(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】超音波探傷データ処理プログラム、超音波探傷データ処理装置及び被検体の判定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/44 20060101AFI20220707BHJP
【FI】
G01N29/44
(21)【出願番号】P 2021158664
(22)【出願日】2021-09-29
【審査請求日】2021-09-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500171268
【氏名又は名称】三菱重工パワー検査株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】竹川 勝也
(72)【発明者】
【氏名】門下 寛孝
(72)【発明者】
【氏名】田崎 渉
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-028899(JP,A)
【文献】特開2002-195988(JP,A)
【文献】特開2005-274557(JP,A)
【文献】特開2019-082397(JP,A)
【文献】特開平09-239539(JP,A)
【文献】特開2011-169841(JP,A)
【文献】特開2013-156166(JP,A)
【文献】特開2012-112658(JP,A)
【文献】特開昭63-259461(JP,A)
【文献】特開2013-024817(JP,A)
【文献】特開2012-149980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 ー G01N 29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体である配管の円周方向の溶接部に対して超音波探傷を行うことによって予め得られている探傷データを取得して処理するための超音波探傷データ処理プログラムであって、
前記被検体は、裏波を有する溶接部を含み、
外部の装置に記憶されている探傷データを読み込む探傷データ読込ステップと、
前記裏波の反射波である裏波反射波の有無を判定するための裏波判定領域を設定するステップと、
前記探傷データ読込ステップで読み込んだ前記探傷データに基づいて、前記裏波判定領域内に存在する前記反射波の状態から前記裏波反射波を特定するステップと、
前記特定するステップで特定した前記裏波反射波の位置に基づいて、前記裏波の状態を判定するステップと、
を演算装置に実行させ、
前記設定するステップでは、前記裏波判定領域として第1裏波判定領域と、前記第1裏波判定領域よりも前記溶接部の中心からの前記
配管の軸線方向の距離が大きい第2裏波判定領域とを設定可能であり、
前記判定するステップでは、前記第2裏波判定領域内に前記裏波反射波が存在する場合には、前記第2裏波判定領域内に前記裏波反射波が存在せず、且つ、前記第1裏波判定領域内に前記裏波反射波が存在する場合よりも、前記裏波の状態が良好ではないと判定する
超音波探傷データ処理プログラム。
【請求項2】
前記探傷データのうち、少なくとも前記裏波の存在が推定される領域に対応した前記探傷データを抽出し、前記反射波の信号強度を示す画像を表示装置に表示させるための指令を生成するステップ、
を前記演算装置に実行させる
請求項1に記載の超音波探傷データ処理プログラム。
【請求項3】
前記探傷データのうち、少なくとも前記裏波の存在が推定される領域に対応した前記探傷データを抽出し、前記反射波の信号強度を示す画像を前記裏波判定領域とともに表示装置に表示させるための指令を生成するステップ、
を前記演算装置に実行させる
請求項1に記載の超音波探傷データ処理プログラム。
【請求項4】
前記探傷データ読込ステップは、
前記被検体の表面側の領域をクリーピング波により探傷することで得られた第1探傷データを前記被検体における位置情報とともに読み込む第1読み込みステップと、
前記表面側の領域よりも前記被検体の表面から遠い領域を含む領域を縦波の超音波により探傷することで得られた探傷データであって、前記第1探傷データを得るための探傷時における探傷子の前記軸線方向の位置と同じ位置に配置された前記探傷子で探傷することで得られた第2探傷データを前記位置情報とともに読み込む第2読み込みステップと、
を含み、
前記第1読み込みステップで読み込んだ前記第1探傷データの信号強度を示す第1探傷画像と、前記第2読み込みステップで読み込んだ前記第2探傷データの信号強度を示す第2探傷画像とを、表示装置に表示させる一つの表示画面に表示させるための指令を前記位置情報を参照して生成するステップと、
を前記演算装置に実行させ、
前記指令を生成するステップでは、前記表示画面における所定方向の位置が同じであれば、前記第1探傷画像において、前記所定方向に対応する方向の前記被検体上の位置と、前記第2探傷画像において、前記所定方向に対応する方向の前記被検体上の位置とが一致するように前記指令を生成する
請求項1乃至3の何れか一項に記載の超音波探傷データ処理プログラム。
【請求項5】
被検体である配管の円周方向の溶接部に対して超音波探傷を行うことによって予め得られている探傷データを取得して処理するための超音波探傷データ処理装置であって、
前記被検体は、裏波を有する溶接部を含み、
外部の装置に記憶されている探傷データを読み込んで記憶する記憶装置と、
前記裏波の反射波である裏波反射波の有無を判定するための裏波判定領域を設定する評価対象範囲設定部と、
前記
記憶装置から読み込んだ前記探傷データに基づいて、前記裏波判定領域内に存在する前記反射波の状態から前記裏波反射波を特定する特定部と、
前記特定部で特定した前記裏波反射波の位置に基づいて、前記裏波の状態を判定する判定部と、
を備え、
前記評価対象範囲設定部は、前記裏波判定領域として第1裏波判定領域と、前記第1裏波判定領域よりも前記溶接部の中心からの前記
配管の軸線方向の距離が大きい第2裏波判定領域とを設定可能であり、
前記判定部は、前記第2裏波判定領域内に前記裏波反射波が存在する場合には、前記第2裏波判定領域内に前記裏波反射波が存在せず、且つ、前記第1裏波判定領域内に前記裏波反射波が存在する場合よりも、前記裏波の状態が良好ではないと判定する
超音波探傷データ処理装置。
【請求項6】
被検体である配管の円周方向の溶接部における裏波の状態を判定する被検体の判定方法であって、
外部の装置に記憶されている探傷データを読み込む探傷データ読込ステップと、
前記裏波の反射波である裏波反射波の有無を判定するための裏波判定領域を設定するステップと、
前記探傷データ読込ステップで読み込んだ前記探傷データに基づいて、前記裏波判定領域内に存在する前記反射波の状態から前記裏波反射波を特定するステップと、
前記特定するステップで特定した前記裏波反射波の位置に基づいて、前記裏波の状態を判定するステップと、
を備え、
前記設定するステップでは、前記裏波判定領域として第1裏波判定領域と、前記第1裏波判定領域よりも前記溶接部の中心からの前記
配管の軸線方向の距離が大きい第2裏波判定領域とを設定可能であり、
前記判定するステップでは、前記第2裏波判定領域内に前記裏波反射波が存在する場合には、前記第2裏波判定領域内に前記裏波反射波が存在せず、且つ、前記第1裏波判定領域内に前記裏波反射波が存在する場合よりも、前記裏波の状態が良好ではないと判定する
被検体の判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波探傷データ処理プログラム、超音波探傷データ処理装置及び被検体の判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体に対して超音波探傷を行うことで、被検体の内部を検査することが広く行われている。超音波探傷では、例えば被検体に送信した超音波の反射波に基づいて探傷画像を生成し、生成した探傷画像から被検体の内部のきずの有無やきずの位置を判断することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、探傷画像には、被検体のきずに起因する反射波(きずエコー)の他に、被検体の形状に起因する反射波(形状エコー)が同時に現れる。超音波探傷により被検体のきずの有無やきずの位置を判断するには、きずエコーと形状エコーを識別する必要がある。しかし、きずエコーと形状エコーを識別するのは難しい場合があるため、検査者の熟練度によって識別結果に違いが生じるおそれがある。そのため、検査者の熟練度によらず、被検体のきずの有無やきずの位置を精度よく判断したいとのニーズがある。
また、形状エコーに基づいて、被検体の形状、特に外部からは視認し難い部位の形状の良否の判断が求められる場合がある。例えば、円管同士を突合せ溶接によって接合した部における裏波は、外部から視認し難い場合がある。このような場合において、検査者の熟練度によらず、裏波の状態の良否を判断したいとのニーズがある。
【0005】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、検査者の熟練度によらず、超音波探傷の結果に基づく被検体の状態についての判断の精度を向上できる超音波探傷データ処理プログラム、超音波探傷データ処理装置及び被検体の判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る超音波探傷データ処理プログラムは、
被検体に対して超音波探傷を行うことによって得られた探傷データを処理するための超音波探傷データ処理プログラムであって、
前記被検体は、裏波を有する溶接部を含み、
前記裏波の反射波である裏波反射波を特定するステップと、
前記特定するステップで特定した前記裏波反射波の位置に基づいて、前記裏波の状態を判定するステップと、
を演算装置に実行させる。
【0007】
(2)本開示の少なくとも一実施形態に係る超音波探傷データ処理装置は、
被検体に対して超音波探傷を行うことによって得られた探傷データを処理するための超音波探傷データ処理装置であって、
前記被検体は、裏波を有する溶接部を含み、
前記裏波の反射波である裏波反射波を特定する特定部と、
前記特定部で特定した前記裏波反射波の位置に基づいて、前記裏波の状態を判定する判定部と、
を備える。
【0008】
(3)本開示の少なくとも一実施形態に係る被検体の判定方法は、
被検体の溶接部における裏波の状態を判定する被検体の判定方法であって、
前記裏波の反射波である裏波反射波を特定するステップと、
前記特定するステップで特定した前記裏波反射波の位置に基づいて、前記裏波の状態を判定するステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、検査者の熟練度によらず、超音波探傷の結果に基づく被検体の状態についての判断の精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る超音波探傷データ処理装置の全体構成図である。
【
図2】一実施形態に係る被検体の評価方法における概略の流れを示すフローチャートである。
【
図3】探傷ステップで行われる超音波探傷検査の様子を模式的に示す図である。
【
図4】設定ステップで行われる処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】第1判定条件を設定するための判定条件設定画面である。
【
図6】第2判定条件を設定するための判定条件設定画面である。
【
図9】表示ステップで行われる処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】判定条件切替ステップにおける処理を示すフローチャートである。
【
図13】表示装置で表示される3次元探傷画像についての表示画像である。
【
図14】他の実施形態である、被検体の表面からの距離が異なる2つの領域を探傷した場合についての探傷範囲について説明するため模式的な図である。
【
図15】他の実施形態に係る判定結果表示画面の一部について示す図である。
【
図16】他の実施形態に係る判定結果表示画面の一部について示す図である。
【
図17】裏波の形状について説明するための模式的な図である。
【
図18】第3の実施形態における設定ステップS3で行われる処理の流れを示すフローチャートである。
【
図19】第3の実施形態における表示ステップS5で行われる処理の流れを示すフローチャートである。
【
図20】裏波判定領域について説明するための図である。
【
図21】さらに他の実施形態における判定結果表示画面を示す図である。
【
図22】さらに他の実施形態における裏波判定結果表示画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
図1は、一実施形態に係る超音波探傷データ処理装置の全体構成図である。超音波探傷データ処理装置1は、被検体に対して超音波探傷を行うことによって得られた探傷データを処理するための超音波探傷データ処理装置である。すなわち、超音波探傷データ処理装置1は、超音波探傷を行うことによって予め得られている探傷データを取得して処理するための超音波探傷データ処理装置であり、例えばコンピュータ等によって構成される。
超音波探傷データ処理装置1は、演算装置であるCPU2と、外部の装置からの探傷データを読み込んで記憶する記憶装置3と、を備えている。なお、上述した外部の装置とは、例えば後述する
図3に示す超音波探傷装置10のような可搬の機器や、工場等の事業所等に設置された記憶装置、ネットワーク上の記憶装置等、一実施形態に係る超音波探傷データ処理装置1以外の種々の装置の何れかである。
【0013】
CPU2は、少なくとも評価対象範囲設定部21及び表示指令生成部22の各機能ブロックを仮想的に有している。
評価対象範囲設定部21は、後述するように、被検体の内部における評価対象範囲を設定する。また、表示指令生成部22は、後述するように、探傷データのうち、評価対象範囲内の領域に対応した評価対象データを抽出し、被検体の内部の各位置における評価対象データの信号強度(エコー高さ)を示す探傷画像を表示装置5に表示させるための指令を生成する。表示指令生成部22で生成された表示指令は、外部の表示装置5に出力される。表示装置5は、表示指令生成部22で生成された表示指令に基づく画像を表示する。
【0014】
これにより、一実施形態の超音波探傷データ処理装置1では、評価対象範囲内の領域に対応した探傷画像に基づいて、被検体のきずの位置を判定できる。したがって、評価対象範囲を被検体の形状に応じて適宜設定することで、探傷画像に形状エコーが現れるのを抑制できる。これにより、検査者の熟練度によらず、きずエコーと形状エコーとの識別精度を向上できる。
【0015】
図2は、一実施形態に係る被検体の評価方法における概略の流れを示すフローチャートである。一実施形態に係る被検体の評価方法は、探傷ステップS1と、設定ステップS3と、表示ステップS5と、評価ステップS7とを含む。
【0016】
探傷ステップS1は、超音波探傷装置を用いて、被検体に対して超音波探傷を行うことによって探傷データを得るステップである。
図3は、探傷ステップS1で行われる超音波探傷検査の様子を模式的に示す図である。一実施形態に係る被検体の評価方法では、被検体は、例えばボイラ等で使用される配管7である。以下の説明では、被検体である配管の円周方向の溶接部8の近傍に生じるきずの有無を検査するものとする。
探傷ステップS1で行われる超音波探傷検査で用いられる超音波探傷装置10は、例えばフェイズドアレイ法による超音波探傷やTOFD法による超音波探傷を行う装置である。以下の説明では、フェイズドアレイ法による超音波探傷を行う場合を例に挙げて説明するが、TOFD法による超音波探傷を行ってもよい。
【0017】
探傷ステップS1で行われる超音波探傷検査では、例えば探傷子11は、溶接部8を挟んで配管7の管軸方向に離間した2カ所に配置される。そして、2つの探傷子11を配管7の周方向に移動させながら超音波探傷を行う。
説明の便宜上、配管7の管軸方向に関し、
図3における図示左側をボイラ前側と称し、図示右側をボイラ後側と称する。
一実施形態では、
図3において、超音波探傷装置10は、セクタ走査と呼ばれる電子走査の走査面が、配管7の管軸方向及び配管の板厚方向に沿って延在する平面に沿うように超音波を走査する。
