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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】誘導加熱用電源装置とその異常検知方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20220707BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20220707BHJP
   H02H 7/12 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
H02M7/12 H
H02M7/48 M
H02H7/12 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019040773
(22)【出願日】2019-03-06
(65)【公開番号】P2020145851
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390029089
【氏名又は名称】高周波熱錬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 徹也
(72)【発明者】
【氏名】谷野 守彦
(72)【発明者】
【氏名】北村 雅行
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-187472(JP,A)
【文献】特開2010-252563(JP,A)
【文献】特開2008-204681(JP,A)
【文献】特開平11-215808(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0254217(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
H02M 7/48
H02H 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から供給される少なくとも1相の交流電圧を直流電圧に変換して出力する複数の整流素子を含む直流変換回路を有する誘導加熱用電源装置であって、
前記直流変換回路から出力される直流電圧を検出する電圧検出部と、
前記整流素子を導通させるための制御信号が前記直流変換回路に入力された時点から予め決められた第一時間、前記電圧検出部により検出される直流電圧を積算する電圧積算部と、
前記電圧積算部によって積算された前記直流電圧の第一の積算値と、前記第一の積算値を得るための前記直流電圧が出力されている期間の直前にて前記直流変換回路に前記制御信号が入力された時点から前記電圧積算部によって積算された前記直流電圧の第二の積算値とを比較し、当該比較の結果に基づいて装置の異常を検知する異常検知部と、を備える誘導加熱用電源装置。
【請求項2】
請求項1記載の誘導加熱用電源装置であって、
前記異常検知部は、前記誘導加熱用電源装置が起動してから予め決められた第二時間の経過後に得られる前記第一の積算値と、前記第二の積算値との比較結果に基づいて異常を検知する誘導加熱用電源装置。
【請求項3】
請求項1記載の誘導加熱用電源装置であって、
前記異常検知部は、前記誘導加熱用電源装置が起動してから予め決められた第二時間が経過し、且つ、前記直流電圧が予め決められた値を超えた後に得られる前記第一の積算値と、前記第二の積算値との比較結果に基づいて異常を検知する誘導加熱用電源装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の誘導加熱用電源装置であって、
前記異常検知部は、前記直流電圧の目標値を変更する指示がなされた場合には、前記指示を受けてから予め決められた第三時間が経過するまでの期間は、前記比較結果に基づく異常の検知結果を無効とする誘導加熱用電源装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載の誘導加熱用電源装置であって、
前記異常検知部は、前記第二の積算値と前記第一の積算値との差が閾値以上となる場合に、異常があると判定する誘導加熱用電源装置。
【請求項6】
請求項5記載の誘導加熱用電源装置であって、
前記異常検知部は、前記第二の積算値に基づいて前記閾値を算出する誘導加熱用電源装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項記載の誘導加熱用電源装置であって、
前記異常検知部により異常が検知された場合に、前記異常が発生していることを示す情報の出力と電圧出力の停止を含む処理を行う対応処理部を更に備える誘導加熱用電源装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項記載の誘導加熱用電源装置であって、
前記電源は三相交流電源であり、
前記直流変換回路は、6つの前記整流素子を含む全波整流回路である誘導加熱用電源装置。
【請求項9】
請求項8記載の誘導加熱用電源装置であって、
