(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】新規なベンゾイミダゾール誘導体、この製造方法及び、これの抗がん剤の用途
(51)【国際特許分類】
C07H 15/26 20060101AFI20220707BHJP
A61K 31/7056 20060101ALI20220707BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
C07H15/26 CSP
A61K31/7056
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2021031662
(22)【出願日】2021-03-01
【審査請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】10-2020-0038673
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0125942
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520362561
【氏名又は名称】バイオメトリックス テクノロジーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOMETRIX TECHNOLOGY INC
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】キム タイスン
(72)【発明者】
【氏名】ソン ケムソー
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュンフン
【審査官】谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-504105(JP,A)
【文献】国際公開第2017/095950(WO,A2)
【文献】国際公開第2019/157338(WO,A1)
【文献】AGUAYO-ORTIZ,R. et al.,Structure-based approaches for the design of benzimidazole-2-carbamate derivatives as tubulin polymerization inhibitors,Chemical Biology & Drug Design,2017年,Vol.90, No.1,p.40-51
【文献】DOGRA,N. et al.,Fenbendazole acts as a moderate microtubule destabilizing agent and causes cancer cell death by modulating multiple cellular pathways,Scientific Reports,2018年,Vol.8, No.1,p.1-15
【文献】ADEKOLA,K. et al.,Glucose transporters in cancer metabolism,Current Opinion in Oncology,2012年,Vol.24, No.6,p.650-654
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 15/26
A61K 31/7056
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化1に示すベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物:
【化1】
上記化1において、
【化2】
【化3】
ベンゾイミダゾール部位は、下記構造のうち一つを有する:
【化4】
【請求項2】
下記化6のベンゾイミダゾールカーバメート化合物に、糖化合物の1次アルコール基(-OH)を反応させて結合することを特徴とする、下記化5に示すベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物の製造方法:
【化5】
【化6】
上記化5において、
【化7】
【化8】
【請求項3】
請求項1の化1によるベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物を含有して、抗がん活性を表すことを特徴とする、
薬学組成物。
【請求項4】
上記化合物は、GULT(glucose transpoter)チャネルを介して吸収されることを特徴とする、
請求項3に記載の薬学組成物。
【請求項5】
上記化合物は、微小管の形成を抑制し、糖類(sugar compound)の吸収を抑制することを特徴とする、
請求項3に記載の薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なベンゾイミダゾール誘導体、この製造方法及び、これの抗がん剤の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンゾイミダゾール(benzimidazole)は、ベンゼン環にイミダゾール環の付いた化合物であって、多様な生活性及び生理作用があり、様々な薬物の母核として関心を集めている。このようなベンゾイミダゾール構造を有している化合物は、置換基によって様々な病気に効果を示すと報告されており、例えば、消炎鎮痛剤、抗真菌剤、抗がん剤、駆虫剤、抗ヒスタミン剤などとして開発されている。
【0003】
ベンゾイミダゾールは、微小管(microtubule)の形成を抑制する特性が複数の論文に発表されている(参照:Chem Biol Drug Des.,2017 Jul;90(1):40-51;Scientific REPORTS,2018,8:11926;and ANTICANCER RESEARCH,29:3791-3796,2009)。しかし、ベンゾイミダゾールは、正常細胞と非正常細胞(つまり、がん発現細胞)を区分せずに進入し、これにより、正常細胞及び非正常細胞において同様、微小管の形成を抑制するものと知られている。
【0004】
また、がん細胞は、ブドウ糖を大量に吸収する特性を示すが、GULTチャネルを細胞膜に移動させるために、必ず微小管を利用し、がん細胞の場合は、正常細胞に比べて、1000倍位のGULTチャネルを生成すると報告されている(参照:L.Quan et al./Journal of Molecular Structure 1203(2020)127361)。
【0005】
そのため、ベンゾイミダゾール誘導体を正常細胞よりもがん細胞に集中して投入し、微小管の形成を抑制させると、GULTチャネルの生成が抑制され、ブドウ糖の吸収を遮断し得、その結果、がん細胞の増殖を著しく抑制することができ、これにより、体内免疫システムは、上記のように、増殖の抑制されたがん細胞を攻撃して、抗がん効果を示すと知られている(参照:EXPERIMENTAL AND THERAPEUTIC MEDICINE13:595-603,2017)。
【0006】
しかし、ベンゾイミダゾール誘導体は、普通、水性溶解度が低くて、生体吸収率が低いため、がん細胞の増殖を有効に抑制するためには、高い濃度や相当な量を投与しなければならず、このため、正常細胞にも相当副作用が表れると報告されている(参照:Vojnosanit Pregl.2008 Jul;65(7):539-44,Infect Chemother2018;50(1):1-10)。