【0018】
なお、
図3に示した超音波探傷装置10では、溶接部8を挟んで配管7の管軸方向に離間して配置された一方の探傷子11及び他方の探傷子11は、一方の探傷子11と他方の探傷子11との相対位置が変化しないように互いに結合されているとよい。また、一方の探傷子11及び他方の探傷子11は、配管7における周方向位置が同じ位置になるように、配管7の外周を周方向に沿って移動可能に構成されているとよい。
具体的には、一方の探傷子11及び他方の探傷子11は、探傷子11の移動装置56に取り付けられている。移動装置56は、手動、又はモータ等の駆動力によって配管7の周方向に探傷子11を移動可能に構成されている。なお、
図3に示す移動装置56は、2つの探傷子11同士の周方向の位置がずれないように、且つ、配管7の軸線AXc方向の離間距離が変化しないように探傷子11を移動可能に構成されている。例えば、移動装置56は、
図3に示すように、一方の探傷子11を保持する部材と、他方の探傷子11を保持する部材とが連結されて一体化されていてもよい。
図3に示す移動装置56は、配管7に対して探傷子11を一旦装着すれば、配管7の周方向に探傷子11を移動可能であるが、探傷子11が軸線AXc方向には移動しないように構成されている。
一方の探傷子11及び他方の探傷子11の上記周方向への移動距離は、エンコーダ13によって計測できる。
【0019】
超音波探傷によって得られた探傷データは、エンコーダ13によって計測した、上記周方向における基準位置からの上記周方向への移動距離の情報とともに、超音波探傷装置10の不図示の記憶装置に格納される。
なお、
図3に示した一実施形態の超音波探傷装置10では、配管7の円周方向の溶接部8の1カ所につき、ボイラ前側の探傷子11による直射法による探傷データと、ボイラ前側の探傷子11による1回反射法による探傷データと、ボイラ後側の探傷子11による直射法による探傷データと、ボイラ後側の探傷子11による1回反射法による探傷データとの4つの探傷データが得られる。以下の説明では、これら4つの探傷データの組を探傷データグループと呼ぶこともある。
なお、直射法による探傷データとは、探傷子11から直接出射された超音波によるエコーのデータのことである。また、1回反射法による探傷データとは、探傷子11から出射された超音波を被検体の内部で1回反射させた超音波によるエコーのデータのことである。
一実施形態の超音波探傷装置10では、上記4つの探傷データの組が、探傷箇所の数だけ得られる。
【0020】
設定ステップS3は、被検体の内部における評価対象範囲を設定する等、後述する表示ステップS5を実施するための準備を行うためのステップである。
探傷ステップS1で取得された探傷データには、被検体のきずに起因する反射波(きずエコー)のデータの他に、被検体の形状に起因する反射波(形状エコー)のデータが含まれる。そのため、探傷データに基づいて得られる探傷画像には、きずエコーの他に、形状エコーが同時に現れる。超音波探傷により被検体のきずの有無やきずの位置を判断するには、きずエコーと形状エコーとを識別する必要がある。しかし、きずエコーと形状エコーとを識別するのは難しい場合があるため、検査者の熟練度によって識別結果に違いが生じるおそれがある。
そこで、一実施形態に係る被検体の評価方法では、設定ステップS3において、被検体の内部における後述する評価対象範囲を設定することにより、後述する表示ステップS5で表示装置5に表示させる探傷画像に探傷画像に評価対象範囲外の形状エコーが現れるのを抑制する。なお、設定ステップS3における処理の詳細については、後で説明する。
【0021】
表示ステップS5は、探傷データのうち、設定ステップS3で設定された評価対象範囲内の領域に対応した評価対象データを抽出し、被検体の内部の各位置における評価対象データの信号強度を示す探傷画像を表示装置5に表示させるステップである。表示ステップS5における処理の詳細については、後で説明する。
【0022】
評価ステップS7は、表示装置5に表示された探傷画像に基づいて評価対象範囲内のきずの有無を評価するステップである。評価ステップS7では、表示装置5に表示された探傷画像に基づく検査者による評価対象範囲内のきずの有無の確認等が行われる。評価ステップS7の詳細については、後で説明する。
【0023】
(設定ステップS3について)
以下、設定ステップS3の詳細について説明する。
図4は、設定ステップS3で行われる処理の流れを示すフローチャートである。
設定ステップS3では、以下に述べる探傷データ読込ステップS31と、判定条件設定ステップS33と、開先形状設定ステップS35と、評価対象範囲入力ステップS37と、評価対象範囲設定ステップS39とが実施される。
【0024】
設定ステップS3においてCPU2で実行されるプログラムは、被検体に対して超音波探傷を行うことによって得られた探傷データを処理するための超音波探傷データ処理プログラムである。
説明の便宜上、以下の説明では、探傷データ読込ステップS31から評価対象範囲設定ステップS39が順次実行されるものとして説明する。しかし、探傷データ読込ステップS31から開先形状設定ステップS35については、その実行順序は以下に説明する順序に限定されず、何れのステップから実行されてもよい。なお、評価対象範囲入力ステップS37は、探傷データ読込ステップS31から開先形状設定ステップS35が実行された後に実行される。また、評価対象範囲設定ステップS39は、評価対象範囲入力ステップS37が実行された後、実行される。
【0025】
(探傷データ読込ステップS31)
探傷データ読込ステップS31は、超音波探傷によって得られた探傷データを読み込むステップである。CPU2は、超音波探傷によって得られた探傷データを読み込むように指示されると、探傷データを読み込んで記憶装置3に記憶させる。なお、探傷データ読込ステップS31では、例えば超音波探傷データ処理装置1と超音波探傷装置10等の上述した外部の装置とを有線又は無線で接続して探傷データを読み込んでもよく、メモリカードなどの記録媒体を介して探傷データを読み込んでもよく、通信網等を介して探傷データを読み込んでもよい。
【0026】
(判定条件設定ステップS33)
判定条件設定ステップS33は、探傷データ読込ステップS31で読み込んだ探傷データにおいて、探傷検査の結果に対する合否判定を行う際の判定条件等を設定するためのステップである。CPU2は、判定条件の設定が指示されると、例えば、
図5及び
図6に示すような判定条件設定画面100を表示装置5に表示させる。
判定条件設定画面100は、探傷画像を表示する際のエコー高さに応じた表示色の設定や、探傷検査の結果に対する合否判定のための閾値を設定するための設定画面である。なお、一実施形態に係る探傷画像の詳細については、後で説明する。
【0027】
一実施形態では、探傷検査の結果に対する合否判定のための閾値について、第1条件と第2条件との2つの判定条件を設定できる。
図5は、第1判定条件を設定するための判定条件設定画面100であり、
図6は、第2判定条件を設定するための判定条件設定画面100である。
【0028】
一実施形態では、例えば第2判定条件は、第1判定条件よりも軽微なきずであっても不合格と判定されるように、第1判定条件よりも厳しい条件に設定される。
【0029】
第1判定条件切替ボタン101は、
図6に示した第2判定条件を設定するための判定条件設定画面100から
図5に示した第1判定条件を設定するための判定条件設定画面100に切り替えるための機能ボタンである。
第2判定条件切替ボタン102は、
図5に示した第1判定条件を設定するための判定条件設定画面100から
図6に示した第2判定条件を設定するための判定条件設定画面100に切り替えるための機能ボタンである。
【0030】
エコー高さ設定領域110は、探傷画像における表示色とエコー高さとの関係を設定するための表示領域であり、色設定部111a~111eと、エコー高さ設定部112a~112dを含む。
色設定部111a~111eでは、探傷画像における表示色をエコー高さ設定部112a~112dで設定されるエコー高さに応じて設定できる。色設定部111a~111eの何れか一つが選択されると、不図示の色選択用のダイヤログが表示され、該ダイヤログから任意の色を選ぶことができるようになる。該ダイヤログから何れかの色が指定されると、指定された色が選択されている色設定部111a~111eの設定色として設定される。
エコー高さ設定部112a~112dでは、色設定部111a~111eで設定された色とエコー高さとの関係を設定できる。エコー高さ設定部112a~112dの何れか一つが選択されると、エコー高さが入力可能となる。エコー高さ設定部112a~112dで入力可能なエコー高さの範囲は0%以上100%以下である。
【0031】
後述する探傷画像では、エコー高さ設定部112aで設定されたエコー高さ未満の領域が、色設定部111aで設定された設定色で表示される。
同様に、探傷画像では、エコー高さ設定部112aで設定されたエコー高さ以上であり、且つ、エコー高さ設定部112bで設定されたエコー高さ未満の領域が、色設定部111bで設定された設定色で表示される。
後述する探傷画像では、エコー高さ設定部112bで設定されたエコー高さ以上であり、且つ、エコー高さ設定部112cで設定されたエコー高さ未満の領域が、色設定部111cで設定された設定色で表示される。
後述する探傷画像では、エコー高さ設定部112cで設定されたエコー高さ以上であり、且つ、エコー高さ設定部112dで設定されたエコー高さ未満の領域が、色設定部111dで設定された設定色で表示される。
後述する探傷画像では、エコー高さ設定部112dで設定されたエコー高さ以上の領域が、色設定部111eで設定された設定色で表示される。
なお、エコー高さに応じて探傷画像における表示色を上述したように離散的に変更してもよく、エコー高さに応じて表示色を補間し、エコー高さに応じて探傷画像における表示色を連続的に変更するようにしてもよい。
【0032】
検出レベル設定ボタン113a~113dは、エコー高さ設定部112a~112dで設定されたエコー高さの何れか一つを、きずの検出レベルとして設定するためのラジオボタンである。きずの検出レベルは、後述するように、きずを不合格と判定する際の判定条件(閾値)の一つである。
例えば、検出レベル設定ボタン113aが選択された場合、エコー高さ設定部112aで設定されたエコー高さが、きずの検出レベルとして設定される。
同様に、検出レベル設定ボタン113bが選択された場合、エコー高さ設定部112bで設定されたエコー高さが、きずの検出レベルとして設定される。
同様に、検出レベル設定ボタン113cが選択された場合、エコー高さ設定部112cで設定されたエコー高さが、きずの検出レベルとして設定される。
同様に、検出レベル設定ボタン113dが選択された場合、エコー高さ設定部112dで設定されたエコー高さが、きずの検出レベルとして設定される。
【0033】
判定レベル設定ボタン114a~114dは、エコー高さ設定部112a~112dで設定されたエコー高さの何れか一つを、きずの判定レベルとして設定するためのラジオボタンである。
例えば、判定レベル設定ボタン114aが選択された場合、エコー高さ設定部112aで設定されたエコー高さが、きずの判定レベルとして設定される。
同様に、判定レベル設定ボタン114bが選択された場合、エコー高さ設定部112bで設定されたエコー高さが、きずの判定レベルとして設定される。
同様に、判定レベル設定ボタン114cが選択された場合、エコー高さ設定部112cで設定されたエコー高さが、きずの判定レベルとして設定される。
同様に、判定レベル設定ボタン114dが選択された場合、エコー高さ設定部112dで設定されたエコー高さが、きずの判定レベルとして設定される。
【0034】
判定長さ設定部115は、上述したように設定されたきずの検出レベルを超えるエコー高さの領域がどの程度の長さ以上存在した場合に探傷検査の結果が不合格であると判定するのかを設定するための設定部である。すなわち、判定長さ設定部115は、きずを不合格と判定する際の判定条件(閾値)の一つである、判定長さLtを設定するための設定部である。
【0035】
一実施形態では、後述するように、きずの検出レベルを超えるエコー高さの領域が判定長さLt以上連続して存在した場合に、探傷検査の結果が不合格であると判定される。
なお、一実施形態では、後述するように、きずの判定レベルを超えるエコー高さの領域が存在した場合、該領域が判定長さLt以上連続して存在するか否かに関わらず、探傷検査の結果が不合格であると判定される。すなわち、きずの判定レベルは、きずを不合格と判定する際の閾値である。
【0036】
きず間隔設定部116は、きずの検出レベルを超えるエコー高さの領域が判定長さLt以上連続して存在するか否かを判定する際に、途中にきずの検出レベル未満のエコー高さの領域が存在したとしても連続したきずであると見做すための条件を設定する設定部である。
一実施形態では、きずの検出レベルを超えるエコー高さの領域が判定長さLt以上連続して存在するか否かを判定する際に、途中にきずの検出レベル未満のエコー高さの領域が存在したとしても、該領域の長さがきず間隔設定部116で設定した設定長さ未満であれば、CPU2は、連続したきずであると判断する。
【0037】
閉じるボタン118が選択されると、CPU2は、判定条件設定画面100における設定内容を判定条件データとして記憶装置3に記憶させ、判定条件設定ステップS33における処理を終了する。
【0038】
(開先形状設定ステップS35)
開先形状設定ステップS35は、被検体の溶接部の開先形状を設定するステップである。CPU2は、開先形状の設定が指示されると、例えば、
図7に示すような開先形状設定画面200を表示装置5に表示させる。
開先種類選択部201は、開先の種類を選択するための画面表示であり、開先種類選択部201が選択されると開先の種類を選択するための選択肢が表示される。例えば、一実施形態では、開先種類選択部201が選択されると開先形状がV型又はX型であることを選択する選択肢と、開先形状がJ型又はU型であることを選択する選択肢とが表示される。検査者は、上記何れかの選択肢を選択することができる。これにより、開先形状の設定が容易となる。
【0039】
寸法入力部202は、開先種類選択部201で選択された種類の開先の各部の寸法を入力するための画面表示である。寸法入力部202で入力可能な部位は、開先種類選択部201で選択された開先の種類に応じて変更される。
開先形状参照画像203は、寸法入力部202で入力可能な開先の各部を図示するための画面表示である。開先形状参照画像203における開先の形状を表す画像は、開先種類選択部201で選択された開先の種類に応じて変更される。開先形状参照画像203においてアルファベットの符号で示した寸法等は、寸法入力部202において寸法等の入力欄に付したアルファベットと対応する。例えば、開先形状参照画像203において符号aで示した寸法は、被検体の肉厚である。また、寸法入力部202においてアルファベットのaを付した寸法の入力欄は、被検体の肉厚の入力欄である。
【0040】
一実施形態では、例えば、開先種類選択部201で選択された開先の種類がV型又はX型である場合、次の部位の寸法等が入力可能となる。
1.被検体の板厚、すなわち、開先形状参照画像203における符号aで示す部位の肉厚。
2.開先深さ及びべベル角度、すなわち開先形状参照画像203における符号bで示す部位の高さ及び角度。
3.ルート半径、すなわち、開先形状参照画像203における符号cで示す部位の半径。
4.ルート間隔を規定する端部が溶接の相手側の部材に向かって突出する突出長さ、すなわち、開先形状参照画像203における符号dで示す部位の長さ。
5.ルート面の長さ、すなわち、開先形状参照画像203における符号eで示す部位の高さ。
6.開先形状参照画像203におけるルート面下側の傾斜面の高さ及び角度、すなわち、開先形状参照画像203における符号fで示す部位の高さ及び角度。
7.ルート間隔、すなわち、開先形状参照画像203における符号gで示す部位のギャップ長さ。
このように、一実施形態では、開先の各部の寸法を入力できるので、開先形状の設定精度を向上できる。
【0041】
なお、例えば、開先種類選択部201で選択された開先の種類がJ型又はU型である場合も同様である。
【0042】
