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特許7101358肝臓疾患の発症リスクの検出方法、及び肝臓疾患の発症リスク検出用キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】肝臓疾患の発症リスクの検出方法、及び肝臓疾患の発症リスク検出用キット
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6883 20180101AFI20220708BHJP
   C12Q 1/6827 20180101ALI20220708BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
C12Q1/6883 Z ZNA
C12Q1/6827 Z
C12N15/12
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021203758
(22)【出願日】2021-12-15
【審査請求日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2021102761
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 センター・オブ・イノベーションプログラム『真の社会イノベーションを実現する革新的「健やか力」創造拠点』委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306018376
【氏名又は名称】クラシエホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504229284
【氏名又は名称】国立大学法人弘前大学
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100190355
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 紀央
(72)【発明者】
【氏名】与茂田 敏
(72)【発明者】
【氏名】稲益 悟志
(72)【発明者】
【氏名】中路 重之
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-176186(JP,A)
【文献】特開2020-120625(JP,A)
【文献】特開2016-178898(JP,A)
【文献】国際公開第2019/008137(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/150002(WO,A1)
【文献】Journal of Investigative Dermatology,2020年10月15日,Vol. 141, No. 5,pp. 1254-1263
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68-1/6897
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の検体中のリポ蛋白受容体関連タンパク質2結合タンパク質(LRP2BP)遺伝子における一塩基多型を検出することを含む、肝線維化の発症リスクの検出方法であって、前記一塩基多型が、r s1048329で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs117320438で特定される一塩基多型の遺伝子型がCC型である一塩基多型、rs11944575で特定される一塩基多型の遺伝子型がAA型である一塩基多型、rs3797029で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs58297010で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs72712010で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型、及び、rs7664573で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型からなる群から選択される少なくとも1種の一塩基多型である肝線維化の発症リスクの検出方法。
【請求項2】
前記rs1048329で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs11944575で特定される一塩基多型の遺伝子型がAA型である一塩基多型、及び、rs7664573で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型を検出することを含む、請求項に記載の肝線維化の発症リスクの検出方法。
【請求項3】
前記rs1048329で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs3797029で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、及び、rs7664573で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型を検出することを含む、請求項に記載の肝線維化の発症リスクの検出方法。
【請求項4】
前記rs11944575で特定される一塩基多型の遺伝子型がAA型である一塩基多型、rs3797029で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、及び、rs7664573で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型を検出することを含む、請求項に記載の肝線維化の発症リスクの検出方法。
【請求項5】
前記rs1048329で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs11944575で特定される一塩基多型の遺伝子型がAA型である一塩基多型、及び、rs3797029で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型を検出することを含む、請求項に記載の肝線維化の発症リスクの検出方法。
【請求項6】
前記rs1048329で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs11944575で特定される一塩基多型の遺伝子型がAA型である一塩基多型、rs3797029で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、及び、rs7664573で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型を検出することを含む、請求項に記載の肝線維化の発症リスクの検出方法。
【請求項7】
前記rs1048329で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs117320438で特定される一塩基多型の遺伝子型がCC型である一塩基多型、rs11944575で特定される一塩基多型の遺伝子型がAA型である一塩基多型、rs3797029で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs58297010で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs72712010で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型、及び、rs7664573で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型からなる群から選択される少なくとも1種の一塩基多型を検出した場合に、前記被験者の肝線維化の発症リスクは高いと評価することを特徴とする、請求項に記載の肝線維化の発症リスクの検出方法。
【請求項8】
前記rs1048329で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs11944575で特定される一塩基多型の遺伝子型がAA型である一塩基多型、及び、rs7664573で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型を検出した場合に、前記被験者の肝線維化の発症リスクは高いと評価することを特徴とする、請求項に記載の肝線維化の発症リスクの検出方法。
【請求項9】
前記rs1048329で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs3797029で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、及び、rs7664573で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型をした場合に、前記被験者の肝線維化の発症リスクは高いと評価することを特徴とする、請求項に記載の肝線維化の発症リスクの検出方法。
【請求項10】
前記rs11944575で特定される一塩基多型の遺伝子型がAA型である一塩基多型、rs3797029で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、及び、rs7664573で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型を検出した場合に、前記被験者の肝線維化の発症リスクは高いと評価することを特徴とする、請求項に記載の肝線維化の発症リスクの検出方法。
【請求項11】
前記rs1048329で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs11944575で特定される一塩基多型の遺伝子型がAA型である一塩基多型、及び、rs3797029で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型を検出した場合に、前記被験者の肝線維化の発症リスクは高いと評価することを特徴とする、請求項に記載の肝線維化の発症リスクの検出方法。
【請求項12】
前記rs1048329で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs11944575で特定される一塩基多型の遺伝子型がAA型である一塩基多型、rs3797029で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、及び、rs7664573で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型を検出した場合に、前記被験者の肝線維化の発症リスクは高いと評価することを特徴とする、請求項に記載の肝線維化の発症リスクの検出方法。
【請求項13】
被験者の検体中のリポ蛋白受容体関連タンパク質2結合タンパク質(LRP2BP)遺伝子における一塩基多型を検出する核酸を含む、肝線維化の発症リスク検出用キットであって、前記一塩基多型が、r s1048329で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs117320438で特定される一塩基多型の遺伝子型がCC型である一塩基多型、rs11944575で特定される一塩基多型の遺伝子型がAA型である一塩基多型、rs3797029で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs58297010で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs72712010で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型、及び、rs7664573で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型からなる群から選択される少なくとも1種の一塩基多型である肝線維化の発症リスク検出用キット。
【請求項14】
前記rs1048329で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs11944575で特定される一塩基多型の遺伝子型がAA型である一塩基多型、及び、rs7664573で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型を検出する核酸を含む、請求項13に記載の肝線維化の発症リスク検出用キット。
【請求項15】
前記rs1048329で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs3797029で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、及び、rs7664573で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型を検出する核酸を含む、請求項13に記載の肝線維化の発症リスク検出用キット。
【請求項16】
前記rs11944575で特定される一塩基多型の遺伝子型がAA型である一塩基多型、rs3797029で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、及び、rs7664573で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型を検出する核酸を含む、請求項13に記載の肝線維化の発症リスク検出用キット。
【請求項17】
前記rs1048329で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs11944575で特定される一塩基多型の遺伝子型がAA型である一塩基多型、及び、rs3797029で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型を検出する核酸を含む、請求項13に記載の肝線維化の発症リスク検出用キット。
【請求項18】
前記rs1048329で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs11944575で特定される一塩基多型の遺伝子型がAA型である一塩基多型、rs3797029で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、及び、rs7664573で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型を検出する核酸を含む、請求項13に記載の肝線維化の発症リスク検出用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝臓疾患の発症リスクの検出方法、及び肝臓疾患の発症リスク検出用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
肝臓疾患において、肝線維化は、肝炎ウイルスの持続感染やアルコールの過剰摂取、非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)や非アルコール性脂肪肝炎(Nonalcoholic steatohepatitis:NASH)の他にも、自己免疫学的機序、肝内胆汁うっ滞、薬剤性、金属代謝異常、うっ血肝など、様々な原因により引き起こされる共通の病態である。肝線維化の進展に伴って、肝組織中にはコラーゲンをはじめとする細胞外マトリックスが過剰に沈着し、その終末像である肝硬変では肝細胞機能不全や門脈圧亢進症が進行する。さらに、肝硬変が進行すると、肝細胞癌の発症リスクが高まる。
肝線維化の進展が予後や発癌に寄与することから、肝線維化指標FIB-4インデックスや、IV型コラーゲン7Sなどの血清マーカー、トランジエントエラストログラフィーによるフィブロスキャン検査などによって高度肝線維化を検出することが行なわれている。
【0003】
また、肝線維化には、食生活、運動習慣などの環境要因の他に、患者本人の遺伝的要因が関与すると考えられており、これまでにも肝線維化に関連のある遺伝子多型、特に一塩基多型(SNP)が報告されている。例えば、肝線維化に寄与する遺伝子多型としては、papain-like phospholipase domain containing 3 protein(PNPLA3)、Transmembrane 6 superfamily member 2(TM6SF2)などのタンパク質の遺伝子多型が報告されている。しかし、日本人においてPNPLA3のGアレルが肝細胞癌のリスクとなるが、TM6SF2の遺伝子多型は有意差が検出されていないことも報告されている(非特許文献1)。
このように、人種によりSNPの頻度は異なることもあり、日本において遺伝子多型の検出を利用した肝線維化の診断技術は確立していない。
【0004】
リポ蛋白受容体関連タンパク質2結合タンパク質(lipoprotein receptor-related protein 2 binding protein、以下、LRP2BPとも称する)は動脈硬化や全身性硬化症に関与するタンパク質であることや低酸素応答タンパク質であることが知られている(非特許文献2、3)。しかしながら、LRP2BPの遺伝子多型と肝臓疾患との関係については知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】明日の臨床.2019 31(1):1-12
【文献】Immunol Cell Biol. 2018 Feb; 96(2):175-189.
