(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】T字帯を用いた介助器具の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61G 7/10 20060101AFI20220708BHJP
A61G 5/14 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
A61G7/10
A61G5/14
(21)【出願番号】P 2021167050
(22)【出願日】2021-09-10
【審査請求日】2021-10-28
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505142757
【氏名又は名称】小野 芳男
(73)【特許権者】
【識別番号】522208184
【氏名又は名称】小野 敦子
(73)【特許権者】
【識別番号】522208195
【氏名又は名称】棚邉 加織
(72)【発明者】
【氏名】小野 芳男
(72)【発明者】
【氏名】小野 敦子
(72)【発明者】
【氏名】棚邉 加織
【審査官】田中 佑果
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-224477(JP,A)
【文献】登録実用新案第3138658(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 7/10
A61G 5/14
A41B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素材には布生地を採用し、重ね折りしてほぼ同じ幅の布地二本を準備して、横帯(1)と、当該横帯の中心位置にて垂直方向に設けられた垂直帯(2)とを、縫製により接合するT字帯を形成するものであって、
支援者は、前記垂直帯(2)が下方となる状態で、前記横帯(1)を要介護者の腹部へ巻き付けた後に、垂直帯の端部(5)を股間を通じる形で、背面腰部まで上方向に立ち上げて、前記垂直帯(2)を背面に押し当てながら、当該位置にて横帯の左側端部(3)と右側端部(4)を誘導して、本結びとなる結び目を創出・形成し、
次に、前記垂直帯の端部(5)を、前記結び目を内面に囲み覆いながら、外側へと巻き付けるように下方に折り曲げ、前記本結びを形成した前記左右の端部(3及び4)と共に、下方向へと並び揃える製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ズボンなどの素材としても利用される木綿や化繊などの一般的な布生地を用いて、12cm前後の幅を以って、横方向となる横帯と、その中央位置には垂直方向に向けてT字状となる垂直帯を縫製・形成して、高齢者の介護や、リハビリの現場にて介助用器具として活用できる結んで安心のT字帯に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者の介護や、リハビリの現場にて使用する介助用器具として、腹部や腰部付近に巻き付けて使用するベルトタイプからなる介護ベルトが考案されているが、それらの多くは、脱着に容易な樹脂製のバックルなどが装備されていたり、側面や背後の適切な位置に取手が設けられたりなど、腰や両肢にベルトを通して体重を分散させる機能を有しているので、介護やリハビリには有効である一方で、ベルト部分の長さの調整や、バックルの外れなどの利用時における注意すべき事項も支援者に求められている。
【0003】
また、これらの器具は日常生活において、例えば、車椅子を利用する際に装着のままでの移乗では、ベルト部の素材や、ベルト幅の広さによる違和感があったり、介助用器具自体の幅が大きいために取り外しが必要とするケースもあることから、脱着が容易であることを基本目標に、布生地のみから成る帯を形成して、その結び目を利用した確実な介助と、車での送迎における座席や、車椅子への移乗でも、装着をそのまま継続した利用を可能とし、仮に取り外した場合や、外出における介助用器具の携帯にも、多くの収納スペースを要しない、機能性と利便性とを具えた簡略的な製品が求められている。
【0004】
近年の医療技術の進歩する中で、高齢者の筋力の衰えによる転倒などの事故により大腿骨骨折に遭遇するケースも多数発生しており、その際での早期手術と、術後の機能回復訓練が、自立に向けた大切な意義を持っており、特に高齢者の場合には、日常生活を送る上で、必要な行動や動作をサポートする介助以外に、認知症などの介護の側面も加わることから、それらの現場に接遇した経験をベースに考案して実施した簡単明瞭なT字帯は、相互の信頼と安心の感性を生むツールとしても有効であると実感すると共に、大腿骨骨折の術後や高齢者に限定されずに、リハビリなどの一般の歩行訓練の現場にも適応が容易な介助用器具としての活用も可能である。
【先行技術文献】
【特許・実用新案文献】
【0005】
【特許・実用新案文献1】
実用新案登録第3138658号 介護用ベルト
【0006】
【特許・実用新案文献2】
特許登録第4602522号 介護用用ベルト
【0007】
【特許・実用新案文献3】
実用新案登録第3183065号 介護用ベルト
【非特許文献】