前記第一時間は、前記三相交流電源から供給される電圧の1周期を、当該1周期の間に前記直流変換回路から出力される直流電圧波形の数にて除算して得られる値よりも小さい値となっている誘導加熱用電源装置。
【請求項10】
電源から供給される少なくとも1相の交流電圧を直流電圧に変換して出力する複数の整流素子を含む直流変換回路を有する誘導加熱用電源装置の異常検知方法であって、
前記直流変換回路から出力される直流電圧を検出する電圧検出ステップと、
前記整流素子を導通させるための制御信号が前記直流変換回路に入力された時点から予め決められた第一時間、前記電圧検出ステップにより検出される直流電圧を積算する電圧積算ステップと、
前記電圧積算ステップによって積算された前記直流電圧の第一の積算値と、前記第一の積算値を得るための前記直流電圧が出力されている期間の直前にて前記直流変換回路に前記制御信号が入力された時点から前記電圧積算ステップによって積算された前記直流電圧の第二の積算値とを比較し、当該比較の結果に基づいて異常を検知するステップと、を備える誘導加熱用電源装置の異常検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱処理を行う加熱装置に供給する電力を生成する誘導加熱用電源装置とその異常検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼製ワークの熱処理におけるワークの加熱方式として、加熱コイルに交流電圧を供給し、加熱コイルによって形成される磁界に置かれたワークに誘起される誘導電流によってワークを加熱する誘導加熱が用いられている。加熱コイルに交流電圧を供給する電源装置は、一般に、商用電源の交流電圧をコンバータで直流電圧に変換し、変換後の直流電圧をインバータにて交流電圧に逆変換することで、加熱コイルに供給する高周波の交流電圧を生成している。
【0003】
このコンバータは、一般に、複数の整流素子(具体的にはサイリスタ)を制御することによって一定の直流電圧を出力する。コンバータは、例えば、入力される電圧が三相の交流電圧であれば、3つのサイリスタを用いた半波整流回路又は6つのサイリスタを用いた全波整流回路によって一定の直流電圧を出力する。また、コンバータは、例えば、入力される電圧が一相の交流電圧であれば、4つのサイリスタを用いた全波整流回路によって一定の直流電圧を出力する。
【0004】
こういったコンバータに入力される交流電圧の欠相又は逆相を検出する技術が従来から知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0005】
特許文献1には、三相交流電源の電圧信号から生成した3つのパルス波形の波形値を論理演算して、位相順序を判定することで、三相交流電源の欠相又は逆相等を検出する方法が開示されている。
【0006】
特許文献2には、三相交流電源の相間電圧に同期した二相パルスを生成し、この二相パルスに基づいて三相交流電源の欠相又は逆相等を検出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-53108号公報
【文献】特開平9-308083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1と特許文献2に記載の技術は、いずれも、コンバータに入力される電圧をモニタして、電源の異常を検出するものである。コンバータには上述したように複数個のサイリスタが含まれる。これらサイリスタのうちの1つでも故障又は劣化等が発生すると、コンバータの出力電圧に乱れが生じ得る。また、サイリスタに故障又は劣化等が生じていない場合でも、電源に欠相又は逆相が発生していた場合には、同様に、コンバータの出力電圧に乱れが生じ得る。特に、誘導加熱用電源装置においては、加熱装置への供給電圧の乱れがワークの品質に大きな影響を与える。このため、欠相状態の発生、逆相状態の発生、或いは、整流素子の故障又は劣化の有無等の様々な要因で発生する異常を検知することが求められる。
【0009】
特許文献1と特許文献2に記載の技術では、電源から入力される電圧の異常は検知できる。しかし、整流素子の故障又は劣化と、それに起因する整流後の出力の異常を検知することはできない。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、欠相状態の発生、逆相状態の発生、或いは、整流素子の故障又は劣化の有無等の異常を検知することのできる誘導加熱用電源装置とその異常検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の誘導加熱用電源装置は、電源から供給される少なくとも1相の交流電圧を直流電圧に変換して出力する複数の整流素子を含む直流変換回路を有する誘導加熱用電源装置であって、前記直流変換回路から出力される直流電圧を検出する電圧検出部と、前記整流素子を導通させるための制御信号が前記直流変換回路に入力された時点から予め決められた第一時間、前記電圧検出部により検出される直流電圧を積算する電圧積算部と、前記電圧積算部によって積算された前記直流電圧の第一の積算値と、前記第一の積算値を得るための前記直流電圧が出力されている期間の直前にて前記直流変換回路に前記制御信号が入力された時点から前記電圧積算部によって積算された前記直流電圧の第二の積算値とを比較し、当該比較の結果に基づいて装置の異常を検知する異常検知部と、を備えるものである。
