(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】クリーンラベル安定化ソバデンプンの調製方法
(51)【国際特許分類】
A23L 29/212 20160101AFI20220707BHJP
A23L 7/10 20160101ALN20220707BHJP
【FI】
A23L29/212
A23L7/10 H
(21)【出願番号】P 2019563622
(86)(22)【出願日】2018-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2018062358
(87)【国際公開番号】W WO2018210741
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-01-25
(31)【優先権主張番号】201710341956.1
(32)【優先日】2017-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ベルナール ポーラ
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴィン ハシム
(72)【発明者】
【氏名】タオ ジンリン
(72)【発明者】
【氏名】ソン ジエ
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103168812(CN,A)
【文献】特開昭52-038037(JP,A)
【文献】国際公開第2014/053833(WO,A1)
【文献】Carbohydrate Polymers, 2015年,Vol.132,p.237-244
【文献】澱粉科学, 1985年,第32巻, 第1号,p.65-83
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 29/212-29/225
A23L 7/00-7/104
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ソバデンプンから安定化ソバデンプンを調製する方法であって、
a
)20~50重量%の濃度で
、室温から50℃の間に含まれ
る温度T1にて、水性媒体中の天然ソバデンプンの懸濁液を調製するステップ;
b)水性懸濁液を60℃を超えない温度Tsまで加熱するステップであって、前記加熱ステップは、
i.
前記温度T1から前記温度Tsまで1時間当たり0.2℃~5℃の間に含まれる速度でのゆっくりとした加熱の第1の段階であって、前記温度Tsは、
53℃~60℃の範囲
内に含まれる第1の段階、及び、
ii.前記安定化ソバデンプンを得るための
、1~18時
間の、前記温度T
Sでの加熱の第2の段階
を含む、ステップ、
c)前記水性媒体から前記安定化ソバデンプンを分離するステップ;
d)前記安定化ソバデンプンを乾燥させるステップ;
e)前記安定化ソバデンプンを回収するステップ
を含
み、
示差走査熱量測定(DSC)によって測定された、前記安定化ソバデンプンの糊化開始温度が60~69℃であり、
DSCによって測定された、前記安定化ソバデンプンの老化割合が、4℃での7日の貯蔵後、23~40%であり、
Rapid Visco Analyser(RVA)によって測定された、前記安定化ソバデンプンのペースト化温度が80~95℃である、方法。
【請求項2】
前記加熱ステップb)の前記第1の段階の間に、前記水性懸濁液が、Tsまで段階的に加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加熱ステップb)の前記第1の段階が、それぞれ、温度T2及びT3での、少なくとも2回の連続する等温加熱ステップを含み、それぞれの等温加熱ステップが、独立に、少なくとも30
分のものである、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
有機溶媒を非含有であり、化学
変換は存在しない、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
乾燥の前記ステップd)が、室温からソバデンプン糊化温度の間に含まれる温度にて行われ、改質ソバデンプンが、12%以下の水分割合を有するとき、停止される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記天然ソバデンプンが、ソバのひき割り又はソバ粉から抽出される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記天然ソバデンプンが、食料製品の調製のための
ものである、請求項
1~
6のいずれか一項に記載の
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の熱処理を含む、安定化ソバデンプンを調製する方法に関する。本発明はまた、前記方法によって得ることができる安定化ソバデンプン、及び食料製品の調製のための前記安定化ソバデンプンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
食品産業において、デンプンは、非常に重要な成分である。これは、他の物の中でも、テクスチャ付与剤、ゲル化剤、粘稠化剤及び安定剤として使用されている。
【0003】
自然の非改質デンプン(「天然」デンプンとして知られている)は、このような用途のための全ての必要とされる特性を有さない。
【0004】
デンプン粒の水和及び膨潤は、デンプンの粘稠化特性を実現する。実際、水の存在下で、デンプン粒は、水性デンプン懸濁液を形成する。水性デンプン懸濁液が加熱されるとき、デンプン粒は膨潤し始め、デンプン懸濁液の粘度は、膨潤し水和したデンプン粒が破裂するまで進行的に増加する。
【0005】
したがって、ずりの存在下で及び/又は酸性条件下にて、天然デンプン懸濁液は、粘度における最初のピークに最初に達し、次いで、その粘度は、再び急速に減少する。このようなペースト化プロファイルは、大部分の食品用途において、特に、粘稠化した製品に適していない。多くの天然デンプンはまた、老化を受け、貯蔵の間の食品のテクスチャが変化する。
【0006】
代わりに、粘稠化した製品が、ずりの存在下及び/又は酸性条件下においてでさえ、加工(例えば、加熱)の間に及び貯蔵の間に安定であり続ける粘度を有する(低い老化)ことが通常望ましい。
【0007】
多くの食品用途において、熱抵抗(すなわち、粘度安定性)、ずり抵抗及び耐酸性、並びに貯蔵の間に老化する低い傾向を有するデンプンを実現することが必要とされている。
【0008】
したがって、様々な方法が開発され、天然デンプンの特性が改善されてきた。このような方法によって得られるデンプンは、「安定化デンプン」と称されることが多い。一般に、多糖の間の架橋及び/又は分子間架橋の形成は、デンプンの安定化を可能とする。
【0009】
安定化デンプンは、架橋試薬、例えば、オキシ塩化リン、トリメタリン酸ナトリウム及びエピクロロヒドリンが関与する化学的方法を使用することによって非常に首尾よく生成することができる。このような安定化デンプンは一般に、「化学的に改質されたデンプン」又は「架橋されたデンプン」と称される。これらの化学的に改質されたデンプン、例えば、市販のCLEARAM(登録商標)は、熱抵抗、ずり抵抗及び耐酸性、並びに老化する低い傾向に関して必要とされる特性を実現することができる。
