(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】酸化亜鉛含有組成物および飲食品
(51)【国際特許分類】
A23L 33/16 20160101AFI20220707BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20220707BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20220707BHJP
A23C 9/13 20060101ALN20220707BHJP
【FI】
A23L33/16
A23L2/00 F
A23L2/52
A23L2/38 B
A23C9/13
(21)【出願番号】P 2022502162
(86)(22)【出願日】2021-06-04
(86)【国際出願番号】 JP2021021392
【審査請求日】2022-01-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204181
【氏名又は名称】太陽化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】杉山 泰崇
(72)【発明者】
【氏名】森脇 将光
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 健斗
(72)【発明者】
【氏名】福原 寛央
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-222594(JP,A)
【文献】国際公開第2018/079487(WO,A1)
【文献】特開2008-245622(JP,A)
【文献】特開2018-099659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L、A23C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化亜鉛を含む酸化亜鉛含有組成物であって、
レーザー回折光散乱法により測定される前記酸化亜鉛含有組成物の累積体積百分率が10%となる粒子径(μm)、50%となる粒子径(μm)、および90%となる粒子径(μm)を、それぞれ、D10、D50、D90としたとき、(D90-D10)/D50が2.0未満であり、
前記D50が0.1~1.0μmである、
飲食品に用いられる酸化亜鉛含有組成物。
【請求項2】
下記分散性試験で得られるM1/M2およびM3/M4を、それぞれ、初期分散度S、2週間静置後分散度Tとしたとき、T/S×100(%)で表される分散指数が80%以上である、請求項1に記載の酸化亜鉛含有組成物。
(分散性試験)
(1)亜鉛濃度が5mg/100mlになるように、酸化亜鉛含有組成物を65℃の牛乳に加えて混合溶液を作製する。
前記混合溶液を、7000rpmで5分間撹拌した後、100mlのガラス瓶に充填する。
(2)撹拌停止直後の初期状態において、前記混合溶液を高さ方向に均等に3分割し、
上層、中層および下層とし、前記上層および前記下層からそれぞれ前記混合溶液の一部を採取する。
採取物の一部を湿式灰化して得られる各試料について、原子吸光光度計により亜鉛濃度(mg/100ml)を求める。
上層および下層の亜鉛濃度(mg/100ml)をそれぞれ、M1、M2とする。
(3)撹拌停止後、5℃で2週間保存した前記混合溶液について、上記(2)と同様な手順により、
前記上層および前記下層における前記亜鉛の濃度の測定値を、それぞれ、M3、M4とする。
【請求項3】
増粘多糖類を含む、請求項1または2に記載の酸化亜鉛含有組成物。
【請求項4】
乳化剤を含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の酸化亜鉛含有組成物。
【請求項5】
液体状である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の酸化亜鉛含有組成物。
【請求項6】
粉末状である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の酸化亜鉛含有組成物。
【請求項7】
酸化亜鉛を含む酸化亜鉛含有組成物を含む飲食品であって、
前記酸化亜鉛含有組成物は、
レーザー回折光散乱法により測定される前記酸化亜鉛含有組成物の累積体積百分率が10%となる粒子径(μm)、50%となる粒子径(μm)、および90%となる粒子径(μm)を、それぞれ、D10、D50、D90としたとき、(D90-D10)/D50が2.0未満であり、 前記D50が0.1~1.0μmである、飲食品。
【請求項8】
前記酸化亜鉛含有組成物は、下記分散性試験で得られるM1/M2およびM3/M4を、それぞれ、初期分散度S、2週間静置後分散度Tとしたとき、T/S×100(%)で表される分散指数が80%以上である、請求項7に記載の飲食品。
(分散性試験)
(1)亜鉛濃度が5mg/100mlになるように、酸化亜鉛含有組成物を65℃の牛乳に加えて混合溶液を作製する。
前記混合溶液を、7000rpmで5分間撹拌した後、100mlのガラス瓶に充填する。
(2)撹拌停止直後の初期状態において、前記混合溶液を高さ方向に均等に3分割し、
