(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】導電性エンドレスベルト
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20220707BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G15/00 552
(21)【出願番号】P 2019550278
(86)(22)【出願日】2018-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2018039673
(87)【国際公開番号】W WO2019087925
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2017213500
(32)【優先日】2017-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】小倉 崇
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 智
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-268910(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0009103(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置に用いられる無端ベルト状の導電性エンドレスベルトにおいて、
基材樹脂が、熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂と
、熱可塑性ポリブチレンテレフタレート樹脂と
、熱可塑性エラストマーと、を含有し、かつ、該基材樹脂の全量に対し、該熱可塑性ポリブチレンテレフタレート樹脂を36質量%以上含有する
とともに、該熱可塑性エラストマーを10質量%以上40質量%以下で含有することを特徴とする導電性エンドレスベルト。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂が熱可塑性ポリブチレンナフタレート樹脂であって、かつ、該熱可塑性ポリブチレンナフタレート樹脂と前記熱可塑性ポリブチレンテレフタレート樹脂との質量比率が、0.64~1.50の範囲内である請求項1記載の導電性エンドレスベルト。
【請求項3】
転写ベルトである請求項1
または2記載の導電性エンドレスベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ等の電子写真装置や静電記録装置等における静電記録プロセスにおいて、表面に静電潜像を保持した潜像保持体等の画像形成体表面に現像剤を供給して形成されたトナー像を、紙等の記録媒体へと転写する際に用いられる導電性エンドレスベルト(以下、単に「ベルト」とも称する)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機やプリンタ等における静電記録プロセスでは、まず、感光体(潜像保持体)の表面を一様に帯電させ、この感光体に光学系から映像を投射して光の当たった部分の帯電を消去することによって静電潜像を形成し、次いで、この静電潜像にトナーを供給してトナーの静電的付着によりトナー像を形成し、これを紙、OHP、印画紙等の記録媒体へと転写することにより、プリントする方法が採られている。
【0003】
この場合、カラーレーザープリンタやカラー複写機においても、基本的には前記プロセスに従ってプリントが行われるが、カラー印刷の場合には、マゼンタ、イエロー、シアン、ブラックの4色のトナーを用いて色調を再現するもので、これらのトナーを所定割合で重ね合わせて必要な色調を得るための工程が必要であり、この工程を行うためにいくつかの方式が提案されている。
【0004】
中でも、汎用の方式として、
図2に示すような無端状の転写ベルトを用いてカラー画像の形成を行うプリント方式が知られている。図示する装置においては、感光体ドラム11a~11d上の静電潜像を夫々イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックにより現像する第1現像部12a~第4現像部12dが転写ベルト10に沿って順次配置されている。この転写ベルト10を図中の矢印方向に循環駆動させて、各現像部12a~12dの感光体ドラム11a~11d上に形成された4色のトナー像を順次転写することにより、転写ベルト10上にカラーのトナー像を形成し、このトナー像を紙等の記録媒体13上に転写することにより、プリントアウトを行う。ここで、図示する装置において、現像に用いるトナーの配列順は特に制限されるものではなく、任意に選択可能である。なお、図中、符号14は、転写ベルト10を循環駆動するための駆動ローラまたはテンションローラを示し、15は2次転写ローラ、16は記録媒体送り装置、17は記録媒体上の画像を加熱等により定着させる定着装置を示す。
【0005】