【文献】J Invest Dermatol. 2021 May;141(5):1254-1263.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、肝線維化等の肝臓疾患の発症リスクの検出方法、及び肝臓疾患の発症リスク検出用キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ヒトLRP2BP遺伝子上の遺伝子多型を検出することによって、肝臓疾患の発症リスクを検出することができることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1] 被験者の検体中のリポ蛋白受容体関連タンパク質2結合タンパク質(LRP2BP)遺伝子における一塩基多型を検出することを含む、肝臓疾患の発症リスクの検出方法。
[2] 前記一塩基多型が1以上である、[1]に記載の肝臓疾患の発症リスクの検出方法。
[3] 前記一塩基多型が、rs1048329、rs117320438、rs11944575、rs3797029、rs58297010、rs72712010及びrs7664573からなる群から選択される少なくとも1種で特定される一塩基多型である、[1]又は[2]に記載の肝臓疾患の発症リスクの検出方法。
[4] 前記rs1048329で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs117320438で特定される一塩基多型の遺伝子型がCC型である一塩基多型、rs11944575で特定される一塩基多型の遺伝子型がAA型である一塩基多型、rs3797029で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs58297010で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs72712010で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型、及び、rs7664573で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型からなる群から選択される少なくとも1種の一塩基多型を検出することを含む、[3]に記載の肝臓疾患の発症リスクの検出方法。
[5] 前記rs1048329で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs11944575で特定される一塩基多型の遺伝子型がAA型である一塩基多型、及び、rs7664573で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型を検出することを含む、[4]に記載の肝臓疾患の発症リスクの検出方法。
[6] 前記rs1048329で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs3797029で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、及び、rs7664573で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型を検出することを含む、[4]に記載の肝臓疾患の発症リスクの検出方法。
[7] 前記rs11944575で特定される一塩基多型の遺伝子型がAA型である一塩基多型、rs3797029で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、及び、rs7664573で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型を検出することを含む、[4]に記載の肝臓疾患の発症リスクの検出方法。
[8] 前記rs1048329で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs11944575で特定される一塩基多型の遺伝子型がAA型である一塩基多型、rs3797029で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型を検出することを含む、[4]に記載の肝臓疾患の発症リスクの検出方法。
[9] 前記rs1048329で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs11944575で特定される一塩基多型の遺伝子型がAA型である一塩基多型、rs3797029で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、及び、rs7664573で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型を検出することを含む、[4]に記載の肝臓疾患の発症リスクの検出方法。
[10] 前記rs1048329で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs117320438で特定される一塩基多型の遺伝子型がCC型である一塩基多型、rs11944575で特定される一塩基多型の遺伝子型がAA型である一塩基多型、rs3797029で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs58297010で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs72712010で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型、及び、rs7664573で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型からなる群から選択される少なくとも1種の一塩基多型を検出した場合に、前記被験者の肝臓疾患の発症リスクは高いと評価することを特徴とする、[3]又は[4]に記載の肝臓疾患の発症リスクの検出方法。
[11] 前記rs1048329で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs11944575で特定される一塩基多型の遺伝子型がAA型である一塩基多型、及び、rs7664573で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型を検出した場合に、前記被験者の肝臓疾患の発症リスクは高いと評価することを特徴とする、[10]に記載の肝臓疾患の発症リスクの検出方法。
[12] 前記rs1048329で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs3797029で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、及び、rs7664573で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型をした場合に、前記被験者の肝臓疾患の発症リスクは高いと評価することを特徴とする、[10]に記載の肝臓疾患の発症リスクの検出方法。
[13] 前記rs11944575で特定される一塩基多型の遺伝子型がAA型である一塩基多型、rs3797029で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、及び、rs7664573で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型を検出した場合に、前記被験者の肝臓疾患の発症リスクは高いと評価することを特徴とする、[10]に記載の肝臓疾患の発症リスクの検出方法。
[14] 前記rs1048329で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs11944575で特定される一塩基多型の遺伝子型がAA型である一塩基多型、rs3797029で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型を検出した場合に、前記被験者の肝臓疾患の発症リスクは高いと評価することを特徴とする、[10]に記載の肝臓疾患の発症リスクの検出方法。
[15] 前記rs1048329で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs11944575で特定される一塩基多型の遺伝子型がAA型である一塩基多型、rs3797029で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、及び、rs7664573で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型を検出した場合に、前記被験者の肝臓疾患の発症リスクは高いと評価することを特徴とする、[10]に記載の肝臓疾患の発症リスクの検出方法。
[16] 前記肝臓疾患が肝線維化である、[1]~[15]のいずれか一項に記載の肝臓疾患の発症リスクの検出方法。
[17] 被験者の検体中のリポ蛋白受容体関連タンパク質2結合タンパク質(LRP2BP)遺伝子における一塩基多型を検出する核酸を含む、肝臓疾患の発症リスク検出用キット。
[18] 前記一塩基多型が1以上である、[17]に記載の肝臓疾患の発症リスク検出用キット。
[19] 前記一塩基多型が、rs1048329、rs117320438、rs11944575、rs3797029、rs58297010、rs72712010及びrs7664573からなる群から選択される少なくとも1種で特定される一塩基多型である、[17]又は[18]に記載の肝臓疾患の発症リスク検出用キット。
[20] 前記rs1048329で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs117320438で特定される一塩基多型の遺伝子型がCC型である一塩基多型、rs11944575で特定される一塩基多型の遺伝子型がAA型である一塩基多型、rs3797029で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs58297010で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs72712010で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型、及び、rs7664573で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型からなる群から選択される少なくとも1種の一塩基多型を検出する核酸を含む、[19]に記載の肝臓疾患の発症リスク検出用キット。
[21] 前記rs1048329で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs11944575で特定される一塩基多型の遺伝子型がAA型である一塩基多型、及び、rs7664573で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型を検出する核酸を含む、[19]に記載の肝臓疾患の発症リスク検出用キット。
[22] 前記rs1048329で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs3797029で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、及び、rs7664573で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型を検出する核酸を含む、[19]に記載の肝臓疾患の発症リスク検出用キット。
[23] 前記rs11944575で特定される一塩基多型の遺伝子型がAA型である一塩基多型、rs3797029で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、及び、rs7664573で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型を検出する核酸を含む、[19]に記載の肝臓疾患の発症リスク検出用キット。
[24] 前記rs1048329で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs11944575で特定される一塩基多型の遺伝子型がAA型である一塩基多型、rs3797029で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型を検出する核酸を含む、[19]に記載の肝臓疾患の発症リスク検出用キット。
[25] 前記rs1048329で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、rs11944575で特定される一塩基多型の遺伝子型がAA型である一塩基多型、rs3797029で特定される一塩基多型の遺伝子型がGG型である一塩基多型、及び、rs7664573で特定される一塩基多型の遺伝子型がTT型である一塩基多型を検出する核酸を含む、[19]に記載の肝臓疾患の発症リスク検出用キット。
[26] 前記肝臓疾患が肝線維化である、[17]~[25]のいずれか一項に記載の肝臓疾患の発症リスク検出用キット。
【発明の効果】
【0009】
肝臓疾患の発症リスクの検出方法、及び肝臓疾患の発症リスク検出用キットが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、「rs1048329」、「rs117320438」、「rs11944575」、「rs3797029」、「rs58297010」、「rs72712010」及び「rs7664573」における「rs」は、アメリカ国立生物工学情報センター(NCBI)のSNPデータベースにおけるrs番号(Reference SNP ID number)を示す。
【0011】
本明細書において、「一塩基多型(SNP)を検出する」とは、当該SNPが、A(アデニン)であるか、G(グアニン)であるか、C(シトシン)であるか、T(チミン)であるかを検出することを意味する。
【0012】
本明細書において、「アレル」とは、配偶子(精子又は卵子)を通してそれぞれ1セットずつ受け継いだ、合計2セットのゲノム配列を意味する。ヒトは、同一の遺伝子及び同一のゲノム領域上において、父親又は母親からそれぞれ受け継いだ合計2セットの配列(すなわち、アレル)をもつ。父も母も同じ配列を有する場合には「ホモ」と表現されることがあり、互いに異なる配列を有する場合には「ヘテロ」と表現されることがある。
【0013】
本明細書において、特定のゲノム領域においてA(アデニン)がアレルとして検出される場合、「アレルA」と記載する。同様に、T(チミン)がアレルとして検出される場合、「アレルT」と記載し、G(グアニン)がアレルとして検出される場合、「アレルG」と記載し、C(シトシン)がアレルとして検出される場合、「アレルC」と記載する。