上層、中層および下層とし、前記上層および前記下層からそれぞれ前記混合溶液の一部を採取する。
採取物の一部を湿式灰化して得られる各試料について、原子吸光光度計により亜鉛濃度
(mg/100ml)を求める。
上層および下層の亜鉛濃度(mg/100ml)をそれぞれ、M1、M2とする。
(3)撹拌停止後、5℃で2週間保存した前記混合溶液について、上記(2)と同様な手順により、
前記上層および前記下層における前記亜鉛の濃度の測定値を、それぞれ、M3、M4と
する。
【請求項9】
前記酸化亜鉛含有組成物が増粘多糖類を含む、請求項7または8に記載の飲食品。
【請求項10】
前記酸化亜鉛含有組成物が乳化剤を含む、請求項7乃至9のいずれか1項に記載の飲食品。
【請求項11】
前記酸化亜鉛含有組成物が液体状である、請求項7乃至10のいずれか1項に記載の飲食品。
【請求項12】
前記酸化亜鉛含有組成物が粉末状である、請求項7乃至11のいずれか1項に記載の飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化亜鉛含有組成物およびそれを含有する飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ミネラル摂取量の不足が指摘され、その原因により引き起こされる成人病の予防や健康維持等に関して、いろいろな種類のミネラルの役割が重要視されており、そのようなミネラルとして、カルシウムを初めとして、鉄、マグネシウム、亜鉛等が挙げられている。
【0003】
その中で亜鉛は、ヨウ素、銅、モリブデン、セレン等と同様に生体内に不可欠な微量元素であり、生理作用としては、成長・骨格の発育、味覚・嗅覚の維持、成長・骨格の発育、皮膚及び毛、爪、皮膚腺等の付属器官の新陳代謝の活性化、創傷治癒、生殖機能維持、精神・行動への影響、免疫機能増加があり注目されている。しかし、日本における摂取状況は、令和元年の厚生省国民栄養調査では、成人で85%と不足傾向にある。
【0004】
亜鉛については、魚介類、肉類等の動物性食品に多く含まれ、特に牡蠣に多く含まれるが、牡蠣は特有の臭いが強く、栄養成分が季節的に変動するため加工適正が低く、汎用性に乏しい。また、海藻粉末、鳥獣類の肝臓、小麦ふすまや米糠の抽出物を用いる方法が知られているが、風味の点から使用できる食品に限りがある。食品以外のミネラルの形態として、酸化物、塩、たん白複合体又はその分解物の複合体、多糖類複合体、又はその分解物の複合体、その他加工デンプン複合体、シクロデキストリン複合体、その他複合体、酵母亜鉛、金属酵素、金属活性化酵素等が挙げられる。これらの中で、水溶性のグルコン酸亜鉛、硫酸亜鉛、水不溶性の酵母亜鉛等が一般に用いられている。水溶性のグルコン酸亜鉛、硫酸亜鉛は易水溶性のため食品への応用面において優れているが、反面、イオン化するために食品との化学反応等により味、食感、色調等へ著しく影響を与えるという欠点がある。不溶性の酵母亜鉛は、風味、色調に著しい悪影響を与える。牛乳、豆乳、流動食はたん白源として一般に広く食される飲食品であるが、これらに上記の水溶性のグルコン酸亜鉛、硫酸亜鉛、不溶性の酵母亜鉛を添加すると、たん白と反応したり外観を損なったりするために、適用は困難である。
【0005】
上述したような課題を解決するため、飲食品用の添加物として不溶性の酸化亜鉛を用いることが知られている。たとえば、特許文献1には、酸化亜鉛に食品用乳化剤を加えた食品用製剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
酸化亜鉛(比重:5.61)は、飲食品に使用される他の金属酸化物(たとえば、酸化マグネシムの比重:3.58)と比べると、比重が大きい。このため、酸化亜鉛は液体中で沈降しやすいという特性があり、飲食品に用いた場合に沈降により、風味や食感等へ影響を及ぼすことがある。従来、乳化剤を添加することにより、飲食品に使用される酸化亜鉛の分散性向上が図られているが、飲食品の風味や食感等への酸化亜鉛組成物の添加の影響をより一層低減する観点から、液体または溶液における分散性を一層良好にすることが必要となっている。
【0008】
本発明は上述のような課題を鑑みたものであり、液体または溶液への分散性が向上した酸化亜鉛含有組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様は、特定の粒径パラメータを有する酸化亜鉛含む酸化亜鉛含有組成物である。レーザー回折光散乱法により測定される前記酸化亜鉛含有組成物の累積体積百分率が10%となる粒子径(μm)、50%となる粒子径(μm)、および90%となる粒子径(μm)を、それぞれ、D10、D50、D90としたとき、(D90-D10)/D50が2.0未満である。
本発明の他の態様は、上述した酸化亜鉛含有組成物を含む飲食品である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液体または溶液への分散性が向上した酸化亜鉛を含む酸化亜鉛含有組成物に関する技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下であることを表す。
【0012】
(酸化亜鉛含有組成物)
実施形態に係る酸化亜鉛含有組成物は、酸化亜鉛を含有する。
