(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】半導体結晶成長装置
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20220707BHJP
C30B 15/00 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
C30B29/06 502C
C30B29/06 502G
C30B15/00 Z
(21)【出願番号】P 2020173757
(22)【出願日】2020-10-15
【審査請求日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】201910990351.4
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516145552
【氏名又は名称】上海新昇半導體科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】沈 偉民
(72)【発明者】
【氏名】王 剛
(72)【発明者】
【氏名】▲どん▼ 先亮
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 瀚藝
(72)【発明者】
【氏名】趙 言
【審査官】篠原 法子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-075785(JP,A)
【文献】特開2014-080302(JP,A)
【文献】特表2002-538064(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104328485(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体結晶成長装置であって、
炉本体;
前記炉本体の内部に設置され、シリコン溶融体を収納するための坩堝;
前記炉本体の頂部に設定され、前記シリコン溶融体のうちからシリコン結晶棒を引き上げるための引き上げ装置;
バレルの形状を有し、垂直方向に沿って前記炉本体の内部における前記シリコン溶融体の上方に設置される導流筒;及び
前記坩堝の内部における前記シリコン溶融体に対して水平方向の磁場を印加する磁場印加装置を含み、
前記引き上げ装置が、前記シリコン結晶棒を引き上げて垂直方向において前記導流筒を通過させ、
前記シリコン溶融体の温度が、前記磁場の印加方向において、前記磁場の印加方向に垂直な方向に沿う温度よりも高い温度となる前記半導体結晶成長装置において、前記シリコン結晶棒を囲む前記導流筒の内壁の底部に凹溝を設けることで、前記導流筒の、前記磁場の印加方向における前記シリコン結晶棒との間の距離を、前記磁場の印加方向に垂直な方向における前記シリコン結晶棒との間の距離よりも大きくする、半導体結晶成長装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体結晶成長装置であって、
前記凹溝が、前記磁場の印加方向において前記導流筒の相対する両側に設けられる、半導体結晶成長装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体結晶成長装置であって、
前記凹溝が、前記導流筒の円周方向に沿って設けられる円弧状凹溝として設置される、半導体結晶成長装置。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体結晶成長装置であって、
前記導流筒が内筒、外筒及び断熱材を含み、
前記外筒の底部が前記内筒の底部の下方に延伸して前記内筒の底部とともに、前記内筒と前記外筒との間にキャビティを形成し、
前記断熱材が前記キャビティの内部に設置される、半導体結晶成長装置。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体結晶成長装置であって、
前記凹溝が前記内筒の内壁の底部に設けられる、半導体結晶成長装置。
