(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】異常WNTシグナル伝達の処置のための安定化BCL9ペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 7/08 20060101AFI20220707BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20220707BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20220707BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20220707BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220707BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220707BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
C07K7/08 ZNA
C07K7/06
A61K38/08
A61K38/10
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 U
(21)【出願番号】P 2018536718
(86)(22)【出願日】2016-10-05
(86)【国際出願番号】 US2016055589
(87)【国際公開番号】W WO2017062518
(87)【国際公開日】2017-04-13
【審査請求日】2019-09-24
(32)【優先日】2015-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518116617
【氏名又は名称】ウィントルクス ファーマシューティカルズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュー,デビッド
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-515748(JP,A)
【文献】国際公開第2010/115141(WO,A2)
【文献】国際公開第2013/040142(WO,A2)
【文献】国際公開第02/083921(WO,A2)
【文献】国際公開第2013/143504(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS/EMBASE(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
11~14アミノ酸長を有するポリペプチドであって、前記ポリペプチドは、ヒトB細胞CLL/リンパ腫9(BCL9)のHD2ドメインに由来し、
該ポリペプチドは炭化水素クロスリンカーを含み、該ポリペプチドは、以下から選択される配列
を有し、
配列番号3について、
a) Xaa
1
及びXaa
2
はそれぞれアラニンであり、かつ、
b)炭化水素クロスリンカーが、Xaa
1
とXaa
2
との間に存在する、
又は、
配列番号4について、
a) Xaa
1、Xaa
2、Xaa
3、及びXaa
4はそれぞれアラニンであり、
b)第1の炭化水素クロスリンカーが、Xaa
1とXaa
2との間に存在し、
かつ、
c)第2の炭化水素クロスリンカーが、Xaa
3とXaa
4との間に存在する、
前記ポリペプチド。
【請求項2】
11~14アミノ酸長を有するポリペプチドであって、前記ポリペプチドは、ヒトB細胞CLL/リンパ腫9(BCL9)のHD2ドメインに由来し、
前記ポリペプチドが、1つ以上の炭化水素クロスリンカーを形成する反応を受けることができ、該ポリペプチドは、以下から選択される配列
を有し、
配列番号3に関し、
a)Xaa
1
、及びXaa
2
が各々、α-メチル,α-アルケニルアミノ酸である、
或いは、
配列番号4に関し、
a)Xaa
1、Xaa
2、Xaa
3、及びXaa
4が各々、
α-メチル,α-アルケニルアミノ酸であるか、
b)Xaa
1及びXaa
2が各々、
α-メチル,α-アルケニルアミノ酸であり、炭化水素クロスリンカーが、Xaa
3とXaa
4との間に存在するか、または、
c)Xaa
3及びXaa
4が各々、
α-メチル,α-アルケニルアミノ酸であり、炭化水素クロスリンカーが、Xaa
1とXaa
2との間に存在する、
前記ポリペプチド。
【請求項3】
前記α-メチル,α-アルケニルアミノ酸が、(S)-2-(4’-ペンテニル)アラニン、(R)-2-(4’-ペンテニル)アラニン、(S)-2-(7’-オクテニル)アラニン、及び(R)-2-(7’-オクテニル)アラニンから選択される、請求項
2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記炭化水素クロスリンカーが、-CH
2-CH
2-CH
2-CH=CH-CH
2-CH
2-CH
2-及び-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-CH=CH-CH
2-CH
2-CH
2-から選択される、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記炭化水素クロスリンカーが、少なくとも一方の末端にS構成を有するか、
少なくとも一方の末端にR構成を有するか、又は、
一方の末端にS構成を有し、かつ他方の末端にR構成を有する、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項6】
a)前記ポリペプチドが、LQTLRXaa
1IQRXaa
2L(配列番号3)のアミノ酸配列からなり、
b)Xaa
1及びXaa
2が各々、アラニンであり、
c)炭化水素クロスリンカーが、Xaa
1とXaa
2との間に存在し、
d)前記炭化水素クロスリンカーが、-CH
2-CH
2-CH
2-CH=CH-CH
2-CH
2-CH
2-であり、か
つ、
e)前記炭化水素クロスリンカーが、両方の末端にS構成を有する、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項7】
a)前記ポリペプチドが、Xaa
1LQXaa
2LRXaa
3IQRXaa
4L(配列番号4)のアミノ酸配列からなり、
b)Xaa
1、Xaa
2、Xaa
3、及びXaa
4が各々、アラニンであり、
c)第1の炭化水素クロスリンカーが、Xaa
1とXaa
2との間に存在し、
d)第2の炭化水素クロスリンカーが、Xaa
3とXaa
4との間に存在し、
e)前記第1の炭化水素クロスリンカーが、-CH
2-CH
2-CH
2-CH=CH-CH
2-CH
2-CH
2-であり、
f)前記第2の炭化水素クロスリンカーが、-CH
2-CH
2-CH
2-CH=CH-CH
2-CH
2-CH
2-であり、
g)前記第1の炭化水素クロスリンカーが、一方の末端にS構成を有し、他方の末端にR構成を有し、か
つ、
h)前記第2の炭化水素クロスリンカーが、両方の末端にS構成を有する、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記ポリペプチドのN末端が、アセチル基で修飾されているか、若しくは、アセチル基で修飾されておらず、かつ、
前記ポリペプチドのC末端がNH
2、2つのβ-アラニン単位、2-ナフチルアラニン、または2つのβ-アラニン単位に連結された2-ナフチルアラニンで修飾されており、該C末端修飾のカルボキシル基がNH
2でさらに修飾されている、請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項9】
請求項
1に記載のポリペプチドと、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項10】
前記薬学的組成物が少なくとも1つの追加の薬剤をさらに含み、前記少なくとも1つの追加の薬剤が、チェックポイント阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、化学療法剤、及びVEGFR阻害剤からなる群から選択される、請求項
9に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
対象における癌を処置するための、請求項
1に記載のポリペプチドを含む薬学的組成物であって、前記癌が、家族性大腸腺腫症(FAP)、眼癌、直腸癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、前立腺癌、乳癌、膀胱癌、口腔癌、良性腫瘍及び悪性腫瘍、胃の癌、肝臓癌、膵臓癌、肺癌、子宮体、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、腎癌、脳/CNS癌、咽喉癌、多発性骨髄腫、皮膚黒色腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、ユーイング肉腫、カポジ肉腫、基底細胞癌及び扁平上皮癌、小細胞肺癌、絨毛癌、横紋筋肉腫、血管肉腫、血管内皮腫、ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、口/咽頭癌、食道癌、喉頭癌、リンパ腫、神経線維腫症、結節性硬化症、血管腫、胃癌、卵巣癌、肝細胞癌、及びリンパ脈管新生から選択される、請求項
1に記載のポリペプチドを含む薬学的組成物。
【請求項12】
癌を処置することが、前記対象に、チェックポイント阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、化学療法剤、及びVEGFR阻害剤から選択される少なくとも1つの追加の薬剤を投与することを含む、請求項
11に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、または抗CTLA4抗体である、請求項
12に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本国際出願は、参照により全体が本明細書に組み込まれる2015年10月5日に出願された米国仮出願第62/237,489号の優先権を主張するものである。
【0002】
本明細書では、ヒトB細胞CLL/リンパ腫9(BCL9)タンパク質のHD2ドメインに由来するポリペプチド及びその変異体、ならびに疾患または障害の診断、防止、及び/または処置におけるそれらの使用が開示される。また、そのようなポリペプチド及びその変異体を生成する方法も開示される。
【背景技術】
【0003】
簡単な説明
β-カテニンは、細胞恒常性、ならびに胚形成、上皮細胞増殖、及び臓器再生などのプロセスに非常に重要な多機能性タンパク質である。しかしながら、異常なβ-カテニンのシグナル伝達は、腫瘍の増殖及び発達を可能にし得る転写活性化の変化をもたらし得る。β-カテニンは、通常はリン酸化され、Axin複合体による分解の標的となるが、Wntシグナル伝達経路の刺激がある場合、リン酸化されていないβ-カテニンが蓄積し得る。Wntシグナル伝達経路が活性化された条件下では、β-カテニンはリンパ系エンハンサー因子/T細胞因子(LEF/TCF)に結合し、核に移行して、腫瘍発生に関与するc-myc及びCD44などのWnt標的遺伝子の転写を刺激する(Clevers and Nusse,Cell 149:1192-1205(2012)を参照されたい)。
【0004】
Wnt/β-カテニン経路の異常な活性化は、様々なヒト癌において示されている(Thakur and Mishra,J Cell Mol Med 17(4):449-456(2013)を参照されたい)。過活動性のβ-カテニンシグナル伝達は、癌細胞の生存に影響を及ぼすだけでなく、腫瘍内の制御されない細胞増殖をもたらす場合もある。加えて、β-カテニンは、癌細胞の遊走能及び浸潤能を増加させることによって腫瘍転移を支え得る。散発性大腸癌の全症例のうち最大90%が、Wntシグナル伝達の恒常的活性化と関連している。
【0005】
BCL9は、哺乳動物細胞において効率的なβ-カテニン媒介性転写に必要とされることで知られるタンパク質である(de la Roche et al.,BMC Cancer 8:199(2008)を参照されたい)。BCL9は、そのHD2ドメインを介してβ-カテニンに結合し、HD2ドメインにおける変異は、β-カテニンとBCL9の会合を妨害する。
【0006】
他のWntシグナル伝達経路に影響を与えることなくβ-カテニンを選択的に標的とする薬剤は、癌患者の処置のための魅力的な標的である。β-カテニン活性を阻害する薬剤を開発するための多数のアプローチが用いられてきた(Thakur and Mishra 2013を参照されたい)。β-カテニンの阻害を目的とする多くの小分子化合物が動物モデルで有望な有効性を示しているが、β-カテニン活性化の阻害のためのより適合された選択的なアプローチが必要とされている。
【0007】
β-カテニン活性を選択的に調節するための1つのアプローチは、β-カテニンと相互作用することで知られるタンパク質の一部分を含む安定化ペプチドの使用である。安定化ペプチドは、増加したヘリックス含量、タンパク質分解安定性、及び標的受容体に対する増加した結合親和性を含め、潜在的な治療薬として野生型ペプチドに勝る多数の利点を有する(Kim et al.,Nat Protocols 6(6):761-771(2011)を参照されたい)。安定化ペプチドで研究されているβ-カテニン相互作用物質の1つは、HD2ドメインを介してβ-カテニンに結合するBCL9である。しかしながら、BCL9のHD2ドメインの一部分を含む安定化ペプチドを生成するために炭化水素リンカー(すなわち「炭化水素ステープリング」)を使用する試みは、合成の費用及び低い収率によって妨げられてきた(Kawamoto,PhD Dissertation in Medicinal Chemistry,Univ of Michigan(2010)を参照されたい)。他の研究者らは、BCL9タンパク質のHD2ドメインのα-ヘリックスが、閉環メタセシス(RCM)を介して生成された炭化水素架橋剤(複数可)によって安定化されている、BCL9の安定化ペプチドを開発した(US2014/0113857を参照されたい)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの安定化ペプチドは当該技術分野においていくらかの成功を収めているものの、免疫応答の調節能力がより高く、ひいては腫瘍の処置におけるインビボでの有効性が改善した安定化ペプチドが、依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書では、ヒトB細胞CLL/リンパ腫9(BCL9)タンパク質のHD2ドメインに由来するポリペプチドが開示される。いくつかの実施形態では、本ポリペプチドは、7~14アミノ酸長を有する。様々な実施形態において、本ポリペプチドは、1つ以上の炭化水素架橋剤を介して安定化され、互換的に「安定化ポリペプチド」または「ステープルドポリペプチド」と称される構築物がもたらされる。様々な実施形態において、HD2ドメインに由来するポリペプチドは、1つ以上の炭化水素架橋剤を形成する反応を受けることができ、「非ステープルドポリペプチド(unstapled polypeptide)」と称される。
【0010】
いくつかの実施形態では、1つ以上の炭化水素を形成する反応を受けることのできるポリペプチドは、表1から選択される任意の配列またはその変異体を含む。いくつかの実施形態では、表1に列記されるXaa1、Xaa2、Xaa3、及び/またはXaa4は各々、α,α-二置換アミノ酸である。いくつかの実施形態では、炭化水素架橋剤(クロスリンカー)が、Xaa3とXaa4との間に存在する。いくつかの実施形態では、炭化水素架橋剤(クロスリンカー)が、Xaa1とXaa2との間に存在する。いくつかの実施形態では、Xaa1とXaa2との間に炭化水素架橋剤(クロスリンカー)が存在し、Xaa3とXaa4との間に炭化水素架橋剤(クロスリンカー)が存在する。
【0011】
いくつかの実施形態では、本ポリペプチドは、表1から選択される任意の配列またはその変異体を含む1つ以上の炭化水素を含む。いくつかの実施形態では、Xaa1、Xaa2、Xaa3、及び/またはXaa4は各々、アラニンもしくはα,α-二置換アラニンであり、第1の炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在し、かつ/または、第2の炭化水素架橋剤が、Xaa3とXaa4との間に存在する。
【0012】
いくつかの実施形態では、本ポリペプチドは、1つ以上の炭化水素架橋剤を形成する反応を受けることができ、LQTLRXaa1IQRXaa2L(配列番号X)もしくはその変異体を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、Xaa1及びXaa2は各々、α,α-二置換アミノ酸である。
【0013】
いくつかの実施形態では、本ポリペプチドは、1つ以上の炭化水素架橋剤を形成する反応を受けることができ、Xaa1LQXaa2LRXaa3IQRXaa4L(配列番号X)もしくはその変異体を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、Xaa1、Xaa2、Xaa3、及びXaa4は各々、α,α-二置換アミノ酸である。いくつかの実施形態では、Xaa1及びXaa2は各々、α,α-二置換アミノ酸であり、炭化水素架橋剤が、Xaa3とXaa4との間に存在する。いくつかの実施形態では、Xaa3及びXaa4は各々、α,α-二置換アミノ酸であり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。
【0014】
いくつかの実施形態では、本ポリペプチドは、炭化水素架橋剤を含み、LQTLRXaa1IQRXaa2L(配列番号X)もしくはその変異体を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、Xaa1及びXaa2は各々、アラニンであり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。
【0015】
いくつかの他の実施形態では、本ポリペプチドは、炭化水素架橋剤を含み、Xaa1LQXaa2LRXaa3IQRXaa4L(配列番号X)もしくはその変異体を含むか、またはそれからなる。ある特定の実施形態では、Xaa1、Xaa2、Xaa3、及びXaa4は各々、アラニンであり、第1の炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在し、第2の炭化水素架橋剤が、Xaa3とXaa4との間に存在する。
【0016】
いくつかの実施形態では、α,α-二置換アミノ酸は、α-メチル,α-アルケニルアミノ酸である。いくつかの実施形態では、α-メチル,α-アルケニルアミノ酸は、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニン、(R)-2-(4´-ペンテニル)アラニン、(S)-2-(7´-オクテニル)アラニン、及び(R)-2-(7´-オクテニル)アラニンから選択される。
【0017】
いくつかの実施形態では、炭化水素リンカーは、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-及び-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-から選択される。いくつかの実施形態では、炭化水素架橋剤は、少なくとも一方の末端または両方の末端にS構成を有する。いくつかの実施形態では、炭化水素架橋剤は、少なくとも一方の末端または両方の末端にR構成を有する。いくつかの実施形態では、炭化水素架橋剤は、一方の末端にS構成を有し、他方の末端にR構成を有する。
【0018】
さらなる実施形態において、本ポリペプチドまたは変異体のN末端及び/もしくはC末端はさらに修飾されている。いくつかの実施形態では、N末端は、アセチル基で修飾されている。いくつかの実施形態では、C末端は、1つ、2つ、もしくはそれ以上のβ-アラニン単位、2-ナフチルアラニン、及び/または2-ナフチルアラニンで修飾されており、場合により、1つ、2つ、もしくはそれ以上のβ-アラニン単位に連結しており、C末端修飾のカルボキシル基は、場合によりNH2基でさらに修飾されている。いくつかの実施形態では、N末端及び/またはC末端の修飾は、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基をさらに含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のステープルドポリペプチドまたは変異体は、非ステープルド野生型ヒトBLC9 HD2ドメインまたは野生型ヒトBLC9 HD2ドメインの断片と比較して改善された1つ以上の生物学的機能を有する。ステープルドポリペプチドまたは変異体が対象に投与され、かつ/または標的細胞と接触したとき、本ポリペプチドまたは変異体は、β-カテニンへのBCL9の結合を阻害すること、古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達を阻害すること、制御性T細胞の生存期間を減少させること、腫瘍内のVEGFの発現を減少させること、腫瘍へのCD4+T細胞及び/またはCD8+T細胞の浸潤を増加させること、腫瘍へのTヘルパー17(Th17)細胞の浸潤を増加させること、腫瘍内の樹状細胞を減少させること、少なくとも2時間超の半減期(T1/2)を有すること、免疫反応に好ましい(favoring)腫瘍微小環境を誘導すること、ならびに、腫瘍増殖、癌幹細胞増殖、及び/または腫瘍転移を阻害することから選択される、改善された1つ以上の生物学的機能を呈することができる場合がある。
【0020】
本明細書では、ヒトBLC9タンパク質のHD2ドメインに由来するステープルドポリペプチドまたは変異体と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物も開示される。いくつかの実施形態では、本薬学的組成物は、チェックポイント阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、VEGFR阻害剤、または抗癌薬といった少なくとも1つの追加の薬剤を含む。
【0021】
本明細書では、例えば対象の癌の阻害、低減、防止、及び/または処置において、特許請求されるステープルドポリペプチドまたは変異体を作製及び使用する方法も開示される。いくつかの実施形態では、特許請求されるポリペプチドまたは変異体を使用する方法は、対象におけるβ-カテニンへのBCL9の結合を阻害すること、ならびに対象における古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達を阻害することを包含する。
【0022】
本明細書では、処置有効性の監視及び/または特許請求されるステープルドポリペプチドもしくは変異体で処置されるべき対象の選択において使用されるバイオマーカーも開示される。いくつかの実施形態では、特許請求されるポリペプチドまたは変異体を投与される対象は、追加の治療剤、放射線、及び/または化学療法でも処置される。特許請求されるステープルドポリペプチドまたは変異体を作製及び使用するためのキットも開示される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A-B】
図1A及び
図1Bはそれぞれ配列番号X及び配列番号Xに対応する、BCL9タンパク質のHD2ドメインに由来する安定化ペプチドの構造を示す。配列番号Xの安定化ポリペプチドは、本出願において「WX-024」と称される。配列番号Xの安定化ポリペプチドは、本出願において「WX-035」と称される。これらのペプチドは、BCL9タンパク質のHD2ドメインのα-ヘリックスを安定化させるα-メチル,α-アルケニルアミノ酸の間に生成されたアルケニルリンカー(複数可)を有する。
【
図2A】
図2AはヒトBCL9タンパク質のHD2ドメインの体系的なウォークスルーを行うドメインマッピング方針を示す。
【
図2B】
図2Bは
図2Aに示されたドメインマッピング方針に基づいて生成された各ドメイン断片を漸増量で使用した細胞生存率アッセイの結果を示す。古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達の既知の小分子阻害剤であるICG001を陽性対照として使用した。細胞生存率アッセイは、Colo320DM細胞を用いたCellTiterGloアッセイ(Promega)を使用して行った。
【
図2C】
図2Cは
図2Aにおける、生成された各ドメイン断片を漸増量で使用したWnt転写アッセイの結果を示す。ICG001を陽性対照として使用した。Wnt転写アッセイは、HCT116細胞を用いたGeneBlazer Wntレポーターアッセイ(Invitrogen)を使用して行った。
【
図3】
図3はWX-020(配列番号X)とSAH-BCL9#1(配列番号X)とを比較する細胞生存率アッセイの結果を示す。細胞生存率アッセイは、Colo320DM細胞を用いたCellTiterGloアッセイ(Promega)を使用して行った。
【
図4A】
図4AはWX-020と、WX-024を含めたWX-020に由来する4つの異なる安定化ポリペプチドとを比較する細胞生存率アッセイの結果を示す。細胞生存率アッセイは、HCT116細胞を用いたCellTiterGloアッセイ(Promega)を使用して行った。ICG001を陽性対照として使用した。
【
図4B】
図4Bは酢酸塩形態のWX-024を細胞ベースのWnt転写阻害アッセイで試験した結果を示す(IC
50=292nM)。
【
図4C】
図4Cは同じWnt転写阻害アッセイで同様に試験した塩酸塩の作用を示す(IC
50=313nM)。
【
図5A-B】
図5A、5B、5C、及び5DはWX-021、WX-024、及びICG001を試験したGeneBlazer Wntレポーターアッセイ(Invitrogen)の結果を示す。
図5Aは、β-カテニンへのBCL9の結合が、CellSensor(商標)LEF/TCF-bla HCT-116細胞(Invitrogen)におけるベータ-ラクタマーゼ(BLA)受容体遺伝子の発現を推進する、レポーターアッセイの概略図を提供する(略語:β-cat、β-カテニン;TF、転写因子)。WX-024などのHD2ドメイン内のアミノ酸に対応するペプチドは、β-カテニンへのBCL9の結合を阻害することができる。
図5B、5C、及び5Dは、それぞれWX-021、WX-024、及びICG001を使用したレポーターアッセイの結果を示す。このアッセイの結果から計算されたWX-021、WX-024、及びICG001のIC
50値は、それぞれ764nM、191nM、及び1060nMであった。
【
図5C-E】
図5A、5B、5C、及び5DはWX-021、WX-024、及びICG001を試験したGeneBlazer Wntレポーターアッセイ(Invitrogen)の結果を示す。
図5Aは、β-カテニンへのBCL9の結合が、CellSensor(商標)LEF/TCF-bla HCT-116細胞(Invitrogen)におけるベータ-ラクタマーゼ(BLA)受容体遺伝子の発現を推進する、レポーターアッセイの概略図を提供する(略語:β-cat、β-カテニン;TF、転写因子)。WX-024などのHD2ドメイン内のアミノ酸に対応するペプチドは、β-カテニンへのBCL9の結合を阻害することができる。
図5B、5C、及び5Dは、それぞれWX-021、WX-024、及びICG001を使用したレポーターアッセイの結果を示す。このアッセイの結果から計算されたWX-021、WX-024、及びICG001のIC
50値は、それぞれ764nM、191nM、及び1060nMであった。
【
図6A-B】
図6A及び
図6Bはβ-カテニンへのWX-024(ビオチンとコンジュゲートしたもの)の結合性を測定する均質時間分解蛍光(HTRF)アッセイ(Cisbio)の結果を示す。
図6Aは、HTRFアッセイの概略図を提供するものであり、このアッセイが、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を評価することによって、ビオチン化BCL9ペプチド(例えばビオチン化WX-024など)のβ-カテニンへの結合性を測定することを示す(略語:ab、抗体;SA、ストレプトアビジン)。
図6Bは、β-カテニンへのWX-024の結合に関するHTRFアッセイに基づいたK
Dの定量を示す(K
D=4.21nM)。
【
図7】
図7はHCT116細胞においてCellTiterGloアッセイ(Promega)を使用してICG001(Wnt/β-カテニン経路阻害剤)とWX-024を比較した細胞生存率データを示す。このアッセイに基づいて計算されたWX-024及びICG001のIC
50値は、それぞれ1.92μM及び2.17μMであった。
【
図8A】
図8AはWX-024、ICG001、及びLGK-974を試験した細胞生存率アッセイの結果を示す(*P<0.05、WX-024対ICG001、LGK-974)。この細胞生存率アッセイではColo320DM細胞を使用した。
【
図8B-C】
図8Bは同じ細胞生存率アッセイでWX-024及びエルロチニブを試験した結果を示す。
図8Cは同じ細胞生存率アッセイで5-FU処置単独と5-FU及びWX-024の組み合わせとを比較した結果を示す(*P<0.05)。
【
図9A-B】
図9A及び
図9Bは雄ICRマウス(非近交種)にWX-024を1mg/kgまたは5mg/kgで静脈内(i.v.)投与した場合と5mg/kgで腹腔内(i.p.)投与した場合の薬物動態(PK)データを示す。投薬後15分、1、2、4、6、8、12、及び24時間の時点で血液試料を収集し、
図9Aに示されるように、液体クロマトグラフィ-質量分析法(LC-MS)によって分析した。
図9Aに示される血漿濃度データから、最大観察濃度(C
max)、終末相半減期(T
1/2)、全身クリアランス(CL)、分布容積(V
z)、投薬時間から最後の観察可能な濃度までの曲線下面積(AUC
0-t)、投薬時間から無限大まで外挿した曲線下面積(AUC
0-inf)、及び生物学的利用率を計算した。これらの薬物動態パラメータが
図9Bに要約されている。
【
図10A】
図10Aは雌Balb/cマウスにおいて測定されたWX-024のPKデータを示す。各データ点はN=2を表す。マウスには、5mg/kg、10mg/kg、もしくは15mg/kgの静脈内投与、5mg/kgの筋肉内投与、10mg/kgの腹腔内投与、または10mg/kgの皮下投与を行った。投薬後15分、1、2、4、6、8、12、及び24時間(ならびに筋肉内、皮下、及び腹腔内経路では投薬後36及び48時間)の時点で血液試料を収集し、液体クロマトグラフィ-質量分析法(LC-MS)によって分析した。
【
図11】
図11はColo320DM腫瘍細胞を接種し、ビヒクルまたはWX-024で処置した6~8週齢の雌Balb/cヌードマウスの体重データを示す。マウスにColo320DM腫瘍細胞(5×10
6)を接種し、腫瘍を14日間発達させ、その後処置を適用した。ビヒクル処置群及び5mg/kg処置群には研究全体を通じて静脈内注射によって投薬し、研究中に体重の明らかな変化はなかった。15mg/kgのWX-024の3日間の静脈内投薬の後、この群のマウスは体重減少を呈した。したがって、7日目に、10mg/kg群及び15mg/kg群を処置期間の残りに関して腹腔内投薬に切り替えた。この腹腔内投薬への切り替えの後、研究の残部における15mg/kg群の体重が安定化した。
【
図12A-B】
図12A及び
図12Bは
図11に関して記載した実験中にビヒクルまたはWX-024によってもたらされた腫瘍増殖の変化を示す。
図12Aに示されるように、処置期間の0、3、5、7、9、11、及び14日目にキャリパーを使用して腫瘍体積(mm
3で表される)を測定した(*P<0.05、Kruskal-Wallis分析によってビヒクル群と比較)。
図12Bは、研究の終了時の各処置群の平均腫瘍量を示す(22日目;*P<0.05、ビヒクル群と比較)。
【
図13A】
図13Aは
図11に関して記載した22日間の処置後のColo320DM異種移植片モデルの終了時のBALB/cヌードマウスの腸管組織像を示す。ビヒクル処置群、10mg/kg処置群、及び15mg/kg WX-024処置群からの試料が示されている。
【
図14A-B】
図14Aは
図11に関して記載した実験から収集された腫瘍試料のCD44染色の40倍拡大像を示す。各試料の免疫化学スコアが各画像の右上隅に示されている。
図14Bは各処置群の平均免疫化学スコアの概要である。
【
図15A-B】
図15Aは
図11に関して記載した実験から収集された腫瘍試料のVEGFA染色を示す。各試料の免疫化学スコアが各画像の右上隅に示されている。
図15Bは各処置群の平均免疫化学スコアの概要である。
【
図16A】
図16A、16B、16C、及び16DはWX-024またはドキソルビシンで処置したときのインビトロでのCT26細胞(ATCC)の増殖を測定したCellTiter Gloアッセイ(Promega)の結果を示す。
図16Aは、1日目(D1)から5日目(D5)の未処置の細胞の増殖率を示す。
図16B及び
図16Cは、それぞれ、このアッセイで測定されたWX-024処置細胞またはドキソルビシン処置細胞における増殖阻害率を示す。
図16Dは、増殖の50%阻害をもたらす薬剤の濃度(IC
50)、最小阻害、最大阻害、ならびに、
図16B及び
図16Cに示される各曲線に基づいて計算した中央値である相対IC
50の概要である。
【
図16B】
図16A、16B、16C、及び16DはWX-024またはドキソルビシンで処置したときのインビトロでのCT26細胞(ATCC)の増殖を測定したCellTiter Gloアッセイ(Promega)の結果を示す。
図16Aは、1日目(D1)から5日目(D5)の未処置の細胞の増殖率を示す。
図16B及び
図16Cは、それぞれ、このアッセイで測定されたWX-024処置細胞またはドキソルビシン処置細胞における増殖阻害率を示す。
図16Dは、増殖の50%阻害をもたらす薬剤の濃度(IC
50)、最小阻害、最大阻害、ならびに、
図16B及び
図16Cに示される各曲線に基づいて計算した中央値である相対IC
50の概要である。
【
図16C】
図16A、16B、16C、及び16DはWX-024またはドキソルビシンで処置したときのインビトロでのCT26細胞(ATCC)の増殖を測定したCellTiter Gloアッセイ(Promega)の結果を示す。
図16Aは、1日目(D1)から5日目(D5)の未処置の細胞の増殖率を示す。
図16B及び
図16Cは、それぞれ、このアッセイで測定されたWX-024処置細胞またはドキソルビシン処置細胞における増殖阻害率を示す。
図16Dは、増殖の50%阻害をもたらす薬剤の濃度(IC
50)、最小阻害、最大阻害、ならびに、
図16B及び
図16Cに示される各曲線に基づいて計算した中央値である相対IC
50の概要である。
【
図16D】
図16A、16B、16C、及び16DはWX-024またはドキソルビシンで処置したときのインビトロでのCT26細胞(ATCC)の増殖を測定したCellTiter Gloアッセイ(Promega)の結果を示す。
図16Aは、1日目(D1)から5日目(D5)の未処置の細胞の増殖率を示す。
図16B及び
図16Cは、それぞれ、このアッセイで測定されたWX-024処置細胞またはドキソルビシン処置細胞における増殖阻害率を示す。
図16Dは、増殖の50%阻害をもたらす薬剤の濃度(IC
50)、最小阻害、最大阻害、ならびに、
図16B及び
図16Cに示される各曲線に基づいて計算した中央値である相対IC
50の概要である。
【
図17A-B】
図17Aはビヒクルまたは20mg/kgのWX-024のいずれかで処置されたマウスの2つの群の平均腫瘍増殖を示す。各マウスには、それに割り当てられた処置を14日間にわたり毎日腹腔内注射した。この実験では、CT26結腸癌細胞を有するBalb/c同系マウスモデルを使用した。各データ点は、1群当たり8体のマウスの平均を表す。
図17BはWX-024処置の平均腫瘍増殖阻害(TGI)率を示す。3日目のTGIは89.2%であり、12日目のTGIは70.0%であった。
【
図19A-B】
図19A及び19Bは
図17に示されたマウスから収集された血液試料におけるCD4
+T細胞数を示す。血液試料は実験の終了時(14日目)に収集した。
図19Aは、各血液試料中の全細胞に対する割合として表されたCD4
+T細胞数を示す。
図19Bは、各血液試料中の全細胞当たりの相対的なT細胞数を示す。
【
図20A-B】
図20A及び
図20Bは
図17に示されたマウスから収集された血液試料におけるCD8
+T細胞数を示す。血液試料は実験の終了時(14日目)に収集した。
図20Aは、各血液試料中の全細胞に対する割合として表されたCD8
+T細胞数を示す。
図20Bは、各血液試料中の全細胞当たりの相対的なT細胞数を示す。
【
図21A-B】
図21Aは
図17に記載の実験から収集された腫瘍試料におけるCD4
+T細胞集団中の制御性T細胞の割合を示す。
図21Bは同じ腫瘍試料におけるCD8
+T細胞と制御性T細胞との比を示す。
【
図21C】
図21C及び
図21Dは、この実験において試験した、それぞれ血液及び腫瘍から得られた試料の代表的なFACS分析を示す。
【
図21D】
図21C及び
図21Dは、この実験において試験した、それぞれ血液及び腫瘍から得られた試料の代表的なFACS分析を示す。
【
図22A】
図17に記載の実験から収集された腫瘍試料の活性β-カテニン染色を示す。上部4つのパネルは、ビヒクル処置群から収集された4つの試料の染色画像を示し、下部4つのパネルは、WX-024処置群から収集された4つの試料の染色画像を示す。
【
図22B-C】
図22Bは各処置群の平均免疫組織化学スコアを表す。
図22Cは同じ実験から収集された腫瘍試料中のCD44の代表的な染色を示す。
【
図23A】
図23Aは
図17に記載の実験から収集された腫瘍試料のPD-L1染色を示す。上部4つのパネルは、ビヒクル処置群から収集された4つの試料の染色画像を示し、下部4つのパネルは、WX-024処置群から収集された4つの試料の染色画像を示す。
【
図24】
図24はB16細胞(1×10
3)を接種したC57BL/6マウスにおいてビヒクルまたはWX-024によって引き起こされた腫瘍増殖の変化を示す。マウスには、連続14日間にわたって毎日、ビヒクルまたは25mg/kgのWX-024のいずれかを腹腔内投与した(n=6/群)。
【