このような電子写真方式の画像形成プロセスにおいて使用可能なベルトの基材樹脂としては、従来、熱可塑性樹脂が汎用されている。例えば、特許文献1には、樹脂基材が、(a)熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂および/または(b)熱可塑性ポリアルキレンテレフタレート樹脂と、(c)熱可塑性ポリエステル系エラストマーとからなり、かつ、(c)成分の配合比率が(a)および/または(b)成分100重量部に対し1~15重量部の範囲内である導電性エンドレスベルトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、ベルトにおいては、使用環境が変化しても安定した性能を発揮させるために、電気抵抗に電圧依存性がないこと、すなわち、電圧の変化によって電気抵抗が変動しないことが求められる。しかしながら、近年では、プリンタの仕様によって、ベルトについても電圧依存性があるものや様々な抵抗値を有するものが求められるようになり、さらなる改良が求められていた。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記問題を解消して、電気抵抗が電圧依存性を有する導電性エンドレスベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解消するために鋭意検討した結果、ベルトの基材樹脂を特定の熱可塑性樹脂の組合せとし、その熱可塑性樹脂の比率を規定することにより、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、画像形成装置に用いられる無端ベルト状の導電性エンドレスベルトにおいて、
基材樹脂が、熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂と、熱可塑性ポリブチレンテレフタレート樹脂と、熱可塑性エラストマーと、を含有し、かつ、該基材樹脂の全量に対し、該熱可塑性ポリブチレンテレフタレート樹脂を36質量%以上含有するとともに、該熱可塑性エラストマーを10質量%以上40質量%以下で含有することを特徴とするものである。
【0011】
本発明のベルトにおいては、前記熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂が熱可塑性ポリブチレンナフタレート樹脂であって、かつ、該熱可塑性ポリブチレンナフタレート樹脂と前記熱可塑性ポリブチレンテレフタレート樹脂との質量比率が、0.64~1.50の範囲内であることが好ましい。
【0012】
本発明のベルトは、特に、転写ベルトとして有用である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上記構成としたことで、電気抵抗が電圧依存性を有する導電性エンドレスベルトを実現することができた。また、特に、基材樹脂として熱可塑性ポリブチレンナフタレート樹脂と熱可塑性ポリブチレンテレフタレート樹脂とを併用して、これらの質量比率を所定の範囲とすることで、電圧依存性を有するとともに、巻癖の発生についても抑制した導電性エンドレスベルトとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】本発明の導電性エンドレスベルトの一構成例を示す幅方向断面図である。
【
図1B】本発明の導電性エンドレスベルトの他の構成例を示す幅方向断面図である。
【
図2】本発明に係る画像形成装置の一例を示す概略図である。
【
図3A】実施例における巻癖の評価方法に係る説明図である。
【
図3B】実施例における巻癖の評価方法に係る他の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1A,
図1Bは、本発明の導電性エンドレスベルトの一構成例を示す幅方向断面図である。無端ベルト状の導電性エンドレスベルトには、一般に、ジョイントありのものとジョイントなしのもの(いわゆるシームレスベルト)とがあるが、本発明においてはいずれのものであってもよく、好ましくはシームレスベルトである。本発明の導電性エンドレスベルトは、複写機やプリンタ等の画像形成装置において、転写ベルト等として用いることができるものである。
【0016】
本発明の導電性エンドレスベルトが、例えば、
図2に示す転写ベルト10である場合、感光体ドラム11a~11dを備える現像部12a~12dと紙等の記録媒体13との間に配設されて、駆動ローラ14等の駆動部材により循環駆動され、各感光体ドラム11a~11dの表面に形成された4色のトナー像を一旦転写保持し、次いでこれを記録媒体13へと転写することで、カラー画像を形成する。なお、ここではトナーが4色の場合について説明しているが、トナーの色数が4色に限られないことは言うまでもない。
【0017】
本発明のベルトは、ベルトを構成する基材樹脂が、熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂と熱可塑性ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)とを含有するとともに、基材樹脂の全量に対し、PBTを36質量%以上含有する点に特徴を有する。
【0018】
PBTはベルトの基材樹脂に用いられている材料であるが、多く配合しすぎると巻癖が悪化する傾向があるため、従来は他の樹脂との組合せで、36質量%に満たない少量しか用いられてこなかった。これに対し、本発明者らは、PBTを従来よりも多く添加することで、電気抵抗に電圧依存性を有するベルトとすることができることを見出した。PBTを36質量%以上と多量で含有させることで、導電剤の偏在が起こって、これにより電圧依存性を発現させるものと考えられる。PBTの含有量は、基材樹脂の全量に対し、36質量%以上とすることが必要であり、好適には36質量%以上60質量%以下、より好適には36質量%以上44質量%以下である。
【0019】
本発明においてPBTと併用する熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂としては、具体的には例えば、熱可塑性ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、熱可塑性ポリブチレンナフタレート樹脂(PBN)等を挙げることができ、好適には、PBNを用いる。
【0020】