【0007】
したがって、ベンゾイミダゾール誘導体は、胃腸管における吸収を向上させる薬物(例:シメチジンのようなH2水溶剤遮断剤又は胃酸分泌抑制剤)と共に投与するか、ベンゾイミダゾール誘導体自体の水溶性を向上させるために、水溶性置換基を導入することが提案されている。
【0008】
例えば、特許文献1(国際特許公開WO1998/051304、1998年11月19日公開)では、2-カーバメートベンゾイミダゾール誘導体は、哺乳動物の腫瘍及びがんの増殖を抑制し、ウイルス性感染症を治療することができることを開示しているが、水性溶解度及び生体吸収率は、上述したように低くて、薬理効果が十分でない。
【0009】
特許文献2(国際特許公開WO2005/058870、2005年6月30日公開)では、1-アリール-2-アミノベンゾイミダゾール誘導体の2-アミノ基に、3-ヒドロキシプロピル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基又は2-カルボキサミドエチル基のように、水溶性を増加させる置換基を付着した化合物を、呼吸器細胞融合ウイルス複製阻害剤として使用することが開示されているが、水性溶解度及び生体吸収率が十分でない。
【0010】
特許文献3(国際特許公開WO1998/056761、1998年12月17日公開)では、ベンゾイミダゾール誘導体の1-位置の窒素原子にβ-D-リボピラノース由来のピラノース環を置換させた化合物及び、これを使用したウイルス感染の治療及び予防のための用途を開示している。上記特許文献におけるピラノース環は、2~3個以上のヒドロキシル基を含んでいてもよく、ベンゾイミダゾール誘導体の水溶性を大幅に上昇させており、注射剤としての使用可能性も開示している。しかし、ピラノース環がベンゾイミダゾールの1-位置に連結された誘導体のみを開示しており、ベンゾイミダゾールが2-アミノ基を含む場合も、2-アミノ基への反応を避ける反応経路を採用していることが分かる。
【0011】
かかるベンゾイミダゾール誘導体の中で、駆虫剤として知られたアルベンダゾール、フェンベンダゾール 、メベンダゾール、フルベンダゾールなどのような2-アミノ-ベンゾイミダゾール誘導体は、驚くほどの抗がん効果が表れることが知られつつ、改めて関心を集めているが、これらの低い水溶性及び生体利用率を向上させる方案についても関心が集められている。
【0012】
駆虫剤として使用されるアルベンダゾールとフェンベンダゾールは、ベンゾイミダゾールカーバメート(benzimidazole carbamate)系化合物であって、細胞に吸収されるとき、がん細胞と正常細胞に同様に吸収される。そのため、この化合物をがん細胞のみに選択的に吸収させることが難しい。
【0013】
一方、あらゆる細胞のエネルギー源であるグルコース(glucose)は、細胞のGULT(gluscose transporter)チャネルを介して吸収されるが、ウイルスに感染した細胞は、正常細胞よりも多量のグルコースをエネルギー源として使用すると、複数の文献において既に報告されている(参考:BMC Biology(2019)17:59)、(J Virol 89:2358-2366.)、(Virology.2013;444(1-2):301-9)。
【0014】
結論として、がん細胞は、ブドウ糖を含む糖化合物を正常細胞に比べて、相対的に非常に多く吸収するといえる。
【0015】
以上のような点を考慮して、がん細胞がブドウ糖を含む糖化合物(sugar compound)を正常細胞に比べて、過量吸収する現象を新しいベンゾイミダゾール誘導体の設計に活用し、このような新しいベンゾイミダゾール誘導体を簡単な工程及び経済的な費用で提供することができる方法を開発しようとした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
(特許文献1)特許文献1(国際特許公開WO1998/051304、1998年11月19日公開)
(特許文献2)特許文献2(国際特許公開WO2005/058870、2005年6月30日公開)
(特許文献3)特許文献3(国際特許公開WO1998/056761、1998年12月17日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、上述した問題点を解決することができる、新しいベンゾイミダゾール誘導体を設計し、これの簡単かつ経済的な製造方法及び、これを使用する抗がん剤又は抗ウイルス剤としての用途を提供することである。
【0018】
本発明が解決しようとする課題は、以上に言及した課題に制限されず、言及していないさらに他の課題は、以下の記載から当業者にとって明確に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を解決するために、本発明は、下記化1に示す新規なベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物を提供する。
【0020】
【0021】
上記式において、
R1は、糖化合物残基であって、前記糖化合物は、四炭糖アルドース(例:エリトロース、トレオース)、五炭糖アルドース(例:リボース、アラビノース、キシロース、リキソース)、六炭糖アルドース(例:アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グルオース、イドース、ガラクトース、タロース)、四炭糖ケトース(例:エリトルロース)、五炭糖ケトース(例:リブロース、キシルロース)、六炭糖ケトース(例:シコース、フルクトース、ソルボース、タガトース)、これらの異性質体、酸化物(CHOが-COOHに変換)、デオキシ誘導体(-OHが-Hに変換、例:2-デオキシリボース、2-デオキシグルコース)、アミノ糖(-OHが-NHに変換、例:N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン)、配糖体(グリコシド)、又はこれらの二糖類から選択することができ、好ましくは、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース又はキシロースから選択することができ、
R2及びR3は、同一又は相違し、水素又は置換可能な炭化水素基であって、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、環原子数3~10のアリール基又はヘテロアリール基を示し、前記アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基は、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、チオール、アミノ、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アリールオキシ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アリール又はヘテロアリール基から選択される置換基に置換されてもよく、及び、
Xは、-O-、-S-、-SO-、-SO2-、-NH-、-N(R2)-、-CH2-、-CH(R2)-、-CO-からなる群から選択することができる。