図25A-C】
図25A、25B、及び25CはWX-024処置によって引き起こされた腫瘍へのT細胞浸潤を示す。5週齢の雌C57BL/6マウスにB16細胞(1×10
3)を接種した。接種したマウスの平均腫瘍体積が100mm
3に達したとき、マウスを2つの群に分割し、ビヒクルまたは25mg/kgのWX-024のいずれかを連続12日間にわたって腹腔内投与した。実験の終了時に、腫瘍試料を収集し、CD4またはCD8のいずれかで染色した。
図25Aは、全腫瘍細胞に対する割合として表されたCD4
+T細胞数を示す。
図25Bは、全腫瘍細胞に対する割合として表されたCD8
+T細胞数を示す。
図25Cは、全腫瘍細胞に対する割合として表されたCD4
+T細胞数またはCD8
+T細胞数を表す。
【
図26A-B】
図26A及び
図26Bは腫瘍内に存在する樹状細胞に対するWX-024及びWX-039の効果を示す。C57BL/6マウスにB16細胞を接種した。接種したマウスの平均腫瘍体積が100mm
3に達したとき、マウスを2つの群に分割し、ビヒクル、20mg/kgのWX-024、または60mg/kgのWX-039を連続12日間にわたって腹腔内投与した。実験の終了時に、腫瘍試料を収集し、樹状細胞マーカー及びTヘルパー17細胞マーカーについて染色した。
図26Aは、骨髄樹状細胞(mDC)数を示し、
図26Bは、可塑性の樹状細胞(pDC)数を示す。(*p<0.05;***p<0.0001、ビヒクル対照群と比較;一元配置ANOVA)。
【
図26C】
図26Cは全腫瘍細胞に対する割合として表されたCD194+T細胞またはCD196+T細胞を示す。
【
図26D】
図26Dはこの実験において試験した腫瘍試料の代表的なFACS分析を示す。
【
図27A】
図27Aはビヒクルまたは15mg/kgのWX-024のいずれかで処置された同所性マウスの平均全光束を示す。Balb/c雌ヌードマウスにNCI-H1299-Luc細胞(PBSにおいて50μL中5×10
6個)を注射し、連続10日間にわたってビヒクルまたはWX-024で静脈内処置した。1群当たり3体のマウスを試験した。全光束は、マウスの腫瘍細胞によって生成される発光光子束シグナルを示す。
【
図28A】
図28Aは結腸直腸癌患者から得られた4つの試料中の選択的バイオマーカーの免疫組織化学的染色を示す(スケールバー:100μm)。各試料は、H&E(ヘマトキシリン(Haemtoxylin)及びエオシン)、IgG、β-カテニン、BCL9、c-Myc、及びCD44で染色した。結腸直腸癌試料番号8をさらに検査するために選択した。
【
図28B】
図28Bは患者8番から得られた細胞を接種した患者由来異種移植片NOD/SCIDマウスに対するWX-024の効果を示す。2週間の接種後、マウスを2つの群(N=8/群)に分割し、次の4週間にわたってビヒクルまたは15mg/kgのWX-024で静脈内処置した。WX-024による31日目の平均腫瘍増殖阻害は75.6%であった。
【
図29A】
図29Aは
図28に記載の実験から収集された腫瘍試料のβ-カテニン染色及びBCL9染色を示す。各画像の免疫組織化学スコアが画像の右上隅に示されている。
【
図30A】
図30A、30B、及び30Cは雌balb/cマウスにおいて評価されたWX-024の安全性プロファイルを示す。マウスは、ビヒクル、10mg/kg、15mg/kg、または20mg/kgのWX-024で連続14日間にわたって静脈内処置した(n=6)。
図30Aは、実験の終了時(14日目)にビヒクルまたは10mg/kgのWX-024のいずれかで処置したマウスから採取した主要臓器のH&E染色を示す。
図30Bは、実験全体を通じた各処置群の平均体重を示す。
図30Cは、ビヒクル処置群及び20mg/kg WX-024処置群の全血球数プロファイルを示す。
【
図30B】
図30A、30B、及び30Cは雌balb/cマウスにおいて評価されたWX-024の安全性プロファイルを示す。マウスは、ビヒクル、10mg/kg、15mg/kg、または20mg/kgのWX-024で連続14日間にわたって静脈内処置した(n=6)。
図30Aは、実験の終了時(14日目)にビヒクルまたは10mg/kgのWX-024のいずれかで処置したマウスから採取した主要臓器のH&E染色を示す。
図30Bは、実験全体を通じた各処置群の平均体重を示す。
図30Cは、ビヒクル処置群及び20mg/kg WX-024処置群の全血球数プロファイルを示す。
【
図30C】
図30A、30B、及び30Cは雌balb/cマウスにおいて評価されたWX-024の安全性プロファイルを示す。マウスは、ビヒクル、10mg/kg、15mg/kg、または20mg/kgのWX-024で連続14日間にわたって静脈内処置した(n=6)。
図30Aは、実験の終了時(14日目)にビヒクルまたは10mg/kgのWX-024のいずれかで処置したマウスから採取した主要臓器のH&E染色を示す。
図30Bは、実験全体を通じた各処置群の平均体重を示す。
図30Cは、ビヒクル処置群及び20mg/kg WX-024処置群の全血球数プロファイルを示す。
【
図31A-B】
図31A及び
図31Bはビヒクル、10mg/kg、15mg/kg、または20mg/kgのWX-024で腹腔内処置した雌balb/cマウスの毒物動態分析を示す。
図31Aは、1日目の投薬後の全血中の平均WX-024濃度を示す。
図31Bは、14日目の投薬後の全血中の平均WX-024濃度を示す。
【
図32】
図32はWX-024及びWX-035を試験した細胞生存率アッセイの結果を示す。この実験ではColo320DM細胞を使用した。
【
図33A-B】
図33A及び
図33Bは雄ICRマウス(非近交種)に投与したWX-035のPKデータを示す。マウスには、1mg/kgもしくは5mg/kgのWX-035の静脈内処置、または5mg/kgのWX-035の腹腔内処置のいずれかを行った。投与後15分、1、2、4、6、8、12、及び24時間の時点で各マウスから血液試料を収集した。
図33Aは、液体クロマトグラフィ-質量分析(LC-MS)によって分析された試料中のWX-035の濃度を示す。
図33Bに示されるように、濃度データから、最大観察濃度(C
max)、終末相半減期(T
1/2)、全身クリアランス(CL)、分布容積(V
z)、投薬時間から最後の観察可能な濃度までの曲線下面積(AUC
0-t)、投薬時間から無限大まで外挿した曲線下面積(AUC
0-inf)、及び生物学的利用率を計算した。
【
図34A-B】
図34A及び
図34Bは雌balb/cマウス(n=3)に投与したWX-035のPKデータを示す。マウスには、30mg/kgのWX-035を静脈内または腹腔内のいずれかに投与した。投与後5分、15分、30分、1、2、4、6、8、12、24、36、48、及び72時間の時点で各マウスから血液試料を収集した。
図34Aは、液体クロマトグラフィ-質量分析(LC-MS)によって分析された試料中のWX-035の濃度を示す。
図34Bに示されるように、濃度データから、最大濃度到達時間(T
max)、最大観察濃度(C
max)、終末相半減期(T
1/2)、投薬時間から最後の観察可能な濃度までの曲線下面積(AUC
last)、投薬時間から無限大まで外挿した曲線下面積(AUC
INF)、及び生物学的利用率(F)を計算した。
【
図35A】
図35Aは雄balb/c同系動物モデルにおいて試験された腫瘍増殖阻害に対するWX-035の効果を示す。マウスにはCT26細胞(1×10
3)を接種した。平均腫瘍体積が100mm
3に達したとき、マウスを3つの群に分割し、ビヒクル、20mg/kgのWX-035、または1mg/kgのトラメチニブで連続7日間にわたって腹腔内処置した(n=7)。
【
図35B】
図35Bはこの実験におけるWX-035及びトラメチニブによる平均腫瘍増殖阻害を比較する。7日目のWX-035による平均腫瘍増殖阻害は88.44%であった。
【
図36A-B】
図36A、36B、36C、及び36DはTreg細胞及び他の種類のT細胞集団に対するWX-035のインビボでの効果を示す。
図35に示される実験の終了時に、ビヒクル処置群及びWX-035処置群から腫瘍試料を収集した。
図36Aは、全腫瘍細胞に対する割合としての全CD45
+T細胞を示す。
図36Bは、全腫瘍細胞に対する割合としての全CD4
+T細胞またはCD8
+T細胞を示す。
図36Cは、全CD25
+/Foxp3
+T細胞を示す。
図36Dは、両処置群におけるCD8
+T細胞とCD25
+/Foxp3
+T細胞との比を示す。
【
図36C-D】
図36A、36B、36C、及び36DはTreg細胞及び他の種類のT細胞集団に対するWX-035のインビボでの効果を示す。
図35に示される実験の終了時に、ビヒクル処置群及びWX-035処置群から腫瘍試料を収集した。
図36Aは、全腫瘍細胞に対する割合としての全CD45
+T細胞を示す。
図36Bは、全腫瘍細胞に対する割合としての全CD4
+T細胞またはCD8
+T細胞を示す。
図36Cは、全CD25
+/Foxp3
+T細胞を示す。
図36Dは、両処置群におけるCD8
+T細胞とCD25
+/Foxp3
+T細胞との比を示す。
【
図37】ビヒクル、30mg/kg、または40mg/kgのWX-035で連続7日間にわたって静脈内処置した6週齢の雌balb/cヌードマウスから採取した主要臓器のH&E染色を示す(スケールバー:100μm)。
【
図38A-C】
図38A及び
図38BはCT26.WT細胞を使用した細胞生存率アッセイにおけるWX-035及びWX-037の効果を示す。
図38Cは各ポリペプチドのインビトロプロファイルの概要である。Ab IC
50は、細胞生存率が半分に低減するときの阻害剤の絶対濃度を示す。
【
図39A-B】
図39A及び
図39Bは雌balb/cヌードマウス(N=2)に投与したWX-029のPKデータを示す。各マウスに1mg/kgのWX-029を静脈内投与した。
図39Aは、投与の15分、1、2、または4時間後に測定した血漿濃度を示す。
図39Bは、
図39Aに示される血漿濃度の結果を使用して計算された薬物動態プロファイルの概要である。
【
図40A-B】
図40A及び
図40Bは雌balb/cヌードマウス(N=2)に投与したWX-036のPKデータを示す。各マウスに1mg/kgのWX-036を静脈内投与した。
図40Aは、投与の15分、1、2、または4時間後に測定した血漿濃度を示す。
図40Bは、
図40Aに示される血漿濃度の結果を使用して計算された薬物動態プロファイルの概要である。
【
図41A】
図41A及び
図41Bは雌balb/cヌードマウス(N=2)に投与したWX-039のPKデータを示す。WX-039は、静脈内に5mg/kg、腹腔内に5mg/kg、または皮下に10mg/kgで各マウスに投与した。
図41Aは、投与の15分、1、2、4、8、24、36、48、及び72時間後に測定した血漿濃度を示す。
図41Bは、
図41Aに示される血漿濃度の結果を使用して計算された薬物動態プロファイルの概要である。
【
図41B】
図41A及び
図41Bは雌balb/cヌードマウス(N=2)に投与したWX-039のPKデータを示す。WX-039は、静脈内に5mg/kg、腹腔内に5mg/kg、または皮下に10mg/kgで各マウスに投与した。
図41Aは、投与の15分、1、2、4、8、24、36、48、及び72時間後に測定した血漿濃度を示す。
図41Bは、
図41Aに示される血漿濃度の結果を使用して計算された薬物動態プロファイルの概要である。
【
図42A】
図42A及び
図42Bは雌balb/cヌードマウス(N=2)に投与したWX-036のPKデータを示す。WX-040は、静脈内に30mg/kgまたは腹腔内に40mg/kgで各マウスに投与した。
図42Aは、投与の15分、1、2、4、8、24、36、48、及び72時間後に測定した血漿濃度を示す。
図42Bは、
図42Aに示される血漿濃度の結果を使用して計算された薬物動態プロファイルの概要である。
【
図42B】
図42A及び
図42Bは雌balb/cヌードマウス(N=2)に投与したWX-036のPKデータを示す。WX-040は、静脈内に30mg/kgまたは腹腔内に40mg/kgで各マウスに投与した。
図42Aは、投与の15分、1、2、4、8、24、36、48、及び72時間後に測定した血漿濃度を示す。
図42Bは、
図42Aに示される血漿濃度の結果を使用して計算された薬物動態プロファイルの概要である。
【
図43A-C】
図43AはB16F10細胞を接種した5週齢の雌C57BL/6マウス(N=3)で試験した腫瘍増殖阻害に対するWX-039の効果を示す。
図43Bは実験中に評価した腫瘍増殖阻害率を示す。
図43Cは
図43Aに示された実験中の体重変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
A. BCL-9、β-カテニン、及びWntシグナル伝達
Wntシグナル伝達の異常活性化は様々な癌に関与しているが、これは、腫瘍が増殖及び生存のためにWntシグナル伝達に依存するようになる場合があるためである(Grossmann et al.PNAS.109(44):17942-17947(2012)を参照されたい)。散発性大腸癌の全症例のうち最大90%が、Wntシグナル伝達の恒常的活性化と関連している。
【0025】
β-カテニンは、腫瘍の増殖及び発達を可能にし得る転写活性化の変化をもたらすWntシグナル伝達を刺激するタンパク質-タンパク質の相互作用に関与し得るタンパク質である。β-カテニンは、通常はリン酸化され、Axin複合体による分解の標的となる。Wntシグナル伝達経路の刺激がある場合、リン酸化されていないβ-カテニンが蓄積し、リンパ系エンハンサー因子/T細胞因子(LEF/TCF)に結合し、核に移行して、Wnt標的遺伝子の転写を刺激する(Thakur 2013を参照されたい)。Wnt標的遺伝子としては、腫瘍モデルにおいて上方制御されている遺伝子であるc-myc及びCD44が挙げられる。BCL9は、哺乳動物細胞において効率的なβ-カテニン媒介性転写に必要とされるタンパク質である(de la Roche et al.,BMC Cancer 8:199(2008)を参照されたい)。
【0026】
「古典的」Wnt/β-カテニンシグナル伝達は、細胞表面受容体のFrizzledファミリーに結合するWntリガンドによって活性化される経路であり、細胞表面受容体は次いで、β-カテニンの発現及び細胞内局在化を制御する。Wntリガンドの非存在下において、β-カテニンは、大腸ポリポーシス(APC)、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK-3)、カゼインキナーゼ1(CK1)、及びAxinから構成された破壊複合体(destruction complex)内でリン酸化及びユビキチン化され、プロテアソーム依存様式における分解の標的とされる。Wntリガンドの存在下では、この複合体におけるβ-カテニンのユビキチン化が抑制され、リン酸化β-カテニンを飽和させ、これは次いで安定化して核に移行する。核内で、リン酸化β-カテニンは、リンパ系エンハンサー因子/3(LEF/TCF)などの核T細胞因子(TCF)転写因子を動員して、細胞の増殖、遊走、及び生存を促進するc-Myc28及びサイクリンDを含む遺伝子の発現を誘導する。
【0027】
BCL9及びその相同体であるB細胞リンパ腫9様(B9L)を含むいくつかの分子は、Wnt/β-カテニン転写のためのコアクチベーターであることが示されている。TCF、β-カテニン、及びBCL9(またはB9L)からなる複合体の形成は、β-カテニン依存性Wnt転写活性を向上させる。正常細胞においては、この転写経路は、Wntリガンドがそれらの受容体から離れると遮断される。しかしながら、APC及びAxinにおける様々な機能欠損変異、ならびにβ-カテニン自体における活性化変異は、β-カテニンが破壊複合体を回避し、核内に蓄積することを可能にする。このような不適切なβ-カテニンの残留は、肝細胞、乳房、結腸直腸、及び血液の悪性腫瘍、例えば多発性骨髄腫を含む、幅広い一般的なヒト上皮癌の発癌を促進する。加えて、活性なβ-カテニンシグナル伝達は、T細胞、特にCD8+T細胞の排除をもたらし、これは、治療抵抗性及び患者の生存期間の短縮につながる。したがって、β-カテニン(β-cat)を標的とすることによるWntシグナル伝達の遮断は、腫瘍の開始と転移との両方を防止する可能性のある強力なCRC治療法を提示し得る。Spranger et al.,Nature 523:231-235(2015)を参照されたい。
【0028】
他の転写因子と同様に、選択的な非毒性β-カテニン阻害剤の開発、及びそれらの臨床への移行は、β-カテニンがそのタンパク質パートナーの大部分と同じ結合表面を介して相互作用することから、相当な難題であることが証明されている。したがって、この共通の結合表面を標的とするWnt経路阻害剤は、動物試験及び臨床治験において著しい有害作用を呈している。臨床治験においてβ-カテニンを標的とする薬物は、PRI-724(Eisai Pharmaceuticals;第II相)、LGK974(Novartis;第I相)、ならびにOMP-54F28及びOMP-18R5(OncoMed/Bayer;第I相)を含め少数しか存在しない。加えて、β-catの小分子及びペプチド阻害剤によるLEF/TCF相互作用の妨害は、おそらく正常な造血性及び腸管の幹細胞における恒常性Wntシグナル伝達の妨害の結果である、処置マウスの重度の骨髄低形成、貧血、及び全身性消耗を含む深刻な副作用を及ぼし得る。そのような治療的な制限は、β-カテニンとTCF及びβ-カテニンとE-カドヘリンの相互作用の妨害に由来し得、これは上皮組織の完全性に影響を及ぼし得る。さらに、Frizzled受容体を標的とする生物学的薬剤(OMP-54F28及びOMP-18R5)は、臨床治験中に著しい骨髄毒性を示している。WntリガンドはWnt/β-cat活性化に必須であるが、癌細胞におけるAPC及びβ-カテニンの変異は、Wntリガンドの活性化なしに下流転写を誘導し得るため、Wnt分泌を遮断しても、APC及びβ-カテニンの変異により誘導された下流遺伝子転写に起因して、内因的な発癌性Wnt活性を阻害することができない。LGK974は、ある特定のバイオマーカーによって特定されるように、小さな患者集団しか標的としない。小分子阻害剤であるPRI-724は、毎日の注入を用いた第II相治験下にあるが、1週間に1回より多くの静脈内(IV)投薬は、臨床開発には望ましくなく支持されない特徴を呈する。
【0029】
従来、Wntシグナル伝達経路は、Wntがβ-カテニン依存様式により様々な転写標的遺伝子を制御する古典的Wntシグナル伝達経路、Wntがβ-カテニンから独立して機能し得る平面細胞極性に主に関与する非古典的Wntシグナル伝達経路、及び細胞内カルシウムレベルを制御する非古典的Wnt/カルシウム経路という、3つの異なる種類のシグナル伝達を含む。本出願において、「古典的Wntシグナル伝達」は、互換的に「古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達」または「Wntシグナル伝達」と称される。本明細書に記載されるように、古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達は、例えばβ-カテニンの安定性を調節することによって患者または試料におけるβ-カテニンの量を制御する経路成分を指す場合がある。いくつかの実施形態では、古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達は、c-myc、ccnd1、cd44、LGR5、VEGFA、AXIN2、及びLEF1などの1つ以上の遺伝子を転写的に調節する経路成分を含む。いくつかの実施形態では、古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達は、β-カテニンとBCL9との相互作用によって調節される経路成分を含む。いくつかの実施形態では、古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達は、β-カテニンとBCL9との相互作用によって転写的に制御される1つ以上の遺伝子を含む。β-カテニンとBCL9との相互作用によって制御される1つ以上の遺伝子は、c-myc、ccnd1、cd44、LGR5、VEGFA、AXIN2、及びLEF1を含み得る。いくつかの実施形態では、古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達は、β-カテニンとBCL9との相互作用によって転写発現が調節される1つ以上のタンパク質を含む。これらの成分は、例えば、c-Myc、サイクリンD1、CD44、LGR5、VEGFA、AXIN2、及びLEF1を含み得る。
【0030】
B. 安定化BCL-9ペプチド
安定化ペプチドは、増加したヘリックス含量、タンパク質分解安定性、及び標的受容体に対する増加した結合親和性などの利点をもたらすことが示されている(Kim 2011を参照されたい)。特に、α-ヘリックスドメインは安定化しやすいことで知られている。
【0031】
1. BCL9 HD2ドメインに由来するポリペプチド
BCL9のHD2ドメインは、β-カテニンへのBCL9の結合を媒介し、今までのところ、HD2ドメインは、BLC9のうち細胞内のβ-カテニンに結合することが示されている唯一のドメインである(de la Roche 2008を参照されたい)。HD2ドメインはα-ヘリックスを形成し、したがって、α-ヘリックスが安定化されているBCL9のHD2ドメインに由来するポリペプチドは、β-カテニンとBCL9の相互作用を阻害するために適切であり得る(Sampietro et al.,Molecular Cell,24,293-300(2006))。
【0032】
一実施形態において、BCL9タンパク質のHD2ドメインの一部分の活性のマッピングが、互換的にコア機能ドメインと称される活性領域を決定するために行われる。一実施形態において、BCL9のHD2ドメインの一部分を含有するペプチドは構造的に制約されている。ある特定の実施形態では、この構造的制約は、BCL9ペプチドのα-ヘリックスを安定化させる。
【0033】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、ヒトBCL9タンパク質のHD2ドメインに由来する。本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は互換的に使用され、結合して鎖を形成する2つ以上のアミノ酸を含むポリマーを指す。「ヒトBCL9タンパク質のHD2ドメインに由来するポリペプチド」という用語は、ヒトBCL9タンパク質の完全長HD2ドメイン及びそのようなHD2ドメインの断片を包含する。これには、完全長HD2ドメインまたは断片の変異体も包含される。ヒトBCL9タンパク質の完全長HD2ドメインの配列(配列番号X)は、表1に示されている。ヒトBCL9タンパク質のHD2ドメインに由来するポリペプチド、またはその変異体は、本明細書に開示されるように、ステープルまたは安定化することができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、ヒトBCL9タンパク質の完全長HD2ドメインを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、ヒトBCL9タンパク質のHD2ドメインの断片及び/または変異体を含む。ある特定の実施形態において、ヒトBCL9タンパク質のHD2ドメインに由来するポリペプチドは、1つ以上のアミノ酸を他の天然に存在するアミノ酸または天然に存在しないアミノ酸で置換することによってさらに修飾されている、ヒトBCL9タンパク質のHD2ドメインの断片を含む。ある実施形態では、ヒトBCL9タンパク質のHD2ドメインに由来するポリペプチドは、1つ以上の炭化水素架橋剤を形成する反応を受けることができる。本明細書で使用される場合、1つ以上の炭化水素架橋剤を形成する反応を受けることのできるポリペプチドは、「非ステープルドポリペプチド」と称されることがある。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、1つ以上の天然に存在しないアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、天然に存在しないアミノ酸は、ノルロイシンである。いくつかの実施形態では、天然に存在しないアミノ酸は、α,α-二置換アミノ酸である。いくつかの実施形態では、天然に存在しないアミノ酸は、α-メチル,α-アルケニルアミノ酸である。ある実施形態では、天然に存在しないアミノ酸は、S構成またはR構成のいずれかを有するキラル中心を含むキラル分子である。ある実施形態では、天然に存在しないアミノ酸は、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニン、(R)-2-(4´-ペンテニル)アラニン、(S)-2-(7´-オクテニル)アラニン、及び(R)-2-(7´-オクテニル)アラニンから選択される。
【0035】
本明細書で使用される場合、ヒトBCL9タンパク質のHD2ドメインに由来するポリペプチドは、1つ以上の炭化水素架橋剤を形成する反応を受け、したがって1つ以上の炭化水素架橋剤を含むポリペプチドも包含する。本明細書で使用される場合、1つ以上の炭化水素架橋剤を含むポリペプチドは、「安定化ポリペプチド」または「ステープルドポリペプチド」と称されることがある。いくつかの実施形態では、炭化水素架橋剤は、2~15の炭素長を有する。いくつかの実施形態では、炭化水素架橋剤は、5~11の炭素長を有する。いくつかの実施形態では、炭化水素架橋剤は、7~11の炭素長を有する。いくつかの実施形態では、炭化水素架橋剤は、7~15の炭素長を有する。いくつかの実施形態では、炭化水素架橋剤は、8~11の炭素長を有する。いくつかの実施形態では、炭化水素架橋剤は、7もしくは8もしくは9もしくは10もしくは11またはそれ以上の炭素長を有する。いくつかの実施形態では、炭化水素架橋剤は、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-及び-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-から選択される。
【0036】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるステープルドポリペプチドは、インビトロ及び/またはインビボでβ-カテニンへのBCL9の結合を阻害することができる。いくつかの実施形態では、ヒトBCL9タンパク質のHD2ドメインに由来するポリペプチドは、ヒトBCL9タンパク質の非ステープルド野生型HD2ドメインと比較した場合、または非ステープルド野生型HD2ドメインの断片と比較した場合に、改善された1つ以上の生物学的機能を有する。この1つ以上の生物学的機能は、(1)β-カテニンへのBCL9の結合を阻害すること、(2)古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達を阻害すること、(3)制御性T細胞の生存期間を減少させること、(4)腫瘍内のVEGFの発現を減少させること、(5)腫瘍へのCD4+T細胞及びCD8+T細胞の浸潤を増加させること、(6)腫瘍内のTヘルパー17(Th17)細胞を増加させること、(7)腫瘍内の樹状細胞を減少させること、(8)対象に投与されたときに少なくとも2時間超の半減期(T1/2)を有すること、(9)免疫反応に好ましい腫瘍微小環境を誘導すること、ならびに、(10)腫瘍増殖、癌幹細胞増殖、及び/または腫瘍転移を阻害することのうちの1つ以上から選択され得る。
【0037】
本開示は、野生型ポリペプチドの1つ以上の生物学的機能を保持する、ヒトBCL9タンパク質の野生型HD2ドメインの変異体、または非ステープルド野生型HD2ドメインの断片の変異体を含む、ステープルドペプチドを包含する。本明細書に記載されるポリペプチドとの関連で使用される「変異体」とは、アミノ酸配列及び/または化学構造において所与のポリペプチドと異なるが、所与のポリペプチド(すなわち、本明細書に記載されるポリペプチド)の1つ以上の生物学的機能を保持するポリペプチドを指す。例えば、変異体は、ヒトBCL9タンパク質のHD2ドメインに由来するポリペプチドの1つ以上の生物学的機能、例えば、β-カテニンに結合する能力、古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達の阻害、及び/またはβ-カテニンへのBCL9の結合の阻害などを保持することができる。
【0038】
本明細書に記載される変異体ポリペプチドは、上で言及した機能的特性を保持する限り、所与のポリペプチドと比べて1つ以上のアミノ酸付加(例えば挿入)、欠失、及び/または置換を有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される変異体ポリペプチドは、野生型ポリペプチドと比べて1~30、1~20、1~10、1~8、1~5、1~4、1~3、もしくは1~2、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、もしくは30個(これらの範囲間の全ての整数を含む)のアミノ酸付加(例えば挿入)、欠失、及び/または置換を有し得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、変異体は、所与のポリペプチドの1つ以上のアミノ酸の保存的置換を含む。アミノ酸の保存的置換、すなわち、あるアミノ酸を特性(例えば親水性ならびに荷電領域の程度及び分布)が同様の異なるアミノ酸で置き換えることは、通常は、それに伴う変化が軽微であるため、ポリペプチドの生物学的活性を著しく変更しない。こうした軽微な変化は、アミノ酸の疎水性及び電荷の考慮に基づいてアミノ酸の疎水性親水性指標を考慮することによって特定され得る。疎水性親水性指標及び親水性値が同様のアミノ酸は、置換されてもタンパク質機能を保持することができる。アミノ酸の疎水性指数及び親水性値の両方は、そのアミノ酸の特定の側鎖によって影響される。この観察に則せば、生物学的機能と適合性のあるアミノ酸置換は、疎水性、親水性、電荷、サイズ、及び他の特性によって明らかになる、アミノ酸の相対的類似性、そして特にこれらのアミノ酸の側鎖に左右される。
【0040】
いくつかの実施形態では、変異体は、野生型ポリペプチドまたは断片の1つ以上のアミノ酸の、天然に存在しないアミノ酸による置換を含む。いくつかの実施形態では、天然に存在しないアミノ酸は、ノルロイシンである。いくつかの実施形態では、天然に存在しないアミノ酸は、α,α-二置換アミノ酸である。いくつかの実施形態では、天然に存在しないアミノ酸は、α-メチル,α-アルケニルアミノ酸である。ある実施形態では、天然に存在しないアミノ酸は、S構成またはR構成のいずれかを有するキラル中心を含むキラル分子である。ある実施形態では、天然に存在しないアミノ酸は、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニン、(R)-2-(4´-ペンテニル)アラニン、(S)-2-(7´-オクテニル)アラニン、及び(R)-2-(7´-オクテニル)アラニンから選択される。
【0041】
「変異体(variant)」という用語には、野生型ポリペプチドまたは断片に対して、例えば少なくとも約50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%(またはこれらの間の任意の割合)などのある特定の相同性パーセントを有するポリペプチドが含まれる。本明細書で使用される場合、相同性パーセント(%)という用語は、変異体及び所与のポリペプチドのアミノ酸配列において、例えばBLASTアライメントソフトウェアを使用して配列及び他の空間配置をアラインした後に同一である残基の割合を定義する。
【0042】
いくつかの実施形態では、変異体には、野生型ポリペプチドまたは断片と異なる様式で化学的及び/または翻訳後に修飾されているが上述の1つ以上の生物学的機能を保持するポリペプチドが含まれる。例えば、変異体は、例えばリン酸化、アセチル化、メチル化、ユビキチン化、SUMO化、または当該技術分野で知られる他の翻訳後修飾によって移行後(post-transitionally)に修飾されている1つ以上のアミノ酸を含み得る。変異体は、1つ以上の化学修飾、例えば、異なる化学部分で修飾または置換されている1つ以上のアミノ酸側鎖を含んでもよい。本明細書で使用される場合、「変異体」という用語には、所与のポリペプチドとアミノ酸配列が同一であるが異なる炭化水素架橋剤を有するポリペプチドも包含される。「変異体」という用語は、所与のポリペプチドとアミノ酸配列及び化学構造が同一であるが異なるキラリティを有するポリペプチドを指す場合もある。
【0043】
2. BCL9 HD2ドメインに由来するポリペプチドの構造
いくつかの実施形態では、ヒトBCL9タンパク質のHD2ドメインに由来するポリペプチドは、7~22アミノ酸長を有する。いくつかの実施形態では、本ポリペプチドは、7~14アミノ酸長を有する。いくつかの実施形態では、本ポリペプチドは、7または8アミノ酸長を有する。いくつかの実施形態では、本ポリペプチドは、10~14アミノ酸長を有する。いくつかの実施形態では、本ポリペプチドは、11または12アミノ酸長を有する。
【0044】
いくつかの実施形態では、ヒトBCL9タンパク質のHD2ドメインに由来するポリペプチドは、7~14アミノ酸長を有し、表1から選択される任意の配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒトBCL9タンパク質のHD2ドメインに由来するポリペプチドは、7または8アミノ酸長を有し、表1から選択される任意の配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒトBCL9タンパク質のHD2ドメインに由来するポリペプチドは、10~14アミノ酸長を有し、表1から選択される任意の配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒトBCL9タンパク質のHD2ドメインに由来するポリペプチドは、10または11アミノ酸長を有し、表1から選択される任意の配列を含む。本明細書に記載されるポリペプチドには、表1から選択されるポリペプチドの変異体で、このポリペプチドの1つ以上の生物学的機能を保持するものも包含される。様々な実施形態において、選択されたポリペプチドは、例えば、1つ以上の炭化水素架橋を含むことによって安定化される。表1において、Bはノルロイシンを示す。
【0045】
【0046】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、1つ以上の炭化水素架橋剤を形成する反応を受けることができる。いくつかの実施形態では、本ポリペプチドは、表1から選択される任意の配列またはその変異体を含み、Xaa1、Xaa2、Xaa3、及びXaa4は各々、α,α-二置換アミノ酸である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、表1から選択される任意の配列を含み、Xaa1及びXaa2は各々、α,α-二置換アミノ酸であり、炭化水素架橋剤が、Xaa3とXaa4との間に存在する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、表1から選択される任意の配列を含み、Xaa3及びXaa4は各々、α,α-二置換アミノ酸であり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。いくつかの実施形態では、α,α-二置換アミノ酸は、α-メチル,α-アルケニルアミノ酸である。いくつかの実施形態では、α-メチル,α-アルケニルアミノ酸は、α-メチル,α-アルケニルアラニンである。いくつかの実施形態では、α-メチル,α-アルケニルアラニンは、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニン、(R)-2-(4´-ペンテニル)アラニン、(S)-2-(7´-オクテニル)アラニン、及び(R)-2-(7´-オクテニル)アラニンから選択される。
【0047】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドまたは変異体は、1つ以上の炭化水素架橋剤を含むステープルドポリペプチドであり、表1から選択される任意の配列またはその変異体を含む。いくつかの実施形態では、本ポリペプチドは、1つの炭化水素架橋剤を含むステープルドポリペプチドであり、Xaa1及びXaa2は各々、アラニンであり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。他の実施形態では、本ポリペプチドは、2つの炭化水素架橋剤を含むステープルドポリペプチドであり、(1)Xaa1、Xaa2、Xaa3、及びXaa4は各々、アラニンであり、(2)第1の炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在し、(3)第2の炭化水素架橋剤が、Xaa3とXaa4との間に存在する。いくつかの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する。いくつかの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にR構成を有する。いくつかの実施形態では、炭化水素架橋剤は、一方の末端にS構成を有し、他方の末端にR構成を有する。
【0048】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、LXaa1QEQXaa2E(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンである。
【0049】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、SXaa1EQLXaa2H(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンである。
【0050】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、QXaa1QLEXaa2R(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンである。
【0051】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、EXaa1LEHXaa2E(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンである。