【0012】
本発明の誘導加熱用電源装置の異常検知方法は、電源から供給される少なくとも1相の交流電圧を直流電圧に変換して出力する複数の整流素子を含む直流変換回路を有する誘導加熱用電源装置の異常検知方法であって、前記直流変換回路から出力される直流電圧を検出する電圧検出ステップと、前記整流素子を導通させるための制御信号が前記直流変換回路に入力された時点から予め決められた第一時間、前記電圧検出ステップにより検出される直流電圧を積算する電圧積算ステップと、前記電圧積算ステップによって積算された前記直流電圧の第一の積算値と、前記第一の積算値を得るための前記直流電圧が出力されている期間の直前にて前記直流変換回路に前記制御信号が入力された時点から前記電圧積算ステップによって積算された前記直流電圧の第二の積算値とを比較し、当該比較の結果に基づいて異常を検知するステップと、を備えるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、欠相状態の発生、逆相状態の発生、或いは、整流素子の故障又は劣化の有無等の異常を検知することのできる誘導加熱用電源装置とその異常検知方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態である誘導加熱用電源装置1の概略構成を示す図である。
図2図1に示す誘導加熱用電源装置1における直流変換部20の詳細構成例を示す模式図である。
図3図1に示す制御部52の機能ブロック図である。
図4図1に示す誘導加熱用電源装置1における異常検知動作を説明するためのフローチャートである。
図5図1に示す誘導加熱用電源装置1における異常検知動作の変形例を説明するためのフローチャートである。
図6図1に示す誘導加熱用電源装置1における異常検知動作の変形例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態である誘導加熱用電源装置1の概略構成を示す図である。図2は、図1に示す誘導加熱用電源装置1における直流変換部20の詳細構成例を示す模式図である。
【0017】
図1に示すように、誘導加熱用電源装置1は、商用の三相交流電源10から供給される120度ずつ位相のずれた三相(R相、S相、T相)の交流電圧を全波整流して直流電圧に変換し、平滑化してインバータ30に出力する直流変換部20と、直流変換部20から出力される直流電圧を任意の周波数の交流電圧に変換するインバータ30と、変圧器51及び制御部52を含む制御基板50と、を備える。
【0018】
インバータ30から出力される交流電圧は、誘導加熱によってワークを加熱する加熱装置40に供給される。加熱装置40は、インバータ30からの交流電圧によってワークの加熱を行う。直流変換部20、インバータ30、及び加熱装置40は、制御部52によって制御される。加熱装置40には、警報を通知するための表示器又はランプ等と、加熱開始指示等の各種操作を行うための操作インタフェースと、が設けられる。
【0019】
図2に示すように、直流変換部20は、三相(R相、S相、T相)の交流電圧を全波整流する全波整流回路21と、全波整流回路21から出力される直流電圧を検出する電圧検出部23と、全波整流回路21から出力される直流電圧を平滑化してインバータ30に出力する平滑化回路22と、ゲートドライバ24と、を備える。全波整流回路21は交流電圧を直流電圧に変換する直流変換回路を構成する。
【0020】
全波整流回路21は、ゲート制御端子g1を持つサイリスタU1及びゲート制御端子g4を持つサイリスタU2の直列回路と、ゲート制御端子g2を持つサイリスタV1及びゲート制御端子g5を持つサイリスタV2の直列回路と、ゲート制御端子g3を持つサイリスタW1及びゲート制御端子g6を持つサイリスタW2の直列回路と、を備え、これら3つの直列回路が並列に接続された構成となっている。
【0021】
以下では、サイリスタU1,U2,V1,V2,W1,W2を区別する必要がない場合に、それぞれを単にサイリスタという。全波整流回路21に含まれる各サイリスタは整流素子を構成する。
【0022】
具体的には、サイリスタW1のカソードは、全波整流回路21のプラス側出力端子に接続されている。サイリスタW1のアノードは、サイリスタW2のカソードと接続されている。サイリスタW2のアノードは、全波整流回路21のマイナス側出力端子に接続されている。サイリスタW1とサイリスタW2の接続点には、三相交流電源10からT相の交流電圧が入力される。
【0023】
サイリスタV1のカソードは、全波整流回路21のプラス側出力端子とサイリスタW1との接続点に接続されている。サイリスタV1のアノードは、サイリスタV2のカソードと接続されている。サイリスタV2のアノードは、全波整流回路21のマイナス側出力端子とサイリスタW2との接続点に接続されている。サイリスタV1とサイリスタV2の接続点には、三相交流電源10からS相の交流電圧が入力される。