【0022】
本発明の一実施例によれば、前記ベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物は、下記化2で表される化合物であってもよい:
【0023】
【0024】
上記式において、
R1、R2及びXは、上記で定義したものと同様である。
【0025】
本発明の一実施例によれば、上記化1又は化2において、
【化3-1】
【化3-2】
【0026】
本発明の一実施例によれば、上記化1又は化2において、
ベンゾイミダゾール部位は、下記構造のうち一つを有し得る:
【化4】
【0027】
本発明の一実施例によれば、前記ベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物は、下記化合物の中から選択することができる:
アルベンダゾール-D-糖化合物結合体化合物として、アルベンダゾール-1,2,3,4-β-D-グルコース、アルベンダゾール-1,2,3,4-β-D-フルクトース、アルベンダゾール-1,2,3,4-β-D-ガラクトース、アルベンダゾール-1,2,3,4-β-D-マンノース、アルベンダゾール-2,3,4,6-β-D-グルコース、アルベンダゾール-2,3,4,6-β-D-フルクトース、アルベンダゾール-2,3,4,6-β-D-ガラクトース、アルベンダゾール-2,3,4,6-β-D-マンノース、アルベンダゾール-2,3,4,6-β-D-キシロース;
フェンベンダゾール-D-糖化合物結合体化合物として、フェンベンダゾール-1,2,3,4-β-D-グルコース、フェンベンダゾール-1,2,3,4-β-D-フルクトース、フェンベンダゾール-1,2,3,4-β-D-ガラクトース、フェンベンダゾール-1,2,3,4-β-D-マンノース、フェンベンダゾール-2,3,4,6-β-D-グルコース、フェンベンダゾール-2,3,4,6-β-D-フルクトース、フェンベンダゾール-2,3,4,6-β-D-ガラクトース、フェンベンダゾール-2,3,4,6-β-D-マンノース、フェンベンダゾール-2,3,4,6-β-D-キシロース;
フルベンダゾール-D-糖化合物結合体化合物として、フルベンダゾール-1,2,3,4-β-D-グルコース、フルベンダゾール-1,2,3,4-β-D-フルクトース、フルベンダゾール-1,2,3,4-β-D-ガラクトース、フルベンダゾール-1,2,3,4-β-D-マンノース、フルベンダゾール-2,3,4,6-β-D-グルコース、フルベンダゾール-2,3,4,6-β-D-フルクトース、フルベンダゾール-2,3,4,6-β-D-ガラクトース、フルベンダゾール-2,3,4,6-β-D-マンノース、フルベンダゾール-2,3,4,6-β-D-キシロース;
メベンダゾール-D-糖化合物結合体化合物として、メベンダゾール-1,2,3,4-β-D-グルコース、メベンダゾール-1,2,3,4-β-D-フルクトース、メベンダゾール-1,2,3,4-β-D-ガラクトース、メベンダゾール-1,2,3,4-β-D-マンノース、メベンダゾール-2,3,4,6-β-D-グルコース、メベンダゾール-2,3,4,6-β-D-フルクトース、メベンダゾール-2,3,4,6-β-D-ガラクトース、メベンダゾール-2,3,4,6-β-D-マンノース、メベンダゾール-2,3,4,6-β-D-キシロース。
【0028】
また、上記目的を解決するために、本発明は、下記化1aのベンゾイミダゾールカーバメート化合物に、糖化合物の1次アルコール基(-OH)を反応させて結合することを特徴とする、下記化1に示すベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物の製造方法を提供する:
【0029】
【0030】
【0031】
上記式において、
R1、R2、R3及びXは、上記で定義したものと同様である。
【0032】
また、上記目的を解決するために、本発明は、上記化1のベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物を含有して、抗がん活性を示す薬学組成物を提供する。
【0033】
本発明の一実施例によれば、上記化1のベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物は、GULT(glucose transporter)チャネルを介して吸収されうる。
【0034】
本発明の一実施例によれば、上記化1のベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物は、微小管の形成を抑制し、糖類(sugar compound)の吸収を抑制することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、抗がん活性を有する新規なベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物及び、この製造方法が提供される。
【0036】
本発明の効果は、上記の効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明又は特許請求の範囲に記載した発明の構成から推論可能な全ての効果を含むことと理解しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の一実施例によるがん細胞株の成長抑制試験の結果を示したグラフ。
【
図2】本発明の一実施例による正常細胞株における毒性試験の結果を示したグラフ。
【
図3】アルベンダゾール-1,2,3,4-β-D-糖化合物結合体(糖化合物は、上からグルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース)に対するNMRスペクトラム。
【
図4】アルベンダゾール-2,3,4,6-β-D-糖化合物結合体(糖化合物は、上からグルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、キシロース)に対するNMRスペクトラム。
【
図5】フェンベンダゾール-1,2,3,4-β-D-糖化合物結合体(糖化合物は、上からグルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース)に対するNMRスペクトラム。
【
図6】フェンベンダゾール-2,3,4,6-β-D-糖化合物結合体(糖化合物は、上からグルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、キシロース)に対するNMRスペクトラム。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明を詳細に説明する前に、本明細書で使われた用語や単語は、一般的であるか、辞書的な意味のみに限定して解釈してはならない。本発明の発明者は、自己の発明を最も最善の方法により説明するために、各種用語の概念を適宜定義して使うことができ、さらには、これら用語や単語は、本発明の技術思想に符合する意味と概念に解釈すべきであることを知るべきである。
【0039】
すなわち、本明細書で使われた用語は、本発明の好ましい実施例を説明するために使われるだけであり、本発明の内容を具体的に限定する意図に使われたものではなく、これら用語は、本発明の様々な可能性を考慮して定義された用語であることを知るべきである。
