられる。ある実施形態では、水溶性または水分散性界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルコキシル化アルコール等である。ある実施形態では、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、Tween20、Tween40、Tween60、及びTween80であり得るが、ソルビタン脂肪酸エステルは、Span20、Span40、Span60、及びSpan80であり得る。ある実施形態では、約3~15個のEO基を有するアルコキシル化アルコールまたはエトキシ化アルコールが使用される。ある実施形態では、脂肪アルコールポリオキシエチレンエーテルが使用される。
【0035】
乳剤または溶液組成物を含む、本発明の水性剥離助剤組成物に関して、少なくとも1つの無水コハク酸誘導体と界面活性剤との全比率は、1重量%~99重量%の範囲内に設定され得、水成分は、1重量%~99重量%の量で添加され得る。ある実施形態では、水成分は、50重量%~90重量%の量で添加され得る。ある実施形態では、剥離助剤濃縮組成物は、1重量%未満の水を含む。ある実施形態では、剥離助剤濃縮組成物は、実質的に水を有さない。加えて、ある実施形態では、水性剥離助剤組成物及び剥離助剤濃縮組成物中における、該少なくとも1つの無水コハク酸誘導体の界面活性剤に対する重量比は、1:(0.05~20)である。ある実施形態では、該少なくとも1つの無水コハク酸誘導体の界面活性剤に対する重量比は、1:(0.5~10)である。ある実施形態では、該少なくとも1つの無水コハク酸誘導体の界面活性剤に対する重量比は、1:(0.5~5)である。
【0036】
水性剥離助剤組成物は、無水コハク酸誘導体を含有する活性成分と界面活性剤系との予め混合された混合物、例えば、上述のような剥離助剤濃縮組成物に、水を比例的に添加することによって調製される。ある範囲の粒子サイズを有する乳剤は、水成分と界面活性剤との割合を調整することによって水性剥離助剤製剤から調製され得た。
【0037】
概して、水性組成物は、加熱版上に高質の塗膜をもたらす。
【0038】
本発明の第2の態様は、ペーパーウェブをクレープ加工する新規の方法を提供し、それは、
a)上述のような少なくとも1つの無水コハク酸誘導体を含有する活性成分を含む剥離助剤組成物を、回転式クレープ加工シリンダーに塗布するステップと、
b)ペーパーウェブのクレープ加工シリンダーへの効果的な接着のために、ペーパーウェブをクレープ加工シリンダーに押圧するステップと、
c)ドクターブレードを用いてペーパーウェブをクレープ加工シリンダーから取り除くステップと、を含む。
【0039】
ある実施形態では、無水コハク酸誘導体を有さない同一の方法と比較して、無水コハク酸誘導体は、接着の増加を提供する。
【0040】
本発明による、ペーパーウェブをクレープ加工する方法では、剥離助剤は、通常、従来の湿式加圧機内のクレープ加工シリンダーに塗布され得る。
【0041】
ある実施形態では、約1~40mg/m2の本明細書で述べられる剥離助剤がクレープ加工シリンダーに塗布される。本明細書で使用される場合、mg/m2は、無水コハク酸誘導体/界面活性剤の混合物が塗布されるシリンダー表面の表面積に関して、ミリグラムで測定された無水コハク酸誘導体/界面活性剤の混合物の量を指す。
【0042】
剥離助剤組成物は、製剤のシリンダーへの均一な塗布を達成すために、任意の適切な手段、例えば、噴霧によってクレープ加工シリンダーに塗布され得る。ある実施形態では、剥離助剤は、1つ以上の噴霧ブームを使用してクレープ加工シリンダー(例えば、ヤンキードライヤー)上に噴霧される。ある実施形態では、剥離助剤は、半乾きのティッシュウェブの移動前に、水溶液または混合物としてヤンキードライヤー上に噴霧される。
【0043】
実施形態では、同様に水性形態である接着剤が剥離助剤と共にヤンキードライヤーに塗布される。
【0044】
ある実施形態では剥離助剤は、水溶性陽イオン性ポリアミド-エピハロヒドリン(PAE)樹脂を含む。PAE樹脂は、エピハロヒドリンと、第二級アミン基を含有する長鎖ポリアミドとの反応生成物を含む。PAE樹脂の他の様相及びいくつかの他の適した利用可能なクレープ加工接着剤に関して、CN101184799Aの明細書が参照され得、例えば、7ページ1行目~8ページ10行目、及びそこに引用される参考文献を参照されたい。ここで、CN101184799Aは、参照によりその全体が本出願に組み込まれる。
