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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】診断装置、診断方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20220708BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018101046
(22)【出願日】2018-05-25
(65)【公開番号】P2019203865
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-02-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的イノベーション創造プログラム事業「材料分野でのメンテナンスマネジメント(ASR)/構造分野でのメンテナンスマネジメント(モニタリング)/構造分野でのメンテナンスマネジメント(床版診断・補修・更新)/構造分野でのメンテナンスマネジメント(補修工法)/北陸3県インフラ全体のアセットマネジメント(石川県橋梁維持管理計画実装)/北陸3県インフラ全体のアセットマネジメント(早期劣化対応型の市町橋梁維持管理計画実装)/全体統括および地域実装支援」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100192773
【弁理士】
【氏名又は名称】土屋 亮
(72)【発明者】
【氏名】藤生 慎
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-142601(JP,A)
【文献】特開平09-161066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G06T 1/00 - G06T 1/40
G06T 3/00 - G06T 9/40
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を撮影した撮影画像の画像領域のうちの少なくとも一部を複数の領域に分割するメッシュを設定するとともに、設定したメッシュの位置を第1の方向と前記第1の方向に直行する第2の方向とのそれぞれへメッシュの間隔より狭い距離で移動させる領域設定部と、
前記領域設定部により設定された第1のメッシュで分割された複数の領域ごとに前記撮影画像から前記対象物に生じたひびわれの有無を診断するとともに、前記第1の方向へ移動後の第2のメッシュと前記第2の方向へ移動後の第3のメッシュとのそれぞれで分割された複数の領域ごとに前記撮影画像から前記ひびわれの有無をそれぞれ診断する診断部と、
を備え、
前記診断部は、
前記第1のメッシュで分割された複数の領域ごとの前記ひびわれの有無の診断結果と前記第2のメッシュで分割された複数の領域ごとの前記ひびわれの有無の診断結果と前記第3のメッシュで分割された複数の領域ごとの前記ひびわれの有無の診断結果とに基づいて、前記ひびわれの有無の診断と前記ひびわれの位置の特定を行う、
診断装置。
【請求項2】
前記診断部は、
前記第1のメッシュで分割された複数の領域のうちの第1領域と、前記第2のメッシュで分割された複数の領域のうち移動前の前記第1領域の移動後の第2領域と、前記第3のメッシュで分割された複数の領域のうち移動前の前記第1領域の移動後の第3領域とが重なる領域の前記ひびわれの有無を、前記第1領域、前記第2領域、及び前記第3領域のそれぞれの前記ひびわれの有無の診断結果に基づいて診断する、
請求項1に記載の診断装置。
【請求項3】
前記第1の方向は、横方向または縦方向である、
請求項1または請求項2に記載の診断装置。
【請求項4】
前記領域設定部が前記メッシュを移動させる距離は、前記メッシュの間隔の半分に相当する距離である、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の診断装置。
【請求項5】
前記診断部は、
前記ひびわれが含まれる複数の画像を少なくとも教示データとして学習する学習部を備え、
前記学習部による学習結果に基づく学習済みモデルに基づいて、前記メッシュで分割された領域ごとに前記撮影画像から前記ひびわれの有無を診断する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の診断装置。
【請求項6】
診断装置における診断方法であって、
領域設定部が、対象物を撮影した撮影画像の画像領域のうちの少なくとも一部を複数の領域に分割する第1のメッシュを設定するステップと、
診断部が、前記領域設定部により設定された前記第1のメッシュで分割された複数の領域ごとに前記撮影画像から前記対象物に生じたひびわれの有無を診断するステップと、
前記領域設定部が、前記設定した前記第1のメッシュの位置を第1の方向と前記第1の方向に直行する第2の方向とのそれぞれへ前記第1のメッシュの間隔より狭い距離で移動させるステップと、
前記診断部が、前記第1の方向へ移動後の第2のメッシュと前記第2の方向へ移動後の第3のメッシュとのそれぞれで分割された複数の領域ごとに前記撮影画像から前記ひびわれの有無をそれぞれ診断するステップと、
前記診断部が、前記第1のメッシュで分割された複数の領域ごとの前記ひびわれの有無の診断結果と前記第2のメッシュで分割された複数の領域ごとの前記ひびわれの有無の診断結果と前記第3のメッシュで分割された複数の領域ごとの前記ひびわれの有無の診断結果とに基づいて、前記ひびわれの有無の診断と前記ひびわれの位置の特定を行うステップと、