開先形状表示画像204は、開先種類選択部201で選択された開先の種類と、寸法入力部202で入力された入力値とが反映された開先の画像を表示する画面表示である。
【0043】
更新ボタン205が選択されると、CPU2は、開先形状設定画面200における設定内容を開先形状データとして記憶装置3に記憶させる。なお、一実施形態では、設定内容が異なる複数の開先形状データを設定して記憶装置3に記憶させることができる。
閉じるボタン206が選択されると、CPU2は、開先形状設定ステップS35における処理を終了する。
【0044】
(評価対象範囲入力ステップS37)
ここで、評価対象範囲について説明する。
上述したように、探傷データに基づいて得られる探傷画像には、きずエコーの他に、形状エコーが同時に現れる。超音波探傷により被検体のきずの有無やきずの位置を判断するには、きずエコーと形状エコーとを識別する必要がある。
そこで、一実施形態では、被検体の内部の領域のうち、きずエコーの評価を行うべき領域、すなわち観察したいエコーが含まれる領域を評価対象範囲として設定する。
【0045】
一実施形態では、評価対象範囲を設定することで、評価対象範囲以外の領域からの形状エコーの影響を排除することができる。具体的には、一実施形態では、後述する探傷画像において、評価対象範囲内からのエコーの像を探傷画像に表示させ、評価対象範囲外からのエコーの像を探傷画像に表示させないようにすることができる。また、一実施形態では、後述するように、評価対象範囲外からのエコーに影響されることなく、評価対象範囲内からのエコーに基づいて探傷検査の結果に対する合否判定を行うことができる。
【0046】
なお、一実施形態では、上述したように2つの探傷子11によって得られた4つの探傷データのそれぞれに関して、評価対象範囲を個別に設定できる。
【0047】
評価対象範囲入力ステップS37は、溶接部の開先を含む被検体の断面内において評価対象範囲の設定入力を受け付けるステップである。評価対象範囲設定部21は、評価対象範囲の入力が指示されると、例えば、
図8に示すような評価対象範囲入力画面300を表示装置5に表示させる。
【0048】
第1探傷子切替ボタン301は、2つの探傷子11のうちの何れか一方の探傷子11で得られた探傷データに関して評価対象範囲を設定する際に選択するためのボタンである。一実施形態では、第1探傷子切替ボタン301は、例えばボイラ前側の探傷子11で得られた探傷データに関して評価対象範囲を設定する際に選択するためのボタンである。
第2探傷子切替ボタン302は、2つの探傷子11のうちの何れか他方の探傷子11で得られた探傷データに関して評価対象範囲を設定する際に選択するためのボタンである。一実施形態では、第2探傷子切替ボタン302は、例えばボイラ後側の探傷子11で得られた探傷データに関して評価対象範囲を設定する際に選択するためのボタンである。
なお、
図8は、第2探傷子切替ボタン302が選択されて、ボイラ後側の探傷子11で得られた探傷データに関して評価対象範囲を設定する画面表示となった場合の一例である。
【0049】
第1範囲入力部303は、評価対象範囲を入力するための画面表示である。第1範囲入力部303は、何れかの探傷子切替ボタン301,302で選択された探傷子11についての、直射法による探傷データに関して評価対象範囲設定するための画面表示である。
第1範囲入力部303では、評価対象範囲を多角形の枠として設定可能であり、多角形の頂点数を選択する頂点数設定部303aと、各頂点の座標を入力する複数の座標入力部303bとを含む。
第1範囲入力部303に表れる座標入力部303bの数は、頂点数設定部303aにおける頂点の設定数に応じて増減する。
座標入力部303bのそれぞれでは、例えば管軸方向の位置yと、板厚方向の位置dとを入力できる。
【0050】
第2範囲入力部304は、評価対象範囲を入力するための画面表示である。第2範囲入力部304は、何れかの探傷子切替ボタン301,302で選択された探傷子11についての、1回反射法による探傷データに関して評価対象範囲設定するための画面表示である。
第2範囲入力部304では、評価対象範囲を多角形の枠として設定可能であり、多角形の頂点数を選択する頂点数設定部304aと、各頂点の座標を入力する複数の座標入力部304bとを含む。
第2範囲入力部304に表れる座標入力部304bの数が増減する点、及び、座標入力部304bのそれぞれにおいて、管軸方向の位置yと、板厚方向の位置dとを入力できる点は、上記第1範囲入力部303と同じである。
【0051】
第1Cスコープ表示画像311は、何れかの探傷子切替ボタン301,302で選択された探傷子についての、直射法による探傷データにおけるエコー高さを示す探傷画像である。第1Cスコープ表示画像311は、被検体である配管7の周方向の角度を横軸にとり、配管7の板厚(深さ)を縦軸にとったときのエコー高さを示す探傷画像である。第1Cスコープ表示画像311は、第1範囲入力部303で入力された評価対象範囲内のエコー高さだけを表している。すなわち、第1Cスコープ表示画像311には、該評価対象範囲外のエコーが表れない。
【0052】
なお、第1Cスコープ表示画像311では、配管7の管軸方向の位置の情報、すなわち電子走査による走査面内のある方向に沿った位置の情報が欠落している。第1Cスコープ表示画像311では、周方向角度及び深さが等しいが管軸方向の異なる位置からのエコーのうち、最も強度が高いエコーの情報が現れている。
第1Cスコープ表示画像311には、検査者が操作可能なカーソル313が重畳表示されている。カーソル313は、第1Cスコープ表示画像311の横軸方向に移動可能である。
【0053】
第2Cスコープ表示画像312は、何れかの探傷子切替ボタン301,302で選択された探傷子についての、1回反射法による探傷データにおけるエコー高さを示す探傷画像である。第2Cスコープ表示画像312は、被検体である配管7の周方向の角度を横軸にとり、配管7の板厚(深さ)を縦軸にとったときのエコー高さを示す探傷画像である。第2Cスコープ表示画像312は、第2範囲入力部304で入力された評価対象範囲内のエコー高さだけを表している。すなわち、第2Cスコープ表示画像312には、該評価対象範囲外のエコーが表れない。
【0054】
なお、第2Cスコープ表示画像312では、配管7の管軸方向の位置の情報、すなわち電子走査による走査面内のある方向に沿った位置の情報が欠落している。第2Cスコープ表示画像312では、周方向角度及び深さが等しいが管軸方向の異なる位置からのエコーのうち、最も強度が高いエコーの情報が現れている。
第2Cスコープ表示画像312には、検査者が操作可能なカーソル314が重畳表示されている。カーソル314は、第2Cスコープ表示画像312の横軸方向に移動可能である。
【0055】
第1Sスコープ表示画像330は、何れかの探傷子切替ボタン301,302で選択された探傷子についての、直射法による探傷データにおけるエコー高さを示す探傷画像である。第1Sスコープ表示画像330は、配管7の管軸方向に沿ったある断面(すなわち周方向のある角度位置における断面)についてエコー高さを示す探傷画像331と、配管7の断面及び溶接部の開先形状を表す配管断面
図332とが重畳的に表示される表示画像である。また、第1Sスコープ表示画像330には、第1範囲入力部303で入力された評価対象範囲を表す多角形の枠333も重畳的に表示される。枠333の各頂点の位置は、第1範囲入力部303における入力内容が反映されたものである。すなわち、検査者は、第1Sスコープ表示画像330における枠333の形状を確認しながら、評価対象範囲を設定できる。
【0056】
なお、探傷画像331は、第1Cスコープ表示画像311でのカーソル313の位置に対応する配管7の周方向の角度位置における探傷画像である。したがって、検査者が第1Cスコープ表示画像311のカーソル313の位置を変更すると、探傷画像331は、変更後のカーソル313の位置に対応する角度位置の画像に変更される。
【0057】
第2Sスコープ表示画像340は、何れかの探傷子切替ボタン301,302で選択された探傷子についての、1回反射法による探傷データにおけるエコー高さを示す探傷画像である。第2Sスコープ表示画像340は、配管7の管軸方向に沿ったある断面(すなわち周方向のある角度位置における断面)についてエコー高さを示す探傷画像341と、配管7の断面及び溶接部の開先形状を表す配管断面
図342とが重畳的に表示される表示画像である。また、第2Sスコープ表示画像340には、第2範囲入力部304で入力された評価対象範囲を表す枠343も重畳的に表示される。枠343の各頂点の位置は、第2範囲入力部304における入力内容が反映されたものである。すなわち、検査者は、第2Sスコープ表示画像340における枠343の形状を確認しながら、評価対象範囲を設定できる。
【0058】
なお、探傷画像341は、第2Cスコープ表示画像312でのカーソル314の位置に対応する配管7の周方向の角度位置における探傷画像である。したがって、検査者が第2Cスコープ表示画像312のカーソル314の位置を変更すると、探傷画像341は、変更後のカーソル314の位置に対応する角度位置の画像に変更される。
【0059】
なお、第1Cスコープ表示画像311、第1Sスコープ表示画像330における探傷画像331、第2Cスコープ表示画像312、及び、第2Sスコープ表示画像340における探傷画像341は、データ読込ボタン307が選択されて、記憶装置3に記憶された探傷データを読み込んだ後、表示される。なお、詳細な説明は省略するが、データ読込ボタン307が選択されて、記憶装置3に記憶された探傷データを読み込む際、何れの溶接部8についての探傷データを読み込むのかを選択することができる。
【0060】
また、第1Sスコープ表示画像330における配管断面
図332、及び、第2Sスコープ表示画像340における配管断面
図342は、データ読込ボタン307が選択されて、記憶装置3に記憶された開先形状データを読み込んだ後、表示される。すなわち、配管断面
図332,342における開先の種類や各部の寸法には、開先形状設定ステップS35における設定内容が反映されている。
なお、詳細な説明は省略するが、データ読込ボタン307が選択されて、記憶装置3に記憶された開先形状データを読み込む際、記憶装置3に記憶されている複数の開先形状データの何れを読み込むのかを選択することができる。
【0061】
拡大ボタン334は、第1Sスコープ表示画像330の一部を拡大して表示させるための操作部である。縮小ボタン335は、第1Sスコープ表示画像330を縮小して表示させるための操作部である。
拡大ボタン344は、第2Sスコープ表示画像340の一部を拡大して表示させるための操作部である。縮小ボタン345は、第2Sスコープ表示画像340を縮小して表示させるための操作部である。
【0062】
(評価対象範囲設定ステップS39)
評価対象範囲設定ステップS39は、被検体の内部における評価対象範囲を設定するステップである。
図8に示した評価対象範囲入力画面300の更新ボタン308が選択されると、評価対象範囲設定部21は、評価対象範囲入力画面300における設定内容を評価対象範囲データとして記憶装置3に記憶させる。なお、一実施形態では、設定内容が異なる複数の評価対象範囲データを設定して記憶装置3に記憶させることができる。
閉じるボタン309が選択されると、評価対象範囲設定部21は、評価対象範囲入力ステップS37及び評価対象範囲設定ステップS39における処理を終了する。
【0063】
(表示ステップS5について)
以下、表示ステップS5の詳細について説明する。
図9は、表示ステップS5で行われる処理の流れを示すフローチャートである。
表示ステップS5では、以下に述べるきず判定ステップS41と、合否判定ステップS43と、表示指令生成ステップS45と、情報表示指令生成ステップS471と、判定表示指令生成ステップS473と、表示指令出力ステップS49とが実施される。
表示ステップS5においてCPU2で実行されるプログラムは、被検体に対して超音波探傷を行うことによって得られた探傷データを処理するための超音波探傷データ処理プログラムである。
【0064】
(きず判定ステップS41)
きず判定ステップS41は、探傷データのうち、評価対象範囲内の領域に対応した評価対象データを抽出し、抽出した評価対象データに基づいて、きずであることを判定するための判定条件を満たす被検体の内部の領域をきずであると判定するステップである。
具体的には、表示装置5に表示された不図示のメイン画面において、判定の開始を指示するための判定ボタンが選択されると、CPU2は、きず判定ステップS41の処理を開始する。
【0065】
きず判定ステップS41では、CPU2は、判定の対象とする探傷データグループ、すなわち、2つの探傷子11のそれぞれについての直射法及び1回反射法による探傷データと、判定の際に用いる評価対象範囲データとを選択させる不図示の画面表示を表示装置5に表示させる。
【0066】
検査者の操作入力によって、判定の対象とする探傷データグループと、判定の際に用いる評価対象範囲データとが選択されると、CPU2は、選択された探傷データグループのデータと評価対象範囲データとに加え、判定条件データを記憶装置3から読み込む。そして、CPU2は、読み込んだ探傷データグループのそれぞれの探傷データから、評価対象範囲データを参照して、評価対象範囲内の領域に対応したデータを評価対象データとして抽出する。
【0067】
次いでCPU2は、抽出した評価対象データについて、判定条件データにおける判定条件を満たす被検体の内部の領域をきずであると判定する。具体的には、CPU2は、探傷データグループの各探傷データから抽出した評価対象データに基づいて、きずの検出レベルを超えるエコー高さの領域が判定長さLt以上連続して存在するか否かを判定する。また、CPU2は、きずの検出レベルを超えるエコー高さの領域が判定長さLt以上連続して存在する場合、その領域をきずであると判定するとともに、その領域の位置や長さ、最大エコー高さ等を特定する。
また、CPU2は、探傷データグループの各探傷データから抽出した評価対象データに基づいて、きずの判定レベルを超えるエコー高さの領域が存在するか否かを判定する。
また、CPU2は、きずの判定レベルを超えるエコー高さの領域が存在する場合、その領域をきずであると判定するとともに、その領域の位置や長さ、最大エコー高さ等を特定する。
したがって、形状エコーの影響を抑制してきずを精度よく検出できる。
【0068】
(合否判定ステップS43)
合否判定ステップS43では、CPU2は、きず判定ステップS41できずであると判定された領域が存在しない場合に合格であると判定し、きず判定ステップS41できずであると判定された領域が存在する場合に不合格であると判定する。
【0069】
(表示指令生成ステップS45)
表示指令生成ステップS45は、被検体の内部の各位置における評価対象データの信号強度であるエコー高さを示す探傷画像を表示装置5に表示させるための指令を生成するステップである。
表示指令生成ステップS45において、表示指令生成部22は、きず判定ステップS41において抽出した評価対象データに基づき、エコー高さを示す探傷画像の画像データを生成する。なお、表示指令生成部22は、探傷画像の画像データを生成する際、判定条件データに含まれる表示色の設定内容、すなわち、判定条件設定画面100における表示色の設定内容を反映させる。
【0070】
(情報表示指令生成ステップS471)
情報表示指令生成ステップS471は、きず判定ステップS41できずであると判定された領域について少なくとも被検体における位置の情報を表示装置5に表示させるための指令を生成するステップである。
情報表示指令生成ステップS471では、表示指令生成部22は、きず判定ステップS41で特定した、きずであると判定した領域の位置や長さ、最大エコー高さ等の情報の表示するための表示データを生成する。
【0071】
(判定表示指令生成ステップS473)
判定表示指令生成ステップS473は、合否判定ステップS43での判定結果を表示装置5に表示させるための指令を生成するステップである。
判定表示指令生成ステップS473では、表示指令生成部22は、後述する判定結果表示画面400において合否判定ステップS43での判定結果が合格であるか、不合格であるかを表す判定表示471,472(
図10,11参照)の表示データを生成する。
