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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】ネジ部材
(51)【国際特許分類】
   F16B 31/02 20060101AFI20220708BHJP
   E04B 1/41 20060101ALI20220708BHJP
   F16B 1/00 20060101ALI20220708BHJP
   F16B 39/02 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
F16B31/02 H
E04B1/41 503A
F16B1/00 A
F16B39/02 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018120886
(22)【出願日】2018-06-26
(65)【公開番号】P2020002971
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】505216391
【氏名又は名称】酒井工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591116885
【氏名又は名称】ジャパンライフ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】仲辻 浩一
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-056571(JP,A)
【文献】実開昭49-104549(JP,U)
【文献】実開昭51-107566(JP,U)
【文献】実開昭51-103162(JP,U)
【文献】特開2013-076434(JP,A)
【文献】特開2013-177962(JP,A)
【文献】実開昭60-049322(JP,U)
【文献】特開平06-015581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 31/02
E04B 1/41
F16B 1/00
F16B 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸状を成す本体軸部材(15)の軸方向先端側に設けられコンクリート等の固定対象母材(C)のアンカー孔(B)内に差し入れられる本体雄ネジ部(13)と、
前記本体軸部材(15)の軸方向後端側に設けられる後端雄ネジ部(12)と、
前記本体軸部材(15)とは別部材からなるトルク管理部材(20)と、
前記本体軸部材(15)に設けられ前記トルク管理部材(20)を着脱可能に接続するトルク管理部材接続部(11)と、
を備え、
前記トルク管理部材(20)は、
前記本体軸部材(15)の軸方向後端から突出する係合軸部(17)に接続可能な係合孔(27)を備え、前記係合孔(27)が前記係合軸部(17)に接続された状態で前記本体軸部材(15)に対して軸回り相対回転不能となる第一部材(21)と、
前記本体雄ネジ部(13)の前記固定対象母材(C)への定着強度を管理するための管理用トルクが入力可能な第二部材(22)と、
前記第一部材(21)と前記第二部材(22)との間に設けられ所定の前記管理用トルクの入力で前記第一部材(21)と前記第二部材(22)とを破断する管理用破断部(23)と、を備え、
前記第二部材(22)の外径は前記第一部材(21)の前記係合孔(27)を備える部分における外径よりも小さく設定されているネジ部材ユニット。
【請求項2】
前記アンカー孔(B)内のネジ溝(D)に前記本体雄ネジ部(13)のネジ山部(13a)が入り込み、前記ネジ溝(D)の内面と前記ネジ山部(13a)の外面との間に結合剤(A)を介在して前記本体雄ネジ部(13)が固定対象母材(C)に定着し、 前記本体雄ネジ部(13)固定対象母材(C)に定着後、前記第二部材(22)に前記管理用トルクを入力してその定着強度を評価する請求項1に記載のネジ部材ユニット。
【請求項3】
前記係合軸部(17)は断面非円形であり、前記係合軸部(17)が前記係合孔(27)に嵌合することで、前記トルク管理部材(20)は前記本体軸部材(15)に接続される請求項1又は2に記載のネジ部材ユニット。
【請求項4】
前記係合軸部(17)はねじ軸であり、前記係合軸部(17)が前記係合孔(27)にねじ込み係合することで、前記トルク管理部材(20)は前記本体軸部材(15)に接続される請求項1又は2に記載のネジ部材ユニット。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一つに記載のネジ部材ユニットを用いたネジ部材の固定構造において、
前記本体雄ネジ部(13)は、前記固定対象母材(C)に形成されるアンカー孔(B)内に差し入れられ、
前記本体雄ネジ部(13)の螺旋状のネジ山部(13a)によって前記アンカー孔(B)の内面に形成された螺旋状のネジ溝(D)に前記ネジ山部(13a)が入り込み、且つ、前記本体雄ネジ部(13)の外面と前記アンカー孔(B)の内面との間に結合剤(A)が介在して、前記本体雄ネジ部(13)が前記固定対象母材(C)に固定されている
