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  • 特許-シャープペンシル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】シャープペンシル
(51)【国際特許分類】
   B43K 21/00 20060101AFI20220707BHJP
   B43K 29/02 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
B43K21/00 D
B43K29/02 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021121171
(22)【出願日】2021-07-26
(62)【分割の表示】P 2017160092の分割
【原出願日】2017-08-23
(65)【公開番号】P2021165047
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2021-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】岡部 哲
(72)【発明者】
【氏名】小泉 裕介
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-27734(JP,U)
【文献】特開2000-318372(JP,A)
【文献】特開2004-98491(JP,A)
【文献】特開2011-5823(JP,A)
【文献】特開2001-347790(JP,A)
【文献】特開2000-255194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 21/00
B43K 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯ケースの尾端部に着脱可能に取り付けられたノックカバーのノック操作により、軸筒前端部の口先部より筆記芯が順次繰り出されるようにしたシャープペンシルであって、
前記ノックカバーは、筒状に形成された芯ケースの尾端部を外側から覆うようにして、芯ケースに嵌合により着脱可能に取り付けられ、かつ前記芯ケースの外周面には、前記ノックカバーの嵌合突起が形成され
前記芯ケースの外周面に形成されたノックカバーの嵌合突起は、芯ケースの尾端部側から芯ケースの前方に向って径を大きくする傾斜部と、前記傾斜部に続いて芯ケースの軸と平行な起立部と、前記起立部に対して芯ケースの軸に直交して径を小さくする立下がり部とが備えられていると共に、芯ケースの尾端部に筆記芯の色調と同色の消しゴムが着脱可能に装着されていることを特徴とするシャープペンシル。
【請求項2】
前記芯ケースに収容された筆記芯が、鉛筆芯体に染料を溶解または内包した樹脂を含む色鉛筆芯であることを特徴とする請求項1に記載のシャープペンシル。
【請求項3】
前記芯ケースに収容された筆記芯が、着色剤として摩擦熱等により変色する熱変色性マイクロカプセルを用いた熱変色芯であり、消しゴムの材質が、可塑剤を含まない低摩耗性のゴム弾性材料であることを特徴とする請求項1に記載のシャープペンシル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ノックカバーのノック操作により、筆記芯が順次繰り出されるシャープペンシルに関し、特に筆記芯の補充および消しゴムの利用に伴うノックカバーの脱着時において、筆記芯に折損(芯折れ)を与える問題を解消したシャープペンシルに関する。
【背景技術】
【0002】
シャープペンシルは、一般に尾端部に配置されたノックカバーをノック操作することにより、軸筒前端部の口先部より筆記芯が順次繰り出されるように作用する。この筆記芯の繰り出しならびに筆記芯を把持する機能を果すために、口先部付近に筆記芯把持チャック(以下、単にチャックとも呼ぶ。)が配置されており、このチャックは金属もしくは樹脂素材によるものが採用されている。
【0003】
この種のシャープペンシルにおいては、予備の筆記芯を収容する芯ケースの尾端部において、ノックカバーが嵌め合わせにより着脱可能に取り付けられると共に、芯ケースの先端部に直接もしくは他の部材を介してチャックを取り付けた商品が提供されている。
なお特許文献1には、芯ケースの尾端部にノックカバーが着脱可能に取り付けられると共に、芯ケースの先端部に芯ガイド部材を介してチャックを取り付けたシャープペンシルが開示されている。
【0004】
この特許文献1に開示された構成のノック式シャープペンシルによると、例えば筆記芯を補充しようとした場合、もしくは芯ケースに取り付けられた消しゴムを利用しようとした場合には、芯ケースからノックカバーを引き抜く操作が必要となる。
このノックカバーの引き抜きに際しては、ノックカバーに引きずられて芯ケースに後退させる力が働くために、芯ケースに直接もしくは他の部材を介して取り付けられたチャックに対しても、後退させる力が作用する。
