(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】組立式腹腔シミュレータ
(51)【国際特許分類】
G09B 23/28 20060101AFI20220707BHJP
G09B 9/00 20060101ALI20220707BHJP
G09B 19/00 20060101ALI20220707BHJP
G09B 19/24 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
G09B23/28
G09B9/00 Z
G09B19/00 Z
G09B19/24 Z
(21)【出願番号】P 2021568449
(86)(22)【出願日】2020-01-03
(86)【国際出願番号】 JP2020000004
(87)【国際公開番号】W WO2021137272
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-02-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1)ウェブサイトのアドレス https://fasolab.jp/products/trainigbox/fasolablap/ ウェブサイトの掲載日 平成31年(2019年)1月28日 公開者 株式会社ファソテック 2)ウェブサイトのアドレス https://fasolab.jp/en/products/trainigbox/fasolablap/ ウェブサイトの掲載日 平成31年(2019年)1月28日 公開者 株式会社ファソテック
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】709002772
【氏名又は名称】株式会社ファソテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000822
【氏名又は名称】特許業務法人グローバル知財
(72)【発明者】
【氏名】竹内 淳一
(72)【発明者】
【氏名】安楽 武志
【審査官】前地 純一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-207304(JP,A)
【文献】特許第6496096(JP,B1)
【文献】特開2017-32814(JP,A)
【文献】特表2013-544373(JP,A)
【文献】特開2016-4079(JP,A)
【文献】特開2014-199405(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0314718(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0051049(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00- 9/56
G09B 17/00-19/26
G09B 23/00-29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹腔鏡下手技を習得するための腹腔シミュレータにおいて、
臓器モデル固定具を取り付ける固定部が複数設けられた台座と、
気腹状態を模擬したケーシングと、
を備え、
前記台座に第1の嵌合部が設けられ、
前記ケーシングに第2の嵌合部が設けられ、
第1及び第2の嵌合部を嵌合することにより前記台座と前記ケーシングを固定でき、かつ、前記台座又は前記ケーシングの何れかを180°向きを変えた状態で、第1及び第2の嵌合部を嵌合することにより前記台座と前記ケーシングを固定
し、前記ケーシングとの関係で前記固定部の配置が変化することを特徴とする組立式腹腔シミュレータ。
【請求項2】
前記ケーシングは、
気腹状態を模擬した気腹カバーと、該気腹カバーと前記台座の間に前記臓器モデル固定具を配置する間隙を設ける2枚の側板部材とから成り、
前記気腹カバーに第1の凹部が設けられ、
前記側板部材に第1の凸部及び第2の凸部が設けられ、
前記台座に第2の凹部が設けられ、
第2の凹部と第2の凸部がそれぞれ前記第1の嵌合部と第2の嵌合部に相当するものであり、
第1の凹部と第1の凸部を嵌合することにより前記気腹カバーと前記側板部材を固定でき、第2の凹部と第2の凸部を嵌合することにより前記台座と前記側板部材を固定でき、かつ、前記台座又は前記ケーシングの何れかを180°向きを変えた状態で、第1の凹部と第1の凸部を嵌合することにより前記気腹カバーと前記側板部材を固定でき、第2の凹部と第2の凸部を嵌合することにより前記台座と前記側板部材を固定できることを特徴とする請求項1に記載の組立式腹腔シミュレータ。