本実施形態では、レーザー回折光散乱法により測定される上記酸化亜鉛含有組成物の粒子の累積体積百分率(粒径が小さい方からプロットしたときの体積粒度分布における累積体積百分率)が10%となる粒子径(μm)、50%となる粒子径(μm)、および90%となる粒子径(μm)を、それぞれ、D10、D50、D90としたとき、(D90-D10)/D50が2.0未満であり、1.5以下が好ましく、1.0以下がより好ましい。一方、(D90-D10)/D50の下限は、特に限定されないが、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.3以上がさらに好ましい。
なお、(D90-D10)/D50は、その値が小さいほど、酸化亜鉛含有組成物の粒子径のばらつきが小さいことを示す指標である。
【0013】
(D90-D10)/D50の上限を上記値とすることにより、本実施形態の酸化亜鉛含有組成物を液体または溶液に添加したときの分散性を向上させることができる。一方、(D90-D10)/D50の下限を上記値とすることにより、上記分散性の向上を図りつつ、後述する酸化亜鉛粒子の粉砕(微細化)処理に要する時間を低減し、ひいては酸化亜鉛含有組成物の製造コストを抑制することができる。
【0014】
また、レーザー回折光散乱法により測定される上記酸化亜鉛含有組成物の累積体積百分率が50%となる粒径(μm)をD50としたとき、D50の上限は、1.0μm以下が好ましく、0.8μm以下がより好ましく、0.6μm以下がさらに好ましい。一方、D50の下限は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上がさらに好ましい。
【0015】
上記酸化亜鉛含有組成物のD50の上限を上記値とすることにより、本実施形態の酸化亜鉛含有組成物を溶液に添加したときの分散性を向上させることができる。また、上記酸化亜鉛含有組成物のD50の下限を上記値とすることにより、上記分散性の向上を図りつつ、酸化亜鉛粒子の粉砕(微細化処理)に要する時間を低減し、ひいては酸化亜鉛含有組成物の製造コストを抑制することができる。
【0016】
本実施形態の酸化亜鉛含有組成物における、酸化亜鉛以外の添加成分として、増粘多糖類および乳化剤が挙げられる。当該添加成分を含むことにより、当該酸化亜鉛含有組成物を液体または溶液に添加したときの酸化亜鉛の分散性をより一層向上させることができる。なお、当該酸化亜鉛含有組成物において、酸化亜鉛粒子の表面の一部または全部が、当該添加成分により被覆されていてもよい。以下、各添加成分の詳細について説明する。
【0017】
(増粘多糖類)
本実施形態の酸化亜鉛含有組成物に用いられる増粘多糖類としては、ペクチン、大豆多糖類、キサンタンガム、ジェランガム、カラギナン、アルギン酸、寒天、フコイダン、アガロペクチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、カラヤガム、ポルフィラン、ウェランガム、ガラクトマンナン(例えば、ローカストビーンガム、グァーガム、タラガム等)、タマリンドシードガム、グルコマンナン、サイリウムシードガム、マクロホモプシスガム、プルラン、カードラン、トラガントガム、ガティガム、アラビアガム、アラビノガラクタン、ファーセレラン、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、水溶性ヘミセルロース等)より選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0018】
(乳化剤)
本実施形態の酸化亜鉛含有組成物に用いられる乳化剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、有機酸脂肪酸エステル、レシチン等より選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0019】
<レシチン>
本実施形態の酸化亜鉛含有組成物に用いられるレシチンとはグリセリン骨格と脂肪酸残基及びリン酸残基を必須構成分とし、これに塩基や多価アルコール等が結合したもので、リン脂質とも称されるものである。産業的にはレシチン純度60以上のものがレシチンとして利用されており、本発明でも利用できるが、好ましくは一般に風味や色の観点から高純度レシチンと称されるものであり、これはレシチン純度が80%以上、より好ましくは90%以上のものである。このレシチン純度は、レシチンがトルエンに溶解しやすくアセトンに溶解しない性質を利用して、トルエン不溶物とアセトン可溶物の重量を差し引く事により求められる。なお、レシチンは上述のように構造的特徴やトルエン・アセトンに対する溶解性で定義されるが、化学的にはこれらの条件を満たす化合物の混合物である。具体的な化学種としてはホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、N-アミルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルエタノールアミン等が挙げられ、これら個別の化学種又は2種以上の混合物をレシチンと称してもよい。なお、レシチンの起源は特に問わず、大豆、ヒマワリ、ナタネその他油糧種子や、卵、動物の脳から得られたものが使用できるが、風味、分散性の観点から、ヒマワリレシチンが好ましい。