【0010】
過去10年に亘り、消費者は、ラベル上に化学物質のリスト、又は化学的に改質された成分を有する製品を購入することがますます気が進まなくなってきている。その理由のために、食品メーカーは、「クリーンラベル」食料製品、すなわち、化学的に改質されていない製品を提供する課題に取りかかっている。
【0011】
「クリーンラベル」安定化デンプンを調製する1つの方法は、水の存在下で又は乾燥条
件下で天然デンプンの物理的処理、より特定すると、温度処理を行うことによる。
【0012】
より正確に、調理していない顆粒デンプンを改質することが知られている2つの一般の熱水技術:湿熱処理及びアニーリングが存在する。基本的に、湿熱処理は通常、相対的に低水分(<35%)及び高温(90~120℃)条件において行われる。アニーリングは、過剰な水中でガラス転移温度超及び糊化温度未満で行われる。
【0013】
クリーンラベルデンプンを生成する別の方法は、乾燥又は無水条件において極度に高温(120℃超であるが、200℃未満)にてデンプンを加熱することによる。このような方法は一般に、熱抑制処理と称される。
【0014】
このような温度処理によって調製される市販のデンプンの例は、NOVATION(登録商標)2300であり、これは欧州特許第0721471号明細書において開示されている。
【0015】
市販の抑制デンプンの別の例は、CLARIA+(登録商標)であり、これは国際公開第2013/173161号及び国際公開第2014/053833号において開示されている。抑制処理は、それぞれ、塩基又は塩の存在下でのアルコール性媒体中の加熱、並びに残留タンパク質及び活性塩素化合物の存在下での水性媒体中の加熱である。
【0016】
これらの2つの市販のデンプンは、ワキシートウモロコシをベースとするデンプンである。
【0017】
本発明は、新規なクリーンラベルソバ安定化デンプンを調製する新規な方法を提案し、前記デンプンは、公知の製品(化学的に架橋されたデンプン又は物理的に改質されたデンプン)と比較して、同様又はそれどころか改善された熱抵抗、ずり抵抗及び耐酸性、並びに老化する低い傾向を有する。
【0018】
実際、高度安定化ソバデンプンは、前記特定のデンプンであるソバデンプンを、非常に特定の範囲の温度にて処理することによって生成することができることが見出されてきた。
【0019】
さらに、消費者は、急速に消化でき吸収性の炭水化物より健康的である、ゆっくりと消化できる炭水化物を求めている。特に、ゆっくりと消化できる炭水化物は、満腹感を増加させ、延長された期間に亘り脳へグルコースを提供し、それによって、認知機能を改善させることが知られている。
【0020】
ワキシーをベースとするデンプンから作製された現在の機能的クリーンラベルデンプンは、糊化前の形態であり、及び/又は加熱プロセスの間に容易に糊化し、このように、急速に消化し得る。
【0021】
このように、通常のクリーンラベルよりゆっくりと消化されることができるクリーンラベルデンプンが必要とされている。
【0022】
未加工の天然デンプンは、糊化デンプンよりゆっくりと消化されることが知られている。しかし、天然デンプン、例えば、満腹感を増すために通常使用される高アミロースデンプンは、主に、ゆっくりと消化できるデンプンではない難消化性デンプンを含有する。さらに、その乏しい機能性、例えば、低い膨潤及び糊化の程度によって、これは、食料製品中に組み込まれると、口あたりを低下させる。
【0023】
細胞壁は、デンプンが消化酵素によって急速に加水分解されることから保護することができるため、米国特許出願公開第2016/0235075号明細書、米国特許出願公開第2016/0249627号明細書、国際公開第2015/051228号、国際公開第2015/051236号、中国特許出願公開第105578886号明細書において開示されており、高い食物繊維含量を実現することがまた知られている、全粒コムギ粉、ソバ粉(ひき割り及びカットを含めた)、エンバク粉、並びに他の穀粉は、ゆっくりと消化できる炭水化物源として使用されてきた。しかし、デンプンの膨潤力を制限する細胞壁によって、これらの粉から作製したビスケットの口あたりは心地良くなく、ビスケットは通常、非常に密で硬いテクスチャを有する。中国特許第106417511号明細書及び中国特許出願公開第103168812号明細書に開示されているように、低GIを有するビスケットについてダッタンソバ粉の例がまた存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
このように、食料製品の口あたりを低下させることなしに前記製品の製造のために使用することができるゆっくりと消化できる炭水化物が必要とされている。特に、同時に、健康に良く、より加工されていないか若しくは加工されておらず、ビスケットの口あたりを改善させることができ、且つゆっくりとした消化特性を有するクリーンラベルデンプンを見出すことは重要である。本発明による安定化ソバデンプンは、これらの基準を満たすことを本発明者らは驚いたことに見出した。特に、ソバは、消費者によって健康的成分として認知されている古くからの穀物である。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の第1の目的は、天然ソバデンプンから安定化ソバデンプンを調製する方法であり、この方法は、下記のステップ:
a)好ましくは20~50重量%の濃度で、より好ましくは30~40重量%の濃度で、室温から50℃、例えば室温から45℃の間に含まれる温度T1にて、水性媒体中の天然ソバデンプンの懸濁液を調製するステップ;
b)水性懸濁液を60℃を超えない温度Tsまで加熱するステップであって、前記加熱ステップは、
i.T1から前記温度Tsまで1時間当たり0.2℃~5℃の間に含まれる速度でのゆっくりとした加熱の第1の段階(前記温度Tsは、50~60℃の範囲内、好ましくは53℃~58℃の範囲内、より好ましくは53℃~55℃の範囲内に含まれる)、及び、
ii.安定化ソバデンプンを得るための、少なくとも30分間、好ましくは0.5~24時間、例えば1~18時間、特に1~5時間、とりわけ3時間の、前記温度TSでの加熱の第2の段階
を含む、ステップ、
c)水性媒体から安定化ソバデンプンを分離するステップ;
d)前記安定化ソバデンプンを乾燥させるステップ;
e)前記安定化ソバデンプンを回収するステップ
を含む。
【0026】
本明細書において使用する場合、語句「天然ソバデンプン」は、自然源由来のソバデンプンを指す。これは、物理的又は酵素的又は化学的な加工方法の結果ではない。
【0027】
天然ソバデンプンは、抽出方法によってソバ穀物(ソバ(Fagopyrum esculentum))から回収される。ソバデンプンは、高いデンプン含量を有するソバのひき割り又はソバ粉から直接抽出することができる(ひき割り及び粉で50~70%のデンプン)。
【0028】
本文献において、「天然ソバデンプン」は、他の用語、例えば、「対照デンプン」又は「非抑制デンプン」又は「非改質デンプン」又は「非安定化デンプン」と命名することができる。
【0029】