ネジ部材の固定構造。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一つに記載のネジ部材ユニットのトルク管理部材(20)であって、前記本体軸部材(15)に接続された状態で前記本体軸部材(15)に対して軸回り相対回転不能となる第一部材(21)と、
前記本体軸部材(15)の前記固定対象母材(C)への定着強度を管理するための管理用トルクが入力可能な第二部材(22)と、
前記第一部材(21)と前記第二部材(2)との間に設けられ所定の前記管理用トルクの入力で前記第一部材(21)と前記第二部材(22)とを破断する管理用破断部(23)と、
を備えるトルク管理部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリート構造物等の躯体に固定されるネジ部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種構造物や建築物等の柱、梁、天井、基礎等の躯体に対し、内装材や補強材、その他各種機材等の被固着物を固定するために、ボルトやスクリューネジ等の各種ネジ部材が用いられる。
【0003】
このネジ部材は、コンクリートが硬化する際に躯体に埋め込み固定される場合もあるが、既に硬化しているコンクリートや既設のコンクリートの躯体、あるいは岩盤や石材等の固定対象母材に対して後から施工するものは、特に、あと施工アンカーと呼ばれている。
【0004】
あと施工アンカーにおいては、まず、固定対象母材となるコンクリート等の躯体にドリル等の穿孔具を用いてアンカー孔をあけ、そのアンカー孔内に、接着剤等の結合剤を介してネジ部材を固定するケミカル式アンカーと呼ばれるタイプがある。また、アンカー孔内でネジ部材の一部が拡径して、アンカー孔の内面に対して抜け止め機能を発揮する拡径式(打ち込み式)アンカーと呼ばれるタイプもある(例えば、特許文献1,2参照)。
【0005】
このネジ部材の定着強度は、固定対象母材からのネジ部材の軸方向への引き抜き強度でもって確認されるのが一般的である。ネジ部材の引き抜き強度の測定は、通常、油圧式の荷重負荷装置(センターホールジャッキ等)を用いて行われ、ネジ部材が、引き抜き方向への所定の負荷に耐え得る定着強度を有しているかどうかで判定される。
【0006】
しかし、この引き抜き試験を行うための荷重負荷装置のセットは非常に煩雑で時間や手間がかかり、また、荷重負荷装置は非常に重いので重労働でもある。特に、トンネル内壁や天井への施工時のように、上向き姿勢での作業となる場合、荷重負荷装置を扱うのはさらに大変で時間のかかる作業となる。このため、多数のネジ部材に対して引き抜き試験を実施することは、作業工程や作業コストへの影響が大きい。この点は、アンカー孔内でネジ部材の一部が拡径する拡径式アンカーの場合も同様である。また、一般的に、ネジ部材の固定構造として、いま以上に定着強度と耐久性を高めたいという要請もある。
【0007】
なお、特許文献3では、ネジ部材の本体軸部の外周に形成された螺旋状のネジ山によって、アンカー孔の内面を削って螺旋状のネジ溝が形成されるようにし、ネジ溝とネジ山との係合とともに、ネジ部材とアンカー孔との間に結合剤を介在させることで、固定対象母材へのネジ部材の定着強度と耐久性をより高めている。また、ネジ部材の本体軸部の後端に、所定の回転トルクで破断するピンテール部を備えたことにより、固定対象母材への定着強度の管理を容易にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平8-226427号公報
【文献】特開2001-89716号公報(第6頁段落0045~0047等)
【文献】特開2016-56571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献3の技術によれば、定着強度の管理を行うためには、ネジ部材の本体軸部の後端にピンテール部を備える必要がある。しかし、本体軸部の後端に一体物のピンテール部を備えることにより、ネジ部材の構造が複雑化するという問題がある。このような問題は、ケミカル式アンカーのみならず、拡径式アンカーにおいても同様である。
また、アンカーを施工後、一定期間毎に、そのアンカーの定着強度を測定(管理)して、そのアンカーによる内装材や補強材等の被固着物の固定強度を測定することも必要である。固定強度が劣化すると、アンカーによって躯体に固定された被固着物が落下する等の事故が生じるからである。
しかし、従来では、前記引き抜き試験以外にはそのようなアンカーの定着強度の測定はなされておらず、主に、打診(打音検査)か目視によっていた。この打診等は、熟練が必要であり、また、正確性に欠ける。
さらに、本体軸部と一体物のピンテール部は、一度、定着強度評価を行うと、本体軸部から切り離されるから、再度の定着強度評価を行うことができない。
【0010】