【0020】
また、レシチンとして、酵素分解レシチンを用いてもよい。当該酵素分解レシチンとしては、例えば、植物レシチン又は卵黄レシチンをホスホリパーゼによって脂肪酸エステル部分を限定的に加水分解する事で得られるものが挙げられるが、これらに限定されない。具体的には、例えば、ホスホリパーゼAを用いて得られるリゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルイノシートル、リゾホスファチジルセリン等のモノアシルグリセロリン脂質、及びホスホリパーゼDを用いて得られるホスファチジル酸、リゾホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルグリセロール等が挙げられる。本発明に用いられる酵素分解レシチンとしては、上記のような酵素分解レシチンを1種で用いてもよく、また、2種以上を併用して用いてもよい。本発明に用いられる酵素分解レシチンとしては、風味、分散性の観点から好ましくはリゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルセリンからなる群より選択される1種又は2種以上であり、より好ましくは、リゾホスファチジルコリンである。
【0021】
酵素分解レシチンの製造に際し、酵素分解に用いるホスホリパーゼとしては、豚膵臓等の動物起源、キャベツ等の植物起源、又はカビ類等の微生物起源等の由来を問わず、ホスホリパーゼA及び/又はD活性を有したものであればいずれも好ましく使用できる。
【0022】
(その他の成分)
本実施形態の酸化亜鉛含有組成物は、本実施形態の効果を損なわない範囲において他の成分も含有可能であり、特に限定するものではないが、例えば、水、澱粉類(例えば、澱粉、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルボキシメチルスターチ、ヒドロキシプロピルスターチ、α化澱粉、リン酸化澱粉、リン酸架橋澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酸化澱粉、難消化性澱粉等)、糖類(ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビタン、キシロース、アラビノース、マンノース、乳糖、砂糖、ブドウ糖、酵素水飴、 酸糖化水飴、麦芽糖水飴、麦芽糖、異性化糖、果糖、還元麦芽糖水飴、還元澱粉糖水飴、蜂蜜、果糖ブドウ糖液糖等、但し、増粘多糖類は除く)、多価アルコール(グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール等)、キレート剤(クエン酸、クエン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、リン酸等)、タンパク質(カゼイン、カゼインナトリウム、酸カゼイン、ミセルカゼイン、大豆タンパク、えんどう豆タンパク、卵白粉末、コラーゲン、ゼラチン等)、これらを分解したぺプチドやアミノ酸類糖、油脂類(植物油、動物脂、加工油脂等)を含有することができる。
【0023】
本実施形態の酸化亜鉛含有組成物の形態としては、粉末状または液体状(スラリー状を含む)が挙げられる。
【0024】
(粉末状酸化亜鉛含有組成物)
本実施形態の酸化亜鉛含有組成物が粉末状の場合には、上述した粒径分布を有する酸化亜鉛の他に、増粘多糖類や乳化剤を含むことが好ましい。
【0025】
粉末状の酸化亜鉛含有組成物全体を100質量%としたとき、酸化亜鉛の含有率の下限は、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、15質量%以上が最も好ましい。一方、粉末状の酸化亜鉛含有組成物全体を100質量%としたとき、酸化亜鉛の含有率の上限は、100%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、50%以下がさらに好ましく、45%以下が最も好ましい。
【0026】
酸化亜鉛の含有率の下限を上記値とすることにより、例えば、粉末状の酸化亜鉛含有組成物を飲食品に添加したとき、当該飲食品の摂取により体に適量な亜鉛を補給することができる。
【0027】
粉末状の酸化亜鉛含有組成物全体を100質量%としたとき、増粘多糖類の含有率の下限は、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましい。一方、酸化亜鉛含有組成物全体を100質量%としたとき、増粘多糖類の含有率の上限は、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、9質量%以下がさらに好ましい。
【0028】
増粘多糖類の含有率の下限を上記値とすることにより、粉末状の酸化亜鉛含有組成物を液体または溶液に添加したときの分散性を高めることができる。一方、増粘多糖類の含有率の上限を上記値とすることにより、粉末状の酸化亜鉛含有組成物の添加対象となる食品の味や風味への影響を抑制しつつ、粉末状の酸化亜鉛含有組成物を液体または溶液に添加したときの分散性を高めることができる。
【0029】