本明細書において使用する場合、語句「安定化ソバデンプン」は、天然ソバデンプンとは反対に、好ましくは、本発明の方法によって熱的に改質されており、且つ化学的に架橋されたデンプンの少なくとも特徴、例えば、化学的に架橋されたワキシートウモロコシデンプンの特徴を有する、ソバデンプンを指す。
【0030】
本発明の方法による熱改質処理は、老化するその低い傾向を維持する一方で、化学物質を使用することなしに、ソバデンプンのペースト化プロファイル及び糊化温度、並びに結果的にその熱抵抗、ずり抵抗及び耐酸性に対してプラスの影響を与える。
【0031】
熱、ずりの存在下で及び/又は酸性条件下にて、本発明による安定化ソバデンプンは、膨潤に抵抗するか、限られた程度まで及び/又はより高い温度(93℃までのペースト化温度)にて膨潤する。破裂はこのように防止される。
【0032】
安定化ソバデンプンは、老化するその低い傾向を維持する一方で、天然ソバデンプンの1つと比較して増加した熱抵抗、ずり抵抗及び耐酸性を有する。これらの特性は、いくつかの市販の改質デンプン、例えば、CLARIA+(登録商標)、CLEARAM(登録商標)CJ5025及びNOVATION(登録商標)2300の特性に匹敵するか、又はより良好である。
【0033】
本明細書において、「安定化ソバデンプン」は、他の用語、例えば、「本発明の方法による熱改質されたデンプン」、「熱改質されたソバデンプン」又は「アニーリングされたソバデンプン」と命名することができる。
【0034】
本発明の第2の目的は、第1の目的による方法によって得ることができる安定化ソバデンプン、又は第1の目的による方法によって得られる安定化ソバデンプンである。
【0035】
本発明の第3の目的は、食料製品の調製のための、特に、ヨーグルトの生産のための、第2の目的による安定化ソバデンプンの使用である。本発明の別の目的は、ビスケットの調製のための、第2の目的による安定化ソバデンプンの使用である。
【0036】
本発明の第4の目的は、第2の目的による安定化ソバデンプンを含む食料製品である。好ましい実施形態では、食料製品は、ヨーグルトである。別の好ましい実施形態では、食料製品は、ビスケットである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】Rapid Visco Analyser(RVA)を使用して実施例1において得た熱改質されたデンプンのペースト化特徴を示す。
【
図2】出願人によって販売されている市販の製品であるCLEARAM(登録商標)CRと比較した、Rapid Visco Analyser(RVA)を使用して実施例1において得た熱改質されたソバデンプンのペースト化特徴を示す。
【
図3】実施例3において得られるか、又は使用される、pH3及び6での熱改質されたデンプンの熱抵抗を例示する。
【
図4】それぞれの工程ステップの後、予備加熱の前、予備加熱の後、均質化の後、及び殺菌の後の、実施例4において得られるか、又は使用される、天然ソバデンプン及び熱改質されたソバデンプンのペースト化プロファイルを示す。
【
図5】実施例4における予備加熱、均質化及び殺菌プロセスの後のデンプンの状態の顕微鏡観察を示す。
【
図6】実施例5におけるヨーグルトを調製するプロセスの異なる段階におけるデンプンの状態の顕微鏡観察を示す。
【
図7】全粒コムギ粉(対照)、コムギデンプン又はソバ粉から作製したビスケットと比較した、本発明による安定化ソバデンプンから作製したビスケットの消化性パラメーターを示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の方法において、第1のステップ(ステップa))は、好ましくは、20~50重量%、より好ましくは、30~40重量%の濃度で、室温(20℃)から50℃、例えば、室温から45℃の間に含まれる温度T1にて、天然ソバデンプンから懸濁液を調製することからなる。
【0039】
本発明のために有用である天然ソバデンプンは、天然の源から回収される。これは、ソバのひき割り又はソバ粉から抽出することができる。典型的な抽出方法は、下記のステップ:
1)50℃以下の温度にて、7~9のpHで、ソバ粉から又はソバのひき割りから水性懸濁液を調製するステップ;
2)タンパク質、可溶性炭水化物及び塩を含む軽い画分、並びにデンプン及び繊維を含む重い画分を得るために、好ましくは、水平スクリューデカンター、遠心デカンター又は液体サイクロンを使用することによって、密度によって水性懸濁液を分画するステップ;
3)重い画分を再懸濁させるために、室温から50℃の間に含まれる温度にて水を重い画分に加えるステップ;
4)室温から50℃の間に含まれる温度にて粒径の差異によって、好ましくは、濾過によって、ふるいを使用することによって、繊維画分をデンプン画分から分離するステップ;5)残存するタンパク質を除去するために、7~9のpHで、室温から50℃の間に含まれる温度にて、少なくとも1回デンプン画分を処理するステップ;
6)デンプン画分のpHを5~7へと中和するステップ。
7)好ましくは、流動床乾燥器又は熱風乾燥機を使用することによって、デンプン画分を乾燥させるステップ;
8)乾燥したデンプンを回収するステップ
を含む。
【0040】
本発明による方法の1つの実施形態によると、本発明のために有用なデンプン懸濁液は、中和されたデンプン画分(デンプン抽出方法の間の乾燥ステップ7)の前にステップ6)からもたらされる)から調製される。
【0041】
懸濁液の調製はまた、例えば、
a1)40℃~50℃の間、好ましくは40℃~45℃の間に含まれる、例えば、45℃の温度T1にて、デンプンを温水と直接混合するステップ、
a2)加熱容器セットにおいて45℃にてこのように得られた水性懸濁液を平衡化するステップ、又は
a3)室温にてデンプンと水とを混合し、次いで、このように得られた水性懸濁液の、1時間当たり5℃から50℃の速度で、例えば、40℃~45℃の間に含まれる、好ましくは45℃の温度T1までの急速な加熱ステップ
によって達成することができる。
【0042】
本発明による方法のステップb)は、水性懸濁液を60℃を超えない温度Tsまで、より特定すると50~60℃、例えば52~60℃の範囲内、好ましくは53℃~58℃の範囲内、より好ましくは53℃~55℃の範囲内に含まれる温度Tsまで加熱することか
らなる。
【0043】
より一般の条件において、本発明による方法は、60℃超の温度での熱処理を含まない。
【0044】
50~60℃の範囲内に含まれる温度にて天然デンプンを加熱することは、デンプン粒中の結晶子の移動を誘発し、より完全な結晶構造の形成を可能とし、その融解温度を上昇させる。
【0045】
このように、加熱は、デンプンの結晶構造及び同様にそのペースト化特性に対してプラスの影響を与える。安定化ソバ顆粒デンプンは、膨潤に抵抗するか、限られた程度まで及び/又はより高い温度(93℃までのペースト化温度)にて膨潤する。破裂はこのように防止される。熱、ずりの存在下で及び/又は酸性条件下にて、安定化ソバデンプンの粘度は、天然デンプンで観察されるように、加熱及びずりの間に、上昇し続けるか、又は粘度の劇的な変化を示さない。
【0046】
50℃未満、例えば48℃の温度での天然ソバデンプンの加熱は、デンプンのかなりの改質を誘発しない。デンプンは、かなりの改善された特性を示さない。
【0047】