本発明においては、特には、基材樹脂としてPBNとPBTとを併用して、PBNとPBTとの質量比率(PBNの質量/PBTの質量)を0.64~1.50の範囲内とすることが好ましく、1.05~1.50の範囲とすることがより好ましい。PBNとPBTとの質量比率を上記範囲に規定することにより、電気抵抗の電圧依存性を有するとともに、巻癖の発生を抑制したベルトとすることができる。ここで、巻癖とは、ベルトを一定時間固定していた際に、ベルトを固定していた形状によって、ベルトに痕が残ってしまう現象をいう。PBNとPBTとの上記質量比率を得るために、PBNの配合量は、基材樹脂の全量に対し、例えば、46質量%以上とすることが好ましく、54質量%以下とすることが好ましい。
【0021】
本発明においては、基材樹脂が、さらに、熱可塑性エラストマーを含有することが好ましく、これにより、ベルトの耐折れ性等の耐久性を向上する効果を得ることができる。本発明において用いる熱可塑性エラストマーとしては、特に制限されるものではなく、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリエーテル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、スチレン系、アクリル系、ポリジエン系等の各種のものを挙げることができ、中でも、熱可塑性ポリエステル系エラストマーが好適である。本発明においては、熱可塑性ポリエステル系エラストマーの中でも、特に、PBNエラストマーを好適に用いることができ、これにより、ベルトを柔らかくして、ベルトの耐久性をより向上することができる。本発明における熱可塑性エラストマーの配合量は、基材樹脂の全量に対し、40質量%以下とすることができ、好適には30質量%以下であって、好適には5質量%以上である。
【0022】
なお、本発明において基材樹脂として用いる熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂やPBT等のポリエステル系材料は、成形加熱時において加水分解による分子量低下を引き起こしやすいという難点がある。そのため、本発明のベルトには、カルボジイミド基を有する化合物を添加して、カルボジイミド基とカルボン酸との反応によりポリエステル系材料を再架橋させることで、分子量の低下を抑制することが好ましい。これにより、ベルトの脆化を防止することができ、耐久時におけるベルトの耐割れ性を向上することが可能となる。かかるカルボジイミド化合物は市場で容易に入手可能であり、例えば、日清紡ケミカル(株)製の商品名:カルボジライト等を挙げることができる。また、カルボジイミド化合物は、あらかじめマスターバッチ化されたペレット等の形態でも用いることができ、例えば、日清紡ケミカル(株)製の商品名:カルボジライトEペレット、Bペレット等を好適に用いることができる。
【0023】
かかるカルボジイミド化合物の添加量としては、特に制限されるものではないが、基材樹脂100質量部に対し、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であって、好ましくは30質量部以下、より好ましくは5質量部以下の範囲内である。
【0024】
また、本発明のベルトには、導電性を調整するために、導電剤を適宜配合することができる。かかる導電剤としては、特に制限されるものではなく、公知の電子導電剤やイオン導電剤等を適宜用いることができる。
【0025】
このうち電子導電剤としては、具体的には例えば、ケッチェンブラック,アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF,ISAF,HAF,FEF,GPF,SRF,FT,MT等のゴム用カーボン、酸化処理等を施したカラ-(インク)用カーボン、熱分解カーボン、天然グラファイト、人造グラファイト、アンチモンドープの酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属および金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー、カーボンウイスカー、黒鉛ウイスカー、炭化チタンウイスカー、導電性チタン酸カリウムウイスカー、導電性チタン酸バリウムウイスカー、導電性酸化チタンウイスカー、導電性酸化亜鉛ウイスカー等の導電性ウイスカー等が挙げられる。
【0026】
また、イオン導電剤としては、具体的には例えば、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸ジメチルエチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウ弗化水素酸塩、硫酸塩、エチル硫酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩などのアンモニウム塩、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウ弗化水素酸塩、硫酸塩、トリフルオロメチル硫酸塩、スルホン酸塩等が挙げられる。
【0027】
本発明において、上記導電剤は、1種を単独で用いても、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよく、例えば、電子導電剤とイオン導電剤とを組み合わせて用いることもでき、この場合、印加される電圧の変動や環境の変化に対しても安定して導電性を発現させることができる。
【0028】
上記導電剤の配合量としては、電子導電剤については、基材樹脂100質量部に対し、通常100質量部以下であり、特には80質量部以下、とりわけ50質量部以下であって、例えば1質量部以上、とりわけ5質量部以上である。また、イオン導電剤については、基材樹脂100質量部に対し、通常0.01質量部以上、特には0.05質量部以上であって、通常10質量部以下、特には5質量部以下の範囲である。本発明においては特に、導電剤としてカーボンブラックを用いて、これを基材樹脂100質量部に対し、5質量部以上、30質量部以下にて添加することが好ましい。
【0029】