【0040】
また、本明細書において、単数の表現は、文脈上、明確に他の意味に示さない限り、複数の表現を含んでいてもよく、同様、複数に表現されていても、単数の意味を含んでいてもよいことを知るべきである。
【0041】
本明細書の全体において、ある構成要素が他の構成要素を「含む」と記載する場合は、別段の意味が記載されない限り、任意の他の構成要素を除くものではなく、任意の他の構成要素をさらに含んでいてもよいことを意味し得る。
【0042】
また、以下では、本発明の説明において、本発明の要旨を曖昧にすると判断される構成、例えば、従来技術を含む公知技術に対する詳細な説明は省略し得る。
【0043】
先ず、本発明を理解するために、本明細書で使われる用語について下記のように簡単に定義する。しかし、本発明は、このような用語や用語の定義によって限定されるものではない。
【0044】
用語「抗がん剤」は、がん細胞の発育や増殖を抑制する物質又はそのような薬物を意味する。
【0045】
用語「糖化合物」は、糖(sugar)からなる有機化合物の総称として使われる。
【0046】
用語「チューブリン(tubulin)」は、生物のほとんどの細胞に存在する微小管(microtubule)を構成するタンパク質を意味する。
【0047】
用語「微小管(microtubule)」は、チューブリンというタンパク質の重合体からなっており、細胞骨格を維持し、細胞の運動性と細胞内輸送に関与する細胞器官を意味する。
【0048】
用語「細胞分裂(cell division)」は、生物の一つの母細胞が核分裂と細胞質分裂を経て、二つの細胞に分けられる現象を意味する。
【0049】
以下では、本発明をさらに詳説する。
【0050】
ベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物
本発明の第一目的は、下記化1に示すベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物を提供することである:
【0051】
【0052】
上記式において、
R1は、糖化合物残基であって、前記糖化合物は、四炭糖アルドース(例:エリトロース、トレオース)、五炭糖アルドース(例:リボース、アラビノース、キシロース、リキソース)、六炭糖アルドース(例:アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グルオース、イドース、ガラクトース、タロース)、四炭糖ケトース(例:エリトルロース)、五炭糖ケトース(例:リブロース、キシルロース)、六炭糖ケトース(例:シコース、フルクトース、ソルボース、タガトース)、これらの異性質体、酸化物(CHOが-COOHに変換)、デオキシ誘導体(-OHが-Hに変換、例:2-デオキシリボース、2-デオキシグルコース)、アミノ糖(-OHが-NHに変換、例:N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン)、配糖体(グリコシド)、又はこれらの二糖類から選択することができ、好ましくは、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース又はキシロースから選択することができ、
R2及びR3は、同一又は相違し、水素又は置換可能な炭化水素基であって、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、環原子数3~10のアリール基又はヘテロアリール基を示し、前記アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基は、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、チオール、アミノ、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アリールオキシ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アリール又はヘテロアリール基から選択される置換基に置換されてもよく、及び、
Xは、-O-、-S-、-SO-、-SO2-、-NH-、-N(R2)-、-CH2-、-CH(R2)-、-CO-からなる群から選択することができる。
【0053】
上記化1の化合物は、ベンゾイミダゾールカーバメートに、糖化合物残基が結合している形態と理解することができる。
【0054】
本発明の一実施例によれば、前記ベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物は、下記化2で表される化合物であってもよい:
【0055】
【0056】
上記式において、
R1、R2及びXは、上記で定義したものと同様である。
【0057】
本発明の一実施例によれば、上記化1又は化2において、
【化9-1】
【化9-2】
【0058】
本発明の一実施例によれば、上記化1又は化2において、
ベンゾイミダゾール部位は、下記構造のうち一つを有し得る:
【化10】
【0059】
本発明の一実施例によれば、前記ベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物は、下記化合物の中から選択することができる:
アルベンダゾール-D-糖化合物結合体化合物として、アルベンダゾール-1,2,3,4-β-D-グルコース、アルベンダゾール-1,2,3,4-β-D-フルクトース、アルベンダゾール-1,2,3,4-β-D-ガラクトース、アルベンダゾール-1,2,3,4-β-D-マンノース、アルベンダゾール-2,3,4,6-β-D-グルコース、アルベンダゾール-2,3,4,6-β-D-フルクトース、アルベンダゾール-2,3,4,6-β-D-ガラクトース、アルベンダゾール-2,3,4,6-β-D-マンノース、アルベンダゾール-2,3,4,6-β-D-キシロース;
フェンベンダゾール-D-糖化合物結合体化合物として、フェンベンダゾール-1,2,3,4-β-D-グルコース、フェンベンダゾール-1,2,3,4-β-D-フルクトース、フェンベンダゾール-1,2,3,4-β-D-ガラクトース、フェンベンダゾール-1,2,3,4-β-D-マンノース、フェンベンダゾール-2,3,4,6-β-D-グルコース、フェンベンダゾール-2,3,4,6-β-D-フルクトース、フェンベンダゾール-2,3,4,6-β-D-ガラクトース、フェンベンダゾール-2,3,4,6-β-D-マンノース、フェンベンダゾール-2,3,4,6-β-D-キシロース;
フルベンダゾール-D-糖化合物結合体化合物として、フルベンダゾール-1,2,3,4-β-D-グルコース、フルベンダゾール-1,2,3,4-β-D-フルクトース、フルベンダゾール-1,2,3,4-β-D-ガラクトース、フルベンダゾール-1,2,3,4-β-D-マンノース、フルベンダゾール-2,3,4,6-β-D-グルコース、フルベンダゾール-2,3,4,6-β-D-フルクトース、フルベンダゾール-2,3,4,6-β-D-ガラクトース、フルベンダゾール-2,3,4,6-β-D-マンノース、フルベンダゾール-2,3,4,6-β-D-キシロース;