【0005】
これにより、前記チャックはリング状の締め具内に引き込まれるために、筆記芯には前記チャックによって、より強力に芯を把持しようとする力が作用することになる。この作用は、芯ケースに対するノックカバーの嵌合力が大きいほど激しくなる。
したがって、特に機械的な強度に劣るカラー芯(色鉛筆芯)を用いる場合には、芯折れなどのダメージを受ける度合いが大きくなる。さらにノックカバーにクリップが形成されているタイプにおいては、前記クリップの存在によって指先におけるノックカバーの把持力を増加させることができるので、結果として前記したノックカバーの引き抜き操作において、チャックにより強い把持力を与えることになり、チャックによる筆記芯に与えるダメージは、より大きなものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-113986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、芯ケースに対するノックカバーの嵌合力が弱い場合には、芯ケースからノックカバーを引き抜く際に、前記した無理な力がチャックに加わるのを避けることができる。したがって、芯折れなどのダメージを与える度合いは少なくなる。しかしながら、ノックカバーの脱着操作において受けるクリック感に乏しいなど、ユーザが受ける感触が悪く、商品価値を損ねるという問題が発生し得る。
【0008】
また、逆に芯ケースに対するノックカバーの嵌合力が強い場合には、前記したとおり、チャックによって芯折れを発生させる度合いを大きくなるなどの問題を招くことになる。 前記した芯ケースに対するノックカバーの嵌合力は、各部品の成形寸法のバラつきに依存することが多く、芯ケースやノックカバーの樹脂成形における成形寸法の管理により、両者の嵌合力を常に一定の範囲に収めることには困難を伴う。
【0009】
この発明は、前記した技術的な観点に基づいてなされたものであり、特に芯ケースの一部に工夫を施すことで、芯ケースに対するノックカバーの脱着操作時において、ユーザが受ける感触を向上させると共に、芯ケースからノックカバーの引き抜き操作に伴うチャックによる芯折れを発生させる度合いを少なくさせることができるシャープペンシルを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題を解決するためになされたこの発明に係るシャープペンシルは、芯ケースの尾端部に着脱可能に取り付けられたノックカバーのノック操作により、軸筒前端部の口先部より筆記芯が順次繰り出されるようにしたシャープペンシルであって、前記ノックカバーは、筒状に形成された芯ケースの尾端部を外側から覆うようにして、芯ケースに嵌合により着脱可能に取り付けられ、かつ前記芯ケースの外周面には、前記ノックカバーの嵌合突起が形成され、前記芯ケースの外周面に形成されたノックカバーの嵌合突起は、芯ケースの尾端部側から芯ケースの前方に向って径を大きくする傾斜部と、前記傾斜部に続いて芯ケースの軸と平行な起立部と、前記起立部に対して芯ケースの軸に直交して径を小さくする立下がり部とが備えられていると共に、芯ケースの尾端部に筆記芯の色調と同色の消しゴムが着脱可能に装着されていることを特徴とする。
【0011】
この場合、前記芯ケースに収容される筆記芯は、鉛筆芯体に染料を溶解または内包した樹脂を含む色鉛筆芯であることが望ましい。
【0012】
そして、前記芯ケースに収容された筆記芯が、着色剤として摩擦熱等により変色する熱変色性マイクロカプセルを用いた熱変色芯であり、消しゴムの材質が、可塑剤を含まない低摩耗性のゴム弾性材料であることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
前記したシャープペンシルによると、芯ケースの外周面には、ノックカバーの嵌合突起が形成されると共に、前記嵌合突起に周方向に隣接して、芯ケースの筒状の外周面を貫通する開口部が形成される。
したがって、芯ケースの尾端部にノックカバーを脱着させるに際して、芯ケースに形成された前記開口部が、ノックカバーの嵌合突起に対して効果的にベンディング(撓ませる)作用を与えることができる。
【0014】
これにより、芯ケースとノックカバーとの成形上のバラつき起因する両者間の嵌合力の変動を大幅に緩和することができる。したがって、特に芯ケースに対するノックカバーの装着時において、ユーザは感触として一定のクリック感を得ることができると共に、芯ケースからノックカバーの引き抜き操作に伴い、無理な力がチャックに加わるのを避けることができる。これにより、チャックによる芯折れなどの発生度合いを少なくさせたシャープペンシルが提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明に係るシャープペンシルの全体構成を示した一部断面図である。