また、本発明のベルトには、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の成分に加えて他の機能性成分を適宜添加することも可能であり、例えば、各種充填材、補強材、難燃剤、酸化防止剤、相溶化剤、カップリング剤、滑剤、表面処理剤、顔料、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、中和剤、発泡剤、架橋剤等を適宜配合することができる。さらに、着色剤を添加して着色を施してもよい。
【0030】
本発明のベルトの厚さは、適用される部材等の形態に応じて適宜選定されるものであるが、好ましくは50μm以上、200μm以下の範囲内である。また、その表面粗さとしては、好適には、JIS 10点平均粗さRzで10μm以下、特に6μm以下、更には3μm以下とする。さらに、体積抵抗率としては、102Ω・cm以上、1013Ω・cm以下の範囲内に調整することが好ましい。さらにまた、本発明のベルトの引張弾性率は、1000MPa以上とすることが好ましく、特に好ましくは1500MPa以上であって、3000MPa以下とすることが好ましい。
【0031】
また、本発明のベルトには、
図1A,
図1Bに一点鎖線で示すように、
図2の画像形成装置における駆動ローラ14などの駆動部材と接触する側の面に、該駆動部材に形成した嵌合部(図示せず)と嵌合する嵌合部を形成してもよく、本発明の導電性エンドレスベルトは、このような嵌合部を設け、これを駆動部材に設けた嵌合部(図示せず)と嵌合させて走行させることにより、導電性エンドレスベルトの幅方向のずれを防止することができる。この場合、前記嵌合部は、特に制限されるものではないが、
図1A,
図1Bに示すように、ベルトの周方向(回転方向)に沿って連続する凸条とし、これを駆動ローラ等の駆動部材の周面に周方向に沿って形成した溝に嵌合させるようにすることが好ましい。
【0032】
なお、
図1Aでは、1本の連続する凸条を嵌合部として設けた例を示したが、この嵌合部は多数の凸部をベルトの周方向(回転方向)に沿って一列に並べて突設してもよく、また嵌合部を2本以上設けたり(
図1B)、ベルトの幅方向中央部に設けてもよい。更に、嵌合部として
図1A,
図1Bに示した凸条ではなく、ベルトの周方向(回転方向)に沿った溝を設け、これを前記駆動ローラ等の駆動部材の周面に周方向に沿って形成した凸条と嵌合させるようにしてもよい。
【0033】
本発明のベルトは、上記基材樹脂および導電剤等を含む樹脂組成物の押出し成形により好適に製造することができ、具体的には例えば、二軸混練機により上記各種配合成分を含む樹脂組成物を混練し、得られた混練物を環状ダイスを使って押出し成形することにより製造することができる。または、静電塗装等の粉体塗装法、ディップ法または遠心注型法も好適に採用することができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
下記の表中に示す配合に従い、2軸混練機で混合分散して、ペレットを得た。このペレットを用いて、単軸押し出し機の先に円筒状のダイスを備えた成形機にて押出し成形することにより、内径220mm、厚さ120μm、幅250mmにて、エンドレス形状の転写ベルトを成形した。
【0035】
<電圧依存性の評価>
得られた転写ベルトについて、温度25℃、相対湿度50%にて、測定装置として、株式会社三菱ケミカルアナリテック製のハイレスタ-UX MCP-HT800にリングプローブUR-100を接続したものを用いて、測定電圧100Vおよび250Vにおける表面抵抗をそれぞれ測定し、その差分を取って、表面抵抗の電圧依存性を評価した。この値が0.20以上であれば、電圧依存性があるといえる。
【0036】
<巻癖の評価>
得られた転写ベルトについて、以下に従い、巻癖の有無を評価した。
各ベルトから長さ100mm、幅10mmの試験片を切り出し、温度30℃、相対湿度80%の環境下で、
図3Aに示すように、試験片20の両端に片側200g(計400g)の荷重をかけ、φ18mmの金属軸21に掛けた状態で12日間放置した。その後、荷重を外して、温度25℃、相対湿度50%の環境で24時間放置し、
図3Bに示すように、試験片20についた癖の角度θを測定して、以下に従い評価を行った。
◎:巻癖角度θが45°以上180°以下である場合。
○:巻癖角度θが30°以上45°未満である場合。
×:巻癖角度θが0°以上30°未満である場合。
【0037】
これらの結果を、下記の表中に併せて示す。
【0038】
【表1】
*1)PBN,帝人株式会社製、商品名TQB-OT
*2)PBT,ウィンテックポリマー株式会社製、商品名ジュラネックス700FP
*3)熱可塑性エラストマー,東洋紡株式会社製、商品名ペルプレンEN-16000
*4)カルボジイミド化合物,日清紡ケミカル株式会社製 商品名カルボジライトHMV-8CA
*5)カーボンブラック,デンカ株式会社製 商品名デンカブラック(アセチレンブラック)
【0039】
上記表中に示すように、基材樹脂が熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂とPBTとを含有し、PBTの含有量が36質量%以上である各実施例のベルトにおいては、良好な電圧依存性が得られていることが確かめられた。さらに、熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂としてPBNを用いて、PBNとPBTとの質量比率を0.64~1.50とすることで、巻癖についても確実に解消されることが分かった。
【符号の説明】
【0040】
10 転写ベルト
11a~11d 感光体ドラム
12a~12d 現像部
13 記録媒体
14 駆動ローラまたはテンションローラ
15 2次転写ローラ
16 記録媒体送り装置
17 定着装置
20 試験片
21 金属軸