【0024】
サイリスタU1のカソードは、全波整流回路21のプラス側出力端子とサイリスタV1との接続点に接続されている。サイリスタU1のアノードは、サイリスタU2のカソードと接続されている。サイリスタU2のアノードは、全波整流回路21のマイナス側出力端子とサイリスタV2との接続点に接続されている。サイリスタU1とサイリスタU2の接続点には、三相交流電源10からR相の交流電圧が入力される。
【0025】
電圧検出部23は、全波整流回路21から出力される直流電圧Vdcを検出し、検出した電圧値をデジタル値に変換して制御部52に入力する。
【0026】
ゲートドライバ24は、制御部52にて生成される三相(U相、V相、W相)の同期信号にしたがって、各サイリスタのゲートを制御するための制御信号を生成し、制御信号を各サイリスタのゲート制御端子に入力する。
【0027】
各サイリスタは、ゲートドライバ24から例えばハイレベルの制御信号がゲート制御端子に入力されると、アノードからカソードに電流を流し、アノードよりもカソードの電圧が高くなったタイミングにて、アノードからカソードに電流を流さない状態となる。
【0028】
ゲートドライバ24は、U相の同期信号に基づいて、サイリスタU1のゲート制御端子g1とサイリスタU2のゲート制御端子g4に入力する制御信号を生成する。ゲートドライバ24は、V相の同期信号に基づいて、サイリスタV1のゲート制御端子g2とサイリスタV2のゲート制御端子g5に入力する制御信号を制御する。ゲートドライバ24は、W相の同期信号に基づいて、サイリスタW1のゲート制御端子g3とサイリスタW2のゲート制御端子g6に入力する制御信号を制御する。
【0029】
平滑化回路22は、全波整流回路21のプラス側出力端子に接続されたリアクトル22Aと、全波整流回路21のマイナス側出力端子に接続された直流電流検出用の抵抗22Cと、抵抗22Cに接続されたリアクトル22Bと、を備える。平滑化回路22により、直流電圧波形を含む直流電圧Vdcは平滑化されてインバータ30に出力される。
【0030】
図1に示す変圧器51は、三相交流電源10から供給される三相の交流電圧のうちのいずれか2つ(図1の例ではR相とS相)の線間電圧を入力とし、この線間電圧を変圧して制御部52に出力する。
【0031】
制御部52は、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に論理回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)によって構成されている。制御基板50には、制御部52が実行するプログラムが記憶される図示省略のメモリと、制御部52のワークメモリとしての図示省略のメモリと、が設けられている。
【0032】
図3は、図1に示す制御部52の機能ブロック図である。制御部52は、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより、制御信号生成部52A、電圧積算部52B、異常検知部52C、及び対応処理部52Dとして機能する。
【0033】
制御信号生成部52Aは、変圧器51から入力された線間電圧からU相の同期信号を生成し、このU相の同期信号から、このU相の同期信号に対し120度位相のずれたV相の同期信号と、このV相の同期信号に対し120度位相のずれたW相の同期信号と、を生成する。制御信号生成部52Aは、U相の同期信号、V相の同期信号、及びW相の同期信号の各々から生成したU相の制御信号、V相の制御信号、及びW相の制御信号をゲートドライバ24に入力する。
【0034】
ゲートドライバ24は、これらU相の制御信号、V相の制御信号、及びW相の制御信号にしたがい、具体的には、サイリスタU1とサイリスタV2のみを導通させる第一制御、サイリスタU1とサイリスタW2のみを導通させる第二制御、サイリスタV1とサイリスタW2のみを導通させる第三制御、サイリスタV1とサイリスタU2のみを導通させる第四制御、サイリスタW1とサイリスタU2のみを導通させる第五制御、及び、サイリスタW1とサイリスタV2のみを導通させる第六制御をこの順番に繰り返すことで、平滑化後の直流電圧Vdcを制御する。例えば、ゲートドライバ24は、直流電圧一定制御を行う場合には、指定された直流電圧と、実際に出力される直流電圧Vdcとが一致するように、直流電圧Vdcを制御する。また、ゲートドライバ24は、直流電流一定制御を行う場合には、指定された直流電流と、実際に出力される直流電流とが一致するように、直流電圧Vdcを制御する。また、ゲートドライバ24は、電力一定制御を行う場合には、指定された電力と、実際に出力される電力とが一致するように、直流電圧Vdcを制御する。
【0035】
以上の制御により、全波整流回路21は、三相交流電源10から供給される交流電圧の1周期(周波数50Hzであれば20ms、周波数60Hzであれば16.7ms)の間に、6つの直流電圧波形を含む直流電圧Vdcを出力する。
【0036】
電圧積算部52Bは、全波整流回路21のサイリスタにこれを導通するためのハイレベルの制御信号が入力された時点(上述した第一制御~第六制御のいずれかが行われた時点)から予め決められた第一時間、電圧検出部23により検出される直流電圧Vdcを積算する。