【請求項6】
請求項4に記載の半導体結晶成長装置であって、
前記導流筒が挿入部品を含み、
前記挿入部品が突出部及び挿入部を含み、
前記挿入部が、前記内筒の底部の下方に延伸する前記外筒の底部の部分と、前記内筒の底部との間に挿入し、
前記突出部が前記内筒の底部の内側に位置する、半導体結晶成長装置。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体結晶成長装置であって、
前記凹溝が前記突出部の底部に設けられる、半導体結晶成長装置。
【請求項8】
請求項3に記載の半導体結晶成長装置であって、
前記円弧状凹溝の円弧の長さの範囲が20mm~200mmである、半導体結晶成長装置。
【請求項9】
請求項1に記載の半導体結晶成長装置であって、
前記凹溝の深さの範囲が2mm~20mmである、半導体結晶成長装置。
【請求項10】
請求項1に記載の半導体結晶成長装置であって、
前記凹溝の底部と側壁との間の夾角が90°以上である、半導体結晶成長装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体技術分野に関し、具体的には、半導体結晶成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チョクラルスキー法(CZ)が半導体及び太陽エネルギー用単結晶シリコンを調製するための重要な方法であり、炭素材料からなる熱場を利用して、坩堝に配置された高純度シリコン材料を加熱して溶融し、その後、シード結晶を溶融体に浸し、そして、一連のプロセス(シードリング(seeding)、ショルダーリング(shouldering)、等径処理、仕上げ、冷却)を経て、最終的に単結晶棒を得ることができる。
【0003】
CZ法を使用する半導体単結晶シリコン又は太陽エネルギー用単結晶シリコンの結晶成長において、結晶及び溶融体の温度分布は、結晶品質及び成長速度に直接影響する。CZ結晶の成長中、溶融体に熱対流が存在するため、微量不純物の分布が不均一になり、成長ストライプが形成され得る。よって、結晶を引っ張る過程では、溶融体の熱対流及び温度変動をどのように抑制するかが広く懸念されている問題である。
【0004】
磁場発生装置下の結晶成長(MCZ)技術では、導体としてのシリコン溶融体に磁場を加えることにより、溶融体にその移動方向と反対するローレンツ力を受けさせることで、溶融体の対流を妨げ、溶融体の粘度を上げ、酸素、ホウ素、アルミニウムなどの不純物が石英坩堝から溶融体に進入することによる結晶への進入量を減らすことができる。その結果、成長したシリコン結晶は、制御された、低い酸素含有量から高く広い範囲までの酸素含有量を有し、不純物ストライプを減少させることができる。よって、MCZ技術は、半導体結晶成長プロセスで広く使用されている。1つの代表的なMCZ技術が磁場結晶成長(HMCZ)技術であり、それは、半導体溶融体に磁場を与えることであり、大型で要求の厳しい半導体結晶成長に広く適用されている。
【0005】
磁場装置下の結晶成長(HMCZ)技術では、結晶成長用の炉本体や熱場、坩堝(シリコン結晶も含む)はすべて、円周方向において可能な限り形状が対称的であり、また、坩堝及び結晶の回転を利用することにより、円周方向における温度分布は均一になる傾向がある。しかし、磁場印加過程では、印加する磁場の磁力線が石英坩堝内のシリコン溶融体を一端から他端まで平行に通過し、回転中のシリコン溶融体により生成されるローレンツ力が円周方向のどこでも同じでないので、シリコン溶融体の流れ及び温度分布は円周方向で不一致である。
【0006】
図1A及び
図1Bは、半導体結晶成長装置において結晶成長した結晶と溶融体との界面の下方の温度分布を示す図である。
図1Aは、坩堝内のシリコン溶融体が水平面で分布しているテストポイントを示しており、そのうち、溶融体の液面の下方の25mmであって、中心までの距離L=250mmであるところで、θ=45°の角度ごとに1つのポイントをテストする。
図1Bは、