【請求項3】
前記側板部材に第3の凸部及び第4の凸部が設けられ、
前記台座の第2の凹部と上記の第4の凸部とを嵌合することにより前記台座上に前記側板部材を積層して固定でき、前記気腹カバーの第1の凹部と上記の第3の凸部とを嵌合することにより前記側板部材上に前記気腹カバーを積層して固定できることを特徴とする請求項2に記載の組立式腹腔シミュレータ。
【請求項4】
前記台座の第2の凹部と前記側板部材の第2の凸部とを嵌合して前記台座と前記側板部材を固定した際に、前記台座と前記側板部材の固定状態を補強する、T字状の溝部が形成された留め具を更に備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の組立式腹腔シミュレータ。
【請求項5】
前記固定部は、磁石が設けられ、
前記留め具は、磁性体を持つ金属部材が設けられ、
前記磁石に前記金属部材を固着させて収納し得ることを特徴とする請求項4に記載の組立式腹腔シミュレータ。
【請求項6】
前記側板部材は、切欠部が形成され、
前記切欠部は、前記台座の第2の凹部と前記側板部材の第4の凸部を嵌合して前記台座上に前記側板部材を積層した際に、前記固定部及び前記磁石に固着された前記金属部材と干渉しない位置に形成されたことを特徴とする請求項5に記載の組立式腹腔シミュレータ。
【請求項7】
前記固定部は、
前記台座の中央から前記台座の長手方向の、一方に奇数個と、他方に偶数個設けられ、
奇数個の前記固定部の1個は、前記台座の短手方向の中央に設けられ、
偶数個の前記固定部は、前記台座の短手方向の中央を跨ぎ設けられた、
ことを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の組立式腹腔シミュレータ。
【請求項8】
前記固定部は、
前記台座の中央から前記台座の長手方向の、一方に1個と、他方に2個設けられ、
前記1個の固定部は、前記台座の短手方向の中央に設けられ、
前記2個の固定部は、前記台座の短手方向の中央を跨ぎ設けられた、
ことを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の組立式腹腔シミュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腹腔鏡下手術のトレーニングや学習用の腹腔シミュレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、傷跡が小さく、術後の回復も早いことから、消化器や泌尿器などの手術において、腹腔鏡下手術が多く行われている。
しかしながら、腹腔鏡下手術は手術難易度が高く、執刀医の技術の差が出やすいという問題がある。そのため、腹腔鏡下手術の手技トレーニングを効果的に行う技術が望まれている。
【0003】
腹腔鏡下手術の手技トレーニングを行う技術としては、人体形状を模擬した部材で構成されたケーシングを有する腹腔シミュレータが知られている(特許文献1を参照)。
上記特許文献1に開示された腹腔シミュレータでは、手術器具を挿通し得る複数のポートが設けられ、繰り返しトレーニングを行うことが可能となっている。また、シミュレータ内に生体質感臓器モデルを取り付ける際に、位置合わせが簡便に行える構成となっており、利便性の高いシミュレータとなっている。
しかしながら、上記特許文献1に開示された腹腔シミュレータでは、対象となる手技トレーニングが腹腔鏡下手術の手技トレーニングに限られてしまい、腹腔鏡下手術に限られない多様な手技トレーニングには利用できないという問題がある。
【0004】
また、上記特許文献1に開示された腹腔シミュレータでは、装置が大型であり、持ち運びが容易でないという問題もある。腹腔シミュレータを持ち運びに適した構造とするためには、コンパクトに折り畳むことのできるシミュレータとすることが考えられる。しかしながら、体腔内を精巧に再現しつつ、かつ折り畳み可能なシミュレータとするのでは、製造コストが高くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開パンフレットWO2015/151504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる状況に鑑みて、本発明は、多様でリアルな手技トレーニングができ、かつ収納や持ち運びが容易な腹腔シミュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、体腔内の全てを精巧に再現するのではなく、トレーニング内容に合わせて、適切な臓器モデル固定具を配置し、かつ、トレーニングに必要な範囲で体腔内を精巧に再現することで、多様かつリアルなトレーニングに対応できるシミュレータとし得るとの知見を得た。