【0008】
【文献】福祉用具WEB総合カタログ『介援隊』P.82 リハベリ介助用ベルト他 発行元:株式会社トーリツ福祉用具センター
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
市販されるベルトタイプの介助用器具は、高齢者の介護や、リハビリの現場での単独の介助作業、例えば、段差のある玄関や階段を経由しての車椅子への移乗時、または、車椅子から、介護センターの送迎車座席への移乗などにおける有効性は認められるが、要介助者の装着感は、器具の素材や構造からも好ましいとは思われないことや、次工程へ向けたそのままの継続利用にも課題があるように思われる。
【0010】
介護の現場などでは、縛るや締め付ける等の表現を避ける傾向にあり、脱着が容易な樹種製のバックルを採用するワンタッチ式の留め具や、予め適切な位置に取手部分を設けた器具が準備されているが、これらの器具の多くは、外出する際には別途な収納スペースが必要であることを配慮すると、縛るや締め付けるの表現を、結ぶに換えることで、相互の心を結ぶと解釈し、安心を生み、身近に常備・保持しての外出が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明における布生地として木綿で白色のサラシを採用し、重ね折りして12cm前後となる幅の布地を二本を準備し、一方を横方向となる一辺(以下、横帯と略す。)に、他方を当該横帯の中央位置で直角の方向に縫製・接合して、垂直方向の一辺(以下、垂直帯と略す。)として、全体が布生地の縫製を以って構成するT字帯を形成する。
【0012】
上記する垂直帯を下方に向けた状態で、横帯を要介助者の腹部に巻き付け、垂直帯の端部を股間を通じる形で、背面の腰部まで上方向に立ち上げて、前記する垂直帯を背面に押し当てる形を以って内側に配しながら、左側端部と右側端部を誘導し、本結びとなる結び目を創出・形成し、
次に、上記垂直帯の端部は、上記する結び目を内面に囲み覆いながら、外側へと巻きつけるように下方に折り曲げ、既に本結びを形成した横帯の左右の二種の端部と共に、下方向へと並びを揃えた後に、上記の前工程にて結び目を囲み覆って折り曲げる過程で、背面腰部へ押し当てられて接する垂直帯の一辺をも含めた四辺を集束する形態を保持して、支援者は当該四辺を片手にて、腰部仙骨付近の位置で一挙に掌握し、要介助者の体幹の中心でもある腰部を支える介助効果を生み、支援者と要介助者の双方が安心感を共有できる。
【0013】
本発明におけるT字帯は、全体が布生地をベースに縫製・形成しているので、収納における折り曲げや折り畳みの位置も自由であることから、収納スペースも容易に選択でき、車椅子のポケット部や、同行者のバックなどへ納めての持参も可能であり、また、突起物などがないことから、要介助者自身の継続使用でも、違和感を感じない器具とできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のT字帯は、介助に際して横帯と垂直帯の三種の端部を揃え、股間から背面へと接する垂直帯の一辺を加えて集束する四辺を一挙に掌握した状態で、支援者が要介助者に近い側面に立ち、利き腕となる方の手で、寄り添うようにして介助するために、相互の安心感を生むツールとしての効果を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の背景には、エレベータがない2階の住居に住む高齢の家族が、大腿骨骨折にて入院・手術を受けて、そのリハビリと日常生活動作に関連して、階段の昇り降りや、送迎車と車椅子間の移乗などを含む外出を体験する中での、介助用器具の考案であり、
図1に示すようにT字帯の横方向となる一辺の横帯(1)と、その中央位置にて垂直方向の一辺の垂直帯(2)を、縫製を以って接合するT字帯の形成と、介助の実施を図る。
【実施例】
【0020】
本発明での要助成者の対象には、身長=148cm、体重=50Kg、及びウエスト=73cmの女性を対象として実施した状況を、
図1~4を以って説明する。
【0021】
また、本発明での布生地は、入手が容易な白色のサラシを採用して、12cm前後の幅にての重ね折りと、長さの目標寸法を、T字帯の横帯(1)の寸法をW=160cm、その中央位置にて接合してT字状となる垂直帯(2)の寸法をL=150cmとして、縫製する前の仮アイロンを施すにあたり、マチ針や仮縫いを加えて、まず、それぞれの二本を前記する中央位置での接合部分を除き、外周部には
図2にてA部詳細として一部を表示するような縫い目(6及び7)を入れてほつれ防止を施し、事前準備をする。
【0022】
次に、T字帯を形成するために、横帯(1)の中央位置にて、垂直帯の端部(5)の反対側となる一辺を差し込んで接合し、
図2のA部詳細の如く、□(8)とX(9)状にて縫い目を追加した補強も兼ねて縫製する。
【0023】
上記する垂直帯(2)を下方に向けた状態で、横帯(1)を要介助者の腹部に巻き付け、垂直帯の端部(5)を股間を通じる形で、背面の腰部まで上方向に立ち上げて、そのまま前記する垂直帯(2)を背面に沿って押し当てる形を保持しながら、左側端部(3)と右側端部(4)を誘導し、
図3に示すように本結びとなる結び目を創出・形成する。