メベンダゾール-D-糖化合物結合体化合物として、メベンダゾール-1,2,3,4-β-D-グルコース、メベンダゾール-1,2,3,4-β-D-フルクトース、メベンダゾール-1,2,3,4-β-D-ガラクトース、メベンダゾール-1,2,3,4-β-D-マンノース、メベンダゾール-2,3,4,6-β-D-グルコース、メベンダゾール-2,3,4,6-β-D-フルクトース、メベンダゾール-2,3,4,6-β-D-ガラクトース、メベンダゾール-2,3,4,6-β-D-マンノース、メベンダゾール-2,3,4,6-β-D-キシロース。
【0060】
ベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物の製造方法
本発明の第二目的は、下記化1aのベンゾイミダゾールカーバメート化合物に、糖化合物の1次アルコール基(-OH)を反応させて結合する、下記化1に示すベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物の製造方法を提供する:
【0061】
【0062】
【0063】
上記式において、
R1、R2、R3及びXは、上記で定義したものと同様である。
【0064】
本発明によるベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物は、様々な方法により製造することができ、下記に製造方法の一例を提示する。
【0065】
本発明によるベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物を製造する一例として、下記の反応図式1~3を提示することができる。
【0066】
反応図式1は、D-グルコースを、本発明によるベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物の製造に使用される中間物質であるグルコースペンタアセテート(1,2,3,4,6-ペンタ-O-アセチル-β-D-グルコピラノース)を製造し、グルコースペンタアセテート(1,2,3,4,6-ペンタ-O-アセチル-β-D-グルコピラノース)から1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノース又は2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノースを製造する反応を示す。
【0067】
【0068】
反応図式2は、本発明の一実施例によるベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物である、アルベンダゾール-1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコースを製造する反応を示す。代表的なベンゾイミダゾールカーバメートであるアルベンダゾールに、ブドウ糖(1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノース)の1次アルコール部分を反応させて結合した形態である。
【0069】
【0070】
反応図式3は、本発明の一実施例によるベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物である、アルベンダゾール-2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコースを製造する反応を示す。代表的なベンゾイミダゾールカーバメートであるアルベンダゾールに、ブドウ糖(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノース)の1次アルコール部分を反応させて結合した形態である。
【0071】
【0072】
上記反応図式1~3から結果が出たベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物は、通常の方法により単離及び/又は精製した後、分光学的な方法(例:1H-NMR)などにより確認することができる。
【0073】
ベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物の抗がん剤の用途
本発明の第三目的は、上記化1のベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物を含有する薬学組成物又は薬理学的組成物を提供することである。
【0074】
本発明の一実施例によれば、化1のベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物を含有して、抗がん活性を有する薬学組成物を提供することができる。
【0075】
本発明の一実施例によれば、化1のベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物は、GULT(glucose transporter)チャネルを介して吸収される薬学組成物が提供される。
【0076】
本発明の一実施例による化1のベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物は、がん細胞のみを標的として選択的に抗がん作用することを特徴とする。
【0077】
本発明の特徴の一つは、本発明の一実施例によるアルベンダゾール-グルコース化合物又はフェンベンダゾール-グルコース化合物は、アルベンダゾール又はフェンベンダゾールにグルコースが結合した形態で細胞に吸収されるとき、この化合物に結合したグルコースによってGULT(glucose transporter)チャネルを介して吸収されるように設計された。GULTチャネルは、正常細胞よりもがん細胞やウイルス感染細胞において大いに活性化していると知られている。特に、正常細胞よりもがん細胞において1000倍位GULTチャネルを形成すると報告されている。本発明によるベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物は、正常細胞よりもGULTチャネルの活性化したがん細胞に集中して吸収されると予想される(参照:L.Quan et al./Journal of Molecular Structure 1203(2020)127361)。
【0078】
本発明の一実施例によれば、化1のベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物は、微小管の形成を抑制し、糖類(sugar compound)の吸収を抑制する薬学組成物が提供される。
【0079】
本発明の利点の一つは、本発明による新規なベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物が、正常細胞よりも主にがん細胞のみに吸収され、その後、従来のベンゾイミダゾール化合物誘導体の知られた特性である微小管を形成するチューブリンに結合して、微小管の形成を妨げて細胞分裂を阻害し、これにより、細胞エネルギー源であるグルコースを含む糖化合物の吸収を遮断させることにより、がん細胞の死滅を効果的に誘導することができるという点である。
【0080】
したがって、本発明による新規なベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物は、主にがん細胞に集中して吸収されるため、正常細胞には、毒性を最小化することができるように設計されただけでなく、がん治療のための抗がん剤化合物として有用に使用されることが望まれる。