【0008】
すなわち、本発明の組立式腹腔シミュレータは、腹腔鏡下手技を習得するための腹腔シミュレータにおいて、臓器モデル固定具を取り付ける固定部が複数設けられた台座と、気腹状態を模擬したケーシングとを備え、台座に第1の嵌合部が設けられケーシングに第2の嵌合部が設けられ、第1及び第2の嵌合部を嵌合することにより台座とケーシングを固定でき、かつ、台座又はケーシングの何れかを180°向きを変えた状態で、第1及び第2の嵌合部を嵌合することで台座とケーシングを固定できる。
上記構成とされることにより、気腹カバー又は台座の上下を反転させて固定部の位置や向きを変えることができる。これにより、多様な臓器モデル固定具が取付可能となる。
なお、本明細書において、気腹カバー及び台座における上下左右とは、基本的には、人体における上下左右に合わせるものとする。すなわち、腹腔シミュレータが人体であると仮定した場合に、頭側を上、足側を下、右手側を右、左手側を左として説明する。但し、後述する側板部材の説明においては、人体における上下左右ではなく、側板部材を立てた状態での上下左右を指すものとする。また、図面においては、足側から見た図を正面図として説明を行う。
【0009】
本発明の組立式腹腔シミュレータにおいて、ケーシングは、気腹状態を模擬した気腹カバーと、該気腹カバーと台座の間に臓器モデル固定具を配置する間隙を設ける2枚の側板部材とから成り、気腹カバーに第1の凹部が設けられ、側板部材に第1の凸部及び第2の凸部が設けられ、台座に第2の凹部が設けられ、第2の凹部と第2の凸部がそれぞれ第1の嵌合部と第2の嵌合部に相当するものであり、第1の凹部と第1の凸部を嵌合することにより気腹カバーと側板部材を固定でき、第2の凹部と第2の凸部を嵌合することにより台座と側板部材を固定でき、かつ、台座又はケーシングの何れかを180°向きを変えた状態で、第1の凹部と第1の凸部を嵌合することにより気腹カバーと側板部材を固定でき、第2の凹部と第2の凸部を嵌合することにより台座と側板部材を固定できることが好ましい。
ケーシングを気腹カバーと側板部材に分けることにより、容易に組立・分解して、折り畳み収納することが可能となる。
【0010】
側板部材は、左右の付替えや、破損時の取替の利便性から、同様の構造を有する2枚の部材であることが好ましいが、3枚以上でもよく、異なる構造を有するものでもよい。
第1の凸部、第2の凸部、第1の凹部及び第2の凹部は、それぞれ2個以上の偶数個で、気腹カバーと台座の上下に同数設けられることが好ましい。
【0011】
気腹カバー、側板部材及び台座を組み立てた際には、側板部材は台座上に起立した状態で固定されるため、台座と側板部材を固定する箇所における固定状態を保持しやすくするため、第2の凸部は第1の凸部よりも高く設けられ、第2の凹部は第1の凹部よりも深く形成されることが好ましい。
なお、上記構成とは異なり、凹部と凸部を嵌合するのではなく、ヒンジ機構を用いて気腹カバーと側板部材、又は台座と側板部材を接続し、折り畳み可能としてもよい。また、気腹カバーや台座に凸部を設け、側板部材に凹部を形成することでもよい。
【0012】
本発明の組立式腹腔シミュレータは、側板部材に第3の凸部及び第4の凸部が設けられ、台座の第2の凹部と上記の第4の凸部とを嵌合することにより台座上に側板部材を積層して固定でき、気腹カバーの第1の凹部と上記の第3の凸部とを嵌合することにより側板部材上に気腹カバーを積層して固定できることが好ましい。
上記構成とされることにより、非使用時には、重ねて容易に収納でき、持ち運びも容易となる。
【0013】
本発明の組立式腹腔シミュレータは、台座の第2の凹部と側板部材の第2の凸部とを嵌合して台座と側板部材を固定した際に、台座と側板部材の固定状態を補強する、T字状の溝部が形成された留め具を更に備えることが好ましい。
側板部材が2枚で構成され、台座上において対抗する位置に取り付けられる場合には、取付後に側板部材が揺動する恐れがある。そこで、留め具が設けられることにより、かかる揺動を防止し、装置の安定性が向上する。
【0014】
本発明の組立式腹腔シミュレータにおいて、固定部は、磁石が設けられ、留め具は、磁性体を持つ金属部材が設けられ、磁石に金属部材を固着させて収納し得ることが好ましい。
留め具は、非使用時において紛失の恐れがあるため、固定部に設けられた磁石に、留め具に設けられた金属部材を固着させることで、非使用時における留め具の紛失を防止することができる。
【0015】