言い換えると、天然ソバデンプンを50℃未満の温度で加熱することは、デンプンを安定化することを可能としない。
【0048】
これに反して、60℃超の温度にて天然デンプンを加熱することは、むしろデンプンのかなりの(部分的)糊化を誘発する。デンプンは、進行的にその結晶構造を、及び究極的にその顆粒構造を失う。このように、60℃超の温度での加熱は、デンプンの結晶構造に対してマイナスの影響を与える。結果的に、顆粒デンプンは、その熱抵抗及びずり抵抗の両方を失う。
【0049】
50℃~60℃の範囲内、好ましくは53℃~58℃の範囲内、より特定すると53℃~55℃の範囲内に含まれる温度での本発明による加熱ステップは、エンドウマメデンプン又はトウモロコシデンプンとは異なり、ソバデンプンについて特に有利である。
【0050】
実際、エンドウマメデンプン及びトウモロコシデンプンの水性懸濁液を50℃~60℃の間に含まれる温度まで加熱することは、本発明によって改質されたソバデンプンの1つと同じくらい良好な熱抵抗、ずり抵抗及び耐酸性を有する改質デンプンを得ることを可能としない。
【0051】
熱、ずりの存在下及び/又は酸性条件下にて、このように熱改質されたエンドウマメ及びトウモロコシデンプンの粘度は、最初のピークに達し、次いで、粘度は、急速に減少する。前述のように、このようなペースト化プロファイルは、食品用途、特に、粘稠化した製品に適していない。
【0052】
さらに、50℃~60℃の温度範囲にて熱改質されたエンドウマメデンプン又はトウモロコシデンプンは、80~95℃、好ましくは82~93℃、例えば85~90℃の間に含まれるペースト化温度を有する本発明による安定化ソバデンプンと比較してより低いペースト化温度(より低い熱抵抗)を示す。ペースト化温度は、加熱温度の漸増の間に粘度が増加し始める温度である。
【0053】
天然について、又は本発明の方法による熱改質の後、トウモロコシデンプン及びエンドウマメデンプンは、ソバデンプンより老化する高い傾向を示す。いくつかの市販のワキシ
ートウモロコシデンプンベースのクリーンラベルデンプンはまた、天然ソバデンプン及び安定化ソバデンプンより老化する高い傾向を示す。
【0054】
本発明による方法のステップb)は、
i.T1から前記温度Tsまで1時間当たり0.2℃~5℃の間に含まれる速度でのゆっくりとした加熱の第1の段階(前記温度Tsは、50~60℃の範囲内、好ましくは53℃~58℃の範囲内、より好ましくは53℃~55℃の範囲内に含まれる)、及び、
ii.安定化ソバデンプンを得るための、少なくとも30分間、好ましくは0.5~24時間、例えば1~18時間、特に1~5時間、とりわけ3時間の前記温度TSでの加熱の第2の段階
を含む。
【0055】
加熱ステップb)の第1の段階は、連続的様式又は段階的様式で行うことができる。このように、加熱ステップb)の前記第1の段階の間に、水性懸濁液は、Tsまで段階的に加熱することができる。
【0056】
より特定すると、加熱ステップb)の第1の段階は、それぞれ、温度T2及びT3での少なくとも2つの連続する等温加熱ステップを含むことができ、それぞれの等温加熱ステップは、独立に、少なくとも30分、好ましくは1~4時間、例えば3時間のものである。
【0057】
本発明による方法のステップc)は、水性媒体からステップb.の安定化ソバデンプンを分離することからなる。好ましい実施形態では、安定化ソバデンプンを、濾過ユニット、例えばプレートフィルター及び遠心フィルターを使用することによって水性媒体から分離する。
【0058】
本発明による方法のステップd)は、前記安定化ソバデンプンを乾燥させることからなる。
【0059】
このようなステップは、好ましくは、オーブン乾燥器、真空オーブン乾燥器、流動床乾燥器、又は熱風乾燥機を使用することによって行われる。好ましい実施形態では、安定化ソバデンプンの乾燥ステップd)は、オーブン乾燥器を使用することによって行われる。このような乾燥方法は、単純で、費用対効果が高く、再現性があり、スケーラブルな方法である。このステップは、好ましくは室温からソバデンプンの糊化温度の間に含まれる温度にて、より好ましくは50~55℃の間に含まれる温度にて行われる。
【0060】
安定化ソバデンプンが12%以下の水分割合を有するときに、安定化ソバデンプンの乾燥は停止される。
【0061】
代わりに、本発明による方法のステップd)は、安定化ソバデンプンから水を除去することからなる。
【0062】
有利なことには、本発明の方法は、有機溶媒を非含有であり、化学反応体を非含有である。方法の全てのステップは、水中で行われる。化学変換は存在しない。このように、提案する方法は、クリーンラベル方法として有利に分類することができる。本発明による方法から得られる製品は、したがってまたクリーンラベル成分である。
【0063】
本発明の第2の目的は、第1の目的による方法によって得ることができる安定化ソバデンプンである。
【0064】
本発明による方法によって得ることができるか、又は得られる安定化ソバデンプンは、糊化されていないが、顆粒形態である。これは化学的に架橋されたデンプンと機能的に同様である。これは非粘着性で滑らかなテクスチャを有し、加工変数、例えば、熱、ずり及び低pHに対して、特に、このような条件下で相当な時間の間、優れた抵抗性を有する。
【0065】
本発明による方法によって得ることができるか、又は得られる安定化ソバデンプンの粘度の増加は、加熱の間に遅延し、本発明によって改質されてこなかった同じデンプンと比較して遅くなる。
【0066】
本発明による安定化ソバデンプンは典型的には、天然ソバデンプンの糊化開始温度より10℃高い温度までの、示差走査熱量測定(DSC)によって測定した糊化開始温度を有する。これは、60~69℃の間に含まれる、DSCによって測定した糊化開始温度を有する。これは、糊化によって、4℃にて7日の貯蔵の後、23~40%、好ましくは23~33%の間に含まれる、DSCによって測定した老化割合を有する。
【0067】
Rapid Visco Analyser(RVA)によって測定した、本発明によるソバデンプン、又は本発明の方法によって熱改質されてきたソバデンプンのペースト化温度は、本発明の方法を使用して熱処理されてこなかった同じデンプンより高い。そのペースト化温度は典型的には、80~95℃、好ましくは82~93℃、例えば85~90℃の間に含まれる。
【0068】
さらに、安定化ソバデンプンは、本発明の方法を使用して処理されてこなかった同じデンプンと比較して、異なるペースト化プロファイルを有する。実際、安定化デンプンの粘度は、時間とともに進行的に増加し、及び/又は本発明の方法を使用して処理されてこなかった同じデンプン(天然デンプン又は温度範囲未満で処理されたデンプン)と比較して、熱、ずり及び/又は酸条件の存在下で粘度において劇的な変化を示さない。
【0069】
本発明の第3の目的は、食料製品の生産のための、特にヨーグルトの生産のための、第2の目的による安定化ソバデンプンの使用である。本発明の別の目的は、ビスケットの調製のための第2の目的による安定化ソバデンプンの使用である。
【0070】
本発明の第4の目的は、第2の目的による安定化ソバデンプンを含む、すなわち、本発明の方法によって得ることができる安定化ソバデンプン、又は本発明の方法によって得られる安定化ソバデンプンを含む、食料製品である。好ましい実施形態では、食料製品は、ヨーグルトである。別の好ましい実施形態では、食料製品は、ビスケットである。