そこで、この発明は、コンクリート構造物等の躯体に固定されたネジ部材に関し、ネジ部材の構造を複雑化することなく、定着強度の管理を行うことができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、この発明は、軸状を成す本体軸部材の軸方向先端側に設けられコンクリート等の固定対象母材内に差し入れられる本体雄ネジ部と、前記本体軸部材の軸方向後端側に設けられる後端雄ネジ部と、前記本体軸部材とは別部材からなるトルク管理部材と、前記本体軸部材に設けられ前記トルク管理部材を着脱可能に接続するトルク管理部材接続部とを備え、前記トルク管理部材は、前記本体軸部材に接続された状態で前記本体軸部材に対して軸回り相対回転不能となる第一部材と、前記本体雄ネジ部の前記固定対象母材への定着強度を管理するための管理用トルクが入力可能な第二部材と、前記第一部材と前記第二部材との間に設けられ所定の前記管理用トルクの入力で前記第一部材と前記第二部材とを破断する管理用破断部とを備えるネジ部材ユニットを採用した。
【0012】
その定着強度の評価は、被固着物の固定時のみならず、トルク管理部材を取り替えることによって幾度も行うことができるため、定期的に行うことができる。その定期は、1年、2年・・5年、10年等と経験則によって適宜に設定する。
しかし、この構成のネジ部材の定着強度管理は、前記被固着物の固定時の所定の定着強度を付与する場合にも使用できる。すなわち、被固着物を固定後又はその前の本体軸部材に付、前記トルク管理部材を本体軸部材に第一部材を介し接続して第二部材を介して管理トルクを本体軸部材に入力し、トルク管理用破断部で第一部材と第二部材とが破断すれば、本体軸部材は、固定対象母材に管理トルク以上のトルクに耐え得る定着強度で固定されていることとなるからである。
【0013】
なお、前記トルク管理部材を第一部材を介し本体軸部材に接続するのは、初期の定着強度を測定した後に、すぐに、トルク管理部材を本体軸部材に接続しておき、その後の定着強度の測定時はその既設のトルク管理部材によって定着強度測定をしても良く、一方、各定着強度測定時毎に、トルク管理部材を本体軸部材に接続してその測定を行っても良い。
【0014】
前記トルク管理部材接続部は、回転トルクが伝達可能であれば、種々の任意の構成を採用すれば良いが、例えば、前記本体軸部材の軸方向後端に開口して軸方向先端側へ伸びる接続孔を備える構成を採用したり、その接続孔の内面に雌ネジ部を備え、第一部材は雌ネジ部に係合する雄ネジ部を備える構成を採用したりすることができる。
すなわち、前記接続孔は断面非円形であり、前記第一部材は前記接続孔の内面に係合して前記本体軸部材に対して軸回り相対回転不能となる断面形状である構成を採用することができる。また、前記接続孔の内面に雌ネジ部を備え、前記第一部材は前記雌ネジ部に係合する雄ネジ部を備える構成を採用することができる。
【0015】
これらの各態様において、前記管理用破断部は、前記接続孔の外に配置される構成を採用することができる。このようにすれば、破断後(第一部材と第二部材の切断後)、接続孔から破断部の少なくとも一部は本体軸部材後端から突出することとなるため、その突出部を掴んで、第一部材を接続孔から容易に取り出し得るからである。第一部材が取り出されれば、接続孔にトルク管理部材を再度入れることができ、そのトルク管理部材による、本体軸部材の固定対象母材への定着強度評価を行うことができる。
【0016】
前記本体軸部材後端とトルク管理部材との接続構造の他例としては、トルク管理部材接続部は、本体軸部材の軸方向後端から突出する係合軸部を備え、トルク管理部材は係合軸部に着脱可能である構成を採用することができる。その係合軸部の断面形状は、回転トルクが伝達できれば、何れでも良く、例えば、多角形、楕円形等の断面非円形とし、前記第一部材はその係合軸部外面に係合する断面形状の凹部(係合孔)を有するものとする。
また、前記係合軸部はねじ軸とすることができ、この場合、第一部材は前記ねじ軸にねじ込み係合し得る凹部(係合孔)を有するものとする。ねじ軸のねじ締め方向は、左右のいずれでも良いが、本体軸部材のねじ部のねじ方向と逆が好ましい。例えば、本体軸部材のねじ部が右ねじであれば、ねじ軸は左ねじとする。このように逆ねじとすると、トルク管理は、本体軸部材が引き抜かれる方向のねじ回りの定着強度の評価となるからである。
【0017】
以上の各構成において、各定着強度を測定(評価)した後、トルク管理部材の第一部材が本体軸部材後端に残った場合、適宜な手段によって、その第1部材を本体軸部材後端から取り外しても良いが、支障がなければ、そのままにしても良い。いずれにしても、本体軸部材後端には、キャップを設けて本体軸部材後端の腐食等を防止することが好ましい。このキャップを嵌めると、管理用破断部や接続孔等に雨水等の侵入を阻止し得て防錆となり、その後の本体軸部材の固定対象母材への定着強度評価時、キャップを外して前記本体軸部材後端とトルク管理部材との接続が容易に行い得る。
【0018】
これらの各態様からなるネジ部材ユニットを用いたネジ部材の固定構造として、以下の構成を採用することができる。すなわち、前記本体雄ネジ部は、前記固定対象母材に形成されるアンカー孔内に差し入れられ、前記本体雄ネジ部の螺旋状のネジ山部によって前記アンカー孔の内面に形成された螺旋状のネジ溝に前記ネジ山部が入り込み、且つ、前記ネジ部材の外面と前記アンカー孔の内面との間に結合剤が介在して、前記ネジ部材が前記固定対象母材に固定されているネジ部材の固定構造である。
【発明の効果】
【0019】