図1AにおいてX軸と角度θを成す各ポイントに対してシミュレーション計算及びテストを行うことで取得された温度分布曲線であり、そのうち、実線は、シミュレーション計算を採用して得られた温度分布を示し、点線は、テストの方法を採用して得られた温度分布を示す。
図1Aでは、矢印Aは、坩堝の回転方向が反時計回りであることを示し、矢印Bは、磁場方向がY軸方向に沿って横向きに坩堝の直径を通過することを示す。
図1Bから分かるように、半導体結晶成長過程では、データがシミュレーション計算又はテストの方法のどちらから取得されたかに関係なく、すべては、半導体結晶成長過程において、半導体結晶と溶融体との界面の下方の温度が角度の変化に伴って円周上で変動することを反映している。
【0007】
ボロンコフ(Voronkov)結晶成長理論によれば、結晶と液面との界面における熱平衡方程式は、以下の通りである。
【0008】
PS*LQ=Kc*Gc-Km*Gm
ここで、LQは、シリコン溶融体のシリコン結晶への相転移のポテンシャル(Potential)であり、Kc及びKmは、それぞれ、結晶及び溶融体の熱伝導係数を表し;Kc、Km及びLQはすべて、シリコン材料の物性パラメータであり;PSは、結晶の引っ張り方向における結晶化速度を表し、結晶の引き上げ速度と略同じであり;Gc及びGmは、それぞれ、界面のところでの結晶及び溶融体の温度勾配(dT/dZ)である。半導体結晶成長過程では、半導体結晶と溶融体との界面の下方の温度が円周角の変化に伴って周期的に変動し、即ち、界面での結晶及び溶融体の温度勾配(dT/dZ)としてのGc及びGmが変動するので、円周角方向における結晶の結晶化速度PSは周期的な変動を示し、これは結晶成長品質の制御に不利である。
【0009】
以上のことに鑑み、従来技術の問題を解決するために、新しい半導体結晶成長装置を提案する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、新しい半導体結晶成長装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この部分には、一連の簡略化された概念が導入されており、これは、「発明を実施するための形態」の部分にさらに詳細に説明される。また、この部分は、保護を要求する技術案の主な特徴及び必要な技術的特徴を制限しようとすることを意味するものでなく、保護を要求する技術案の保護の範囲を確定しようとすることを意味するものでもない。
【0012】
従来技術の問題を解決するために、本発明は半導体結晶成長装置を提供し、前記装置は、
炉本体;
前記炉本体の内部に設置され、シリコン溶融体を収納するために用いられる坩堝;
前記炉本体の頂部に設置され、前記シリコン溶融体のうちからシリコン結晶棒を引き上げるために用いられる引き上げ装置;
バレルの形状を有し、且つ垂直方向に沿って前記炉本体の内部における前記シリコン溶融体の上方に設置される導流筒であって、前記引き上げ装置は前記シリコン結晶棒を引き上げて垂直方向において前記導流筒を通過させる、導流筒;及び
前記坩堝の内部における前記シリコン溶融体に対して水平方向の磁場を印加するために用いられる磁場印加装置を含み、
前記導流筒の内壁の底部に凹溝が設けられ、前記磁場の印加方向において前記導流筒と前記シリコン結晶棒との間の距離が、前記磁場の印加方向に垂直する方向において前記導流筒と前記シリコン結晶棒との間の距離よりも大きい。
【0013】
例示的に、前記凹溝は、前記磁場の印加方向に沿って前記導流筒の相対する両側に設けられる。
【0014】
例示的に、前記凹溝は、前記導流筒の円周方向に沿って設けられる円弧状凹溝として設置される。
【0015】
例示的に、前記導流筒は、内筒、外筒及び断熱材を含み、そのうち、前記外筒の底部は、前記内筒の底部の下方に延伸して前記内筒の底部と共に、前記内筒と前記外筒との間にキャビティ(中空)を形成し、前記断熱材は、前記キャビティの内部に設置される。
【0016】
例示的に、前記凹溝は、前記内筒の内壁の底部に設けられる。
【0017】