【0014】
本明細書において、遺伝子型(ジェノタイプ)とは、父親又は母親からそれぞれ受け継いだ合計2セットのアレルであって、例えば、父親と母親の一方が「アレルA」を有し、他方が「アレルG」を有する場合は、「AG型」と記載し、父親と母親が両方とも「アレルG」を有する場合は「GG型」と記載し、父親と母親が両方とも「アレルA」を有する場合は「AA型」と記載する。
【0015】
LRP2BPのSNPであるrs1048329で特定されるSNPは、A(アデニン)/G(グアニン)の多型であり、「アレルA」と「アレルG」が存在する。rs1048329のアレルGの塩基配列は、GACACTCATCGGACGAATCCA(配列番号1)であり、配列番号1の塩基配列において、11番目の塩基がrs1048329に相当する。すなわち、アレルAの場合は、配列番号1の塩基配列の11番目の塩基がAである。従って、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型は、「AA型」と「AG型」と「GG型」とが存在する。
【0016】
LRP2BPのSNPであるrs117320438で特定されるSNPは、A(アデニン)/C(シトシン)の多型であり、「アレルA」と「アレルC」が存在する。rs117320438のアレルCの塩基配列は、CTAACAAACACCGTCTTCCAT(配列番号2)であり、配列番号2の塩基配列において、11番目の塩基がrs117320438に相当する。すなわち、アレルAの場合は、配列番号2の塩基配列の11番目の塩基がAである。従って、rs117320438で特定されるSNPの遺伝子型は、「AA型」と「AC型」と「CC型」とが存在する。
【0017】
LRP2BPのSNPであるrs11944575で特定されるSNPは、A(アデニン)/G(グアニン)の多型であり、「アレルA」と「アレルG」が存在する。rs11944575のアレルGの塩基配列は、TCTTTACAAGGGCATACTGGC(配列番号3)であり、配列番号3の塩基配列において、11番目の塩基がrs11944575に相当する。すなわち、アレルAの場合は、配列番号3の塩基配列の11番目の塩基がAである。従って、rs11944575で特定されるSNPの遺伝子型は、「AA型」と「GA型」と「GG型」とが存在する。
【0018】
LRP2BPのSNPであるrs3797029で特定されるSNPは、A(アデニン)/G(グアニン)の多型であり、「アレルA」と「アレルG」が存在する。rs3797029のアレルGの塩基配列は、ATATTCATCTGTTCATGCTTA(配列番号4)であり、配列番号4の塩基配列において、11番目の塩基がrs3797029に相当する。すなわち、アレルAの場合は、配列番号4の塩基配列の11番目の塩基がAである。従って、rs3797029で特定されるSNPの遺伝子型は、「AA型」と「AG型」と「GG型」とが存在する。
【0019】
LRP2BPのSNPであるrs58297010で特定されるSNPは、A(アデニン)/G(グアニン)の多型であり、「アレルA」と「アレルG」が存在する。rs58297010のアレルGの塩基配列は、CGGCAGGCCCGAGGCTGCCAT(配列番号5)であり、配列番号5の塩基配列において、11番目の塩基がrs58297010に相当する。すなわち、アレルAの場合は、配列番号5の塩基配列の11番目の塩基がAである。従って、rs58297010で特定されるSNPの遺伝子型は、「AA型」と「AG型」と「GG型」とが存在する。
【0020】
LRP2BPのSNPであるrs72712010で特定されるSNPは、C(シトシン)/T(チミン)の多型であり、「アレルC」と「アレルT」が存在する。rs72712010のアレルTの塩基配列は、CTGTCTTCGATATGTATATTT(配列番号6)であり、配列番号6の塩基配列において、11番目の塩基がrs58297010に相当する。すなわち、アレルCの場合は、配列番号6の塩基配列の11番目の塩基がCである。従って、rs72712010で特定されるSNPの遺伝子型は、「TT型」と「CT型」と「CC型」とが存在する。
【0021】
LRP2BPのSNPであるrs7664573で特定されるSNPは、G(グアニン)/T(チミン)の多型であり、「アレルG」と「アレルT」が存在する。rs7664573のアレルTの塩基配列は、ATGTCAACAATTTGGGATATA(配列番号7)であり、配列番号7の塩基配列において、11番目の塩基がrs7664573に相当する。すなわち、アレルGの場合は、配列番号7の塩基配列の11番目の塩基がGである。従って、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型は、「GG型」と「GT型」と「TT型」とが存在する。
【0022】
<肝臓疾患の発症リスクの検出方法>
本発明に係る肝臓疾患の発症リスクの検出方法は、被験者の検体中のリポ蛋白受容体関連タンパク質2結合タンパク質(LRP2BP)遺伝子におけるSNPを検出すること含む。
【0023】
LRP2BP遺伝子におけるSNPとしては、特に制限はないが、例えば、rs1048329、rs117320438、rs11944575、rs3797029、rs58297010、rs72712010、rs7664573等が挙げられる。LRP2BP遺伝子におけるSNPは、1種類であっても、2種類以上の組み合わせであってもよい。
【0024】
後述する実施例から明らかなように、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である被験者は、AA型又はAG型である被験者と比較して、肝臓疾患の発症リスクが統計学的に有意に高いことが確認された。つまり、被験者のrs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合には、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが高いと評価し、被験者のrs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がAA型又はAG型であった場合には、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが低いと評価することができる。
【0025】
例えば、被験者由来の核酸に対して、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型について、AA型であるか、AG型であるか、GG型であるかを検出し、得られた検出結果において、AA型又はAG型である場合には、肝臓疾患の発症リスクが低いと評価でき、GG型であった場合には、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが高いと評価できる。
【0026】
また、後述する実施例から明らかなように、rs117320438で特定されるSNPの遺伝子型がCC型である被験者は、AA型又はAC型である被験者と比較して、肝臓疾患の発症リスクが統計学的に有意に高いことが確認された。つまり、被験者のrs117320438で特定されるSNPの遺伝子型がCC型である場合には、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが高いと評価し、被験者のrs117320438で特定されるSNPの遺伝子型がAA型又はAC型であった場合には、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが低いと評価することができる。
【0027】
例えば、被験者由来の核酸に対して、rs117320438で特定されるSNPの遺伝子型について、AA型であるか、AC型であるか、CC型であるかを検出し、得られた検出結果において、AC型又はAA型である場合には、肝臓疾患の発症リスクが低いと評価でき、CC型であった場合には、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが高いと評価できる。
【0028】
また、後述する実施例から明らかなように、rs11944575で特定されるSNPの遺伝子型がAA型である被験者は、GA型又はGG型である被験者と比較して、肝臓疾患の発症リスクが統計学的に有意に高いことが確認された。つまり、被験者のrs11944575で特定されるSNPの遺伝子型がAA型である場合には、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが高いと評価し、被験者のrs11944575で特定されるSNPの遺伝子型がGA型又はGG型であった場合には、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが低いと評価することができる。
【0029】
例えば、被験者由来の核酸に対して、rs11944575で特定されるSNPの遺伝子型について、AA型であるか、GA型であるか、GG型であるかを検出し、得られた検出結果において、GA型又はGG型である場合には、肝臓疾患の発症リスクが低いと評価でき、AA型であった場合には、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが高いと評価できる。
【0030】
また、後述する実施例から明らかなように、rs3797029で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である被験者は、AA型又はAG型である被験者と比較して、肝臓疾患の発症リスクが統計学的に有意に高いことが確認された。つまり、被験者のrs3797029で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合には、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが高いと評価し、被験者のrs3797029で特定されるSNPの遺伝子型がAA型又はAG型であった場合には、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが低いと評価することができる。
【0031】
例えば、被験者由来の核酸に対して、rs3797029で特定されるSNPの遺伝子型について、AA型であるか、AG型であるか、GG型であるかを検出し、得られた検出結果において、AA型又はAG型である場合には、肝臓疾患の発症リスクが低いと評価でき、GG型であった場合には、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが高いと評価できる。
【0032】
また、後述する実施例から明らかなように、rs58297010で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である被験者は、AA型又はAG型である被験者と比較して、肝臓疾患の発症リスクが統計学的に有意に高いことが確認された。つまり、被験者のrs58297010で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合には、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが高いと評価し、被験者のrs58297010で特定されるSNPの遺伝子型がAA型又はAG型であった場合には、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが低いと評価することができる。
【0033】
例えば、被験者由来の核酸に対して、rs58297010で特定されるSNPの遺伝子型について、AA型であるか、AG型であるか、GG型であるかを検出し、得られた検出結果において、AA型又はAG型である場合には、肝臓疾患の発症リスクが低いと評価でき、GG型であった場合には、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが高いと評価できる。
【0034】
また、後述する実施例から明らかなように、rs72712010で特定されるSNPの遺伝子型がTT型である被験者は、CC型又はCT型である被験者と比較して、肝臓疾患の発症リスクが統計学的に有意に高いことが確認された。つまり、被験者のrs72712010で特定されるSNPの遺伝子型がTT型である場合には、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが高いと評価し、被験者のrs72712010で特定されるSNPの遺伝子型がCC型又はCT型であった場合には、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが低いと評価することができる。
【0035】
例えば、被験者由来の核酸に対して、rs72712010で特定されるSNPの遺伝子型について、CC型であるか、CT型であるか、TT型であるかを検出し、得られた検出結果において、CC型又はCT型である場合には、肝臓疾患の発症リスクが低いと評価でき、TT型であった場合には、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが高いと評価できる。
【0036】
また、後述する実施例から明らかなように、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型がTT型である被験者は、GG型又はGT型である被験者と比較して、肝臓疾患の発症リスクが統計学的に有意に高いことが確認された。つまり、被験者のrs7664573で特定されるSNPの遺伝子型がTT型である場合には、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが高いと評価し、被験者のrs7664573で特定されるSNPの遺伝子型がGG型又はGT型であった場合には、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが低いと評価することができる。
【0037】
例えば、被験者由来の核酸に対して、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型について、GG型であるか、GT型であるか、TT型であるかを検出し、得られた検出結果において、GG型又はGT型である場合には、肝臓疾患の発症リスクが低いと評価でき、TT型であった場合には、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが高いと評価できる。
【0038】
本発明の肝臓疾患の発症リスク検出方法において、LRP2BP遺伝子におけるSNPは組み合わせてもよい。2以上のLRP2BP遺伝子におけるSNPを組み合わせることにより、肝臓疾患の発症リスクの検出の精度を向上させることができる。
【0039】