【0037】
この第一時間は、具体的には、三相交流電源10から供給される交流電圧の1周期を、この1周期の間に全波整流回路21から出力され得る直流電圧波形の数(=6)にて除算して得られる値よりも小さい値が設定される。
【0038】
例えば、三相交流電源10から供給される交流電圧の1周期が20msであれば、3.3msよりも小さい例えば2.5msが第一時間として設定される。
【0039】
以下の説明では、“n”を1以上の自然数とし、全波整流回路21のサイリスタにハイレベルの制御信号が入力された時点をT(n)と表記し、このT(n)の直後に全波整流回路21のサイリスタにハイレベルの制御信号が入力された時点をT(n+1)と表記する。
【0040】
異常検知部52Cは、全波整流回路21のサイリスタにハイレベルの制御信号が入力された時点T(n+1)から電圧積算部52Bにより第一時間にわたって積算された直流電圧Vdcの第一の積算値と、この時点T(n+1)の直前に全波整流回路21のサイリスタにハイレベルの制御信号が入力された時点T(n)から電圧積算部52Bにより第一時間にわたって積算された直流電圧Vdcの第二の積算値とを比較し、この比較の結果に基づいて、欠相の発生、逆相の発生、サイリスタの故障又は劣化といった誘導加熱用電源装置1の異常を検知する。
【0041】
例えば、欠相が発生している場合、或いは、1つ又は複数のサイリスタが故障によって断線している場合には、全波整流回路21からは、三相交流電源10から供給される交流電圧の1周期の間に6つの直流電圧波形が出力されなくなる。この状態では、どこかのタイミングにて、上述した第一の積算値と第二積算値との差又は比が大きくなる。このため、この差又は比の大きさによって、欠相の発生の有無、又は、サイリスタの故障の有無を判定することができる。
【0042】
また、例えば、逆相が発生している場合、或いは、1つ又は複数のサイリスタの特性が劣化している場合には、三相交流電源10から供給される交流電圧の1周期の間に6つの直流電圧波形が出力されるものの、この6つの直流電圧波形の大きさ(振幅)が大きく変動し得る。この状態では、どこかのタイミングにて、上述した第一の積算値と第二積算値との差又は比が大きくなる。このため、この差又は比の大きさによって、逆相の発生の有無、又は、サイリスタの劣化の有無を判定することができる。
【0043】
対応処理部52Dは、異常検知部52Cにより異常があると判定された場合に、異常が発生していることを示す情報(例えば警報情報)の出力と電圧出力の停止(三相交流電源10からの電圧供給の遮断、直流変換部20の停止、又はインバータ30の停止等)を含む処理を行う。
【0044】
図4は、図1に示す誘導加熱用電源装置1における異常検知動作を説明するためのフローチャートである。
【0045】
誘導加熱用電源装置1が起動すると、制御部52は、まず、制御の周期を示す数値“n”を“1”に設定する(ステップS1)。そして、制御信号生成部52Aが同期信号を生成すると、この同期信号にしたがったタイミングで、ゲートドライバ24から所定のサイリスタにハイレベルの制御信号の入力が行われる(ステップS1)。ステップS1の処理が行われた時点がT(n)となる。
【0046】
ステップS1の後、電圧積算部52Bは、時点T(n)から第一時間(例えば2.5ms)の間に出力されて電圧検出部23により一定間隔(例えば100μs)で検出された直流電圧Vdcの値を積算し、その結果を積算値A(n)としてメモリに記憶する(ステップS4)。
【0047】
次に、異常検知部52Cは、メモリに記憶されている積算値A(n)と積算値A(n-1)とを比較する(ステップS5)。なお、誘導加熱用電源装置1の起動直後の状態(“n”=1の状態)では、ステップS4において積算値A(n-1)、つまり積算値A(0)は生成されていない。そのため、積算値A(0)は予め初期値としてメモリに記憶されている。積算値A(0)は例えばゼロである。
【0048】
ステップS5の比較の結果、異常検知部52Cは、積算値A(n)が、積算値A(n-1)の±α%の範囲外であった場合(ステップS6:YES)には、ステップS8に処理を移行し、積算値A(n)が積算値A(n-1)の±α%の範囲内であった場合(ステップS6:NO)には、ステップS7に処理を移行する。なお、“n”=1の状態ではステップS6の判定はYESとなる。αは、予め決められる任意の値であり、例えば、20%~80%の範囲から選ばれる値とするのがよい。αは、異常検知精度を高めるためには小さい方が好ましい。このため、αは、例えば、20%~50%の間に設定しておくことが好ましく、20%~30%の間に設定しておくことがより好ましい。
【0049】
ステップS8において、異常検知部52Cは、時点T(n)以降に電圧検出部23により検出された直流電圧Vdcの例えばピーク値又は平均値が予め決められた所定値を超え、且つ、誘導加熱用電源装置1が起動してからの経過時間が所定時間(第二時間)に達したか否かを判定する。
【0050】