粉末状の酸化亜鉛含有組成物全体を100質量%としたとき、乳化剤の含有率の下限は、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい。一方、粉末状の酸化亜鉛含有組成物全体を100質量%としたとき、乳化剤の含有率の上限は、10質量%以下が好ましく、9質量%以下がより好ましく、8質量%以下がさらに好ましい。
【0030】
乳化剤の含有率の下限を上記値とすることにより、粉末状の酸化亜鉛含有組成物を液体または溶液に添加したときの分散性を高めることができる。一方、乳化剤の含有率の上限を上記値とすることにより、粉末状の酸化亜鉛含有組成物の添加対象となる食品の味や風味への影響を抑制しつつ、粉末状の酸化亜鉛含有組成物を液体または溶液に添加したときの分散性を高めることができる。
【0031】
粉末状の酸化亜鉛含有組成物は、保存性に優れるため、当該酸化亜鉛含有組成物の食品への利用範囲が広がるという利点がある。
【0032】
(液体状酸化亜鉛含有組成物)
本実施形態の酸化亜鉛含有組成物が液体状の場合には、上述した粒径分布を有する酸化亜鉛の粒子および水の他に、増粘多糖類、乳化剤および多価アルコールからなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましい。本発明における多価アルコールは、特に限定されるものではなく、分子中に複数の水酸基を有するものであり、例えばグリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、糖アルコール等があげられ、好ましくはグリセリンである。
【0033】
液体状の酸化亜鉛含有組成物全体を100質量%としたとき、酸化亜鉛の含有率の下限は、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、8質量%以上がさらに好ましい。一方、液体状の酸化亜鉛含有組成物全体を100質量%としたとき、酸化亜鉛の含有率の上限は、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
【0034】
酸化亜鉛の含有率の下限を上記値とすることにより、液体状の酸化亜鉛含有組成物を飲食品に添加したとき、当該飲食品の摂取により体に適量な亜鉛を補給することができる。酸化亜鉛の含有率の上限を上記値とすることにより、酸化亜鉛が凝集することを抑制することができる。
【0035】
液体状の酸化亜鉛含有組成物全体を100質量%としたとき、増粘多糖類の含有率の下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、1.5質量%以上がさらに好ましい。一方、酸化亜鉛含有組成物全体を100質量%としたとき、増粘多糖類の含有率の上限は、10質量%以下が好ましく、9質量%以下がより好ましく、8質量%以下がさらに好ましい。
【0036】
増粘多糖類の含有率の下限を上記値とすることにより、液体状の酸化亜鉛含有組成物を液体または溶液に添加したときの分散性を高めることができる。一方、増粘多糖類の含有率の上限を上記値とすることにより、液体状の酸化亜鉛含有組成物の添加対象となる食品の味や風味への影響を抑制しつつ、液体状の酸化亜鉛含有組成物を液体または溶液に添加したときの分散性を高めることができる。
【0037】
液体状の酸化亜鉛含有組成物全体を100質量%としたとき、乳化剤の含有率の下限は、0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましい。一方、液体状の酸化亜鉛含有組成物全体を100質量%としたとき、乳化剤の含有率の上限は、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
【0038】
乳化剤の含有率の下限を上記値とすることにより、液体状の酸化亜鉛含有組成物を液体または溶液に添加したときの分散性を高めることができる。一方、乳化剤の含有率の上限を上記値とすることにより、液体状の酸化亜鉛含有組成物の添加対象となる食品の味や風味への影響を抑制しつつ、液体状の酸化亜鉛含有組成物を液体または溶液に添加したときの分散性を高めることができる。
【0039】
液体状の酸化亜鉛含有組成物全体を100質量%としたとき、多価アルコールを含む場合の含有率の下限は、1質量%以上が好ましく、15質量%以上より好ましく、30質量%以上がさらに好ましく、40質量%以上が最も好ましい。一方、酸化亜鉛含有組成物全体を100質量%としたとき、多価アルコールの含有率の上限は、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。
【0040】
多価アルコールの含有率の下限を上記値とすることにより、液体状の酸化亜鉛含有組成物を液体または溶液に添加したときの分散性を高めつつ、微生物の発生または増加を抑制することができる。一方、多価アルコールの含有率の上限を上記値とすることにより、液体状の酸化亜鉛含有組成物の添加対象となる食品の味や風味への影響を抑制しつつ、液体状の酸化亜鉛含有組成物を液体または溶液に添加したときの分散性を高めることができる。
【0041】
(水)
液体状の酸化亜鉛含有組成物における水(イオン交換水)の量は、上述した各成分の残余部分である。液体状の酸化亜鉛含有組成物における水の量は、当該酸化亜鉛含有組成物の粘性を適度に保つ観点から、液体状の酸化亜鉛含有組成物全体を100質量%としたとき、1~99質量%が好ましく、2~90質量%がより好ましく、3~45質量%がさらに好ましい。