例示的に、前記導流筒は、挿入部品を含み、前記挿入部品は、突出部及び挿入部を含み、前記挿入部は、前記内筒の底部の下方に延伸する前記外筒の底部の部分と、前記内筒の底部との間の位置に挿入し、前記突出部は、前記内筒の底部の内側に位置する。
【0018】
例示的に、前記凹溝は、前記突出部の底部に設けられる。
【0019】
例示的に、前記円弧状凹溝の円弧の長さの範囲は、20mm~200mmである。
【0020】
例示的に、前記凹溝の深さの範囲は、2~20mmである。
【0021】
例示的に、前記凹溝の底部と側壁と間の夾角は、90°以上である。
【0022】
本発明による半導体結晶成長装置は、導流筒の内壁の底部に凹溝を設けることで、前記磁場の方向における前記導流筒の底部と前記シリコン結晶棒と間の距離を、前記磁場の方向に垂直な方向における前記導流筒の底部と前記シリコン結晶棒との間の距離よりも大きくすることができる。これにより、シリコン結晶棒とシリコン溶融体との界面の下方のシリコン溶融体の温度分布を調節することができるため、印加の磁場が原因でシリコン溶融体の温度が円周方向で分布する変動を調整することで、シリコン溶融体の温度分布の均一性を有効に改善し、結晶成長速度の均一性及び結晶引っ張り品質を向上させることができる。また、導流筒の内壁に凹溝を設けて導流筒の内壁の面積を増加させることにより、シリコン結晶棒の液面が熱を導流筒の内壁に放射して放熱する効率を向上させ、結晶引っ張り過程における結晶棒の上下温度分布の均一性及び結晶引っ張り品質を改善することができる。また、シリコン溶融体の流れ構造に対してさらに調整を行うことにより、シリコン溶融体の流れ状態を円周方向に沿ってより均一にすることができ、これは、結晶成長速度の均一性をさらに改善することができるため、結晶成長の欠陥を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
以下の図面は、ここで本発明を理解するための本発明の一部として使用される。図面では、本発明の実施例及びその説明が示され、本発明の原理を説明するために用いられる。
【
図1A】半導体結晶成長装置において結晶成長した結晶と溶融体との界面の下方の温度分布を示す図である。
【
図1B】半導体結晶成長装置において結晶成長した結晶と溶融体との界面の下方の温度分布を示すもう1つの図である。
【
図2】本発明の実施例に係る半導体結晶成長装置の構造を示す図である。
【
図3】本発明の実施例に係る半導体結晶成長装置における坩堝、導流筒及びシリコン結晶棒の断面位置配列を示す図である。
【
図4】本発明の実施例に係る半導体成長装置における導流筒の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の説明では、本発明をより完全に理解するために、多くの具体的な細部が示されている。しかし、当業者にとって、本発明はこれらの細部の1つ又は複数がなくても実施できることは容易に理解できる。また、他の例では、本発明との混同を避けるために、この分野で知られているいくつかの技術的特徴の説明が省略されている。
【0025】
本発明を完全に理解するために、以下、本発明による半導体結晶成長装置の詳細な説明が提供される。もちろん、本発明の実施は、当業者に良く知られている特定の細部に限定されない。また、本発明の好ましい実施例についての詳しい説明は以下の通りであるが、これらの詳しい説明の他に、本発明はさらに他の実施例を有しても良い。
【0026】
なお、ここで使用される用語は、具体的な実施例を説明するためのものに過ぎず、本発明による例示的な実施例を限定することを意図しない。例えば、ここで使用される場合、コンテキストが明らかに他のことを示さない限り、単数形は複数形を含むことも意図する。また、理解すべきは、本明細書において用語「含む」及び/又は「有する」が用いられるとき、前記特徴、全体、ステップ、操作、素子及び/又はアセンブリの存在を示すが、1つ又は複数の他の特徴、全体、ステップ、操作、素子、アセンブリ及び/又はそれらの組み合わせの存在又は付加を除外しないということである。