これにより、被検体の超音波探傷の結果の合否が容易に認識できる。
【0072】
(表示指令出力ステップS49)
表示指令出力ステップS49では、表示指令生成部22は、表示指令生成ステップS45、情報表示指令生成ステップS471、及び判定表示指令生成ステップS473の各ステップで生成された画像データや表示データを表示指令として表示装置5に出力する。
【0073】
図10及び
図11は、上述した各ステップで生成された画像データや表示データによる表示画像を1画面にまとめて表示する判定結果表示画面400を示す図である。
図10は、第1判定条件に基づいて各ステップで生成された画像データや表示データによる表示画像についての判定結果表示画面400である。
図11は、第2判定条件に基づいて各ステップで生成された画像データや表示データによる表示画像についての判定結果表示画面400である。
【0074】
判定結果表示画面400には、第1Dスコープ表示画像410と、第1Sスコープ表示画像411と、第1ビームイメージ画像412とが表示される。また、判定結果表示画面400には、第2Dスコープ表示画像420と、第2Sスコープ表示画像421と、第2ビームイメージ画像422とが表示される。
判定結果表示画面400には、第3Dスコープ表示画像430と、第3Sスコープ表示画像431と、第3ビームイメージ画像432とが表示される。
判定結果表示画面400には、第4Dスコープ表示画像440と、第4Sスコープ表示画像441と、第4ビームイメージ画像442とが表示される。
【0075】
また、判定結果表示画面400には、断面表示画像450と、きず情報表示欄460とが表示される。
【0076】
第1Dスコープ表示画像410は、例えば、ボイラ前側の探傷子11についての、直射法による探傷データにおけるエコー高さを示す探傷画像である。第1Dスコープ表示画像410は、被検体である配管7の周方向の角度を横軸にとり、配管7の板厚(深さ)を縦軸にとったときの探傷画像であり、評価対象範囲内のエコー高さだけを表している。すなわち、第1Dスコープ表示画像410には、評価対象範囲を設定しなければ表れる評価対象範囲外のエコーが表れない。この点は、後述する第2Dスコープ表示画像420~第4Dスコープ表示画像440において同様である。
【0077】
なお、
図10及び
図11に示した全域表示チェックボックス477が選択されると、第1Dスコープ表示画像410~第4Dスコープ表示画像440には、評価対象範囲外のエコーも表れる。
【0078】
なお、第1Dスコープ表示画像410では、配管7の管軸方向の位置の情報、すなわち電子走査による走査面内のある方向に沿った位置の情報が欠落している。第1Dスコープ表示画像410では、周方向角度及び深さが等しいが管軸方向の異なる位置からのエコーのうち、最も強度が高いエコーの情報が現れている。この点は、後述する第2Dスコープ表示画像420~第4Dスコープ表示画像440において同様である。
第1Dスコープ表示画像410には、検査者が操作可能なカーソル413が重畳表示されている。カーソル413は、第1Dスコープ表示画像410の横軸方向に移動可能である。
【0079】
第2Dスコープ表示画像420は、例えば、ボイラ前側の、1回探傷子11についての反射法による探傷データにおけるエコー高さを示す探傷画像である。
第2Dスコープ表示画像420には、検査者が操作可能なカーソル423が重畳表示されている。カーソル423は、第2Dスコープ表示画像420の横軸方向に移動可能である。
【0080】
第3Dスコープ表示画像430は、例えば、ボイラ後側の探傷子11についての、直射法による探傷データにおけるエコー高さを示す探傷画像である。
第3Dスコープ表示画像430には、検査者が操作可能なカーソル433が重畳表示されている。カーソル433は、第3Dスコープ表示画像430の横軸方向に移動可能である。
【0081】
第4Dスコープ表示画像440は、例えば、ボイラ後側の探傷子11についての、1回反射法による探傷データにおけるエコー高さを示す探傷画像である。
第4Dスコープ表示画像440には、検査者が操作可能なカーソル443が重畳表示されている。カーソル443は、第4Dスコープ表示画像440の横軸方向に移動可能である。
【0082】
第1Sスコープ表示画像411は、例えば、ボイラ前側の探傷子11についての、直射法による探傷データにおけるエコー高さを示す探傷画像である。第1Sスコープ表示画像411は、配管7の管軸方向に沿ったある断面についてエコー高さを示す探傷画像411aと、配管7の断面及び溶接部の開先形状を表す配管断面
図411bと、評価対象範囲を表す枠411cとが重畳的に表示される表示画像である。
第1Sスコープ表示画像411における探傷画像では、評価対象範囲内のエコー高さだけでなく評価対象範囲外のエコー高さも表されているが、評価対象範囲内のエコー高さだけを表すようにしてもよい。すなわち、第1Sスコープ表示画像411には、評価対象範囲を設定しなければ表れる評価対象範囲外のエコーが表れないようにしてもよい。この点は、後述する第2Sスコープ表示画像421~第4Sスコープ表示画像441において同様である。
なお、第1Sスコープ表示画像411における探傷画像は、第1Dスコープ表示画像410でのカーソル413の位置に対応する配管7の周方向の角度位置における探傷画像である。したがって、検査者がカーソル413の位置を変更すると、第1Sスコープ表示画像411における探傷画像は、変更後のカーソル413の位置に対応する角度位置の画像に変更される。
【0083】
第2Sスコープ表示画像421は、例えば、ボイラ前側の探傷子11についての、1回反射法による探傷データにおけるエコー高さを示す探傷画像である。第2Sスコープ表示画像421は、第1Sスコープ表示画像411と同様に、配管7の管軸方向に沿ったある断面についてエコー高さを示す探傷画像と、配管7の断面及び溶接部の開先形状を表す配管断面図と、評価対象範囲を表す枠とが重畳的に表示される表示画像である。
なお、第2Sスコープ表示画像421における探傷画像は、第2Dスコープ表示画像420でのカーソル423の位置に対応する配管7の周方向の角度位置における探傷画像である。したがって、検査者がカーソル423の位置を変更すると、第2Sスコープ表示画像421における探傷画像は、変更後のカーソル423の位置に対応する角度位置の画像に変更される。
【0084】
第3Sスコープ表示画像431は、例えば、ボイラ後側の探傷子11についての、直射法による探傷データにおけるエコー高さを示す探傷画像である。第3Sスコープ表示画像431は、第1Sスコープ表示画像411と同様に、配管7の管軸方向に沿ったある断面についてエコー高さを示す探傷画像と、配管7の断面及び溶接部の開先形状を表す配管断面図と、評価対象範囲を表す枠とが重畳的に表示される表示画像である。
なお、第3Sスコープ表示画像431における探傷画像は、第3Dスコープ表示画像430でのカーソル433の位置に対応する配管7の周方向の角度位置における探傷画像である。したがって、検査者がカーソル433の位置を変更すると、第3Sスコープ表示画像431における探傷画像は、変更後のカーソル433の位置に対応する角度位置の画像に変更される。
【0085】
第4Sスコープ表示画像441は、例えば、ボイラ後側の探傷子11についての、1回反射法による探傷データにおけるエコー高さを示す探傷画像である。第4Sスコープ表示画像441は、第1Sスコープ表示画像411と同様に、配管7の管軸方向に沿ったある断面についてエコー高さを示す探傷画像と、配管7の断面及び溶接部の開先形状を表す配管断面図と、評価対象範囲を表す枠とが重畳的に表示される表示画像である。
なお、第4Sスコープ表示画像441における探傷画像は、第4Dスコープ表示画像440でのカーソル443の位置に対応する配管7の周方向の角度位置における探傷画像である。したがって、検査者がカーソル443の位置を変更すると、第4Sスコープ表示画像441における探傷画像は、変更後のカーソル443の位置に対応する角度位置の画像に変更される。
【0086】
第1ビームイメージ画像412は、例えば、ボイラ前側の探傷子11についての、直射法によるフォーカルロウのビームイメージを表す図である。
第2ビームイメージ画像422は、例えば、ボイラ前側の探傷子11についての、1回反射法によるフォーカルロウのビームイメージを表す図である。
第3ビームイメージ画像432は、例えば、ボイラ後側の探傷子11についての、直射法によるフォーカルロウのビームイメージを表す図である。
第4ビームイメージ画像442は、例えば、ボイラ後側の探傷子11についての、1回反射法によるフォーカルロウのビームイメージを表す図である。
【0087】
各Sスコープ表示画像411~441及び各ビームイメージ画像412~442は、それぞれの画像表示の上部に表示されたプラスボタンが選択されると拡大して表示され、マイナスボタンが選択されると縮小表示される。また、各Sスコープ表示画像411~441及び各ビームイメージ画像412~442における開先の種類や各部の寸法には、開先形状設定ステップS35における設定内容が反映されている。
【0088】
断面表示画像450は、配管7の管軸方向に沿って見たときのエコー高さを示す探傷画像であり、評価対象範囲内のエコー高さだけを表している。すなわち、断面表示画像450には、評価対象範囲を設定しなければ表れる評価対象範囲外のエコーが表れない。断面表示画像450は、配管7の管軸方向の沿った2つの方向のうち、どちらの方向から見た画像を表示するのかを選択可能である。例えば、
図10,11に示す断面表示画像450では、ボイラ前側から見た画像を表示するのか、ボイラ後側から見た画像を表示するのかを選択可能である。
【0089】
きず情報表示欄460には、きず判定ステップS41において、きずであると判定された領域の位置や長さ、最大エコー高さ等の情報が表示される。なお、きず判定ステップS41において、きずであると判定された領域が存在しない場合には、きず情報表示欄460には、きずに関する情報は表示されない。例えば、
図10におけるきず情報表示欄460の表示内容は、評価対象範囲内に第1判定条件を満たす領域が存在しなかった場合についての一例である。また、例えば、
図11におけるきず情報表示欄460の表示内容は、評価対象範囲内に第2判定条件を満たす領域が存在した場合についての一例である。
【0090】
合否判定ステップS43で合格であると判定されている場合には、
図10に示すように、判定結果表示画面400において合格判定表示471が表示される、また、合否判定ステップS43で不合格であると判定されている場合には、
図11に示すように、判定結果表示画面400において不合格判定表示472が表示される。
【0091】
なお、表示装置5に第1判定条件に基づく判定結果表示画面400が表示されている場合に確認ボタン475が選択されると、表示装置5には、第2判定条件に基づく判定結果表示画面400が表示されるように構成されている。同様に、表示装置5に第2判定条件に基づく判定結果表示画面400が表示されている場合に確認ボタン475が選択されると、表示装置5には、第1判定条件に基づく判定結果表示画面400が表示されるように構成されている。
【0092】
すなわち、確認ボタン475が選択されると、CPU2は、
図12に示すように、判定条件切替ステップS510を実行し、表示装置5に表示される判定結果表示画面400を、第1判定条件に基づく判定結果表示画面400と第2判定条件に基づく判定結果表示画面400との間で切り替える。
図12は、判定条件切替ステップS510における処理を示すフローチャートである。判定条件切替ステップS510は、表示指令出力ステップS49が実行されて判定結果表示画面400が表示されると処理が開始される。又は、判定条件切替ステップS510は、判定条件切替ステップS510が実行されて判定結果表示画面400が切り替えられた後、再び処理が開始される。
ステップS511において、CPU2は、判定結果表示画面400における確認ボタン475が選択されるまで待機し、確認ボタン475が選択されると、ステップS513へ進み表示指令切替処理を実施する。ステップS513の表示指令切替処理では、CPU2は、表示装置5に現在出力している第1判定条件又は第2判定条件の何れか一方の判定条件に係る画像データや表示データに代えて、何れか他方の判定条件に係る画像データや表示データを表示指令として表示装置5に出力する。
【0093】
なお、
図10と
図11とでは、判定に係る被検体は同じ被検体であり、合否の相違及びきず情報表示欄460におけるきずに関する情報が表示されるか否かは、第1判定条件と第2判定条件との相違によるものである。すなわち、同じ被検体であっても、合否判定ステップS43における合否判定の結果が異なる場合がある。
【0094】
一実施形態の超音波探傷データ処理装置1では、表示指令生成部22は、評価対象データに基づいて、評価対象範囲内のエコー高さの分布状態を3次元表示した3次元探傷画像の画像データを生成できる。
図13は、表示指令生成部22が生成した3次元探傷画像の画像データに基づいて、表示装置5で表示される3次元探傷画像についての表示画像600である。表示画像600には、評価対象範囲内のエコー高さの分布状態を示す3次元探傷表示画像610と、配管7の管軸方向に沿って見たときのエコー高さを示す断面表示画像620とが含まれる。
3次元探傷表示画像610及び断面表示画像620では、評価対象範囲内のエコー高さだけが表されている。
【0095】
3次元探傷表示画像610は、表示画像600内で任意の表示角度に変更できる。3次元探傷表示画像610における管軸方向の中央に表示される円は、開先の位置を示す円である。3次元探傷表示画像610における管軸方向の両端の位置は、例えば、上述した4つの探傷データに関する評価対象範囲のうち、最も広い評価対象範囲に対応している。
断面表示画像620は、配管7の管軸方向の沿った2つの方向のうち、どちらの方向から見た画像を表示するのかを選択可能である。例えば、
図13に示す断面表示画像620では、ボイラ前側から見た画像を表示するのか、ボイラ後側から見た画像を表示するのかを選択可能である。
【0096】
(評価ステップS7について)
評価ステップS7では、検査者は、表示装置5に表示された判定結果表示画面400の探傷画像や、きずに関する情報、合否の判定表示に基づいて評価対象範囲内のきずの有無を評価することができる。
具体的には、例えば第1判定条件がきずの有無の判定として通常設定される判定条件であれば、第1判定条件に基づく判定結果を採用して、被検体の合否を評価できる。
【0097】
例えば、第1判定条件に基づく判定結果が合格であった場合、第2判定条件に基づく判定結果を確認することで検査者は、第1判定条件に基づく判定結果が、第1判定条件に対してある程度の余裕を持った状態で合格と判定されているのか、第1判定条件に対してあまり余裕をない状態で合格と判定されているかを評価することができる。
すなわち、例えば、第1判定条件に基づく判定結果が合格であり、且つ、第2判定条件に基づく判定結果が合格であった場合、検査者は、第1判定条件に基づく判定結果が、第1判定条件に対してある程度の余裕を持った状態で合格と判定されていると評価することができる。
また、例えば、第1判定条件に基づく判定結果が合格であるが、第2判定条件に基づく判定結果が不合格であった場合、検査者は、第1判定条件に基づく判定結果が、第1判定条件に対してあまり余裕がない状態で合格と判定されていると評価することができる。
【0098】
また、第1判定条件に基づく判定結果が合格であるが、第2判定条件に基づく判定結果が不合格であった場合、検査者は、第2判定条件に基づいて検出されたきずの情報を、第2判定条件に基づく判定結果表示画面400で確認することで、第2判定条件に基づいて検出されたきずの状態を確認することができる。
例えば、第2判定条件に基づいて検出されたきずの状態を確認することで、当該きずについて念のため補修をした方がよいか否かを判断することもできる。
【0099】
このように、上述した一実施形態によれば、評価対象範囲設定ステップS39と、表示指令生成ステップS45とをCPU2に実行させるので、評価対象範囲内の領域に対応した探傷画像に基づいて、被検体のきずの位置を判定できる。したがって、評価対象範囲を被検体の形状に応じて適宜設定することで、探傷画像に形状エコーが現れるのを抑制できる。これにより、検査者の熟練度によらず、きずエコーと形状エコーとの識別精度を向上できる。