【0052】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、QXaa1EHRXaa2R(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンである。
【0053】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、LXaa1HREXaa2S(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンである。
【0054】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、EXaa1RERXaa2L(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンである。
【0055】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、HXaa1ERSXaa2Q(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンである。
【0056】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、RXaa1RSLXaa2T(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンである。
【0057】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、EXaa1SLQXaa2L(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンである。
【0058】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、RXaa1LQTXaa2R(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンである。
【0059】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、SXaa1QTLXaa2D(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンである。
【0060】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、LXaa1TLRXaa2I(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンである。
【0061】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、QXaa1LRDXaa2Q(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンである。
【0062】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、TXaa1RDIXaa2R(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンである。
【0063】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、LXaa1DIQXaa2B(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンである。
【0064】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、RXaa1IQRXaa2L(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンである。
【0065】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、DXaa1QRBXaa2F(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンである。
【0066】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、LRXaa1IQRXaa2L(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンである。
【0067】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、LQTLRXaa1IQRXaa2L(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンである。
【0068】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、Xaa1LQXaa2LRXaa3IQRXaa4L(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa2、Xaa3、及びXaa4は各々、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンであり、一方でXaa1は、(R)-2-(4´-ペンテニル)アラニンである。
【0069】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、Xaa1DQXaa2DRXaa3DQRXaa4DH(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa2、Xaa3、及びXaa4は各々、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンであり、一方でXaa1は、(R)-2-(4´-ペンテニル)アラニンである。
【0070】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、Xaa1LEXaa2LRXaa3IERXaa4L(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa2、Xaa3、及びXaa4は各々、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンであり、一方でXaa1は、(R)-2-(4´-ペンテニル)アラニンである。
【0071】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、RXaa1LQXaa2LRXaa3IQRXaa4L(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa2、Xaa3、及びXaa4は各々、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンであり、一方でXaa1は、(R)-2-(4´-ペンテニル)アラニンである。
【0072】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、LQXaa1LRDIQRXaa2L(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1は、(R)-2-(7´-オクテニル)アラニンであり、Xaa2は、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンである。
【0073】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、LXaa1QEQXaa2E(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、アラニンであり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0074】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、SXaa1EQLXaa2H(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、アラニンであり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0075】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、QXaa1QLEXaa2R(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、アラニンであり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0076】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、EXaa1LEHXaa2E(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、アラニンであり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0077】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、QXaa1EHRXaa2R(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、アラニンであり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0078】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、LXaa1HREXaa2S(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、アラニンであり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0079】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、EXaa1RERXaa2L(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、アラニンであり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0080】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、HXaa1ERSXaa2Q(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、アラニンであり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0081】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、RXaa1RSLXaa2T(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、アラニンであり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0082】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、EXaa1SLQXaa2L(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、アラニンであり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0083】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、RXaa1LQTXaa2R(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、アラニンであり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0084】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、SXaa1QTLXaa2D(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、アラニンであり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0085】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、LXaa1TLRXaa2I(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、アラニンであり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0086】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、QXaa1LRDXaa2Q(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、アラニンであり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0087】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、TXaa1RDIXaa2R(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、アラニンであり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0088】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、LXaa1DIQXaa2B(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、アラニンであり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0089】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、RXaa1IQRXaa2L(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、アラニンであり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0090】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、DXaa1QRBXaa2F(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、アラニンであり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0091】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、LRXaa1IQRXaa2L(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、アラニンであり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0092】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、LQTLRXaa1IQRXaa2L(配列番号X)のアミノ酸配列を含み、かつ/またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、アラニンであり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0093】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドポリペプチドは、Xaa1LQXaa2LRXaa3IQRXaa4L(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、(1)Xaa3及びXaa4は各々、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンであり、(2)Xaa1及びXaa2は、アラニンであり、(3)炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、一方の末端にS構成を有し、他方の末端にR構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0094】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、Xaa1LQXaa2LRXaa3IQRXaa4L(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、(1)Xaa1は、(R)-2-(4´-ペンテニル)アラニンであり、Xaa2は、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンであり、(2)Xaa3及びXaa4は、アラニンであり、(3)炭化水素架橋剤が、Xaa3とXaa4との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0095】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、Xaa1LQXaa2LRXaa3IQRXaa4L(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1、Xaa2、Xaa3、及びXaa4は各々、アラニンであり、第1の炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在し、第2の炭化水素架橋剤が、Xaa3とXaa4との間に存在する。これらの実施形態では、第1の炭化水素架橋剤は、一方の末端にS構成を有し、他方の末端にR構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-であり、一方で、第2の炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0096】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、Xaa1DQXaa2DRXaa3DQRXaa4DH(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、(1)Xaa3及びXaa4は各々、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンであり、(2)Xaa1及びXaa2は、アラニンであり、(3)炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、一方の末端にS構成を有し、他方の末端にR構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0097】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、Xaa1DQXaa2DRXaa3DQRXaa4DH(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、(1)Xaa1は、(R)-2-(4´-ペンテニル)アラニンであり、Xaa2は、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンであり、(2)Xaa3及びXaa4は、アラニンであり、(3)炭化水素架橋剤が、Xaa3とXaa4との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0098】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、Xaa1DQXaa2DRXaa3DQRXaa4DH(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1、Xaa2、Xaa3、及びXaa4は各々、アラニンであり、第1の炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在し、第2の炭化水素架橋剤が、Xaa3とXaa4との間に存在する。これらの実施形態では、第1の炭化水素架橋剤は、一方の末端にS構成を有し、他方の末端にR構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-であり、一方で、第2の炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0099】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、Xaa1LEXaa2LRXaa3IERXaa4L(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、(1)Xaa3及びXaa4は各々、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンであり、(2)Xaa1及びXaa2は、アラニンであり、(3)炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、一方の末端にS構成を有し、他方の末端にR構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0100】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、Xaa1LEXaa2LRXaa3IERXaa4L(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、(1)Xaa1は、(R)-2-(4´-ペンテニル)アラニンであり、Xaa2は、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンであり、(2)Xaa3及びXaa4は、アラニンであり、(3)炭化水素架橋剤が、Xaa3とXaa4との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0101】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、Xaa1LEXaa2LRXaa3IERXaa4L(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1、Xaa2、Xaa3、及びXaa4は各々、アラニンであり、第1の炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在し、第2の炭化水素架橋剤が、Xaa3とXaa4との間に存在する。これらの実施形態では、第1の炭化水素架橋剤は、一方の末端にS構成を有し、他方の末端にR構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-であり、一方で、第2の炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0102】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、RXaa1LQXaa2LRXaa3IQRXaa4L(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、(1)Xaa3及びXaa4は各々、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンであり、(2)Xaa1及びXaa2は、アラニンであり、(3)炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、一方の末端にS構成を有し、他方の末端にR構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0103】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、RXaa1LQXaa2LRXaa3IQRXaa4L(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、(1)Xaa1は、(R)-2-(4´-ペンテニル)アラニンであり、Xaa2は、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニンであり、(2)Xaa3及びXaa4は、アラニンであり、(3)炭化水素架橋剤が、Xaa3とXaa4との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0104】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、RXaa1LQXaa2LRXaa3IQRXaa4L(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1、Xaa2、Xaa3、及びXaa4は各々、アラニンであり、第1の炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在し、第2の炭化水素架橋剤が、Xaa3とXaa4との間に存在する。これらの実施形態では、第1の炭化水素架橋剤は、一方の末端にS構成を有し、他方の末端にR構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-であり、一方で、第2の炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0105】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、LQXaa1LRDIQRXaa2L(配列番号X)のアミノ酸配列を含み、かつ/またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、アラニンであり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、一方の末端にR構成を有し、他方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドまたは変異体は、N末端及び/またはC末端における化学修飾をさらに含む。ある実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドまたは変異体のN末端は、さらに修飾されている。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドまたは変異体のN末端は、アセチル基へと修飾されている。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドまたは変異体のC末端は、さらに修飾されている。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドまたは変異体のC末端は、NH2で修飾されている。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドまたは変異体のC末端は、1つ、2つ、もしくはそれ以上のβ-アラニン単位、2-ナフチルアラニン、及び/または1つ、2つ、もしくはそれ以上のβ-アラニン単位に場合により連結した2-ナフチルアラニンで修飾されており、C末端修飾のカルボキシル基は、場合によりNH2でさらに修飾されている。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドまたは変異体のN末端及び/またはC末端は、フルオレニルメチルオキシカルボニル(frluorenylmethyloxycarbonyl)基(Fmoc)によってさらに保護されている。いくつかの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体は、例えばポリペプチドの細胞透過性、溶解性、及び安定性を改善させる1つ以上の化学部分にさらにコンジュゲートされている。ある実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体は、TATポリペプチド(GRKKRRQRRRPQ)にコンジュゲートされている。
【0106】
いくつかの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体は、表1から選択されるアミノ酸配列からなり、本ポリペプチドまたは変異体のN末端は、アセチル基でさらに修飾されており、本ポリペプチドまたは変異体のC末端は、NH2で修飾されている。
【0107】
いくつかの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体は、LRXaa1IQRXaa2L(配列番号X)のアミノ酸配列からなり、Xaa1及びXaa2は各々、アラニンであり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。これらの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体のN末端は、アセチル基でさらに修飾されていてもよい。これらの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体のC末端が、2つのβ-アラニン単位に連結した2-ナフチルアラニンでさらに修飾されており、第2のβ-アラニン単位のカルボキシル基が、NH2で修飾されていてもよい(2-Nal-β-Ala-β-Ala-NH2)。このポリペプチドは、本出願において「WX-021」と称される場合がある。
【0108】
いくつかの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体は、LRXaa1IQRXaa2L(配列番号X)のアミノ酸配列からなり、Xaa1及びXaa2は各々、アラニンであり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。これらの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体のN末端は、アセチル基でさらに修飾されていてもよい。これらの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体のC末端が、2つのβ-アラニン単位でさらに修飾されており、第2のβ-アラニン単位のカルボキシル基が、NH2で修飾されていてもよい(β-Ala-β-Ala-NH2)。このポリペプチドは、本出願において「WX-022」と称される場合がある。
【0109】
いくつかの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体は、LRXaa1IQRXaa2L(配列番号X)のアミノ酸配列からなり、Xaa1及びXaa2は各々、アラニンであり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。これらの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体のN末端は、アセチル基でさらに修飾されていてもよい。これらの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体のC末端が、2-ナフチルアラニンでさらに修飾されており、2-ナフチルアラニンのカルボキシル基が、NH2で修飾されていてもよい(2-Nal-NH2)。このポリペプチドは、本出願において「WX-023」と称される場合がある。
【0110】
いくつかの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体は、LQTLRXaa1IQRXaa2L(配列番号X)のアミノ酸配列からなり、Xaa1及びXaa2は各々、アラニンであり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。これらの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体のN末端は、アセチル基でさらに修飾されていてもよい。これらの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体のC末端は、2つのβ-アラニン単位に連結した2-ナフチルアラニンでさらに修飾されていてもよい。これらの実施形態では、本ポリペプチドは、TATペプチド(GRKKRRQRRRPQ)にさらにコンジュゲートされていてもよい。このポリペプチドは、本出願において「WX-029」と称される場合がある。
【0111】
いくつかの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体は、Xaa1LQXaa2LRXaa3IQRXaa4L(配列番号X)のアミノ酸配列からなり、Xaa1、Xaa2、Xaa3、及びXaa4は各々、アラニンであり、第1の炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在し、第2の炭化水素架橋剤が、Xaa3とXaa4との間に存在する。これらの実施形態では、第1の炭化水素架橋剤は、一方の末端にS構成を有し、他方の末端にR構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-であり、一方で、第2の炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。これらの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体のN末端は、アセチル基でさらに修飾されていてもよい。これらの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体のC末端は、2つのβ-アラニン単位に連結した2-ナフチルアラニンでさらに修飾されていてもよい。これらの実施形態では、本ポリペプチドは、TATペプチド(GRKKRRQRRRPQ)にさらにコンジュゲートされていてもよい。このポリペプチドは、本出願において「WX-036」と称される場合がある。
【0112】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、Xaa1DQXaa2DRXaa3DQRXaa4DH(配列番号X)のアミノ酸配列からなり、Xaa1、Xaa2、Xaa3、及びXaa4は各々、アラニンであり、第1の炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在し、第2の炭化水素架橋剤が、Xaa3とXaa4との間に存在する。これらの実施形態では、第1の炭化水素架橋剤は、一方の末端にS構成を有し、他方の末端にR構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-であり、一方で、第2の炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。これらの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体のN末端は、アセチル基でさらに修飾されていてもよい。これらの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体のC末端が、2つのβ-アラニン単位でさらに修飾されており、第2のβ-アラニン単位のカルボキシル基が、NH2で修飾されていてもよい(β-Ala-β-Ala-NH2)。このポリペプチドは、本出願において「WX-037」と称される場合がある。
【0113】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、Xaa1LEXaa2LRXaa3IERXaa4L(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1、Xaa2、Xaa3、及びXaa4は各々、アラニンであり、第1の炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在し、第2の炭化水素架橋剤が、Xaa3とXaa4との間に存在する。これらの実施形態では、第1の炭化水素架橋剤は、一方の末端にS構成を有し、他方の末端にR構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-であり、一方で、第2の炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。これらの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体のN末端は、アセチル基でさらに修飾されていてもよい。これらの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体のC末端が、2つのβ-アラニン単位に連結した2-ナフチルアラニンでさらに修飾されており、第2のβ-アラニン単位のカルボキシル基が、NH2で修飾されていてもよい(2-Nal-β-Ala-β-Ala-NH2)。このポリペプチドは、本出願において「WX-038」と称される場合がある。