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明による例示的な実施例をより詳細に説明する。しかし、これらの例示的な実施例は、様々な形で実施することもでき、ここに記載される実施例に限定されると解釈されるべきではない。また、理解すべきは、これらの実施例は、本発明の開示を徹底的且つ完全にし、これらの例示的な実施例の概念を当業者に完全に伝えるために提供されるものであるということである。また、図面では、層及び領域の厚さがわかりやすくするために拡大されており、同じ参照符号が同じ要素を示すために使用されているため、それらの説明は省略されている。
【0028】
図2は、本発明の実施例に係る半導体結晶成長装置の構造を示す図である。半導体結晶成長装置は炉本体1を含み、炉本体1の内部には坩堝11が設置され、坩堝11の外側には坩堝11を加熱するための加熱器12が設置され、坩堝11の内部にはシリコン溶融体13が収納され、坩堝11は、石墨坩堝と、石墨坩堝の内部に套設される石英坩堝とから構成され、石墨坩堝は、加熱器の加熱を受けて石英坩堝の内部の多晶シリコン材料を溶かしてシリコン溶融体を形成させる。そのうち、各石英坩堝は、半導体成長プロセスの1つのバッチに使用され、各石墨坩堝は、半導体成長プロセスの複数のバッチに使用される。
【0029】
炉本体1の頂部には引き上げ装置14が設置される。引き上げ装置14によって駆動されることで、シード結晶がシリコン溶融体の液面から引き上げられてシリコン結晶棒10が引き上げられる。また、シリコン結晶棒10の周囲を囲むように遮熱装置も設置される。例示的に、
図1に示すように、遮熱装置は導流筒16を含み、導流筒16はバレルの形状に設置される。それは、遮熱装置として、一方では、結晶成長過程において石英坩堝及び坩堝の内部のシリコン溶融体が結晶表面に与える熱放射を遮断することで、結晶棒の冷却速度及び軸方向温度勾配を向上させ、成長した結晶の数を増やすために用いれ、他方では、シリコン溶融体の表面の熱場分布に影響することで、結晶棒の中心と辺縁の軸方向温度勾配の差が大きすぎることを避け、結晶棒とシリコン溶融体の液面との間の安定成長を保証するために用いられる。また、導流筒はさらに、結晶成長炉の上部から導入される不活性ガスを導くことで、それを比較的大きい流速でシリコン溶融体の表面を通過させ、結晶内の酸素含有量及び不純物含有量を制御する効果を達成するために用いられる。半導体結晶成長過程では、引き上げ装置14により駆動されることで、シリコン結晶棒10は垂直に上向きに導流筒16を通過することができる。
【0030】
シリコン結晶棒の安定成長を実現するために、炉本体1の底部にはさらに、坩堝11の回転及び上下移動の駆動のための駆動装置15が設置される。なお、駆動装置15が坩堝11を駆動して結晶引っ張り過程で持続に回転させることは、シリコン溶融体の熱の非対称性を低減し、シリコン結晶柱を同じ直径で成長させるためである。
【0031】
シリコン溶融体の対流を防ぎ、シリコン溶融体の粘度を増加させることで、酸素、ホウ素、アルミニウムなどの不純物が石英坩堝から溶融体に進入することによる結晶への進入量を減少させ、最終的に、成長したシリコン結晶が、制御された、低い酸素含有量から高く広い範囲までの酸素含有量を有するようにさせることで、不純物ストライプを低減するために、半導体成長装置にはさらに、炉本体の外側に設置される磁場印加装置17が坩堝の内部のシリコン溶融体に対して磁場を印加するように含まれる。
【0032】
磁場印加装置17が印加する磁場の磁力線が坩堝の内部のシリコン溶融体を一端から他端まで平行に通過し(
図2における点線矢印を参照する)、回転中のシリコン溶融体により生成されるローレンツ力が円周方向で異なるので、シリコン溶融体の流れ及び温度分布は円周方向で不一致である。そのうち、磁場方向に沿う温度は、磁場方向に垂直な方向に沿う温度よりも高い。シリコン溶融体の流れ及び温度の不一致が原因で、半導体結晶と溶融体との界面の下方の溶融体の温度が角度の変化に伴って変動する。これにより、結晶の結晶化速度PSが変動し、半導体成長速度が円周で不均一になる。これは、半導体結晶成長品質の制御に不利である。