を有する診断方法。
【請求項7】
コンピュータに、
対象物を撮影した撮影画像の画像領域のうちの少なくとも一部を複数の領域に分割する第1のメッシュを設定するステップと、
前記設定された前記第1のメッシュで分割された複数の領域ごとに前記撮影画像から前記対象物に生じたひびわれの有無を診断するステップと、
前記設定された前記第1のメッシュの位置を第1の方向と前記第1の方向に直行する第2の方向とのそれぞれへ前記第1のメッシュの間隔より狭い距離で移動させるステップと、
前記第1の方向へ移動後の第2のメッシュと前記第2の方向へ移動後の第3のメッシュとのそれぞれで分割された複数の領域ごとに前記撮影画像から前記ひびわれの有無をそれぞれ診断するステップと、
前記第1のメッシュで分割された複数の領域ごとの前記ひびわれの有無の診断結果と前記第2のメッシュで分割された複数の領域ごとの前記ひびわれの有無の診断結果と前記第3のメッシュで分割された複数の領域ごとの前記ひびわれの有無の診断結果とに基づいて、前記ひびわれの有無の診断と前記ひびわれの位置の特定を行うステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断装置、診断方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物を撮影した画像からコンクリート構造物の表面に生じたひびわれを検出する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-102382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、撮影した画像をメッシュで区切り、区切られた各領域に対してひびわれの有無をAI(人工知能)を用いて判定する場合、メッシュで区切られた領域内の隅の方にひびわれが存在すると、そのひびわれの有無を適切に判定できない可能性があった。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、対象物の表面に生じたひびわれの有無を精度よく診断できる診断装置、診断方法、及びプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の一態様は、対象物を撮影した撮影画像の画像領域のうちの少なくとも一部を複数の領域に分割するメッシュを設定するとともに、設定したメッシュの位置を第1の方向と前記第1の方向に直行する第2の方向とのそれぞれへメッシュの間隔より狭い距離で移動させる領域設定部と、前記領域設定部により設定された第1のメッシュで分割された複数の領域ごとに前記撮影画像から前記対象物に生じたひびわれの有無を診断するとともに、前記第1の方向へ移動後の第2のメッシュと前記第2の方向へ移動後の第3のメッシュとのそれぞれで分割された複数の領域ごとに前記撮影画像から前記ひびわれの有無をそれぞれ診断する診断部と、を備え、前記診断部は、前記第1のメッシュで分割された複数の領域ごとの前記ひびわれの有無の診断結果と前記第2のメッシュで分割された複数の領域ごとの前記ひびわれの有無の診断結果と前記第3のメッシュで分割された複数の領域ごとの前記ひびわれの有無の診断結果とに基づいて、前記ひびわれの有無の診断と前記ひびわれの位置の特定を行う、診断装置である。
【0007】
また、本発明の他の態様は、診断装置における診断方法であって、領域設定部が、対象物を撮影した撮影画像の画像領域のうちの少なくとも一部を複数の領域に分割する第1のメッシュを設定するステップと、診断部が、前記領域設定部により設定された前記第1のメッシュで分割された複数の領域ごとに前記撮影画像から前記対象物に生じたひびわれの有無を診断するステップと、前記領域設定部が、前記設定した前記第1のメッシュの位置を第1の方向と前記第1の方向に直行する第2の方向とのそれぞれへ前記第1のメッシュの間隔より狭い距離で移動させるステップと、前記診断部が、前記第1の方向へ移動後の第2のメッシュと前記第2の方向へ移動後の第3のメッシュとのそれぞれで分割された複数の領域ごとに前記撮影画像から前記ひびわれの有無をそれぞれ診断するステップと、前記診断部が、前記第1のメッシュで分割された複数の領域ごとの前記ひびわれの有無の診断結果と前記第2のメッシュで分割された複数の領域ごとの前記ひびわれの有無の診断結果と前記第3のメッシュで分割された複数の領域ごとの前記ひびわれの有無の診断結果とに基づいて、前記ひびわれの有無の診断と前記ひびわれの位置の特定を行うステップと、を有する診断方法である。
【0008】
また、本発明の他の態様は、コンピュータに、対象物を撮影した撮影画像の画像領域のうちの少なくとも一部を複数の領域に分割する第1のメッシュを設定するステップと、前記設定された前記第1のメッシュで分割された複数の領域ごとに前記撮影画像から前記対象物に生じたひびわれの有無を診断するステップと、前記設定された前記第1のメッシュの位置を第1の方向と前記第1の方向に直行する第2の方向とのそれぞれへ前記第1のメッシュの間隔より狭い距離で移動させるステップと、前記第1の方向へ移動後の第2のメッシュと前記第2の方向へ移動後の第3のメッシュとのそれぞれで分割された複数の領域ごとに前記撮影画像から前記ひびわれの有無をそれぞれ診断するステップと、前記第1のメッシュで分割された複数の領域ごとの前記ひびわれの有無の診断結果と前記第2のメッシュで分割された複数の領域ごとの前記ひびわれの有無の診断結果と前記第3のメッシュで分割された複数の領域ごとの前記ひびわれの有無の診断結果とに基づいて、前記ひびわれの有無の診断と前記ひびわれの位置の特定を行うステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、対象物の表面に生じたひびわれを精度よく診断できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る診断装置10の一例を示すブロック図。