図2】(A)は芯ケースの正面図、(B)はその前半部を破断した状態の断面図である。
図3】(A)は図2に示す芯ケースを軸方向に90度回動させた状態の正面図、(B)はその前半部を破断した状態の断面図である。
図4図1における鎖線で囲まれたa部分を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明に係るシャープペンシルについて、その全体構成を図1に基づいて説明する。このシャープペンシルは、樹脂製の軸筒1により外郭が構成されており、軸筒1の前半部は若干縮径されて、その外周にグリップ部材2が取り付けられている。
符号3は、前記軸筒1の先端部に取り付けられた口先部を示しており、この口先部3の後端部内周面に形成された雌ねじが、前記軸筒1の前端部外周面に形成された雄ねじに螺合されることで、口先部3は軸筒1に対して着脱可能に取り付けられている。
【0017】
前記軸筒1内には円筒状の芯ケース4が軸筒1と同軸状に収容されており、この芯ケース4の先端部内周面には、チャック5の後端部が嵌合されて連結されている。
このチャック5は全体が弾性を有する樹脂素材により構成され、その軸心に沿って筆記芯Lを通す芯挿通孔が形成されている。またチャック5の先端部は2つに分割されて、分割された先端部がリング状に形成された金属製の締め具6内に遊嵌されるようにして装着されている。このリング状の前記締め具6は、前記チャック5の周囲を覆うようにして配置された円筒状に形成されたチャック収容体7の先端部内面に装着されている。
【0018】
前記口先部3より突出するようにして先端パイプ8が配置されており、この先端パイプ8の基端部は、前記口先部2内に位置する樹脂製の保持チャック9の先端部内面に嵌合されて取り付けられている。
前記樹脂製の保持チャック9は、軸心部分に芯挿通孔が形成されると共に、この芯挿通孔の外側に軸方向に沿って環状の溝9aが施されている。この構成により保持チャック9は、軸心部分の芯挿通孔に位置する筆記芯Lに対して軽い摩擦を与えた状態で、筆記芯Lを一時的に保持する作用を果たす。
【0019】
一方、円筒状のチャック収容体7の後端部と、芯ケース4との間の軸方向の空間部には、コイル状のチャックスプリング11が配置されている。このチャックスプリング11の作用により、チャック収容体7内のチャック5は、芯ケース4と共に軸筒1内で後退する方向に付勢されている。
これにより、前記チャック5の先端部は、リング状の締め具6内に収容され、筆記芯Lは前記チャック5に把持された状態に保たれる。
【0020】
前記軸筒1の後端部に突出する芯ケース4の尾端部には、消しゴム13が芯ケース4の芯補給口を覆うようにして着脱可能に装着されている。そして、この消しゴム13、および芯ケース4の尾端部を外側から覆うようにして、ノックカバー14が芯ケース4に嵌合により着脱可能に取り付けられている。なお、ノックカバー14の端部には、クリップ15と一体に形成されたクリップの支持体15aが嵌め込まれて結合されている。
【0021】
図1に示すシャープペンシルによると、軸筒1の後端部に突出するノックカバー14(図示例においては、ノックカバーの先端部に取り付けられたクリップ支持体15a)をノック操作することで、前記芯ケース4が軸筒1内において前進し、これに連結されたチャック5も筆記芯Lを把持した状態で前進する。そして、チャック5の先端部が締め具6から突出することで、チャック5が開いて筆記芯Lの把持状態が解除される。
また前記ノック操作の解除により、チャックスプリング11の作用によりチャック5、芯ケース4は軸筒1内において後退する。
【0022】
この時、筆記芯Lは保持チャック9の芯挿通孔内において摩擦により一時的に保持される。この状態でチャック5は後退して、その先端部が前記締め具6内に収容されることで、筆記芯Lは再びチャック5によって把持される。
すなわち、前記したノックカバー14へのノック操作の繰り返しによる前記チャック5の前進および後退運動により、チャック5は筆記芯Lの解除と把持を行い、これにより筆記芯Lは先端パイプ8から順次前方に繰り出されるように作用する。
【0023】
図2および図3は、芯ケース4について、それぞれ軸方向に90度回動させた状態の正面図および断面図で示している。
この芯ケース4は、前記したとおり円筒状に形成されて、尾端部から前端部にわたって、外径が段状に細くなるように形成されている。その尾端部には芯補給口を兼ねた消しゴムの収容口4aが形成されており、その若干前方には鍔状に形成された受け部4bが外側に突出して形成されている。この受け部4bは、図1に示すように芯ケース4の尾端部にノックカバー14を装着した場合において、芯ケース4の前端部が当接して、ストッパとしての機能を果たすものとなる。
【0024】