【0081】
以下では、実施例によって本発明をより詳説する。しかし、下記の実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲は、下記の実施例によって限定されるものではない。下記の実施例は、本発明の範囲内で当業者によって適宜修正されるか変更されうる。
【0082】
実施例
実施例1:アルベンダゾール-1,2,3,4-テトラ-β-D-グルコース(AL-1)の製造
<実施例1-A>グルコースペンタアセテート(1,2,3,4,6-ペンタ-O-アセチル-β-D-グルコピラノース)の製造
【0083】
【0084】
上記反応式1によって、グルコース(glucose)からグルコースペンタアセテート(glucose pentaacetate)を製造しており、反応手続き及び条件は、文献(Ciencia e Agrotecnologia 41(2):201-208、Mar/Apr.2017)に記載した方法を参照した。
【0085】
フラスコに1gのグルコース(0.0056mol)、10mLの酢酸無水物(0.317mol)及び1gのエチルナトリウム(0.012mol)を添加して反応させ、グルコースペンタアセテート(1,2,3,4,6-ペンタ-O-アセチル-β-D-グルコピラノース)を得た。
【0086】
前記生成物を、1H-NMRスペクトラムを分析して、グルコースペンタアセテートの生成を確認した。1H-NMRデータは、次のとおりである。
H NMR dH(400MHz;CDCl3)5.72、(1H、d、J8.3)、5.11-5.16(1H、m)、5.25、(1H、t J9.4)、5.11-5.16(1H、m)、3.82-3.86(1H、m)、4.29(1H dd、J12.4、J4.7)、4.12(1H、ddJ12.4、J2.4)、2.01(3H、s)、2.03、(3H、s)、2.09(3H、s)、2.03(3H、s)、2.12(3H、s)
【0087】
<実施例1-B>1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノースの製造
【0088】
【0089】
上記反応式2によって、グルコースペンタアセテートにおける1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノースを合成しており、反応手続き及び条件は、文献(J.Chem.Soc.、Perkin Trans.1、1998)に記載した方法を参照した。
【0090】
実施例1-Aで製造されたグルコースペンタアセテート(3.0g、7.66 mmol)を30.8℃でリン酸緩衝液350mlに懸濁させた後、エステラーゼ(40mg)を添加して反応させ、1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノースを得た。
【0091】
前記生成物を、1H-NMRスペクトラムを分析して、1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノースの生成を確認した。1H-NMRデータは、次のとおりである。
H NMR dH(400MHz;CDCl3)1.97(3H、s、CH3CO)、1.99(3H、s、CH3CO)、2.03(3H、s、CH3CO)、2.13(3H、s、CH3CO)、2.37(1H、m、OH)、3.55(1H、m、Hb-6)、3.68(1H、m、Ha-6)、3.89(1H、ddd、J2.29、4.19 and 10、H-5)、5.04(1H、dd、J3.7 and 10、H-2)、5.07(1H、dd、J9.8 and 10、H-4)、5.48(1H、app t、J10 and 10、H-3) and 6.3(1H、d、J3.7、H-1)
【0092】
<実施例1-C>アルベンダゾール-1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノースの製造
【0093】
【0094】
上記反応式3によって、アルベンダゾールに1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノースを添加して、アルベンダゾール-1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノースを合成した。
【0095】
フラスコに磁性バーを入れて、アルベンダゾール(Albendazole、1g、0.00377mmole)と、実施例1-Bで得られた化合物1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノース(13.3g、0.0377mmole)を入れて、DMF120mlを添加した。常温で混合した後、磁性攪拌機を利用して酸触媒下で、90℃で24時間反応させた。反応後、常温に冷めた反応物を減圧蒸留して、MeOH:EAを利用して精製し、化合物アルベンダゾール-1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノースを1.3g(修得率59%)得た。
【0096】
前記生成物の1H-NMRスペクトラムを分析して、アルベンダゾール-1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-a-D-グルコピラノースが生成されることを確認した。1H-NMRデータは、次のとおりである。
1H NMR(400MHz、DMSO-d6):δ=11.62(s、1H)、7.42(s、1H)、7.32(d、J=7.49Hz、1H)、7.09(d、J=7.50Hz、1.46Hz、1H)、0.95(t、J=7.96Hz、3H)、1.54(m、2H)、2.58(t、J=7.14、4.48Hz、2H)、5.04(d、J=7.2Hz、1H)、3.99-3.90(m、1H)、3.80-3.71(m、1H)、3.62-3.32(m、4H)
【0097】
<実施例1-D>アルベンダゾール-1,2,3,4-テトラ-β-D-グルコースの製造
【0098】
【0099】
上記反応式4によって、アルベンダゾール-1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノースにリパーゼを添加して、アルベンダゾール-1,2,3,4-テトラ-β-D-グルコースを合成した。
【0100】
フラスコに磁性バーを入れて、実施例1-Cで得られた化合物アルベンダゾール-1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノース(100mg、0.17mmole)と、A-ANL粉末を0.1g入れた後、アセトニトリル30mlと0.1Mリン酸緩衝液20mlとの混合溶液を添加して、常温で48時間反応させた。反応物をメタノールとエチルアセテートから抽出した後、シリカカラム(silica column)で精製して、アルベンダゾール-1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコースを32mg(修得率45%)得た。
【0101】
前記生成物を、1H-NMRスペクトラムを分析して、アルベンダゾル-1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-a-D-グルコースの生成を確認した。1H-NMRデータは、次のとおりである。