本発明の組立式腹腔シミュレータにおいて、側板部材は、切欠部が形成され、切欠部は、台座の第2の凹部と側板部材の第4の凸部を嵌合して、台座上に側板部材を積層した際に、固定部及び磁石に固着された金属部材と干渉しない位置に形成されたことが好ましい。
側板部材に切欠部が形成されることにより、台座上に側板部材を積層した際に、側板部材が固定部及び磁石に固着された金属部材に干渉せず、コンパクトに重ねることができ、収納性及び携帯性が向上する。
【0016】
本発明の組立式腹腔シミュレータにおいて、固定部は、台座の中央から台座の長手方向の、一方に奇数個と、他方に偶数個設けられ、奇数個の固定部の1個は、台座の短手方向の中央に設けられ、偶数個の固定部は、台座の短手方向の中央を跨ぎ設けられたことが好ましい。
また、固定部は、台座の中央から台座の長手方向の、一方に1個と、他方に2個設けられ、1個の固定部は、台座の短手方向の中央に設けられ、2個の固定部は、台座の短手方向の中央を跨ぎ設けられたことが更に好ましい。
台座の短手方向の中央に1個の固定部が設けられることにより、固定部の左右の空間を利用した臓器モデル固定具を取り付けることが可能となる。また、台座の短手方向の中央を跨ぎ2個の固定部が設けられることにより、中央の空間を利用した臓器モデル固定具を取り付けることが可能となる。さらに、2個の固定部を用いて臓器モデル固定具を固定することにより、固定時の安定性を高めることもできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の組立式腹腔シミュレータによれば、多様でリアルな手技トレーニングができ、かつ収納や持ち運びが容易であるといった効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図11】組立式腹腔シミュレータの組立前のイメージ図
【
図12】組立式腹腔シミュレータの組立イメージ
図1
【
図13】組立式腹腔シミュレータの組立イメージ
図2
【
図14】組立式腹腔シミュレータの組立イメージ
図3
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【実施例1】
【0020】
図1は、組立式腹腔シミュレータの外観斜視図を示している。また、
図2~4は、組立式腹腔シミュレータの外観図であり、
図2(1)は正面図、
図2(2)は背面図、
図3(1)は平面図、
図3(2)は底面図、
図4(1)は左側面図、
図4(2)は右側面図を示している。
図1に示すように、組立式腹腔シミュレータ1は、台座2、側板部材(31,32)、気腹カバー4および留め具5から成る。
図1に示す組立式腹腔シミュレータ1は、既に組み立てられた状態を示しているが、実際には台座2上に臓器モデル固定具(図示せず)を取り付けて使用する。
【0021】
ここで、組立式腹腔シミュレータ1を構成する各部材について説明する。
図5は、台座の外観斜視図を示している。
図5に示すように、台座2は、台座本体20及び固定部(21~23)から成り、固定部(21~23)は、台座本体20の表面上に取り付けられている。固定部21の内側には、磁石21aが設けられている。同様に、固定部22の内側には磁石22a、固定部23の内側には磁石23aが設けられている。
図5に示すように、固定部(21~23)には、上下端部に開口部が設けられ、磁石(21a,22a,23a)が剥き出しの状態となっており、磁性体を有する金属を取り付けることが可能となっている。
台座本体20の表面上には、四隅に凹部(24a~24d)が形成されており、後述する側板部材3に設けられた凸部(34a~34d)と嵌合し得る構造となっている。また、
図3(2)に示すように、台座本体20の裏面上には、6個の樹脂製の滑り止め部材25が設けられている。
【0022】
図6は、台座における固定部の配置に関する説明図を示している。
図6(1)に示すように、固定部21は、台座本体20の上部20aに設けられ、また、固定部(22,23)は、台座本体20の下部20bに設けられている。これにより、
図6(2)に示すように、例えば、右端の位置P
1や左端の位置P
2を使用した形状の臓器モデル固定具(図示せず)を台座2に取り付けるニーズが存在する場合には、固定部21を利用して取り付ける仕様の臓器モデル固定具を設計することができる。また、例えば、中央の位置P
3を使用した形状の臓器モデル固定具を台座2に取り付けるニーズが存在する場合には、固定部(22,23)を利用して取り付ける仕様の臓器モデル固定具を設計することができる。
台座本体20は、180°向きを変えた状態で使用することが可能な構造となっている。したがって、左右の位置に固定部が設けられないような臓器モデル固定具を、台座本体20の下部において利用したい場合には、上端部2aを下端部とし、下端部2bを上端部として利用することで、