【0114】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、RXaa1LQXaa2LRXaa3IQRXaa4L(配列番号X)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、Xaa1、Xaa2、Xaa3、及びXaa4は各々、アラニンであり、第1の炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在し、第2の炭化水素架橋剤が、Xaa3とXaa4との間に存在する。これらの実施形態では、第1の炭化水素架橋剤は、一方の末端にS構成を有し、他方の末端にR構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-であり、一方で、第2の炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。これらの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体のN末端は、アセチル基でさらに修飾されていてもよい。これらの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体のC末端が、2つのβ-アラニン単位に連結した2-ナフチルアラニンでさらに修飾されており、第2のβ-アラニン単位のカルボキシル基が、NH2で修飾されていてもよい(2-Nal-β-Ala-β-Ala-NH2)。このポリペプチドは、本出願において「WX-039」と称される場合がある。
【0115】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、LQXaa1LRDIQRXaa2L(配列番号X)のアミノ酸配列を含み、かつ/またはそれからなり、Xaa1及びXaa2は各々、アラニンであり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、一方の末端にR構成を有し、他方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。これらの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体のN末端は、アセチル基でさらに修飾されていてもよい。これらの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体のC末端が、2つのβ-アラニン単位に連結した2-ナフチルアラニンでさらに修飾されており、第2のβ-アラニン単位のカルボキシル基が、NH2で修飾されていてもよい(2-Nal-β-Ala-β-Ala-NH2)。このポリペプチドは、本出願において「WX-040」と称される場合がある。
【0116】
いくつかの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体は、LQTLRXaa
1IQRXaa
2L(配列番号X)のアミノ酸配列からなり、Xaa
1及びXaa
2は各々、アラニンであり、炭化水素架橋剤が、Xaa
1とXaa
2との間に存在する。これらの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。これらの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体のN末端は、アセチル基でさらに修飾されていてもよい。これらの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体のC末端が、2-ナフチルアラニンでさらに修飾されており、2-ナフチルアラニンのカルボキシル基が、NH
2で修飾されていてもよい(2-Nal-NH
2)。このポリペプチドは、本出願において「WX-024」と称される場合がある。WX-024の化学構造は
図1Aに示されている。
【0117】
いくつかの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体は、Xaa
1LQXaa
2LRXaa
3IQRXaa
4L(配列番号X)のアミノ酸配列からなり、Xaa
1、Xaa
2、Xaa
3、及びXaa
4は各々、アラニンであり、第1の炭化水素架橋剤が、Xaa
1とXaa
2との間に存在し、第2の炭化水素架橋剤が、Xaa
3とXaa
4との間に存在する。これらの実施形態では、第1の炭化水素架橋剤は、一方の末端にS構成を有し、他方の末端にR構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-であり、一方で、第2の炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。これらの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体のN末端は、アセチル基でさらに修飾されていてもよい。これらの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体のC末端が、2つのβ-アラニン単位に連結した2-ナフチルアラニンでさらに修飾されており、第2のβ-アラニン単位のカルボキシル基が、NH
2で修飾されていてもよい(2-Nal-β-Ala-β-Ala-NH
2)。このポリペプチドは、本出願において「WX-035」と称される場合がある。WX-035の化学構造は
図1Bに示されている。
【0118】
3. 炭化水素架橋剤
本明細書に記載されるポリペプチドは、1つ以上の炭化水素架橋剤を有する安定化ポリペプチドを包含し得る。炭化水素架橋剤は、BCL9のHD2ドメインに由来するポリペプチドのα-ヘリックスの構造的制約(複数可)をもたらし得る。一実施形態において、BCL9ペプチドのHD2ドメインに由来するポリペプチドのα-ヘリックスは、1つ以上の炭化水素架橋剤によって安定化される。本明細書で使用される場合、「炭化水素架橋剤」及び「架橋剤」(別名、炭化水素ステープル、炭化水素リンカー、またはメタセシスした架橋剤(metathesized crosslinker))という用語は、互換的に使用され、所与のポリペプチドの二次構造を著しく増強及び/または強化する2つのアミノ酸間の化学リンカーを指す。本明細書に記載される炭化水素架橋剤は、ポリペプチドの構造的可撓性を野生型の(すなわち、架橋していない)ペプチドと比較して制限する天然または非天然のアミノ酸の組み込みに基づいていてもよい。
【0119】
例えば、本明細書で使用される炭化水素架橋剤は、ヒトBCL9のHD2ドメインに由来するポリペプチドのα-ヘリックス構造の安定性を向上させることができる。炭化水素架橋剤は、1つ以上のα-ヘリックスターンの長さにわたって延びることができる。1つのα-ヘリックスターンが約3~4個のアミノ酸を含むことが一般に理解されているように、例えば、i及びi+3;i及びi+4;またはi及びi+7に位置するアミノ酸が、炭化水素架橋剤を導入するのに理想的な位置となることも理解されよう。例えば、X1X2X3X4X5X6X7X8X9X10の配列を有するポリペプチドは、例えば、X1とX4との間、X1とX5との間、またはX1とX8との間の炭化水素架橋剤によって架橋されていてもよい。しかしながら、α-ヘリックス構造もしくは他の既知の構造(例えば、β-シート構造)の安定性を向上させるため、及び/または、例えばヘリックスターン1つ当たりのアミノ酸の数を変更することによって二次構造に変異を導入するために、代替的な間隔を有する他の位置を考慮してもよい。したがって、本明細書に詳解されるヒトBCL9タンパク質のHD2ドメインに由来するポリペプチドのいずれも、任意の好適な位置で架橋されていてよい。
【0120】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される安定化ポリペプチドは、i及びi+3、i及びi+4、またはi及びi+7の位置に炭化水素架橋を含む。ある特定の実施形態において、この架橋は、第1のアミノ酸(i)と、第1のアミノ酸の3アミノ酸下流で生じる第2のアミノ酸(i+3)とを連結させる。ある特定の実施形態において、この架橋は、第1のアミノ酸(i)と、第1のアミノ酸から4アミノ酸下流で生じる第2のアミノ酸(i+4)とを連結させる。ある特定の実施形態において、この架橋は、第1のアミノ酸(i)と、第1のアミノ酸から7アミノ酸下流で生じる第2のアミノ酸(i+7)とを連結させる。
【0121】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、2つ以上の炭化水素架橋剤を含む。いくつかの実施形態では、本ペプチドは、2つの炭化水素架橋剤で安定化されている。いくつかの実施形態では、本ペプチドは、3つの架橋剤で安定化されている。例えば、3つの架橋剤は、より長い構造、例えば24アミノ酸を有する構造に使用され得る。2つ以上の炭化水素架橋剤の使用は、炭化水素架橋剤を含まないポリペプチドまたは1つの炭化水素架橋剤を含むポリペプチドと比較して、所与のポリペプチドの二次構造を増強及び/または強化するために有益となり得る。単一のペプチド内にある複数の炭化水素架橋は、より良好な安定性及び改善された薬物動態プロファイルなど、さらなる安定性をアルファヘリックスに与え得る。いくつかの実施形態では、複数の架橋は、単一のポリペプチド内に存在する。ある特定の実施形態では、これらの架橋は、架橋のアミノ酸間に同じ距離で連続していてもよい。一実施形態において、2つの架橋がi位及びi+3位、ならびにi´位及びi´+3位で存在する。i´位はiとi+3との間に存在してもよいし、またはi+3位の後に存在してもよい。一実施形態において、2つの架橋は、i位及びi+4位ならびにi´位及びi´+4位にある。i´位はiとi+4との間に存在してもよいし、またはi+4位の後に存在してもよい。一実施形態において、2つの架橋は、i位及びi+7位ならびにi´位及びi´+7位にある。i´位はiとi+7との間に存在してもよいし、またはi+7位の後に存在してもよい。
【0122】
ある特定の実施形態では、単一のペプチド内にある2つの架橋は、一方の架橋がi位及びi+3位、i位及びi+4位、またはi位及びi+7位にあり、他方の架橋が連結したアミノ酸間で異なる空間配置を有する、混合位置にある。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、2つの炭化水素架橋剤を有し、一方の架橋剤がi位及びi+3位にあり、他方の架橋剤がi´位及びi´+4位にある。いくつかの実施形態では、i´位はiとi+3との間に存在してもよいし、またはi+3位の後に存在してもよい。いくつかの実施形態では、i位は、i´とi´+4との間に存在してもよいし、またはi´+4位の後に存在してもよい。
【0123】
様々な炭化水素架橋剤が当該技術分野において公知である。(Azzarito et al.,Nature Chemistry 5:161-173(2013))。いくつかの実施形態では、本明細書において開示される炭化水素架橋剤は、単一のポリペプチドに組み込まれた2つのα,α-二置換アミノ酸を接続することによって生成される。いくつかの実施形態では、炭化水素架橋剤は、2つのα,α-二置換アミノ酸を接続する閉環メタセシス反応によって生成される。閉環メタセシス(別称、閉環オレフィンメタセシス)は、当該技術分野において公知である(Kim et al.,Nature Protocols 6:761-771(2011))。
【0124】
本明細書に記載される炭化水素架橋剤の長さは、α,α-二置換アミノ酸の置換基の長さに応じて様々であり得る。例えば、好適なα,α-二置換アミノ酸を使用することにより、閉環メタセシス反応によって生成される炭化水素架橋剤は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15の炭素長を有し得る。いくつかの実施形態では、炭化水素架橋剤は、8~12の炭素長を有する。いくつかの実施形態では、炭化水素架橋剤は、8または11の炭素長を有する。ある特定の実施形態では、炭化水素リンカーは、8炭素長である。ある特定の実施形態では、炭化水素リンカーは、11炭素長である。炭化水素架橋剤の長さは、炭化水素架橋剤が1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のヘリックスターンにわたって延びるかどうかに応じて調整され得る。例えば、8炭素長を有する炭化水素架橋剤は、i位及びi+3位またはi位及びi+4位の接続に使用され得る。11炭素長を有する炭化水素架橋剤は、i位及びi+7位の接続に使用され得る。
【0125】
いくつかの実施形態では、炭化水素架橋剤は、アルケニル架橋剤である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される炭化水素架橋剤は、2つのα-アルキル,α-アルケニルアミノ酸を接続することによって生成される。いくつかの実施形態では、α-アルキル,α-アルケニルアミノ酸は、α-メチル,α-アルケニルアミノ酸である。いくつかの実施形態では、α-メチル,α-アルケニルアミノ酸は、α-メチル,α-アルケニルアラニンである。いくつかの実施形態では、α-メチル,α-アルケニルアラニンは、(S)-2-(4´-ペンテニル)アラニン、(R)-2-(4´-ペンテニル)アラニン、(S)-2-(7´-オクテニル)アラニン、及び(R)-2-(7´-オクテニル)アラニンから選択される。いくつかの実施形態では、炭化水素架橋剤は、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。いくつかの実施形態では、炭化水素架橋剤は、-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0126】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される炭化水素架橋剤は、架橋剤のいずれかの末端にキラリティを有し得る。いくつかの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する。いくつかの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にR構成を有する。いくつかの実施形態では、炭化水素架橋剤は、一方の末端にS構成を有し、他方の末端にR構成を有する。いくつかの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。いくつかの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にR構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。いくつかの実施形態では、炭化水素架橋剤は、一方の末端にS構成を有し、他方の末端にR構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。いくつかの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にS構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。いくつかの実施形態では、炭化水素架橋剤は、両方の末端にR構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。いくつかの実施形態では、炭化水素架橋剤は、一方の末端にS構成を有し、他方の末端にR構成を有する、-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0127】
様々な非炭化水素リンカーが、文献において公知である(Azzarito et al.,Nat Chem 5:161-173(2013)を参照されたい)。いくつかの実施形態では、本ペプチドは、ジスルフィド架橋、ラクタム架橋、水素結合サロゲート、またはトリアゾールステープルである架橋剤によって安定化されている。
【0128】
4. 炭化水素架橋剤を有するペプチドの調製及び精製
本開示はまた、本明細書に記載されるポリペプチドを製造する方法を提供する。かかる方法は、1つ以上の炭化水素架橋剤を形成する反応を受けることのできるポリペプチドを生成することを含み、このポリペプチドは、表1から選択される任意の配列またはその変異体を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、LQTLRXaa1IQRXaa2L(配列番号X)、Xaa1LQXaa2LRXaa3IQRXaa4L(配列番号X)、またはそれらの変異体を含む、ポリペプチドを生成することを含む。いくつかの実施形態では、Xaa1、Xaa2、Xaa3、及びXaa4は各々、α,α-二置換アミノ酸であり、Xaa1及びXaa2は各々、α,α-二置換アミノ酸であり、炭化水素架橋剤が、Xaa3とXaa4との間に存在するか、または、Xaa3及びXaa4は各々、α,α-二置換アミノ酸であり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する。いくつかの実施形態では、α,α-二置換アミノ酸は、α-メチル,α-アルケニルアミノ酸である。
【0129】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドを製造するための方法は、当業者に公知であり本明細書に記載される1つ以上の化学合成法を行うことを含む。例えば、Fields et al.,Chapter 3 in Synthetic Peptides:A User´s Guide,ed.Grant,W.H.Freeman & Co.,New York,N.Y.,1992,p.77、及びBird,G.H.,et al.,Methods Enzymol 446,369-86(2008)を参照されたい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドを製造するための方法は、固相合成を使用してポリペプチドを生成することを含む。例えば、本明細書に記載されるポリペプチドは、例えば、Applied Biosystemsのペプチドシンセサイザーモデル430Aもしくは431またはAAPPTECのマルチチャネルシンセサイザーAPEX 396で、側鎖保護アミノ酸を使用し、t-BocまたはFmocのいずれかの化学によって保護されたアルファ-NH2を用いた、固相合成の自動化されたMerrifield技術によって製造することができる。
【0130】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、高スループットのコンビナトリアル様式で、例えば高スループットのマルチチャネルコンビナトリアルシンセサイザーを使用して製造され得る。当該技術分野では、ペプチドを合成する他の方法も公知である。
【0131】
本明細書に記載されるポリペプチドを製造する方法は、1つ以上の炭化水素架橋剤を形成することをさらに含み得る。この1つ以上の炭化水素架橋剤は、本明細書に記載されるポリペプチドを金属媒介性閉環オレフィンメタシセスに供することによって形成されてもよい。例えば、修飾されたAla残基(α-メチル,α-アルケニルアミノ酸)に基づいて炭化水素架橋剤を生成するための合成方針は、当業者には公知であろう。炭化水素架橋剤は、各末端にα-メチル基が位置しているα-ヘリックスの隣接するターンを接続する。この炭化水素架橋剤を生成する化学の基礎は、ペプチドの合成中の2つのα-メチル,α-アルケニルアミノ酸の組み込みである(Kim 2011を参照されたい)。次いで、ルテニウム媒介性閉環オレフィンメタセシスの使用により、これらの修飾アミノ酸間に炭化水素架橋剤が生成される。閉環後、ポリペプチドは脱保護され、かかる反応から解放され、1つ以上の炭化水素架橋剤を含むポリペプチドがもたらされ得る。
【0132】
本開示は、本明細書に記載される方法に従って製造されたポリペプチドを精製する方法も包含する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、高性能液体クロマトグラフ(HPLC)によって精製される。いくつかの実施形態では、精製されたポリペプチドは、金属を実質的に含まない。本明細書で使用される場合、「金属を実質的に含まない」という用語は、本明細書に記載されるポリペプチド及び金属を約0.5、1、2.5、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100ppm未満の濃度で含む組成物を指す。いくつかの実施形態では、精製されたポリペプチドは、金属を実質的に含まず、約0.5ppm未満を含む。いくつかの実施形態では、精製されたポリペプチドは、約5ppm未満を含む。いくつかの実施形態では、精製されたポリペプチドは、約20ppm未満を含む。
【0133】
本明細書に開示される方法に従って製造されたポリペプチドは、溶媒の存在下または非存在下で様々な形態で存在し得る。例えば、本ポリペプチドは、粉末、塩、液体、結晶、または凍結乾燥組成物として存在し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、塩形態または結晶として存在する。好適な塩形態の例としては、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、アジピン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、パルモ酸塩(palmoate)、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、及びウンデカン酸塩が挙げられる。「結晶」及び「結晶化」という用語は、結晶の形態で存在するポリペプチドを指す。結晶は、固体状態の物質の一形態であり、無定形固体状態または液晶状態などの他の形態とは明確に異なる。本明細書に記載されるポリペプチドの塩形態または結晶は、異なる形態(例えば粉末形態)で製造されているポリペプチドの1つ以上の生物学的機能を保持する。いくつかの実施形態では、塩形態はトリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、または塩酸塩である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、塩形態で存在し、室温で少なくとも1か月にわたって安定である。ある実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、2~8℃で少なくとも1か月にわたって安定である。
【0134】
本明細書に記載されるポリペプチドは、例えば所与のポリペプチドの細胞透過性、溶解性、及び安定性を改善することで知られている1つ以上の化学部分にコンジュゲートされていてもよい。「コンジュゲート」という用語は、第2の化学部分に化学的に連結しているポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、本ポリペプチドは、1つ以上の修飾、例えば、細胞透過性増加部分及び細胞標的化部分にコンジュゲートされている。これらの分類における様々な修飾が当該技術分野において公知である。例えば、本明細書に記載されるポリペプチドは、PEG化されていてもよく、これは、細胞取り込みを促進し、生物学的利用率を増加させ、血液循環及び半減期を増加させ、薬物動態を変化させ、免疫原性を減少させ、かつ/または必要な投与頻度を減少させることで知られる修飾である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、Ant8(アンテナペディア8マーペプチド)、TATペプチド(GRKKRRQRRRPQ)、または1つ以上のβ-アラニン単位にコンジュゲートされている。
【0135】
様々な実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチドは、薬剤にコンジュゲートされていてもよい。ある実施形態では、この薬剤は、イムノアドヘシン分子、造影剤、治療剤、または細胞傷害剤である。一実施形態において、造影剤は、放射標識、酵素、蛍光標識、発光標識、生物発光標識、磁気標識、またはビオチンである。別の実施形態では、放射標識は、3H、14C、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I、177Lu、166Ho、または153Smである。さらに別の実施形態では、治療剤または細胞傷害剤は、代謝拮抗薬、アルキル化剤、抗生物質、増殖因子、サイトカイン、抗血管新生薬、有糸分裂阻害剤、アントラサイクリン、毒素、またはアポトーシス剤、抗癌剤、免疫抑制剤、または免疫反応刺激剤である。
【0136】
様々な実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドをコードする単離された核酸も提供される。また、本明細書に開示される単離された核酸を含むベクター(例えば発現ベクター)も提供される。
【0137】
別の態様では、本明細書に開示されるベクターで宿主細胞が形質転換される。一実施形態において、宿主細胞は、原核細胞、例えばE.coliである。別の実施形態では、宿主細胞は、真核細胞、例えば、原生生物細胞、動物細胞、植物細胞、または真菌細胞である。一実施形態において、宿主細胞は、CHO、COS、NS0、SP2、PER.C6を含むがこれらに限定されない哺乳動物細胞、またはSaccharomyces cerevisiaeなどの真菌細胞、またはSf9などの昆虫細胞である。
【0138】
様々な実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドは、本ポリペプチドを産生するのに十分な条件下の培養培地で本明細書に開示される宿主細胞のうちのいずれか1つを培養することによって調製することができる。
【0139】
5. 薬学的組成物
様々な実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドのうちの1つ以上を、単独で、あるいは他の予防薬、治療剤、及び/または薬学的に許容される担体と組み合わせて含む、薬学的組成物が提供される。いくつかの実施形態では、本薬学的組成物は、本明細書に記載される1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のポリペプチドを含み得る。本明細書に提供されるポリペプチドを含む薬学的組成物は、限定されないが、障害の診断、検出、もしくは監視、障害もしくはその1つ以上の症状の防止、処置、もしくは寛解、及び/または研究において使用するためのものである。
【0140】
「薬学的に許容される担体」とは、例えば、対象への投与に好適な「薬学的組成物」を構成するために本明細書に記載されるポリペプチドと併用される、ありとあらゆる溶媒、固体、半固体、液体充填剤、希釈剤、被包材料、製剤化補助剤、媒体、等張剤、及び吸収遅延剤を指す。薬学的に活性な物質にそのような媒体及び薬剤を使用することは、当該技術分野において周知である。補足的な活性化合物を組成物に組み込むこともできる。薬学的に許容される担体は、組成物の使用及び/または投与経路に基づいて選択され得る。
【0141】
本薬学的組成物は、例えば、錠剤、カプセル、ゲルカプセル、粉末、または顆粒などの、多くの可能な剤形のうちのいずれに製剤化されてもよい。本薬学的組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、または混合媒体として製剤化されてもよい。いくつかの実施形態では、本薬学的組成物は、凍結乾燥製剤または水溶液として製剤化されてもよい。
【0142】
いくつかの実施形態では、本薬学的組成物は、溶液として製剤化されてもよい。例えば、本明細書に記載されるポリペプチドは、非緩衝溶液中、例えば、食塩水中、水中、またはジメチルスルホキシド(DMSO)中で投与されてもよい。いくつかの実施形態では、本ポリペプチドは、好適な緩衝溶液中で投与されてもよい。例えば、緩衝溶液は、酢酸塩、クエン酸塩、プロラミン、炭酸塩、またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態では、緩衝溶液は、リン酸緩衝食塩水(PBS)であってもよい。本ポリペプチドを含有する緩衝溶液のpH及び重量オスモル濃度は、対象への投与に好適となるように調整され得る。
【0143】
いくつかの実施形態では、本薬学的組成物は、水性媒体、非水性媒体、または混合媒体中の懸濁液として製剤化されてもよい。いくつかの実施形態では、本薬学的組成物は、水及びDMSOを含む混合媒体で製剤化される。水性懸濁液は、例えば、カルボキシメチルセルロース、ソルビトール、及び/またはデキストランといった、懸濁液の粘度を増加させる物質をさらに含有してもよい。懸濁液は、安定剤を含有してもよい。
【0144】
いくつかの実施形態では、本薬学的組成物は、インビボ投与のために使用され、無菌であってもよい。無菌性は、例えば、滅菌濾過膜を通した濾過によって容易に達成され得る。
【0145】
様々な実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチドを含む薬学的組成物は、少なくとも1つの追加の薬剤をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加の薬剤は、チェックポイント阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、VEGFR阻害剤、及び抗癌薬のうちの1つ以上から選択される。
【0146】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される薬学的組成物は、チェックポイント阻害剤を含む。一実施形態において、チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、または抗CTLA4抗体である。一実施形態において、チェックポイント阻害剤は、例えば、CD27、CD40、OX40、GITR、またはCD138などの刺激性チェックポイント分子を標的とする。さらに別の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、例えば、A2AR、B7-H3、B7-H4、Bリンパ球及びTリンパ球のアテニュエーター(BTLA)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、T細胞免疫グロブリンドメイン及びムチンドメイン3(TIM-3)、VISTA(C10orf54)、またはT細胞活性化のVドメインIg抑制因子などの阻害性チェックポイント分子を標的とする。
【0147】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の薬学的組成物は、EGFR阻害剤を含む。一実施形態において、EGFR阻害剤は、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、パニツムマブ、バンデタニブ、またはセツキシマブである。
【0148】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される薬学的組成物は、VEGFまたはVEGFR阻害剤を含む。一実施形態において、VEGFまたはVEGFR阻害剤は、パゾパニブ、ベバシズマブ、ソラフェニブ、スニチニブ、アキシチニブ、ポナチニブ、レゴラフェニブ、バンデタニブ、カボザンチニブ、ラムシルマブ、レンバチニブ、またはziv-アフリベルセプトである。
【0149】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される薬学的組成物は、抗癌薬を含む。抗癌薬は、シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル(5-FU)、ドキソルビシン、ムスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾロン、ダカルバジン、ブレオマイシン、エトポシド、シスプラチン、エピルビシン、カペシタビン、フォリン酸、アクチノマイシン、全トランス型レチノイン酸、アザシチジン、アザチオプリン、ボルテゾミブ、カルボプラチン、クロランブシル、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イマチニブ、イリノテカン、メクロレタミン、メルカプトプリン、ミトキサントロン、パクリタキセル、ペメトレキセド、テニポシド、チオグアニン、トポテカン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、及びオキサリプラチンから選択され得る。
【0150】
C. BCL9のHD2ドメインに由来するポリペプチドの生物学的機能
本開示は、安定化ペプチドを含む、ヒトBCL9タンパク質のHD2ドメインに由来するポリペプチドまたはその変異体を包含し、このポリペプチドは、次の分類のうちの1つ以上における好ましい生物学的機能を呈する:(a)BCL9に対するポリペプチドの結合動態(オン速度、オフ速度、及び親和性)、(b)様々な生化学アッセイ及び細胞バイオアッセイにおける効力、(c)関連性のある腫瘍モデルにおけるインビボでの有効性、(d)薬物動態及び薬物動力の特性、ならびに(e)毒性学的特性。
【0151】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、上記に列記した分類のうちのいくつかまたは各々における好ましい生物学的機能、例えば、細胞ベースのWnt及び/またはβ-カテニン転写アッセイを含む様々な生化学アッセイ及び細胞バイオアッセイにおける効力を呈する。「生物学的機能」という用語は、インビトロまたはインビボで測定される本明細書に記載のポリペプチドの作用を指す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、(1)β-カテニンへのBCL9の結合を阻害すること、(2)古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達を阻害すること、(3)制御性T細胞の生存期間を減少させること、(4)腫瘍内のVEGFの発現を減少させること、(5)腫瘍へのCD4+T細胞及びCD8+T細胞の浸潤を増加させること、(6)腫瘍内のTヘルパー17(Th17)細胞数を増加させること、(7)腫瘍内の樹状細胞を調節すること、(8)対象に投与されたときに少なくとも2時間超の半減期(T1/2)を有すること、(9)免疫反応に好ましい腫瘍微小環境を誘導すること、ならびに(10)腫瘍増殖、癌幹細胞増殖、及び/または腫瘍転移を阻害することから選択される、非ステープルド野生型ヒトBCL9のHD2ドメインまたは野生型断片と比較して改善された1つ以上の生物学的機能を有する。これらの特性を測定するための様々なアッセイが当該技術分野において公知であり、本明細書で使用され得る。
【0152】
いくつかの実施形態では、WX-024は、別のステープルドペプチド、非ステープルド野生型ヒトBCL9のHD2ドメイン、または野生型断片と比較して改善された、1つ以上の生物学的機能を有し、この生物学的機能は、本明細書に記載の生物学的機能から選択される。いくつかの実施形態では、改善された生物学的機能は、活性(例えばインビトロ及び/またはインビボで測定されるもの)及び薬物動態のうちの1つ以上である。いくつかの実施形態では、WX-035は、別のステープルドペプチド、非ステープルド野生型ヒトBCL9のHD2ドメイン、または野生型断片と比較して改善された、1つ以上の生物学的機能を有し、この生物学的機能は、本明細書に記載の生物学的機能から選択される。いくつかの実施形態では、改善された生物学的機能は、活性(例えばインビトロ及び/またはインビボで測定されるもの)及び薬物動態のうちの1つ以上である。
【0153】
本開示は、本ポリペプチドの変異体も包含し、この変異体は、アミノ酸配列及び/または化学構造において野生型ポリペプチドと異なるが、本ポリペプチドの1つ以上の生物学的機能を保持するものである。
【0154】
本明細書で使用される場合、1つ以上の生物学的機能を「改善する」、「増加させる」、「向上させる」、「上昇させる」、「上方制御する」、及び「促進する」という用語は、全て互換的に使用され、1つ以上の生物学的機能のレベルもしくは活性、またはインビトロ及び/もしくはインビボアッセイでのこれらの機能の計測値が、本明細書に記載されるポリペプチドの非存在下で観察されるレベルもしくは活性を超えて増加すること、ならびに/あるいは、ビヒクルもしくは対照ポリペプチド(例えば、非ステープルド野生型ヒトBCL9のHD2ドメイン、BCL9とβ-カテニンとの相互作用を媒介するコア機能ドメインを含まないポリペプチド、またはヒトBCL9のHD2ドメインに由来しない配列を含む対照ポリペプチドなど)よりも高いことを意味する。例えば、いずれの理論にも束縛されるものではないが、本明細書に記載されるポリペプチドは、様々なインビトロアッセイで評価した場合に、例えば、均質時間分解蛍光(HTRF)アッセイにおいて、対照ポリペプチド、例えば非ステープルド野生型ヒトBCL9のHD2ドメインと比較した場合に、β-カテニンへのBCL9の結合を阻害することにおいて改善された生物学的機能を有し得る。この文脈において、本明細書に記載されるポリペプチドは、対照ポリペプチドのものと比較して改善されたKD値を有し得るか、または、本明細書に記載されるポリペプチドは、対照ポリペプチドの存在下でβ-カテニンに結合し得、これは、本明細書に記載されるポリペプチドが、対照ポリペプチドと比較して改善された、β-カテニンへのBCL9の結合を阻害する能力を有することを示す。
【0155】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドの生物学的機能を評価するために使用されるアッセイは、定量的計測値(複数可)を提供し、開示されるポリペプチドで観察される計測値は、ビヒクル対照ポリペプチド(例えば、非ステープルド野生型ヒトBCL9のHD2ドメイン)で観察されるものと比較して、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、またはそれ以上変化/改善したものである。
【0156】
生物学的活性/機能を測定するための様々なアッセイが当該技術分野において公知であり、そのいくつかは、例示のみを目的とした非限定的な例として本明細書に記載されている。
【0157】
1. β-カテニンへのBCL9の結合