図2】実施形態に係るメッシュの設定例を示す図。
図3】メッシュを横方向へ移動させたときのひびわれの位置の変化を説明する図。
図4】メッシュを横方向へ移動後に診断精度が向上した実例の第1例を示す図。
図5】メッシュを横方向へ移動後に診断精度が向上した実例の第2例を示す図。
図6】メッシュを横方向へ移動後に診断精度が向上した実例の第3例を示す図。
図7】メッシュを横方向へ移動後に診断精度が向上した実例の第4例を示す図。
図8】メッシュを横方向へ移動後に診断精度が向上した実例の第5例を示す図。
図9】メッシュを縦方向へ移動させたときのひびわれの位置の変化を説明する図。
図10】メッシュを縦方向へ移動後に診断精度が向上した実例の第1例を示す図。
図11】メッシュを縦方向へ移動後に診断精度が向上した実例の第2例を示す図。
図12】メッシュを縦方向へ移動後に診断精度が向上した実例の第3例を示す図。
図13】メッシュを縦方向へ移動後に診断精度が向上した実例の第4例を示す図。
図14】メッシュを縦方向へ移動後に診断精度が向上した実例の第5例を示す図。
図15】実施形態に係る診断処理の一例を示すフローチャート。
図16】実施形態に係る診断結果の提供例の第1例を示す図。
図17】実施形態に係る診断結果の提供例の第2例を示す図。
図18】実施形態に係る診断結果の提供例の第3例を示す図。
図19】3種類のメッシュを組み合わせた診断結果の生成方法を説明する図。
図20】3種類のメッシュを組み合わせたときの診断結果の提供例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0012】
まず、本実施形態の概要について説明する。
近年、橋梁などに生じたひびわれなどを実際の現場で点検する近接目視点検の代替手段として、超高解像度カメラを用いた画像診断の検証が行われている。例えば、超高解像度カメラで撮影された1億画素の画像を用いることで、人が行う近接目視点検とほぼ同等の点検環境を構築する。特に、人が近づきにくく近接目視点検が困難な場所については、カメラを搭載したUAV(Unmanned Aerial Vehicle)を利用することで点検対象の撮影画像を容易に得られるようになるため、撮影画像を用いた診断が有効である。また、点検の経験者(検査員)の人材も不足しているため、撮影画像に対してAI(人工知能)を用いて画像診断を行う方法がある。この場合、例えば、撮影画像をメッシュで分割し、分割された領域ごとにひびわれの有無をAI(人工知能)を用いて診断する方法が考えられる。しかしながら、メッシュで分割された領域内の隅の方にひびわれが存在する場合、ひびわれの有無を適切に判定できない可能性がある。そこで、本実施形態に係る診断装置では、対象物に生じたひびわれの有無を診断する際に、メッシュを移動させることにより診断精度を向上させるように構成した。
【0013】
(診断装置の構成)
以下、本実施形態に係る診断装置の構成について詳しく説明する。ここでは「ひびわれ」とは、対象物の表面に生じた亀裂(クラック)、キズ、窪みなどに類するものを総称している。また、対象物とは、点検対象となる物体であり、例えば、橋梁や建物などのようなコンクリート構造物である。なお、対象物は、コンクリート構造物に限定されるものではなく、ひびわれが生じるものであればどのような物体であってもよい。
【0014】
図1は、本実施形態に係る診断装置10の一例を示すブロック図である。診断装置10は、通信部110と、入力部120と、表示部130と、記憶部150と、制御部170とを備えている。
【0015】
通信部110は、セルラー網やWi-Fi網等を用いてインターネットに接続するためのハードウェア(例えば、アンテナおよび送受信装置)などを有していてもよい。また、通信部110は、外部記憶媒体と接続されるコネクタであってもよく、ケーブルを介して撮像装置等の外部装置と接続されるコネクタであってもよい。
【0016】
入力部120は、各種キー、ボタン、ダイヤルスイッチ、マウスなどのうち一部または全部を含む。また、入力部120は、例えば、表示部130と一体として形成されるタッチパネルであってもよい。
【0017】
表示部130は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electroluminescence)などのディスプレイを含んで構成される。
【0018】
記憶部150は、例えば、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)、SSD(Solid State Drive)などのフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)などである。例えば、記憶部150には、撮影画像データ151と、教示データ152、学習済みモデル153などの情報が格納される。
【0019】
撮影画像データ151は、点検の対象となる対象物(例えば、橋梁などのコンクリート構造物)を撮影した撮影画像のデータである。
【0020】