LRP2BP遺伝子におけるSNPの組み合わせとしては、例えば、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型であるSNP、rs11944575で特定されるSNPの遺伝子型がAA型であるSNP、及び、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型がTT型であるSNPの組み合わせ、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型であるSNP、rs3797029で特定されるSNPの遺伝子型がGG型であるSNP、及び、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型がTT型であるSNPの組み合わせ、rs11944575で特定されるSNPの遺伝子型がAA型であるSNP、rs3797029で特定されるSNPの遺伝子型がGG型であるSNP、及び、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型がTT型であるSNPの組み合わせ、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型であるSNP、rs11944575で特定されるSNPの遺伝子型がAA型であるSNP、rs3797029で特定されるSNPの遺伝子型がGG型であるSNPの組み合わせ、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型であるSNP、rs11944575で特定されるSNPの遺伝子型がAA型であるSNP、rs3797029で特定されるSNPの遺伝子型がGG型であるSNP、及び、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型がTT型であるSNPの組み合わせ等が挙げられる。
【0040】
本発明の肝臓疾患の発症リスクの検出方法において、肝臓疾患としては、特に制限はなく、肝線維化、脂肪肝、肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(Nonalcoholic steatohepatitis:NASH)、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(metabolic dysfunction-associated fatty liver disease:MAFLD)、肝硬変、肝細胞癌等が挙げられるが、肝線維化であることが好ましい。
【0041】
検体としては、例えば、全血、血漿、血清、口腔粘膜、毛根、尿、髄液、唾液、羊水、尿、汗、膵液等が挙げられ、全血、血漿、血清、尿等が好ましい。
【0042】
本発明の肝臓疾患の発症リスクの検出方法において、肝臓疾患の発症リスクは、肝臓疾患の発症リスクとして公知の他の発症リスク指標により評価することができる。当該公知の肝臓疾患の発症リスク指標としては、肝臓のFIB-4インデックス(FIB-4 index)、肝硬度、肝脂肪蓄積量等が挙げられる。
【0043】
FIB-4インデックス(FIB-4 Index)は、肝線維化の進展度合いを評価する指標として用いられており、下記式(1)により求めることができる。
【0044】
【数1】
【0045】
上記式(1)で求められるFIB-4インデックス値が1.3より小さい場合は、肝線維化の可能性は低いと評価され、1.3~2.67である場合は、肝線維化の可能性があると評価され、2.67を超える場合は、肝硬変が疑われると評価されている。
【0046】
したがって、本発明の肝臓疾患の発症リスクの検出方法において、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型のうち、特定遺伝子型のFIB-4インデックス値が1.3以上である場合は、肝臓疾患の発症リスクが高いと評価することができ、特定遺伝子型のFIB-4インデックス値が1.3よりも低い場合は、肝臓疾患の発症リスクが低いと評価することができる。
【0047】
肝硬度とは、皮膚表面から肝臓に振動を伝え、その伝わる速さから肝臓の硬さを数値化したものであり、肝臓に線維化が起こり硬くなればなるほど、振動が早く伝わることから、肝硬度が高くなり、肝硬度を測定することにより肝線維化の度合を評価することができる。また、肝硬度は、肝線維化の評価だけでなく発癌の予測や門脈圧亢進症の程度の評価等にも用いることができる。
【0048】
肝脂肪蓄積量は、肝臓内を伝わり返ってくる超音波信号の減衰の度合から、肝臓の脂肪の度合を数値化したものであり、脂肪肝を評価することができる。肝硬度及び肝脂肪蓄積量は、トランジエントエラストログラフィー(Transient Elastography)によるフィブロスキャン検査により測定することができる。
【0049】
また、本発明において、肝臓疾患の発症リスクは、オッズ比又はリスク比の大小で評価することができる。例えば、オッズ比又はリスク比を比較し、その大小により肝臓疾患の発症リスクの大小を評価することができる。ここで、本発明におけるオッズ比とは、肝臓疾患患者群、又はFIB-4インデックス、肝硬度等の肝臓疾患の疾患指標が高い群における、LRP2BP遺伝子のSNPの特定の遺伝子型の頻度と、その特定の遺伝子型以外の遺伝子型の頻度の比(疾患群オッズ)を、非患者群、又は前記肝臓疾患の疾患指標が低い群における、SNPの特定の遺伝子型の頻度と、その特定の遺伝子型以外の頻度の比(非疾患群オッズ)で除したものである。例えば、rs1048329、rs117320438、rs11944575、rs3797029、rs58297010、rs72712010、又は、rs7664573で特定されるSNPの特定の遺伝子型のオッズ比が1より大きい場合には、当該遺伝子型は肝臓疾患患者又は肝臓疾患の疾患指標が高い群において高頻度に認められる遺伝子型であり、オッズ比が大きいほど当該遺伝子型を有する被験者の肝臓疾患の発症リスクは高い。一方、遺伝子型のオッズ比が1より小さい場合には、当該遺伝子型は肝臓疾患において高頻度に認められる遺伝子型の対立遺伝子型であり、オッズ比が小さいほど当該遺伝子型を有する被験者の肝臓疾患の発症リスクは低い。
【0050】
本発明におけるリスク比とは、LRP2BP遺伝子のSNPの特定の遺伝子型が肝臓疾患を発症するリスクを、その特定の遺伝子型以外の遺伝子型が肝臓疾患を発症するリスクで除した比であって、オッズ比と同様に、遺伝子型リスク比が1よりも大きい場合には、当該遺伝子型は肝臓疾患を発症するリスクが高く、リスク比が大きい程、当該遺伝子型は肝臓疾患を発症するリスクが高い。一方、遺伝子型のリスク比が1より小さい場合には、当該遺伝子は肝臓疾患を発症するリスクが低く、リスク比が小さい程、当該遺伝子は肝臓疾患を発症するリスクは低い。
【0051】
また、本発明の肝臓疾患の発症リスクの検出方法において、LRP2BP遺伝子のSNPの検出に加えて、他の臨床因子に基づいて、肝臓疾患の発症リスクを検出してもよい。当該臨床因子としては、FIB-4インデックス、肝硬度、肝脂肪蓄積量、低密度リポタンパク質、年齢、性別、BMI、血小板数、アポB/A1、ヒアルロン酸、M2BPGi(Mac2結合蛋白糖鎖修飾異性体)、LDH(乳酸脱水素酵素)、フィッシャー比等が挙げられる。
【0052】
具体的には、多変量解析等の統計的手法によって、LRP2BP遺伝子のSNPのデータと臨床因子のデータとを組み合わせて、臨床因子を含めた多変量解析をすることで、さらに優れた精度で肝臓疾患の発症リスクを検出することができる。
【0053】
本発明の肝臓疾患の発症リスクの検出方法は、通常使用される一塩基多型の検出方法であれば特に限定されない。肝臓疾患の発症リスクの検出方法としては、例えば、アレルに特異的なプライマー及びプローブ等を使用し、PCR法による増幅及びPCRによる増幅産物の多型を発光によって検出する方法等が使用できる。
検出方法は一種を単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。また、PCR法等によりサンプルとなる核酸を予め増幅した後に、LRP2BP遺伝子のSNPを検出してもよい。
【0054】
プライマー及びプローブとしては、検出方法に応じてDNA、RNA、ペプチド核酸等が選択される。例えばMolecular Cloning(Third Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,NewYork)を参考にして相補対の形成条件を適宜設定してもよい。
プライマー及びプローブとしては、LRP2BP遺伝子のSNPを検出できるものであれば特に制限はなく、LRP2BP遺伝子のSNPの塩基配列に基づき、適宜設計される。例えば、rs1048329、rs117320438、rs11944575、rs3797029、rs58297010、rs72712010、又は、rs7664573の塩基配列に基づき、適宜設計される。
【0055】
<肝臓疾患の発症リスクの検出用キット>
本発明の肝臓疾患の発症リスク検出用キットは、LRP2BP遺伝子におけるSNPを検出する核酸を含む。そのため、被験者から採取したサンプル中のゲノム領域上において、検体中のLRP2BP遺伝子におけるSNPを含むゲノム領域と特異的に相補対を形成できる。したがって、例えば、<肝臓疾患の発症リスクの検出方法>の項で述べた検出方法により、一塩基多型を検出すれば、被験者が当該一塩基多型に対応するアレルを保有する遺伝型を検出できる。LRP2BP遺伝子におけるSNPとしては、rs1048329、rs117320438、rs11944575、rs3797029、rs58297010、rs72712010、rs7664573等が挙げられる。被験者が当該一塩基多型に対応するアレルを保有する遺伝型であるSNP、例えば、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型であるSNP、rs117320438で特定されるSNPの遺伝子型がCC型であるSNP、rs11944575で特定されるSNPの遺伝子型がAA型であるSNP、rs3797029で特定されるSNPの遺伝子型がGG型であるSNP、rs58297010で特定されるSNPの遺伝子型がGG型であるSNP、rs72712010で特定されるSNPの遺伝子型がTT型であるSNP、及び、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型がTT型であるSNPからなる群から選択される少なくとも1種のSNPが検出されれば、被験者の肝臓疾患の発症リスクは高いと評価することができる。
【0056】
具体的には、被験者のrs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型であることが検出されれば、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが高いと評価でき、AA型又はAG型であることが検出されれば、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが低いと評価することができる。
【0057】
また、被験者のrs117320438で特定されるSNPの遺伝子型がCC型であることが検出されれば、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが高いと評価でき、AA型又はAC型であることが検出されれば、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが低いと評価することができる。
【0058】
また、被験者のrs11944575で特定されるSNPの遺伝子型がAA型であることが検出されれば、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが高いと評価し、被験者のrs11944575で特定されるSNPの遺伝子型がGA型又はGG型であったことが検出されれば、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが低いと評価することができる。
【0059】
また、被験者のrs3797029で特定されるSNPの遺伝子型がGG型であることが検出されれば、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが高いと評価でき、被験者のrs3797029で特定されるSNPの遺伝子型がAA型又はAG型であったことが検出されれば、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが低いと評価することができる。
【0060】
また、被験者のrs58297010で特定されるSNPの遺伝子型がGG型であることが検出されれば、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが高いと評価でき、被験者のrs58297010で特定されるSNPの遺伝子型がAA型又はAG型であったことが検出されれば、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが低いと評価することができる。
【0061】
また、被験者のrs72712010で特定されるSNPの遺伝子型がTT型であることが検出されれば、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが高いと評価でき、被験者のrs72712010で特定されるSNPの遺伝子型がCC型又はCT型であったことが検出されれば、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが低いと評価することができる。
【0062】
また、被験者のrs7664573で特定されるSNPの遺伝子型がTT型であることが検出されれば、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが高いと評価でき、被験者のrs7664573で特定されるSNPの遺伝子型がGG型又はGT型であったことが検出されれば、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクが低いと評価することができる。
【0063】
本発明の肝臓疾患の発症リスク検出用キットにおいて、LRP2BP遺伝子におけるSNPは組み合わせてもよい。2以上のLRP2BP遺伝子におけるSNPを組み合わせることにより、肝臓疾患の発症リスクの検出の精度を向上させることができる。
【0064】