図6(1)とは異なり、下部でありかつ中央に固定部が設けられた台座2として使用することが可能である。
【0023】
図7は、側板部材の外観斜視図であり、(1)は外面から見た斜視図、(2)は内面から見た斜視図を示している。
図7に示す側板部材3は、
図1に示す側板部材(31,32)と同様の構造である。すなわち、側板部材(31,32)は説明の便宜上、異なる符号を用いているが、
図4(1)及び(2)に示すように、全く同じ形状及び構造を有しており、例えば、
図1において、左右の側板部材(31,32)を逆に付替えることも可能である。
図7(1)及び(2)に示すように、側板部材3には、凸部(34a~34d)及び凸部(35a~35d)の2種類の凸部が設けられている。
図7(2)に示すように、凸部(34a,34b)は側板部材3の下端部に設けられ、凸部(34c,34d)は側板部材3の内面30b上に設けられている。また、
図7(1)に示すように、凸部(35a,35b)は側板部材3の外面30a上に設けられ、凸部(35c,35d)は側板部材3の上端部に設けられている。凸部(34a~34d)は、台座2に側板部材3を取付・固定するために使用するものであり、凸部(35a~35d)は、側板部材3に気腹カバー4を取付・固定するために使用するものである。
【0024】
側板部材3には、切欠部(33a,33b)が形成されており、折り畳んだ際に側板部材3が固定部(21~23)と干渉しない構造となっている。また、切欠部(33a,33b)が形成されることにより、トレーニング中に、術者や補助者が切欠部(33a,33b)から手や器具を差し入れて臓器モデルの位置の微調整を行うなどの作業を容易に行うことが可能となっている。なお、
図2(1)及び(2)に示すように、組立式腹腔シミュレータ1の正面及び背面は、開口状態となっているため、組立式腹腔シミュレータ1の正面又は背面方向から手や器具を差し入れて臓器モデルの位置の微調整等を行うことも可能である。
【0025】
図8は、気腹カバーの外観斜視図を示している。
図8に示すように、気腹カバー4は、気腹部41及び枠部42で構成される。気腹部41は軟質の樹脂で形成されており、
図3(1)に示すように、気腹状態の患者の腹部をリアルに再現している。また、枠部42は硬質の樹脂で形成されており、上下2つの部材で気腹部41の上下左右の端部を挟持し固定されている。気腹部42には複数のポート孔44が形成されており、多様な位置・角度から内視鏡や鉗子等を挿し込んで手技トレーニングを行うことが可能となっている。
また、枠部42の四隅の裏面には、凹部(43a~43d)が形成されており、凸部(35a~35d)と嵌合し得る構造となっている。
【0026】
図9は、留め具の外観斜視図を示している。
図9に示すように、留め具5は、留め具本体50及び金属板51から成り、金属板51は螺子(52a,52b)を用いて螺合され固定されている。留め具本体50は硬質の樹脂で形成されている。
図9に示すように、留め具本体50には、上下に溝部5a、左右に溝部5bが形成され、溝部5aと溝部5bは交点において逆T字状に繋げられている。留め具5は、台座2に側板部材3が取り付けられた後に、台座2上において側板部材3が左右に揺動することを防止するために使用する。具体的には、溝部5aが側板部材3の端部と嵌合し、溝部5bが台座2の上下端部と嵌合し、固定する。
【0027】
次に、組立式腹腔シミュレータの使用方法について説明しながら、組立式腹腔シミュレータの特徴について説明する。
図10は、組立式腹腔シミュレータの組立フロー図を示している。
図11は、組立式腹腔シミュレータの組立前のイメージ図を示している。また、
図12~14は、組立式腹腔シミュレータの組立イメージ図を示している。
図11に示すように、組立式腹腔シミュレータ1は、台座2上に側板部材(31,32)が積層され、さらに側板部材(31,32)上に気腹カバー4が積層されている。台座2、側板部材(31,32)及び気腹カバー4は、単に積層されている訳ではない。
図5に示す台座2に形成された凹部(24a~24d)と、側板部材(31,32)に設けられた凸部(34c,34d)(
図7(2)参照)が嵌合することにより、台座2と側板部材(31,32)を固定する。さらに、側板部材(31,32)に設けられた凸部(35a,35b)(
図7(1)参照)と、
図4に示す気腹カバー4に形成された凹部(43a~43d)が嵌合することにより、側板部材(31,32)と気腹カバー4を固定し、前後左右にずれることなく積層した状態を保持しやすい形状となっている。このように、組立式腹腔シミュレータ1は、非使用時はコンパクトに折り畳むことができ、しかも積層状態を保持しやすい構造であるため、専用のケースなどに収納し、容易に持ち運んで使用することが可能である。