【0100】
また、上述した一実施形態によれば、評価対象範囲入力ステップS37において、溶接部の開先を含む被検体の断面内において評価対象範囲の設定入力を受け付けるようにしたので、溶接部の開先を含む被検体の探傷画像に形状エコーが現れるのを抑制できる。
【0101】
上述した一実施形態によれば、評価対象範囲入力ステップS37において、開先形状設定ステップS35で設定された被検体の溶接部8の開先形状を被検体の断面形状に重畳した設定用画面である第1Sスコープ表示画像330及び第2Sスコープ表示画像340を表示装置5に表示させるようにした。これにより、第1Sスコープ表示画像330及び第2Sスコープ表示画像340に表示された被検体の溶接部の開先形状を参照して評価対象範囲を設定できるので、溶接部の開先形状に起因する形状エコーが探傷画像に現れるのを抑制できる。
【0102】
また、上述した一実施形態に係る被検体の評価方法は、探傷ステップS1と、設定ステップS3と、表示ステップS5と、評価ステップS7とを備えるので、評価対象範囲を被検体の形状に応じて適宜設定することで、探傷画像に形状エコーが現れるのを抑制できる。これにより、検査者の熟練度によらず、きずエコーと形状エコーとの識別精度を向上できるので、被検体の内部のきずの有無を精度よく評価できる。
【0103】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述した一実施形態では、きず判定ステップS41及び合否判定ステップS43において、予め第1判定条件によるきずの判定及び合否判定を行うとともに、第2判定条件によるきずの判定及び合否判定を行うようにしている。しかし、例えば、予め第1判定条件及び第2判定条件の何れか一方によるきずの判定及び合否判定を行っておき、判定結果表示画面400が表示されている場合に確認ボタン475が選択されるなどして、判定条件の切替が指示されると、きず判定ステップS41及び合否判定ステップS43における判定条件を第1判定条件及び第2判定条件の何れか一方から何れか他方へ切り替えて、切替後の判定条件できずの判定及び合否判定を行うようにしてもよい。
このようにすることによっても、判定条件を変更することできずの検出状態がどのように変化するかを確認できる。
【0104】
(他の実施形態について)
上述した一実施形態では、探傷データグループは、配管7の円周方向の溶接部8の1カ所についての、ボイラ前側の探傷子11による直射法による探傷データと、ボイラ前側の探傷子11による1回反射法による探傷データと、ボイラ後側の探傷子11による直射法による探傷データと、ボイラ後側の探傷子11による1回反射法による探傷データとの4つの探傷データの組であった。
これに対し、以下で説明する他の実施形態に係る探傷データグループは、少なくとも、探傷子11による、被検体の表面側の領域の探傷によって得られた第1探傷データと、第1探傷データに係る探傷子11と同一の探傷子11による、被検体の表面側の領域よりも被検体の表面から遠い領域を含む領域の探傷によって得られた第2探傷データとの2つの探傷データの組である。
【0105】
また、以下で説明する他の実施形態に係る探傷データグループは、
図3に示すように、被検体の内部における評価対象範囲を挟んだ一方側と他方側の2か所にそれぞれ探傷子11を配置して探傷した場合には、一方側の探傷子11による上記第1探傷データ及び第2探傷データと、他方側の探傷子11による上記第1探傷データ及び第2探傷データとの4つの探傷データの組であってもよい。
図3の例に当てはめると、以下で説明する他の実施形態に係る探傷データグループは、被検体としての配管7の溶接部8の1か所についての、ボイラ前側の探傷子11による上記第1探傷データ及び第2探傷データと、ボイラ後側の探傷子11による上記第1探傷データ及び第2探傷データとの4つの探傷データの組であってもよい。
【0106】
以下、他の実施形態である、被検体の表面からの距離が異なる2つの領域を探傷した場合について説明する。なお、以下の説明では、上述した一実施形態における説明内容との相違点について主に説明することとし、特に説明がない事項については、原則として、上述した一実施形態における説明内容と同様であるとして詳細な説明を省略する。また、以下の説明において、上述した一実施形態と同様の構成については同じ符号を付すこととする。
【0107】
図14は、他の実施形態である、被検体の表面からの距離が異なる2つの領域を探傷した場合についての探傷範囲について説明するため模式的な図である。
他の実施形態の探傷子11は、被検体7Xの表面7Xs側の領域(表層領域71)の探傷と、表層領域71よりも被検体7Xの表面7Xsから遠い領域を含む領域(中下層領域73)の探傷とを同一の探傷子11で探傷可能に構成されている。
図14に示す例では、被検体7Xの厚さ(板厚)をTとする。
【0108】
他の実施形態では、表層領域71は、例えば、被検体7Xの表面7Xsから、表面7Xsからの距離(深さ)が1mmまでの範囲であってもよい。
他の実施形態では、中下層領域73は、例えば、表面7Xsからの距離(深さ)が1mmから被検体7Xにおける表面7Xsとは反対側の面(裏面7Xb)までの範囲であってもよい。被検体7Xが配管7の場合には、中下層領域73は、例えば、配管7の表面7sからの距離(深さ)が1mmから配管7の内周面7bまでの範囲であってもよい。
なお、表層領域71と中下層領域73とは、深さ方向において少なくとも一部で重なっていてもよい。
【0109】
他の実施形態では、中下層領域73には、中層領域731と下層領域732とが含まれる。中層領域731は、下層領域732よりも被検体7Xの表面7Xs側の領域である。
中層領域731と下層領域732との境界の位置は、例えば中層領域731と表層領域71との境界の位置と、裏面7Xbまでとの距離の1/2だけ深さ方向に沿って中層領域731と表層領域71との境界の位置から離れた位置とする。
なお、中層領域731と下層領域732との境界の位置は、上記の位置よりも表面7Xs側であってもよく、裏面7Xbであってもよい。
【0110】
他の実施形態の探傷子11は、表層領域71の探傷と、中下層領域73の探傷とを異なる性質の超音波によって探傷可能に構成されている。具体的には、他の実施形態の探傷子11は、クリーピング波による表層領域71の探傷と、縦波の超音波による中下層領域73の探傷とを実施可能に構成されている。なお、クリーピング波とは被検体7Xの表面7Xsを沿って伝搬する超音波である。
図14では、被検体7Xの内部における探傷子11からの超音波の走査範囲を破線で示している。なお、煩雑化を避けるため、図示左側の探傷子11からの超音波の走査範囲だけを示しているが、図示右側の探傷子11からの超音波の走査範囲も同様である。
他の実施形態の超音波探傷装置10は、表層領域71の探傷を行う際には、クリーピング波によって表層領域71を探傷するように探傷子11における不図示の振動子を制御し、中下層領域73の探傷を行う際には、縦波の超音波によって中下層領域73を探傷するように探傷子11における不図示の振動子を制御する。
【0111】
なお、表層領域71の探傷と、中下層領域73の探傷とは、異なるタイミングで実施される。具体的には、表層領域71の探傷及び中下層領域73の探傷の何れか一方を実施した後、他方を実施する。
表層領域71の探傷及び中下層領域73の探傷では、被検体7Xからのエコーの強度を表すデータとともに、エンコーダ13における計測データも取得され、超音波探傷装置10の不図示の記憶装置に格納される。
【0112】
以下、上述した一実施形態と同様に、被検体7Xは、例えばボイラ等で使用される配管7であるものとして説明する。以下の説明では、被検体7Xである配管7の円周方向の溶接部8の近傍に生じるきずの有無を検査するものとして説明する。
他の実施形態に係る被検体の評価方法は、
図2に示すように、探傷ステップS1と、設定ステップS3と、表示ステップS5と、評価ステップS7とを含む。
【0113】
(探傷ステップS1)
探傷ステップS1では、
図3に示すように、例えば探傷子11は、溶接部8を挟んで配管7の管軸方向に離間した2カ所に配置される。そして、2つの探傷子11の配管7の周方向における位置が常に同じになるように、配管7の周方向に移動させながら超音波探傷を行う。
探傷ステップS1では、クリーピング波による表層領域71の探傷と、縦波の超音波による中下層領域73の探傷とが実施される。
上述したように、
図3に示す移動装置56は、配管7に対して探傷子11を一旦装着すれば、配管7の周方向に探傷子11を移動可能であるが、探傷子11が軸線AXc方向には移動しないように構成されている。
したがって、探傷ステップS1では、クリーピング波による表層領域71の探傷と、縦波の超音波による中下層領域73の探傷とで、探傷子11の軸線AXc方向の位置は同じである。
【0114】
超音波探傷によって得られた探傷データは、エンコーダ13によって計測した、上記周方向における基準位置からの上記周方向への移動距離の情報とともに、超音波探傷装置10の不図示の記憶装置に格納される。
なお、他の実施形態に係る探傷ステップS1では、
図3に示した超音波探傷装置10によって、配管7の円周方向の溶接部8の1カ所につき、ボイラ前側の探傷子11によるクリーピング波による表層領域71の探傷データである第1探傷データ、ボイラ前側の探傷子11による縦波の超音波による中下層領域73の探傷データである第2探傷データ、ボイラ後側の探傷子11によるクリーピング波による表層領域71の探傷データである第1探傷データ、ボイラ後側の探傷子11による縦波の超音波による中下層領域73の探傷データである第2探傷データ、の4つの探傷データの組が得られる。
すなわち、他の実施形態の超音波探傷装置10では、上記4つの探傷データの組が、探傷箇所の数だけ得られる。
【0115】
(設定ステップS3)
他の実施形態に係る設定ステップS3では、
図4に示すように、探傷データ読込ステップS31と、判定条件設定ステップS33と、開先形状設定ステップS35と、評価対象範囲入力ステップS37と、評価対象範囲設定ステップS39とが実施される。
【0116】
(探傷データ読込ステップS31)
他の実施形態に係る探傷データ読込ステップS31では、CPU2は、上述したような第1探傷データ及び第2探傷データを含む探傷データグループに係る探傷データを、エンコーダ13によって計測したテータとともに読み込んで記憶装置3に記憶させる。
すなわち、他の実施形態に係る探傷データ読込ステップS31は、被検体7Xの表面7Xs側の領域(表層領域71)をクリーピング波により探傷することで得られた第1探傷データを被検体7Xにおける位置情報とともに読み込む第1読み込みステップと、表面側の領域(表層領域71)よりも被検体7Xの表面7Xsから遠い領域を含む領域(中下層領域73)を縦波の超音波により探傷することで得られた第2探傷データを位置情報とともに読み込む第2読み込みステップとを含む。
【0117】
(判定条件設定ステップS33)
他の実施形態に係る判定条件設定ステップS33では、探傷検査の結果に対する合否判定を行う際の判定条件等を設定は、ボイラ前側の探傷子11によって得られた第1探傷データ及び第2探傷データ、ボイラ後側の探傷子11によって得られた第1探傷データ及び第2探傷データのそれぞれにおいて、表層領域71、中層領域731、及び下層領域732のそれぞれで異なる判定条件等を設定可能である。
【0118】
(開先形状設定ステップS35)
他の実施形態に係る開先形状設定ステップS35では、上述した一実施形態に係る開先形状設定ステップS35における処理内容と同じ処理内容が実施される。
【0119】
(評価対象範囲入力ステップS37)
他の実施形態に係る評価対象範囲入力ステップS37では、評価対象範囲を入力は、ボイラ前側の探傷子11によって得られた第1探傷データ及び第2探傷データ、ボイラ後側の探傷子11によって得られた第1探傷データ及び第2探傷データのそれぞれにおいて、表層領域71、中層領域731、及び下層領域732のそれぞれで異なる評価対象範囲を入力可能である。
【0120】
(評価対象範囲設定ステップS39)
他の実施形態に係る評価対象範囲設定ステップS39では、評価対象範囲を設定は、ボイラ前側の探傷子11によって得られた第1探傷データ及び第2探傷データ、ボイラ後側の探傷子11によって得られた第1探傷データ及び第2探傷データのそれぞれにおいて、表層領域71、中層領域731、及び下層領域732のそれぞれで異なる評価対象範囲を設定可能である。
すなわち、他の実施形態に係る評価対象範囲設定ステップS39では、
図8に示した評価対象範囲入力画面300の更新ボタン308が選択されると、評価対象範囲入力ステップS37における入力内容を評価対象範囲データとして記憶装置3に記憶させる。
【0121】
(表示ステップS5)
他の実施形態に係る表示ステップS5では、
図9に示すように、きず判定ステップS41と、合否判定ステップS43と、表示指令生成ステップS45と、情報表示指令生成ステップS471と、判定表示指令生成ステップS473と、表示指令出力ステップS49とが実施される。
【0122】
(きず判定ステップS41)
他の実施形態に係るきず判定ステップS41では、ボイラ前側の探傷子11によって得られた第1探傷データ及び第2探傷データ、ボイラ後側の探傷子11によって得られた第1探傷データ及び第2探傷データのそれぞれにおいて、表層領域71、中層領域731、及び下層領域732のそれぞれで、一実施形態に係るきず判定ステップS41と同様にきずの判定が行われる。
【0123】
(合否判定ステップS43)
他の実施形態に係る合否判定ステップS43では、ボイラ前側の探傷子11によって得られた第1探傷データ及び第2探傷データ、ボイラ後側の探傷子11によって得られた第1探傷データ及び第2探傷データの何れかにおいて、表層領域71、中層領域731、及び下層領域732の何れかで、きず判定ステップS41できずの存在が認められた場合、不合格であると判定される。
逆に、他の実施形態に係る合否判定ステップS43では、ボイラ前側の探傷子11によって得られた第1探傷データ及び第2探傷データ、ボイラ後側の探傷子11によって得られた第1探傷データ及び第2探傷データのそれぞれにおいて、表層領域71、中層領域731、及び下層領域732の何れにも、きず判定ステップS41できずの存在が認められなかった場合、合格であると判定される。
【0124】
(表示指令生成ステップS45)
他の実施形態に係る表示指令生成ステップS45では、表示指令生成部22は、きず判定ステップS41において抽出した評価対象データに基づき、エコー高さを示す探傷画像の画像データを生成する。なお、表示指令生成部22が生成する探傷画像の画像データは、例えば後述する
図15及び
図16に示すような表示画像の画像データである。
【0125】
(情報表示指令生成ステップS471)
他の実施形態に係る情報表示指令生成ステップS471では、上述した一実施形態に係る情報表示指令生成ステップS471における処理内容と同じ処理内容が実施される。
【0126】
(判定表示指令生成ステップS473)
他の実施形態に係る判定表示指令生成ステップS473では、合否判定ステップS43における判定結果に基づいて、上述した一実施形態に係る判定表示指令生成ステップS473における処理内容と同じ処理内容が実施される。
【0127】
(表示指令出力ステップS49)
他の実施形態に係る表示指令出力ステップS49では、表示指令生成部22は、表示指令生成ステップS45、情報表示指令生成ステップS471、及び判定表示指令生成ステップS473の各ステップで生成された画像データや表示データを表示指令として表示装置5に出力する。
【0128】
他の実施形態に係る判定結果表示画面400では、
図10及び
図11に示したような第1Dスコープ表示画像410と、第1Sスコープ表示画像411と、第1ビームイメージ画像412とに代えて、
図15に示すような表層領域第1Dスコープ表示画像1410と、表層領域第1Sスコープ表示画像1411と、表層領域第1ビームイメージ画像1412とが表示される。
図15は、他の実施形態に係る判定結果表示画面400の一部について示す図である。
図16は、他の実施形態に係る判定結果表示画面400の一部について示す図である。
【0129】