【0071】
その高い熱抵抗、並びにずり抵抗及び耐酸性のおかげで、本発明によって調製された安定化ソバデンプンは、広範囲の食品用途、特に、熱抵抗、ずり抵抗及び耐酸性が必要とされる食品用途における使用のために特に適している。貯蔵の間の食料製品のテクスチャの変化を防止するのに、老化するその低い傾向がまた望ましい。
【0072】
本発明による安定化ソバデンプンが有用である食料製品は、熱加工食品、酸性食品、ドライミックス、冷蔵食品、冷凍食品、押出食品、オーブンで調製される食品、レンジ上で調理される食品、電子レンジで調理可能な食品、脂肪分を抜いてない又は脂肪分が低減した食品、及び低い水分活性を有する食品を含む。安定化ソバデンプンが特に有用である食料製品は、熱加工ステップ及び/又は厳しいずり加工ステップ、例えば、低温殺菌、レトルト処理、超高温(UHT)加工及び/又は均質化を必要とする食品である。安定化ソバデンプンは、冷却、凍結及び加熱を含めた全ての加工温度を通して安定性が必要とされる食品用途において特に有用である。
【0073】
安定化ソバデンプンはまた、非化学的に架橋されたデンプン粘稠化剤、粘性増加剤、ゲル化剤、又は増量剤が必要とされるか又は望ましい食料製品において有用である。より特定すると、安定化ソバデンプンは、加工食料製品に対して望ましい滑らかなテクスチャを提供し、加工操作の間ずっと粘稠化するそれらの能力を維持する。加工食品配合物に基づいて、当業者は、完成した食料製品における必要な厚さ及びゲル化粘度、並びに所望のテクスチャを実現するのに必要とされる安定化ソバデンプンの量を容易に選択し得る。典型的には、デンプンは、食料製品の約0.1~約35重量%、例えば、約2~約6重量%の量で使用される。
【0074】
本発明によれば、安定化ソバデンプンは、ビスケットの調製のために使用される。特に、安定化ソバデンプンは、ビスケット中のコムギ粉を部分的に置き換え、それによって、ゆっくりと消化できる炭水化物を供給し、ビスケットの口あたりを改善させる。
【0075】
安定化ソバデンプンは、大部分のデンプンより高いペースト化温度を有するクリーンラベルデンプンである。このように、これは加熱の間に完全に膨潤せず、低水分系、例えば、ビスケット中で加熱された後で、ゆっくりとした消化特性のいくらかを保持する。したがって、このようなビスケットを使用して、満腹感を延長し得る(例えば、食事代替品又は持ち帰りの食事)。
【0076】
さらに、これは部分的に膨潤及び/又は糊化されるため、これはビスケットの口あたりを低下させず、それどころか改善させることができる。
【0077】
特定の実施形態では、安定化ソバデンプンは、ビスケットの約0.1~約35重量%、好ましくは約2~約10重量%、より好ましくは約4~約8重量%の量で使用される。
【0078】
本発明を下記の図面及び実施例によってこれから例示し、これらは本発明を説明することを意図し、決してその範囲を限定することを意図しないことが理解される。
【実施例】
【0079】
実施例1
乾燥天然ソバデンプン、天然エンドウマメデンプン及び天然トウモロコシデンプン(各100g)を、過剰な水(デンプンの重量の2倍超)にそれぞれ懸濁させた。次いで、3つの水性懸濁液を、55℃、58℃、60℃及び63℃にて逐次的に水浴において加熱した(熱改質);それぞれの温度を、少なくとも1時間30分保持した。
【0080】
サンプリングを行い、その後、温度を上昇させた。サンプリングの後、全てのデンプン試料を真空濾過して、過剰な水を除去し、12%以下の水分割合を得るまでオーブン中で50℃にて乾燥させた。次いで、デンプン試料を室温にて数日貯蔵し、その後、DSC分析を行った。各試料(2~3mg)を、デンプンの重量の3倍で水と混合した。混合物を、アルミニウムパン中に密封した。パンを少なくとも1時間平衡化させ、次いで、デンプンの糊化特性を得るために10℃/分で10℃から100℃に加熱した。
【0081】
デンプン老化特性を得るために、4℃での7日の貯蔵の後、パンを室温にて少なくとも1時間平衡化させ、同じ温度範囲及び加熱速度でDSCを使用して再分析した。デンプン老化は、糊化の後のデンプン分子の再結晶化である。老化の速度は、デンプンゲルのガラス転移温度超の低温にて、例えば、冷蔵温度にて最も高い。デンプン老化は、食品のテクスチャ、例えば、増加した粘度、ゲル生成、低減した透明度及びシネレシスを変化させることができる。
【0082】
DSC結果を、下記の表において要約する。
【0083】
【0084】
これらの結果に基づいて、ソバ、トウモロコシ及びエンドウマメの天然デンプンの63℃までの温度への段階的な加熱は、それらのそれぞれの糊化温度を上昇させるようである。
【0085】
3つのデンプンの全ての糊化温度は、加熱処理温度と共に上昇し、これは、より高い加熱処理温度が、デンプンのより高い熱抵抗をもたらすことを意味する。このように、熱改質されたデンプンの顆粒は、特に、高温にて、厳しい加工処理を乗り切り、加工の間にデンプン糊の粘度を維持することができる(ずり流動化なし)。しかし、より高い熱抵抗はまた、より低い程度の顆粒の膨潤を意味することができ、これは特定の加工温度にてデンプン糊の粘度を減少し得、粘稠化した食料製品のために望ましくないことがある。
【0086】
3つのデンプンの開始温度は、同じ加熱処理の後で同様である。一般に、熱改質されたトウモロコシデンプン及び熱改質されたエンドウマメデンプンは、熱改質されたソバデンプンより高い終了温度を有する。
【0087】
また、58℃超で熱改質されたソバデンプンは、天然ソバデンプンと比較して、糊化のより顕著なエンタルピー変化の減少を有するようであり、これは、58℃超で熱改質されたソバデンプンが部分的糊化を経ることを意味する。この現象は、63℃まで熱改質された対応するエンドウマメ及びトウモロコシデンプンについて明らかではない。
【0088】
全ての糊化デンプン(熱改質されたデンプンを含めた)は、貯蔵の間に、特に、低温にて老化を受ける。実際、糊化され貯蔵されたデンプンは、(老化デンプンの)同様の融解温度を有する。エンタルピー変化はデンプンに依存するが、加熱処理に対してより依存しない。天然ソバデンプン及び熱改質されたソバデンプンの両方は、天然エンドウマメデンプン及び熱改質されたエンドウマメデンプン並びに天然トウモロコシデンプン及び熱改質されたトウモロコシデンプンと比較して、最も低い程度の老化を示す。ソバデンプンは、24~32%の間に含まれる老化割合を有する(DSC分析の前の高度の事前糊化によって、63℃にて熱改質されたソバデンプンを除いて)。エンドウマメデンプンは、最も高い程度の老化を示す。
【0089】
それぞれの(糊化されていない)試料のペースト化特性を、rapid visco-analyzer(RVA)を使用して測定した(
図1を参照されたい)。ペースト化特性は、加熱の間に顆粒デンプンが粘性のペーストを生じさせる能力、その後のずり及び冷却によるさらなる粘度変化である。良好なペースト化特性を有するデンプンは、高温でのずりによる極度の粘度変化、特に、ずり流動化又はブレークダウンとしてまた公知の粘度の減少を示さない。冷却の間に粘度を増加させることは、デンプンが粘稠化剤として使用される場合、ペーストはより長い貯蔵の間にゲルを形成する(老化)ため望ましくない。