LRP2BP遺伝子におけるSNPの組み合わせとしては、例えば、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型であるSNP、rs11944575で特定されるSNPの遺伝子型がAA型であるSNP、及び、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型がTT型であるSNPの組み合わせ、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型であるSNP、rs3797029で特定されるSNPの遺伝子型がGG型であるSNP、及び、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型がTT型であるSNPの組み合わせ、rs11944575で特定されるSNPの遺伝子型がAA型であるSNP、rs3797029で特定されるSNPの遺伝子型がGG型であるSNP、及び、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型がTT型であるSNPの組み合わせ、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型であるSNP、rs11944575で特定されるSNPの遺伝子型がAA型であるSNP、rs3797029で特定されるSNPの遺伝子型がGG型であるSNPの組み合わせ、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型であるSNP、rs11944575で特定されるSNPの遺伝子型がAA型であるSNP、rs3797029で特定されるSNPの遺伝子型がGG型であるSNP、及び、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型がTT型であるSNPの組み合わせ等が挙げられる。
【0065】
例えば、被験者のLRP2BP遺伝子のSNPにおいて、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型であり、rs11944575で特定されるSNPの遺伝子型がAA型であり、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型がTT型であることが検出されれば、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクがより高いと評価することができる。
【0066】
また、被験者のLRP2BP遺伝子のSNPにおいて、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型であり、rs3797029で特定されるSNPの遺伝子型がGG型であり、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型がTT型であることが検出されれば、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクがより高いと評価することができる。
【0067】
また、被験者のLRP2BP遺伝子のSNPにおいて、rs11944575で特定されるSNPの遺伝子型がAA型であり、rs3797029で特定されるSNPの遺伝子型がGG型であり、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型がTT型であることが検出されれば、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクがより高いと評価することができる。
【0068】
また、被験者のLRP2BP遺伝子のSNPにおいて、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型であり、rs11944575で特定されるSNPの遺伝子型がAA型であり、rs3797029で特定されるSNPの遺伝子型がGG型であることが検出されれば、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクがより高いと評価することができる。
【0069】
また、被験者のLRP2BP遺伝子のSNPにおいて、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型であり、rs11944575で特定されるSNPの遺伝子型がAA型であり、rs3797029で特定されるSNPの遺伝子型がGG型であり、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型がTT型であることが検出されれば、当該被験者は肝臓疾患の発症リスクがより高いと評価することができる。
【0070】
本発明の肝臓疾患の発症リスク検出用キットに含まれる核酸としては、LRP2BP遺伝子におけるSNPを検出するためのプライマーやプローブ等の核酸が挙げられる。本発明の肝臓疾患の発症リスク検出用キットに含まれるプライマーやプローブ等の核酸は、肝臓疾患の発症リスクの検出用キットに、乾燥粉末として含まれていてもよく、水やTrisバッファー等の適当な溶媒に溶解させた溶液として含まれていてもよく、基板に固定された状態で含まれていてもよい。
【0071】
また、本発明の肝臓疾患の発症リスク検出用キットには、被験者から採取された検体から核酸を抽出・精製するための試薬や器具等を含むことが好ましい。
【実施例
【0072】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0073】
以下の実施例においては、被験者の検体からDNAを抽出し、匿名化を行った後で網羅的に一塩基多型を調べることができるジャポニカアレイ(登録商標)でSNP解析したデータベースを用いて解析を行った。
【0074】
[実施例1]
rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型とFIB-4インデックス値又は血小板値との分散分析を行った。その結果を表1に示す。なお、以下の表において、血小板数の単位は、「万/μL」である。
【0075】
【表1】
【0076】
表1では、等分散性のLevene検定で等分散の場合はTukeyHSDによる多重検定を行い、p<0.05を「*」、p<0.01を「**」とした。また、不等分散の場合にはGames-Howellによる多重検定を行い、有意水準p<0.05を「+」とした。
【0077】
表1に示したように、肝線維化指標FIB-4インデックス値は、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合に、当該遺伝子型がAG型又はAA型と比較して有意に高値を示した。この結果から、rs1048329で特定されるSNPを検出し、その遺伝子型がGG型である場合は、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
また、肝線維化を発症すると血小板が分解されるため、血小板数が減少するが、被験者の血小板数は、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合に、当該遺伝子型がAG型又はAA型と比較して有意に低値を示した。この結果からも、rs1048329で特定されるSNPを検出し、その遺伝子型がGG型である場合は、肝臓疾患を発症するリスクがあると評価することができることが分かった。
次に年齢の影響を除くため、年齢を共変量とした共分散分析を行った。その結果を表2に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
表2に示したように、年齢を共変量とした共分散分析においても、FIB-4インデックス値は、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合に、当該遺伝子型がAG型又はAA型と比較して有意に高値を示した。血小板数も、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合に、当該遺伝子型がAG型又はAA型と比較して低値となる傾向が見られた。この結果から、被験者の年齢に関係なく、rs1048329で特定されるSNPを検出し、その遺伝子型がGG型である場合は、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0080】
[実施例2]
次に、2019年測定の被験者のうち、肝線維化指標FIB-4インデックス値が1.3以上の高値を示す被験者299人についてクロス集計分析を行った。その結果を表3に示す。
【0081】
【表3】
【0082】
表3に示したように、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合、肝線維化指標であるFIB-4インデックス値が高値の被験者のオッズ比が1.423、リスク比が1.126となった。この結果からも、rs1048329で特定されるSNPを検出し、その遺伝子型がGG型である場合は、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0083】
[実施例3]
次に、2019年測定の男性被験者342人のうち、FIB-4インデックス値が1.3以上の高値を示す被験者113人についてクロス集計分析を行った。その結果を表4に示す。
【0084】
【表4】
【0085】
表4に示したように、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合、肝線維化指標であるFIB-4インデックス値が高値の男性被験者のオッズ比が2.310、リスク比が1.279となった。この結果から、男性被験者の方が、rs1048329の遺伝子型がGG型である場合は、肝線維化を発症するリスクがより高いことが分かった。
【0086】
[実施例4]
低密度リポタンパク質(LDL)が高値の被験者は、既に肝臓疾患を発症している可能性が高い。そこで、2019年測定の被験者から既に肝臓疾患を発症している可能性の高い被験者を除き、まだ、肝臓疾患を発症していない可能性が高い被験者671人において、rs1048329の遺伝子型の肝臓疾患の発症リスクに対する効果を調べるため、LDLが正常値の被験者671人のうち、FIB-4インデックス値が1.3以上の高値を示す被験者についてクロス集計分析を行った。その結果を表5に示す。
【0087】
【表5】
【0088】
表5に示したように、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合、肝線維化指標であるFIB-4インデックス値が高値の被験者のオッズ比が1.542、リスク比が1.160となった。この結果から、LDLが正常値の被験者であっても、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である被験者は、肝線維化を発症するリスクが高いことが分かった。
【0089】
[実施例5]
次に、LDLが正常値の被験者671人のうち、LDLが正常値の男性被験者275人のなかで、FIB-4インデックス値が1.3以上の高値を示す被験者についてクロス集計分析を行った。その結果を表6に示す。
【0090】
【表6】
【0091】
表6に示したように、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合、肝線維化指標であるFIB-4インデックス値が高値の被験者のオッズ比が2.847、リスク比が1.390となった。この結果から、LDLが正常値の被験者において、男性被験者の方が、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合は、肝線維化を発症するリスクがより高いことが分かった。
【0092】
[実施例6]
アポB/A1が高値の被験者は、既に肝臓疾患を発症している可能性が高い。そこで、2019年測定の被験者から、既に肝臓疾患を発症している可能性の高い被験者を除き、まだ、肝臓疾患を発症していない可能性が高い被験者786人において、rs1048329の遺伝子型の肝臓疾患の発症リスクに対する効果を調べるため、アポB/A1が正常値の被験者786人のうち、FIB-4インデックス値が1.3以上の高値を示す被験者についてクロス集計分析を行った。その結果を表7に示す。
【0093】
【表7】
【0094】
表7に示したように、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合、肝線維化指標であるFIB-4インデックス値が高値の被験者のオッズ比が1.524、リスク比が1.154となった。この結果から、アポB/A1が正常値の被験者であっても、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である被験者は、肝線維化を発症するリスクが高いことが分かった。
【0095】
[実施例7]
次に、アポB/A1が正常値の被験者786人のうち、アポB/A1が正常値の男性被験者320人のなかで、FIB-4インデックス値が1.3以上の高値を示す被験者についてクロス集計分析を行った。その結果を表8に示す。
【0096】
【表8】
【0097】
表8に示したように、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合、肝線維化指標であるFIB-4インデックス値が高値の被験者のオッズ比が2.614、リスク比が1.326となった。この結果から、アポB/A1が正常値の被験者において、男性被験者の方が、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合は、肝線維化を発症するリスクがより高いことが分かった。
【0098】
[実施例8]
次に、2018年測定の被験者のうち、BMIが18.5未満の女性被験者52人のなかで、FIB-4インデックス値が1.3以上の高値を示す被験者についてクロス集計分析を行った。その結果を表9に示す。
【0099】
【表9】
【0100】
表9に示したように、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合、有意差はなかったものの、肝線維化指標であるFIB-4インデックス値が高値の被験者のオッズ比が3.069、リスク比が1.487となった。この結果から、BMIが18.5未満の被験者において、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合は、肝線維化を発症するリスクが高くなる傾向があることが分かった。
【0101】
[実施例9]
2019年測定の被験者に対し、フィブロスキャンを用いた肝硬度及び肝脂肪蓄積量を測定し、844人のデータを得た。rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型と、肝線維化の指標であるFIB-4インデックスとの他、FIB-4インデックス以外の肝線維化の評価指標である肝硬度又は脂肪肝の評価指標である脂肪蓄積量との関係を、BMIを共変量とした共分散分析を行った。その結果を表10に示す。
【0102】
【表10】
【0103】