この発明は、コンクリート構造物等の躯体に固定されるネジ部材に関し、ネジ部材の構造を複雑化することなく、定着強度の管理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明の一実施形態を示し、(a)は断面図、(b)は(a)の要部拡大図
図2】同実施形態を示し、(a)は本体軸部材の平面図、(b)は本体軸部材の正面図、(c)は本体軸部材の底面図、(d)はトルク管理部材の正面図、(e)はトルク管理部材の斜視図
図3】(a)~(f)は、本体軸部材を固定対象母材に固定するまでの施工方法を示す断面図
図4】他の実施形態を示し、(a)は本体軸部材の平面図、(b)は本体軸部材の正面図、(c)は本体軸部材の底面図、(d)はトルク管理部材の正面図、(e)はトルク管理部材の斜視図
図5】他の実施形態を示し、(a)は本体軸部材の平面図、(b)は本体軸部材の正面図、(c)は本体軸部材の底面図、(d)はトルク管理部材の正面図
図6】さらに他の実施形態を示し、(a)は本体軸部材の平面図、(b)は本体軸部材の正面図、(c)は本体軸部材の底面図、(d)はトルク管理部材の正面図
図7】さらに他の実施形態を示し、(a)は本体軸部材の平面図、(b)は本体軸部材の正面図、(c)は本体軸部材の底面図、(d)はトルク管理部材の正面図
図8】さらに他の実施形態を示し、(a)は本体軸部材の平面図、(b)は本体軸部材の正面図、(c)は本体軸部材の底面図、(d)はトルク管理部材の正面図
図9】さらに他の実施形態を示す断面図
図10】さらに他の実施形態の作用を示す断面図
図11】さらに他の実施形態の正面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の実施形態を、以下、図面に基づいて説明する。この実施形態は、固定対象母材となるコンクリート等の躯体(以下、「固定対象母材C」と称する。)に、ドリル等の穿孔具を用いてアンカー孔Bをあけ、そのアンカー孔Bに軸状のネジ部材である本体軸部材15を差し入れて固定する「あと施工アンカー」、特に、本体軸部材15とアンカー孔Bの内面との間に接着剤等の結合剤Aを介在させるケミカル式アンカーの固定構造、固定方法、及び定着強度管理方法に関するものである。
【0022】
この実施形態に用いられる本体軸部材15及びトルク管理部材20からなるネジ部材ユニット10を、図1及び図2に示す。図3は、ネジ部材ユニット10の施工方法を示す。
【0023】
この実施形態のネジ部材ユニット10を構成する本体軸部材15は、固定対象母材Cのアンカー孔B内に入り込む先端側から後端側に向かって順に、本体雄ネジ部13、後端雄ネジ部12を備えるスクリューネジ(ネジ部材)である。
【0024】
本体雄ネジ部13は、相対的にネジ山の高さが高いネジ山部13a(以下、「第一のネジ山部13a」と称する。)と、相対的にネジ山の高さが低い第二のネジ山部13c(以下、「第二のネジ山部13c」と称する。)とを交互に備える二条ネジである。すなわち、ネジ山を構成する螺旋部が二組あり、ネジ部材ユニット10が軸周り一回転する間に、軸方向に沿って高低合わせて二つ分のネジ山の距離だけ進む形状である。
【0025】
第一のネジ山部13aと第二のネジ山部13cとの間の谷部13bの底面は、図1(b)に示すように、軸方向に沿って断面円弧状に形成されている。第一のネジ山部13aのピッチは、第二のネジ山部13cと同じに設定されている。
【0026】
本体雄ネジ部13の先端側は、ネジ部材ユニット10の先端部14である。先端部14は、先細りの円錐台状となっている。先端部14の側面14aは、先端に向かうにつれて徐々に細くなる円錐面であり、先端部14の端面14bは、軸方向に直交する面方向を有するフラット面である。この先端部14の形状は変更することができ、例えば、円筒状、円錐状、角筒状、角錐台状、角錐状などとしてもよい。
【0027】
後端雄ネジ部12は、雄ネジからなるネジ山部12aを備えている。このネジ山部12aに固定用のナット(図示せず)をネジ込むことにより、その固定用のナットと固定対象母材Cの表面との間、または、後端雄ネジ部12に直接、各種の被固定物(図示せず)を固定することができる。後端雄ネジ部12は所定の荷重を受けることができる構造であればよく、雄ネジに限定されず、雌ネジ孔を設けたり、断面六角形、断面円形の頭部を有する軸部などであったり、他の構造であってもよい。
【0028】
本体軸部材15は全体が炭素鋼からなり、特に、本体雄ネジ部13では焼き入れを施している。本体軸部材15の素材は炭素鋼には限定されず、ステンレス鋼や他の素材からなる金属を採用することもできる。トルク管理部材20についても、その素材は、本体軸部材15と同様とできる。
【0029】
ただし、本体雄ネジ部13のネジ山部には、固定対象母材Cのアンカー孔B内面に食い込むセルフタッピング機能が要求される。このため、少なくとも、そのセルフタッピング機能が要求されるネジ山部(この実施形態では、相対的にネジ山の高さが高いネジ山部である第一のネジ山部13aが該当)の素材は、固定対象母材Cよりも相対的に硬い素材とすることが望ましい。
【0030】
セルフタッピング機能によりアンカー孔Bの内面に形成されたネジ溝Dに、本体雄ネジ部13のネジ山部が入り込み、本体雄ネジ部13とネジ溝Dとが互いに係合する。また、本体雄ネジ部13の外面とアンカー孔Bの内面との間に、接着剤等の結合剤Aを介在させ、結合剤Aが硬化することにより、本体雄ネジ部13が固定対象母材Cに定着し、本体軸部材15が固定対象母材Cに固定される。