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドまたは変異体は、インビトロ及び/またはインビボでβ-カテニンへのBCL9の結合を阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるポリペプチドまたは変異体は、PygoとBCL9との相互作用またはPygo/BCL9/β-カテニン複合体の形成を阻害する。Pygopus(Pygo)及びLegless(Lgs)は、正常な発達中のArmadillo媒介性転写に必須である新たなWntシグナル伝達成分としてショウジョウバエにおいて発見された(Belenkaya et al.,Development(2002)129(17):4089-4101)。Pygo及びBCL9/Leglessは、正常細胞及び悪性細胞におけるベータ-カテニン/Armadilloの転写活性を促進することにより、Wntシグナルを伝達する。β-カテニンへのBCL9の結合を阻害するポリペプチドの能力は、当該技術分野において公知の様々なアッセイで評価され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、均質時間分解蛍光(HTRF)結合アッセイで評価したとき、β-カテニンへのBCL9の結合を阻害する。このアッセイでは、ポリペプチドが、その標的タンパク質(すなわちβ-カテニン)に結合した別のタグを認識することのできるタグにコンジュゲートされる。ポリペプチドが標的タンパク質に結合し、したがって2つのタグが近接しているとき、シグナルが生成され、これを定量的に読み取ると、ポリペプチドの結合親和性を計算することができる。いくつかの実施形態では、このアッセイにおけるポリペプチドの結合親和性を、対照ポリペプチド(例えば、非ステープルド野生型HD2ドメインヒトBCL9)の結合親和性と比較することで、対照ポリペプチドの結合親和性と比較して改善された結合親和性が検出され、これは、このポリペプチドがβ-カテニンへのBCL9の結合を対照ポリペプチドよりも効率的に阻害する可能性が高いことを示す。このアッセイは、タグなしの対照ポリペプチドの存在下または非存在下で行われてもよい。このアッセイは、本明細書に記載されるタグなしポリペプチド(例えばWX-024)の存在下または非存在下で、対照ポリペプチド(例えば、非ステープルド野生型HD2ドメインヒトBCL9)をタグ付けすることによって行われてもよい。
【0158】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、増幅型ルミネッセンスプロキシミティホモジニアスアッセイ(Amplified Luminescence Proximity Homogeneous Assay、ALPHA)で評価したとき、β-カテニンへのBCL9の結合を阻害する。このアッセイでは、ポリペプチドをドナービーズにコンジュゲートし、その標的タンパク質(すなわちβ-カテニン)をアクセプタービーズに結合させる。ポリペプチドが標的タンパク質に結合することにより2種のビーズが近接するとシグナルが生成され、ポリペプチドの結合親和性を定量的に計算することができる。いくつかの実施形態では、このアッセイにおけるポリペプチドの結合親和性を、ビヒクルまたは対照ポリペプチド(例えば、非ステープルド野生型HD2ドメインヒトBCL9)の結合親和性と比較することで、ビヒクルまたは対照ポリペプチドの結合親和性と比較して改善された結合親和性が検出され、これは、このポリペプチドがβ-カテニンへのBCL9の結合を対照ポリペプチドよりも効率的に阻害する可能性が高いことを示す。このアッセイは、コンジュゲートされていない対照ポリペプチドの存在下または非存在下で行われてもよい。このアッセイは、本明細書に記載されるコンジュゲートされていないポリペプチド(例えばWX-024)の存在下または非存在下で、対照ポリペプチドをコンジュゲートすることによって行われてもよい。
【0159】
様々な実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチドは、Wnt転写アッセイで評価したとき、β-カテニンへのBLC9の結合を阻害する。いくつかの実施形態では、Wnt転写アッセイは、細胞ベースのアッセイである。いくつかの実施形態では、細胞ベースのWnt転写アッセイは、GeneBLAzer(登録商標)ベータ-ラクタマーゼ(bla)レポーターアッセイである。様々な細胞株、形質転換細胞株、または健常な対象もしくは疾患を患う対象に由来する初代細胞をこのアッセイで使用することができる。生存のために古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達に依存することで知られる細胞株を使用してもよい。いくつかの実施形態では、CellSensor(商標)LEF/TCF-bla HCT-116細胞がこのレポーターアッセイで使用される。これらの細胞は、HCT-116細胞に安定に組み込まれたβ-カテニン/LEF/TCF応答エレメントの制御下にあるベータ-ラクタマーゼ(BLA)レポーター遺伝子を含有する。これらの細胞は恒常的にベータ-ラクタマーゼを発現するため、このアッセイにおいてβ-カテニンへのBCL9の結合を阻害するポリペプチドを付加することは、ベータ-ラクタマーゼの産生の低減につながる。したがって、ポリペプチドがWnt転写を抑制する効率は、このアッセイにおいて定量的に計算され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、GeneBLAzer(登録商標)ベータ-ラクタマーゼ(bla)レポーターアッセイで測定した場合にWnt転写を抑制し、これは、β-カテニンへのBCL9の結合を阻害するポリペプチドの能力を示す。いくつかの実施形態では、このアッセイで試験されたポリペプチドは、Wnt転写の抑制において、ビヒクルまたは対照ポリペプチド(例えば、非ステープルド野生型HD2ドメインヒトBCL9)のものと比較して改善されたIC50を示し、これは、開示されるポリペプチドがβ-カテニンへのBCL9の結合をビヒクルまたは対照ポリペプチドよりも効率的に阻害する可能性が高いことを示す。
【0160】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、細胞生存率アッセイで評価したとき、β-カテニンへのBLC9の結合を阻害する。いくつかの実施形態では、細胞生存率アッセイは、細胞の生存率が定量的に測定されるCellTiterGlo発光アッセイである。様々な細胞株、形質転換細胞株、または健常な対象もしくは疾患を患う対象に由来する初代細胞をこのアッセイで使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、このアッセイにおいてビヒクルまたは対照ポリペプチド(例えば、非ステープルド野生型HD2ドメインヒトBCL9)よりも効率的に細胞増殖を抑制し、これは、開示されるポリペプチドがβ-カテニンへのBCL9の結合をビヒクルまたは対照ポリペプチドよりも効率的に阻害する可能性が高いことを示す。
【0161】
2. 古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達
ある特定の実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチドは、古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達を阻害することができる。古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達は、インビトロアッセイ及び/またはインビボアッセイで評価することができる。いくつかの実施形態では、古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達に対する本明細書に記載のポリペプチドの効果は、細胞ベースのWnt転写アッセイ、例えばGeneBLAzer(登録商標)ベータ-ラクタマーゼ(bla)レポーターアッセイにおいて評価される。GeneBLAzer(登録商標)ベータ-ラクタマーゼ(bla)レポーターアッセイは、古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達の強度を、β-カテニン/LEF/TCF応答エレメントを制御するその能力によって測定するものであり、したがって、試験薬剤がその転写標的の古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達制御の強度を減衰または増加させることができるかどうかを評価するために使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、GeneBLAzer(登録商標)ベータ-ラクタマーゼ(bla)レポーターアッセイで測定した場合にWnt転写を抑制し、これは、このポリペプチドが古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達を阻害し得ることを示す。いくつかの実施形態では、このアッセイにおけるポリペプチドは、Wnt転写の抑制において、ビヒクルまたは対照ポリペプチド(例えば、非ステープルド野生型HD2ドメインヒトBCL9)のものと比較して改善されたIC50を示し、これは、本明細書に記載のポリペプチドが、ビヒクルまたは対照ポリペプチドと比較して改善された、古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達を阻害する能力を有することを示す。
【0162】
本明細書に記載されるポリペプチドが古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達を阻害する能力は、古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達によって転写的に制御される標的遺伝子の遺伝子発現及び/またはタンパク質発現を測定することによって評価することもできる。標的遺伝子の発現は、本明細書に記載されるポリペプチドと接触した形質転換細胞またはそのようなポリペプチドを投与された対象において評価され得る。標的遺伝子としては、例えば、c-myc、ccnd1、cd44、LGR5、VEGFA、AXIN2、及びLEF1が挙げられる。古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達に関連する1つ以上の標的遺伝子の発現レベルは、当該技術分野において公知の方法、例えば、細胞染色、フローサイトメトリ、ウエスタンブロッティング、及び/またはリアルタイム定量PCR(rt-qPCR)分析を使用して分析することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、細胞における1つ以上の標的遺伝子の発現を低減させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、ビヒクルまたは対照ポリペプチド(例えば、非ステープルド野生型HD2ドメインヒトBCL9)よりも効率的に1つ以上の標的遺伝子の発現を低減させる。
【0163】
3. 制御性T細胞の生存
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、制御性T細胞の生存期間を減少させる。いくつかの実施形態では、対象に投与されると、本ポリペプチドは、制御性T細胞の生存期間を局所的に(例えば腫瘍内で)かつ/または全身的に(例えば血液中で)減少させる。いくつかの実施形態では、対象に投与されると、本ポリペプチドは、制御性T細胞の生存期間を対照ポリペプチドと比較して減少させる。様々なマーカー、例えばCD4、FOXP3、及びCD25が、制御性T細胞で発現することで知られている。本明細書に開示されるポリペプチドが制御性T細胞の生存期間を減少させる能力は、血液及び/または腫瘍などの特定の組織において存在する制御性T細胞の総数を計数することによって評価され得る。例えば、本明細書に記載されるポリペプチドと接触した対象から得られた試料を、制御性T細胞に関連するマーカーを検出する抗体で染色してもよい。そのようなマーカーを検出する抗体で試料を処理及び標識し、フローサイトメトリによって分析してもよい。そのようなマーカーの遺伝子及び/またはタンパク質の発現は、試料中で判定し、ウエスタンブロッティング及び/またはrt-qPCRによって分析することができる。
【0164】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、対象に投与されると、血液及び/または腫瘍における制御性T細胞の数を低減させる。いくつかの実施形態では、本ポリペプチドは、本ポリペプチドを投与された対象から得られた1つ以上の試料中で、制御性T細胞に関連する1つ以上のマーカーの発現を低減させる。いくつかの実施形態では、本ポリペプチドは、インビボで評価したとき、1つ以上のマーカーの発現をビヒクルまたは対照ポリペプチド(例えば、非ステープルド野生型HD2ドメインヒトBCL9)と比較してさらに低減させる。
【0165】
4. 腫瘍内のVEGF発現
ある特定の実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチドは、腫瘍を有する対象に投与されると、腫瘍内のVEGFの発現を減少させる。腫瘍試料中のVEGFの遺伝子発現及び/またはタンパク質発現を測定するためには様々なアッセイを用いることができる。例えば、対象を本ポリペプチドに接触させた後、腫瘍細胞を収集し、抗VEGF抗体で染色してVEGFタンパク質を検出してもよい。また、例えばrt-qPCRによって細胞を分析して、VEGFの遺伝子発現を判定してもよい。VEGF発現の変化を示す他のアッセイを用いてもよい。例えば、本明細書に記載されるポリペプチドと接触した対象からの腫瘍試料を分析して、VEGFによって制御される様々な血管新生マーカーを検出してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、ビヒクルまたは対照ポリペプチド(例えば、非ステープルド野生型HD2ドメインヒトBCL9)よりも効果的にVEGFの発現を減少させる。
【0166】
5. 腫瘍へのCD4+T細胞及び/またはCD8+T細胞の浸潤
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、腫瘍を有する対象に投与されると、腫瘍へのCD4+T細胞及び/またはCD8+T細胞の浸潤を増加させる。腫瘍へのCD4+T細胞及び/またはCD8+T細胞の浸潤は、腫瘍または腫瘍からの試料(例えば生検)中に存在するCD4+T細胞及び/またはCD8+T細胞の総数を計数することによって評価することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、腫瘍を有する対象に投与されると、腫瘍へのCD4+T細胞及び/またはCD8+T細胞の浸潤を、ビヒクルまたは対照ポリペプチド(例えば、非ステープルド野生型HD2ドメインヒトBCL9)よりも効果的に増加させる。様々なマーカー、例えばCD4及びCD45が、CD4+T細胞(別称、ヘルパーT細胞)で発現することで知られている。様々なマーカー、例えばCD8及びCD45が、CD8+T細胞(別称、細胞傷害性T細胞)で発現することで知られている。腫瘍へのCD4+T細胞及び/またはCD8+T細胞の浸潤を増加させるポリペプチドの能力は、腫瘍を有する対象にポリペプチドを投与することによって、インビボで評価することができる。対象から腫瘍試料を収集し、CD4+/CD8+T細胞に関連するマーカーを検出する抗体で染色してもよい。例えばそのようなマーカーを検出する抗体で試料を処理及び標識し、例えばフローサイトメトリによって分析してもよい。そのようなマーカーの遺伝子及び/またはタンパク質の発現は、試料中で判定し、ウエスタンブロッティング及び/またはrt-qPCRによって分析することもできる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、ビヒクルまたは対照ポリペプチド(例えば、非ステープルド野生型HD2ドメインヒトBCL9)と比較して、腫瘍内のCD4+T細胞及び/またはCD8+T細胞の総量を増加させる。
【0167】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、対象に投与されると、血液中のCD4+T細胞及び/またはCD8+T細胞の総数を増加させる。CD4+T細胞及び/またはCD8+T細胞の全身的な増加は、特定の組織、例えば腫瘍へのCD4+T細胞及び/またはCD8+T細胞の浸潤の増加も示し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、ビヒクルまたは対照ポリペプチド(例えば、非ステープルド野生型HD2ドメインヒトBCL9)と比較して、インビボでの循環CD4+T細胞及び/またはCD8+T細胞の量を増加させる。
【0168】
6. 腫瘍へのTヘルパー17細胞の浸潤
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、腫瘍を有する対象に投与されると、腫瘍へのTヘルパー17細胞の浸潤を増加させる。腫瘍へのTヘルパー17細胞の浸潤は、腫瘍内に存在するTヘルパー17細胞の総数を計数することによって評価することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、腫瘍を有する対象に投与されると、腫瘍へのTヘルパー17細胞の浸潤を、ビヒクルまたは対照ポリペプチド(例えば、非ステープルド野生型HD2ドメインヒトBCL9)と比較して増加させる。様々なマーカー、例えばIL-17が、Tヘルパー17細胞で発現することで知られている。腫瘍へのTヘルパー17細胞の浸潤を増加させるポリペプチドの能力は、腫瘍を有する対象にポリペプチドを投与することによって、インビボで評価することができる。対象から腫瘍試料を収集し、例えば、Tヘルパー17細胞に関連するマーカーを検出する抗体で染色してもよい。そのようなマーカーを検出する抗体で試料を処理及び標識し、フローサイトメトリによって分析してもよい。そのようなマーカーの遺伝子及び/またはタンパク質の発現は、試料中で判定し、ウエスタンブロッティング及び/またはrt-qPCRによって分析することもできる。試料を分析して、試料中に存在するIL-17の量を検出してもよい。
【0169】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、対象に投与されると、血液中のTヘルパー17細胞の総量を増加させる。Tヘルパー17細胞の全身的な増加は、特定の組織、例えば腫瘍へのTヘルパー17細胞の浸潤の増加を示し得る。Tヘルパー17細胞の全身的な増加は、対象から収集された血液試料中に存在するIL-17の量を測定することによって評価することができる。いくつかの実施形態では、本ポリペプチドは、ビヒクルまたは対照ポリペプチド(例えば、非ステープルド野生型HD2ドメインヒトBCL9)と比較して、対象の循環Tヘルパー17細胞の量を増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、対照ポリペプチドと比較して、対象の循環IL-17の量を増加させる。
【0170】
7. 腫瘍内の樹状細胞
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、腫瘍を有する対象に投与されると、腫瘍内に存在する樹状細胞を調節する。腫瘍内に存在する樹状細胞の数は、例えば、樹状細胞に関連する1つ以上のマーカーを認識する抗体で腫瘍を染色することによって評価することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、腫瘍を有する対象に投与されると、腫瘍内に存在する樹状細胞を、ビヒクルまたは対照ポリペプチド(例えば、非ステープルド野生型HD2ドメインヒトBCL9)よりも効果的に減少させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、腫瘍を有する対象に投与されると、腫瘍内に存在する樹状細胞を、ビヒクルまたは対照ポリペプチド(例えば、非ステープルド野生型HD2ドメインヒトBCL9)よりも効果的に増加させる。様々なマーカー、例えばCD11cが、樹状細胞で発現することで知られている。腫瘍内の樹状細胞を減少させるポリペプチドの能力は、対象にポリペプチドを投与することによって、インビボで評価することができる。対象から腫瘍試料を収集し、樹状細胞に関連するマーカーを検出する抗体で染色してもよい。例えばそのようなマーカーを検出する抗体で試料を処理及び標識し、例えばフローサイトメトリによって分析してもよい。そのようなマーカーの遺伝子及び/またはタンパク質の発現は、例えばウエスタンブロッティング及びrt-qPCRによって分析される。
【0171】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、対象に投与されると、血液中の樹状細胞の総量を減少させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、対象に投与されると、血液中の樹状細胞の総量を増加させる。樹状細胞の全身的な減少は、特定の組織、例えば腫瘍内の樹状細胞の量も減少していることを示し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、ビヒクルまたは対照ポリペプチド(例えば、非ステープルド野生型HD2ドメインヒトBCL9)と比較して、対象の循環樹状細胞の量を減少させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、ビヒクルまたは対照ポリペプチド(例えば、非ステープルド野生型HD2ドメインヒトBCL9)と比較して、対象の循環樹状細胞の量を増加させる。
【0172】
8. 対象における半減期
様々な実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチドは、ビヒクルまたは対照ポリペプチド(例えば、非ステープルド野生型HD2ドメインヒトBCL9)と比較して改善された1つ以上の薬物動態パラメータを有する。そのような薬物動態パラメータとしては、例えば、最大観察濃度(Cmax)、最大濃度到達時間(Tmax)、終末相半減期(T1/2)、全身クリアランス(CL)、分布容積(Vz)、投薬時間から最後の観察可能な濃度までの曲線下面積(AUC0-t)、投薬時間から無限大まで外挿した曲線下面積(AUC0-inf)、及び生物学的利用率を挙げることができる。
【0173】
薬物動態を評価するための方法は、当該技術分野において公知である。例えば、本明細書に記載されるポリペプチドを投与された対象からの血液試料は、投与後、1、2、4、6、8、12、及び24時間の時点で得ることができる。血液試料中のポリペプチドの濃度は、様々な分析ツール、例えばLC/MSによって分析することができる。各時点でのポリペプチドの濃度に基づいて、薬物動態パラメータが計算される。本明細書で使用される場合、「最大観察濃度(Cmax)」という用語は、ポリペプチドが投与後に達成する最大の血清濃度を指す。Cmaxの概念に関連して、最大濃度到達時間(Tmax)は、ポリペプチドが最大血清濃度に達するまでにかかる時間である。「終末相半減期(T1/2)」及び「半減期(T1/2)」という用語は互換的に使用され、ポリペプチドがその血清濃度の半分を喪失するまでにかかる時間を指す。全身クリアランス(CL)とは、ポリペプチドが完全に排除された血液の単位時間当たりの体積を表す。「分布容積」という用語は、血液中で観察されるものと同じ濃度で対象に投与されるポリペプチドの総量を含有するために必要とされる、理論的に計算される容積を指す。「生物学的利用率」という用語は、薬物が生体系に吸収される程度及び速度または生理学的活性部位で利用可能になる程度及び速度を指す。生物学的利用率は、安定性、溶解性、免疫原性、及び薬物動態を含む上述の特性のうちのいくつかの機能であり得、当業者に公知の方法を使用して評価することができる。
【0174】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、対照ポリペプチドと比較して改善された対象の半減期を有する。いくつかの実施形態では、本ポリペプチドは、対象に投与されると、少なくとも0.5、1、2、3、5、もしくは8時間超の、またはこれらの間の任意の期間の半減期を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、対象に投与されると、少なくとも2時間超の半減期を有する。ポリペプチドの薬物動態パラメータは、例えばマウス、ラット、またはヒトを含む哺乳動物において評価することができる。このパラメータは、様々な投与経路、例えば、静脈内、腹腔内、皮下、及び筋肉内の投与経路を使用して評価することもできる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドの薬物動態パラメータは、マウスにおいて評価される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドの薬物動態パラメータは、本ポリペプチドを皮下投与したマウスにおいて評価される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドの薬物動態パラメータは、ヒトにおいて評価される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドの薬物動態パラメータは、ヒトにおいて皮下投与後に評価される。
【0175】
9. 免疫反応に好ましい腫瘍微小環境
様々な実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチドは、免疫反応に好ましい腫瘍微小環境を誘導する。様々な実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチドは、ビヒクルまたは対照ポリペプチド(例えば、非ステープルド野生型HD2ドメインヒトBCL9)よりも免疫反応に好ましい腫瘍微小環境を誘導する。
【0176】
本明細書で使用される場合、「腫瘍微小環境」という用語は、腫瘍、血管、免疫細胞、シグナル伝達分子、及び細胞外マトリックスに動員される様々な細胞を含む、腫瘍内及び/またはその周囲の細胞微小環境を意味する。例えば、Balkwill et al.,J Cell Sci(2012)125:5591-5596を参照されたい。本明細書に記載されるポリペプチドは、腫瘍内及び/またはその周囲の免疫細胞及び/またはシグナル伝達分子の組成を変化させ、それによって腫瘍周囲の微小環境における免疫反応を誘発し得る。
【0177】
腫瘍微小環境を評価するためには様々なパラメータを使用することができる。例えば、腫瘍組織内及び/またはその周囲の細胞傷害性T細胞と制御性T細胞との比の増加は、腫瘍微小環境が免疫反応に好ましいことを示し得る。腫瘍組織内及び/またはその周囲の樹状細胞及び/または制御性T細胞の量の減少も、腫瘍微小環境が免疫反応に好ましいことを示し得る。他のパラメータには、末梢血中の循環T細胞の増加、ならびに腫瘍組織内及び/またはその周囲のTヘルパー17細胞と制御性T細胞との比の増加が含まれる。これらのパラメータは、腫瘍微小環境が免疫反応に好ましいことを示し得る。
【0178】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、腫瘍微小環境における細胞傷害性T細胞の量と制御性T細胞の量との比を増加させることができる。いくつかの実施形態では、本ポリペプチドによって引き起こされる比の変化は、ビヒクルまたは対照ポリペプチド(例えば、非ステープルド野生型HD2ドメインヒトBCL9)によって引き起こされるものを上回る。
【0179】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、腫瘍微小環境におけるTヘルパー17細胞と制御性T細胞との比を増加させることができる。ある実施形態では、本ポリペプチドによって引き起こされる比の変化は、ビヒクルまたは対照ポリペプチド(例えば、非ステープルド野生型HD2ドメインヒトBCL9)によって引き起こされるものを上回る。
【0180】
10. 腫瘍増殖、癌幹細胞増殖、及び/または腫瘍転移
Wntシグナル伝達は腫瘍増殖の制御因子であるため、β-カテニンへのBCL9の結合に影響を及ぼす処置、例えば本明細書に記載のBCL9ペプチドのHD2ドメインの安定化ペプチドなどの有効性は、動物モデルにおいて評価することができる。
【0181】
安定化BCL9ペプチドのインビボでの有効性は、例えばBALB/cヌードマウスを使用したヒト癌モデルにおいて評価することができ、これは、ヒト癌細胞の異種移植片がこのマウスにおいて増殖して腫瘍になるためである。例えば、ヒト結腸癌組織に由来する市販の細胞株であるColo320DM腫瘍細胞の皮下接種を使用して、BALB/cヌードマウスにおいて腫瘍を形成することができる。本明細書に開示されるポリペプチドのインビボでの有効性を評価するためには、さらなるインビボモデルも利用可能である。例えば、ヒトDLD-1結腸癌細胞をヌードマウスに移植して腫瘍増殖を評価することができる。結腸癌のCT26同系マウスモデルは、インタクトな免疫系の背景における腫瘍増殖の評価を可能にするため、これを使用することもできる。他の種類の癌細胞、例えばB16黒色腫、4T1乳癌、Renca腎癌、及びLewis肺細胞肺癌細胞をこれらの公知の動物モデルで使用して、本明細書に開示されるポリペプチドのインビボでの有効性を評価することもできる。
【0182】
本明細書に記載されるポリペプチドを1つ以上の動物モデルに投与することにより、腫瘍増殖をインビボで減少させることにおける本ポリペプチドの効果を評価することができる。いくつかの実施形態では、本ポリペプチドは、ビヒクルまたは対照ポリペプチド(例えば、非ステープルド野生型HD2ドメインヒトBCL9)よりも効果的にインビボでの腫瘍増殖を阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドを投与された対象の腫瘍量/体積は、対照ポリペプチドを投与された対象のものより、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%小さい。安定化BCL9ペプチドでの処置に関する動物データから、例えば、Wntシグナル伝達のマーカーを有する組織試料の染色によって、このペプチドがWntシグナル伝達を阻害する能力を評価することができる。こうしたWntシグナル伝達の下流マーカーとしては、例えば、Axin2及びCD44が挙げられる。
【0183】
同所性マウスモデルを使用して、本明細書に記載されるポリペプチドが腫瘍転移に及ぼす影響を評価してもよい。例えば、ルシフェラーゼ構築物を保有する細胞を同所性動物モデルに注射し、次いでそれに割り当てられた処置を施してもよい。注射された細胞の存在は、処置された動物それぞれにルシフェリン基質を投与することによって検出され得る。生物発光シグナルの強度を定量的に測定し、細胞増殖の指標として使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、同所性マウスモデルで評価したとき、対照ポリペプチドよりも効果的に腫瘍転移を抑制する。いくつかの実施形態では、本ポリペプチドは、ビヒクルまたは対照ポリペプチド(例えば、非ステープルド野生型HD2ドメインヒトBCL9)と比較して、同所性マウスモデルにおける腫瘍増殖を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%低減させる。
【0184】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドが癌幹細胞の増殖に及ぼす影響は、様々な癌幹細胞のバイオマーカーを測定することによって評価され得る。例えば、CD44及び/またはLGR5の発現レベルは、試料中に存在する癌幹細胞の量を示し得る。対象から腫瘍試料を収集し、癌幹細胞に関連するマーカーを検出する抗体で染色してもよい。例えばそのようなマーカーを検出する抗体で試料を処理及び標識し、例えばフローサイトメトリによって分析してもよい。そのようなマーカーの遺伝子及び/またはタンパク質の発現は、例えばウエスタンブロッティング及びrt-qPCRによって検出及び分析することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、腫瘍を有する対象に投与されると、腫瘍内のCD44及び/またはLGR5の発現レベルを低減させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、CD44及び/またはLGR5の発現レベルを、ビヒクルまたは対照ポリペプチド(例えば、ヒトBCL9タンパク質の非ステープルド野生型HD2ドメイン)のものよりも効果的に低減させる。
【0185】
D. 安定化BCL9ペプチドを用いた処置方法
1. 異常Wnt/β-カテニンシグナル伝達を伴う疾患
異常Wnt/β-カテニンシグナル伝達は、正常細胞の癌性細胞への悪性形質転換に関係付けられてきた(Thakur 2013を参照されたい)。Wntシグナル伝達の活性化及びβ-カテニンの核局在化は、複数のモデルにおいて腫瘍表現型に結び付けられている。
【0186】
本開示は、本明細書に開示されるステープルドポリペプチドまたは本ポリペプチドを含む薬学的組成物を対象に投与することによって対象におけるβ-カテニンへのBCL9の結合を阻害するために使用するための組成物、及びその使用方法を包含する。本開示は、本明細書に開示されるポリペプチドまたは薬学的組成物を投与することによって対象における古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達を阻害することも包含する。本開示は、本明細書に記載されるポリペプチドまたは薬学的組成物を対象に投与することによって対象の疾患を処置する方法をさらに包含する。この疾患は、癌、または異常な古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達に関連する他の腫瘍性疾患であり得る。
【0187】
本明細書で使用される場合、「患者」及び「対象」は、疾患、障害、もしくは病態について処置もしくは評価されているか、疾患、障害、もしくは病態を発症するリスクがあるか、または疾患、障害、もしくは病態を有するもしくは患っている、哺乳動物またはヒトなどの動物を互換的に指す場合がある。いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0188】
いくつかの実施形態では、そのような疾患、障害、または病態は、異常な古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達に関連し、かつ/または古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達の阻害から利益を受けることのある疾患であり得る。いくつかの実施形態では、そのような疾患、障害、または病態は、癌である。いくつかの実施形態では、癌は、BCL9及び/またはβ-カテニンが高度に発現する癌である。いくつかの実施形態では、癌は、BCL9及びβ-カテニンが癌細胞の核内に共局在化する癌である。いくつかの実施形態では、癌は、家族性大腸腺腫症(FAP)、眼癌、直腸癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、前立腺癌、乳癌、膀胱癌、口腔癌、良性腫瘍及び悪性腫瘍、胃の癌、肝臓癌、膵臓癌、肺癌、子宮体、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、腎癌、脳/CNS癌、咽喉癌、多発性骨髄腫、皮膚黒色腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、ユーイング肉腫、カポジ肉腫、基底細胞癌及び扁平上皮癌、小細胞肺癌、絨毛癌、横紋筋肉腫、血管肉腫、血管内皮腫、ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、口/咽頭癌、食道癌、喉頭癌、リンパ腫、神経線維腫症、結節性硬化症、血管腫、胃癌、卵巣癌、肝細胞癌、及びリンパ脈管新生から選択される。いくつかの実施形態では、癌は、結腸直腸癌である。いくつかの実施形態では、癌は、胃癌である。いくつかの実施形態では、癌は、卵巣癌である。いくつかの実施形態では、癌は、肝細胞癌である。いくつかの実施形態では、癌は、乳癌である。いくつかの実施形態では、癌は、前立腺癌である。いくつかの実施形態では、癌は、皮膚黒色腫である。いくつかの実施形態では、癌は、肺癌である。
【0189】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるポリペプチドもしくは変異体、またはそのようなポリペプチドを含む薬学的組成物のいずれも、疾患、例えば上に列記した癌の処置のために使用され得る。ある実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体は、WX-024である。いくつかの実施形態では、本ポリペプチドまたは変異体は、WX-035である。
【0190】
いくつかの実施形態では、対象における腫瘍体積は、本明細書に記載されるポリペプチドまたは本ポリペプチドを含む薬学的組成物の1つ以上の投与量の投与の後に、ビヒクルまたは非ステープルドペプチドで処置された対象のものと比較して、10%、20%、30%、40%、または50%超(またはこれらの間の任意の割合)低減する。ある特定の実施形態において、この低減は、1週間、2週間、3週間、またはそれ以上(またはこれらの間の任意の期間)の投与の後に達成される。いくつかの実施形態では、対象の腫瘍体積は、2週間の投与後に、ビヒクルまたは非ステープルドペプチドで処置された対象のものと比較して、50%超低減する。様々な投与方法に必要な材料及び技術が当該技術分野で利用可能かつ公知であるため、対象に投与するための薬学的組成物の好適な投与量及び/または処方は、当業者によって決定され得る。例えば、Formulation and delivery of peptides and proteins,1st edition,Washington,ACS,pp.22-45及びPeptide and protein drug delivery,1st edition,New York,Marcel Dekker,Inc.,pp.247-301を参照されたい。ある実施形態では、WX-024または本ポリペプチドを含む薬学的組成物を投与された対象の腫瘍体積は、2週間の投与後に、ビヒクルまたは非ステープルドポリペプチドで処置された対象のものと比較して、50%超低減する。ある実施形態では、WX-035または本ポリペプチドを含む薬学的組成物を投与された対象の腫瘍体積は、2週間の投与後に、ビヒクルまたは非ステープルドポリペプチドで処置された対象のものと比較して、10%~50%超低減する。
【0191】