【0042】
液体状の酸化亜鉛含有組成物は、液体または溶液にそのまま分散させやすいという利点がある。
【0043】
(分散指数)
本実施形態の酸化亜鉛含有組成物は、下記分散性試験で得られるM1/M2およびM3/M4を、それぞれ、初期分散度S、2週間静置後分散度Tとしたとき、T/S×100(%)で表される分散指数が80%以上であることが好ましい。当該分散指数は、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。当該分散指数の上限に特に制限はないが、100%に近いほど好ましいが、典型的には99%以下である。
(分散性試験)
(1)亜鉛濃度が5mg/100mlになるように、酸化亜鉛含有組成物を65℃の牛乳に加えて混合溶液を作製する。前記混合溶液を、7000rpmで5分間撹拌した後、100ml(内径:3.7cm、高さ:12cm)のガラス瓶(マイティバイアルNo.8)に充填する。
(2)撹拌停止直後の初期状態において、前記混合溶液を高さ方向に均等に3分割し、上層、中層および下層とし、前記上層および前記下層からそれぞれ前記混合溶液の一部を採取する。採取物の一部を湿式灰化して得られる各試料について、原子吸光光度計(日立化成社製、Z-2000)により亜鉛濃度(mg/100ml)を求める。上層および下層の亜鉛濃度(mg/100ml)をそれぞれ、M1、M2とする。
(3)撹拌停止後、5℃で2週間保存した前記混合溶液について、上記(2)と同様な手順により、上層および下層の亜鉛濃度(mg/100ml)を求め、それぞれ、M3、M4とする。
【0044】
上記分散指数の下限が80%以上であることにより、液体または溶液に添加したとき、長期にわたって均一に分散した状態が継続する酸化亜鉛含有組成物とすることができる。
【0045】
(酸化亜鉛含有組成物の製造方法)
本実施形態の酸化亜鉛含有組成物は、酸化亜鉛に上述した各添加成分を混合、撹拌することで製造することができる。後述する酸化亜鉛の粒度パラメータの調整は、各添加成分との混合前に行ってもよいが、各添加成分との混合過程または混合が完了した後に行ってもよい。
【0046】
(酸化亜鉛の粒度分布の調製方法)
実施形態に係る酸化亜鉛含有組成物に用いられる酸化亜鉛の粒子径に関する上記パラメータは、原料となる酸化亜鉛のD50、粉砕前の分散処理および粉砕処理を高度に制御することにより、所望の値に調節される。より具体的には、原料となる酸化亜鉛のD50は、5μm~200μmの範囲であることが好ましい。粉砕前の分散処理では、ホモミキサーを用いて酸化亜鉛の粒子を分散させることが好ましい。ホモミキサー使用時の作動条件は、6000~10000rpm、5~20分の範囲で設定することが好ましい。粉砕処理では、自転・公転ミキサーを用いて酸化亜鉛の粒子径を所望の値に揃えることが好ましい。自転・公転ミキサー使用時の作動条件は、1000~2000rpm、5~30分である。なお、必要に応じて、粉砕処理を複数回実施、または、上述した一連の分散処理および粉砕処理を必要に応じて再度実施することにより、上述の粒径パラメータを所望の値に制御することができる。また、上述した一連の分散処理および粉砕処理を必要に応じて再度実施することにより、上述の粒径パラメータを所望の値に制御することができる。
【0047】
(酸化亜鉛含有組成物の用途)
本実施形態の他の態様は、上述した酸化亜鉛含有組成物を含む飲食品である。飲食品としては、例えば、パン、麺類等に代表される小麦粉加工食品、お粥、炊き込み飯等の米加工品、ビスケツト、ケーキ、キャンディ、チョコレート、せんべい、あられ、錠菓、和菓子等の菓子類、豆腐、その加工食品等の大豆加工食品、清涼飲料、果汁飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、炭酸飲料、アルコール飲料等の飲料類、ヨーグルト、チーズ、バター、アイスクリーム、コーヒーホワイトナー、ホイップクリーム、牛乳等の乳製品、醤油、味噌、ドレッシング、ソース、たれ、マーガリン、マヨネーズ等の調味料、ハム、ベーニン、ソーセージ等の畜肉加工食品、蒲鉾、はんぺん、ちくわ、魚の缶詰等の水産加工食品、濃厚流動食、半消化態栄養食、成分栄養食等の経口経腸栄養食等が挙げられる。
【0048】
本実施形態の酸化亜鉛含有組成物は、溶液中での分散性に優れるため、上記用途のうち、飲料に用いることが好適であり、特に乳飲料に用いることが好適である。
【0049】
なお、本実施形態の酸化亜鉛含有組成物は、上述した飲食品の他、飼料、化粧品、医薬組成物等に使用することができる。飼料としては、例えば、ペット、家畜、養殖魚等の餌等が挙げられる。化粧品としては、化粧水、乳液、浴用剤、クレンジング剤等の洗浄剤、歯磨剤等が挙げられる。医薬組成物として用いる場合には、医薬部外品等として幅広く利用することができる。例えば、亜鉛の補給あるいは維持が望まれている任意の疾患の治療や予防のために用いることができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