【0045】
本発明の剥離助剤組成物はまた、ティッシュまたはタオルの柔軟性を改善するために本技術分野で使用される機能性添加物と組み合わせて使用され得る。代表的な機能性添加物としては、引用されるCN101184799Aの明細書の8ページの第3段落に説明されるものが挙げられる。
【0046】
本発明の第3の態様は、製紙プロセスでペーパーウェブをクレープ加工するための無水コハク酸誘導体の使用に関する。
【0047】
ある実施形態では、無水コハク酸誘導体を含む剥離助剤は、ヤンキードライヤーの表面に塗布(例えば、噴霧)される。ある実施形態では、クレープ加工プロセスは、少なくとも1つの無水コハク酸誘導体を含む活性成分を含む剥離助剤をヤンキードライヤーに塗布することと、ペーパーウェブをヤンキードライヤーに押圧することと、クレープ加工ブレードを用いてペーパーウェブをヤンキードライヤーから取り除くことと、を含む。ある実施形態では、無水コハク酸誘導体は、ティッシュペーパーまたは紙タオルを形成するためのプロセスで使用される。
【0048】
以下の実施例は、本発明を更に例証するが、言うまでもなく、決してその範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0049】
以下の実施例は、例証目的のために提示され、本発明の範囲を限定することを目的としない。
【0050】
実施例で使用した試薬
A:18個の炭素原子を有するアルキル鎖を有するアルキル無水コハク酸、オクタデシル無水コハク酸
B:18個の炭素原子を有するアルキル鎖を有するアルキルコハク酸、オクタデシルコハク酸
C:16個の炭素原子を有するアルキル鎖を有するアルキルコハク酸二ナトリウム、ヘキサデシルコハク酸二ナトリウム
D:ホワイトオイル
E:トールオイル脂肪酸
F:水
G:Tween-80、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン
H:脂肪アルコールポリオキシエチレンエーテル、AEO-5
I:48%のNaOH溶液
【0051】
引き剥し力試験方法
剥離助剤とクレープ加工接着剤を既定の比率で混合する。結果として得られた混合物(3~5mL)を取り、10cm×20cmの表面が磨かれた鉄板上に堆積させ、その後、膜形成のために100℃に加熱する。幅5cmの綿布切れを水に浸し、その後、鉄板上に広げ、接着圧縮する。105℃のオーブン内で15分間保持した後、布切れを鉄板から180°の角度で引き剥すのに必要な力を、引張試験機を使用して試験した。この力が低下するほど、対応する剥離助剤の引き剥し効果が高い。
【0052】
【0053】
約5gのA、約5gのE、及び約10gのGを秤量し、容器に添加した。その後、混合物を、均一な液相が形成されるまで、300RPMの速度で撹拌した。撹拌下で、約80gのFを混合物にゆっくりと添加し、均一で安定した淡黄色の乳剤を形成した。
【0054】
【0055】
約3gのB、約2gのC、及び約15gのH、ならびに約80gのFを混合し、完全に混合するまで撹拌し、その後、それに少量のIを添加して、混合物のpHを7.5~9.0に調整した。しばらく撹拌した後、透明の淡黄色の溶液が形成された。
【0056】
実施例3
濃縮物の形態での剥離助剤組成物
【表3】
【0057】
約40gのB、約5gのD、5gのE、及び50gのGを秤量し、容器に添加した。その後、混合物を、均一な液相が形成されるまで、300RPMの速度で撹拌した。
【0058】
比較例1
様々な剥離助剤
剥離助剤Nalco64575:市販の従来の油性剥離助剤
【0059】
20%の乳剤型剥離助剤(X1)を、実施例1と同様に調製し、AのGに対する割合は、約1:2(5%:10%)であった。
【0060】
20%の溶液型剥離助剤(X2)を実施例2と同様に調製し、(B+C)のHに対する割合は、約1:3(5%:15%)であった。
【0061】
濃縮物型剥離助剤(X3)を、実施例3と同様に調製し、Bの(E+G)に対する割合は、約1:1.4(40%:55%)であり、塗布前に、20%の濃度まで水で希釈した。