【0090】
RVA分析を13分間行った。各デンプン試料(2gの乾重量)を水と混合し、全部で25g(8%デンプン懸濁液)を得た。これを50℃にて1分間等温加熱し、12℃/分で95℃へと上昇させ、95℃にて2.5分間保持し、50℃へと12℃/分で冷却し、最終的に、50℃にて2分間保持した。パドルの撹拌スピードを、960rpmに最初の10秒間設定し、次いで、分析の残りを通して160rpmへと減少させた。
【0091】
RVA結果を、下記の表において要約する。
【0092】
【0093】
RVA結果に基づいて、pH(pH約5)を調節することなしに、熱改質されたソバデンプンは、熱改質されたエンドウマメデンプン及び熱改質されたトウモロコシデンプンと比較してより高いペースト化温度を有するようである。ペースト化温度は、粘度が生じ始める温度である。熱改質されたソバデンプンは、等温加熱及びずりの間に、熱改質された
エンドウマメデンプン及び熱改質されたトウモロコシデンプンに反して、無粘度又は非常に低粘度のブレークダウン(又はずり流動化)を有する。本発明による熱改質されたソバデンプンは、対応するエンドウマメデンプン及びトウモロコシデンプンと比較してより高い熱抵抗及びずり抵抗を示すことをこれは意味する。
【0094】
また、58℃にて熱改質されたソバデンプン及び60℃にて熱改質されたものの間でRVAプロファイルについて明らかな差異は存在しないようである。
【0095】
58℃及び60℃にて熱改質されたソバデンプンをまた、出願人によって販売されている商標CLEARAM(登録商標)下で市販されている異なる架橋されたデンプンと比較した(
図2を参照されたい)。CLEARAM(登録商標)CRは、ホスフェート架橋ヒドロキシプロピル化ワキシートウモロコシデンプン範囲であり、異なるナンバーコードは、架橋及び置換の程度を表す。熱改質されたソバデンプンの高いペースト化温度によって示されるように、これはCLEARAM(登録商標)CR範囲より高い熱抵抗を有する。加熱及びずりの間の粘度安定性は、高い架橋度を有するもの(CLEARAM(登録商標)CR4015)と同様である。
【0096】
RVA結果を、下記の表において要約する。
【0097】
【0098】
実施例2
デンプンを、400gのソバのひき割りから抽出した。タンパク質及び繊維の除去の後、デンプンスラリー(概ね250gのデンプン及び700gの水)を、水浴において逐次
的に55℃及び58℃にて加熱した。各温度を少なくとも3時間保持した。
【0099】
58℃での熱処理の後、デンプン試料の全てを、真空濾過し、次いで、水に再懸濁させ、その後、12%以下の水分割合を得るまで約58℃にて流動床乾燥器を使用して乾燥させた。
【0100】
次いで、デンプン試料を、室温にて数日貯蔵し、その後、DSC分析を行った。各試料(2~3mg)を、デンプンの重量の3倍で水と混合した。混合物を、アルミニウムパン中で密封した。デンプンの糊化特性を得るために、パンを少なくとも1時間平衡化させ、次いで、10℃/分で10~100℃に加熱した。
【0101】
デンプンの老化特性を得るために、4℃での7日の貯蔵の後、パンを室温にて少なくとも1時間平衡化させ、同じ温度範囲及び加熱速度でDSCを使用して再分析した。
【0102】
DSC結果を、下記の表において要約する。
【0103】
【0104】
熱改質されたソバデンプンは、さらなる加熱処理を伴わない天然ソバデンプンより高い糊化温度を有する。天然ソバデンプン及び熱改質されたソバデンプンの両方は、老化する低い傾向を示す。
【0105】
それぞれの(非糊化)試料のペースト化特性は、2つの異なる方法による全部で13分間及び24分間のRapid Visco-Analyzer(RVA)を使用して測定した。両方の方法について、それぞれのデンプン試料(2gの乾重量)を水と混合し、全部で25g(8%デンプン懸濁液)を得た。
【0106】
第1の方法(全部で13分)について、試料を、50℃にて1分間等温加熱し、12℃/分で95℃に上昇させ、95℃にて2.5分間保持し、12℃/分で50℃に冷却し、最終的に、50℃にて2分間保持した。パドルの撹拌スピードは、最初の10秒間960rpmに設定し、次いで、分析の残りを通して160rpmへと減少させた。
【0107】
第2の方法(全部で23分)について、試料を、50℃にて1分間等温加熱し、6℃/分で95℃に上昇させ、95℃にて5分間保持し、6℃/分で50℃に冷却し、最終的に、50℃にて2分間保持した。パドルの撹拌スピードは、最初の10秒間960rpmに設定し、次いで、分析の残りを通して160rpmへと減少させた。
【0108】
第1の方法からのRVA結果を、下記の表において要約する。
【0109】
【0110】
第2の方法からのRVA結果を、下記の表において要約する。
【0111】
【0112】
熱改質されたソバデンプンは、デンプン抽出方法の間のさらなる加熱処理を伴わずに、天然ソバデンプンより高いペースト化温度及び低いブレークダウン粘度を有する。
【0113】
実施例3
2つのパイロット治験から抽出されたソバデンプン試料を使用して、熱改質されたデンプンを調製した。デンプン抽出の間に、ソバのひき割りの湿式粉砕によって調製された水性懸濁液を、それぞれ、第1及び第2のパイロット治験のために、45℃及び50℃にて加熱し、その後、デンプン及び繊維を含有する重い画分から、タンパク質、可溶性炭水化物及び塩を含有する軽い画分を分離する分画ステップを行った。加熱の目的は、タンパク質の可溶化を促進し、微生物の成長を防止することである。
【0114】
それぞれの抽出されたデンプン(300g)を、700mLの水と混合し、30重量%の濃度で水性懸濁液を調製した。懸濁液を、水浴において、50℃にて30分間、次いで、53℃にて3時間、それに続いて55℃にて一晩加熱した。サンプリングを行い、その後、温度を上昇させた。サンプリングの後、デンプン試料の全てを真空濾過し、45℃にてオーブンにおいて一晩乾燥させた。次いで、乾燥した熱改質されたソバデンプンを、粉末にした。
【0115】
天然エンドウマメ、トウモロコシ、及びワキシートウモロコシデンプンを、同様に熱処理し、pH3及び6での熱抵抗及びずり抵抗試験のための比較として使用した。
【0116】
熱抵抗及びずり抵抗(
図3を参照されたい)について、デンプンスラリー(7.4%の乾燥物質)を、50℃にて1分間等温加熱し、95℃へと12℃/分で上昇させ、95℃にて15分間保持し、50℃へと12℃/分で冷却し、最終的に、50℃にて1.6分間保持した。パドルの撹拌スピードを、960rpmで最初の10秒間設定し、次いで、分析の残りを通して160rpmへと減少させた。分析をpH3.0で繰り返し、クエン酸粉末を加えることによって調節した。
【0117】
熱抵抗/ずり抵抗(%)は、95℃での等温加熱の終わりにおける粘度及びピーク粘度の差異をピーク粘度で割る(100%を乗ずる)として計算する。
【数1】
【0118】
pH約6及び3でのRVA結果を、下記の表において要約する。
【0119】
【0120】
上記の結果に基づいて、pH約6で、熱改質されたソバデンプンは、天然ソバデンプンより高いペースト化温度を有する。同様の効果がまた、エンドウマメデンプンから観察されるが、トウモロコシデンプン及びワキシートウモロコシデンプンからはこれは明らかではない。熱改質されたソバデンプン及び熱改質されたエンドウマメデンプンは、pH3及