表10に示したように、肝線維化の指標であるFIB-4インデックス値は、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合に、BMIの値に関係なく、当該遺伝子型がAG型又はAA型と比較して有意に高値を示した。しかしながら、肝硬度及び肝脂肪蓄積量については、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合は、AG型又はAA型と比較して、高い傾向は認められるものの、有意差はなかった。
そこで、肝硬度及び肝脂肪蓄積量を測定した844人のうち、FIB-4インデックス値が1.3よりも低い正常範囲の被験者546人について、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型と肝硬度の関係を、BMIを共変量とした共分散分析により調べた。その結果を表11に示す。
【0104】
【表11】
【0105】
表11に示したように、BMIを共変量とした共分散分析において、FIB-4インデックス値が正常値である被験者において、肝硬度は、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合に、当該遺伝子型がAG型又はAA型と比較して有意に高値を示した。この結果から、BMIの値に関係なく、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合は、FIB-4インデックス値が正常値である場合でも、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0106】
次に、肝硬度及び肝脂肪蓄積量を測定した844人のうち、肝硬度が5kPaよりも低い正常範囲の被験者635人について、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型とFIB-4インデックスの関係を、BMIを共変量とした共分散分析により調べた。その結果を表12に示す。
【0107】
【表12】
【0108】
表12に示したように、BMIを共変量とした共分散分析において、肝硬度が正常範囲である場合でも、FIB-4インデックス値は、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合に、当該遺伝子型がAG型又はAA型と比較して有意に高値を示した。この結果から、BMIの値に関係なく、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合は、肝硬度が正常値である場合でも、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0109】
[実施例10]
2019年測定の被験者に対し、フィブロスキャンを用いた肝硬度、肝脂肪蓄積量及び血小板数を測定し、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型について、肝線維化の指標であるFIB-4インデックスの他、FIB-4インデックス以外の肝線維化の評価指標である肝硬度又は血小板数、又は、脂肪肝の評価指標である脂肪蓄積量の平均値のt検定を行った。その結果を表13に示す。
【0110】
【表13】
【0111】
表13に示したように、肝線維化の指標であるFIB-4インデックス値は、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合に、当該遺伝子型がAG型又はAA型と比較して有意に高値を示した。また、血小板数についても、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合に、当該遺伝子型がAG型又はAA型と比較して有意に低値を示した。しかしながら、肝硬度及び肝脂肪蓄積量については、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合は、AG型又はAA型と比較して、高い傾向は認められるものの、有意差はなかった。
そこで、肝硬度及び肝脂肪蓄積量を測定した846人のうち、FIB-4インデックス値が1.3よりも低い正常範囲の被験者546人について、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型と肝硬度の関係を、平均値のt検定により調べた。その結果を表14に示す。
【0112】
【表14】
【0113】
表14に示したように、FIB-4インデックスが正常範囲である場合でも、肝硬度は、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合に、当該遺伝子型がAG型又はAA型と比較して有意に高値を示した。この結果から、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合は、FIB-4インデックスが正常値である場合でも、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0114】
次に、肝硬度及び肝脂肪蓄積量を測定した844人のうち、肝硬度が5kPaよりも低い正常範囲の被験者635人について、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型とFIB-4インデックスの関係を、平均値のt検定により調べた。その結果を表15に示す。
【0115】
【表15】
【0116】
表15に示したように、肝硬度が正常範囲である場合でも、FIB-4インデックスは、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合に、当該遺伝子型がAG型又はAA型と比較して有意に高値を示した。また、血小板数についても、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合に、当該遺伝子型がAG型又はAA型と比較して有意に低値を示した。この結果から、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合は、肝硬度が正常値である場合でも、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0117】
[実施例11]
rs117320438で特定されるSNPの遺伝子型について、FIB-4インデックス値、血小板値、肝硬度、肝脂肪蓄積量、血中ヒアルロン酸濃度又は血中LDH濃度の平均値のt検定を行った。その結果を表16に示す。なお、ヒアルロン酸は肝線維化の指標であり、肝線維化が進むと高値を示す。また、LDHはグルコースがエネルギーに変化するときに働く酵素であり、肝臓に異常が生じると、血液中に流れ出るため、高値を示す。
【0118】
【表16】
【0119】
表16に示したように、肝線維化の指標であるFIB-4インデックス値は、rs117320438で特定されるSNPの遺伝子型がCC型である場合に、当該遺伝子型がAC型又はAA型と比較して有意に高値を示した。また、血小板数についても、rs117320438で特定されるSNPの遺伝子型がCC型である場合に、当該遺伝子型がAC型又はAA型と比較して有意に低値を示した。さらに、ヒアルロン酸濃度及びLDH濃度についても、rs117320438で特定されるSNPの遺伝子型がCC型である場合に、当該遺伝子型がAC型又はAA型と比較して有意に高値を示した。しかしながら、肝硬度及び肝脂肪蓄積量については、rs117320438で特定されるSNPの遺伝子型がCC型である場合は、AC型又はAA型と比較して、高い傾向は認められるものの、有意差はなかった。
【0120】
[実施例12]
実施例11において、rs117320438で特定されるSNPの遺伝子型について、肝硬度及び肝脂肪蓄積量を測定した849人のうち、FIB-4インデックス値が1.3よりも低い正常範囲の被験者550人について、rs117320438で特定されるSNPの遺伝子型と肝硬度又は脂肪蓄積量の関係を、平均値のt検定により調べた。その結果を表17に示す。
【0121】
【表17】
【0122】
表17に示したように、FIB-4インデックスが正常範囲である場合でも、肝硬度は、rs117320438で特定されるSNPの遺伝子型がCC型である場合に、当該遺伝子型がAC型又はAA型と比較して有意に高値を示した。この結果から、rs117320438で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合は、FIB-4インデックスが正常値である場合でも、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0123】
[実施例13]
実施例11において、rs117320438で特定されるSNPの遺伝子型について、肝硬度及び肝脂肪蓄積量を測定した849人のうち、肝硬度が5kPaよりも低い正常範囲の被験者638人について、rs117320438で特定されるSNPの遺伝子型とFIB-4インデックスの関係を、平均値のt検定により調べた。その結果を表18に示す。
【0124】
【表18】
【0125】
表18に示したように、肝硬度が正常範囲である場合でも、FIB-4インデックスは、rs117320438で特定されるSNPの遺伝子型がCC型である場合に、当該遺伝子型がAC型又はAA型と比較して有意に高値を示した。また、血小板数についても、rs1048329で特定されるSNPの遺伝子型がCC型である場合に、当該遺伝子型がAC型又はAA型と比較して有意に低値を示した。さらに、血中ヒアルロン酸濃度及び血中LDH濃度についても、rs117320438で特定されるSNPの遺伝子型がCC型である場合に、当該遺伝子型がAC型又はAA型と比較して有意に高値を示した。この結果から、rs117320438で特定されるSNPの遺伝子型がCC型である場合は、肝硬度が正常値である場合でも、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0126】
[実施例14]
実施例11において、rs11730438で特定されるSNPの遺伝子型について、2019年測定の被験者のうち、肝線維化指標FIB-4インデックス値が1.3以上の高値を示す被験者300人についてクロス集計分析を行った。その結果を表19に示す。
【0127】
【表19】
【0128】
表19に示したように、rs11730438で特定されるSNPの遺伝子型がCC型である場合、肝線維化指標であるFIB-4インデックス値が高値の被験者のオッズ比が2.092、リスク比が2.011となった。この結果からも、rs11730438で特定されるSNPを検出し、その遺伝子型がCC型である場合は、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0129】
[実施例15]
rs11944575で特定されるSNPの遺伝子型について、FIB-4インデックス値、血小板値、肝硬度又は肝脂肪蓄積量の平均値のt検定を行った。その結果を表20に示す。
【0130】
【表20】
【0131】
表20に示したように、肝線維化の指標であるFIB-4インデックス値は、rs11944575で特定されるSNPの遺伝子型がAA型である場合に、当該遺伝子型がGA型又はGG型と比較して有意に高値を示した。また、血小板数についても、rs11944575で特定されるSNPの遺伝子型がAA型である場合に、当該遺伝子型がAG型又はGG型と比較して有意に低値を示した。さらに、肝硬度についても、rs11944575で特定されるSNPの遺伝子型がAA型である場合に、当該遺伝子型がGA型又はGG型と比較して有意に高値を示した。この結果から、rs11944575で特定されるSNPの遺伝子型がAA型である場合は、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0132】
[実施例16]
実施例15において、rs11944575で特定されるSNPの遺伝子型について、肝硬度及び肝脂肪蓄積量を測定した844人のうち、肝硬度が5kPaよりも低い正常範囲の被験者635人について、rs11944575で特定されるSNPの遺伝子型とFIB-4インデックスの関係を、平均値のt検定により調べた。その結果を表21に示す。
【0133】
【表21】
【0134】
表21に示したように、肝硬度が正常範囲である場合、FIB-4インデックス値は、rs11944575で特定されるSNPの遺伝子型がAA型である場合は、当該遺伝子型がGA型又はGG型と比較して、高い傾向は認められるものの、有意差はなかった。しかしながら、血小板数は、rs11944575で特定されるSNPの遺伝子型がAA型である場合に、当該遺伝子型がGA型又はGG型と比較して有意に低値を示した。この結果から、rs11944575で特定されるSNPの遺伝子型がAA型である場合は、肝硬度が正常値である場合でも、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0135】
[実施例17]
実施例15において、rs11944575で特定されるSNPの遺伝子型について、2019年測定の被験者のうち、肝硬度が5kPa以上の高値を示す被験者209人についてクロス集計分析を行った。その結果を表22に示す。
【0136】
【表22】
【0137】
表22に示したように、rs11944575で特定されるSNPの遺伝子型がAA型である場合、肝硬度が高値の被験者のオッズ比が1.392、リスク比が1.212となった。この結果からも、rs11944575で特定されるSNPを検出し、その遺伝子型がAA型である場合は、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0138】
[実施例18]
rs3797029で特定されるSNPの遺伝子型について、FIB-4インデックス値、血小板値、肝硬度、肝脂肪蓄積量又は血中LDH濃度の平均値のt検定を行った。その結果を表23に示す。
【0139】
【表23】
【0140】
表23に示したように、肝線維化の指標であるFIB-4インデックス値は、rs3797029で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合に、当該遺伝子型がAG型又はAA型と比較して有意に高値を示した。また、血中LDH濃度についても、rs3797029で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合に、当該遺伝子型がAG型又はAA型と比較して有意に高値を示した。この結果から、rs3797029で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合は、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0141】
[実施例19]
実施例18において、rs3797029で特定されるSNPの遺伝子型について、肝硬度及び肝脂肪蓄積量を測定した846人のうち、FIB-4インデックス値が1.3よりも低い正常範囲の被験者548人について、rs3797029で特定されるSNPの遺伝子型と肝硬度又は脂肪蓄積量の関係を、平均値のt検定により調べた。その結果を表24に示す。