【0028】
図10に示すように、組立式腹腔シミュレータ1を使用する場合には、まず、台座2上から気腹カバー4を取り外す(ステップS01)。
図12(1)は、台座2上から気腹カバー4が取り外された状態を示している。
図12(1)に示すように、台座2上には、側板部材(31,32)が折り畳まれた状態で積層されている。また、固定部22及び固定部23には留め具5が固着されている。前述したように、固定部(22,23)には、それぞれ磁石(22a,23a)が設けられ、また留め具5には磁性体を有する金属板51が設けられているため、磁石(22a,23a)の磁力を用いて留め具5を固着したものである。なお、
図12(1)では、留め具5は固定部22及び固定部23に固着されているが、固定部21に固着されてもよい。
【0029】
側板部材(31,32)に形成された切欠部(33a,33b)は、側板部材(31,32)を台座2上に重ねた際に、固定部(21~23)及び留め具5と干渉することのない構造となっている。
【0030】
次に、
図10に示すように、台座2上から気腹カバー4を取り外した後、台座から留め具及び側板部材を取り外す(ステップS02)。
図12(2)は、
図12(1)に示す状態から留め具5を取り外した状態を示している。また、
図13(1)は、台座2上への側板部材(31,32)の取付説明図であり、
図13(1)においては、台座2上に積み重ねられた側板部材(31,32)が、台座2上から取り外され、立てられた状態となっている。
【0031】
台座2から留め具5及び側板部材(31,32)を取り外した後、ここでは図示しないが、台座2に臓器モデル固定具を取り付ける(ステップS03)。取り付ける臓器モデル固定具としては、例えば、子宮モデル固定具や胃モデル固定具など、腹腔鏡を用いた手技トレーニングに使用する固定具が挙げられるが、腹腔鏡を用いた手技トレーニングに限らず、例えば、心臓モデル固定具などの臓器モデル固定具を取り付けてもよい。すなわち、固定部(21~23)に適合した取付部を備えた臓器モデル固定具であればよく、場合によっては、気腹カバー4や側板部材(31,32)を使用せず、手技トレーニングを行うことも可能である。
また、臓器モデル固定具を台座2に取り付ける際には、予め臓器モデル固定具に臓器モデルを配置しておくことが好ましい。
【0032】
台座2に臓器モデル固定具を取り付けた後、台座2に側板部材(31,32)を取り付ける(ステップS04)。具体的には、
図13(1)に示すように、側板部材31に設けられた凸部34bを台座2に形成された凹部24aに、凸部34aを凹部24cにそれぞれ挿し込み、嵌合する。また、側板部材32に設けられた凸部34aを凹部24bに、凸部34bを凹部24dにそれぞれ挿し込み、嵌合する。なお、前述したように、側板部材(31,32)は同じ構造を有しているため、側板部材31に設けられた凸部(34a,34b)を凹部(24b,24d)にそれぞれ挿し込み、側板部材32に設けられた凸部(34a,34b)を凹部(24c,24a)にそれぞれ挿し込み、嵌合することも可能である。
【0033】
台座2に側板部材(31,32)を取り付けた後、
図13(2)に示すように、留め具5を用いて、台座2と側板部材(31,32)を固定する(ステップS05)。具体的には、台座2の上下端部と、側板部材(31,32)の左右の端部が当接する箇所に留め具5の溝部(5a、5b)を嵌合して固定する。
【0034】
留め具5を用いて、台座2と側板部材(31,32)を固定した後、
図14に示すように、側板部材(31,32)に気腹カバー4を取り付ける(ステップS06)。
気腹カバー4を取り付けた後は、術者はポート孔44から内視鏡や鉗子等(図示せず)を挿し込んで、手技トレーニングを行うことができる。
【0035】
図15は、組立式腹腔シミュレータの分解フロー図を示している。組立式腹腔シミュレータ1を使用してトレーニングを行った後は、組立とは逆の手順で組立式腹腔シミュレータ1を分解して折り畳み、収納することが可能である。具体的には、
図15に示すように、まず、側板部材(31,32)から気腹カバー4を取り外す(ステップS11)。次に、留め具5を取り外す(ステップS12)。台座2から側板部材(31,32)を取り外す(ステップS13)。台座2から臓器モデル固定具を取り外す(ステップS14)。固定部(22,23)に留め具5を取り付ける(ステップS15)。台座2に側板部材(31,32)を重ねる(ステップS16)。側板部材(31,32)上に気腹カバー4を取り付ける(ステップS17)。