び6の両方で、熱改質されたトウモロコシデンプン及び熱改質されたワキシートウモロコシデンプンより高い熱抵抗及びずり抵抗を有する。本発明の方法による熱改質されたソバデンプンは、試験したデンプン試料の全ての中で、pH3及び6の両方で最も高いペースト化温度を有する。
【0121】
実施例4
RVA及びDSC分析は、実施例3において記述した2つのパイロット治験からの熱改質されたソバデンプン上で行い、ヨーグルト用途のために知られている従来技術の異なる市販の改質デンプンと比較した。DSC方法は、実施例1及び2におけるものと同じである。
【0122】
ヨーグルト用途について知られている従来技術の市販の改質デンプンは、下記の通りである。
【0123】
CLARIA+(登録商標)は、Tate & Lyleによって販売されているクリーンラベル抑制デンプンである。NOVATION2300(登録商標)は、Ingredionによって販売されているクリーンラベル抑制デンプンである。両方は、ワキシートウモロコシベースのものである。
【0124】
CLEARAM(登録商標)CJ5025は、出願人によって販売されており、ヨーグルト用途のために特に生成されたホスフェート架橋アセチル化ワキシートウモロコシデンプン(化学的に改質されたデンプン)に対応する。
【0125】
DSC結果を、下記の表において要約する。
【0126】
【0127】
第1のパイロット治験からの天然ソバデンプンは、第2のパイロット治験からの糊化温度より僅かに低い糊化温度を有する。これは、第2のパイロット治験においてデンプン抽出方法のために使用される加熱温度が、第1のパイロット治験における加熱温度より高かったためである。しかし、熱改質されたソバデンプンの糊化温度は、デンプンを同じ温度で処理したとき、2つのパイロット治験について同様である。
【0128】
53℃にて熱改質されたソバデンプンは、55℃にて熱改質されたものより僅かに低い糊化温度を有する。前者は、NOVATION(登録商標)2300と同様の糊化開始温度を有し、後者は、CLARIA+(登録商標)と同様の糊化開始温度を有する。
【0129】
天然ソバデンプンから調製した老化デンプンは、熱改質されたソバデンプンから調製したものより僅かに低い融解温度を有する。53℃及び55℃にて熱改質されたソバデンプンは、同様の融解温度の老化デンプンを有する。ワキシートウモロコシをベースとするデンプンであるCLARIA+(登録商標)、NOVATION(登録商標)2300及びCLEARAM(登録商標)CJ5025は、天然ソバデンプン及び熱改質されたソバデンプンより僅かに高い融解温度の老化デンプンを有する。市販のデンプンの中で、CLEARAM(登録商標)CJ5025は、最も低い老化割合を示す。これは、冷蔵の間に最
も高い安定性を示すことをこれは意味する。本発明の方法による熱改質されたソバデンプンは、一般に、CLEARAM(登録商標)CJ5025、CLARIA+(登録商標)及びNOVATION(登録商標)2300より低い老化割合を有する。このように、本発明の方法による熱改質されたソバデンプンは、市販のワキシートウモロコシをベースとする化学的に改質されたデンプン、例えば、CLEARAM(登録商標)CJ5025、並びにクリーンラベル改質デンプン、例えば、CLARIA+(登録商標)及びNOVATION(登録商標)2300より、冷蔵の間に高い安定性を示す。
【0130】
RVAのために、試料を50℃にて1分間等温加熱し、6℃/分で95℃へと上昇させ、95℃にて5分間保持し、6℃/分で50℃へと冷却し、最終的に50℃にて2分間保持した。パドルの撹拌スピードを960rpmで最初の10秒間設定し、次いで、分析の残りを通して160rpmへと減少させた。
【0131】
RVA結果を、下記の表において要約する。
【0132】
【0133】
上記のRVA結果に基づいて、熱改質されたソバデンプンは、天然ソバデンプンより高いペースト化温度を有し、全てのソバデンプンは、CLARIA+(登録商標)、NOVATION(登録商標)2300及びCLEARAM(登録商標)CJ5025より高い
ペースト化温度を有する。これは、熱改質されたソバデンプンは、天然ソバデンプン、CLARIA+(登録商標)、NOVATION(登録商標)2300及びCLEARAM(登録商標)CJ5025と比較して、ずりを伴う加熱処理の後で、それらの顆粒構造を維持するのに最良のデンプン材料であることを意味する。熱改質されたソバデンプンは、ワキシートウモロコシをベースとする市販のものより低いピーク及び最終粘度を有するが、これらは、より低いブレークダウン(さらなるずりを伴う減少する粘度)又はより高いずり抵抗を有する。さらに、高度に膨潤した顆粒は、ずり流動化に対して高度に影響されやすく、したがって、ワキシートウモロコシをベースとするクリーンラベルデンプンは、厳しい食品加工、例えば、ヨーグルト作製プロセスの間の均質化によって容易に崩壊し得る。
【0134】
RVAをまた、ヨーグルト作製のための一般のプロセス(予備加熱、均質化及び殺菌)後で熱改質されたソバデンプン上で行い、天然ソバデンプン及び異なる市販のデンプンと比較した(RVAの結果について
図4を参照されたい)。各デンプンを水と混合し、2.5%デンプン懸濁液を作製した。スクロース(7.6%)を、懸濁液に加えた。懸濁液を65℃にて事前加熱し、18MPaでホモジナイズし、85℃にて10分間殺菌し、最終的に4℃にて7日間貯蔵した。それぞれのプロセスの終わりに、試料を粘度測定(RVA及びブルックフィールド粘度計の両方による)ために集めた。
【0135】
RVA結果は、天然ソバデンプン及び熱改質されたソバデンプンが、予備加熱、均質化、殺菌、及び低温貯蔵の後でそれらの顆粒構造を保持することを示し、これは、加熱の間の粘度の増加によって示される。CLARIA+(登録商標)及びNOVATION(登録商標)2300は、それぞれ、均質化段階及び殺菌段階の後でそれらの顆粒構造を失った。CLEARAM(登録商標)CJ5025は、予備加熱段階の後で膨潤するか、又は粘度を生じさせるその能力を失うようである。
【0136】
低温粘度(加熱前の50℃での粘度)は、低温貯蔵の前に試験したデンプン試料の全てについて同様である(20cP未満)。しかし、CLARIA+(登録商標)及びNOVATION(登録商標)2300の低温粘度は、低温貯蔵の後に20cP超に増加し、デンプン老化がこれらの市販のデンプンで起こることを示す。この現象は、天然ソバデンプン及び熱改質されたソバデンプンからはより明らかではない。天然ソバデンプン及び熱改質されたソバデンプンが、低温貯蔵の間にここで試験された市販の改質デンプンより少ない老化を受け、ヨーグルト作製のためのものよりさらに厳しい食品加工処理のために使用することができることをこれは意味する。
【0137】
ブルックフィールド粘度計の結果を、下記の表において要約する。
【0138】
【0139】