【0031】
本体軸部材15の本体雄ネジ部13が固定対象母材Cに定着しているかどうかは、被固定物を固定する前に、本体軸部材15の軸方向後端側に、本体軸部材15とは別部材からなるトルク管理部材20を接続して確認する。
【0032】
トルク管理部材20は、本体軸部材15に設けられるトルク管理部材接続部11によって、本体軸部材15に着脱可能に接続できる。この実施形態では、トルク管理部材接続部11は、断面六角形の接続孔11aであり、その接続孔11aへのトルク管理部材20の軸方向への抜き挿しによって着脱が可能である。
【0033】
トルク管理部材20は、図2(d)(e)に示すように、本体軸部材15に接続される第一部材21と、本体雄ネジ部13の固定対象母材Cへの定着強度を管理するための管理用トルクが入力可能な第二部材22と、第一部材21と第二部材22との間に設けられ、所定の前記管理用トルクの入力で第一部材21と第二部材22との間を破断して互いに分離させる管理用破断部23とを備えた一体物である。
【0034】
この実施形態では、第一部材21は接続孔11aにぴったりと嵌る断面六角形を成し、第二部材22も同一の大きさ、形状からなる断面六角形である。第二部材22は、トルクレンチ、インパクトレンチ等のトルク付与手段の接続ツール(ホルダー、ソケット等)がぴったりと嵌るようになっている。第二部材22は第一部材21と同一断面形状でなくても良い。また、破断部23は断面円形を示したが、多角形とすることもできる。
【0035】
なお、図2に示す、本体軸部材15の長さ:L1、後端雄ネジ部12の長さ:L2、本体雄ネジ部13の長さ:L3、先端部14の長さ:L4、接続孔11aの長さ(深さ):L5、後端雄ネジ部12と本体雄ネジ部13の間隙:L6、ネジ山部(第一のネジ山部)13aの径:r1、ネジ山部(第二のネジ山部)13cの径:r2、谷部13bの径:r3、トルク管理部材(ピン)20の長さ:b1、トルク管理部材(ピン)20の幅寸法:t、トルク管理部材(ピン)20の第1部材の長さ:b2、同第2部材22の長さ:b3、破断部23の長さ:b4、同径:r等は、固定対象母材Cの性状、本体軸部材15の材質、被固着物の重さ等によって、経験則によって適宜に設定すれば良い。
例えば、固定対象母材Cがコンクリート、被固着物が天井板等の重い物、本体軸部材15がSCM425(クロムモリブデン鋼)の場合、L1=160mm、L2=55mm、L3=100mm、L4=4.5mm、L5=10mm、L6=0.5mm、t、r=9mm、b1=32mm、b2、b3=15mm、b4=2mm、後端雄ネジ部12=M16等とすることができる。
【0036】
本体軸部材15を固定対象母材Cのアンカー孔B内に固定する際の施工方法、及び、その施工によるネジ部材の固定構造を図3(a)~(f)に示す。この実施形態のネジ部材の固定構造は、固定対象母材Cに形成されるアンカー孔Bと、前述のネジ部材ユニット10(本体軸部材15)と、ネジ部材ユニット10とアンカー孔Bの内面との間に介在する結合剤Aとを備えた構造である。
【0037】
図3(a)に示すように、固定対象母材Cにアンカー孔Bが穿孔され、アンカー孔B内はブラシbの上下動・回転による摺動や空気を吹き込む等によって清掃された後(同図(b))、その孔B内に結合剤Aが注入される(同図(c))。その後、図3(d)に示すように、結合剤Aの注入されたアンカー孔B内に本体軸部材15の本体雄ネジ部13がねじ込まれ、本体雄ネジ部13の螺旋状のネジ山部のセルフタッピング機能により、アンカー孔Bの内面を削り螺旋状のネジ溝Dが形成される。
【0038】
なお、本体雄ネジ部13を固定対象母材Cにねじ込む際には、図3(d)に示すように、後端雄ネジ部12に締め付け用のナット16をねじ込み、この締め付け用のナット16にトルク付与手段の接続ツールを嵌めて、ねじ込み用の回転トルクを付与する。ここで、本体雄ネジ部13の雄ネジの方向と、後端雄ネジ部12の雄ネジの方向は同方向(この実施形態では右ネジ)であるので、ねじ込み用の回転トルク(右回り回転トルク)を付与することで、締め付け用のナット16が後端雄ネジ部12から緩むことはない。
【0039】
螺旋状のネジ溝Dは、そのネジ溝Dの内面と本体雄ネジ部13のネジ山部の外面との間に、微小な隙間を介在する箇所がある状態に形成される。すなわち、セルフタッピングの過程で、本体雄ネジ部13の軸周り回転とともに、ネジ溝Dの断面がネジ山部の断面よりもやや大きくなるように形成される。図1(b)では、ネジ溝Dの断面が等脚台形状に、ネジ山部13aの断面が三角形状になっている。第一のネジ山部13aの頂部と、それに対向する台形状のネジ溝Dの底面との間は、当接状態あるいはやや隙間をもって対向している状態である。また、第一のネジ山部13aのフランクと、それに対向する台形状のネジ溝Dの斜面との間も、隙間をもって対向している状態である。
【0040】
このネジ溝Dに本体雄ネジ部13のネジ山部が入り込み、ネジ溝Dの内面と本体雄ネジ部13のネジ山部13aの外面との間の空間には、結合剤Aが介在している。また、ネジ溝Dとネジ山部13a以外の箇所にも、本体軸部材15の外面とアンカー孔Bの内面との間に、結合剤Aが介在している。