1H NMR(400MHz、DMSO-d6):δ=11.62(s、1H)、7.42(s、1H)、7.32(d、J=7.49Hz、1H)、7.09(d、J=7.50Hz、1.46Hz、1H)、0.95(t、J=7.96Hz、3H)、1.54(m、2H)、2.58(t、J=7.14、4.48Hz、2H)、5.04(d、J=7.2Hz、1H)、3.99-3.90(m、1H)、3.80-3.71(m、1H)、3.62-3.32(m、4H)
【0102】
実施例2:アルベンダゾール-2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコースの製造
<実施例2-A>グルコースペンタアセテート(1,2,3,4,6-ペンタ-O-アセチル-β-D-グルコピラノース)の製造
実施例1-Aと同様に製造した。
【0103】
<実施例2-B>2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノースの製造
【0104】
【0105】
上記反応式5によって、グルコースペンタアセテートにおける2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノースを合成しており、反応手続き及び条件は、文献(J.Org.Chem.、1988、53、4939-4945)に記載した方法を参照した。
【0106】
グルコース(10mg/mL、PBS)を10%(v/v)DMF/PBS緩衝剤(0.05M、pH7)に懸濁させた。リパーゼ(0.75g/mmol sugar)を添加して反応させ、2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノースを得た。
【0107】
前記生成物を、1H-NMRスペクトラムを分析して、2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-a-D-グルコピラノースの生成を確認した。1H-NMRデータは、次のとおりである。
H NMR(CDC1,)6 5.51(t、1 H、H2、J=9.8Hz)、5.43(d、1H、Hla、J=3.5Hz)、5.22(t、1H、H30、J=9.4Hz)、5.05(dt、2H、H44)、4.92-4.82(m、2H)、4.72(d、1H、HlP、J=4.7Hz)、4.28-3.98(m、5H)、3.77-3.47(m、1H、H5P)、2.06(s、3H、acetyl)、2.05(s、3 H、acetyl)、2.01(9、3H、acetyl)、2.00(s、3H、acetyl)、1.99(s、3H、acetyl)
【0108】
<実施例2-C> アルベンダゾール-2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノースの製造
【0109】
【0110】
上記反応式6によって、アルベンダゾールに2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノースを添加して、アルベンダゾール-2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノースを合成した。
【0111】
フラスコに磁性バーを入れて、アルベンダゾール(Albendazole、1g、0.00377mmole)と、実施例2-Bで得られた化合物2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノース(13.3g、0.0377mmole)を入れて、 DMF120mlを添加した。常温で混合した後、磁性攪拌機を利用して90℃で24時間反応した。反応後、常温に冷めた反応物を減圧蒸留して、MeOH:EAを利用して精製し、化合物アルベンダゾール-2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノースを1.2g(修得率52%)得た。
【0112】
前記生成物を、1H-NMRスペクトラムを分析して、アルベンダゾール-2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノースの生成を確認した。1H-NMRデータは、次のとおりである。
1H NMR(400MHz、DMSO-d6):δ=11.62(s、1H)、7.42(s、1H)、7.32(d、J=7.49Hz、1H)、7.09(d、J=7.50Hz、1.46Hz、1H)、0.95(t、J=7.96Hz、3H)、1.54(m、2H)、2.58(t、J=7.14、4.48Hz、2H)、5.04(d、J=7.2Hz、1H)、3.99-3.90(m、1H)、3.80-3.71(m、1H)、3.62-3.32(m、4H)
【0113】
<実施例2-D> アルベンダゾール-2,3,4,6-テトラ-β-D-グルコースの製造
【0114】
【0115】
前記反応式7によって、アルベンダゾール-2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノースにリパーゼを添加して、アルベンダゾール-2,3,4,6-テトラ-β-D-グルコースを合成した。
【0116】
フラスコに磁性バーを入れて、実施例2-Cで得られた化合物アルベンダゾール-2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノース(100mg、0.17mmole)と、A-ANL粉末を0.1g入れた後、アセトニトリル30mlと、0.1Mリン酸緩衝液20mlとの混合溶液を添加して、常温で48時間反応させた。反応物をメタノールとエチルアセテートから抽出した後、シリカカラムで精製して、アルベンダゾール-2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコースを30mg(修得率42.1%)得た。
【0117】
前記生成物を、1H-NMRスペクトラムを分析して、アルベンダゾール-1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコースの生成を確認した。1H-NMRデータは、次のとおりである。
1H NMR(400MHz、DMSO-d6):δ=11.62(s、1H)、7.42(s、1H)、7.32(d、J=7.49Hz、1H)、7.09(d、J=7.50Hz、1.46Hz、1H)、0.95(t、J=7.96Hz、3H)、1.54(m、2H)、2.58(t、J=7.14、4.48Hz、2H)、5.04(d、J=7.2Hz、1H)、3.99-3.90(m、1H)、3.80-3.71(m、1H)、3.62-3.32(m、4H)
【0118】
実施例3:アルベンダゾール-1、2,3,4-テトラ-β-D-フルクトース(AL-2)の製造
グルコースの代わりにフルクトースを用いたことを除いては、上記実施例1と同じ方法により製造した。
【0119】
実施例4:フェンベンダゾール-1,2,3,4-テトラ-β-D-グルコース(FB-1)の製造
アルベンダゾールの代わりにフェンベンダゾールを用いたことを除いては、上記実施例1と同じ方法により製造した。
【0120】