また、他の実施形態に係る判定結果表示画面400では、第2Dスコープ表示画像420と、第2Sスコープ表示画像421と、第2ビームイメージ画像422とに代えて、
図15に示すような中下層領域第2Dスコープ表示画像1420と、中下層領域第2Sスコープ表示画像1421と、中下層領域第2ビームイメージ画像1422とが表示される。
【0130】
他の実施形態に係る判定結果表示画面400では、第3Dスコープ表示画像430と、第3Sスコープ表示画像431と、第3ビームイメージ画像432とに代えて、
図15に示すような表層領域第3Dスコープ表示画像1430と、表層領域第3Sスコープ表示画像1431と、表層領域第3ビームイメージ画像1432とが表示される。
【0131】
他の実施形態に係る判定結果表示画面400では、第4Dスコープ表示画像440と、第4Sスコープ表示画像441と、第4ビームイメージ画像442とに代えて、
図15に示すような中下層領域第4Dスコープ表示画像1440と、中下層領域第4Sスコープ表示画像1441と、中下層領域第4ビームイメージ画像1442とが表示される。
【0132】
他の実施形態に係る判定結果表示画面400では、一実施形態に係る断面表示画像450に代えて、
図16に示すような他の実施形態に係る断面表示画像1450が表示される。
また、他の実施形態に係る判定結果表示画面400では、一実施形態に係る判定結果表示画面400と同様に、きず情報表示欄460等も表示される。
【0133】
表層領域第1Dスコープ表示画像1410は、例えば、ボイラ前側の探傷子11についての、表層領域71の探傷データ(第1探傷データ)におけるエコー高さを示す探傷画像である。表層領域第1Dスコープ表示画像1410は、被検体7Xである配管7の周方向の位置を横軸にとり、配管7の板厚(深さ)を縦軸にとったときの探傷画像であり、評価対象範囲内のエコー高さだけを表している。すなわち、表層領域第1Dスコープ表示画像1410には、評価対象範囲を設定しなければ表れる評価対象範囲外のエコーが表れない。この点は、後述する中下層領域第2Dスコープ表示画像1420、表層領域第3Dスコープ表示画像1430、及び、中下層領域第4Dスコープ表示画像1440において同様である。
【0134】
なお、全域表示チェックボックス477(
図10及び
図11参照)が選択されると、表層領域第1Dスコープ表示画像1410、中下層領域第2Dスコープ表示画像1420、表層領域第3Dスコープ表示画像1430、及び、中下層領域第4Dスコープ表示画像1440には、評価対象範囲外のエコーも表れる。
【0135】
中下層領域第2Dスコープ表示画像1420は、例えば、ボイラ前側の探傷子11についての、中下層領域73の探傷データ(第2探傷データ)におけるエコー高さを示す探傷画像であり、被検体である配管7の周方向の位置を横軸にとり、配管7の板厚(深さ)を縦軸にとったときの探傷画像である。
【0136】
表層領域第3Dスコープ表示画像1430は、例えば、ボイラ後側の探傷子11についての、表層領域71の探傷データ(第1探傷データ)におけるエコー高さを示す探傷画像であり、被検体である配管7の周方向の位置を横軸にとり、配管7の板厚(深さ)を縦軸にとったときの探傷画像である。
【0137】
中下層領域第4Dスコープ表示画像1440は、例えば、ボイラ後側の探傷子11についての、中下層領域73の探傷データ(第2探傷データ)におけるエコー高さを示す探傷画像であり、被検体である配管7の周方向の位置を横軸にとり、配管7の板厚(深さ)を縦軸にとったときの探傷画像である。
【0138】
他の実施形態に係る判定結果表示画面400では、表層領域第1Dスコープ表示画像1410、中下層領域第2Dスコープ表示画像1420、表層領域第3Dスコープ表示画像1430、及び、中下層領域第4Dスコープ表示画像1440は、互いに、被検体7Xである配管7の周方向の位置が揃っている。すなわち、他の実施形態に係る判定結果表示画面400では、判定結果表示画面400上の左右の位置が同じであれば、各表示画像1410、1420、1430、1440における、配管7の周方向の位置が同じ位置となる。
各表示画像1410、1420、1430、1440における、横軸の基準位置は、例えば、配管7を探傷した際に、エンコーダ13で計測したある周方向位置を基準の周方向位置として設定した際の該基準の周方向位置に対応する位置である。
なお、
図15では、各表示画像1410、1420、1430、1440における横軸を配管7の周方向の位置、すなわちエンコーダ13で計測した計測距離として表しているが、上述した一実施形態のように、配管7の周方向の角度位置として表してもよい。
【0139】
表層領域第1Sスコープ表示画像1411は、例えば、ボイラ前側の探傷子11についての、表層領域71の探傷データにおけるエコー高さを示す探傷画像である。表層領域第1Sスコープ表示画像1411は、配管7の管軸方向に沿ったある断面についてエコー高さを示す探傷画像411aと、配管7の断面及び溶接部の開先形状を表す配管断面
図411bと、評価対象範囲を表す枠411cとが重畳的に表示される表示画像である。
【0140】
中下層領域第2Sスコープ表示画像1421は、例えば、ボイラ前側の探傷子11についての、中下層領域73の探傷データにおけるエコー高さを示す探傷画像であり、配管7の管軸方向に沿ったある断面についてエコー高さを示す探傷画像と、配管7の断面及び溶接部の開先形状を表す配管断面図と、評価対象範囲を表す枠とが重畳的に表示される表示画像である。
【0141】
表層領域第3Sスコープ表示画像1431は、例えば、ボイラ後側の探傷子11についての、表層領域71の探傷データにおけるエコー高さを示す探傷画像であり、配管7の管軸方向に沿ったある断面についてエコー高さを示す探傷画像と、配管7の断面及び溶接部の開先形状を表す配管断面図と、評価対象範囲を表す枠とが重畳的に表示される表示画像である。
【0142】
中下層領域第4Sスコープ表示画像1441は、例えば、ボイラ後側の探傷子11についての、中下層領域73の探傷データにおけるエコー高さを示す探傷画像であり、配管7の管軸方向に沿ったある断面についてエコー高さを示す探傷画像と、配管7の断面及び溶接部の開先形状を表す配管断面図と、評価対象範囲を表す枠とが重畳的に表示される表示画像である。
【0143】
表層領域第1ビームイメージ画像1412は、例えば、ボイラ前側の探傷子11についての、表層領域71でのフォーカルロウのビームイメージを表す図である。
中下層領域第2ビームイメージ画像1422は、例えば、ボイラ前側の探傷子11についての、中下層領域73でのフォーカルロウのビームイメージを表す図である。
表層領域第3ビームイメージ画像1432は、例えば、ボイラ後側の探傷子11についての、表層領域71でのフォーカルロウのビームイメージを表す図である。
中下層領域第4ビームイメージ画像1442は、例えば、ボイラ後側の探傷子11についての、中下層領域73でのフォーカルロウのビームイメージを表す図である。
【0144】
断面表示画像1450は、配管7の管軸方向に沿って見たときのエコー高さを示す探傷画像であり、評価対象範囲内のエコー高さだけを表している。すなわち、断面表示画像450には、評価対象範囲を設定しなければ表れる評価対象範囲外のエコーが表れない。
断面表示画像1450では、ボイラ前側から見た画像では、ボイラ前側の探傷子11による第1探傷データから得られるエコー高さの画像と、ボイラ前側の探傷子11による第2探傷データから得られるエコー高さの画像とを、エンコーダ13から得られた距離の情報に基づいて配管7における周方向の位置にずれがないように一致させている。
同様に、断面表示画像1450では、ボイラ後側から見た画像では、ボイラ後側の探傷子11による第1探傷データから得られるエコー高さの画像と、ボイラ後側の探傷子11による第2探傷データから得られるエコー高さの画像とを、エンコーダ13から得られた距離の情報に基づいて配管7における周方向の位置にずれがないように一致させている。
【0145】
すなわち、他の実施形態に係る表示指令生成ステップS45は、上述した第1読み込みステップで読み込んだ第1探傷データの信号強度を示す第1探傷画像と、上述した第2読み込みステップで読み込んだ第2探傷データの信号強度を示す第2探傷画像とを、表示装置5に表示させる一つの表示画面に表示させるための指令を位置情報(エンコーダ13からの情報)を参照して生成するステップである。
ここで、第1探傷画像は、例えば、表層領域第1Dスコープ表示画像1410と、表層領域第3Dスコープ表示画像1430と、断面表示画像1450の内の第1探傷データに基づく画像である。第2探傷画像は、中下層領域第2Dスコープ表示画像1420と、中下層領域第2Dスコープ表示画像1420と、断面表示画像1450の内の第2探傷データに基づく画像である。
【0146】
他の実施形態に係る表示指令生成ステップS45では、表示画面(判定結果表示画面400)における所定方向の位置、具体的には
図15における各表示画像1410、1420、1430、1440の表示領域での図示左右方向の位置が同じであれば、第1探傷画像において、該所定方向に対応する方向の被検体7X上の位置(すなわち配管7の周方向位置)と、第2探傷画像において、該所定方向に対応する方向の被検体7X上の位置(すなわち配管7の周方向位置)とが一致するように指令(すなわち判定結果表示画面400を表示させるためのデータ)を生成する。
同様に、他の実施形態に係る表示指令生成ステップS45では、表示画面(判定結果表示画面400)における所定方向の位置、具体的には
図16における断面表示画像1450での円周方向の位置が同じであれば、第1探傷画像において、該所定方向に対応する方向の被検体上の位置(すなわち配管7の周方向位置)と、第2探傷画像において、該所定方向に対応する方向の被検体上の位置(すなわち配管7の周方向位置)とが一致するように指令(すなわち判定結果表示画面400を表示させるためのデータ)を生成する。
これにより、第1探傷画像と第2探傷画像との比較が容易となり、被検体7Xである配管7の表面7s側の領域(表層領域71)と、該領域(表層領域71)よりも被検体7Xである配管7の表面7sから遠い領域(中下層領域73)との探傷結果を確認し易くなる。
【0147】
なお、図示は省略するが、他の実施形態の超音波探傷データ処理装置1では、表示指令生成部22は、評価対象データに基づいて、
図13に示した表示画像600と同様の、評価対象範囲内のエコー高さの分布状態を3次元表示した3次元探傷画像の画像データを生成できる。
【0148】
(評価ステップS7)
他の実施形態に係る評価ステップS7では、一実施形態に係る評価ステップS7と同様に、検査者は、表示装置5に表示された判定結果表示画面400の探傷画像や、きずに関する情報、合否の判定表示に基づいて評価対象範囲内のきずの有無を評価することができる。
【0149】
(さらに他の実施形態について)
以下、さらに他の実施形態について説明する。以下の説明では、便宜上、さらに他の実施形態のことを第3の実施形態と称する。
第3の実施形態では、配管や板厚が比較的厚い厚板の突合せ溶接部における裏波の良否の判断に係る実施形態である。
以下の説明では、上述した一実施形態及び他の実施形態における説明内容との相違点について主に説明することとし、特に説明がない事項については、原則として、上述した一実施形態又は他の実施形態における説明内容と同様であるとして詳細な説明を省略する。また、以下の説明において、上述した一実施形態又は他の実施形態と同様の構成については同じ符号を付すこととする。
以下の説明では、裏波の目視による確認が比較的困難である配管の突合せ溶接部における裏波の良否の判断を例に挙げて説明する。
【0150】
図17は、裏波の形状について説明するための模式的な図である。
裏波81とは、溶接面(例えば表面7Xs、表面7s)の裏側(例えば裏面7Xb、内周面7b)に形成される溶接ビードである。
裏波81は、例えば溶接部8において母材並みの強度確保するために、溶接面の裏側に適度に突出した形状を有することが望ましい。このような良好な形状を有する裏波81を健全な裏波81とも称する。しかし、溶接面の裏側への突出量が多すぎると、例えば配管7内を流れる流体の流れを乱す等の不都合を招くおそれがある。すなわち、裏波81の形状が不良となるほど、例えば
図17において破線で示したように裏波81の全体形状は大きくなる。
裏波81の形状は、探傷データに含まれる裏波81からの反射波(裏波反射波)の位置から把握できることから、裏波反射波についての被検体中の位置に基づいて、裏波81の状態を判定することができる。
【0151】
そこで、第3の実施形態では、探傷データに含まれる裏波81からの反射波(裏波反射波)を特定し、特定した裏波反射波についての被検体7X中の位置に基づいて、裏波81の状態を判定するようにしている。
第3の実施形態における、裏波81の状態の判定方法のおおよその流れは、次の通りである。
(a)まず、第3の実施形態では、超音波探傷によって得られた探傷データを読み込む。
(b)そして、読み込んだ探傷データに含まれる反射波の内、裏波反射波を特定する。
第3の実施形態では、裏波反射波の特定に際し、探傷データに含まれる反射波の内、裏波反射波が検出されると推定される領域内に存在する反射波を裏波反射波として特定する。
(c)次いで、特定した裏波反射波についての被検体中の位置が、健全な裏波81の位置に相当する位置の近傍にあるか否かによって裏波81の状態、すなわち裏波81の良/不良を判定する。
(d)次いで、判定した裏波81の状態についての表示画面を表示装置5に表示させる。
【0152】
図18は、第3の実施形態における設定ステップS3で行われる処理の流れを示すフローチャートである。
図19は、第3の実施形態における表示ステップS5で行われる処理の流れを示すフローチャートである。
【0153】
(探傷データの読み込み)
以下、第3の実施形態における、裏波81の状態の判定方法について、
図18及び
図19のフローチャートを参照しながら、上述したおおよその流れに沿って説明する。
図18の探傷データ読込ステップS31において、CPU2は、一実施形態や他の実施形態と同様に、探傷データを、エンコーダ13によって計測したテータとともに読み込んで記憶装置3に記憶させる。
【0154】
第3の実施形態における処理で必要な探傷データは、裏波反射波のデータが含まれる探傷データである。
裏波反射波のデータが含まれる探傷データは、例えば、一実施形態におけるボイラ前側の探傷子11による直射法による探傷データ、及び、ボイラ後側の探傷子11による直射法による探傷データである。
また、裏波反射波のデータが含まれる探傷データは、例えば、他の実施形態におけるボイラ前側の探傷子11による縦波の超音波による中下層領域73の探傷データである第2探傷データ、及び、ボイラ後側の探傷子11による縦波の超音波による中下層領域73の探傷データである第2探傷データである。
【0155】
以下の説明では、探傷データ読込ステップS31において読み込まれた探傷データに、一実施形態におけるボイラ前側の探傷子11による直射法による探傷データ、及び、ボイラ後側の探傷子11による直射法による探傷データが含まれているものとして説明する。
【0156】
(裏波反射波の特定)
第3の実施形態では、探傷データに含まれる反射波の内、被検体において裏波の存在が推定される領域内の反射波を裏波反射波として特定する。
すなわち、第3の実施形態では、健全な裏波81が存在すると推定される領域から、例えば大きくなり過ぎて不健全となってしまった裏波81が存在すると推定される領域までを裏波81の存在が推定される領域とし、該領域内の反射波を裏波反射波として特定する。
例えば第3の実施形態では、裏波81の存在が推定される領域を裏波判定領域Rとして予め設定しておき、この裏波判定領域内からの反射波を裏波反射波として特定する。
【0157】
図20は、裏波判定領域について説明するための図である。
上述したように、裏波81は、その健全性の度合いによって溶接面の裏側での大きさが異なる。そこで、第3の実施形態では、溶接部8の中心Cwからの距離が異なる複数の裏波判定領域Rを設定しておき、これら複数の裏波判定領域Rの何れかからの反射波を裏波反射波として特定する。
ここで、溶接部8の中心Cwは、例えば配管7の軸線AXc方向における溶接部8の中心である。
【0158】