【実施例2】
【0036】
図16及び17は、子宮モデル固定具の取付イメージ図であり、
図16(1)は台座上に子宮モデル固定具を取り付けた右側面図、
図16(2)は台座上に子宮モデル固定具を取り付けた斜視図を示している。
図16(1)及び(2)に示すように、台座2上には子宮モデル固定具6が取り付けられている。具体的には、子宮モデル固定具6に設けられた係止部6aを固定部22に係止し、係止部6bを固定部23に係止して固定している。なお、例えば、係止部(6a,6b)の内側には磁性体を持つ金属部材(図示せず)が設けられていてもよい。係止部(6a,6b)に磁性体を持つ金属部材を設けることにより、固定時において固定状態の保持を容易にすることができる。
【0037】
図17に示すように、組立式腹腔シミュレータ1には、子宮モデル固定具6が取り付けられている。組立式腹腔シミュレータ1を構成する部材のうち、気腹カバー4以外の、台座2、側板部材(31,32)及び留め具5については、人体を模擬した形状とはなっていないが、上記部材については、手技トレーニングにおいては、形状の如何についてはさほど重要ではないといえる。ここでは図示しないが、子宮モデル固定具6には、臓器モデルが配置され、該臓器モデルと子宮モデル固定具6が相俟って、体腔内をリアルに再現することが可能となっている。
したがって、組立式腹腔シミュレータ1においては、実際に鉗子等を挿し込むポート孔44を備える気腹カバー4がリアルに再現され、かつ、固定部(22,23)がしっかりと子宮モデル固定具6を固定し得る構造を備えることにより、実際の手術により近いリアルな手技トレーニングが可能となっている。
【実施例3】
【0038】
図18及び19は、胃モデル固定具の取付イメージ図であり、
図18(1)は台座上に胃モデル固定具を取り付けた右側面図、
図18(2)は台座上に子宮モデル固定具を取り付けた斜視図を示している。
図18(1)及び(2)に示すように、台座2上には胃モデル固定具7が取り付けられている。具体的には、胃モデル固定具7に設けられた係止部7aを固定部22に係止し、係止部7bを固定部23に係止して固定している。
【0039】
実施例2において説明した子宮モデル固定具6は、
図17に示すように、足側が台座2の下端部2b側、頭側が台座2の上端部2a側となるように取り付けられる。これに対して、実施例3の胃モデル固定具7は、
図19に示すように、足側が台座2の上端部2a側、頭側が台座2の下端部2b側となるように取り付けられる。これは、
図18(2)に示すように、胃モデル固定具7が、2つの係止部(7a,7b)を用いて台座2の固定部(22,23)に取り付けられる構造を有しているからである。
そのため、組立式腹腔シミュレータ1において胃モデル固定具7を使用する場合には、子宮モデル固定具6を使用する場合と比較すると、気腹カバー4の向きを水平方向に上下180°反転させて使用することとなる。すなわち、子宮モデル固定具6を使用する場合は、
図17に示すように、側板部材31上に気腹カバー4の右端部4cが当接し、側板部材32上に気腹カバー4の左端部4dが当接するように取り付けられる。これに対して、胃モデル固定具7を使用する場合には、
図19に示すように、側板部材31上に気腹カバー4の左端部4dが当接し、側板部材32上に気腹カバー4の右端部4cが当接するように取り付けられる。
このように、使用する臓器モデル固定具の係止部の数及び構造によって、台座2への取付位置や、気腹カバー4の取付方向を自在に調整して、多様なパターンの手技トレーニングを行うことができる。
【0040】
(その他の実施例)
1)固定部(21~23)の全てを用いて、臓器モデル固定具を取り付けてもよい。
2)台座2上に4つ以上の固定部が設けられる構成でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、腹腔鏡下手術などの内視鏡下手術のトレーニングや学習用のシミュレータとして有用である。
【符号の説明】
【0042】
1 組立式腹腔シミュレータ
2 台座
2a,4a 上端部
2b,4b 下端部
2c,4c 右端部
2d,4d 左端部
3,31,32 側板部材
4 気腹カバー
5 留め具
5a,5b 溝部
6 子宮モデル固定具
6a,6b,7a,7b 係止部
7 胃モデル固定具
20 台座本体
20a 上部
20b 下部
21~23 固定部
21a,22a,23a 磁石
24a~24d,43a~43d 凹部
25 滑り止め部材
33a,33b 切欠部
34a~34d、35a~35d 凸部
41 気腹部
42 枠部
44 ポート孔
50 留め具本体
51 金属板
52a,52b 螺子
P 位置