前記した鍔状の受け部4bと、芯ケース4の尾端部との間には、芯ケースの180度対向する外周面に、ノックカバー14の内周面に嵌合してノックカバー14を保持する嵌合突起4cが形成されている。なお、この嵌合突起4cのより詳細な形態と、ノックカバー14側に形成された円環状の突部との関係は、図4に基づいて後で説明する。
【0025】
前記嵌合突起4cに周方向に隣接して、芯ケース4の筒状の外周面を貫通する開口部4dが、対向するようにして形成されている。そして、これらの開口部4dは、それぞれ軸方向に長く形成されている。すなわち、前記嵌合突起4cと開口部4dとは、芯ケース4の周方向に沿って90度間隔で交互に形成されている。
なお、前記したように開口部4dを形成することにより、開口部4dに隣接する嵌合突起4cの樹脂素材には、効果的にベンディング(撓ませる)作用を与えることができる。また、前記開口部4dは、軸方向に長く形成されることにより、前記ベンディング作用を、より大きく設定することができる。このベンディングによる作用効果については、図4に基づいて後で説明する。
【0026】
前記した鍔状の受け部4bの前方、すなわち芯ケース4の長さ方向のほぼ中央部における若干外径を細くする部分には、断面が円弧状の突起4eが環状に形成されている。
この円弧状の突起4eは、図1に示すように軸筒1の内周面との間の隙間をなるべく少なくして、ノック操作時において、軸筒1に対して芯ケース4が軸に直交する方向にガタつくのを防止するように作用する。
【0027】
また、芯ケース4の先端部の内周面には、リング状に成形された2つの突条4fが形成されている。この突条4fはチャック5の端部に嵌合して、チャック5を芯ケース4の先端部に、ぐら付きなく取り付けることに寄与する。さらに、芯ケース4の先端部の外周面には、先端部の外径を縮小する段部4gが形成されている。この段部4gは、図1に基づいて説明したチャックスプリング11の芯ケース4側の受け部として機能する。
【0028】
一方、芯ケース4の前記した円弧状突起4eと先端部との間には、対向するようにして一対の小径孔4hが形成されている。この小径孔4hは、芯ケース4を射出成形するにあたり、生成されるものである。
すなわち、芯ケース4を射出成形するには、図示せぬ第1金型と第2金型(上下の割り型)、および芯ケース4の軸孔を形成するためのコアピンが用いられる。コアピンは、第1金型と第2金型との間に、正確に位置させる必要があり、このために第1金型と第2金型には、コアピンを中央に支持するために小径の支持ピンがそれぞれ対向するようにして形成される。
したがって、前記一対の小径孔4hは、第1金型と第2金型の離型の際に、それぞれの金型に形成された前記支持ピンの抜き孔として残されたものとなる。
【0029】
図4は、図1に示すシャープペンシルにおける鎖線で囲まれたa部分を拡大して示した断面図である。
図4に示されるように、芯ケース4の尾端部に装着されるノックカバー14の内面には、断面が円弧状に形成された環状の突部14aが内周面に沿って形成されている。
一方、芯ケース4の外周面には、前記したとおり、ノックカバー14に対する嵌合突起4cが形成されている。この芯ケース4側に形成された嵌合突起4cは、図4に示すように、芯ケース4の尾端部側から芯ケースの前方に向って径を大きくする傾斜部4c1と、前記傾斜部4c1に続いて芯ケース4の軸と平行な起立部4c2と、前記起立部4c2に対して、芯ケース4の軸に直交して径を小さくする立下がり部4c3が備えられている。
【0030】
したがって、芯ケース4の尾端部にノックカバー14を装着する場合には、ノックカバー14側の環状の突部14aが、芯ケース4側の傾斜部4c1を乗り上げ、続いて突部14aは起立部4c2の上を移動する。この時、芯ケース4に形成された前記開口部4dによる前記したベンディング作用により、前記嵌合突起4cは若干軸心側に撓みつつ、そのまま環状の突部14aは、立下がり部4c3に落ち込む。
すなわち、図4に示す状態において、ノックカバー14の前端部が図1に示す鍔状の受け部4bに当接し、芯ケース4に対するノックカバー14の装着が終了する。
【0031】
この時、芯ケース4側の嵌合突起4cは、前記した軸心側への撓みが戻り、この戻りの反作用によりノックカバー14との間で軽い衝撃音が生ずる。この時同時に、ユーザはノックカバー14の装着の感触として、一定のクリック感を得ることができる。
これによりユーザは、ノックカバー14が芯ケース4側に確実に装着されたことを、前記した軽い衝撃音と共に、クリックの感触として確かめることができる。
【0032】
一方、芯ケース4からノックカバー14を引き抜く場合には、図4に示す状態から、ノックカバー14側の環状の突部14aが、芯ケース4側の起立部4c2に乗り上げる。
この時、前記したベンディング作用により、前記嵌合突起4cは若干軸心側に撓みつつ、そのまま環状の突部14aは傾斜部4c1に沿って移動し、ノックカバー14を芯ケース4から引き抜くことができる。
【0033】