様々な実施形態において、「処置」という用語は、対象または細胞の現在の過程を変化させるための対象(例えばヒトなどの哺乳動物)または細胞の処置を含む。処置は、1つ以上の疾患パラメータの変化、例えば、腫瘍体積または当業者に知られる任意の他の腫瘍学的測定値の低減を含む。処置は、例えば、本明細書に記載されるポリペプチドまたはそのようなポリペプチドを含む薬学的組成物の投与を含み、予防的に行われてもよいし、または病理的事象の開始もしくは病原体との接触の後に行われてもよい。また、処置されている疾患もしくは病態の進行速度を低減させること、その疾患もしくは病態の発症を遅延させること、またはその発症の重症度を低減させることを対象とし得る「予防的」処置も含まれる。「処置」または「予防」は、必ずしも疾患もしくは病態または関連症状の完全な根絶、治癒、または防止を示すものではない。様々な実施形態において、「処置」という用語は、癌を患う対象における病理学的プロセスまたは症状を緩和すること、減速させること、または逆転させることを含み得る。いくつかの実施形態では、「処置」という用語は、癌を患う対象における腫瘍負荷を減少させることを含み得る。いくつかの実施形態では、「処置」という用語は、癌の少なくとも1つの症状または測定可能なパラメータを改善させることを含み得る。生物学的及び/または生理学的パラメータが、悪性疾患の病理学的プロセスを利用するために使用され得ることは、当業者には明らかであろう。
【0192】
処置及び処置の測定パラメータは、本ポリペプチドもしくは薬学的組成物の単独投与、または1つ以上の追加の治療剤との併用投与、例えば単一のボーラスまたは別々の連続投与の後に評価され得る。追加の薬剤は、本明細書で言及されているかまたは当業者に公知である追加の治療剤のうちのいずれであってもよい。本ポリペプチド及び/または本ポリペプチドを含む薬学的組成物、及び/または追加の薬剤は、選択されたレジメンに応じて、1回または複数回投与されてもよい。
【0193】
本開示はまた、対象の疾患の処置に使用するための、本明細書に開示されるポリペプチドまたは薬学的組成物を包含する。ある実施形態では、この疾患は、古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達の抑制から利益を受ける場合がある。いくつかの実施形態では、この疾患は癌である。
【0194】
本開示は、対象の疾患を処置するための医薬の製造における、本明細書に開示されるポリペプチドまたは薬学的組成物の使用をさらに包含する。ある実施形態では、この疾患は、古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達の抑制から利益を受ける場合がある。ある実施形態では、この疾患は癌である。
【0195】
別の実施形態では、処置される疾患は癌ではない。ある特定の実施形態において、この疾患は、骨密度異常、眼の血管障害、家族性滲出性硝子体網膜症、早期冠疾患、アルツハイマー病、常染色体優性部分的無歯症、網膜血管新生、骨形成不全症、Tetra-Amelia症候群、ミュラー管退縮及び男性化、SERKAL症候群、糖尿病II型、Fuhrmann症候群、歯・爪・皮膚異形成(odonto-onycho-dermal dysplasia)、肥満、裂手/足形成異常、尾部重複(caudal duplication)、歯非形成、骨格形成異常、部分皮膚低形成、常染色体劣性無爪症、神経管欠損、または硬結性骨化症及びVan Buchem病である。
【0196】
2. 安定化BCL9ペプチドの投与
非架橋(すなわち野生型)ペプチドは通常インビボで非常に急速に代謝されるため、ペプチド安定化は対象に投与されたときのこれらのペプチドの薬物動態プロファイルを改善させ得る。本明細書で使用される場合、「投与すること」または「投与」という用語は、局所投与または全身投与のいずれかによる本明細書に記載されるポリペプチドの送達を含む。投与は、局所(眼部ならびに膣及び直腸送達を含む粘膜を含む)、肺(例えば、ネブライザー、気管内、鼻腔内を含む粉末またはエアロゾルの吸入または吹込によるもの)、上皮、経皮、経口、または非経口によるものであり得る。非経口投与には、静脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内注射もしくは注入、または頭蓋内、例えばくも膜下腔内または脳室内の投与が含まれる。投与経路の組み合わせも想定される。ステープルドペプチドは、治療有効量で投与され得る。
【0197】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドまたは薬学的組成物は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドまたは薬学的組成物は、腹腔内投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドまたは薬学的組成物は、毎日、毎週、毎月、または対象の疾患を処置するために使用され得る任意の好適な間隔で投与される。
【0198】
いくつかの実施形態では、安定化ペプチドの投与は、対象におけるWntシグナル伝達を阻害する。いくつかの実施形態では、安定化BCL9ペプチドの投与は、β-カテニンへのBCL9の結合を阻害する。いくつかの実施形態では、安定化BCL9ペプチドの投与は、古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達を阻害する。いくつかの実施形態では、安定化BCL9ペプチドの投与は、対象の疾患を処置する。
【0199】
3. 安定化BCL9ペプチドを用いた併用療法
ある特定の実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドまたは薬学的組成物は、少なくとも1つの追加の薬剤と共に投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加の薬剤は、チェックポイント阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、VEGFR阻害剤、抗癌薬から選択される。追加の薬剤は、ステープルドペプチドと同じ薬学的組成物で投与されてもよく、またはそれらは順次投与されてもよい。ステープルドペプチド及び追加の薬剤は、治療有効量で投与され得る。
【0200】
ある特定の実施形態において、追加の薬剤は、チェックポイント阻害剤である。チェックポイント遮断抗体などのチェックポイント阻害剤は、T細胞免疫の正常な負の制御因子を遮断し、それにより、癌を制御する免疫系の能力を一部の患者において増加させる(Kyi and Postow,FEBS Letters 588:368-376(2013)を参照されたい)。ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドまたは薬学的組成物と共に投与されるチェックポイント阻害剤は、PD1、PDL-1、及び/またはCTLA-4を阻害する。一実施形態において、チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、及び/または抗CTLA4抗体である。ある特定の実施形態において、チェックポイント阻害剤は、チェックポイント遮断抗体、例えばイピリムマブ、ニボルマブ、またはMK-3475である。一実施形態において、チェックポイント阻害剤は、例えば、CD27、CD40、OX40、GITR、またはCD138などの刺激性チェックポイント分子を標的とする。さらに別の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、例えば、A2AR、B7-H3、B7-H4、Bリンパ球及びTリンパ球のアテニュエーター(BTLA)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、T細胞免疫グロブリンドメイン及びムチンドメイン3(TIM-3)、VISTA(C10orf54)、またはT細胞活性化のVドメインIg抑制因子などの阻害性チェックポイント分子を標的とする。
【0201】
上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤は、非小細胞肺癌ならびに他の種類の癌において、特に、EGFRまたはALK(未分化リンパ腫受容体チロシンキナーゼ)遺伝子に遺伝子変異を有する患者において有効性を示している。ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドまたは薬学的組成物と共に投与される追加の治療剤は、EGFR阻害剤である。ある特定の実施形態において、EGFR阻害剤は、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、パニツムマブ、バンデタニブ、またはセツキシマブである。ある特定の実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチドまたは薬学的組成物は、EGFRまたはALK遺伝子の分子異常を有することが判定されている患者において、EGFR阻害剤と一緒に投与される。
【0202】
一実施形態において、VEGF及び/またはVEGFR阻害剤は、第2の薬剤として投与される。いくつかの実施形態では、VEGF及び/またはVEGFR阻害剤は、パゾパニブ、ベバシズマブ、ソラフェニブ、スニチニブ、アキシチニブ、ポナチニブ、レゴラフェニブ、バンデタニブ、カボザンチニブ、ラムシルマブ、レンバチニブ、及びziv-アフリベルセプトのうちの1つ以上である。
【0203】
いくつかの実施形態では、抗癌薬は、第2の薬剤として投与される。いくつかの実施形態では、抗癌薬は、シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル(5-FU)、ドキソルビシン、ムスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾロン、ダカルバジン、ブレオマイシン、エトポシド、シスプラチン、エピルビシン、カペシタビン、フォリン酸、アクチノマイシン、全トランス型レチノイン酸、アザシチジン、アザチオプリン、ボルテゾミブ、カルボプラチン、クロランブシル、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イマチニブ、イリノテカン、メクロレタミン、メルカプトプリン、ミトキサントロン、パクリタキセル、ペメトレキセド、テニポシド、チオグアニン、トポテカン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、及びオキサリプラチンのうちの1つ以上から選択される。
【0204】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示されるポリペプチドまたは薬学的組成物を投与された対象は、本ポリペプチドまたは薬学的組成物の投与の前、その後、またはそれと同時に、放射線療法及び/または化学療法でも処置される。本明細書に開示される追加の薬剤を用いたさらなる併用療法も想定される。
【0205】
4. バイオマーカー
本開示はまた、本明細書に記載されるポリペプチドもしくは薬学的組成物の処置有効性を監視するため、またはそのようなポリペプチドもしくは薬学的組成物を用いた処置のための対象を選択するために、少なくとも1つのバイオマーカーを測定する方法を包含する。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、BCL9、CD44、Axin2、cMyc、LGR5、VEGFA、Sox2、Oct4、Nanog、及び/または活性β-カテニンのうちの1つ以上である。本明細書で使用される場合、活性β-カテニンは、リン酸化されていない形態のβ-カテニンを指す。
【0206】
様々な公知の方法を使用して、そのようなバイオマーカーの遺伝子発現レベル及び/またはタンパク質レベルを測定することができる。例えば、本ポリペプチドまたは薬学的組成物で処置された対象から、腫瘍の生検、血液、血漿、血清、尿、羊膜液、滑液、内皮細胞、白血球、単球、他の細胞、臓器、組織、骨髄、リンパ節、または脾臓などの試料を得ることができる。いくつかの実施形態では、試料は、対象における腫瘍の生検である。対象から得られた試料は、そのようなバイオマーカーを検出する1つ以上の抗体または他の検出剤で染色され得る。試料はまた、または代替的に、バイオマーカーをコードするmRNAなどの核酸の存在を、例えばrt-qPCR法によって検出するために処理されてもよい。
【0207】
いくつかの実施形態では、BCL9、CD44、Axin2、cMyc、LGR5、VEGFA、Sox2、Oct4、Nanog、及び/または活性β-カテニンの遺伝子発現レベル及び/またはタンパク質レベルの低減は、本明細書に記載されるポリペプチドまたは薬学的組成物の処置有効性を示す。そのようなバイオマーカーの発現レベルは、例えば、本ポリペプチドまたは薬学的組成物の、1日、2日、3日、4日、5日、1週間、もしくは2週間、またはこれらの間の任意の期間の投与の後に測定され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドまたは薬学的組成物の1回以上の投与の後にバイオマーカーのうちの1つ以上のレベルを測定することを含む方法が開示される。いくつかの実施形態では、本方法は、バイオマーカーレベルが低減した場合には本ポリペプチドまたは薬学的組成物の投与を継続することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、バイオマーカーレベルが低減しない場合には本明細書に記載されるポリペプチドまたは薬学的組成物を増加した投与量で投与すること、またはその後の投与の頻度を増加させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーレベルが初期投与後に低減しない場合、処置が中止される。様々な実施形態において、バイオマーカーレベルはまた、本明細書に記載されるポリペプチドまたは薬学的組成物の第1の投与前に測定され、1回以上の投与後のレベルと比較され、投与前のレベル(複数可)からのバイオマーカーレベル(複数可)の変化に基づいて、処置有効性及び継続処置ステップが決定される。
【0208】
いくつかの実施形態では、BCL9、CD44、Axin2、cMyc、LGR5、VEGFA、Sox2、Oct4、Nanog、及び/または活性β-カテニンの遺伝子発現レベル及び/またはタンパク質レベルの上昇は、対象が、遺伝子発現レベル及び/またはタンパク質レベルが上昇していない対象よりも、本明細書に記載されるポリペプチドまたは薬学的組成物での処置から利益を受けるであろうことを示す。いくつかの実施形態では、上昇したバイオマーカーレベルを有する患者を選択し、本明細書に記載されるポリペプチドまたは薬学的組成物を投与することを含む、処置の方法が開示される。
【0209】
ある特定の実施形態では、BCL9、CD44、Axin2、cMyc、LGR5、VEGFA、Sox2、Oct4、Nanog、及び/または活性β-カテニンの遺伝子及び/またはタンパク質の発現レベルの上昇した対象が、本明細書に記載されるポリペプチドまたは薬学的組成物での処置のために選択される。いくつかの実施形態では、腫瘍を患う対象は、対象から腫瘍試料を取得し、BCL9、CD44、Axin2、cMyc、LGR5、VEGFA、Sox2、Oct4、Nanog、及び/または活性β-カテニンの遺伝子及び/またはタンパク質の発現の上昇を特定した後に、処置のために選択される。いくつかの実施形態では、腫瘍を患う対象は、対象から腫瘍試料を取得し、BCL9の遺伝子及び/またはタンパク質レベルの上昇を特定した後に、処置のために選択される。いくつかの実施形態では、腫瘍を患う対象は、対象から腫瘍試料を取得し、CD44の遺伝子及び/またはタンパク質レベルの上昇を特定した後に、処置のために選択される。いくつかの実施形態では、腫瘍を患う対象は、対象から腫瘍試料を取得し、活性β-カテニンの遺伝子及び/またはタンパク質レベルの上昇を特定した後に、処置のために選択される。
【0210】
5. 投与量
投与量レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療的または予防的な応答)をもたらすように調整され得る。例えば、単一のボーラスを投与してもよいし、いくつかの分割用量を経時的に投与してもよいし、または治療状況の必要性により示される場合に用量を比例的に低減もしくは増加させてもよい。投与しやすさ及び投与量の均一性のために、単位剤形の非経口組成物を処方することが特に有利である。
【0211】
「単位剤形」という用語は、処置すべき哺乳動物対象のための単位投与量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要な薬学的担体との関連で所望の治療効果をもたらすように計算された所定分量の活性化合物を含有する。本明細書に提供される単位剤形の仕様は、(a)活性化合物特有の特徴、及び達成すべき特定の治療効果または予防効果、ならびに(b)個体の感応性の処置に関するかかる活性化合物の調合の技術分野に固有の制限事項に左右され、かつそれらに直接的に依存する。本明細書に提供される結合タンパク質の治療有効量または予防有効量の例示的な非限定的な範囲は、0.1~20mg/kg、例えば、1~10mg/kgである。投与量の値は、軽減すべき病態の種類及び重症度によって異なり得ることに留意されたい。いずれの特定の対象についても、具体的な投与量レジメンが、個々の必要性及び組成物の投与の管理者または監督者による専門家としての判断に従って時間と共に調整され得ること、また、本明細書に規定される投与量範囲が例示に過ぎず、特許請求される組成物の範囲または実践の限定を意図するものではないことをさらに理解されたい。
【0212】
6. キット
本明細書では、本明細書に記載の方法を行うためのキットも開示される。様々な実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチドを製造するためのキットが提供される。いくつかの実施形態では、本キットは、1つ以上の炭化水素架橋剤を形成する反応を受けることのできるポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、本キットは、金属媒介性閉環オレフィンメタセシスを行うための金属触媒を含む。
【0213】
様々な実施形態において、対象の疾患を処置するためのキットも提供される。いくつかの実施形態では、本キットは、対象の癌を処置するためのものである。いくつかの実施形態では、本キットは、本明細書に開示されるポリペプチドまたは薬学的組成物を含む。いくつかの実施形態では、本キット内のポリペプチドは、1つ以上の炭化水素架橋剤を形成する反応を受けることができる。いくつかの実施形態では、本キット内のポリペプチドは、1つ以上の炭化水素架橋剤を有する。いくつかの実施形態では、本キットは、対象に投与され得る少なくとも1つの追加の薬剤をさらに含む。
【0214】
様々な実施形態において、対象におけるBCL9、CD44、Axin2、cMyc、LGR5、VEGFA、Sox2、Oct4、Nanog、及び/または活性β-カテニンの遺伝子及び/またはタンパク質の発現の上昇を呈する腫瘍を有する対象を検出及び/または処置するためのキットが提供される。いくつかの実施形態では、本キットは、BCL9、CD44、Axin2、cMyc、LGR5、VEGFA、Sox2、Oct4、Nanog、及び/または活性β-カテニンの遺伝子及び/またはタンパク質の発現を検出するための薬剤を含む。いくつかの実施形態では、本キットは、本明細書に開示されるポリペプチドまたは薬学的組成物をさらに含む。いくつかの実施形態では、本キット内のポリペプチドは、1つ以上の炭化水素架橋剤を形成する反応を受けることができる。いくつかの実施形態では、本キット内のポリペプチドは、1つ以上の炭化水素架橋剤を有する。いくつかの実施形態では、本キットは、対象に投与され得る少なくとも1つの追加の薬剤をさらに含む。
【0215】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0216】
「a」及び「an」という冠詞は、その冠詞の文法上の目的語1つ(one)または2つ以上(more than one)(すなわち、少なくとも1つ)を指す。例えば、「an element(1つの要素)」は、1つの要素または2つ以上の要素を意味する。
【0217】
「または」という用語は、文脈による別段の指示が明確にない限り、「及び/または」という用語を意味し、かつこれと互換的に使用される。本出願では、特に明記されない限り、単数形の使用は複数形を含む。さらに、「including(含む)」という用語ならびに「includes」及び「included」などの他の形態の使用は限定的ではない。本明細書に記載されるあらゆる範囲は、両端点及び両端点間の全ての値を含むと理解されるものとする。
【0218】
「contain(含有する)」、「include(含む)」、「have(有する)」という用語、またはそのような用語の文法上の変化形が、本開示または特許請求の範囲のいずれかにおいて使用される場合は、そのような用語は、「comprising(含む)」という用語が請求項において移行語として用いられるときの「comprising」の解釈と同様に包括的なものである。「including(含む)」という用語またはその文法上の変化形は、「including but not limited to(を含むがこれらに限定されない)」という表現を意味し、かつこれと互換的に使用される。
【0219】
「約」という用語は、基準の分量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、量、重量、または長さに対して30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1%だけ異なる分量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、量、重量、または長さを意味する。「約」という用語が数値範囲と併せて使用されるとき、この用語は、規定される数値の上下に両境界を広げることにより、その範囲を修飾する。一般に、「約」という用語は、記載される値から上下に≦10%異なる数値を修飾するよう意図される。
【0220】
本明細書に記載される方法の他の好適な修正形態及び適応形態が明白であり、本明細書に開示される実施形態の範囲を逸脱することなく好適な均等物を使用することによって行われ得ることは、当業者には容易に明らかとなろう。ここまで、ある特定の実施形態を詳細に説明してきたが、これは以下の実施例を参照することによってより明確に理解されるであろう。実施例は例示のみを目的として含まれるものであり、限定を意図するものではない。
【実施例】
【0221】
実施例1. 安定化BCL9ペプチドの生成
修飾されたAla残基(α-メチル,α-アルケニルアミノ酸などのα,α-二置換アミノ酸)を使用して炭化水素架橋剤を合成する方法は、当該技術分野において公知である。例えば、US2014/0113857及びKim 2011を参照されたい。以下の実施例で使用した各安定化ペプチドは、1つの樹脂上(on-resin)合成法によって生成した。樹脂上でペプチド伸長を行って各ポリペプチドを生成し、続いて閉環メタセシスを行った。
【0222】
炭素数8の架橋剤及び炭素数11の架橋剤など、長さの異なる炭化水素架橋剤は、好適な長さのアルケニル鎖を有するα-メチル,α-アルケニルアミノ酸を使用して生成することができる。例えば、(S)2-(4´ペンテニル)Alaをポリペプチドに組み込んで、両方の末端にS構成をもつ炭素数8の架橋剤を有する安定化ポリペプチドを構築した。(R)2-(4´-ペンテニル)Alaをポリペプチドに組み込んで、両方の末端にR構成をもつ炭素数8の架橋剤を有する安定化ポリペプチドを構築した。一方の末端にS構成をもち他方の末端にR構成をもつ、炭素数8の架橋剤を有する安定化ポリペプチドのためには、それぞれ、(S)2-(4´-ペンテニル)Ala及び(R)2-(4´-ペンテニル)Alaを使用した。一方の末端にS構成をもち他方の末端にR構成をもつ、炭素数11の架橋剤を有する安定化ポリペプチドを構築するためには、それぞれ、(R)2-(7´-オクテニル)Ala及び(S)2-(4´-ペンテニル)Alaを使用した。
【0223】
各ポリペプチドは、標準的な高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)プロトコルを使用して精製した。Zorbax C18逆相カラム、9.4×250mm(Agilent、孔径80Å、粒径3.5μm)を使用した。使用した溶媒は、A:水、0.1%(vol/vol)TFA;B:アセトニトリル、0.1%(vol/vol)TFAであった。流速は4ml/分であった。勾配は、30分間にわたり10-100%(vol/vol)B、5分間にわたり100% B、4分間にわたり100-10%(vol/vol)B、1分間にわたり10%(vol/vol)Bであった。注入量は100~400μlであった。波長(nm)は、280(Fmoc含有ペプチド、Trp含有ペプチド、またはTyr含有ペプチドの場合)、または220(その他の場合)であった。
【0224】
実施例2. BCL9のHD2ドメインの機能ドメインのマッピング
Wntシグナル伝達経路は癌及び他の疾患においてシグナル伝達に影響を与えるため、BCL9ペプチドのHD2ドメインを含有するペプチドを調査した。BLAST検索は、ヒトBCL9タンパク質のHD2ドメインが独特であり、したがって、このドメインに由来するペプチドがBCL9の作用を阻害するのに特異的であるはずだということを示した。
【0225】
β-カテニンに結合するBCL9タンパク質のHD2ドメインのコア機能ドメインをさらに特定するために、複数のリード最適化研究を、(i)ヒトBCL9タンパク質の完全長HD2ドメインのドメインマッピング、(ii)潜在的なコア機能ドメイン内での点変異、ならびに(iii)末端修飾及びステープル部位最適化という一連の3ステップで行った。ポリペプチドとβ-カテニンとの結合を検出するための2つの生化学アッセイを展開した。第1のアッセイは、ストレプトアビジン-XL655蛍光とビオチン化ポリペプチドをコンジュゲートし、Eu標識モノクローナル抗体(mAb)とβ-カテニンタンパク質のヒスチジンタグをコンジュゲートした、均質時間分解蛍光(HTRF)結合アッセイ(Cisco)であった。第2のアッセイは、ストレプトアビジンでコーティングしたドナービーズとビオチン化ポリペプチドをコンジュゲートし、プロテインAでコーティングしたアクセプタービーズに抗β-カテニン抗体を通してβ-カテニンタンパク質をコンジュゲートした、増幅型ルミネッセンスプロキシミティホモジニアスアッセイ(ALPHA)スクリーニングアッセイ(Perkin Elmer)であった。この結合アッセイでは、ビオチン化ペプチドをビーズにコンジュゲートするためにPEGリンカーを使用し、BCL9由来ポリペプチドがβ-カテニンに結合するさらなる余地を与えた。ALPHAスクリーンアッセイで評価したところ、β-カテニンに対するヒトBCL9タンパク質の完全長HD2ドメインのKDは20nMであり、シグナル対バックグラウンド比は180倍であり、結合親和性を検出する他の既知の方法と比べて著しい改善がもたらされた。例えば、Zhang et al.,Analytical Biochemistry 469:43-53(2015)及びKawamoto et al.,Biochemistry 48(40):9534-9541(2009)を参照されたい。
【0226】
ドメインマッピングは、ヒトBCL9のHD2ドメインにひろがる20個の重複するステープルドポリペプチド(7マーまたは8マー)を構築することによって行った。8~20アミノ酸長を有するポリペプチドは、低コストであるという追加の利点を有するため、通常、タンパク質相互作用の阻害剤として使用される。
図2Aに示されるように、このプロセスは、HD2ドメインの最小の機能ドメインを検証するために、小さな安定化ポリペプチドの生成及びHD2ドメインの選択されたアミノ酸の点変異の使用を含んだ。7つのアミノ酸が単一のi,i+4ステープルを形成するための最短の配列であるため、ヒトBCL9タンパク質のアミノ酸351~374から7または8アミノ酸長を有する連続した安定化ペプチドを生成した。以下の表2は、ドメインマッピングのために生成した各ポリペプチドの概要であり、炭素数8の架橋剤をさらに生成するためにどのアミノ酸残基を(S)2-(4´ペンテニル)Alaで置換したかを示す。表2中、Xaa
1及びXaa
2は(S)2-(4´ペンテニル)Alaを表す。表2に列記される各ポリペプチドは、実施例1に従って構築及び架橋した。全てのポリペプチドは、両方の末端にS構成をもつ炭素数8の架橋剤(-CH
2-CH
2-CH
2-CH=CH-CH
2-CH
2-CH
2-)を有する。各ポリペプチドのN末端はアセチル基で修飾されており、ポリペプチドのC末端はNH
2基で修飾されている。表2中、Bはノルロイシンを表す。
【0227】
【0228】
図2Bに示されるように、表2に列記した全ての安定化ポリペプチドを、細胞生存率アッセイにおいて同時に試験した。このアッセイにはColo320DM細胞を選択した。これは、この特定の細胞株の増殖がBCL9及びβ-カテニンに依存するためである。既知のWnt/β-カテニン小分子阻害剤であるICG001を陽性対照として使用した。各処置条件における細胞生存率は、製造元のプロトコルに従ってCellTiterGlo発光細胞生存率アッセイ(Promega)を使用して分析した。
【0229】
図2Bに示されるように、ICG001は、用量依存様式で細胞死を誘導することができた。HD2ドメインの遠位部分を備えるWX-020も、細胞増殖の阻害に効率的であり、ICG001に匹敵した。このアッセイにおけるWX-020のIC
50値は12.4μMであった。WX-020(LRDIQRBLを含む)の作用は、N末端にLeuを有しないWX-018(RDIQRBLを含む)よりも優れており、β-カテニンに結合するコア機能ドメインが、WX-020に包含されている一続きの8アミノ酸残基を含むことが示唆された。また、このWX-020の改善された効力は、HD2ドメインの遠位部分に由来する短い安定化ポリペプチドでは、β-カテニンに結合し、したがってBCL9とβ-カテニンとの相互作用を遮断する能力を保持するには不十分であることを示す。これらのポリペプチドは、実施例4.1に記載のGeneBLAzer(登録商標)ベータ-ラクタマーゼ(bla)レポーターアッセイ(invitrogen)を使用した細胞ベースのWnt転写阻害アッセイでも試験した。このアッセイでは、HCT116細胞を選択した。これは、この細胞がβ-カテニン変異の存在に起因する異常なWntシグナル伝達の活性化を有することで知られているためである。細胞生存率アッセイの結果と一致して、WX-020は、Wnt転写の阻害において最も効果的なポリペプチドであった(
図2C)。
【0230】
さらに、
図3に示されるように、同じ細胞生存率アッセイにおいて試験したとき、WX-020の作用は完全長HD2ドメイン(WX-001、「SAH-BCL9#1」)のものを超過し、他の配列エレメントまたは鎖修飾の存在に依存して、コア機能ドメインを含む全てのポリペプチドが必ずしもBCL9とβ-カテニンとの相互作用の遮断において等しく効果的であるとは限らないことが示された。WX-020を上述のALPHAスクリーンでも試験したところ、80nMのK
D値を有することが示された。実施例4.1に記載の手順に従い、WX-020をWnt転写アッセイで試験すると、1580nMのIC
50値を有することが示された。
【0231】
HD2ドメインの遠位部分のアミノ酸を変化させる点変異も、安定化ペプチドの有効性を低減させ、HD2ドメインの遠位領域が、β-カテニンへの結合に関与するBCL9のモチーフを含有することが示された。特に、WXポリペプチドの構造活性相関(SAR)評価は、WXポリペプチドの疎水性アミノ酸がβ-カテニンへの結合を媒介することを示した。
【0232】
実施例3. コア機能ドメインを含む安定化ポリペプチド
実施例2で特定したコア機能ドメインを含む、様々なアミノ酸長を有する4つの追加のステープルドポリペプチドを生成した。これらのステープルドポリペプチドは、透過性及び溶解性を改善させるための既知のペプチドタグまたは末端修飾、例えばAnt8、TAT、(βAla)-(βAla)を付加することによってさらに修飾した。実施例1に規定の標準的なペプチド合成プロトコルを使用して,配列番号XX~XXに対応する4つの追加の安定化ポリペプチドを生成した(表3;表1も参照されたい)。Kim 2011も参照されたい。例えば、
図1Aに示されるWX-024を構築するために、ルテニウム媒介性閉環オレフィンメタセシスを使用して、配列番号Xの2つのXaaアミノ酸間に炭化水素架橋剤を生成した。閉環メタセシスの後、ポリペプチドを脱保護し、解放した。結果として得られる安定化ポリペプチドは、両方の末端にS構成をもつ-CH
2-CH
2-CH
2-CH=CH-CH
2-CH
2-CH
2-の炭化水素架橋剤を含む。WX-024は、N末端にアセチル基を含有し、C末端に2-ナフチルアラニンを含有する。C末端における2-ナフチルアラニンのカルボキシル基は、NH
2でさらに修飾されている。WX-021、WX-022、及びWX-023はWX-020と同じ配列を共有するが、C末端における異なる化学部分(それぞれ、C末端における2-ナフチルアラニン及びNH
2を有する2つのβ-アラニン単位、C末端におけるNH
2を有する2つのβ-アラニン単位、及びC末端におけるNH
2を有する2-ナフチルアラニン)で修飾されている。全てのポリペプチドは、実施例1に記載のプロトコルに従ってさらに精製した。
【0233】
表3は、コア機能ドメインを含む4つのポリペプチドの概要であり、炭素数8の架橋剤をさらに生成するためにどのアミノ酸残基を(S)2-(4´ペンテニル)Alaで置換したかを示す(Xaa1及びXaa2は(S)2-(4´ペンテニル)Alaである)。
【0234】
【0235】
これらの追加のポリペプチドを、CellTiterGlo発光細胞生存率アッセイ(Promega)で試験した。このアッセイではICG001を陽性対照として使用した。
図4Aに示されるように、WX-020を含め全ての試験したポリペプチドが用量依存様式で細胞増殖を阻害することができたが、このアッセイではWX-024(及びWX-021)が特に効果的であった。特に、このアッセイにおけるWX-024のIC
50値はWX-020と比較して大幅に改善され、コア機能ドメインを含むWX-024が、同じコア機能ドメインを含む他のポリペプチドと比較して細胞生存及びWnt転写の阻害に特に効果的であることが実証された。
【0236】
溶解性、安定性、及び塩の選択に関するいくつかの予備研究を、ChemPartnerと共同し、WX-024を用いて行った。
図4Bに示されるように、酢酸塩形態のWX-024を細胞ベースのWnt転写阻害アッセイで試験したところ、Wnt転写が効果的に阻害された(IC
50=292nM)。同様に、
図4Cは、同じアッセイにおいて塩酸塩もWnt転写を効果的に阻害したことを示す(IC
50=313nM)。WX-024は、水、DMSO、及びPBS中に1mg/mLで可溶性であり、トリフルオロ酢酸塩形態のWX-024は、2~8℃及び室温で少なくとも1か月にわたって安定であった。加えて、塩形態のWX-024は、様々なインビトロ細胞生存率アッセイにおいて活性であった。
【0237】
実施例4. 安定化ポリペプチドのインビトロプロファイル
β-カテニンへのBCL9の結合は、Wntシグナル伝達を活性化させることが知られている。Wnt/β-カテニン活性は広範囲の細胞シグナルを制御するため、この経路の活性を測定するためには様々なアッセイを使用することができる。WX-021及びWX-024を様々な細胞アッセイで評価し、Wnt/β-カテニンシグナル伝達をインビトロで調節するその能力を評価した。
【0238】
実施例4.1. 安定化ポリペプチドの細胞活性
GeneBLAzer(登録商標)ベータ-ラクタマーゼ(bla)レポーターアッセイ(invitrogen)により、WX-021及びWX-024の細胞活性を測定した。ICG001を比較として使用した。GeneBLAzerは、
図5Aに示されるように、HCT-116細胞に安定に組み込まれたβ-カテニン/LEF/TCF応答エレメントの制御下にあるベータ-ラクタマーゼ(BLA)レポーター遺伝子を含有するCellSensor(商標)LEF/TCF-bla HCT-116細胞を使用する。これらの細胞はベータ-ラクタマーゼを恒常的に発現し、Wnt/β-カテニンシグナル伝達経路のアゴニスト及びアンタゴニストを検出するために使用することができる。GeneBLAzerアッセイは、刺激された細胞と刺激されていない細胞との2色(青色/緑色)の計測値を用いるレポーター応答の比率計測を提供する。
【0239】
LEF/TCF-bla HCT-116細胞を透明底プレート上のアッセイ培地(Invitrogen)に播種し、37℃で一晩インキュベートした。次いでこれらの細胞を、ビヒクル対照(0.05% DMSO水溶液)または最大10μMの範囲の用量のWX-021、WX-024、もしくはICG001で5時間処置した。次にこれらの細胞を、WntアゴニストであるmWnt3a(GeneBLAzerキットに提供されているもの)と共に37℃で5時間インキュベートした。基質混合物(ベータ-ラクタマーゼのFRET基質であるCCF4-AMを用いるLiveBLAzer(商標)B/G基質を含有するもの)をウェルに加え、プレートを室温で2.5時間にわたり暗所でインキュベートした。黒壁透明底384ウェルプレート(Corning Costar)を使用し、Spectramax M2を用いてスキャニングを行った。プレートはまず、励起フィルタ409/20nm及び発光フィルタ460/40nmでスキャニングした(青色のチャネルのスキャン1)。次いでプレートを励起ファイラ409/20nm及び発光フィルタ530/30nmでスキャニングした(緑色のチャネルのスキャン2)。460nm及び530nmにおける蛍光発光値を取得し、460/530の阻害比を使用して、製造元(Life Technologies)のデータ分析プロトコルを使用することにより、WX-024によるWnt/β-カテニンシグナル伝達の阻害率(阻害%)を判定した。
【0240】
図5B~5Dに示されるように、このレポーターアッセイにおいて、漸増濃度のWX-021及びWX-024は、ICG001と比較して高いWntシグナル伝達の阻害率をもたらした。このアッセイから計算されたWX-021及びWX-024のIC
50は、それぞれ764nM及び191nMであった。これらの安定化ポリペプチドは、既知のWnt阻害剤であるICG001(IC