誘導加熱用電源装置1が起動してから少しの間は、直流電圧Vdcが目標値に向かって上昇していく過程であり、直流電圧Vdcが小さく且つ不安定な状態にある。このような状態においては、異常がない場合でもステップS6の判定結果がYESになる可能性がある。そのため、ステップS8の処理が行われる。
【0051】
なお、ステップS3以降の処理を、直流電圧Vdcが大きく且つ安定した状態になってから開始するのであれば、ステップS8の処理は必須ではない。また、ステップS8において、異常検知部52Cは、誘導加熱用電源装置1が起動してからの経過時間が所定時間(第二時間)に達したか否かのみを判定してもよい。
【0052】
本実施形態では、“n”がある値以下の状態では、ステップS8の判定はNOとなる。このようにステップS6の判定がYESとなり且つステップS8の判定がNOとなった場合には、異常検知部52Cは異常が発生していないと判定し、ステップS7にて“n”の値を1つ増加させて、ステップS2に処理を戻す。
【0053】
ステップS7の処理にて“n”=2となった後に行われるステップS4においては、積算値A(2)が記憶され、ステップS5において積算値A(2)と積算値A(1)とが比較され、ステップS6において積算値A(2)が積算値A(1)の±α%外となるか否かが判定される。そして、ステップS6の判定がNOとなった場合には、異常検知部52Cは異常が発生していないと判定してステップS7に処理を移行する。
【0054】
一方、ステップS6の判定がYESになり、且つ、ステップS8の判定がYESになると、異常検知部52Cは異常が発生していると判定する。上記のようにステップS8の処理を省略する場合には、ステップS6の判定がYESになると、異常検知部52Cは異常が発生していると判定する。
【0055】
そして、このようにして異常が検知されると、対応処理部52Dが警報出力を行い、更に誘導加熱用電源装置1からの電圧出力を停止させ(ステップS9)、処理が終了される。
【0056】
なお、異常検知部52Cは、ステップS6において、積算値A(n-1)の±α%を閾値範囲として算出し、この閾値範囲に積算値A(n)が入る場合にはステップS7に処理を移行し、この閾値範囲に積算値A(n)が入らない場合にはステップS8に処理を移行するものとしたが、これに限らない。
【0057】
例えば、積算値A(n-1)のα%の値(={A(n-1)×0.2})を閾値thとして算出し、積算値A(n)と積算値A(n-1)との差(絶対値)がこの閾値th以上であればステップS8に処理を移行し、この差が閾値th未満であればステップS7に処理を移行してもよい。
【0058】
または、異常検知部52Cは、ステップS6において、積算値A(n)と積算値A(n-1)との差(絶対値)が、予め決められた固定の閾値thf以上であればステップS8に処理を移行し、この差が閾値thf未満であればステップS7に処理を移行するようにしてもよい。
【0059】
または、異常検知部52Cは、ステップS6において、積算値A(n)と積算値A(n-1)の比を求め、この比が、予め決められた固定の閾値範囲(例えば、0.2以下1.8以上の範囲、好ましくは0.5以下1.5以上の範囲、より好ましくは0.8以下、且つ、1.2以上の範囲)内であればステップS8に処理を移行し、この比が上記閾値範囲内であればステップS7に処理を移行するようにしてもよい。
【0060】
以上のように、誘導加熱用電源装置1によれば、直流変換部20に含まれる全波整流回路21の出力電圧の積算値のうち、近接した異なるタイミングにて得られた値同士を比較することで、異常の発生を検知することができる。言い換えると、全波整流回路21から出力される隣接する2つの直流電圧波形の比較によって、異常の発生を検知することができる。
【0061】
このように、誘導加熱用電源装置1では、全波整流回路21の出力に基づいて異常の検知を行うため、交流電源が原因となる欠相又は逆相の発生だけでなく、全波整流回路21が原因となる欠相又は逆相、或いは、サイリスタの故障又は劣化といった異常を検知することができる。このため、異常があった場合には加熱装置40への電力供給を停止してメンテナンスを行うといった対応が可能となり、ワークの品質を向上させることができる。
【0062】
また、誘導加熱用電源装置1によれば、ステップS6にて積算値A(n)と積算値A(n-1)の大小関係の比較に用いる閾値を、積算値A(n-1)に基づいて算出している。このため、固定の閾値を用いる場合と比較すると、異常の検知精度を高めることができる。
【0063】
また、誘導加熱用電源装置1によれば、ステップS8の処理を行っているため、起動後の早期の段階において異常が誤検知されるといったことを防ぐことができる。この結果、異常の検知精度を高めることができる。
【0064】
図5及び図6は、図1に示す誘導加熱用電源装置1における異常検知動作の変形例を説明するためのフローチャートである。この変形例においては、図5に示すフローチャートの処理と並行して図6に示すフローチャートの処理が行われる。図5に示すフローチャートは、ステップS11が追加された点を除いては、図4と同じである。図5において図4と同じ処理には同一符号を付して説明を省略する。