【0041】
この実施形態では、第一のネジ山部13aのネジ山の高さ、アンカー孔Bの内径dに対して、そのネジ山のネジ溝Dへの入り込み深さをhとしている(図1(b)参照)。このネジ山の高さや内径に対する深さhの比率は、求められる固定対象母材Cの種別や求められる定着強度等によって適宜決定される。
【0042】
このように、本体軸部材15の本体雄ネジ部13をアンカー孔Bにネジ込むことにより(図3(d)の矢印x参照)、本体雄ネジ部13の螺旋状のネジ山部13aをアンカー孔Bの内面に食い込ませ、セルフタッピング機能によりアンカー孔Bの内面を削り、その内面に螺旋状のネジ溝Dを形成する。このとき、ネジ山部13aは、ネジ溝Dに入り込んだ状態となる。また、同時に、本体軸部材15の外面とアンカー孔Bの内面との間の空間に結合剤Aを行き渡らせる。
【0043】
結合剤Aによる本体軸部材15と固定対象母材Cとの接着力と、ネジ山部13aのアンカー孔B内面への食い込みによる本体軸部材15と固定対象母材Cとの摩擦力とが合わせて作用することとなり、固定対象母材Cへの本体軸部材15の定着強度と耐久性をより高めることができる。
【0044】
ここで、本体雄ネジ部13をネジ山の高さが異なる二つのネジ山部を有する二条ネジとすることで、結合剤Aの円滑な充填に効果を発揮している。すなわち、高い方のネジ山部13aで、アンカー孔Bの内面にネジ溝Dを形成するセルフタッピング機能を発揮し、低い方のネジ山部13cによって本体軸部材15の外面とアンカー孔Bの内面との間の空間全体に結合剤Aを行き渡らせる結合剤送り出し機能を発揮して、結合剤Aが円滑に充填される。
【0045】
結合剤Aとしては、固化後に所定の強度、耐久性を発揮できる素材であれば自由に採用できる。例えば、未硬化の樹脂とその樹脂を硬化させる作用を持つ硬化剤等とを用いた二液混合型の有機系固着剤や、未硬化のセメント系材料とそのセメント系材料の硬化を促進させる作用を持つ硬化促進剤等とを用いた二液混合型の無機系固着剤を用いることができる。あるいは、コンクリート等の石材や金属材料に対応する周知の接着剤を用いることもできる。
【0046】
実施形態では、結合剤Aとして、二液混合型の有機系固着剤を使用している。固定対象母材Cにアンカー孔Bを穿孔した後、本体軸部材15の本体雄ネジ部13をアンカー孔Bにネジ込む前に、二液を混合させた状態の固着剤をアンカー孔B内に注入しておく。あるいは、本体軸部材15をアンカー孔Bにある程度ねじ込んだ後に、固着剤を注入してもよい。
【0047】
また、結合剤Aは、ガラスや樹脂製のカプセルに封入されたものを使用することもできる。カプセル(図示せず)を予めアンカー孔B内に挿入しておき、その状態で本体軸部材15をネジ込むことにより、先端部14でカプセルを破壊して、内部の結合剤Aを、本体軸部材15の外面とアンカー孔Bの内面との間に充填させる。結合剤Aが硬化すると、本体軸部材15はアンカー孔B内に不動に固定され、図3(d)の状態となる。
【0048】
ここで、先端部14の形状が上述のように先細りであれば、アンカー孔B内に本体軸部材15をネジ込む際の抵抗が減少するとともに、特に、結合剤Aとしてカプセルに封入されたものを用いる際には、カプセルの破壊が円滑である。
【0049】
図3(d)に示すように、本体軸部材15が固定対象母材Cに固定された状態で、後端雄ネジ部12は、固定対象母材Cの表面から外側に突出した状態である。後端雄ネジ部12のネジ山部12aが突出しているので、本体雄ネジ部13が固定対象母材Cに定着した後は、この後端雄ネジ部12のネジ山部12aに固定用のナットをねじ込んで、前述のように、被固定物を固定することができる。なお、締め付け用のナット16は、被固定物を固定する前の適宜の時期に緩めて後端雄ネジ部12から取り外しておいてよく、その締め付け用のナット16を固定用ナットとすることができる。
【0050】
本体雄ネジ部13が固定対象母材Cに所要の強度で定着しているかどうかは、被固定物を固定する前に、図3(e),同(f)に示すように、本体軸部材15とは別部材からなるトルク管理部材20を接続して確認する。
【0051】
すなわち、本体軸部材15の固定対象母材Cに対する定着強度を評価するネジ部材の定着強度管理方法として、まず、本体軸部材15の本体雄ネジ部13を固定対象母材Cへ定着させた後、本体軸部材15のトルク管理部材接続部11にトルク管理部材20を接続する(図3(e)の矢印y参照)。トルク管理部材20の第二部材22に管理用トルクを入力する(図3(f)の矢印z参照)。
【0052】
管理用トルクの入力は、第二部材22にトルク付与手段の接続ツールを嵌めて、第二部材22に軸回りの管理用トルクを付与することで行うことができる。管理用トルクZは、本体雄ネジ部13が固定対象母材Cから緩む方向、すなわち、締め付け用のトルクZとは軸回り逆方向である。
【0053】