50=1060nM)よりも強力なWnt/β-カテニンシグナル伝達の阻害剤であった。別のWnt阻害剤であるLGK-974(別名、Porcupine阻害剤)を同じアッセイにおいて試験した。LGK-974は、Wntタンパク質の分泌及び機能的活性化に必要とされるWntファミリータンパク質のパルミトイル化を媒介する膜結合O-アシルトランスフェラーゼであるPorcupineを阻害する。Liu et al.,Proc Natl Acad Sci USA(2013)110:20224-20229。WX-024はまた、Wnt/β-カテニン転写の標的化においてLGK-974(IC
50>10μM)よりも良好なインビトロ効力を示したが、LGK-974は細胞外Wntシグナル伝達を標的とし、β-cat転写を直接阻害しないため、これは予想通りであった(
図5E)。
【0241】
全体として、WX-021及びWX-024の両方がWntシグナル伝達経路の抑制において効果的であったが、WX-024の作用は、細胞生存率アッセイ(
図4)とWnt転写アッセイ(
図5)との両方において、WX-021と比較して改善された機能特性を示した。したがって、その後のインビトロ研究及びインビボ研究におけるさらなる特性評価のためにWX-024を選択した。
【0242】
実施例4.2. Β-カテニンへのWX-024の結合親和性
β-カテニンに結合するWX-024の能力を、均質時間分解蛍光(HTRF)アッセイ(Cisbio)において評価した。HTRFアッセイは、Degorce et al.,Curr Chemical Genom.3,22-32(2009)に詳解されているように、高スループット形式でタンパク質-タンパク質の相互作用をアッセイする手段を提供する。タンパク質-タンパク質の相互作用を測定するHTRFアッセイでは、2つのタンパク質の結合がHTRFドナー及びアクセプターのフルオロフォアを近接させ、蛍光エネルギー移動(FRET)シグナルを生成する。この相互作用の各タンパク質は、抗体反応によってドナーまたはアクセプターと関連付けられる。
【0243】
図6Aは、HTRFアッセイの基礎を示す概略図を提供する。このβ-カテニンのHTRFアッセイ(Cisbio)において、β-カテニンは、β-カテニンに対するXL665結合抗体(ab)により結合される。Degorce(2009)を参照されたい。XL665結合抗体に結合したβ-カテニンは、その結合パートナー、例えばBCL9またはBCL9ペプチドと相互作用することができる。
【0244】
このHTRFアッセイでは、β-カテニン結合パートナーであるWX-024をビオチンに結合させた。β-カテニン及びWX-024のインキュベーションの後、次いでこの反応物を、ストレプトアビジン(SA)をユーロピウムクリプテートに結合させたもの(SA-ユーロピウムクリプテート)と共にインキュベートした。SAは、ビオチンの高親和性結合パートナーであり、ビオチン化した安定化ポリペプチドにSA-ユーロピウムクリプテートを緊密に結合させる。ユーロピウムクリプテートは、HTRF反応のためのエネルギードナーである。密接に結合していないとき、ユーロピウムクリプテートとXL665との間にエネルギー移動はない。しかしながら、ユーロピウムクリプテート及びXL-66が近接している場合、例えばXL665抗体が結合したβ-カテニンへのビオチン化WX-024の結合が成功している場合は、測定され得るエネルギー移動が存在する。
【0245】
ヒスチジンタグ付きβ-カテニン、ビオチン標識したBCL9ペプチド、ヒスチジンタグのためにユーロピウム(Eu)標識したモノクローナル抗体、及びSA-XL665を、HTRFアッセイに使用した。アッセイ用緩衝液は、50mMのMES(pH6.5)、150mMのNaCl、0.1%のBSA、1mMのDTT、及び0.1%のTween 20を含有した。5μLのHisタグタンパク質をプレートに加えた。5μLのビオチン標識ペプチドを様々な濃度で同じウェルに加えた。10μLのEu標識モノクローナル抗体及びSA-XL644検出混合物を添加した。この反応物を室温で1時間インキュベートし、次いでプレートを読み取った。
【0246】
WX-024から得られた結果が
図6Bに示されている。この結果から計算されたWX-024のK
D値は4.21nMであった。
【0247】
実施例4.3. 細胞生存率アッセイにおけるWX-024及びICG001の比較
図7は、製造元の標準的な手順を用いてCellTiterGlo発光細胞生存率アッセイ(Promega)を使用した、漸増濃度のWX-024またはICG001のいずれかで処置したHCT116細胞の生存率に関するデータを提示する。WX-024及びICG001の両方が、生存率アッセイによって測定した場合に細胞増殖を阻害することができた。特に、このアッセイから計算されたWX-024のIC
50値は1.92μMであり、ICG001のもの(IC
50=2.17μM)より低かった。
【0248】
全体として、このデータは、WX-024がWntシグナル伝達経路の阻害と一致する堅実なインビトロプロファイルを有することを示す。
【0249】
実施例4.4. WX-024と他の既知の化学療法剤との比較
WX-024をColo320DM細胞生存率アッセイでも試験し、他の化学療法剤と比較した。WX-024は、BCL9/β-カテニン依存性細胞株の細胞増殖の阻害において、ICG001、LGK-974(
図8A)、またはエルロチニブ(
図8B)よりもおよそ12倍効果的であった。
【0250】
WX-024はまた、他の既知の化学療法剤と組み合わせて使用したとき、利益及び改善をもたらした。特に、
図8Cに示されるように、WX-024を結腸直腸癌で広く使用されている化学療法薬である5-フルオロウラシル(5-FU)と組み合わせて試験したところ、この併用療法が5-FU処置単独(IC
50=12.1μM)と比較して著しく改善された細胞増殖阻害能力(IC
50=1μM)を示したことが示された。
【0251】
実施例4.5. WX-024の特異性
実施例4.1において詳述したように、WX-024は、細胞ベースのアッセイにおいてWnt転写を阻害した。しかしながら、WX-024は、JAK/STAT(SIE-bla ME-180細胞株)、PI3K/AKT/FOXO(TREx FOXO3-DBE-bla HeLa細胞株)、TGF-ベータ(SBE-bla HEK 293T細胞株)、またはTNF-アルファ/JNK(AP1-bla ME-180細胞株)経路(Life Technologies)などの他の転写アッセイにおいて著しい阻害を一切もたらさず、これらの転写アッセイ全てにおいて10μM超のIC50値を示した。これらのアッセイでは、トリフルオロ酢酸塩形態のWX-024を使用した。以下の表4に要約されるデータは、WX-024が、Wnt/β-カテニン経路を特異的に標的とする阻害剤であることを実証する。
【0252】
【0253】
実施例5. 安定化ポリペプチドのインビボプロファイル
WX-024の堅実なインビトロプロファイルに基づいて、マウス実験を行って血漿薬物動態パラメータを判定した。加えて、マウス異種移植片モデルにおいてWX-024を評価して、腫瘍増殖の阻害における有効性を試験した。
【0254】
実施例5.1. マウスにおけるWX-024の薬物動態プロファイル
雄ICRマウス(非近交種)における静脈内(i.v.)注射及び腹腔内(i.p.)注射の後、WX-024の薬物動態(PK)プロファイルを評価した。静脈内注射には尾静脈を使用した。WX-024の用量は、1mg/kg(i.v.)及び5mg/kg(i.p.及びi.v.)で評価した。注射後、投薬後5分、1、2、4、6、8、12、及び24時間の時点で、後眼窩静脈を介して血液試料を得た。ヘパリンナトリウムとの混合及び遠心分離の後、血液試料から血漿を得た。
【0255】
LC/MSを使用して、WX-024の濃度(ng/ml)を判定した。LC分析は、Agilent 100 HPLCを使用して行った。MS分析は、AB Sciex API 4000を使用して行った。段階希釈によって較正標準を調製した。経時的なWX-024の濃度(ng/ml)が
図9Aに示されている。
【0256】
FDA認可薬物動態プログラムであるWinNonlin Professional v5.2(Pharsight)のノンコンパートメント分析モジュールを使用して、最大観察濃度(C
max)、終末相半減期(T
1/2)、全身クリアランス(CL)、分布容積(V
z)、投薬時間から最後の観察可能な濃度までの曲線下面積(AUC
0-t)、投薬時間から無限大まで外挿した曲線下面積(AUC
0-inf)、及び生物学的利用率を計算した。これらの値は
図9Bに要約されている。なお、5mg/kgの静脈内投与は、47354ng/mlの値で最大のWX-024のC
maxをもたらした。これは、実施例4で計算されたインビトロのIC
50より15倍高い、30μM超と同等であり、WX-024の生理的に適切な濃度が血漿中で達成され得ることを示している。
【0257】
全ての投薬レジメンでのWX-024のT1/2は2.4~2.5時間であった。これは、活性WX-024が血漿中に存在する実質的な期間が存在することを示す。腹腔内投薬後のWX-024の生物学的利用率は73.6%である。静脈内投薬については、化合物の全てが血漿に入るため生物学的利用率が100%であることから、この値は提供されていない。Cmax、Cl、Vz、AUC0-t、及びAUC0-infの値は全て、腹腔内及び静脈内投薬後のWntシグナル伝達を潜在的に調節するのに十分なWX-024への曝露を示すプロファイルとも一致する。
【0258】
異なるマウス系統(雌balb/cマウス、処置毎にn=2)ならびに筋肉内経路及び皮下経路を含む追加の投与経路を用い、WX-024の同様の薬物動態研究を行った。簡潔に述べると、10%のDMSOと90%の脱イオンH
2Oとの混合溶媒を使用してWX-024を溶解させた。0.5mg/mlの一定濃度でペプチド溶液を調製し、次いで用量に従って好適な量を投与した。同じ混合溶媒をビヒクル処置として使用した。投薬後0.25、1、2、4、6、7、12、及び24時間(ならびに筋肉内、皮下、及び腹腔内経路では投薬後36及び48時間)の時点で後眼窩静脈から定期的に血液試料(300μL)を収集し、LC-MS/MSによる目下の生体分析のための血漿分離を行った。WinNonlin Professional(v5.2、Pharsight、FDA認可済)のノンコンパートメント分析モジュールによって標準PKパラメータを計算した。
図10Aに示されるように、WX-024の血漿濃度は、
図9Aに示されたものと同様の傾向をたどった。この実験から計算された平均薬物動態パラメータは、
図10B及び
図10Cに示されている。良好な生物学的利用率及び長い半減期がWX-024で観察され、WX-024の毎日の投薬が実行可能であることを示している。なお、WX-024の血漿濃度は、腹腔内、筋肉内、皮下経路によって投与したとき、長期間にわたって安定した状態を保ち、WX-024は様々な経路で投与したときにインビボで生理的に適切な濃度を達成し得ることが実証された。
【0259】
全体として、これらのデータは、WX-024がBCL9とβ-カテニンとの相互作用の阻害におけるインビボ効果の研究に好適なPKプロファイルを有することを示す。
【0260】
実施例5.2. 癌のマウス異種移植片モデルにおけるWX-024の有効性
上述のように、マウスにおけるWX-024の好ましいPKプロファイルに基づき、マウス異種移植片結腸癌モデルにおいてWX-024の有効性を調査した。BALB/cヌードマウスのColo320DM結腸癌モデルを用いた。このモデルでは、Colo320DM細胞がBALB/cヌードマウスに皮下注射される。ヌードマウスは腫瘍を排除するのに十分な免疫応答を起こさないため、Colo320DM細胞から腫瘍が形成される。
【0261】
10%熱不活性化ウシ胎仔血清を補充したRPMI1640培地(GIBCO、カタログ番号31800022)において37℃でColo320DM腫瘍細胞(ATCC)を培養した。指数増殖期に細胞が増殖しているときにColo320DM細胞の採取を行った。6~8週齢の雌BALB/cヌードマウス(Shanghai Laboratory Animal Center)を研究のために使用した。動物は、研究期間全体を通じて、水及び照射滅菌した食物を自由に利用することができた。各マウス(n=16)には、0.1mLのPBS中の5×106個のColo320DM腫瘍細胞を右側腹部領域に皮下接種した。腫瘍を接種後14日間にわたって発達させ、このとき、平均腫瘍サイズは156.78mm3であった。研究中、動物のケア及び使用は、Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care(AAALAC)に従って行った。腫瘍細胞の接種後、動物の罹患率及び死亡率を毎日検査した。各動物の体重を研究全体を通じて監視した。
【0262】
14日間の腫瘍発達期間の後、5mg/kg WX-024群、10mg/kg WX-024群、及び15mg/kg WX-024群、ならびにビヒクル対照群の4つの処置群にマウスを分割した。エタノール4%+Tween 80 8%+10mM PBS 88%を、ビヒクルとして使用した。全ての処置を1日1回施した。WX-024溶液を純粋なDMSOに溶解させ、次いで滅菌水で希釈した。静脈内投薬での各動物に対する投薬容量が0.05mL/体重10gになるように、体重に合わせて投薬容量を調整した。処置期間は14日間であった。
【0263】
全ての処置を毎日の静脈内投薬として開始した。研究中、15mg/kgのWX-024の静脈内投与は、3日間の処置後のビヒクル処置群と比較して、およそ11%の平均体重減少の体重減少をもたらしたことが見出された。10mg/kg群及び15mg/kg群については、注射方法を7日目に腹腔内注射に変更した。処置期間の7日目以降、10mg/kg群及び15mg/kg群には腹腔内注射による投薬(0.1ml/10gに調整した投薬容量)を維持したところ、これらの動物の体重は安定化した。ビヒクル対照または5mg/kgのWX-024で処置したマウスには、研究全体を通じて静脈内注射を与え、体重に明らかな影響はなかった。処置期間中のマウスの体重変化は
図11に示されている。
【0264】
処置期間の0、3、5、7、9、11、14日目にキャリパーを使用して腫瘍体積を二次元で測定した(全ての投薬は14日間の腫瘍発達の後に開始する)。腫瘍の体積は、方程式:V=0.5a×b2(式中、a及びbはそれぞれ、腫瘍の長径及び短径である)を使用して測定した。腫瘍体積はmm3で表される。研究の最後(すなわち、22日間の処置の後)に、腫瘍塊の重量を測定した。
【0265】
図12Aは、異なる処置群における経時的な腫瘍体積を示す。14日目に、ビヒクル対照処置マウスの腫瘍体積(平均±標準誤差値)は2575±382.86mm
3であった。WX-024処置マウスの腫瘍体積は、5mg/kg処置群、10mg/kg処置群、及び15mg/kg処置群で、それぞれ2039±373.29、1370±114.39、及び1157.6±99.04mm
3であった。10mg/kgまたは15mg/kgのWX-024で処置したマウスの腫瘍体積は、処置の14日目においてビヒクル処置動物と比較して著しく小さかった(P<0.05、Kruskal-Wallis分析)。ビヒクル処置群と比較して、処置期間の14日目における腫瘍体積は、15mg/kg WX-024群では53.2%小さく、10mg/kg WX-024群では44.9%小さかった。ビヒクル対照群と比較して著しく小さい10mg/kg群及び15mg/kg群の腫瘍体積は、処置の11日目にも見られた。WX-024と予想される腫瘍サイズの用量-応答の予備相関は、12.69mg/kgのIC
50値をもたらした。
【0266】
図12Bは、ビヒクルまたはWX-024で22日間処置した後の研究の最後における腫瘍塊の重量(グラムで測定)を示す。10または15mg/kgのWX-024で(上述の静脈内/腹腔内プロトコルを使用して)処置したマウスの腫瘍量は、ビヒクル処置マウスの腫瘍量よりも著しく少なかった。これらのデータは、10または15mg/kgのいずれかでの処置が、BALB/cヌードマウスのColo320DM結腸癌モデルにおいて腫瘍増殖を阻害したことを裏付けた。
【0267】
Colo320DMモデルの終了時に、標準的な技術を使用して腫瘍及び腸管の試料を収集し、ホルマリン固定し、パラフィン包埋した。免疫組織化学(IHC)染色のために、4μm厚の組織切片を調製した。キシレン、段階的なエタノール、及びリン酸緩衝食塩水(PBS)を順に用いた洗浄により、組織切片を脱パラフィン及び再水和した。脱パラフィン及び再水和の後、組織切片を標的回収溶液(10mMクエン酸緩衝液、pH6.0)中での高温誘導性エピトープ回収に供した。
【0268】
製造元の指示に従って、UltraVision Quanto Detection System(Thermo、カタログ番号TL-060-QHD)キットを使用して、抗体結合を検出した。切片をHydrogen Peroxide Block及びUltra V Block(キットに提供されているもの)で処置し、一次抗体:CD44(Abcam、カタログ番号ab157107、希釈度1:500)、Axin(LSBio、ウサギIgG、カタログ番号LS-B7029、ロット番号51907、原液濃度:1000ug/ml)、またはVEGFA(VEGFA:LS Bio、ウサギIgG、カタログ番号LS-B10263、ロット番号65323、原液濃度:1000ug/ml)と共に4℃で一晩インキュベートした。ウサギIgGは陰性対照中の一次抗体の代わりとした。全ての切片をヘマトキシリンで対比染色し、脱水し、装着した。IHC画像はOlympus CKX31SF逆顕微鏡で撮影した。
【0269】
図13Aは、22日間にわたってビヒクル、10mg/kg、または15mg/kgのWX-024で処置したマウスにおいて腸管の形態が維持されたことを示す。
図13Bは、Wntシグナル伝達経路における下流タンパク質であるAxin2の染色を示し、15mg/kgのWX-024を用いた22日間の処置がビヒクル処置と比較してAxin2染色を減少させたことを示している。
【0270】
図14Aは、ビヒクルまたは15mg/kgのWX-024のいずれかで22日間処置した後の、Wntシグナル伝達経路における別の下流タンパク質であるCD44の染色を示す。免疫組織化学スコアは各CD44画像の右上に示されている。
図14Bは、CD44染色画像から計算された平均染色スコアの定量的比較を示す。これらのデータは、WX-024での処置後のCD44染色にも減少があったことを示す。
【0271】
同様に、腫瘍試料のVEGFAを染色し、WX-024が腫瘍でのVEGFA発現を抑制することができたことを確認した。
図15Aは、2体のビヒクル処置動物及び2体のWX-024処置動物からの代表的な画像を示す。染色画像から計算された平均免疫組織化学スコアは15Bに要約されている。
【0272】
このように、Colo320DMモデルからのデータは、ビヒクル処置と比較してWX-024は腫瘍増殖の抑制及びWnt/β-カテニンシグナル伝達の阻害が可能であることを示す。VEGFAに対するWX-024の効果は、WX-024が腫瘍でのVEGF発現を低減させることにより免疫応答を調節し得ることも示す。
【0273】
実施例5.3. 癌のマウス同系モデル(CT26)におけるWX-024の有効性
インタクトな免疫系を有するマウスにおける腫瘍増殖を調査するためのモデルとして、結腸癌のCT26モデルを使用した。
【0274】
CT26細胞増殖に対するWX-024の効果を、まずインビトロで調査した。CT26細胞をF底プレートで5日間にわたって増殖させた。
図16Aに示されるように、1日目(D1)から5日目(D5)まで、発光細胞生存率アッセイにより測定したとき、CT26細胞は実質的に増殖した。CellTiterGlo(Promega)細胞生存率アッセイ。CT26細胞増殖を阻害するWX-024(
図16B)及びドキソルビシン(
図16C)の能力を測定した。ドキソルビシンは既知の細胞増殖阻害剤であり、対照として含まれた。
図16DはCT26細胞におけるインビトロデータの概要であり、WX-024及びドキソルビシンの両方がCT26細胞の増殖を阻害することができ、WX-024がより強力な活性を示したことを示す。WX-024のIC
50値は1.753μMで、ドキソルビシンの7.520μMより大幅に低かった。EGFR受容体アンタゴニストであるエルロチニブは、2μM超のIC
50を有した。
【0275】
次いで、CT26を使用した結腸癌の同系マウスモデルを評価した。それぞれおよそ5週齢の雄Balb/cマウスの右側腹部に、5×10
4個のCT26細胞を皮下注射した。次いで、ビヒクルまたは20mg/kgのWX-024のいずれかをマウスの腹腔内に毎日投薬した。8体のマウスが各処置群に含まれた。次いで、
図17Aに示されるように投薬14日間にわたって腫瘍増殖を評価した。経時的な腫瘍体積は、ビヒクルと比較してWX-024で処置したマウスにおいて実質的に低かった(P<0.001)。
図17Bは、実験全体を通じたWX-024の平均腫瘍増殖阻害率の概要である。3日間の投薬後のTGIは89.2%であり、12日間の投薬後のTGIは70.0%であった。
図18Aは、ビヒクルの投薬14日間にわたる個々の動物の腫瘍増殖率を示す。
図18Bは、20mg/kgのWX-024の投薬14日間にわたる個々の動物の腫瘍増殖率を示す。これらのデータは、CT26モデルで見られた腫瘍増殖の阻害が動物間で一貫していたことを示す。
【0276】
ビヒクルまたは20mg/kgのWX-024のいずれかを2週間毎日投薬した後の血液中のCD4
+T細胞数も評価した。各マウスから全血を採取した。リンパ球をFicollによって血液試料から精製し、細胞を蛍光抗CD4抗体で染色した。データをフローサイトメトリによって測定した。
図19Aは、全細胞に対する割合として表されたCD4
+T細胞数を示し、WX-024の投薬に伴う増加を示している。
図19Bは、1つの検体の血液試料中の全細胞当たりの相対的なT細胞数を示し、WX-024の投薬に伴う増加を示している。これらのデータは、WX-024での処置後のTヘルパー細胞の増加及び免疫系の活性化を示す。これらのデータはまた、免疫療法とWX-024の併用療法が、PD-1またはCTLA-4に対する抗体での処置などの免疫療法単独に応答しない癌において適切であり得ることを示す。
【0277】
ビヒクルまたは20mg/kgのWX-024のいずれかを2週間毎日投薬した後の血液中のCD8
+T細胞数も評価した。上述のように、各マウスから全血を採取した。リンパ球をFicollによって血液から精製し、細胞を蛍光抗CD8抗体で染色した。データをフローサイトメトリによって測定した。
図20Aは、全細胞に対する割合として表されたCD8
+T細胞数を示し、WX-024の投薬に伴う増加を示している。
図20Bは、血液試料中の全細胞当たりの相対的なT細胞数を示し、WX-024の投薬に伴う増加を示している。これらのデータは、WX-024での処置後の細胞傷害性T細胞の増加及び免疫系の活性化を示し、WX-024を免疫療法と一緒に使用することをさらに支持する。
【0278】
WX-024が腫瘍微小環境を調節することができるかどうかをさらに評価するために、研究の最後に腫瘍及び血液試料を抗凝固管に収集した。単一細胞分離を行い、次いでFACS分析のために細胞を染色した。細胞表面染色には、CD45-PerCP-Cy5、CD4-FITC、CD8-PE-Cy7、及びCD25-PEを使用した。核内染色では、細胞を一晩透過処理し、次いでFoxp3-APCで60分間染色した。
図21Aに示されるように、CD4
+T細胞集団内の制御性T細胞は腫瘍試料中で著しく低減したが、CD8+細胞傷害性T細胞と制御性T細胞との比は著しく増加した(
図21B)。この実験における腫瘍試料の代表的なFACS分析が
図21C及び
図21Dに示されている。
【0279】
図22Aは、ビヒクルまたは20mg/kgのWX-024のいずれかで14日間処置した後の活性β-カテニンの染色を示す。これらの染色画像に基づいて平均免疫組織化学スコアを計算した。
図22Bは、ビヒクル処置群とWX-024処置群との平均染色スコアの定量的比較を示す。
図22Cは、ビヒクルまたは20mg/kgのWX-024のいずれかで14日間処置した後のCD44の染色を示す。これらのデータは、WX-024が腫瘍での活性β-カテニン発現を抑制することができたことを示す。
【0280】
PD-L1についても腫瘍試料を染色した。4体のビヒクル処置マウス及び4体のWX-024処置マウスからの代表的な画像が
図23Aに示されている。各処置群の平均免疫組織化学スコアの定量的な比較が
図23Bに示されている。
【0281】
全体として、これらのデータは、WX-024が腫瘍へのT細胞の浸潤を刺激し、腫瘍に対する免疫反応を刺激することを示す。これらのデータはまた、WX-024が、腫瘍微小環境をそのような免疫反応に好ましくなるように調節することを示す。したがって、WX-024とチェックポイント遮断剤との併用療法は、腫瘍内に存在する制御性T細胞または樹状細胞の低減によって腫瘍に対する免疫反応を刺激することにおける相乗効果をもたらし得る。さらに、WX-024は血液中のCD8+T細胞を増加させることができたため、WX-024が腫瘍内のT細胞浸潤及び腫瘍に対する免疫原性を増加させる可能性が高いことがさらに示される。
【0282】
実施例5.4. 癌のマウス同系モデル(B16F10)におけるWX-024の有効性
他の種類の腫瘍を抑制するWX-024の能力も評価した。C57BL/6マウスにB16F10細胞を接種した。4~5週齢の雌C57BL/6マウスの右側腹部にB16F10細胞(マウス1体当たり0.05ml中2×10
5個の細胞)を接種した。マウスの平均腫瘍サイズが100mm
3に達したとき、マウスを2つの群(N=6)に分割した。第1の群には25mg/kgのWX-024を投与し、第2の群はビヒクルで処置した。処置は14日間連続して腹腔内に施した。
図24に示されるように、WX-024は、ビヒクル処置と比較して腫瘍増殖を効果的に低減させ、WX-024がインビボで腫瘍増殖を抑制する堅実な有効性を有することがあらためて裏付けられた。
【0283】
WX-024が腫瘍へのT細胞の浸潤を誘導し、腫瘍微小環境を調節することができるかどうかをさらに評価するために、C57BL/6マウスにB16F10細胞を接種した。マウスの平均腫瘍サイズが100mm3に達したとき、マウスを2つの群(N=3)に分割し、ビヒクルまたは25mg/kgのWX-024で処置した。処置は12日間連続して腹腔内に施した。処置の最後にマウスを屠殺し、腫瘍及び血液試料を抗凝固管に収集した。各試料について単一細胞分離を行い、次いでFACS分析のために染色した。細胞表面染色には、CD45-PerCP-Cy5、CD4-FITC、CD8-PE-Cy7、及びCD25-PEを使用した。次いで、腫瘍試料を抗CD4抗体または抗CD8抗体のいずれかで染色して、腫瘍試料中のT細胞の存在を評価した。腫瘍試料を抗CD194抗体及び抗CD196抗体でも染色し、腫瘍試料中のTヘルパー17細胞の存在を評価した。
【0284】
図25Aに示されるように、WX-024は、腫瘍試料中に存在するCD4
+陽性細胞をビヒクルと比較して増加させ、WX-024が腫瘍へのTヘルパー細胞の浸潤を誘導することが示された。同様に、
図25Bは、WX-024が腫瘍試料中に存在するCD8
+陽性細胞を増加させたことを示し、WX-024が腫瘍への細胞傷害性T細胞の浸潤を誘導することが示された。
図25Cに要約されているように、これらの結果は、全体として、WX-024が腫瘍へのT細胞の浸潤を誘導することができ、それによって腫瘍塊を特異的に標的とする有益な免疫反応をさらに誘発することを示す。全体として、このデータは、腫瘍におけるCD8+及びCD4+リンパ球の浸潤を増加させるWX-024の傾向を示し、WX-024が、腫瘍内及び/またはその周囲のT細胞の組成を変化させることにより、免疫反応に好ましくなるように腫瘍微小環境を誘導することを示している。
【0285】
腫瘍微小環境に対するWX-024の効果を、WX-024の変異体であるWX-039のものと比較した。WX-039の構築プロセスは実施例10に記載されている。C57BL/6マウスにB16F10細胞を接種した。マウスの平均腫瘍サイズが100mm
3に達したとき、マウスを3つの群(N=3)に分割し、ビヒクル、20mg/kgのWX-024、または60mg/kgのWX-039で処置した。処置は12日間連続して腹腔内に施した。処置の最後にマウスを屠殺し、腫瘍及び血液試料を抗凝固管に収集した。実験から収集した腫瘍細胞を上述のように染色し、また抗CD205抗体も用いて、WX化合物が樹状細胞を調節することができるかどうかを評価した。
図26A及び26Bに示されるように、WX-024はCD205
+細胞を著しく低減させ、WX-024に腫瘍内の樹状細胞を抑制する能力があることが裏付けられた。WX-039も腫瘍内に存在する樹状細胞を抑制することができたが、WX-024の効果はWX-039よりも顕著であった。
図26Cもまた、WX-039は腫瘍内のTヘルパー17細胞を増加させたものの、WX-024がWX-039よりも効果的であるようだったことを示す。CT26動物モデル研究と一致して、これらのデータは、WX-024が腫瘍に対する免疫反応を刺激し、このような免疫反応に好ましくなるように腫瘍微小環境を調節することができることを示す。この実験における腫瘍試料の代表的なFACS分析が
図26Dに示されている。
【0286】
他の免疫療法剤、例えば抗PD-L1抗体、またはT細胞活性化を調節することのできる他の抗体と組み合わせると、WX-024は、制御性T細胞を調節し、CD8+細胞傷害性T細胞と制御性T細胞との比を増加させることができる。これらの免疫療法剤と組み合わせたWX-024はさらに、腫瘍内の骨髄樹状細胞を相乗的に減少させ、それにより、腫瘍に対する免疫反応に好ましい腫瘍微小環境を誘導することもできる。
【0287】
実施例5.5. 癌のマウス同所性モデルにおけるWX-024の有効性
同所性マウスモデルは、マウスに移植された腫瘍に対する抗腫瘍化合物の効果を可視化ため、及び腫瘍転移に対する化合物の効果を評価するために有用である。この実験では、NCI-H1299-Luc細胞株(ルシフェラーゼを発現する非小細胞肺癌細胞株)を利用する同所性モデルを選択した。ルシフェリン基質を取り込むと、これらの細胞は生物発光を行うことができる。NCI-H1299細胞株の増殖は、TCF-1転写因子(BCL9、β-cat、及びPygo)が転写を開始するために転写複合体を形成するPygopus(Pygo)2/β-カテニン転写活性に依存する。
【0288】
同所性動物腫瘍モデルにおけるWX-024の効果を評価するために、雌balb/cヌードマウスにNCI-H1299-Luc細胞を注射した。マウスは約5週齢であった。シリンジを用い、PBS中の50μLのNCI-H1299-Luc細胞(5×106)を各マウスの肺に注射した。細胞をマウスに投与した後、マウスを2つの群(それぞれn=3)に分割し、連続10日間にわたって毎日、ビヒクルまたは15mg/kgのWX-024を静脈内投与した。
【0289】
製造元のプロトコル(Xenogen ivis造影システム、PerkinElmer)に従い、研究全体を通じて定期的に、各マウスの生物発光強度(全光束[p/s])を測定した。
図27Aに示される平均全光束は、ビヒクルまたはWX-024で処置されたマウスの腫瘍細胞によって生成された平均生物発光光子束シグナルを示す。
図27Aに示されるように、WX-024は、腫瘍の形成及び増殖をインビボでほぼ完全に遮断し、WX-024のインビボ有効性が実証された。
図27Bは、この実験で監視された各マウスの全光束を示す。このデータは、腫瘍の形成及び増殖に対するWX-024の阻害効果がマウス間で一貫していたことを示す。このデータはまた、WX-024が腫瘍転移を抑制することができることを示す。
図27Cは、研究全体を通じて撮影された各マウスの生物発光画像を示す。マウス1~3番はビヒクル処置群のものであり、マウス4~6番はWX-024処置群のものであった。
【0290】
実施例5.5. 患者由来の異種移植片(PDX)動物モデルにおけるWX-024の有効性
WX-024がヒト患者に由来する腫瘍にも適用可能かどうかを評価するために、患者由来の結腸癌細胞を接種した異種移植片動物モデルをWX-024に曝露した。4人の異なる結腸癌患者に由来する試料を、古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達の上昇したレベルを示すバイオマーカーについてスクリーニングした。
図28Aに示されるように、試料(5番~8番)を、β-カテニン、BCL9、c-Myc、及びCD44の発現について染色し、対照としてIgGについても染色した。BCL9及びβ-カテニンの核共局在化についても試料を染色した。患者8番に由来する試料は、この実験で試験した全てのバイオマーカーの上昇したレベルを示し、したがって、これを患者由来の異種移植片動物研究のために選択した。
【0291】
患者8番に由来する結腸癌細胞を、約5週齢の雄NOD/SCIDマウスに静脈内注射した。簡潔に述べると、
図28Aから選択されたCRC腫瘍試料を3mm
3の断片にスライスし、NOD/SCIDマウスの右側腹部の皮下に移植した。平均腫瘍サイズが約135mm
3に達したとき(移植の約18日後)、マウスを2つの群(それぞれn=8)に分割し、ビヒクルまたは15mg/kgのWX-024のいずれかを投与した。各マウスには、31日を超える期間にわたって毎日静脈内投与を与えた。
【0292】
図28Bに示されるように、WX-024は、ビヒクルと比較して、腫瘍増殖を効果的に阻害した。WX-024の平均腫瘍増殖阻害率は、31日間の投薬後に75.6%であった。試験の最後にマウスを屠殺し、腫瘍試料を収集した。組織試料を10%のホルマリンで固定し、70%のエタノールに移し、次いで、脱パラフィン、抗原回収(190℃、5分)、内因性ペルオキシダーゼクエンチング(3% H2O2、室温、5分)、室温で15分間にわたる5% FBSでのブロッキング、一次抗体インキュベーション(室温、1時間)、二次抗体インキュベーション(室温、30分)、DABでの発色(室温、5分)、ならびに脱水及び装着の後に処理した。各腫瘍試料をBCL9、β-カテニン、及びCD44の発現について染色した結果が
図29A及び29Bに示されている。なお、WX-024は、これらの腫瘍試料中でCD44発現を低減させることができ、WX-024にWnt/β-カテニンシグナル伝達を阻害する能力があることが裏付けられた。
【0293】
これらのデータは、WX-024がヒト患者に有効な療法であることを示す。このデータはまた、β-カテニン、BCL9、c-Myc、及びCD44などの様々なバイオマーカーが、所与の患者がWX-024処置に特に好適であるかどうかを判定するために有用であり得ることを示唆する。
【0294】
実施例5.6. WX-024の毒性研究
WX-024の毒性効果を評価するために、約5週齢の雌balb/cマウスを、14日連続してWX-024で処置した。ビヒクル、または10mg/kg、15mg/kg、もしくは20mg/kgのWX-024の一日用量で静脈内処置した4つの群(それぞれn=6)にマウスを分割した。試験の最後にマウスを屠殺し、様々な主要臓器を収集した。この組織試料を、実施例5.5に記載されるように処置及び処理した。包埋組織試料を切開し、H&Eで染色した。ビヒクル処置群及び10mg/kg WX-024処置群の代表的なH&E染色画像が
図30Aに示されている。研究全体を通じて各マウスの体重を監視した。各処置群の平均体重が
図30Bに示されている。研究初期にはわずかに減少したが、3つのWX-024処置群全ての平均体重は安定化し、研究全体を通じて維持された。同様に、全てのWX-024処置群の食物消費量は、研究初期にはわずかに減少したものの、継続的な処置によってベースラインレベル近くまで回復した。試験の最後に、血清化学及び血液学的分析(全血球数分析)のために各マウスから血液を収集した。
図30Cは、ビヒクル処置群及び20mg/kg WX-024処置群の血球数プロファイルを示す。これら2つの群のプロファイルは著しく異なっておらず、WX-024がこの実験条件下で著しい毒性を誘導しなかったことが示された。
【0295】
WX-024の毒物動態を約5週齢の雌balb/cマウスで分析した。マウスは、10mg/kg、15mg/kg、または20mg/kgのWX-024で連続14日間にわたって腹腔内処置した。マウスには毎日WX-024を投与した。
図31Aは、実験の1日目における第1の投薬後24時間にわたる血漿濃度の変化を示す(各群でn=2)。1日目に計算された平均毒物動態パラメータは以下の表5に要約されている。
【0296】
【0297】
図31Bは、実験の14日目における最後の投薬後24時間にわたる血漿濃度の変化を示す。表6は、14日目に計算された平均毒物動態パラメータの概要である。IP投薬(15及び20mg/kg)を使用した毒物動態研究は、1日目(それぞれ118,033及び162,333時間*ng/mL)と14日目(それぞれ107,420及び159,976時間*ng/m)とで匹敵するAUC値を示し、WX-024により引き起こされる薬物誘導性免疫原性は可能性が低いことを示している。
【0298】
【0299】
実施例6. WX-024前臨床研究概要
全体として、WX-024は、他の既知のWnt阻害剤と比較して改善されたインビトロ有効性を示した。例えば、HCT166細胞を使用した細胞ベースのWnt転写アッセイで試験したとき、WX-024は、約200nMのIC50値を呈した。WX-024はまた、Wnt転写を特異的に阻害し、このステープルドポリペプチドは、JAK/STAT、TGF-β、PI3K/AKT/FOXO3、及びTNF-α/JNKレポーターアッセイなどの他の転写アッセイにおいて100μM超のIC50値を示した。
【0300】
WX-024の全体的な薬物動態プロファイルは、インビボで生理的に適切な血漿濃度をもたらすためにも許容可能であった。例えば、皮下投与経路によって10mg/kgで試験したとき、生物学的利用率は約70%であった。この条件では、Tmaxは8時間であり、T1/2は13時間であり、一方でCmaxは7.7μMであった。
【0301】
WX-024のインビボ有効性を複数の動物モデルで確認した。例えば、WX-024の平均腫瘍増殖阻害率は、3~6週間投与したとき、これらの動物モデルにおいて約70~80%であった。動物にWX-024を慢性的に投薬したとき、特定の薬物に関連した毒性は観察されなかった。
【0302】
実施例7. コア機能ドメインを含む追加の安定化ポリペプチド
実施例1に記載のプロトコルに従い、コアHD2機能ドメインを含むWX-035を構築した。簡潔に述べると、Kim 2011に概説されているルテニウム媒介性閉環オレフィンメタセシスを使用して、第1の炭化水素架橋剤を配列番号XのXaa
1アミノ酸とXaa