例えば、裏波判定領域Rは、溶接部8の中心Cwを挟んで軸線AXc方向の一方側(例えばボイラ前側)と他方側(例えばボイラ後側)とに設定するとよい。
例えば、裏波判定領域Rは、健全な裏波81が存在する第1裏波判定領域R1a、R1bを含むとよい。
例えば、裏波判定領域Rは、第1裏波判定領域R1a、R1bよりも溶接部8の中心Cwから軸線AXc方向に離れている第2裏波判定領域R2a、R2bを含んでいてもよい。
例えば、裏波判定領域Rは、第2裏波判定領域R2a、R2bよりも溶接部8の中心Cwから軸線AXc方向に離れている第3裏波判定領域R3a、R3bを含んでいてもよい。
各裏波判定領域Rの設定については後で詳述する。
【0159】
第3の実施形態では、裏波反射波の特定は、CPU2が
図19に示した表示ステップS5に含まれる裏波反射波特定ステップS51を実行することで行われる。
すなわち、第3の実施形態における表示ステップS5では、上述したきず判定ステップS41と、合否判定ステップS43と、表示指令生成ステップS45と、情報表示指令生成ステップS471と、判定表示指令生成ステップS473と、表示指令出力ステップS49とに加えて、裏波反射波特定ステップS51と、後述する裏波判定ステップS53とが実施される。
【0160】
裏波反射波特定ステップS51は、以下のようにして裏波反射波を特定するステップである。
裏波反射波特定ステップS51では、CPU2は、裏波81の存在が推定される領域内の反射波を裏波反射波として特定する。
例えば、裏波反射波特定ステップS51では、CPU2は、裏波判定領域R内に存在する反射波の状態から裏波反射波を特定してもよい。
具体的には、裏波反射波特定ステップS51では、CPU2は、後述するようにして設定された裏波判定領域Rの設定データを記憶装置3から読み出す。そして、CPU2は、
図18の探傷データ読込ステップS31において読み込んだ、探傷データグループの各探傷データに基づいて、各裏波判定領域Rに存在する反射波のデータに関し、後述する裏波の検出レベルを超えるエコー高さの領域が後述する判定長さ以上連続して存在するか否かを判定する。
なお、判定長さ以上連続して存在するか否かの判定に際し、裏波の検出レベルを超えるエコー高さの領域の延在方向は問わない。
CPU2は、裏波の検出レベルを超えるエコー高さの領域が判定長さ以上連続して存在する場合、その領域の反射波を裏波反射波であると特定する。
【0161】
ここで、上記の裏波の検出レベルは、裏波判定領域R内の反射波が裏波反射波であるか否か判定する際の裏波判定条件(閾値)の一つである。また、上記の判定長さは、上記の裏波の検出レベルと同様に、裏波判定領域R内の反射波が裏波反射波であるか否か判定する際の裏波判定条件(閾値)の一つである。
なお、裏波判定領域R内で裏波の検出レベルを超えるエコー高さの領域が離れていても、その間隔が後述するようにして設定される検出間隔以下であれば一つの連続した領域であるとCPU2が判断するものとする。
【0162】
このように、裏波反射波特定ステップS51において、裏波81の存在が推定される領域内の反射波を裏波反射波として特定することで、裏波反射波を特定し易くなり、裏波反射波を特定するための処理が複雑化するのを抑制できる。
また、裏波反射波特定ステップS51において、裏波判定領域R内に存在する反射波の状態から裏波反射波を特定することで、裏波判定領域R内に裏波反射波が存在するか否かによって裏波判定領域R内に裏波が存在するか否かを容易に判定できる。
【0163】
(裏波判定条件の設定について)
裏波判定条件の設定は、
図1に示したCPU2の評価対象範囲設定部21が
図18に示した設定ステップS3に含まれる裏波判定条件設定ステップS34を実行することで行われる。
すなわち、第3の実施形態における設定ステップS3では、上述した探傷データ読込ステップS31と、判定条件設定ステップS33と、開先形状設定ステップS35と、評価対象範囲入力ステップS37と、評価対象範囲設定ステップS39とに加えて、裏波判定条件設定ステップS34と、後述する裏波判定領域設定ステップS36が実施される。
【0164】
裏波判定条件設定ステップS34では、評価対象範囲設定部21は、例えば、
図5や
図6に示すような判定条件設定画面100と同様の裏波判定条件設定画面(不図示)を
図1に示した表示装置5に表示させる。
検査者は、判定条件設定ステップS33における操作と同様の操作を不図示の裏波判定条件設定画面において実施することで、裏波判定条件を入力できる。
不図示の裏波判定条件設定画面では、上記の裏波の検出レベル、上記の判定長さ、及び上記の検出間隔を入力及び設定できる。
そして、検査者によって、不図示の裏波判定条件設定画面において、
図5や
図6に示すような判定条件設定画面100の閉じるボタン118と同様の不図示の閉じるボタンが選択されると、評価対象範囲設定部21は、不図示の裏波判定条件設定画面における設定内容を裏波判定条件の設定データとして記憶装置3に記憶させる。
【0165】
(裏波判定領域Rの設定について)
各裏波判定領域Rの設定は、CPU2の評価対象範囲設定部21が
図18に示した設定ステップS3に含まれる裏波判定領域設定ステップS36を実行することで行われる。
【0166】
裏波判定領域設定ステップS36は、裏波反射波の有無を判定するための裏波判定領域を設定するステップである。
裏波判定領域設定ステップS36では、評価対象範囲設定部21は、例えば、
図8に示すような評価対象範囲入力画面300と同様の裏波判定領域入力画面(不図示)を表示装置5に表示させる。
検査者は、評価対象範囲を入力した場合の操作と同様の操作を不図示の裏波判定領域入力画面において実施することで、各裏波判定領域Rを入力できる。
そして、検査者によって、不図示の裏波判定領域入力画面において、
図8に示した評価対象範囲入力画面300の更新ボタン308と同様の不図示の更新ボタンが選択されると、評価対象範囲設定部21は、不図示の裏波判定領域入力画面における設定内容を裏波判定領域Rの設定データとして記憶装置3に記憶させる。
【0167】
裏波判定領域設定ステップS36では、裏波判定領域Rとして第1裏波判定領域R1a、R1bと、第1裏波判定領域R1a、R1bよりも溶接部8の中心Cwからの距離(軸線AXc方向の距離)が大きい第2裏波判定領域R2a、R2bとを設定可能である。
裏波判定領域設定ステップS36では、第2裏波判定領域R2a、R2bよりも溶接部8の中心Cwからの距離(軸線AXc方向の距離)が大きい第3裏波判定領域R3a、R3bを設定可能である。
なお、裏波判定領域Rの幅(軸線AXc方向の大きさ)や裏波判定領域Rの高さ(配管7の径方向の大きさ)、裏波判定領域Rの高さ位置(配管7の径方向の位置)は、各裏波判定領域Rで同じであってもよいし、異なっていてもよい。
また、軸線AXc方向で隣り合う裏波判定領域Rの間隔の大きさはゼロであってもよいし、ゼロよりも大きくてもよい。
【0168】
(裏波81の良/不良の判定)
第3の実施形態では、裏波反射波特定ステップS51で特定した裏波反射波の位置に基づいて、裏波の状態を判定する。
第3の実施形態では、裏波81の状態の判定は、CPU2が
図19に示した表示ステップS5に含まれる裏波判定ステップS53を実行することで行われる。すなわち、裏波判定ステップS53は、裏波反射波特定ステップS51で特定した裏波反射波の位置に基づいて、裏波81の状態を判定するステップである。
したがって、裏波判定ステップS53において、裏波反射波の位置に基づいて、裏波81の状態を判定できるので、検査者の熟練度によらず、裏波81の状態の良否を判断できる。
【0169】
裏波判定ステップS53では、溶接部8の中心Cwと裏波反射波との距離に基づいて裏波81の状態を判定する。
これにより、裏波反射波を特定し易くなり、裏波反射波を特定するための処理が複雑化するのを抑制できる。
【0170】
具体的には、裏波反射波特定ステップS51で特定した裏波反射波が、何れの裏波判定領域Rにおいて検出された反射波であるかによって裏波81の状態を判定する。
例えば、CPU2は、裏波反射波特定ステップS51で特定した裏波反射波が、何れかの第1裏波判定領域R1a、R1bに存在する場合に、裏波81が健全(良好)であると判定する。
例えば、CPU2は、裏波反射波特定ステップS51で特定した裏波反射波が、何れかの第2裏波判定領域R2a、R2b内に存在する場合には、何れの第2裏波判定領域R2a、R2b内に裏波反射波が存在せず、且つ、何れかの第1裏波判定領域R1a、R1b内に裏波反射波が存在する場合よりも、裏波81の状態が良好ではないと判定する。
例えば、CPU2は、裏波反射波特定ステップS51で特定した裏波反射波が、何れかの第3裏波判定領域R3a、R3b内に存在する場合には、何れの第3裏波判定領域R3a、R3b内に裏波反射波が存在せず、且つ、何れかの第1裏波判定領域R1a、R1b内又は何れかの第2裏波判定領域R2a、R2b内に裏波反射波が存在する場合よりも、裏波81の状態が良好ではないと判定する。
これにより、裏波反射波の位置についての溶接部8の中心Cwからの距離に応じて裏波81の状態を判定できるので、裏波81の状態の良否を容易に判断できる。
【0171】
(判定した裏波81の状態についての表示)
図21は、第3の実施形態における判定結果表示画面400を示す図である。
図21に示す判定結果表示画面400は、
図10に示した判定結果表示画面400と同様のものである。
図22は、第3の実施形態における裏波判定結果表示画面500を示す図である。
【0172】
図21に示す判定結果表示画面400では、
図10に示した判定結果表示画面400における各画像や各ボタンの他に、切替ボタン479が表示される。
切替ボタン479は、
図21に示す判定結果表示画面400から、以下で説明する、
図22に示す裏波判定結果表示画面500に画面を切り替えるためのボタンである。
【0173】
図22に示す裏波判定結果表示画面500では、ボイラ前側の探傷子11によって得られた探傷データのうち、探傷範囲に少なくとも裏波が含まれる探傷データと、ボイラ後側の探傷子11によって得られた探傷データのうち、探傷範囲に少なくとも裏波が含まれる探傷データとに基づいて生成されたBスコープ表示画像510と、Sスコープ表示画像511と、裏波判定領域表示画像512と、断面表示画像550と、裏波情報表示欄560とが表示される。
【0174】
(表示指令生成ステップS45)
第3の実施形態における表示指令生成ステップS45では、表示指令生成部22は、上述した一実施形態又は他の実施形態に係る表示指令生成ステップS45における処理内容と同じ処理内容と同じ処理内容を実施することに加えて、
図18の探傷データ読込ステップS31において読み込んだ、探傷データグループの各探傷データに基づいて、エコー高さを示す探傷画像の画像データを生成する。このとき生成される探傷画像の画像データは、例えば
図22に示すBスコープ表示画像510、Sスコープ表示画像511、及び、断面表示画像550の画像データである。
【0175】
少なくとも、Bスコープ表示画像510、Sスコープ表示画像511、及び、断面表示画像550は、探傷データのうち、少なくとも裏波81の存在が推定される領域である裏波判定領域Rに対応した探傷データに基づいて生成された、反射波の信号強度を示す画像である。
したがって、第3の実施形態における表示指令生成ステップS45は、探傷データのうち、少なくとも裏波81の存在が推定される領域に対応した探傷データを抽出し、反射波の信号強度を示す画像を表示装置5に表示させるための指令を生成するステップである。
これにより、検査者が表示装置5に表示された上記画像を確認できるので、裏波判定ステップS53における判定結果の妥当性を検査者が判断するのに都合がよい。
【0176】
少なくともSスコープ表示画像511は、探傷データのうち、少なくとも裏波81の存在が推定される領域である裏波判定領域Rに対応した探傷データに基づいて生成された反射波の信号強度を示す画像を、裏波判定領域Rとともに表示装置5に表示される画像である。
したがって、第3の実施形態における表示指令生成ステップS45は、探傷データのうち、少なくとも裏波81の存在が推定される領域に対応した探傷データを抽出し、反射波の信号強度を示す画像を裏波判定領域とともに表示装置5に表示させるための指令を生成するステップである。
これにより、表示装置5に表示された裏波判定領域及び反射波の信号強度を示す画像を検査者が確認できるので、裏波判定ステップS53における判定結果の妥当性を検査者が判断するのに都合がよい。
【0177】
(情報表示指令生成ステップS471)
第3の実施形態における情報表示指令生成ステップS471では、表示指令生成部22は、上述した一実施形態又は他の実施形態に係る情報表示指令生成ステップS471における処理内容と同じ処理内容を実施することに加えて、例えば
図22に示す裏波情報表示欄560の表示をするための表示データを生成する。
【0178】
(判定表示指令生成ステップS473)
第3の実施形態における判定表示指令生成ステップS473では、上述した一実施形態又は他の実施形態に係る判定表示指令生成ステップS473における処理内容と同じ処理内容を実施することに加えて、裏波判定ステップS53における判定結果を反映する表示データを生成する。
ここで、裏波判定ステップS53における判定結果を反映する表示データは、例えば、
図22における裏波良否判定表示478の表示データである。裏波良否判定表示478の背景色は、裏波判定ステップS53における判定結果に基づいて決定される。裏波良否判定表示478の背景色については、後述する。
【0179】
(表示指令出力ステップS49)
第3の実施形態における表示指令出力ステップS49では、表示指令生成部22は、表示指令生成ステップS45、情報表示指令生成ステップS471、及び判定表示指令生成ステップS473の各ステップで生成された画像データや表示データを表示指令として表示装置5に出力する。これにより、表示装置5には、例えば、
図21に示す判定結果表示画面400と
図22に示す裏波判定結果表示画面500とが切り替え可能に表示される。
【0180】
表示装置5に、
図21に示す判定結果表示画面400が表示されている場合に切替ボタン479が選択されると、表示装置5には、
図22に示す裏波判定結果表示画面500が表示されるように構成されている。同様に、表示装置5に
図22に示す裏波判定結果表示画面500が表示されている場合に切替ボタン479が選択されると、表示装置5には、
図21に示す判定結果表示画面400が表示されるように構成されている。
【0181】
(裏波判定結果表示画面500)
図22に示す裏波判定結果表示画面500について説明する。
Bスコープ表示画像510は、配管7の軸線AXc方向から見た画像であり、例えば、直射法による探傷データにおけるエコー高さを示す探傷画像である。Bスコープ表示画像510は、被検体7Xである配管7の周方向の位置を横軸にとり、配管7の板厚(深さ)を縦軸にとったときの探傷画像であり、各裏波判定領域Rに対応する配管7の板厚方向の範囲内のエコー高さだけを表している。
【0182】
なお、
図22に示すBスコープ表示画像510では、ボイラ前側の探傷子11についての、直射法による探傷データにおけるエコー高さと、ボイラ後側の探傷子11についての、直射法による探傷データにおけるエコー高さとが重畳的に表示されている。
ここで、
図22に示すチェックボックス515の選択が解除されると、Bスコープ表示画像510には、ボイラ後側の探傷子11についての、直射法による探傷データにおけるエコー高さだけが表示されるように構成されている。
なお、
図22に示すチェックボックス515の選択が解除されると、Bスコープ表示画像510には、ボイラ前側の探傷子11についての、直射法による探傷データにおけるエコー高さだけが表示されるように構成されていてもよい。
また、Bスコープ表示画像510において、ボイラ前側の探傷子11についての、直射法による探傷データにおけるエコー高さだけが表示されるか、ボイラ後側の探傷子11についての、直射法による探傷データにおけるエコー高さだけが表示されるかを切り替え可能に構成されていてもよい。
【0183】
Sスコープ表示画像511は、例えば、直射法による探傷データにおけるエコー高さを示す探傷画像である。Sスコープ表示画像511は、配管7の軸線AXc方向に沿ったある断面についてエコー高さを示す探傷画像511aと、配管7の断面及び溶接部8の開先形状を表す配管断面