このように、芯ケース4からノックカバー14を引き抜く場合においても、前記したベンディング作用により、嵌合突起4cは若干軸心側に撓む動作がなされるので、芯ケース4とノックカバー14との成形上のバラつき起因して、両者間の嵌合力のバラつきを効果的に抑えることができる。したがって、芯ケース4からノックカバー14の引き抜き操作に伴い、無理な力がチャック5に加わるのを避けることができる。
これにより、チャック5による芯折れなどの発生度合いを少なくさせたシャープペンシルが提供可能となる。
【0034】
ところで、この発明に係るシャープペンシルによると、芯ケース4からノックカバー14を引き抜く操作において、チャック5による芯折れなどの発生度合いを少なくさせることができるので、この特性を利用して、筆記芯として機械的に脆弱な色鉛筆芯を好適に利用することができる。
シャープペンシルに好適に利用可能な色鉛筆芯は、鉛筆芯体に染料を溶解または内包した樹脂を含むことを特徴とするものである。
【0035】
すなわち、この色鉛筆芯は、染料を内包した樹脂が有機溶剤に可溶であり、また染料を溶解または内包した樹脂が染着樹脂であって、これを鉛筆芯体の気孔内に充填させることにより構成される。
この色鉛筆芯によると、強度および耐光性を損なうことなく、色相および消しゴム消去性に優れた特性を発揮できるものとなる。
そして、この色鉛筆芯を前記したこの発明に係るシャープペンシルにおいて利用することにより、この色鉛筆芯の特性を十分に発揮させることができる。
【0036】
一方、この発明に係るシャープペンシルに装着される消しゴム13を、前記した筆記芯(色鉛筆芯)Lで筆記した色調と同色とすれば、筆記した描線等を消しゴム13によりを消した時に、前記消しゴム13による汚れを目立たなくさせることができる。
なお、色鉛筆芯で筆記した色調と同色の消しゴム13とは、人間の視覚を通して同色と認識できる範囲であると言うことができ、若干の色の濃淡の相異、明暗の相異、強弱の相異は同色と見做すことができる。具体的にはマンセル表示系の色相で、10色相以内、明度および彩度で3以内は、同色と見ることができる。
【0037】
また、色鉛筆芯は、着色剤として摩擦熱等により変色する熱変色性マイクロカプセルを用いた熱変色芯としたものでもよい。熱変色芯、少なくとも(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とからなる感温変色性色彩記憶組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を10重量%以上とし、賦形材と、結合剤と、バインダー樹脂とからなり、常温(例えば25℃)で所定の色彩(第1色)を維持し、所定温度(例えば60℃)まで昇温させると別の色彩(第2色)へと変化し、その後、所定温度(例えば-10℃)まで冷却させると、再び元の色彩(第1色)へと復帰する性質を有する。一般的には第2色を無色とし、第1色(例えば赤)で筆記した描線を昇温させて無色とする構成でもよい。従って、描線が筆記された紙面等に対して摩擦体9によって擦過して摩擦熱を生じさせ、それによって描線を無色に変化させる。なお、当然のことながら第2色は、無色以外の有色でもよい。
【0038】
また、熱変色芯とした場合、消しゴム13の材質を、シリコーンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等のゴム材質やスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマーといったゴム弾性材料、2種以上のゴム弾性材料の混合物、及び、ゴム弾性材料と合成樹脂との混合物で構成された可塑剤を含まない低摩耗性のゴム弾性材料が挙げられる。ここで挙げる低摩耗性とは、JIS K7204試験法H22でのテーパー摩耗量が15mg未満である摩擦具とすることが好ましい。
【0039】
なお、以上説明したシャープペンシルにおいては、芯ケース4に形成された開口部4dと、この開口部4dに周方向に隣接させて形成された嵌合突起4cは、芯ケース4の周方向に沿って90度間隔で交互に形成されている。
この開口部4dと嵌合突起4cは、樹脂成形による離型を考慮した場合には、図に示した構成が好ましいが、開口部4dと嵌合突起4cのそれぞれ数は、図示例に限られることなく、周方向に沿ってそれぞれ3つ以上形成されていても、同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 軸筒
2 グリップ部材
3 口先部
4 芯ケース
4a 消しゴム収容口(芯補給口)
4b 受け部
4c 嵌合突起
4d 開口部
4e 円弧状突起
4f 突条
4g 段部
4h 小径孔
5 チャック
6 締め具
7 チャック収容体
8 先端パイプ
9 保持チャック
9a 環状溝
11 チャックスプリング
13 消しゴム
14 ノックカバー
14a 環状突部
15 クリップ
15a クリップ支持体
L 筆記芯
図1
図2
図3
図4