酸化亜鉛(D50:12.08μm)10.0gを、イオン交換水20.0g、グリセリン10.0gに混合し、ホモミキサー(プライミクス社製、T.K.ロボミックス、8,000rpm、10分)にて分散させ、自転・公転ミキサー処理(シンキー社製、NP-100、2,000rpm、15分、2回繰り返す)を実施し、酸化亜鉛の粒子の大きさを均一化し、25質量%の酸化亜鉛溶液30gを得た。これを5回繰り返し、得られた酸化亜鉛溶液に、表1に記載の配合割合となるようにアラビアガムとグリセリンを混合した後、ホモジナイザー(600bar、6pass処理)にて分散均一化して、酸化亜鉛含有組成物(15質量%酸化亜鉛分散液)200gを得た。後述するように、得られた酸化亜鉛含有組成物の粒子径を分析し、体積平均粒子径を測定した。
【0053】
得られた酸化亜鉛含有組成物のうち1gを水100gに希釈した後、レーザー回折型粒度分布測定機(LS-230、ベックマン・コールター株式会社製)を用いて酸化亜鉛含有組成物()の粒径分布を測定した。得られた結果から求めたD10、D50およびD90は、それぞれ、0.10μm、0.14μmおよび0.22μmであった。得られたD10、D50およびD90を用いて算出される(D90-D10)/D50は0.91であった。
【0054】
(実施例2)
酸化亜鉛(D50:12.08μm)10.0gを、イオン交換水20.0g、グリセリン10.0gに混合、ホモミキサー(プライミクス社製、T.K.ロボミックス、8,000rpm、10分)にて分散させ、自転・公転ミキサー処理(シンキー社製、NP-100、2,000rpm、15分、1回繰り返す)を実施し、酸化亜鉛の粒子の大きさを均一化し、15質量%の酸化亜鉛溶液30gを得た。これを5回繰り返し、得られた酸化亜鉛溶液に、表1に記載の配合割合となるようにアラビアガムとグリセリンを混合した後、ホモジナイザー(600bar、6pass処理)にて分散均一化して、酸化亜鉛含有組成物(10質量%酸化亜鉛分散液)200gを得た。後述するように、得られた酸化亜鉛含有組成物の粒子径を分析し、体積平均粒子径を測定した。
【0055】
(実施例3)
酸化亜鉛(D50:12.08μm)1.5gを、イオン交換水1.5g、60℃まで加温した還元澱粉糖化物(アマミール 東和化成工業株式会社製)46.55g、ヘキサメタリン酸ナトリウム(米山化学工業社製)0.15g、加温したポリグリセリン脂肪酸エステル(サンソフトA-141E HLB値:12.2太陽化学株式会社製)0.15g、酵素分解レシチン(サンレシチンA-1 太陽化学株式会社製、HLB値:12.0のリゾレシチン含量33%)0.15gに混合、ホモミキサー(プライミクス社製、T.K.ロボミックス、8,000rpm、10分)にて分散させ、自転・公転ミキサー処理(シンキー社製、NP-100、2,000rpm、15分、2回繰り返す)を実施し、酸化亜鉛の粒子の大きさを均一化し、3質量%の酸化亜鉛溶液30gを得た。これを8回繰り返し、得られた酸化亜鉛溶液を、ホモジナイザー(600bar、6pass処理)にて分散均一化して、酸化亜鉛含有組成物(3質量%酸化亜鉛分散液)190gを得た。後述するように、得られた酸化亜鉛含有組成物の粒子径を分析し、体積平均粒子径を測定した。
【0056】
実施例2、3の酸化亜鉛含有組成物について、実施例1と同様な手法により、D10、D50およびD90を計測し、(D90-D10)/D50を算出した。得られた結果を表1に示す。
【0057】
(比較例1-4)
各成分の配合割合を表1に示した値とし、自転・公転ミキサー処理ならびにホモジナイザー処理を除き、実施例1と同様な手順により、比較例1~5の液体状の酸化亜鉛含有組成物約250gを得た。
【0058】
(比較例5)
各成分の配合割合を表1に示した値とし、自転・公転ミキサー処理ならびにホモジナイザー処理を除き、実施例3と同様な手順により、比較例5の液体状の酸化亜鉛含有組成物約250gを得た。
【0059】
比較例1-5の酸化亜鉛含有組成物について、実施例1と同様な手法により、D10、D50およびD90を計測し、(D90-D10)/D50を算出した。得られた結果を表1に示す。
【0060】
(実施例4)
酸化亜鉛(D50:12.08μm)12.5gを、イオン交換水38.5gに混合、ホモミキサー(プライミクス社製、T.K.ロボミックス、8,000rpm、10分)にて分散させ、自転・公転ミキサー処理(シンキー社製、NP-100、2,000rpm、10分、1回)を実施し、酸化亜鉛の粒子の大きさを均一化し、25質量%の酸化亜鉛溶液30gを得た。この操作を10回繰り返し、粒度分布調整済みの酸化亜鉛を含む酸化亜鉛含有スラリー300gを得た。
上述した粒度分布調整済みの酸化亜鉛スラリーに、アラビアガム(ネキシラ社製、インスタントガム)16.0g、デキストリン(松谷化学工業社製、パインデックス#1)123.6g、ヒマワリレシチン(Lasenor Emul S.L.社製、GIRALEC PREMIUM)0.1g、イオン交換水60.0gをそれぞれ所定量秤量のうえ、60℃まで加熱溶解・混合し、ホモジナイザー(600bar、6pass処理)にて分散均一化して、スプレードライによって噴霧乾燥させ、酸化亜鉛含有組成物120gを得た。得られた酸化亜鉛含有組成物における各成分の配合割合(質量%)を表2に示す。
【0061】