【0033】
そのため、本発明による半導体成長装置では、導流筒16が前記シリコン結晶棒の円周方向に沿うように設置され、前記導流筒と前記シリコン結晶棒との間には異なる距離がある。
【0034】
シリコン結晶棒の円周に沿って導流筒の側壁とシリコン結晶棒との間の距離が異なるように設置されることで、磁場の方向における前記導流筒の底部と前記シリコン結晶棒との間の距離は、前記磁場の方向に垂直な方向における前記導流筒の底部と前記シリコン結晶棒との間の距離より大きくなる。距離が比較的大きい箇所では、シリコン溶融体の液面からシリコン結晶棒及び導流筒の内側へ放射される熱が多く、距離が比較的小さい箇所では、シリコン溶融体の液面からシリコン結晶棒及び導流筒の内側へ放射される熱が少ないため、距離が比較的大きい箇所でのシリコン溶融体の液面の温度は、距離が比較的小さい箇所でのシリコン溶融体の液面の温度に比べて大きく減少する。これは、印加の磁場がシリコン溶融体の流れに与える影響が原因で磁場の印加方向における温度が磁場の印加方向に垂直な方向における温度よりも高いという問題を解決することができる。これにより、導流筒の底部とシリコン結晶棒との間の距離を設置することで、シリコン結晶棒とシリコン溶融体との界面の下方のシリコン溶融体の温度分布を調節することができるため、印加の磁場がもたらすシリコン溶融体の温度の円周方向における分布変動を調整することで、シリコン溶融体の温度分布の均一性を有効に改善し、結晶成長速度の均一性及び結晶引っ張り品質を向上させることができる。
【0035】
また、前記シリコン結晶棒の円周方向に沿って前記導流筒の底部と前記シリコン結晶棒との間に異なる距離があるため、距離が比較的多きい箇所では、導流筒により炉本体の頂部からシリコン溶融体の液面のところに導かれる圧力の流速が減少し、シリコン溶融体の液面のせん断力が低下し、距離が比較的小さい箇所では、導流筒により炉本体の頂部からシリコン溶融体の液面のところに導かれる圧力の流速が増加し、シリコン溶融体の液面のせん断力が上昇する。これにより、導流筒の底部とシリコン結晶棒との間の距離を設置し、シリコン溶融体の流れ構造に対してさらに調整を行うことで、シリコン溶融体の流れ状態は円周方向でより均一になる。これは、結晶成長速度の均一性をさら改善し、結晶引っ張り品質をより一層向上させることができる。また、シリコン溶融体の流れ状態を変えることにより、結晶内の酸素含有量の分布の均一性を改善し、結晶成長の欠陥を減少させることもできる。
【0036】
具体的には、本発明によれば、導流筒16の内壁の底部に凹溝を設けることで、前記導流筒の前記磁場の印加方向における前記シリコン結晶棒との間の距離を、前記磁場の印加方向に垂直な方向における前記シリコン結晶棒との間の距離よりも大きくすることができる。このような設置は、磁場の印加方向に沿うシリコン溶融体の液面の放熱が、導流筒とシリコン結晶棒との間の距離の増加及び導流筒とシリコン溶融体との間の距離の増加を利用することをより明らかにし、印加の水平磁場によるシリコン溶融体の液面の温度分布の不均一への影響を調節するに有利である。また、導流筒の内壁に凹溝を設けて導流筒の内壁の面積を増やすことで、シリコン結晶棒の液面が熱を導流筒に内壁に放射して放熱する効率を向上させることができるため、結晶引っ張り過程における結晶棒の上下温度分布の均一性及び結晶引っ張り品質を改善することができる。また、導流筒の底部に凹溝を設けることで、従来の導流筒の構造を十分に利用することができ、即ち、導流筒の構造に対して設計を再び行うことなく、本発明の効果を実現し、生産コストを有効に低減することができる。
【0037】
本発明の一例によれば、前記導流筒16の底部の断面は円形を有する。導流筒は円形バレルの形状に設置され、前記凹溝は、前記磁場の印加方向に沿って前記導流筒の底部の相対する両側に設けられる。
【0038】
さらに、例示的に、前記凹溝は、前記導流筒の円周方向に沿って設けられる円弧状凹溝として設置される。
【0039】