【0065】
この変形例における制御部52は、誘導加熱用電源装置1が起動してワークの加熱が開始された後に、図6に示す処理を行う。図6では、まず、異常検知部52Cが、ワークの加熱出力の変更がなされた否かを判定し(ステップS21)、ワークの加熱出力の変更がなされた場合(ステップS21:YES)には、内蔵するタイマーをリセットして計時を開始し、加熱出力変更フラグを例えば0から1に変更する(ステップS22)。異常検知部52Cは、ワークの加熱出力の変更がなされていない場合(ステップS21:NO)には、ステップS21の処理を繰り返し行う。
【0066】
ステップS22の後、異常検知部52Cは、内蔵するタイマーのカウント値に基づいて、加熱出力変更フラグが1となってからの経過時間を確認し、この経過時間が予め決められた第三時間(例えば20ms)に達したか否かを判定する(ステップS23)。
【0067】
異常検知部52Cは、この経過時間が第三時間に達した場合(ステップS23:YES)には、加熱出力変更フラグを1から0にリセットし(ステップS24)、ステップS21に処理を戻す。異常検知部52Cは、この経過時間が第三時間に達していないと判定した場合(ステップS23:NO)には、加熱出力変更フラグはそのままにしてステップS23の処理を繰り返す。
【0068】
図5に示すフローチャートにおいて、異常検知部52Cは、ステップS8の判定がYESとなった場合には、加熱出力変更フラグが1となっているか否かを判定する(ステップS11)。加熱出力変更フラグが0となっていた場合(ステップS11:NO)には、異常検知部52Cは、ステップS9の処理を行う。
【0069】
加熱出力変更フラグが1となっていた場合(ステップS11:YES)には、異常検知部52Cは、ステップS8の判定結果を無効として、ステップS7に処理を移行する。
【0070】
誘導加熱用電源装置1が起動して加熱が開始された後に、加熱出力の変更が行われると、直流電圧Vdcが大きく変動する可能性がある。このような状態においては、異常がない場合でもステップS6の判定結果がYESになる可能性がある。そのため、この変形例では、ステップS11と図6の処理が行われている。
【0071】
以上の変形例によれば、加熱出力の変更が行われた場合には、ステップS6の判定がYESとなっていても異常があると判定されないため、異常の検知精度を更に高めることができる。
【0072】
ここまで説明してきた誘導加熱用電源装置1の直流変換部20は、三相の交流電圧を全波整流して直流電圧を生成するものとしたが、三相の交流電圧を半波整流して直流電圧を生成するものであってもよい。この場合には、直流変換部20に含まれる全波整流回路21の代わりに、半波整流回路が用いられる。この半波整流回路は、例えば全波整流回路21におけるサイリスタU2,V2,W2を削除した構成である。
【0073】
全波整流回路21が半波整流回路に変更された構成では、三相の交流電圧の1周期の間に、半波整流回路からは3つの直流電圧波形が出力されることになる。このため、上述した第一時間は、三相の交流電圧の1周期が20msであれば、20/3≒6.6よりも小さい例えば5ms等が設定される。
【0074】
また、誘導加熱用電源装置1の直流変換部20は、一相の交流電圧を全波整流して直流電圧を生成するものであってもよい。この場合には、直流変換部20に含まれる全波整流回路21の代わりに、サイリスタを4つ含む全波整流回路が用いられる。
【0075】
上述してきた全波整流回路又は半波整流回路における整流素子はサイリスタに限らず、他のスイッチング素子を用いることも可能である。
【0076】
以上説明してきた誘導加熱用電源装置1は、電圧型電源としたが、電流型電源であっても本発明を同様に適用可能である。
【0077】
以上説明してきたように、本明細書には次の事項が開示されている。
【0078】
(1)
電源から供給される少なくとも1相の交流電圧を直流電圧に変換して出力する複数の整流素子を含む直流変換回路を有する誘導加熱用電源装置であって、
前記直流変換回路から出力される直流電圧を検出する電圧検出部と、
前記整流素子を導通させるための制御信号が前記直流変換回路に入力された時点から予め決められた第一時間、前記電圧検出部により検出される直流電圧を積算する電圧積算部と、
前記電圧積算部によって積算された前記直流電圧の第一の積算値と、前記第一の積算値を得るための前記直流電圧が出力されている期間の直前にて前記直流変換回路に前記制御信号が入力された時点から前記電圧積算部によって積算された前記直流電圧の第二の積算値とを比較し、当該比較の結果に基づいて装置の異常を検知する異常検知部と、を備える誘導加熱用電源装置。
【0079】
(1)によれば、直流変換回路の出力電圧を監視することで得られる第一の積算値と第二の積算値との比較結果に基づいて、例えば、欠相状態の発生、逆相状態の発生、或いは、整流素子の故障又は劣化等の異常を検知することができる。この異常が検知できることで、例えば修理等の対応をとることができ、誘導加熱による焼き入れの品質を高いレベルに維持することが可能となる。
【0080】
(2)
(1)記載の誘導加熱用電源装置であって、