第一部材21と第二部材22との間には、やや小径rの首部となっている管理用破断部23が設けられている。このため、本体雄ネジ部13が固定対象母材Cに定着し固定された後、第二部材22に所定の管理用トルクが加われば、その管理用破断部23で第一部材21と第二部材22との間が破断する(切り離される)ようになっている(図3(f))。このため、固定対象母材Cに対して本体軸部材15が回転することなく、管理用破断部23で破断すれば、本体軸部材15の固定対象母材Cへの定着強度が適正であり、管理用破断部23で破断せず本体軸部材15が緩む方向へ軸回り回転すれば、定着強度は適正でないと評価することができる。なお、この定着強度管理の検査は、前述のような電動等によるトルク付与手段の工具を用いて行ってもよいし、手動のトルクレンチ等からなるトルク付与手段の工具を用いて手作業で行ってもよい。
【0054】
このように、本体軸部材15の固定対象母材Cへの定着強度を評価・管理するために、本体軸部材15とは別部材からなるトルク管理部材20を採用したので、本体軸部材15を構成するネジ部材の構造を複雑化することなく、定着強度の管理を容易に行うことができる
この定着強度の評価後、一定期間、例えば、数ヶ月後、又は数年後、本体軸部材15のトルク管理部材接続部11にトルク管理部材20を接続して同様な作用によって、本体軸部材15の定着強度の評価を行うことができる。以後、一定期間毎、又は随時に定着強度評価を行う。
【0055】
なお、このトルク管理部材20によって、ネジ部材の初期の定着強度を付与するようにすることもできる。すなわち、本体軸部材15の本体雄ネジ部13をアンカー孔Bにネジ込む際、トルク管理部材20を本体軸部材15に接続し、そのトルク管理部材20の第二部材22でもって本体軸部材15を回転させてもよい。このとき、トルク管理部材20の軸回りの回転方向は本体軸部材15のねじ込み方向とし、管理用破断部23が破断すれば、所要の強度で定着(固定)されたこととなる。
【0056】
この実施形態では、トルク管理部材接続部11は、本体軸部材15の軸方向後端に開口して軸方向先端側へ伸びる断面六角形の接続孔11aとしたが、トルク管理部材接続部11として、他の形態を採用することができる。
【0057】
例えば、図4に示す例では、接続孔11aは断面四角形となっており、第一部材21は接続孔11aにぴったりと嵌る断面四角形を成している。なお、第一部材21と第二部材22とは必ずしも同一の大きさ、形状からなる断面である必要はないが、この例では、第二部材22も第一部材21と同一の大きさ、形状からなる断面四角形である。第二部材22は、トルクレンチ、インパクトレンチ等のトルク付与手段の接続ツールがぴったりと嵌る断面になっている点は同様である。
【0058】
接続孔11aは正六角形や正四角形の断面形状に限らず、四角形や五角形等の各種の多角形や楕円形等のツール(工具)を嵌めて回転し得る形状であれば、任意である。すなわち、断面非円形であり、第一部材21は接続孔11aにぴったりと嵌る断面形状であるか、あるいは、ぴったりと嵌らなくとも、接続孔11aの内面に係合して本体軸部材15に対して軸回り相対回転不能となる断面形状であれば、トルク管理部材20による定着強度の管理を行うことができる。
【0059】
また、仮に、接続孔11aが断面円形であり、且つ、第一部材21が接続孔11aにぴったりと嵌る断面円形である場合、あるいは、第一部材21が接続孔11aの内面に係合しない断面形状である場合であっても、その接続孔11a内に第一部材21が入り込んだ状態で、本体軸部材15の外周面から接続孔11a内に入り込むように差し込まれたピン等の回り止め手段によって、第一部材21と本体軸部材15とが相対回転不能とできれば、トルク管理部材20による定着強度の管理を行うことができる。
【0060】
また、例えば、図5に示す例では、接続孔11aの内面に接続用雌ネジ部11bを備え、第一部材21は、接続用雌ネジ部11bに係合する接続用雄ネジ部24を備えた構成となっている。また、第二部材22は、ボルトの頭部25を構成している。接続用雌ネジ部11b及び接続用雄ネジ部24は、本体雄ネジ部13や後端雄ネジ部12の雄ネジの方向と逆方向(この実施形態では左ネジ)であるので、管理用トルク(左回り回転トルク)を付与することで、トルク管理部材20が本体軸部材15から緩んで外れることはない。第一部材21と第二部材22との間に設けられる管理用破断部23の構成は、前述の例と同様である。なお、この実施形態の本体軸部材15はアンカー孔Bにねじ込む際、後端雄ネジ部12に締め付け用のナット16をねじ込んでそのナット16を介したねじ込みを行ったり、後端雄ネジ部12にボルト頭部25のナット形状の部分を形成してその部分でもってねじ込みを行うようにしたりする(図11符号31参照)。
また、接続孔11aはその内面をスプライン構造とし、第一部材21はそのスプライン孔に嵌るスプライン軸状とすることもできる(図8参照)。
【0061】
これらの実施形態では、トルク管理部材20の第一部材21を、本体軸部材15の軸方向後端に設けた接続孔11a内に嵌めて接続するようにし、その接続孔11aをトルク管理部材接続部11としたが、トルク管理部材接続部11としては他の形態も考えられる。
【0062】
例えば、本体軸部材15の軸方向後端の外周面を楕円形等の断面非円形のトルク管理部材接続部11として、トルク管理部材20の第一部材21に、その断面非円形を成すトルク管理部材接続部11の外周面にぴったりと嵌る、あるいは、管理用トルクを伝達可能な断面形状の孔を設けてもよい。