図3は、本発明の実施例に係る半導体結晶成長装置における坩堝、導流筒及びシリコン結晶棒の断面位置配列を示す図である。
図3に示すように、導流筒16の底部は、円形バレルの形状に設置されて円環形を有するようになり、そのうち、磁場の印加方向(
図3における矢印Bで示されるように)に沿って導流筒16の相対する両側に凹溝1601及び1602が設けられ、凹溝1601及び1602は、磁場方向に沿って導流筒16の底部の相対する両側に設けられ、また、凹溝1601及び1602が円弧状を有することで、磁場方向における導流筒16の内壁とシリコン結晶棒との間の距離は、他の位置における導流筒16の内壁とシリコン結晶棒との間の距離よりも大きくなり、そのため、磁場方向におけるシリコン溶融体の液面の温度の降下はより速くなる。これにより、水平磁場の印加がもたらすシリコン溶融体の温度が磁場方向において比較的高いという欠陥を補い、シリコン溶融体の液面の温度の導流筒の円周方向における分布をより均一にすることができる。
【0040】
一例において、
図3に示すように、凹溝1601及び1602の底部と側壁との間の夾角θは90°以上である。このようにして、凹溝のコーナーのところでの応力集中を避け、導流筒の内壁の損壊の確率を低減することができる。
【0041】
なお、理解すべきは、本実施例では、凹溝が磁場方向において導流筒の相対する両側に設けられ、且つ円弧状に設置され、及び、底部と側壁との間の夾角θが90°以上であることは例示に過ぎないということである。また、当業者が理解すべきは、導流筒の底部に設けられる凹溝であって、導流筒の磁場の印加方向におけるシリコン結晶棒との間の距離を、磁場の印加方向に垂直な方向における前記シリコン結晶棒との間の距離よりも大きくすることができるものは、すべて、本発明の効果を実現することができるということである。
【0042】
例示的に、前記円弧状凹溝の円弧の長さの範囲は、20mm~200mmである。
【0043】
例示的に、前記凹溝の深さの範囲は、2~20mmである。
【0044】
本発明の一例によれば、導流筒は内筒、外筒及び断熱材を含み、そのうち、前記外筒の底部は、前記内筒の底部の下方に延伸して前記内筒の底部と共に、内筒と外筒との間にキャビティ(中空)を形成し、前記断熱材は前記キャビティの内部に設置される。
【0045】
例示的に、前記凹溝は、前記内筒の内壁の底部に設けられる。
【0046】
図4は、本発明の実施例に係る半導体成長装置における導流筒の構造を示す図である。
図4に示すように、導流筒16は、内筒161、外筒162、及び内筒161と外筒162との間に設置される断熱材163を含み、そのうち、外筒162の底部は、内筒161の底部の下方に延伸して内筒161の底部と共に、内筒161と外筒162との間にキャビティ(中空)を形成し、断熱材163はこのキャビティに収納される。導流筒を、内筒、外筒及び断熱材を含む構造に設計することにより、導流筒の組み立てを容易にすることができる。例示的に、内筒及び外筒の材料は石墨とされ、断熱材はガラス繊維、アスベスト、ロックウール、シリケート、エアロゲルフェルト、バキュームボードなどを含んでも良い。
【0047】
凹溝を内筒162の底部の側壁に設置することで、導流筒の磁場の印加方向におけるシリコン結晶棒との間の距離が、磁場の印加方向に垂直な方向におけるシリコン結晶棒との間の距離よりも大きくなることを実現することができる。また、導流筒の底部とシリコン溶融体の液面との間の距離が依然として、導流筒の外筒の底部とシリコン溶融体の液面との間の距離により確定されるため、凹溝の設置が原因で導流筒の底部とシリコン溶融体の液面との間の距離が減少することを避け、導流筒の底部とシリコン溶融体の液面との間の距離が変わることによるシリコン溶融体の液面の温度分布への影響を回避することができる(通常の場合、導流筒の底部とシリコン溶融体の液面との間の距離が小さいほど、シリコン溶融体の放熱は速くなる)。
【0048】
本発明の一例によれば、前記導流筒は調整装置を含み、それは、前記導流筒と前記シリコン結晶棒との間の距離を調整するために用いられる。調整装置を増設する形で導流筒とシリコン結晶棒との間の距離を変えることにより、従来の導流筒の構造を基に導流筒の製造プロセスを簡素化することができる。