【0142】
【表24】
【0143】
表24に示したように、FIB-4インデックスが正常範囲である場合でも、肝硬度は、rs3797029で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合に、当該遺伝子型がAG型又はAA型と比較して有意に高値を示した。この結果から、rs3797029で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合は、FIB-4インデックスが正常値である場合でも、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0144】
[実施例20]
実施例18において、rs3797029で特定されるSNPの遺伝子型について、肝硬度及び肝脂肪蓄積量を測定した846人のうち、肝硬度が5kPaよりも低い正常範囲の被験者636人について、rs3797029で特定されるSNPの遺伝子型とFIB-4インデックスの関係を、平均値のt検定により調べた。その結果を表25に示す。
【0145】
【表25】
【0146】
表25に示したように、肝硬度が正常範囲である場合、血小板数は、rs3797029で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合に、当該遺伝子型がAG型又はAA型と比較して有意に低値を示した。この結果から、rs3797029で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合は、肝硬度が正常値である場合でも、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0147】
[実施例21]
rs58297010で特定されるSNPの遺伝子型について、FIB-4インデックス値、血小板値、肝硬度又は肝脂肪蓄積量の平均値のt検定を行った。その結果を表26に示す。
【0148】
【表26】
【0149】
表26に示したように、肝線維化の指標であるFIB-4インデックス値は、rs58297010で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合に、当該遺伝子型がAG型又はAA型と比較して有意に高値を示した。この結果から、rs58297010で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合は、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0150】
[実施例22]
実施例21において、rs58297010で特定されるSNPの遺伝子型について、肝硬度及び肝脂肪蓄積量を測定した847人のうち、FIB-4インデックス値が1.3よりも低い正常範囲の被験者549人について、rs58297010で特定されるSNPの遺伝子型と肝硬度又は脂肪蓄積量の関係を、平均値のt検定により調べた。その結果を表27に示す。
【0151】
【表27】
【0152】
表27に示したように、FIB-4インデックスが正常範囲である場合でも、肝硬度は、rs58297010で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合に、当該遺伝子型がAG型又はAA型と比較して有意に高値を示した。この結果から、rs58297010で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合は、FIB-4インデックスが正常値である場合でも、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0153】
[実施例23]
実施例21において、rs58297010で特定されるSNPの遺伝子型について、肝硬度及び肝脂肪蓄積量を測定した847人のうち、肝硬度が5kPaよりも低い正常範囲の被験者637人について、rs58297010で特定されるSNPの遺伝子型とFIB-4インデックスの関係を、平均値のt検定により調べた。その結果を表28に示す。
【0154】
【表28】
【0155】
表28に示したように、肝硬度が5kPaよりも低い正常範囲である場合でも、FIB-4インデックスは、rs58297010で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合に、当該遺伝子型がAG型又はAA型と比較して有意に高値を示した。また、肝硬度についても、rs58297010で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合に、当該遺伝子型がAG型又はAA型と比較して有意に高値を示した。さらに、血小板数についても、rs58297010で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合に、当該遺伝子型がAG型又はAA型と比較して有意に低値を示した。この結果から、rs58297010で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合は、肝脂肪蓄積量が正常値である場合でも、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0156】
[実施例24]
実施例21において、rs58297010で特定されるSNPの遺伝子型について、2019年測定の被験者のうち、肝線維化指標FIB-4インデックス値が1.3以上の高値を示す被験者299人についてクロス集計分析を行った。その結果を表29に示す。
【0157】
【表29】
【0158】
表29に示したように、rs58297010で特定されるSNPの遺伝子型がGG型である場合、肝線維化指標であるFIB-4インデックス値が高値の被験者のオッズ比が1.487、リスク比が1.347となった。この結果からも、rs58297010で特定されるSNPを検出し、その遺伝子型がGG型である場合は、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0159】
[実施例25]
rs72712010で特定されるSNPの遺伝子型について、FIB-4インデックス値、血小板値、肝硬度、肝脂肪蓄積量又は血中LDH濃度の平均値のt検定を行った。その結果を表30に示す。
【0160】
【表30】
【0161】
表30に示したように、肝線維化の指標であるFIB-4インデックス値は、rs72712010で特定されるSNPの遺伝子型がTT型である場合に、当該遺伝子型がCT型又はCC型と比較して有意に高値を示した。また、血小板数についても、rs72712010で特定されるSNPの遺伝子型がTT型である場合に、当該遺伝子型がCT型又はCC型と比較して有意に低値を示した。さらに、血中LDH濃度についても、rs72712010で特定されるSNPの遺伝子型がTT型である場合に、当該遺伝子型がCT型又はCC型と比較して有意に高値を示した。この結果から、rs72712010で特定されるSNPの遺伝子型がTT型である場合は、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0162】
[実施例26]
実施例25において、rs72712010で特定されるSNPの遺伝子型について、肝硬度及び肝脂肪蓄積量を測定した846人のうち、FIB-4インデックス値が1.3よりも低い正常範囲の被験者548人について、rs72712010で特定されるSNPの遺伝子型と肝硬度又は脂肪蓄積量の関係を、平均値のt検定により調べた。その結果を表31に示す。
【0163】
【表31】
【0164】
表31に示したように、FIB-4インデックスが正常範囲である場合でも、肝硬度は、rs72712010で特定されるSNPの遺伝子型がTT型である場合に、当該遺伝子型がCT型又はCC型と比較して有意に高値を示した。この結果から、rs72712010で特定されるSNPの遺伝子型がTT型である場合は、FIB-4インデックスが正常値である場合でも、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0165】
[実施例27]
実施例25において、rs72712010で特定されるSNPの遺伝子型について、肝硬度及び肝脂肪蓄積量を測定した846人のうち、肝硬度が5kPaよりも低い正常範囲の被験者637人について、rs72712010で特定されるSNPの遺伝子型とFIB-4インデックスの関係を、平均値のt検定により調べた。その結果を表32に示す。
【0166】
【表32】
【0167】
表32に示したように、肝硬度が正常範囲である場合でも、FIB-4インデックスは、rs72712010で特定されるSNPの遺伝子型がTT型である場合に、当該遺伝子型がCT型又はCC型と比較して有意に高値を示した。また、血小板数についても、rs72712010で特定されるSNPの遺伝子型がTT型である場合に、当該遺伝子型がCT型又はCC型と比較して有意に低値を示した。さらに、血中LDH濃度についても、rs72712010で特定されるSNPの遺伝子型がTT型である場合に、当該遺伝子型がCT型又はCC型と比較して有意に高値を示した。この結果から、rs72712010で特定されるSNPの遺伝子型がTT型である場合は、肝硬度が正常値である場合でも、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0168】
[実施例28]
実施例25において、rs72712010で特定されるSNPの遺伝子型について、2019年測定の被験者のうち、肝線維化指標FIB-4インデックス値が1.3以上の高値を示す被験者299人についてクロス集計分析を行った。その結果を表33に示す。
【0169】
【表33】
【0170】
表33に示したように、rs72712010で特定されるSNPの遺伝子型がTT型である場合、肝線維化指標であるFIB-4インデックス値が高値の被験者のオッズ比が1.587、リスク比が1.386となった。この結果からも、rs72712010で特定されるSNPを検出し、その遺伝子型がTT型である場合は、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0171】
[実施例29]
rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型について、FIB-4インデックス値、血小板値、肝硬度、肝脂肪蓄積量又は血中LDH濃度の平均値のt検定を行った。その結果を表34に示す。
【0172】
【表34】
【0173】
表34に示したように、肝線維化の指標であるFIB-4インデックス値は、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型がTT型である場合に、当該遺伝子型がGT型又はGG型と比較して有意に高値を示した。また、血小板数についても、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型がTT型である場合に、当該遺伝子型がGT型又はGG型と比較して有意に低値を示した。さらに、血中LDH濃度についても、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型がTT型である場合に、当該遺伝子型がGT型又はGG型と比較して有意に高値を示した。この結果から、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型がTT型である場合は、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0174】
[実施例30]
実施例29において、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型について、肝硬度及び肝脂肪蓄積量を測定した847人のうち、FIB-4インデックス値が1.3よりも低い正常範囲の被験者549人について、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型と肝硬度又は脂肪蓄積量の関係を、平均値のt検定により調べた。その結果を表35に示す。
【0175】
【表35】
【0176】
表35に示したように、FIB-4インデックスが正常範囲である場合でも、肝硬度は、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型がTT型である場合に、当該遺伝子型がGT型又はGG型と比較して有意に高値を示した。この結果から、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型がTT型である場合は、FIB-4インデックスが正常値である場合でも、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0177】
[実施例31]
実施例29において、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型について、肝硬度及び肝脂肪蓄積量を測定した847人のうち、肝硬度が5kPaよりも低い正常範囲の被験者636人について、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型とFIB-4インデックスの関係を、平均値のt検定により調べた。その結果を表36に示す。
【0178】
【表36】
【0179】
表36に示したように、肝硬度が正常範囲である場合でも、FIB-4インデックスは、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型がTT型である場合に、当該遺伝子型がGT型又はGG型と比較して有意に高値を示した。また、肝硬度についても、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型がTT型である場合に、当該遺伝子型がGT型又はGG型と比較して有意に高値を示した。さらに、血小板数についても、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型がTT型である場合に、当該遺伝子型がGT型又はGG型と比較して有意に低値を示した。この結果から、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型がTT型である場合は、肝硬度が正常値である場合でも、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0180】
[実施例32]
実施例29において、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型について、2019年測定の被験者のうち、肝線維化指標FIB-4インデックス値が1.3以上の高値を示す被験者299人についてクロス集計分析を行った。その結果を表37に示す。