教示データ152は、撮影画像からひびわれの有無を診断する際に用いるAIの学習済みモデルを生成するための教示データである。例えば、ひびわれが含まれる画像データが教示データ152として格納されている。ひびわれが含まれる画像データとは、例えば、実際にひびわれが生じている任意の対象物(例えば、橋脚などのコンクリート構造物)が撮影された画像データである。また、ひびわれが含まれない画像データが、さらに教示データ152として格納されてもよい。これらの画像データは、過去において、人(例えば、点検経験者)によりひびわれの有無が識別された画像データであってもよいし、この診断装置10によりひびわれの有無が診断された画像データであってもよいし、他の診断装置によりひびわれの有無が診断された画像データであってもよい。また、その他に撮影画像に含まれる可能性がある物体(草など)が含まれる画像データが、さらに教示データ152として格納されてもよい。その他に撮影画像に含まれる可能性がある物体(草など)が含まれる画像データを教示データに含めることにより、ひびわれと間違えて誤診断されてしまうことを抑制できる。例えば、ひびわれが含まれる画像データ、ひびわれが含まれない画像データ、及び草などが含まれる画像データがそれぞれ複数、教示データ152として格納されている。
【0021】
学習済みモデル153は、以下に説明する学習部172が上述した教示データ152に基づいて生成する学習済みモデルが格納される。
【0022】
制御部170は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される機能構成として、取得部171と、学習部172と、領域設定部173と、診断部174と、結果提供部175とを備えている。
【0023】
取得部171は、通信部110を介して撮影画像を取得し、撮影画像データ151として記憶部150に格納する。撮影画像とは、点検の対象となる対象物(例えば、橋梁などのコンクリート構造物)を撮影した撮影画像である。例えば、UAVを利用して撮影した対象物の撮影画像や、人が撮影した対象物の撮影画像である。
【0024】
学習部172は、教示データ152に基づいて、ひびわれの有無を診断するためのAIの学習済みモデル153を生成する。例えば、学習部172は、ひびわれが含まれる複数の画像データ、ひびわれが含まれない画像データ、草などが含まれる画像データなどのいずれか又はすべてを教示データとして機械学習を行い、ひびわれの有無を判定するための学習済みモデル153を学習結果として生成する。
【0025】
領域設定部173は、対象物を撮影した撮影画像の画像領域のうちの少なくとも一部を複数の領域に分割するメッシュを設定する。図2は、本実施形態に係るメッシュの設定例を示す図である。図示する例では、点検を行う対象物がコンクリート構造の橋脚の表面であり、対象物を撮影した撮影画像に対して縦6×横19の長方形の領域に分割するメッシュMが設定されている。このメッシュMの範囲に対して分割された領域ごとにひびわれの有無の診断が行われる。なお、分割数、分割された領域の形状、メッシュの設定範囲などは一例であって、図示する例に限られるものではない。
【0026】
また、領域設定部173は、設定したメッシュの位置を移動させる。例えば、領域設定部173は、横方向又は縦方向へメッシュの間隔より狭い距離で移動させる。横方向とは、図2に示す縦6×横19のメッシュMの横のライン(長手方向のライン)に平行な方向(図2において左右方向)である。縦方向とは、横方向に直行する方向であり、図2に示す縦6×横19のメッシュMの縦のライン(短手方向のライン)に平行な方向(図2において上下方向)である。
【0027】
例えば、領域設定部173は、設定したメッシュの位置を、横方向(左又は右方向)へメッシュの間隔より狭い距離で移動させてもよい。また、領域設定部173は、設定したメッシュの位置を、縦方向(上又は下方向)へメッシュの間隔より狭い距離で移動させてもよい。また、領域設定部173は、設定したメッシュの位置を、横方向(左又は右方向)及び縦方向(上又は下方向)のそれぞれへメッシュの間隔より狭い距離で移動させてもよい。ここで、移動させる距離は、例えばメッシュの間隔の半分に相当する距離である。
【0028】
診断部174は、AIの学習済みモデル153を用いて、領域設定部173がメッシュを設定した撮影画像からひびわれの有無を診断する。まず、診断部174は、領域設定部173により設定されたメッシュで分割された複数の領域ごとに、撮影画像からひびわれの有無を診断する。さらに、診断部174は、移動後のメッシュで分割された複数の領域ごとに、撮影画像からひびわれの有無を診断する。例えば、診断部174は、最初に設定されたメッシュで分割された領域ごとに診断を行った後に、さらに横方向(左又は右方向)又は縦方向(上又は下方向)へメッシュの間隔の半分に相当する距離を移動した移動後のメッシュで分割された領域ごとに診断を行う。これにより、最初に設定されたメッシュで分割された領域内の隅の方に存在するひびわれが移動後のメッシュで分割された領域内では中央の方へ移動するため、ひびわれの有無を精度よく診断できるようになる。
【0029】
結果提供部175は、表示部130を用いて、診断部174による診断結果等を利用者に提供する。例えば、結果提供部175は、撮影画像のメッシュで分割された複数の領域ごとに、ひびわれを含む確率に基づく情報を表示部130に表示させる。ひびわれを含む確率に基づく情報は、確率の値であってもよいし、確率に対応する記号、色、明暗などであってもよい。
【0030】
(診断精度が向上した実例)