得られた酸化亜鉛含有組成物のうち0.5gを水100gに希釈した後、レーザー回折型粒度分布測定機(LS-230、ベックマン・コールター株式会社製)を用いて酸化亜鉛含有組成物()の粒径分布を測定した。得られた結果から求めたD10、D50およびD90は、それぞれ、0.24μm、0.37μmおよび0.68μmであった。得られたD10、D50およびD90を用いて算出される(D90-D10)/D50は1.21であった。
【0062】
(実施例5)
イオン交換水38.64gに、加温したポリグリセリン脂肪酸エステル(サンソフトQ-12D、HLB値8.5 太陽化学社製)1.8g、酵素分解レシチン(サンレシチンA-1、HLB値:12.0、太陽化学社製)0.56gを溶解混合し、酸化亜鉛(D50:12.08μm)9.0gホモミキサー(プライミクス社製、T.K.ロボミックス、8,000rpm、10分)にて分散させ、自転・公転ミキサー処理(シンキー社製、NP-100、2,000rpm、10分、1回)を実施し、酸化亜鉛の粒子の大きさを均一化し、18質量%の酸化亜鉛溶液30gを得た。この操作を13回繰り返し、粒度分布調整済みの酸化亜鉛を含む酸化亜鉛含有スラリー360gを得た。
上述した粒度分布調整済みの酸化亜鉛含有スラリーに、デキストリン(松谷化学工業社製、パインデックス#1)130.0gを秤量のうえ、60℃まで加熱溶解・混合し、スプレードライによって噴霧乾燥させ、酸化亜鉛含有組成物120gを得た。得られた酸化亜鉛含有組成物における各成分の配合割合(質量%)を表2に示す。
【0063】
実施例4、5の酸化亜鉛含有組成物について、実施例1と同様な手法により、D10、D50およびD90を計測し、(D90-D10)/D50を算出した。得られた結果を表2に示す。
【0064】
(比較例6-7)
各成分の配合割合を表2に示した値とし、自転・公転ミキサー処理ならびにホモジナイザー処理を除き、実施例4と同様な手順により、比較例6-7の粉末状の酸化亜鉛含有組成物120gを得た。
【0065】
(比較例8)
各成分の配合割合を表2に示した値とし、自転・公転ミキサー処理ならびにホモジナイザー処理を除き、実施例5と同様な手順により、比較例8の粉末状の酸化亜鉛含有組成物120gを得た。
【0066】
比較例6-8の酸化亜鉛含有組成物について、実施例1と同様な手法により、D10、D50およびD90を計測し、(D90-D10)/D50を算出した。得られた結果を表2に示す。
【0067】
【0068】
【0069】
(分散性試験)
実施例1~6、比較例1~8の各酸化亜鉛含有組成物について、牛乳中での分散性(安定性)を以下のようにして調べた。
牛乳をホモミキサーで軽く攪拌しながら65℃付近まで加熱した。加熱後の牛乳に、亜鉛濃度が5mg/100mlになるように酸化亜鉛含有組成物を少しずつ加え、混合溶液を得た。この混合溶液を、ホモミキサー(プライミクス社製、T.K.ロボミックス)を用いて7000rpmで5分間撹拌した後、得られた混合溶液を100ml(内径:3.7cm、高さ:12cm)のガラス瓶(マイティバイアルNo.8)に充填した。
【0070】
次に、撹拌停止直後の初期状態において、前記混合溶液を高さ方向に均等に3分割し、上層、中層および下層とし、前記上層および前記下層から採取物の一部を湿式灰化して得られる各試料について、原子吸光光度計(日立化成社製、Z-2000)により亜鉛濃度(mg/100ml)を求めた。上層および下層の亜鉛濃度(mg/100ml)をそれぞれ、M1、M2とした。
【0071】
さらに、撹拌停止後、5℃で2週間保存した混合溶液について、上記(2)と同様な手順により、上層および下層の亜鉛濃度(mg/100ml)を求め、それぞれ、M3、M4とした。
【0072】
上記分散性試験で得られたM1~M4を用いて、M1/M2およびM3/M4を算出し、初期分散度S、2週間静置後分散度Tとした。得られた初期分散度Sおよび2週間静置後分散度Tを用いて、T/S×100(%)で表される分散指数を算出した。得られた結果を表1、2に示す。
【0073】
また、撹拌停止後、5℃で1週間保存した混合溶液について、上記(2)と同様な手順により、上層および下層の亜鉛濃度(mg/100ml)を求め、それぞれ、M5、M6とし、M5/M6を算出し、1週間静置後分散度Uとした。得られた、得られた1週間静置後分散度Uおよび2週間静置後分散度Tを用いて、T/U×100(%)で表される分散指数を算出した。得られた結果を表1、2に示す。
【0074】
表1、2に示すように、実施例1~5の各酸化亜鉛含有組成物では、T/U×100(%)で表される分散指数が80%以上であり、牛乳中で酸化亜鉛が良好に分散した状態が長期にわたり継続するという予期されない効果が確認された。これに対して、比較例1~8の各酸化亜鉛含有組成物では、T/U×100(%)で表される分散指数が80%未満であり、1週間静置後分散度Uと2週間静置後分散度Tとを比較すると、1週間静置後から2週間静置後の間に、分散性が顕著に悪化することが確認された。
【要約】
液体または溶液への分散性が向上した酸化亜鉛含有組成物を提供する。本発明のある態様は、酸化亜鉛含有組成物である。レーザー回折光散乱法により測定される前記酸化亜鉛含有組成物の累積体積百分率が10%となる粒子径(μm)、50%となる粒子径(μm)、および90%となる粒子径(μm)を、それぞれ、D10、D50、D90としたとき、(D90-D10)/D50が2.0未満である。