実施例5:フェンベンダゾール-1、2,3,4-テトラ-β-D-フルクトース(FB-2)の製造
アルベンダゾールの代わりにフェンベンダゾールを用い、グルコースの代わりにフルクトースを用いたことを除いては、上記実施例1と同じ方法により製造した。
【0121】
実験例1:がん細胞株の成長抑制試験
人間肺がん細胞株A549、子宮頸がん細胞株Hela、大膓がん細胞株HT-29は、韓国細胞株銀行(KCLB、ソウル、韓国)から分譲されて培養培地で培養した。
【0122】
DMEM、10%培養フラスコを使用して、37℃で5%CO2含有の加湿された細胞培養インキュベーター内で、ウシ胎児血清(FBS)、0.1mM MEM非必須アミノ酸(NEAA)、2mM L-グルタミン(L-glutamine)、及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン(penicillin-streptomycin)をKCLBから提供された指針に従って、2-3日毎にトリプシン処理して、細胞を継代培養した。培養物が80-90%合流度になるまでに培養し、がん細胞株の成長抑制実験のために細胞を培養フラスコに連続して移した。
【0123】
実験対象であるがん細胞株、人間肺がん細胞株A549、子宮頸がん細胞株Hela及び大膓がん細胞株HT-29を、96ウェルプレートにウェル当たり約10000個の細胞でシーディングした。24時間後、下記の表1に記載したように、化合物の4種を七つの濃度で各々のウェルに添加し、72時間インキュベーションした。
【0124】
【0125】
上記表1において、アルベンダゾール、フェンベンダゾール及びドキソルビシンは、市販する化合物を用いており、アルベンダゾール-糖化合物は、実施例1-Dで製造されたものを使用した。
【0126】
インキュベーション後、培地を捨てて、各々のウェルで細胞生存率をWST-8細胞生存力分析キット(Quanti-MaxTM、BIOMAX)を使って、製造社の指示手続きに従って測定した。
【0127】
分析は、生存細胞の脱水素酵素が、テトラゾリウム塩(Tetrazolium salt)を分解して、ポルマザン(formazan)を生成する原理を利用しており、これにより、生きている細胞を定量評価した。
【0128】
還元されたポルマザン塩料(formazan salt)は、細胞培養培地に可溶性であり、ポルマザン(formazan)の量は、生存細胞の数に正比例する(Slater、T.et al.(1963)Biochem.Biophys.Acta77:383.van de Loosdrecht,A.A.,et al.J.Immunol.Methods174:311-320、1994.Alley,M.C.,et al.Cancer Res.48:589-601,1988.)。
【0129】
図1は、がん細胞株の成長抑制試験の結果を示したものである。
図1から確認することができるように、アルベンダゾール-糖化合物(AL-1)のがん細胞株の成長抑制効率が、最も優れることが分かる。
【0130】
実験例2:正常細胞株における毒性試験
正常肺細胞株MRC-5及び正常結腸CCD-18Co細胞株は、韓国細胞株銀行(KCLB、ソウル、韓国)から分譲されて、完全な培養培地で培養した。
【0131】
DMEM、10%培養フラスコを使用して、37℃で5%CO2含有の加湿された細胞培養インキュベーター内で、ウシ胎児血清(FBS)、0.1mM MEM非必須アミノ酸(NEAA)、2mM L-グルタミン(L-glutamine)、そして、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(penicillin-streptomysin)をKCLBから提供された指針に従って、2-3日毎にトリプシン処理して、細胞を継代培養した。培養物が80-90%合流度になるまでに培養し、がん細胞株の成長抑制実験のために、細胞を培養フラスコに連続して移した。
【0132】
正常細胞株(MRC-5及びCCD-18Co)を96ウェルプレートにウェル当たり約10000個の細胞でシーディングした。24時間後、表2に記載した化合物の4種を六つの濃度でそれぞれウェルに添加して、72時間インキュベーションした。
【0133】
【0134】
実験例1と同様、正常細胞株における細胞生存率及び分析を行った。
【0135】
図2は、正常細胞株における毒性試験の結果を示したものである。
図2から確認することができるように、アルベンダゾール-糖化合物(AL-1)の正常細胞株に対する毒性は、アルベンダゾール、フェンベンダゾール 、ドキソルビシンに比べて、非常に微弱であることが分かる。よって、アルベンダゾール-糖化合物(AL-1)は、がん細胞株の成長抑制効率に非常に優れ、正常細胞にはほとんど毒性を示さないため、がん細胞のみを標的として選択的に抗がん作用することを確認することができる。
【0136】
上記表3は、前記実施例によって製造されたベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物の4種のがん細胞株の成長抑制試験と正常細胞株の毒性試験の結果をドキソルビシンと対比して、相対評価したことを示したものである。
【0137】
【0138】
上記表3における一番目のカラムは、ドキソルビシン(doxorubicin)に対し、がん細胞株の成長抑制試験であり、AAは、対等(1-2倍)、Aは、若干微弱(3-5倍)、Bは、微弱(5-10倍)及び、Cは、非常に微弱(10倍以上)であることを意味する。二番目のカラムは、ドキソルビシン(doxorubicin)に対し、正常細胞株に対する毒性試験であり、AAは、毒性がほとんどない(1/10倍)、Aは、毒性が若干ある(1/3倍以下)、Bは、毒性が類似である(1-2倍)及び、Cは、毒性が高い(10倍以上)ことを意味する。
【0139】
上記表3のがん細胞株の成長抑制試験と、正常細胞株の毒性試験の結果、本発明によるベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物は、非常に優れるがん細胞の成長抑制活性を有し、正常細胞株の毒性試験では、毒性が非常に低く示された結果を確認した。よって、本発明によるベンゾイミダゾールカーバメート-糖化合物結合体化合物は、がん細胞のみを標的として選択的に抗がん作用することが分かる。
【0140】
今まで、本発明による新規なベンゾイミダゾール誘導体、この製造方法及び、これの抗がん剤としての用途に関する具体的な実施例について説明したが、本発明の範囲から外れない限りでは、様々な実施変形が可能であることは自明である。
【0141】
よって、本発明の範囲は、説明した実施例に限って定めてはならず、後述する特許請求の範囲のみならず、この特許請求の範囲と均等なものなどによって定めるべきである。
【0142】
すなわち、前述した実施例は、全ての面から例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならず、本発明の範囲は、詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲によって示され、その特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から想到する、全ての変更又は変形された形態は、本発明の範囲に含まれると解釈すべきである。