次に、図3~14を参照して、実際にメッシュの移動により診断精度が向上した実例を説明する。まず、図3~8を参照して、横(左右)方向へメッシュを移動させたときに診断精度が向上した例を説明する。図3は、メッシュを横方向へ移動させたときのひびわれの位置の変化を説明する図である。ここでは、最初に設定したメッシュを横方向へメッシュの間隔の半分に相当する距離を移動させたときの例を示している。メッシュM1aは、最初に設定されたメッシュで分割された領域のうちの一つの領域内の画像を示している。メッシュM1bは、メッシュM1aを横方向へメッシュの間隔の半分の距離を移動させたときの領域内の画像を示している。メッシュM1a内の右端に存在するひびわれCR1は、移動後のメッシュM1b内では中央付近へ相対的に移動する。これにより、ひびわれの診断精度が向上する。なお、図に示す矢印は右方向へメッシュの間隔の半分の距離を移動させることを示しているが、左方向への移動の場合でもメッシュM1aの右隣の領域がメッシュM1bの領域と同じ位置へ移動するため、同様に診断精度が向上する。
【0031】
図4~8は、図3に示すメッシュを横(左右)方向へ移動させたときに移動前より移動後に診断精度が向上した実例を示している。メッシュを横(左右)方向へ移動させる場合、主に縦方向に長いひびわれに対する診断精度の向上に効果的である。ここでは、診断部174がAIの学習済みモデル153を用いて診断結果として、「ひびわれを含む確率」を示している。ひびわれを含む確率とは、メッシュで分割された各領域内の画像がひびわれを含む確からしさの指標であり、最小値が0%、最大値が100%である。
【0032】
図4に示す例では、最初に設定されたメッシュM2a内では左端の方にひびわれCR2が存在するが、横方向へメッシュを移動することにより移動後のメッシュM2b内では中央付近にひびわれCR2が相対的に移動している。最初に設定されたメッシュM2aに対する診断結果では、メッシュM2a内の画像がひびわれを含む確率が61%と診断された。これに対し、移動後のメッシュM2bに対する診断結果では、メッシュM2b内の画像がひびわれを含む確率が99.7%と診断された。つまり、メッシュの移動後の診断結果では38.7ポイント診断精度が向上した。
【0033】
図5に示す例では、最初に設定されたメッシュM3a内では右端の方にひびわれCR3が存在するが、横方向へメッシュを移動することにより移動後のメッシュM3b内では中央付近にひびわれCR3が相対的に移動している。最初に設定されたメッシュM3aに対する診断結果では、メッシュM3a内の画像がひびわれを含む確率が2.9%と診断された。これに対し、移動後のメッシュM3bに対する診断結果では、メッシュM3b内の画像がひびわれを含む確率が99.5%と診断された。つまり、メッシュの移動後の診断結果では96.6ポイント診断精度が向上した。
【0034】
図6に示す例では、最初に設定されたメッシュM4a内では右端の方にひびわれCR4が存在するが、横方向へメッシュを移動することにより移動後のメッシュM4b内では中央付近にひびわれCR4が相対的に移動している。最初に設定されたメッシュM4aに対する診断結果では、メッシュM4a内の画像がひびわれを含む確率が11.2%と診断された。これに対し、移動後のメッシュM4bに対する診断結果では、メッシュM4b内の画像がひびわれを含む確率が99.9%と診断された。つまり、メッシュの移動後の診断結果では88.7ポイント診断精度が向上した。
【0035】
図7に示す例では、最初に設定されたメッシュM5a内では右端の方にひびわれCR5が存在するが、横方向へメッシュを移動することにより移動後のメッシュM5b内では中央付近にひびわれCR5が相対的に移動している。最初に設定されたメッシュM5aに対する診断結果では、メッシュM5a内の画像がひびわれを含む確率が5.8%と診断された。これに対し、移動後のメッシュM5bに対する診断結果では、メッシュM5b内の画像がひびわれを含む確率が99.1%と診断された。つまり、メッシュの移動後の診断結果では93.3ポイント診断精度が向上した。
【0036】
図8に示す例では、最初に設定されたメッシュM6a内では右端の方にひびわれCR6が存在するが、横方向へメッシュを移動することにより移動後のメッシュM6b内では中央付近にひびわれCR6が相対的に移動している。最初に設定されたメッシュM6aに対する診断結果では、メッシュM6a内の画像がひびわれを含む確率が17.1%と診断された。これに対し、移動後のメッシュM6bに対する診断結果では、メッシュM6b内の画像がひびわれを含む確率が56.5%と診断された。つまり、メッシュの移動後の診断結果では39.4ポイント診断精度が向上した。
【0037】
次に、図9~14を参照して、縦(上下)方向へメッシュを移動させたときに診断精度が向上した例を説明する。図9は、メッシュを縦方向へ移動させたときのひびわれの位置の変化を説明する図である。ここでは、最初に設定したメッシュを縦方向へメッシュの間隔の半分に相当する距離を移動させたときの例を示している。メッシュM7aは、最初に設定されたメッシュで分割された領域のうちの一つの領域内の画像を示している。メッシュM7bは、メッシュM7aを縦方向へメッシュの間隔の半分の距離を移動させたときの領域内の画像を示している。メッシュM7a内の下端に存在するひびわれCR7は、移動後のメッシュM7b内では上下方向の中央付近へ相対的に移動する。これにより、ひびわれの診断精度が向上する。なお、図に示す矢印は下方向へメッシュの間隔の半分の距離を移動させることを示しているが、上方向への移動の場合でもメッシュM7aの下隣の領域がメッシュM7bの領域と同じ位置へ移動するため、同様の診断結果となる。
【0038】