【0049】
引き続き
図4を参照する。例示的に、前記調整装置は挿入部品18を含み、前記挿入部品18は突出部181及び挿入部182を含み、前記挿入部182は、前記外筒162の底部が前記内筒161の底部の下方に延伸する部分と、前記内筒161の底部との間の位置に挿入し、前記突出部181は、前記内筒161の底部の内側に位置する。
【0050】
従来の導流筒が一般的に円錐バレルの形状に設置されるため、導流筒の底部は通常、断面が円形である設置を採用する。導流筒を、内筒と外筒との間の挿入部品を含むように設計することにより、従来の導流筒の構造を変えないまま、挿入部品の構造及び形状を調整することで、導流筒の底部の形状を柔軟に調整し、導流筒とシリコン結晶棒との間の距離を調整することができる。このようにして、従来の半導体成長装置を変えないまま、挿入部を有する調整装置を設置することで本発明の効果を実現することができる。また、挿入部品は、モジュール方式で製造及び交換し、様々なサイズの様々な半導体結晶成長プロセスに適応することができるため、コストを節約することができる。
【0051】
また、挿入部は、外筒の底部と内筒の底部との間の位置に挿入することで、外筒の内筒への熱伝導を効果的に減少させ、内筒の温度を下げ、内筒の結晶棒への放射伝熱をさらに低減し、そして、シリコン結晶棒の中心と外周の軸方向温度勾配の差を有効に減少させ、結晶引っ張り品質を向上させることができる。例示的に、前記調整装置は、例えば、SiCセラミック、石英などのような、熱伝導率が比較的低い材料により構成される。
【0052】
例示的に、前記調整装置は、導流筒の底部の円周に沿って設置され、例えば、円環に設置され、前記円環には凹溝が設けられる。
【0053】
なお、理解すべきは、調整装置を円環に設置することは例示に過ぎず、導流筒と前記シリコン結晶棒との間の距離を調整し得るすべての調整装置は本発明に適用することができるということである。
【0054】
以上、本発明による半導体結晶成長装置についての例示的な説明を行った。本発明による半導体結晶成長装置は、導流筒の内壁の底部に凹溝を設けることで、前記磁場の方向における前記導流筒底部と前記シリコン結晶棒との間の距離を、前記磁場の方向に垂直な方向上での前記導流筒底部と前記シリコン結晶棒との間の距離よりも大きくすることができる。これにより、シリコン結晶棒とシリコン溶融体との界面の下方のシリコン溶融体の温度分布を調節することができるため、印加の磁場が引き起こすシリコン溶融体の温度の円周方向における分布変動を調整することで、シリコン溶融体の温度分布の均一性を改善し、結晶成長速度の均一性を向上させ、結晶引っ張り品質を改善することができる。また、シリコン溶融体の流れ構造に対してさらに調整を行うことにより、シリコン溶融体の流れ状態を円周方向においてより均一にすることもでき、これは、結晶成長速度の均一性をさらに改善し、結晶成長の欠陥をより一層減少させることができる。
【0055】
上述の実施例を用いて本発明を説明したが、理解すべきは、上述の実施例は、例示及び説明のみを目的としており、本発明が、説明した実施例の範囲内に限定されることを意図するものではないということである。また、当業者が理解すべきは、本発明は上述の実施例に限られず、本発明の教示により様々な変形及び変更が行われても良いが、これらの変形及び変更はすべて本発明が要求する保護の範囲に属するということである。なお、本発明の保護の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその同等の範囲によって定義される。
【符号の説明】
【0056】
1.炉本体
10.シリコン結晶棒
11.坩堝
12.加熱器
13.シリコン溶融体
14.引き上げ装置
15.駆動装置
16.導流筒
17.磁場印加装置
18.挿入部品
161.内筒
162.外筒
163.断熱材
1601、1602.凹溝
181.突出部
182.挿入部