【0181】
【表37】
【0182】
表37に示したように、rs7664573で特定されるSNPの遺伝子型がTT型である場合、肝線維化指標であるFIB-4インデックス値が高値の被験者のオッズ比が1.458、リスク比が1.297となった。この結果からも、rs7664573で特定されるSNPを検出し、その遺伝子型がTT型である場合は、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0183】
[実施例33]
rs1048329で特定される遺伝子型がGG型、rs117320438で特定される遺伝子型がCC型、rs11944575で特定される遺伝子型がAA型、rs3797029で特定される遺伝子型がGG型、rs58297010で特定される遺伝子型がGG型、rs72712010で特定される遺伝子型がTT型及びrs7664573で特定される遺伝子型がTT型の各遺伝子型について、類似性を階層クラスター分析により評価した。階層クラスター分析は、最も似ている組み合わせから順番にまとまり(クラスター)にしていく方法で、途中過程が階層のように表した樹形図(デンドログラム)を作成する。具体的には、統計ソフトIBM SPSS Statistics Baseを用い、クラスター化の方法としてクラスター間の距離測定にウォード法およびグループ間平均連結法を選択し、クラスター化に使用する類似度として、2値データによる、パターンの違い、形状、Lance-Williams、Ochiai、Dice、Jaccard、単純整合、ラムダ、Sokal-Sneath 5、Russel-Rao、AnderbergのDを選択して、それぞれのデンドログラムを用い、SNPどうしの類似性を評価した。
【0184】
クラスター分析の結果、rs72712010で特定されるSNPの遺伝子型がTT型とrs7664573で特定されるSNPの遺伝子型がTT型との間、及び、rs58297010で特定される遺伝子型がGG型とrs1048329で特定される遺伝子型がGG型との間に類似性が認められた。すなわち、rs72712010で特定される遺伝子型である被検者は、rs7664573で特定される遺伝子型がTT型である場合が多く、rs58297010で特定される遺伝子型がGG型である被験者は、rs1048329で特定される遺伝子型がGG型である場合が多いことが分かった。また、rs117320438で特定されるSNPの遺伝子型がCC型である被験者は、rs1048329で特定される遺伝子型がGG型、rs11944575で特定される遺伝子型がAA型、rs3797029で特定される遺伝子型がGG型、rs58297010で特定される遺伝子型がGG型、rs72712010で特定される遺伝子型がTT型及びrs7664573で特定される遺伝子型がTT型の各遺伝子型を有している場合が多かった。以上の結果から、表38に示すタイプ1~タイプ4の組み合わせを設定し、平均値のt検定、年齢を共変量とした共分散分析およびクロス集計分析により肝臓疾患の発症リスクの評価を行った。
【0185】
【表38】
【0186】
まず、タイプ1の組み合わせの遺伝子型について、FIB-4インデックス値、血小板値及び肝硬度の平均値のt検定を行った。その結果を表39に示す。
【0187】
【表39】
【0188】
表39に示したように、肝線維化の指標であるFIB-4インデックス値は、タイプ1の遺伝子型の組み合わせである場合に、当該遺伝子型がタイプ1以外の組み合わせと比較して有意に高値を示した。また、血小板数についても、タイプ1の遺伝子型の組み合わせが、タイプ1以外の遺伝子型の組み合わせと比較して有意に低値を示した。さらに、肝硬度についても、タイプ1の遺伝子型の組み合わせが、タイプ1以外の遺伝子型の組み合わせと比較して有意に高値を示した。この結果から、タイプ1の遺伝子型の組み合わせを有する被検者は、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0189】
[実施例34]
タイプ1の組み合わせの遺伝子型について、2019年測定の被験者のうち、肝線維化指標FIB-4インデックス値が1.3以上の高値を示す被験者297人についてクロス集計分析を行った。その結果を表40に示す。
【0190】
【表40】
【0191】
表40に示したように、タイプ1の遺伝子型の組み合わせである場合、肝線維化指標であるFIB-4インデックス値が高値の被験者のオッズ比が1.391、リスク比が1.123となった。この結果からも、rs7664573で特定されるSNP、rs1048329で特定されるSNP、及び、rs11944575で特定されるSNPを検出し、各遺伝子型がタイプ1である場合は、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0192】
[実施例35]
タイプ1の組み合わせの遺伝子型について、2019年測定の被験者のうち、肝硬度が5kPa以上の高値を示す被験者208人についてクロス集計分析を行った。その結果を表41に示す。
【0193】
【表41】
【0194】
表41に示したように、タイプ1の遺伝子型の組み合わせである場合、肝硬度が高値の被験者のオッズ比が1.403、リスク比が1.088となった。この結果からも、rs7664573で特定されるSNP、rs1048329で特定されるSNP、及び、rs11944575で特定されるSNPを検出し、各遺伝子型がタイプ1である場合は、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0195】
[実施例36]
タイプ2の組み合わせの遺伝子型について、FIB-4インデックス値、血小板値、肝硬度及び血中LDH濃度の平均値のt検定を行った。その結果を表42に示す。
【0196】
【表42】
【0197】
表42に示したように、肝線維化の指標であるFIB-4インデックス値は、タイプ2の遺伝子型の組み合わせである場合に、当該遺伝子型がタイプ2以外の組み合わせと比較して有意に高値を示した。また、肝硬度についても、タイプ2の遺伝子型の組み合わせが、タイプ2以外の遺伝子型の組み合わせと比較して有意に高値を示した。さらに、血中LDH濃度についても、タイプ2の遺伝子型の組み合わせが、タイプ2以外の遺伝子型の組み合わせと比較して有意に高値を示した。この結果から、タイプ2の遺伝子型の組み合わせを有する被検者は、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0198】
タイプ2の組み合わせの遺伝子型について、2019年測定の被験者のうち、肝線維化指標FIB-4インデックス値が1.3以上の高値を示す被験者299人についてクロス集計分析を行った。その結果を表43に示す。
【0199】
【表43】
【0200】
表43に示したように、タイプ2の遺伝子型の組み合わせである場合、肝線維化指標であるFIB-4インデックス値が高値の被験者のオッズ比が1.351、リスク比が1.123となった。この結果からも、rs7664573で特定されるSNP、rs1048329で特定されるSNP、及び、rs3797029で特定されるSNPを検出し、各遺伝子型がタイプ2である場合は、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0201】
[実施例37]
タイプ3の組み合わせの遺伝子型について、FIB-4インデックス値、血小板値、肝硬度及び血中LDH濃度の平均値のt検定を行った。その結果を表44に示す。
【0202】
【表44】
【0203】
表44に示したように、肝線維化の指標であるFIB-4インデックス値は、タイプ3の遺伝子型の組み合わせである場合に、当該遺伝子型がタイプ3以外の組み合わせと比較して有意に高値を示した。また、血小板数についても、タイプ3の遺伝子型の組み合わせが、タイプ3以外の遺伝子型の組み合わせと比較して有意に低値を示した。さらに、肝硬度及び血中LDH濃度についても、タイプ3の遺伝子型の組み合わせが、タイプ3以外の遺伝子型の組み合わせと比較して有意に高値を示した。この結果から、タイプ3の遺伝子型の組み合わせを有する被検者は、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0204】
[実施例38]
タイプ3の組み合わせの遺伝子型について、2019年測定の被験者のうち、肝硬度が5kPa以上の高値を示す被験者209人についてクロス集計分析を行った。その結果を表45に示す。
【0205】
【表45】
【0206】
表45に示したように、タイプ3の遺伝子型の組み合わせである場合、肝硬度が高値の被験者のオッズ比が1.418、リスク比が1.176となった。この結果からも、rs7664573で特定されるSNP、rs11944575で特定されるSNP、及び、rs3797029で特定されるSNPを検出し、各遺伝子型がタイプ3である場合は、肝線維化を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0207】
[実施例39]
タイプ4の組み合わせの遺伝子型について、FIB-4インデックス値、血小板値、肝硬度及びフィッシャー比の平均値のt検定を行った。その結果を表46に示す。ここで、フィッシャー比とは、分枝鎖アミノ酸(branched chain amino acid:BCAA;イソロイシン、ロイシン、バリン)と、芳香族アミノ酸(aromatic amino acid:AAA;チロシン、フェニルアラニン)のモル比(BCAA/AAA)をいう。健常人のフィッシャー比は、3~4でほぼ一定である。肝臓の機能が低下すると、肝臓のアミノ酸代謝異常が起こりチロシンやフェニルアラニンの血中への供給量が増え、筋肉や心臓において分枝鎖アミノ酸が分解されることから、フィッシャー比の値が低下する。
【0208】
【表46】
【0209】
表46に示したように、肝線維化の指標であるFIB-4インデックス値は、タイプ4の遺伝子型の組み合わせである場合に、当該遺伝子型がタイプ4以外の組み合わせと比較して有意に高値を示した。また、血小板数についても、タイプ4の遺伝子型の組み合わせが、タイプ4以外の遺伝子型の組み合わせと比較して有意に低値を示した。また、肝硬度についても、タイプ4の遺伝子型の組み合わせが、タイプ4以外の遺伝子型の組み合わせと比較して有意に高値を示した。さらにフィッシャー比についても、タイプ4の遺伝子型の組み合わせが、タイプ4以外の遺伝子型の組み合わせと比較して有意に低値を示した。この結果から、タイプ4の遺伝子型の組み合わせを有する被検者は、肝臓疾患を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0210】
[実施例40]
タイプ4の組み合わせの遺伝子型について、2019年測定の被験者のうち、肝硬度が5kPa以上の高値を示す被験者208人についてクロス集計分析を行った。その結果を表45に示す。
【0211】
【表47】
【0212】
表47に示したように、タイプ4の遺伝子型の組み合わせである場合、肝硬度が高値の被験者のオッズ比が1.498、リスク比が1.106となった。この結果からも、rs1048329で特定されるSNP、rs11944575で特定されるSNP、及び、rs3797029で特定されるSNPを検出し、各遺伝子型がタイプ4である場合は、肝臓疾患を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0213】
[実施例41]
タイプ5の組み合わせの遺伝子型について、FIB-4インデックス値、血小板値、肝硬度及びフィッシャー比の平均値のt検定を行った。その結果を表48に示す。
【0214】
【表48】
【0215】
表48に示したように、肝線維化の指標であるFIB-4インデックス値は、タイプ5の遺伝子型の組み合わせである場合に、当該遺伝子型がタイプ5以外の組み合わせと比較して有意に高値を示した。また、血小板数についても、タイプ5の遺伝子型の組み合わせが、タイプ5以外の遺伝子型の組み合わせと比較して有意に低値を示した。また、肝硬度についても、タイプ1の遺伝子型の組み合わせが、タイプ5以外の遺伝子型の組み合わせと比較して有意に高値を示した。さらに、フィッシャー比についても、タイプ5の遺伝子型の組み合わせが、タイプ5以外の遺伝子型の組み合わせと比較して有意に低値を示した。この結果から、タイプ5の遺伝子型の組み合わせを有する被検者は、肝臓疾患を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0216】
[実施例42]
タイプ5の組み合わせの遺伝子型について、2019年測定の被験者のうち、肝線維化指標FIB-4インデックス値が1.3以上の高値を示す被験者299人についてクロス集計分析を行った。その結果を表49に示す。
【0217】
【表49】
【0218】
表49に示したように、タイプ5の遺伝子型の組み合わせである場合、肝線維化指標であるFIB-4インデックス値が高値の被験者のオッズ比が1.358、リスク比が1.115となった。この結果からも、rs7664573で特定されるSNP、rs1048329で特定されるSNP、rs11944575で特定されるSNP、及び、rs3797029で特定されるSNPを検出し、各遺伝子型がタイプ5である場合は、肝臓疾患を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【0219】
[実施例43]
タイプ5の組み合わせの遺伝子型について、2019年測定の被験者のうち、肝硬度が5kPa以上の高値を示す被験者208人についてクロス集計分析を行った。その結果を表50に示す。
【0220】
【表50】
【0221】
表50に示したように、タイプ5の遺伝子型の組み合わせである場合、肝硬度が高値の被験者のオッズ比が1.461、リスク比が1.100となった。この結果からも、rs7664573で特定されるSNP、rs1048329で特定されるSNP、rs11944575で特定されるSNP、及び、rs3797029で特定されるSNPを検出し、各遺伝子型がタイプ5である場合は、肝臓疾患を発症するリスクが高いと評価することができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0222】
本発明により、肝臓疾患の発症リスクの検出方法、及び肝臓疾患の発症リスク検出用キットを提供することができる。
【要約】
【課題】肝臓疾患の発症リスクの検出方法、及び肝臓疾患の発症リスク検出用キットを提供する。
【解決手段】被験者の検体中のリポ蛋白受容体関連タンパク質2結合タンパク質(LRP2BP)遺伝子における一塩基多型を検出することを含む、肝臓疾患の発症リスクの検出方法、及び、被験者の検体中のリポ蛋白受容体関連タンパク質2結合タンパク質(LRP2BP)遺伝子における一塩基多型を検出する核酸を含む、肝臓疾患の発症リスク検出用キット。
【選択図】なし
【配列表】
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