図10~14は、図9に示すメッシュを縦(上下)方向へ移動させたときに移動前より移動後に診断精度が向上した実例を示している。メッシュを縦(上下)方向へ移動させる場合、主に横方向に長いひびわれに対する診断精度の向上に効果的である。図10に示す例では、最初に設定されたメッシュM8a内では上端の方にひびわれCR8が存在するが、縦方向へメッシュを移動することにより移動後のメッシュM8b内では中央付近にひびわれCR8が相対的に移動している。最初に設定されたメッシュM8aに対する診断結果では、メッシュM8a内の画像がひびわれを含む確率が94.6%と診断された。これに対し、移動後のメッシュM8bに対する診断結果では、メッシュM8b内の画像がひびわれを含む確率が97.6%と診断された。つまり、メッシュの移動後の診断結果では3ポイント診断精度が向上した。
【0039】
図11に示す例では、最初に設定されたメッシュM9a内では下端の方にひびわれCR9が存在するが、縦方向へメッシュを移動することにより移動後のメッシュM9b内では中央付近にひびわれCR9が相対的に移動している。最初に設定されたメッシュM9aに対する診断結果では、メッシュM9a内の画像がひびわれを含む確率が6.1%と診断された。これに対し、移動後のメッシュM9bに対する診断結果では、メッシュM9b内の画像がひびわれを含む確率が57.2%と診断された。つまり、メッシュの移動後の診断結果では51.1ポイント診断精度が向上した。
【0040】
図12に示す例では、最初に設定されたメッシュM10a内では下端の方にひびわれCR10が存在するが、縦方向へメッシュを移動することにより移動後のメッシュM10b内では中央付近にひびわれCR10が相対的に移動している。最初に設定されたメッシュM10aに対する診断結果では、メッシュM10a内の画像がひびわれを含む確率が51%と診断された。これに対し、移動後のメッシュM10bに対する診断結果では、メッシュM10b内の画像がひびわれを含む確率が99.7%と診断された。つまり、メッシュの移動後の診断結果では48.7ポイント診断精度が向上した。
【0041】
図13に示す例では、最初に設定されたメッシュM11a内では上端(且つ右端)の方にひびわれCR11が存在するが、縦方向へメッシュを移動することにより移動後のメッシュM11b内では上下方向の中央付近(且つ右端)にひびわれCR11が相対的に移動している。最初に設定されたメッシュM11aに対する診断結果では、メッシュM11a内の画像がひびわれを含む確率が42.7%と診断された。これに対し、移動後のメッシュM11bに対する診断結果では、メッシュM11b内の画像がひびわれを含む確率が99.8%と診断された。つまり、メッシュの移動後の診断結果では57.1ポイント診断精度が向上した。
【0042】
図14に示す例では、最初に設定されたメッシュM12a内では下端の方にひびわれCR12が存在するが、縦方向へメッシュを移動することにより移動後のメッシュM6b内では中央付近にひびわれCR12が相対的に移動している。最初に設定されたメッシュM12aに対する診断結果では、メッシュM12a内の画像がひびわれを含む確率が68.3%と診断された。これに対し、移動後のメッシュM12bに対する診断結果では、メッシュM12b内の画像がひびわれを含む確率が94.3%と診断された。つまり、メッシュの移動後の診断結果では26ポイント診断精度が向上した。
【0043】
(診断処理の動作)
次に、本実施形態に係る診断装置10が対象物の表面に生じたひびわれを診断する診断処理の動作について説明する。
図15は、本実施形態に係る診断処理の一例を示すフローチャートである。
【0044】
まず、取得部171は、通信部110を介して対象物の撮影画像を取得し、撮影画像データ151として記憶部150に格納する(ステップS101)。
【0045】
次に、領域設定部173は、撮影画像データ151の撮影画像の画像領域のうちの少なくとも一部にメッシュを設定する(ステップS103)。
【0046】
そして、診断部174は、領域設定部173により設定されたメッシュで分割された複数の領域ごとに撮影画像からひびわれの有無を診断する(ステップS105)。
【0047】
次に、領域設定部173は、設定したメッシュの位置を、横方向(左又は右方向)へ移動させる。具体的には、領域設定部173は、設定したメッシュの位置を、横方向(左又は右方向)へメッシュの間隔の半分に相当する距離を移動させる(ステップS107)。
【0048】
そして、診断部174は、領域設定部173により移動された移動後のメッシュで分割された複数の領域ごとに撮影画像からひびわれの有無を診断する(ステップS109)。
【0049】
続いて、領域設定部173は、設定したメッシュの位置を、縦方向(上又は下方向)へ移動させる。具体的には、領域設定部173は、設定したメッシュの位置を、縦方向(上又は下方向)へメッシュの間隔の半分に相当する距離を移動させる(ステップS111)。
【0050】
そして、診断部174は、領域設定部173により移動された移動後のメッシュで分割された複数の領域ごとに撮影画像からひびわれの有無を診断する(ステップS113)。
【0051】
結果提供部175は、表示部130を用いて、診断部174による診断結果等を利用者に提供する。例えば、結果提供部175は、撮影画像のメッシュで分割された複数の領域ごとに、ひびわれを含む確率に基づく情報を表示部130に表示させる(ステップS115)。
【0052】
(診断結果の提供例)