【0062】
クレープ加工接着剤
Nalco64094:PAE接着剤
クレープ加工接着剤及び上述の4つの剥離助剤を、98%の接着剤と2%の各剥離助剤の比率に従って、それぞれ、4つの混合溶液に製剤化する。異なる剥離助剤の引き剥し力を、同じ試験条件下で上記の引き剥し力試験方法を使用して試験した。
【0063】
引き剥し効果を
図1に示す。「ブランク」は、いかなる剥離助剤も有していないクレープ加工接着剤のみを指し、剥離助剤中のクレープ加工接着剤の濃度は、他の試料と同じであったが、他の試料の剥離助剤に対応する部分は、水と置き換えた。図から見られるように、同じ試験条件下では、本発明による無水コハク酸誘導体を含有する剥離助剤は、引き剥し力を最も低下させることができ、それによって、既存の製品N64575と比較してより良好な引き剥し性能をもたらした。
【0064】
本明細書に引用される出版物、特許出願、及び特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が参照により組み込まれるように個別に、具体的に指示され、その全体が明記されているのと同程度まで参照により本明細書によって組み込まれる。
【0065】
本発明を説明する文脈において(特に、以下の特許請求の範囲の文脈において)、用語「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」、及び同様の指示対象の使用は、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈によって明確に否定されない限り、単数形及び複数形の両方を含むように解釈される。1つ以上の品目の一覧に後続する用語「少なくとも1つ」(例えば、「A及びBのうちの少なくとも1つ」)の使用は、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈によって明確に否定されない限り、記載された品目から選択される1つの品目(AまたはB)、または記載された品目のうちの2つ以上の任意の組み合わせ(A及びB)を意味するように解釈される。用語「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」、及び「含有する」は、特に断りのない限り、制約のない用語(すなわち、「を含むが、それらに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書における数値の範囲の列挙は、本明細書において別段の指示がない限り、範囲内に含まれる各別々の数値を個別に指す簡単な方法としての役割を果たすことを目的とするのみであり、各別々の数値は、それらが本明細書において個別に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書において説明される全ての方法は、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈によって明確に否定されない限り、任意の適切な順序で行われ得る。本明細書において提供されるいかなる、及び全ての例、または例示的言語(例えば、「等」)の使用は、本発明をより良く説明することのみを目的とし、他に主張されない限り、本発明の範囲を限定しない。本明細書におけるどの用語も、本発明の実践に不可欠なものとして、任意の特許請求されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0066】
本発明の実施形態は、本明細書に記載され、本発明を実行するための、発明者に知られている最良の形態を含む。これらの実施形態の変形は、前述の説明を読んだ後、当業者に明らかとなり得る。発明者は、当業者が必要に応じてそのような変形を使用することを予期し、発明者は、本発明が本明細書に具体的に記載される以外に実践されることを目的とする。その結果、本発明は、適用法で許可される通り、本明細書に添付された特許請求の範囲に列挙された主題の全ての修正及び同等物を含む。また、その全ての可能な変形における上述の要素の任意の組み合わせは、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈によって明確に否定されない限り、本発明によって包含される。