【0024】
次に、上記垂直帯の端部(5)にて、上記する結び目を内面に囲み覆いながら、外側へと巻きつけるように下方に折り曲げ、既に本結びを形成した横帯の左右の二種の端部(3及び4)と共に、下方向へと並びを揃えた後に、当該端部(5)にて結び目を囲み覆って折り曲げる前の工程にて、背面腰部へ押し当てて接する垂直帯(2)の一辺をも含めた四辺を集束する形態を保持して、支援者は当該四辺を片手にて、腰部仙骨付近の位置で一挙に掌握し、要介助者の体幹の中心でもある腰部を支える介助効果を生み、且つ、支援者と要介助者の双方が安心感を共有できるT字帯を提供できる。
【0025】
ここで、仮に握力の弱い支援者の場合には、集束する四辺を掌握する際に、結び目を覆うように下方へ折り曲げた垂直帯の端部(5)を、横帯(1)に一回転絡ませる誘導を追加することで、垂直帯(2)の緩み防止を実行できることも推奨する。
【0026】
また、本発明の実施例として、帯幅を12cm前後として選択した理由には、上記する四辺を一挙に掌握する工程では、まず、横帯の左右の端部(3及び4)を下方向に並びを揃えて、股間を通じる形で背面へ立ち上げ押し当てた垂直帯(2)の一辺を追加して指先を押し込みながら握る際には、少なくとも前記左右の端部(3及び4)を、上記する垂直帯の端部(5)を以って包括しながらの掌握が有効であるために、12cmを前後を適切な寸法と判断した結果であるが、この幅は限定されるものではなく、導入する布生地となる素材の厚さなども考慮して決定されるべきであることも追記する。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明による丁字帯の利用では、高齢者の介護社会では、虐待を連想する縛るの表現は禁じられているので、敢えて縛るとされる呼称を結ぶに読み替えて、横帯双方の端部を誘導して本結び目を創出・形成し、当該二種の端部と共に、前記結び目を囲い覆うように巻き込む形で下方向に向けて折り曲げた垂直帯の端部と、股間を通じて立ち上げて折り曲げる仮定で背面に押し当てられて接する垂直帯の一辺を含めた4辺を、片手にて一括して掌握するため、結び目や包括する帯の緩みも容易に、且つ、確実に感知できる機能的な介助用器具として提供できる。
【0028】
上記での利用に関して、介助に当たり、支援者が掌握するのは片手であり、もう一方の手はフリーとなることが重要であり、仮に階段の昇降における利用では、手すりを利用してバランスの保持が可能であったり、座席や車椅子の移乗では、介助者の腕や肩を支えての誘導にも有効である。
【0029】
本発明のT字帯は、布生地のみを縫製しているので、要介助者の装着時の体感は柔らかい感触であり、また、同様に自由な位置で折り畳みが可能であることから、外出においても、収納方法は小さなスペースのみで対応であり、好感を得られる。
【0030】
尚、本発明の実施例で示したT字帯の幅や、横帯と垂直帯の寸法は、利用する要介助者の体型に応じて、一覧表を作成して準備すると共に、現品には、介護施設などで所有者を区分するために氏名を記入するシールの貼り付け枠や、素材の材質表示や洗濯方法なども別途の表示を検討する。
【0031】
同様に、本発明の実施例では、白色の布生地を採用したが、介助用器具としての使用を外見から容易に推察・判断されることは、要介助者本人の意思に反することでもあることから、身に着けるズボンと同系色の生地の選択や、横帯部分にプリントの生地を採用することで、外観としての疑似効果も得られ、特に、腰部までの長い着丈がある上衣を身に着けることで、介助用器具をカバーできれば、外観から、利用そのものが悟られないファッション性への期待もある。
【0032】
近年、月刊紙などの付録として関連商品を添付した販売が多く実行されていることから、介護やリハビリ関連の雑誌を選択して、付録とする販売で普及に向けた参入を企画する。
【符号の説明】
【0033】
1 T字帯の横方向となる一辺を構成する横帯
2 上記横帯の垂直方向に連結して、その一辺を構成する垂直帯
3 上記する横帯の左側端部
4 同様に上記する横帯の右側端部
5 上記する垂直帯の端部
6 上記する横帯外周部の縫い目
7 同様に上記する垂直帯外周部の縫い目
8 横帯とその中央位置で連結する垂直帯の□状縫い合わせ目
9 上記する□状縫い合わせ目の内側にて補強するX字の縫い目
10 四辺を掌握する片手
【要約】
【課題】高齢者の介護やリハビリにおける介助用器具として、布生地を縫製して、結んでの使用を選択して、安心感を共有できるT字帯を提供する。
【解決手段】布生地を採用し、横帯1には左側端部3と、右側端部4を伴い、その中央位置に接合する垂直帯2には端部5を配して縫製するT字帯から成り、
支援者は、横帯1を要介助者の腹部中央から背面に向けて巻き付けるにあたり、垂直帯の端部5を腹部から股間を介して上方向に背面腰部まで立ち上げた位置で、上記する横帯左右の端部3・4を誘導して、本結びとなる結び目を創出・形成し、
当該結び目を囲い覆うように上記垂直帯の端部5を折り曲げ、それぞれ三種の端部3・4・5を下方向に揃え、前記端部5を折り曲げる前の垂直帯2の一辺も含めた四辺を集束して、結び目に近い腰部仙骨付近で、片手にて一挙に掌握して、体幹の中心となる腰部を支えて介助する。
【選択図】
図1