図16~18は、本実施形態に係る診断結果の提供例を示す図である。図16は、最初に設定されたメッシュによる診断結果を示している。また、図17は、最初に設定されたメッシュを横方向へメッシュの間隔の半分に相当する距離を移動させた移動後のメッシュによる診断結果を示している。また、図18は、最初に設定されたメッシュを縦方向へメッシュの間隔の半分に相当する距離を移動させた移動後のメッシュによる診断結果を示している。図16~18の各図において、メッシュで分割された領域ごとの診断結果として、ひびわれを含む確率が30%未満の領域と、30~60%の領域と、60%以上の領域との3種類に分けて記号で表示されている。ひびわれを含む確率が30%未満の領域は、「ひびわれ発生確率が低い」という診断である。ひびわれを含む確率が30~60%の領域は、「ひびわれ発生確率が中程度」という診断である。ひびわれを含む確率が60%以上の領域は、「ひびわれ発生確率が高い」という診断である。
【0053】
前述したように、メッシュで分割された領域の隅にひびわれが存在する場合、そのひびわれは必ずしも適切に診断されるとは限らない。特に教示データの多くの画像が、画像の中央付近を通過するひびわれがある画像である場合、隅に存在するひびわれは適切に診断されにくい。例えば、教示データに、画像の隅にひびわれが存在する画像を含めることで、認識精度を向上させることも考えられるが、そもそも隅に存在するひびわれを画像認識することは難易度が高く、また、最適な教示データをそろえて学習させることは容易ではない。それに対し、メッシュを横方向または縦方向に移動させることで、メッシュで分割された領域の隅に存在していたひびわれを中央に相対的に移動させることで、容易に診断精度を向上させることができる。
【0054】
例えば、図17に示すようにメッシュを横方向へ移動させると、図16に示す最初に設定されたメッシュでは正確に診断されなかった橋脚の左側のひびわれ(縦方向のひびわれ)が適切に診断された。また、図18に示すようにメッシュを縦方向へ移動させることにより、図16に示す最初に設定されたメッシュでは正確に診断できなかった桟橋の中央のひびわれ(横方向のひびわれ)が高精度に診断された。
【0055】
また、図16に示す最初に設定されたメッシュでの診断結果と、図17に示す横方向へ移動させたメッシュでの診断結果と、図18に示す縦方向へ移動させたメッシュでの診断結果との3種類の診断結果を組み合わせることにより診断結果を生成してもよい。例えば、3つのメッシュが重複する領域のひびわれ発生確率を、重複する3つのメッシュのそれぞれのひびわれ発生確率の平均としてもよい。詳しくは、図19を参照して説明する。
【0056】
図19は、3種類のメッシュの診断結果を組み合わせた診断結果の生成方法を説明する図である。ここでは、説明を容易にするため縦4×横4のメッシュを抜き出して図示している。(A)に示すメッシュMAは、最初に設定されたメッシュである。(B)に示すメッシュMBは、メッシュMAを横方向へメッシュの間隔の半分の距離を移動させたものである。(C)に示すメッシュMCは、メッシュMAを縦方向へメッシュの間隔の半分の距離を移動させたものである。(D)は、メッシュMA、メッシュMB、及びメッシュMCを重ねた図である。(D)において、領域MD1は、メッシュMAの領域MA1と、メッシュMBの領域MB1と、メッシュMCの領域MC1とが重複した領域である。この重複した領域MD1の診断結果を、メッシュMAの領域MA1のひびわれ発生確率と、メッシュMBの領域MB1のひびわれ発生確率と、メッシュMCの領域MC1のひびわれ発生確率とを平均したひびわれ発生確率とする。
【0057】
図20は、3種類のメッシュの診断結果を組み合わせたときの診断結果の提供例を示す図である。このように、3種類のメッシュの診断結果の平均を取ることにより、最初に設定されたメッシュでの診断結果では正確に診断できなかった縦方向のひびわれが、横方向へ移動させたメッシュでの診断結果によって補完され、横方向のひびわれが、縦方向へ移動させたメッシュでの診断結果によって補完することができ、診断精度を向上させることができる。また、3種類のメッシュの診断結果を組み合わせることにで、より細かく分割された領域ごとの診断が行えるため、ひびわれの位置をより詳細に特定可能となる。図20に示すように、3種類のメッシュの診断結果を組み合わせたときの診断結果は、図16に示す最初に設定されたメッシュでの診断結果と比較して、ひびわれの識別の精度は良好であり、より詳細である。
【0058】
以上説明したように本実施形態に係る診断装置10は、対象物を撮影した撮影画像の画像領域のうちの少なくとも一部を複数の領域に分割するメッシュを設定し、設定したメッシュで分割された複数の領域ごとに撮影画像から対象物に生じたひびわれの有無を診断する。さらに、診断装置10は、設定したメッシュの位置を移動させ、移動後のメッシュで分割された複数の領域ごとに前記撮影画像から上記ひびわれの有無を診断する。
【0059】
これにより、診断装置10は、最初に設定したメッシュで分割された領域の隅の方にひびわれが存在することにより正確に診断できなかったとしても、メッシュを移動させて再度診断を行うため、対象物の表面に生じたひびわれを精度よく診断でき、診断精度を向上することができる。
【0060】
例えば、診断装置10は、設定したメッシュの位置を、横方向または縦方向へメッシュの間隔より狭い距離で移動させる。
【0061】
これにより、診断装置10は、最初に設定したメッシュで分割された領域の隅の方にひびわれが存在する場合、当該ひびわれの位置をメッシュで分割された領域内で相対的に移動させることができる。そのため、メッシュの移動前に隅の方に存在したひびわれの位置がメッシュの移動後に中央の方へ相対的に移動するため、対象物の表面に生じたひびわれを精度よく診断できるようになる。