2アミノ酸との間に生成し、第2の炭化水素架橋剤を配列番号XのXaa
3アミノ酸とXaa
4アミノ酸との間に生成した。閉環メタセシスの後、ポリペプチドを脱保護し、解放した。結果として得られる安定化ポリペプチドは、一方の末端にS構成をもち他方の末端にR構成をもつ、-CH
2-CH
2-CH
2-CH=CH-CH
2-CH
2-CH
2-の第1の炭化水素架橋剤と、両方の末端にS構成をもつ、-CH
2-CH
2-CH
2-CH=CH-CH
2-CH
2-CH
2-の第2の炭化水素架橋剤とを含む。WX-035の化学構造は
図1Bに示されている。このポリペプチドは、実施例1に記載のプロトコルに従ってさらに精製した。
【0303】
実施例8. 安定化ポリペプチドのインビトロプロファイル
実施例2に記載の手順に従い、Colo320DM細胞を使用した細胞生存率アッセイにおいて、細胞増殖を阻害するWX-035の能力を試験した。
図32に示されるように、WX-035は、WX-024と比較して改善されたIC
50値を呈した。
【0304】
実施例9. 安定化ポリペプチドのインビボプロファイル
実施例9.1. マウスにおけるWX-035の薬物動態プロファイル
実施例5.1に記載の手順に従い、WX-035の薬物動態プロファイルを評価した。簡潔に述べると、1mg/kgもしくは5mg/kgの静脈内投与または5mg/kgの腹腔内投与をマウスに行った。投与後15分、1、2、3、6、8、12、及び24時間の時点で血液試料を収集した。
図33Aは、雄ICRマウスにおけるWX-035の血漿濃度を示す。最大観察濃度(C
max)、終末相半減期(T
1/2)、全身クリアランス(CL)、分布容積(V
z)、投薬時間から最後の観察可能な濃度までの曲線下面積(AUC
0-t)、投薬時間から無限大まで外挿した曲線下面積(AUC
0-inf)、及び生物学的利用率を判定したものが、
図33Bに要約されている。なお、WX-035の半減期測定値は、4時間超のT
1/2値で、改善された血液中の安定性を示す。
【0305】
WX-024で行ったように、WX-035の薬物動態プロファイルを雌balb/cマウス(処置毎にn=3)において再び分析した。30mg/kgのWX-035を使用し、静脈内または腹腔内の2つの異なる投与経路を比較した。
図34Aに示されるように、WX-035の薬物動態プロファイルは、雄ICRマウスで観察されたものと同様であった。実施例5.1の手順に従って平均薬物動態パラメータを計算したものが
図34Bに要約されている。雄ICRマウスで観察されたように、この実験におけるWX-035の半減期は9時間超であった。
【0306】
これらのデータは、複数の架橋剤を用いたBCL9ペプチドの安定化がPKパラメータを改善させ得るという仮説と一致している。
【0307】
実施例9.2. 癌のマウス同系モデルにおけるWX-035の有効性
実施例5.3に記載の手順に従い、癌の処置におけるWX-035のインビボ有効性を同系マウスモデルにおいて評価した。既知のMEK阻害剤であるトラメチニブを比較として使用した。簡潔に述べると、balb/cマウスにCT26を接種し、腫瘍体積が約100mm3に達したときに処置を開始した。次いでマウスを3つの群に分割し、連続7日間にわたるビヒクル、40mg/kgのWX-035、または1mg/kgのトラメチニブの投与を開始した。
【0308】
図35A及び35Bに示されるように、WX-035は、トラメチニブ及びビヒクル処置と比較して、腫瘍増殖を堅実に抑制することができた。WX-035の平均腫瘍増殖阻害率は、研究の最後で88.44%であった。
【0309】
実施例9.3. T細胞活性化におけるWX-035の効果
実施例9.2に記載した研究の最後に、各マウスから腫瘍試料を収集して、T細胞活性化の調節におけるWX-035の効果を評価した。実施例5に記載の手順に従い、各腫瘍試料のFACS分析を行った。
図36Aに示されるように、WX-035での処置は、CD45
+細胞の総量を低減させた。血液リンパ細胞の総量が低減したため、CD4
+T細胞またはCD8
+T細胞の総量も低減した(
図36B)。同様に、Foxp3
+CD25
+T細胞がWX-035処置によって低減した(
図36C)。しかしながら、
図36Dに示されるように、WX-035は、ビヒクル処置と比較して、細胞傷害性T細胞(CD8
+T細胞)とFoxp3
+T細胞(制御性T細胞)との比を増加させた。したがって、これらのデータは、WX-035が、同系動物モデルにおいて制御性T細胞を低減させることができることを示唆する。さらに、制御性T細胞に対する細胞傷害性T細胞の比を増加させることによって、WX-035は、腫瘍の処置に有益な免疫反応に好ましい微小環境を誘導し得る。なお、この実験から収集した試料は、LGR5発現についても評価した。
図36Eに示されるように、WX-035は、この実験から収集した腸管試料におけるLGR5の発現を低減させ、WX-035にWnt/β-カテニンシグナル伝達をインビボで阻害する能力があることが裏付けられた。
【0310】
実施例9.4. WX-035の毒性効果
WX-035の毒性効果を評価するために、実施例5.6に記載の手順に従い、balb/cヌードマウスに、ビヒクル、または30mg/kgもしくは40mg/kgのWX-035を投与した。研究の最後にマウスを屠殺し、主要臓器をH&E染色のために採取した。
図37に示されるように、WX-035を用いた処置は、主要臓器に対して著しい異常を引き起こさず、WX-035が著しい毒性効果をもたらさなかったことが示された。
【0311】
実施例10. 追加の安定化ポリペプチド
ヒトBCL9タンパク質のHD2ドメインに由来する追加のポリペプチドも構築した。これらのポリペプチドの配列は以下の表7に示されている。これらのポリペプチドは、実施例1に記載のプロトコルに従って構築し、精製した。WX-029は、アミノ酸Xaa1とXaa2との間に炭素数8の炭化水素架橋剤を含む。WX-037、WX-038、及びWX-039は各々、2つの炭化水素架橋剤を含む。各ポリペプチドにおいて、第1の炭素数8の架橋剤は、そのそれぞれの配列のXaa1アミノ酸とXaa2アミノ酸との間に生成し、第2の炭素数8の架橋剤は、そのそれぞれの配列のXaa3アミノ酸とXaa4アミノ酸との間に生成した。WX-037は、疎水性ロイシン(L)残基が荷電したアスパラギン酸(D)に変異している、ヒトBCL9タンパク質のHD2ドメインに由来するポリペプチドである。WX-040は、アミノ酸Xaa1とXaa2との間に炭素数11の架橋剤を含む。
【0312】
【0313】
実施例11. 安定化ポリペプチドのインビトロプロファイル
実施例10で生成した安定化ポリペプチドのうちの1つを細胞生存率アッセイにおいて試験し、WX-035と比較した。この比較研究ではWX-037を選択した。実施例2に記載の手順に従い、CT26.WT細胞(ATCC)を用いて細胞生存率アッセイを行った。簡潔に述べると、各プレートの1ウェル当たり4000個の細胞を50μLのopti-MEM培地に播種した。2%のFBSを含有するopti-MEM培地で、培地99μL中1μLの200倍濃縮ポリペプチドを使用し、WX-035またはWX-037の各ポリペプチドを希釈した。幅広い濃度を試験するために各原液を希釈した。2倍濃縮ポリペプチド50μLをプレートの各ウェルに加えた。ポリペプチド添加の3日後、製造元のプロトコルに従ってCellTiterGloを使用し、細胞の生存率を測定した。
【0314】
図38A及び38Bに示されるように、WX-035は、この条件における細胞生存率(Ab IC
50=1.858μM)をWX-037(Ab IC
50>32μM)よりも効果的に阻害した。このデータは、疎水性ロイシン残基が、ヒトBCL9タンパク質のHD2ドメインに由来するポリペプチドの有効性をさらに増加させることを示す。
図38Cは、各ポリペプチドのインビトロプロファイルの概要である。
【0315】
実施例12. 安定化ポリペプチドのインビボプロファイル
実施例12.1. マウスにおける安定化ポリペプチドの薬物動態プロファイル
実施例10で構築した4つの追加のポリペプチドの薬物動態プロファイルを、実施例5.1に記載の手順に従って評価した。WX-029及びWX-036を雌balb/cヌードマウスに1mg/kgで静脈内投与した。投与後15分、1、2、及び4時間の時点で血液試料を収集した。
図39A及び
図39Bは、WX-029について計算された血漿濃度及び薬物動態プロファイルの概要である。
図40A及び
図40Bは、WX-036について計算された血漿濃度及び薬物動態プロファイルの概要である。
【0316】
同様に、WX-039及びWX-040も雌balb/cヌードマウスにおいて試験し、それらの薬物動態プロファイルを評価した。WX-039は、静脈内に5mg/kg、腹腔内に5mg/kg、または皮下に10mg/kgで投与した。WX-040は、静脈内に30mg/kgまたは腹腔内に30mg/kgで投与した。投与後15分、1、2、4、8、24、36、48、及び72時間の時点で血液試料を収集した。
図41A及び
図41Bは、WX-039について計算された血漿濃度及び薬物動態プロファイルの概要である。
図42A及び
図42Bは、WX-040について計算された血漿濃度及び薬物動態プロファイルの概要である。なお、この実験において計算されたWX-039の半減期は、皮下投与したとき約52時間であった。
【0317】
実施例12.2. 癌のマウス同系モデル(B16F10)におけるWX-039の有効性
実施例5.4に記載した動物モデルにおいて、腫瘍増殖を抑制するWX-039の能力を評価した。簡潔に述べると、C57BL/6マウスにB16細胞を接種した。5週齢の雌C57BL/6マウスの右側腹部にB16F10細胞(マウス一体当たり0.05ml中2×10
5個の細胞)を接種した。マウスの平均腫瘍サイズが100mm
3に達したとき、マウスを2つの群(N=3)に分割した。第1の群には60mg/kgのWX-039を投与し、第2の群はビヒクルで処置した。処置は12日間連続して腹腔内に施した。
図43Aに示されるように、WX-039は、ビヒクル処置と比較して腫瘍増殖を低減させ、WX-039のインビボ有効性が裏付けられた。
図43Bには、実験中に評価した腫瘍増殖阻害率が示されている。
図43Cに示されるように、実験中にWX-039によってもたらされた実質的な体重変化はなく、WX-039が耐容可能な毒性を有することが示された。
【0318】
参照による組み込み
本出願全体にわたって引用され得る、全ての引用される参考文献(文献参照、特許、特許出願、及びウェブサイトを含む)の内容は、それらの全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれるものとし、その中に引用されている参考文献も同様とする。これらの参考文献が本出願中のいずれかの記述と矛盾する、すなわち一致しない場合は、本出願の文言が優先するものとする。本開示は、特に指示されない限り、全て当該技術分野において周知である、免疫学、分子生物学、及び細胞生物学、及び病理学の従来の技法を用いる。
【0319】
均等物
本発明は、その趣旨または本質的な特性を逸脱することなく他の特定の形態で具現することができる。したがって、前述の実施形態は、本明細書に記載される発明を限定するのではなく、全ての点において例示的であると見なされるべきである。したがって、本発明の範囲は、前述の説明によってではなく添付の特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲の意味及び均等物の範囲に含まれる全ての変更が本明細書に包含されることが意図される。
本開示は以下の実施形態を包含する。
[1] 7~14アミノ酸長を有するポリペプチドであって、前記ポリペプチドが、ヒトB細胞CLL/リンパ腫9(BCL9)のHD2ドメインに由来し、
a)前記ポリペプチドが、1つ以上の炭化水素架橋剤を形成する反応を受けることができ、少なくとも1つのα,α-二置換アミノ酸を場合により含み、かつ/または、
b)前記ポリペプチドが、1つ以上の炭化水素架橋剤を含む、ポリペプチド。
[2] 前記ポリペプチドが、1つ以上の炭化水素架橋剤を含み、前記ポリペプチドが、表1から選択される任意の配列またはその変異体を含み、
a)Xaa1、Xaa2、Xaa3、及びXaa4が各々、アラニンであり、
b)第1の炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在し、かつ/または、
c)第2の炭化水素架橋剤が、Xaa3とXaa4との間に存在する、実施形態1に記載のポリペプチド。
[3] 前記ポリペプチドが、1つ以上の炭化水素架橋剤を形成する反応を受けることができ、前記ポリペプチドが、表1から選択される任意の配列またはその変異体を含み、
a)Xaa1、Xaa2、Xaa3、及びXaa4が各々、α,α-二置換アミノ酸であるか、
b)Xaa1及びXaa2が各々、α,α-二置換アミノ酸であり、炭化水素架橋剤が、Xaa3とXaa4との間に存在するか、または、
c)Xaa3及びXaa4が各々、α,α-二置換アミノ酸であり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する、実施形態1に記載のポリペプチド。
[4] 前記ポリペプチドが、1つ以上の炭化水素架橋剤を含み、前記ポリペプチドが、LQTLRXaa1IQRXaa2L(配列番号3)、Xaa1LQXaa2LRXaa3IQRXaa4L(配列番号4)、またはそれらの変異体を含み、
a)Xaa1、Xaa2、Xaa3、及びXaa4が各々、アラニンであり、
b)第1の炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在し、かつ/または、
c)第2の炭化水素架橋剤が、Xaa3とXaa4との間に存在する、実施形態1に記載のポリペプチド。
[5] 前記ポリペプチドが、1つ以上の炭化水素架橋剤を形成する反応を受けることができ、前記ポリペプチドが、LQTLRXaa1IQRXaa2L(配列番号3)、Xaa1LQXaa2LRXaa3IQRXaa4L(配列番号4)、またはそれらの変異体を含み、
a)Xaa1、Xaa2、Xaa3、及びXaa4が各々、α,α-二置換アミノ酸であるか、
b)Xaa1及びXaa2が各々、α,α-二置換アミノ酸であり、炭化水素架橋剤が、Xaa3とXaa4との間に存在するか、または、
c)Xaa3及びXaa4が各々、α,α-二置換アミノ酸であり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する、実施形態1に記載のポリペプチド。
[6] 前記ポリペプチドが、
a)β-カテニンへのBCL9の結合を阻害すること、
b)古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達を阻害すること、
c)制御性T細胞の生存期間を減少させること、
d)腫瘍内のVEGFの発現を減少させること、
e)腫瘍へのCD4+T細胞及びCD8+T細胞の浸潤を増加させること、
f)腫瘍内のTヘルパー17(Th17)細胞を増加させること、
g)腫瘍内の樹状細胞を減少させること、
h)対象に投与されたときに少なくとも2時間超の半減期(T1/2)を有すること、 i)免疫反応に好ましい腫瘍微小環境を誘導すること、ならびに、
j)腫瘍増殖、癌幹細胞増殖、及び/または腫瘍転移を阻害すること
から選択される、非ステープルド野生型ヒトBCL9 HD2ドメインと比較して改善された1つ以上の生物学的機能を有する、実施形態1~5のいずれかに記載のポリペプチド。
[7] 前記α,α-二置換アミノ酸が、α-メチル,α-アルケニルアミノ酸である、実施形態1~6のいずれかに記載のポリペプチド。
[8] 前記α-メチル,α-アルケニルアミノ酸が、(S)-2-(4’-ペンテニル)アラニン、(R)-2-(4’-ペンテニル)アラニン、(S)-2-(7’-オクテニル)アラニン、及び(R)-2-(7’-オクテニル)アラニンから選択される、実施形態7に記載のポリペプチド。
[9] 前記炭化水素架橋剤が、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-及び-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-から選択される、実施形態1~8のいずれかに記載のポリペプチド。
[10] 前記炭化水素架橋剤が、少なくとも一方の末端にS構成を有する、実施形態9に記載のポリペプチド。
[11] 前記炭化水素架橋剤が、少なくとも一方の末端にR構成を有する、実施形態9に記載のポリペプチド。
[12] 前記炭化水素架橋剤が、一方の末端にS構成を有し、他方の末端にR構成を有する、実施形態9に記載のポリペプチド。
[13] LQTLRXaa1IQRXaa2L(配列番号3)、Xaa1LQXaa2LRXaa3IQRXaa4L(配列番号4)、もしくはそれらの変異体を含むか、またはそれらからなり、かつ場合により10~14アミノ長を有するポリペプチドであって、
a)前記ポリペプチドが、1つ以上の炭化水素架橋剤を形成する反応を受けることができ、かつ/または、
b)前記ポリペプチドが、1つ以上の炭化水素架橋剤を含み、
前記ポリペプチドまたは変異体が、
a)β-カテニンへのBCL9の結合を阻害すること、
b)古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達を阻害すること、
c)制御性T細胞の生存期間を減少させること、
d)腫瘍内のVEGFの発現を減少させること、
e)腫瘍へのCD4+T細胞及びCD8+T細胞の浸潤を増加させること、
f)腫瘍へのTヘルパー17(Th17)細胞を増加させること、
g)腫瘍内の樹状細胞を減少させること、
h)対象に投与されたときに少なくとも2時間超の半減期(T1/2)を有すること、 i)免疫反応に好ましい腫瘍微小環境を誘導すること、ならびに、
j)腫瘍増殖、癌幹細胞増殖、及び/または腫瘍転移を阻害すること
から選択される、非ステープルド野生型ヒトBCL9 HD2ドメインと比較して改善された1つ以上の生物学的機能を有する、ポリペプチド。
[14] 前記ポリペプチドが、11または12アミノ酸長を有する、実施形態13に記載のポリペプチド。
[15] 前記ポリペプチドが、1つ以上の炭化水素リンカーを含み、
a)Xaa1、Xaa2、Xaa3、及びXaa4が各々、アラニンであり、
b)第1の炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在し、かつ/または、
c)第2の炭化水素架橋剤が、Xaa3とXaa4との間に存在する、実施形態13または14に記載のポリペプチド。
[16] 前記ポリペプチドが、1つ以上の炭化水素架橋剤を形成する反応を受けることができ、 a)Xaa1、Xaa2、Xaa3、及びXaa4が各々、α,α-二置換アミノ酸であるか、
b)Xaa1及びXaa2が各々、α,α-二置換dアミノ酸であり、炭化水素架橋剤が、Xaa3とXaa4との間に存在するか、または、
c)Xaa3及びXaa4が各々、α,α-二置換dアミノ酸であり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する、実施形態13または14に記載のポリペプチド。
[17] 前記α,α-二置換アミノ酸が、α-メチル,α-アルケニルアミノ酸である、実施形態16に記載のポリペプチド。
[18] 前記α,α-二置換アミノ酸が、(S)-2-(4’-ペンテニル)アラニン、(R)-2-(4’-ペンテニル)アラニン、(S)-2-(7’-オクテニル)アラニン、及び(R)-2-(7’-オクテニル)アラニンから選択される、実施形態17に記載のポリペプチド。
[19] 前記炭化水素架橋剤が、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-及び-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-から選択される、実施形態13~18のいずれかに記載のポリペプチド。
[20] 前記炭化水素架橋剤が、少なくとも一方の末端にS構成を有する、実施形態19に記載のポリペプチド。
[21] 前記炭化水素架橋剤が、少なくとも一方の末端にR構成を有する、実施形態19に記載のポリペプチド。
[22] 前記炭化水素架橋剤が、一方の末端にS構成を有し、他方の末端にR構成を有する、実施形態19に記載のポリペプチド。
[23] a)前記ポリペプチドが、LQTLRXaa1IQRXaa2L(配列番号3)のアミノ酸配列からなり、
b)Xaa1及びXaa2が各々、アラニンであり、
c)炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在し、
d)前記炭化水素架橋剤が、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-であり、かつ/または、
e)前記炭化水素架橋剤が、両方の末端にS構成を有する、実施形態1~22のいずれかに記載のポリペプチド。
[24] a)前記ポリペプチドが、Xaa1LQXaa2LRXaa3IQRXaa4L(配列番号4)のアミノ酸配列からなり、
b)Xaa1、Xaa2、Xaa3、及びXaa4が各々、アラニンであり、
c)第1の炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在し、
d)第2の炭化水素架橋剤が、Xaa3とXaa4との間に存在し、
e)前記第1の炭化水素架橋剤が、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-であり、
f)前記第2の炭化水素架橋剤が、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-であり、
g)前記第1の炭化水素架橋剤が、一方の末端にS構成を有し、他方の末端にR構成を有し、かつ/または、
h)前記第2の炭化水素架橋剤が、両方の末端にS構成を有する、実施形態1~22のいずれかに記載のポリペプチド。
[25] 前記ポリペプチドのN末端及び/またはC末端がさらに修飾されている、実施形態1~24のいずれかに記載のポリペプチド。
[26] N末端が、アセチル基で修飾されている、実施形態25に記載のポリペプチド。
[27] C末端が、2つのβ-アラニン単位、2-ナフチルアラニン、または2つのβ-アラニン単位に連結した2-ナフチルアラニンで修飾されており、C末端修飾のカルボキシル基が、NH2でさらに修飾されている、実施形態25または26に記載のポリペプチド。
[28] 前記ポリペプチドのN末端が、アセチル基で修飾されており、前記ポリペプチドのC末端が、2-ナフチルアラニンで修飾されており、2-ナフチルアラニンのカルボキシル基が、NH2でさらに修飾されている、実施形態23に記載のポリペプチド。
[29] 前記ポリペプチドのN末端が、アセチル基で修飾されており、前記ポリペプチドのC末端が、2つのβ-アラニン単位に連結した2-ナフチルアラニンで修飾されており、第2のβ-アラニン単位のカルボキシル基が、NH2でさらに修飾されている、実施形態24に記載のポリペプチド。
[30] 前記ポリペプチドが、塩形態または結晶として存在する、実施形態1~29のいずれかに記載のポリペプチド。
[31] 前記塩形態がトリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、または塩酸塩である、実施形態30に記載のポリペプチド。
[32] 実施形態1~31のいずれかに記載のポリペプチドを含む組成物。
[33] 実施形態1~32のいずれかに記載のポリペプチドと、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
[34] 少なくとも1つの追加の薬剤をさらに含む、実施形態33に記載の薬学的組成物。
[35] 前記少なくとも1つの追加の薬剤が、チェックポイント阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、化学療法剤、及びVEGFR阻害剤からなる群から選択される、実施形態34に記載の薬学的組成物。
[36] 前記チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、または抗CTLA4抗体である、実施形態35に記載の薬学的組成物。
[37] 前記チェックポイント阻害剤が、CD27、CD40、OX40、GITR、及びCD137からなる群から選択される刺激性チェックポイント分子を標的とする、実施形態35に記載の薬学的組成物。
[38] 前記チェックポイント阻害剤が、A2AR、B7-H3、B7-H4、Bリンパ球及びTリンパ球のアテニュエーター(BTLA)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、T細胞免疫グロブリンドメイン及びムチンドメイン3(TIM-3)、VISTA(C10orf54)、ならびにT細胞活性化のVドメインIg抑制因子からなる群から選択される阻害性チェックポイント分子を標的とする、実施形態35に記載の薬学的組成物。
[39] 前記EGFR阻害剤が、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、パニツムマブ、バンデタニブ、またはセツキシマブである、実施形態35に記載の薬学的組成物。
[40] 前記VEGFまたはVEGFR阻害剤が、パゾパニブ、ベバシズマブ、ソラフェニブ、スニチニブ、アキシチニブ、ポナチニブ、レゴラフェニブ、バンデタニブ、カボザンチニブ、ラムシルマブ、レンバチニブ、またはziv-アフリベルセプトである、実施形態35に記載の薬学的組成物。
[41] 前記化学療法剤が、シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル(5-FU)、ドキソルビシン、ムスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾロン、ダカルバジン、ブレオマイシン、エトポシド、シスプラチン、エピルビシン、カペシタビン、フォリン酸、アクチノマイシン、全トランス型レチノイン酸、アザシチジン、アザチオプリン、ボルテゾミブ、カルボプラチン、クロランブシル、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イマチニブ、イリノテカン、メクロレタミン、メルカプトプリン、ミトキサントロン、パクリタキセル、ペメトレキセド、テニポシド、チオグアニン、トポテカン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、またはオキサリプラチンである、実施形態35に記載の薬学的組成物。
[42] 実施形態1~32のいずれかに記載のポリペプチドまたは実施形態33~41のいずれかに記載の薬学的組成物を投与することを含む、対象におけるβ-カテニンへのBCL9の結合を阻害する方法。
[43] 実施形態1~32のいずれかに記載のポリペプチドまたは実施形態33~41のいずれかに記載の薬学的組成物を投与することを含む、対象における古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達を阻害する方法。
[44] 実施形態1~32のいずれかに記載のポリペプチドまたは実施形態33~41のいずれかに記載の薬学的組成物を投与することを含む、対象の癌を処置する方法。
[45] 前記ポリペプチドまたは薬学的組成物が、2週間の投与後に、前記対象の腫瘍体積を、ビヒクルで処置された対象のものと比較して50%超低減させることができる、実施形態44に記載の方法。
[46] 前記癌が、家族性大腸腺腫症(FAP)、眼癌、直腸癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、前立腺癌、乳癌、膀胱癌、口腔癌、良性腫瘍及び悪性腫瘍、胃の癌、肝臓癌、膵臓癌、肺癌、子宮体、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、腎癌、脳/CNS癌、咽喉癌、多発性骨髄腫、皮膚黒色腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、ユーイング肉腫、カポジ肉腫、基底細胞癌及び扁平上皮癌、小細胞肺癌、絨毛癌、横紋筋肉腫、血管肉腫、血管内皮腫、ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、口/咽頭癌、食道癌、喉頭癌、リンパ腫、神経線維腫症、結節性硬化症、血管腫、胃癌、卵巣癌、肝細胞癌、またはリンパ脈管新生である、実施形態44または45に記載の方法。
[47] 前記癌が結腸直腸癌である、実施形態44~46のいずれかに方法。
[48] 前記癌が胃癌である、実施形態44~46のいずれかに方法。
[49] 前記癌が卵巣癌である、実施形態44~46のいずれかに記載の方法。
[50] 前記癌が肝細胞癌である、実施形態44~46のいずれかに記載の方法。
[51] 前記癌が乳癌である、実施形態44~46のいずれかに記載の方法。
[52] 前記癌が前立腺癌である、実施形態44~46のいずれかに記載の方法。
[53] 前記癌が皮膚黒色腫である、実施形態44~46のいずれかに記載の方法。
[54] 前記癌が肺癌である、実施形態44~46のいずれかに記載の方法。
[55] 少なくとも1つの追加の薬剤を投与することをさらに含む、実施形態42~54のいずれかに記載の方法。
[56] 前記少なくとも1つの追加の薬剤が、チェックポイント阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、化学療法剤、及びVEGFR阻害剤からなる群から選択される、実施形態55に記載の方法。
[57] 前記チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、または抗CTLA4抗体である、実施形態56に記載の方法。
[58] 前記チェックポイント阻害剤が、CD27、CD40、OX40、GITR、及びCD137からなる群から選択される刺激性チェックポイント分子を標的とする、実施形態56に記載の方法。
[59] 前記チェックポイント阻害剤が、A2AR、B7-H3、B7-H4、Bリンパ球及びTリンパ球のアテニュエーター(BTLA)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、T細胞免疫グロブリンドメイン及びムチンドメイン3(TIM-3)、VISTA(C10orf54)、ならびにT細胞活性化のVドメインIg抑制因子からなる群から選択される阻害性チェックポイント分子を標的とする、実施形態56に記載の方法。
[60] 前記EGFR阻害剤が、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、パニツムマブ、バンデタニブ、またはセツキシマブである、実施形態56に記載の方法。
[61] 前記VEGF阻害剤またはVEGFR阻害剤が、パゾパニブ、ベバシズマブ、ソラフェニブ、スニチニブ、アキシチニブ、ポナチニブ、レゴラフェニブ、バンデタニブ、カボザンチニブ、ラムシルマブ、レンバチニブ、またはziv-アフリベルセプトである、実施形態56に記載の方法。
[62] 前記化学療法剤が、シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル(5-FU)、ドキソルビシン、ムスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾロン、ダカルバジン、ブレオマイシン、エトポシド、シスプラチン、エピルビシン、カペシタビン、フォリン酸、アクチノマイシン、全トランス型レチノイン酸、アザシチジン、アザチオプリン、ボルテゾミブ、カルボプラチン、クロランブシル、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イマチニブ、イリノテカン、メクロレタミン、メルカプトプリン、ミトキサントロン、パクリタキセル、ペメトレキセド、テニポシド、チオグアニン、トポテカン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、またはオキサリプラチンである、実施形態56に記載の方法。
[63] 前記対象を放射線療法及び/または化学療法で処置することをさらに含む、実施形態42~62のいずれかに記載の方法。
[64] 処置有効性を監視するため及び/または処置のための対象を選択するために、少なくとも1つのバイオマーカーを測定することをさらに含む、実施形態42~62のいずれかに記載の方法。
[65] 前記バイオマーカーが、BCL9、CD44、Axin2、cMyc、LGR5、VEGFA、Sox2、Oct4、Nanog、及び/または活性β-カテニンのうちの1つ以上である、実施形態64に記載の方法。
[66] CD44、Axin2、cMyc、LGR5、VEGFA、Sox2、Oct4、Nanog、及び/もしくは活性β-カテニンの遺伝子発現レベル及び/もしくはタンパク質レベルの低下が処置有効性を示し、かつ/または、CD44、Axin2、cMyc、LGR5、VEGFA、Sox2、Oct4、Nanog、及び/もしくは活性β-カテニンの遺伝子発現レベル及び/もしくはタンパク質レベルが上昇している場合に対象が処置のために選択される、実施形態64または65に記載の方法。
[67] 対象の癌を処置するための医薬の製造における、実施形態1~41のいずれかに記載のポリペプチドまたは薬学的組成物の使用。
[68] 前記癌が、家族性大腸腺腫症(FAP)、眼癌、直腸癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、前立腺癌、乳癌、膀胱癌、口腔癌、良性腫瘍及び悪性腫瘍、胃の癌、肝臓癌、膵臓癌、肺癌、子宮体、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、腎癌、脳/CNS癌、咽喉癌、多発性骨髄腫、皮膚黒色腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、ユーイング肉腫、カポジ肉腫、基底細胞癌及び扁平上皮癌、小細胞肺癌、絨毛癌、横紋筋肉腫、血管肉腫、血管内皮腫、ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、口/咽頭癌、食道癌、喉頭癌、リンパ腫、神経線維腫症、結節性硬化症、血管腫、胃癌、卵巣癌、肝細胞癌、またはリンパ脈管新生である、実施形態67に記載の使用。
[69] 前記対象が、少なくとも1つのバイオマーカーを測定することによって監視及び/または選択され、場合により前記バイオマーカーが、BCL9、CD44、Axin2、cMyc、LGR5、VEGFA、Sox2、Oct4、Nanog、及び/またはβ-カテニンのうちの1つ以上である、実施形態67または68に記載の使用。
[70] 対象の癌を処置するのに使用するための実施形態1~41のいずれかに記載のポリペプチドまたは薬学的組成物。
[71] 前記癌が、家族性大腸腺腫症(FAP)、眼癌、直腸癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、前立腺癌、乳癌、膀胱癌、口腔癌、良性腫瘍及び悪性腫瘍、胃の癌、肝臓癌、膵臓癌、肺癌、子宮体、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、腎癌、脳/CNS癌、咽喉癌、多発性骨髄腫、皮膚黒色腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、ユーイング肉腫、カポジ肉腫、基底細胞癌及び扁平上皮癌、小細胞肺癌、絨毛癌、横紋筋肉腫、血管肉腫、血管内皮腫、ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、口/咽頭癌、食道癌、喉頭癌、リンパ腫、神経線維腫症、結節性硬化症、血管腫、胃癌、卵巣癌、肝細胞癌、またはリンパ脈管新生である、実施形態70に記載のポリペプチドまたは薬学的組成物。
[72] 前記対象が、少なくとも1つのバイオマーカーを測定することによって監視及び/または選択され、場合により前記バイオマーカーが、BCL9、CD44、Axin2、cMyc、LGR5、VEGFA、Sox2、Oct4、Nanog、及び/またはβ-カテニンのうちの1つ以上である、実施形態70または71に記載のポリペプチドまたは薬学的組成物。
[73] 実施形態1~32のいずれかに記載のポリペプチドを製造する方法であって、1つ以上の炭化水素架橋剤を形成する反応を受けることのできるポリペプチドを生成するために固相合成を使用することを含み、前記ポリペプチドが、表1から選択される任意の配列またはその変異体を含み、
(a)Xaa1、Xaa2、Xaa3、及びXaa4が各々、α,α-二置換アミノ酸であるか、
(b)Xaa1及びXaa2が各々、α,α-二置換アミノ酸であり、炭化水素架橋剤が、Xaa3とXaa4との間に存在するか、または、
(c)Xaa3及びXaa4が各々、α,α-二置換アミノ酸であり、炭化水素架橋剤が、Xaa1とXaa2との間に存在する、方法。
[74] 前記ポリペプチドが、LQTLRXaa1IQRXaa2L(配列番号3)、Xaa1LQXaa2LRXaa3IQRXaa4L(配列番号4)、またはそれらの変異体を含む、実施形態73に記載の方法。
[75] 前記α,α-二置換アミノ酸が、α-メチル,α-アルケニルアミノ酸である、実施形態73または74に記載の方法。
[76] 金属媒介性閉環オレフィンメタセシスによって前記1つ以上の炭化水素架橋剤を形成することをさらに含む、実施形態73~75のいずれかに記載の方法。
[77] 高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)によって前記ポリペプチドを精製することをさらに含む、実施形態73~76のいずれかに記載の方法。
[78] 前記精製されたポリペプチドが、金属を実質的に含まない、実施形態77に記載の方法。
[79] 実施形態1~32のいずれかに記載のポリペプチドを製造するためのキット。
[80] 金属媒介性閉環オレフィンメタセシスを行うための金属触媒を含む、実施形態79に記載のキット。
[81] 実施形態1~32のいずれかに記載のポリペプチドをコードする単離された核酸。
[82] 実施形態81に記載の単離された核酸を含むベクター。
[83] 実施形態82に記載のベクターを含む宿主細胞。
[84] ポリペプチドを産生する方法であって、前記ポリペプチドを産生するのに十分な条件下の培養培地で実施形態83に記載の宿主細胞を培養することを含む、方法。
[85] 実施形態1~41のいずれかに記載のポリペプチドまたは薬学的組成物を含む、対象の癌を処置するためのキット。
【配列表】