前記異常検知部は、前記誘導加熱用電源装置が起動してから予め決められた第二時間の経過後に得られる前記第一の積算値と、前記第二の積算値との比較結果に基づいて異常を検知する誘導加熱用電源装置。
【0081】
(2)によれば、電源立ち上がり直後の直流電圧の不安定な期間を経過後に上記の比較が行われるため、異常の検知を高精度に行うことができる。
【0082】
(3)
(1)記載の誘導加熱用電源装置であって、
前記異常検知部は、前記誘導加熱用電源装置が起動してから予め決められた第二時間が経過し、且つ、前記直流電圧が予め決められた値を超えた後に得られる前記第一の積算値と、前記第二の積算値との比較結果に基づいて異常を検知する誘導加熱用電源装置。
【0083】
(3)によれば、電源立ち上がり直後の直流電圧の変化が大きく且つ直流電圧が小さい期間を経過後に上記の比較が行われるため、異常の検知を高精度に行うことができる。
【0084】
(4)
(2)又は(3)記載の誘導加熱用電源装置であって、
前記異常検知部は、前記直流電圧の目標値を変更する指示がなされた場合には、前記指示を受けてから予め決められた第三時間が経過するまでの期間は、前記比較結果に基づく異常の検知結果を無効とする誘導加熱用電源装置。
【0085】
(4)によれば、電源立ち上がり後に加熱出力の変更がなされた場合には、この変更によって生じる直流電圧の変化が大きい期間の異常検知結果は無効化される。このため、異常の検知を高精度に行うことができる。
【0086】
(5)
(1)から(4)のいずれか1つに記載の誘導加熱用電源装置であって、
前記異常検知部は、前記第二の積算値と前記第一の積算値との差が閾値以上となる場合に、異常があると判定する誘導加熱用電源装置。
【0087】
(5)によれば、第二の積算値と第一の積算値との差を閾値と比較するといった簡易な処理によって異常の有無を判定することができる。
【0088】
(6)
(5)記載の誘導加熱用電源装置であって、
前記異常検知部は、前記第二の積算値に基づいて前記閾値を算出する誘導加熱用電源装置。
【0089】
(6)によれば、閾値が固定値ではなく、第二の積算値に基づいて算出される値となるため、異常の検知精度を高めることができる。
【0090】
(7)
(1)から(6)のいずれか1つに記載の誘導加熱用電源装置であって、
前記異常検知部により異常が検知された場合に、前記異常が発生していることを示す情報の出力と電圧出力の停止を含む処理を行う対応処理部を更に備える誘導加熱用電源装置。
【0091】
(7)によれば、情報の出力によって異常の発生をオペレータに通知することができるため、異常に対する迅速な対応が可能となる。また、電圧出力が停止されることで、異常のある状態にてワークの加熱が行われるのを防ぐことができ、ワークの生産効率を高めることができる。
【0092】
(8)
(1)から(7)のいずれか1つに記載の誘導加熱用電源装置であって、
前記電源は三相交流電源であり、
前記直流変換回路は、6つの前記整流素子を含む全波整流回路である誘導加熱用電源装置。
【0093】
(8)によれば、三相全波整流を行う直流変換回路を含む電源装置の異常の有無を判定することができる。
【0094】
(9)
(8)記載の誘導加熱用電源装置であって、
前記第一時間は、前記三相交流電源から供給される電圧の1周期を、当該1周期の間に前記直流変換回路から出力される直流電圧波形の数にて除算して得られる値よりも小さい値となっている誘導加熱用電源装置。
【0095】
(9)によれば、三相全波整流を行う直流変換回路を含む電源装置の異常の有無の判定を高い精度にて行うことができる。
【0096】
(10)
電源から供給される少なくとも1相の交流電圧を直流電圧に変換して出力する複数の整流素子を含む直流変換回路を有する誘導加熱用電源装置の異常検出方法であって、
前記直流変換回路から出力される直流電圧を検出する電圧検出ステップと、
前記整流素子を導通させるための制御信号が前記直流変換回路に入力された時点から予め決められた第一時間、前記電圧検出ステップにより検出される直流電圧を積算する電圧積算ステップと、
前記電圧積算ステップによって積算された前記直流電圧の第一の積算値と、前記第一の積算値を得るための前記直流電圧が出力されている期間の直前にて前記直流変換回路に前記制御信号が入力された時点から前記電圧積算ステップによって積算された前記直流電圧の第二の積算値とを比較し、当該比較の結果に基づいて異常を検知するステップと、を備える誘導加熱用電源装置の異常検知方法。
【符号の説明】
【0097】
1 誘導加熱用電源装置
10 三相交流電源
20 直流変換部
21 全波整流回路
U1、U2、V1、V2、W1、W2 サイリスタ
g1、g2、g3、g4、g5、g6 ゲート制御端子
22 平滑化回路
22A、22B リアクトル
22C 抵抗
23 電圧検出部
24 ゲートドライバ
30 インバータ
40 加熱装置
50 制御基板
51 変圧器
52 制御部
52A 制御信号生成部
52B 電圧積算部
52C 異常検知部
52D 対応処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6