【0062】
より詳細には、メッシュを移動させる距離は、メッシュの間隔の半分に相当する距離であってもよい。
【0063】
これにより、診断装置10は、最初に設定したメッシュで分割された領域の隅の方にひびわれが存在する場合、当該ひびわれの位置をメッシュで分割された領域内の中央付近の位置へ相対的に移動させることができるため、ひびわれの診断精度を向上することができる。
【0064】
なお、メッシュを移動させる距離は、メッシュの間隔の半分に相当する距離に限られるものではなく、メッシュの間隔より狭い距離の範囲の中の任意の距離としてもよい。また、メッシュを移動させる距離がメッシュの間隔の半分の距離より短い場合、移動させる回数を増やしてもよい。例えば、メッシュを移動させる距離がメッシュの間隔の半分の距離である場合はメッシュを1回移動させるところ、メッシュを移動させる距離がメッシュの間隔の四分の一の距離の場合にはメッシュを2回移動させてもよい。
【0065】
また、診断装置10は、設定したメッシュの位置を、第1の方向(例えば、横方向)と当該第1の方向に直行する第2の方向(例えば、縦方向)とのそれぞれに移動させてもよい。そして、診断装置10は、最初に設定したメッシュで分割された複数の領域ごとの撮影画像と、第1の方向(例えば、横方向)へ移動した移動後のメッシュで分割された複数の領域ごとの撮影画像と、第2の方向(例えば、縦方向)へ移動した移動後のメッシュで分割された複数の領域ごとの撮影画像とのそれぞれを用いて、対象物に生じたひびわれの有無を診断してもよい。
【0066】
これにより、診断装置10は、互いに直行する2方向(例えば、横方向及び縦方向)へメッシュを移動させて診断することにより、最初に設定されたメッシュで分割された領域内で、左右の隅に存在するひびわれと上下の隅に存在するひびわれとのいずれも中央付近に相対的に移動させて診断できるため、ひびわれの診断精度を向上することができる。また、3種類のメッシュの診断結果を組み合わせることで、より細かく分割された領域ごとの診断が行えるため、ひびわれの位置をより詳細に特定可能となる。
【0067】
また、診断装置10は、ひびわれが含まれる複数の画像を少なくとも教示データとして学習し、学習結果に基づくAIの学習済みモデルに基づいて、メッシュで分割された領域ごとに撮影画像から対象物に生じたひびわれの有無を診断する。
【0068】
これにより、診断装置10は、ひびわれの識別を目視でできる経験者や熟練者がいなくともひびわれの有無をAIを用いて精度よく診断できる。よって、今後、ますます老朽化した橋脚が増加する中、人口の減少につれて経験者や熟練者の人材がより不足することが予想されるが、メッシュを移動させてAIによる診断を行うことで定期的に点検が可能となり、橋脚の維持管理に貢献することができる。
【0069】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0070】
なお、上述した実施形態では、横方向と縦方向へメッシュを移動させる例を説明した。例えば、横方向とは対象物に対して水平方向に相当し、縦方向とは対象物に対して垂直方向に相当する。但し、上記方向の関係は撮影画像が撮影された時のカメラの傾きとメッシュの設定の仕方によっても変化するため、水平方向と垂直方向に限定されるものではない。
【0071】
また、上述した実施形態では、メッシュを横方向と縦方向のそれぞれへ移動させて診断する処理の例を説明したが、いずれか一方へ移動させて診断を行う処理としてもよい。また、3方向以上にメッシュを移動させて診断を行う処理としてもよい。
【0072】
例えば、上述した実施形態では、縦6×横19の長方形の領域に分割するメッシュの場合、メッシュの形状に合わせて横方向または縦方向にメッシュを移動させる例を説明したが、これに限られるものではなく、横方向または縦方向に代えて、又は加えて斜め方向などにメッシュを移動させてもよい。また、メッシュの形状(分割された領域の形状、及びメッシュ全体の形状)も長方形に限られるものではなく、正方形や、三角形、または五角形以上の多角形の形状であってもよいし、曲線を含む形状であってもよい。また、メッシュで分割された領域の形状とメッシュ全体の形状とが異なってもよい。
【0073】
なお、上述した実施形態における制御部170の一部または全部をコンピュータで実現するようにしても良い。その場合、この制御部170の一部または全部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、診断装置10に内蔵されたコンピュータシステムであって、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0074】
また、上述した実施形態における制御部170の一部または全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。また、例えば、制御部170の一部または全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 診断装置、110 通信部、120 入力部、130 表示部、150 記憶部、151 撮影画像データ、152 教示データ、153 学習済みモデル、170 制御部、171 取得部、172 学習部、173 領域設定部、174 診断部、175 結果提供部
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