図511bと、裏波判定領域Rを表す枠511cとが重畳的に表示される表示画像である。
Sスコープ表示画像511における探傷画像では、裏波判定領域R内のエコー高さだけでなく裏波判定領域R外のエコー高さも表されているが、裏波判定領域R内のエコー高さだけを表すようにしてもよい。
【0184】
裏波判定領域表示画像512は、例えば、直射法によるフォーカルロウのビームイメージ512aと、配管7の断面及び溶接部8の開先形状を表す配管断面
図512bと、裏波判定領域Rを表す枠512cとを重畳的に表す図である。
【0185】
Sスコープ表示画像511及び裏波判定領域表示画像512は、それぞれの画像表示の上部に表示されたプラスボタンが選択されると拡大して表示され、マイナスボタンが選択されると縮小表示される。また、Sスコープ表示画像511及び裏波判定領域表示画像512における配管断面
図511b、512bの開先の種類や各部の寸法には、開先形状設定ステップS35における設定内容が反映されている。Sスコープ表示画像511及び裏波判定領域表示画像512における裏波判定領域Rの枠511c、512cの形状や寸法には、裏波判定領域設定ステップS36における設定内容が反映されている。
【0186】
断面表示画像550は、配管7の管軸方向に沿って見たときのエコー高さを示す探傷画像であり、裏波判定領域R内のエコー高さだけを表している。断面表示画像550は、配管7の軸線AXc方向の沿った2つの方向のうち、どちらの方向から見た画像を表示するのかを選択可能である。例えば、
図22に示す断面表示画像550では、ボイラ前側から見た画像を表示するのか、ボイラ後側から見た画像を表示するのかを選択可能である。
【0187】
なお、断面表示画像550では、ボイラ前側の探傷子11についての、直射法による探傷データにおけるエコー高さと、ボイラ後側の探傷子11についての、直射法による探傷データにおけるエコー高さとが重畳的に表示されている。
ここで、
図22に示すチェックボックス515の選択が解除されると、断面表示画像550には、ボイラ後側の探傷子11についての、直射法による探傷データにおけるエコー高さだけが表示されるように構成されている。
なお、
図22に示すチェックボックス515の選択が解除されると、断面表示画像550には、ボイラ前側の探傷子11についての、直射法による探傷データにおけるエコー高さだけが表示されるように構成されていてもよい。
また、断面表示画像550において、ボイラ前側の探傷子11についての、直射法による探傷データにおけるエコー高さだけが表示されるか、ボイラ後側の探傷子11についての、直射法による探傷データにおけるエコー高さだけが表示されるかを切り替え可能に構成されていてもよい。
【0188】
裏波情報表示欄560には、裏波判定ステップS53において特定された裏波反射波が存在する位置や長さ、最大エコー高さ等の情報が表示される。なお、
図22における裏波情報表示欄560では、これらの情報の記載を省略している。
【0189】
例えば、裏波良否判定表示478は、裏波判定ステップS53における判定結果に基づいて決定された背景色で表示される。
例えば、Sスコープ表示画像511及び裏波判定領域表示画像512における裏波判定領域Rの枠511c、512cの表示色を溶接部8の中心Cwからの距離に応じて枠511c、512c毎に異なる表示色に設定可能である場合、裏波反射波が存在する裏波判定領域Rの枠511c、512cの表示色と同じ表示色となるように、裏波良否判定表示478の背景色を決定するようにしてもよい。
【0190】
例えば、第1裏波判定領域R1a、R1bに対応する枠511c、512cの表示色を青色に設定し、第2裏波判定領域R2a、R2bに対応する枠511c、512cの表示色を黄色に設定し、第3裏波判定領域R3a、R3bに対応する枠511c、512cの表示色を赤色に設定した場合について説明する。
この場合、裏波反射波が、第1裏波判定領域R1a、R1bにおいて検出されているのであれば、裏波良否判定表示478の背景色を青色に決定するように構成されているとよい。
同様に、裏波反射波が、第2裏波判定領域R2a、R2bにおいて検出されているのであれば、裏波良否判定表示478の背景色を黄色に決定するように構成されているとよく、裏波反射波が、第3裏波判定領域R3a、R3bにおいて検出されているのであれば、裏波良否判定表示478の背景色を赤色に決定するように構成されているとよい。
【0191】
なお、裏波反射波が、第2裏波判定領域R2a、R2bや第3裏波判定領域R3a、R3bにおいて検出されている場合には、他の方法による裏波81の点検を促す旨の表示を裏波判定結果表示画面500するように構成してもよい。
【0192】
(評価ステップS7について)
第3の実施形態における評価ステップS7では、検査者は、上述した一実施形態又は他の実施形態と同様に、表示装置5に表示された判定結果表示画面400の探傷画像や、きずに関する情報、合否の判定表示に基づいて評価対象範囲内のきずの有無を評価することができる。
また、第3の実施形態における評価ステップS7では、検査者は、表示装置5に表示された裏波判定結果表示画面500の探傷画像や、裏波反射波が存在する位置や長さ、最大エコー高さ等の情報、裏波良否判定表示478の背景色に基づいて、裏波81の状態を判断できる。なお、検査者は、必要に応じて、他の方法による裏波81の点検や、可能であれば目視による裏波81の点検を行ってもよい。
【0193】
第3の実施形態に係る超音波探傷データ処理装置1は、裏波81の反射波である裏波反射波を特定する特定部としてのCPU2と、特定部(CPU2)で特定した裏波反射波の位置に基づいて、裏波81の状態を判定する判定部としてのCPU2と、を備える。
これにより、裏波反射波の位置に基づいて、裏波81の状態を判定できるので、検査者の熟練度によらず、裏波81の状態の良否を判断できる。
【0194】
第3の実施形態に係る被検体の判定方法は、裏波81の反射波である裏波反射波を特定するステップとしての裏波反射波特定ステップS51と、特定するステップ(裏波反射波特定ステップS51)で特定した裏波反射波の位置に基づいて、裏波81の状態を判定するステップとしての裏波判定ステップS53と、を備える。
これにより、裏波反射波の位置に基づいて、裏波81の状態を判定できるので、検査者の熟練度によらず、裏波81の状態の良否を判断できる。
【0195】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述した第3の実施形態における裏波判定領域Rは、1つでもよい。例えば、裏波判定領域Rは、溶接部8の中心Cwを挟んで軸線AXc方向の一方側又は他方側の一方に1つの裏波判定領域Rだけ設定してもよいし、溶接部8の中心Cwを跨いだ1つの裏波判定領域Rだけ設定してもよい。
【0196】
また、例えば、上述した第3の実施形態において、裏波判定領域Rを設定せず、溶接部8の中心Cwからの距離が予め設定した距離内であって、裏面7Xbから裏波81の突出方向に離れた領域に表れた反射波のうち、裏波の検出レベルを超えるエコー高さの領域が判定長さ以上連続して存在する反射波を裏波反射波として特定し、特定した裏波反射波についての溶接部8の中心Cwからの距離に基づいて裏波81の良否を判定してもよい。
【0197】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る超音波探傷データ処理プログラムは、被検体7Xに対して超音波探傷を行うことによって得られた探傷データを処理するための超音波探傷データ処理プログラムである。上記被検体7Xは、裏波81を有する溶接部8を含む。本開示の少なくとも一実施形態に係る超音波探傷データ処理プログラムでは、裏波81の反射波である裏波反射波を特定するステップ(裏波反射波特定ステップS51)と、上記特定するステップ(裏波反射波特定ステップS51)で特定した裏波反射波の位置に基づいて、裏波81の状態を判定するステップ(裏波判定ステップS53)と、を演算装置(CPU2)に実行させる。
【0198】
上記(1)のプログラムによれば、裏波反射波の位置に基づいて、裏波81の状態を判定できるので、検査者の熟練度によらず、裏波81の状態の良否を判断できる。
【0199】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)のプログラムにおいて、特定するステップ(裏波反射波特定ステップS51)では、裏波81の存在が推定される領域内の反射波を裏波反射波として特定するとよい。
【0200】
上記(2)のプログラムによれば、裏波反射波を特定し易くなり、裏波反射波を特定するための処理が複雑化するのを抑制できる。
【0201】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)のプログラムにおいて、判定するステップ(裏波判定ステップS53)では、溶接部8の中心Cwと裏波反射波との距離に基づいて裏波81の状態を判定するとよい。
【0202】
上記(3)のプログラムによれば、裏波反射波を特定し易くなり、裏波反射波を特定するための処理が複雑化するのを抑制できる。
【0203】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかのプログラムにおいて、裏波反射波の有無を判定するための裏波判定領域Rを設定するステップ(裏波判定領域設定ステップS36)を演算装置に実行させるとよい。特定するステップ(裏波反射波特定ステップS51)では、裏波判定領域R内に存在する反射波の状態から裏波反射波を特定するとよい。
【0204】
上記(4)のプログラムによれば、裏波判定領域内に裏波反射波が存在するか否かによって裏波判定領域内に裏波が存在するか否かを容易に判定できる。
【0205】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)のプログラムにおいて、設定するステップ(裏波判定領域設定ステップS36)では、裏波判定領域Rとして第1裏波判定領域R1a、R1bと、第1裏波判定領域R1a、R1bよりも溶接部8の中心Cwからの距離が大きい第2裏波判定領域R2a、R2bとを設定可能であってもよい。判定するステップ(裏波判定ステップS53)では、第2裏波判定領域R2a、R2b内に裏波反射波が存在する場合には、第2裏波判定領域R2a、R2b内に裏波反射波が存在せず、且つ、第1裏波判定領域R1a、R1b内に裏波反射波が存在する場合よりも、裏波81の状態が良好ではないと判定してもよい。
【0206】
上記(5)のプログラムによれば、裏波反射波の位置についての溶接部8の中心Cwからの距離に応じて裏波81の状態を判定できるので、裏波81の状態の良否を容易に判断できる。
【0207】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかのプログラムにおいて、探傷データのうち、少なくとも裏波81の存在が推定される領域に対応した探傷データを抽出し、反射波の信号強度を示す画像(Bスコープ表示画像510、Sスコープ表示画像511、及び、断面表示画像550)を表示装置5に表示させるための指令を生成するステップ(表示指令生成ステップS45)、を演算装置(CPU2)に実行させるとよい。
【0208】
上記(6)のプログラムによれば、検査者が表示装置5に表示された上記画像を確認できるので、裏波81の状態を判定するステップ(裏波判定ステップS53)における判定結果の妥当性を検査者が判断するのに都合がよい。
【0209】
(7)幾つかの実施形態では、上記(4)又は(5)のプログラムにおいて、探傷データのうち、少なくとも裏波81の存在が推定される領域に対応した探傷データを抽出し、反射波の信号強度を示す画像を裏波判定領域とともに表示装置5に表示させるための指令を生成するステップ(表示指令生成ステップS45)、を演算装置(CPU2)に実行させるとよい。
【0210】
上記(7)のプログラムによれば、表示装置5に表示された裏波判定領域及び反射波の信号強度を示す画像(Sスコープ表示画像511)を検査者が確認できるので、裏波81の状態を判定するステップ(裏波判定ステップS53)における判定結果の妥当性を検査者が判断するのに都合がよい。
【0211】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかのプログラムにおいて、被検体7Xの表面7Xs側の領域(表層領域71)をクリーピング波により探傷することで得られた第1探傷データを被検体7Xにおける位置情報とともに読み込む第1読み込みステップと、表面7Xs側の領域(表層領域71)よりも被検体7Xの表面7Xsから遠い領域を含む領域(中下層領域73)を縦波の超音波により探傷することで得られた第2探傷データを位置情報とともに読み込む第2読み込みステップと、第1読み込みステップで読み込んだ第1探傷データの信号強度を示す第1探傷画像と、第2読み込みステップで読み込んだ第2探傷データの信号強度を示す第2探傷画像とを、表示装置5に表示させる一つの表示画面に表示させるための指令を位置情報(エンコーダ13からの情報)を参照して生成するステップ(表示指令生成ステップS45)と、を演算装置(CPU2)に実行させるとよい。上記指令を生成するステップ(表示指令生成ステップS45)では、表示画面(判定結果表示画面400)における所定方向の位置が同じであれば、第1探傷画像において、所定方向に対応する方向の被検体7X上の位置と、第2探傷画像において、所定方向に対応する方向の被検体7X上の位置とが一致するように上記指令を生成するとよい。
【0212】
上記(8)のプログラムによれば、上記第1探傷画像と第2探傷画像との比較が容易となり、被検体7Xの表面7Xs側の領域(表層領域71)と、該領域(表層領域71)よりも被検体7Xの表面7Xsから遠い領域(中下層領域73)との探傷結果を確認し易くなる。
【0213】
(9)本開示の少なくとも一実施形態に係る超音波探傷データ処理装置1は、被検体7Xに対して超音波探傷を行うことによって得られた探傷データを処理するための超音波探傷データ処理装置1である。被検体7Xは、裏波81を有する溶接部8を含む。本開示の少なくとも一実施形態に係る超音波探傷データ処理装置1は、裏波81の反射波である裏波反射波を特定する特定部(CPU2)と、特定部(CPU2)で特定した裏波反射波の位置に基づいて、裏波81の状態を判定する判定部(CPU2)と、を備える。
【0214】
上記(9)の構成によれば、裏波反射波の位置に基づいて、裏波81の状態を判定できるので、検査者の熟練度によらず、裏波の状態の良否を判断できる。
【0215】
(10)本開示の少なくとも一実施形態に係る被検体の判定方法は、被検体7Xの溶接部8における裏波81の状態を判定する被検体の判定方法である。本開示の少なくとも一実施形態に係る被検体の判定方法は、裏波81の反射波である裏波反射波を特定するステップ(裏波反射波特定ステップS51)と、特定するステップ(裏波反射波特定ステップS51)で特定した裏波反射波の位置に基づいて、裏波81の状態を判定するステップ(裏波判定ステップS53)と、を備える。
【0216】
上記(10)の方法によれば、裏波反射波の位置に基づいて、裏波81の状態を判定できるので、検査者の熟練度によらず、裏波の状態の良否を判断できる。
【符号の説明】
【0217】
1 超音波探傷データ処理装置
2 演算装置(CPU)
21 評価対象範囲設定部
22 表示指令生成部
100 判定条件設定画面
200 開先形状設定画面
300 評価対象範囲入力画面
400 判定結果表示画面
500 裏波判定結果表示画面
600 表示画像
【要約】
【課題】検査者の熟練度によらず、超音波探傷の結果に基づく被検体の状態についての判断の精度を向上できる超音波探傷データ処理プログラムを提供する。
【解決手段】本開示の少なくとも一実施形態に係る超音波探傷データ処理プログラムは、被検体に対して超音波探傷を行うことによって得られた探傷データを処理するための超音波探傷データ処理プログラムであって、被検体は、裏波を有する溶接部を含み、裏波の反射波である裏波反射波を特定するステップと、特定するステップで特定した裏波反射波の位置に基づいて、裏波の状態を判定するステップと、を演算装置に実行させる。
【選択図】
図1