例えば、図6に示すように、後端雄ネジ部12の後端から突出する正六角柱状係合軸部17を設け、トルク管理部材20の第一部材21は、その係合軸部17が嵌り込む係合孔27を有するものとすることができる。係合軸部17は、正六角形に限らず、四角形や五角形等の各種の多角形や楕円形等のツール(工具)を嵌めて回転し得る形状であれば、任意である。このとき、係合孔27もその係合軸部17が嵌る形状、例えば四角形孔等とし得ることは勿論である。
【0063】
また、図7に示すように、本体軸部材15の軸方向後端の外周面に、本体雄ネジ部13や後端雄ネジ部12の雄ネジの方向とは逆方向の接続用雄ネジ部17aを設けて、トルク管理部材20の第一部材21に、その接続用雄ネジ部17aにねじ合う接続用雌ネジ部(係合孔)27aを設けた構成としてもよい。この実施形態は、アンカー孔Bにねじ込む際、後端雄ネジ部12に締め付け用のナット16をねじ込んでそのナット16を介したねじ込みを行ったり、後端雄ネジ部12に前記頭部25のナット形状の部分を形成してその部分でもってねじ込みを行うようにしたりする(図11符号31参照)。
さらに、図8に示すように、係合軸部17はスプライン軸17cとし、トルク管理部材20の第一部材21は、そのスプライン軸17cが嵌り込むスプライン係合孔27cを有するものとすることができる。
【0064】
これらの各実施形態において、本体軸部材15へのトルク管理部材20の接続状態において、トルク管理用破断部23は、接続孔11aの外に配置されることが望ましい。トルク管理用破断部23が接続孔11aの外に位置していれば、図3(f)に示すように、管理用破断部23が破断して第一部材21と第二部材22とが分離した際に、トルク管理部材接続部11に残る第一部材21が、本体軸部材15の後端面から突出した状態となる。このため、その突出した部分を掴むなどして第一部材21を本体軸部材15から除去しやすいという効果が期待できる。
【0065】
以上のような、この発明における管理部材20による定着強度の管理、その定着強度の管理ができるネジ部材ユニット、そのネジ部材ユニットを用いたネジ部材の固定構造は、この実施形態のような固定対象母材Cへのネジ係合を伴うケミカル式アンカーだけでなく、それ以外の方式のアンカーでも適用可能である。
【0066】
例えば、図9に示すように、本体軸部材15のネジ山部が、固定対象母材Cに食い込まないタイプの従来から一般的なケミカル式アンカーにおいても、この発明を適用できる。また、アンカー孔B内で本体軸部材15の一部が拡径して、アンカー孔Bの内面に対して抜け止め機能を発揮する拡径式(打ち込み式)アンカーにおいても、この発明を適用できる。
【0067】
なお、上記各実施形態は、アンカー(本体軸部材15)をその引き抜き方向に回す力を付与して定着強度を評価するものであるから、拡径式や埋め込み式の何れにおいても、ネジを有してそのネジの軸回りの逆回転によって定着強度が弱く成るアンカーであることが好ましい。しかし、ネジの軸回りの回転によってアンカー回りの躯体面が崩れてアンカーの定着強度が弱くなる場合も考えられることから、トルク管理部材20の評価時の回転方向は、必ずしもアンカーのねじ込み方向の逆である必要はない。特に、ネジ軸形状でない埋め込み式アンカーの場合は、正逆回転のどちらでも良い。
【0068】
以上の各実施形態において、定着強度を測定した後、トルク管理部材20の第一部材21が本体軸部材後端に残った場合、適宜な手段によって、その第一部材21を本体軸部材後端から取り外しても良いが、支障がなければ、そのままにしても良い。いずれにしても、図10(a)から同(b)に示すように、定着評価後、本体軸部材15後端には、キャップ30を設けてその後端を閉塞してその腐食等を防止することが好ましい。キャップ30はねじ込み式か嵌め込み式等が考えられ、その材料は、樹脂や耐腐食性金属等が考えられる。
このキャップ30を嵌めると、破断部や接続孔11a等に雨水等の侵入を阻止し得て防錆となり、その後の本体軸部材15の固定対象母材Cへの定着強度評価時、前記本体軸部材後端とトルク管理部材20との接続が容易になる。ネジ部11b、17a等には防錆剤を塗布することが好ましい。
【0069】
因みに、後端雄ネジ部12の長さ方向任意の位置に、フラット面を形成してそのフラット面でもって本体軸部材15をねじ込み易くすることもできる。例えば、図7の実施形態においては、図11に示すように、後端雄ネジ部12の後端部に、図6の係合軸部17と同一形状の正六角柱部31を形成した後、その正六角柱部31の先に接続用雄ネジ部17aを設ける。
【符号の説明】
【0070】
10 ネジ部材ユニット
11 トルク管理部材接続部
11a 接続孔
11b 接続用雌ネジ部
12 後端雄ネジ部
12a ネジ山部
13 本体雄ネジ部
13a ネジ山部(第一のネジ山部)
13b 谷部
13c ネジ山部(第二のネジ山部)
14 先端部
14a 側面
14b 端面
15 本体軸部材
17 係合軸部
20 トルク管理部材
21 第一部材
22 第二部材
23 管理用破断部
24 接続用雄ネジ部
25 頭部
A 結合剤
B アンカー孔
C 固定対象母材(コンクリート)
D ネジ溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11