均質化の後、CLEARAM(登録商標)CJ5025は、最も高い粘度を有し、一方、他は、同様の粘度を示す。殺菌の後、CLARIA+(登録商標)は、最も高い粘度を示し、CLEARAM(登録商標)CJ5025は、2番目に高い粘度を有する。7日の低温貯蔵の後、全ての試料は、デンプン老化によって増加した粘度を示す。CLARIA+(登録商標)は、粘度の最も大きな増加を示し、これは、低温貯蔵の間の低い安定性を示す。他方、他のデンプンは、概ね30~34Pa・sにて同様の粘度を示し、これは、熱改質されたソバデンプンを含めたこれらのデンプン試料が、低温貯蔵の間に同様の安定性を有することを意味し、これは、ヨーグルト作製のために望ましい。
【0140】
天然ソバデンプン及び熱改質されたソバデンプンは、予備加熱、均質化、及び殺菌の後、それらの顆粒構造をまだ保持し、一方、CLARIA+(登録商標)、NOVATION(登録商標)2300、及びCLEARAM(登録商標)CJ5025は、同じ加工処理の後で、高度に膨潤した顆粒及び顆粒フラグメントを示すことを、顕微鏡画像は示した(
図5を参照されたい)。
【0141】
実施例5:ヨーグルト中の安定化デンプン
この実施例は、本発明による熱改質されたソバデンプン、市販のクリーンラベルデンプン(従来技術による)又は化学的に架橋されたデンプンを含有するヨーグルト試料の調製について記載する。
【0142】
使用するデンプン:
(本発明による)安定化ソバデンプンは、下記のように調製した。デンプンは、400gのソバのひき割りから抽出した。タンパク質及び繊維の除去の後、デンプンスラリー(700gの水中の概ね250gのデンプン)を、水浴において55℃にて3時間及び58℃にて3時間逐次的に加熱した。デンプン試料を真空濾過し、次いで、水に再懸濁させ、その後、12%以下の水分割合を得るまで約58℃にて流動床乾燥器を使用して乾燥させた。
【0143】
実施例4において従前に記述したように、CLEARAM(登録商標)CJ5025及びNOVATION(登録商標)2300は市販のデンプンである。
【0144】
実施例4におけるRVA結果に基づいて(表9)、熱改質されたソバデンプンは、NOVATION(登録商標)2300及びCLEARAM(登録商標)CJ5025より高いペースト化温度を有する。実際、熱改質されたソバデンプンは、概ね82℃のペースト化温度を有し、NOVATION(登録商標)2300及びCLEARAM(登録商標)CJ5025のペースト化温度は、概ね68℃である。
【0145】
ヨーグルトプロセス予備加熱温度は、概ね60~70℃、より正確に65℃であり、したがって、デンプン粒が過剰に膨潤せず、均質化プロセスにおいて厳しいずりを許容することができることを確かめるために、デンプンのペースト化温度は、65℃超であるべきである。このように、本発明の方法によって得られる熱改質されたソバデンプンは最良の候補であり、顆粒構造は予備加熱プロセスを乗り切る。
【0146】
重量パーセントでのヨーグルト作製のための成分は、下記の通りであった。
【0147】
【0148】
ヨーグルトを得るために従った方法は、下記の通りである。
i.全ての成分を均質に撹拌;
ii.約5分を要する、室温から65℃への混合物の予備加熱;
iii.18Mpaでの均質化;
iv.95℃での5分間の加熱;
v.約15~20分を要する、95℃から43℃への冷却;
vi.ヨーグルト菌株の添加;
vii.43℃及びpH4.6での5~6時間の発酵;
viii.1分間のスムージング。
【0149】
ヨーグルト作製プロセスの異なる段階:予備加熱の前、65℃での予備加熱の後、及び均質化の後において、デンプンの形態をまた顕微鏡下で観察した(
図6を参照されたい)。ルゴール溶液(ヨウ素/ヨウ化カリウム溶液)を使用して、明視野モードのためにデンプン粒を染色した。偏光を使用して、デンプン粒の複屈折を観察し、その天然の結晶構造を同定した。
【0150】
本発明による熱改質されたソバデンプンは、容易に糊化されず、65℃での予備加熱の後及び均質化の後、その天然の結晶及び顆粒構造の大部分を保持し、これは、CLEAR
AM(登録商標)CJ5025(比較デンプン)から観察されるものと同様である。
【0151】
実施例6
この実施例は、全粒コムギ粉(対照)、本発明による安定化ソバデンプン、コムギデンプン又はソバ粉を含有するビスケット試料の調製について記載する。
【0152】
ソバデンプンは、実施例5によって調製した。
【0153】
全粒コムギ粉、コムギデンプン又はソバ粉
重量パーセントでのビスケット作製のための成分は、下記の通りであった。
【0154】
【0155】
量は、重量パーセントで表す。
【0156】
ビスケットを得るために従う方法は、下記の通りである。
i.全ての乾燥成分を均質にブレンドし、均一な乾燥混合物を形成する;
ii.乳、ミルクフレーバー、レシチン、グルコースシロップ、及び植物性油を乾燥混合物に加え、撹拌し、均一な生地を形成する;
iii.生地を3mm厚さにローラーで延ばし、これを環状に形づくる;
iv.190℃での最高温度及び160℃の最低温度を伴うオーブンにおいて、形づくっ
た生地を10分間焼く;
v.ビスケットを室温へと冷却し、それらをプラスチック又はアルミニウムのパッケージ中に密封する。
【0157】
ビスケットのテクスチャは、三点曲げ試験(HDP/3PB)及び穿刺試験(P/2)を使用することによってTA-TX2テクスチャ分析器を使用して測定した。
【0158】
測定パラメーターを、下記の表13において列挙する。
【0159】
【0160】
消化速度(k)及び総消化性の計算を含めた消化性パラメーターを、Yuらの方法(Food Chemistry,2018,241:493~501)に従って測定した。結果を、
図7において示す。
【0161】
水分含有量は、105℃にて水分分析器(MA45C、Sartorius)セットを使用して測定した。
【0162】
水分活性(aw)は、awメーター(HygroLab2、Rotronic)を使用して測定した。
【0163】
結果を、下記の表において要約する。
【0164】
【0165】
これらの結果に基づいて、コムギデンプンで作製されたビスケットは、最も低い平均硬度を示したようであり、その後にソバデンプンを有するものが続く。
【0166】
コムギデンプンで作製されたビスケットについて最も高いクリスピー感及び脆弱性指数が観察され、一方、ソバデンプン及びソバ粉で作製されたものは、同様の値を示した。
【0167】
コムギ粉で作製された対照ビスケットは、最も高いデンプン消化速度及び総デンプン消化性を示した。最も低い総デンプン消化性がソバデンプンで作製されたビスケットについて観察され、一方、デンプン消化性の最も低い率が、ソバ粉を有するビスケットについて観察されたが、その後にソバデンプンを有するものが続く。コムギデンプン及びソバ粉で作製されたビスケットは、非常に同様の総デンプン消化性、すなわち、対照ビスケット、及びソバデンプンで作製されたビスケットの間の値を有した。
【0168】
ソバデンプンで作製されたビスケットは、最も低い水分含有量及び水分活性を有した。このように、ソバデンプンで作製されたビスケットは、最も長い保存寿命を有する。さらに、ソバデンプン及びコムギデンプンで作製されたビスケットの厚さは、対照ビスケットと同様であったが、これは、ソバ粉で作製されたものより大きかった。
【0169】
結論として、ソバデンプンで作製されたビスケットは、コムギ粉で作製された対照ビスケットより良好なテクスチャ、並びにコムギデンプン及びソバ粉で作製されたものと比較した最良の外観及び消化性指数を示した。