(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】散布装置、及び散布方法
(51)【国際特許分類】
A01M 7/00 20060101AFI20220708BHJP
A01G 9/24 20060101ALI20220708BHJP
B05B 17/00 20060101ALI20220708BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20220708BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20220708BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
A01M7/00 D
A01G9/24 X
B05B17/00 101
B05D7/14 L
B05D3/00 D
B05D1/02 Z
(21)【出願番号】P 2018123470
(22)【出願日】2018-06-28
【審査請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000250007
【氏名又は名称】有光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】大町 浩司
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-155622(JP,U)
【文献】登録実用新案第3010740(JP,U)
【文献】特開2016-059340(JP,A)
【文献】実開昭48-061007(JP,U)
【文献】特開2004-050915(JP,A)
【文献】実開平02-023455(JP,U)
【文献】米国特許第04269356(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 7/00
A01G 9/14 - 9/26
B05B 17/00
B05D 7/14
B05D 3/00
B05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
該車体に取り付けられた液体を散布するノズルと、
該ノズルを支持し、前記車体の前側又は後側に該ノズルを切り替えて配置する支持部と
、
前記ノズルが前記車体の前側又は後側に位置することを検知する検知部と
を備える散布装置。
【請求項2】
車体と、
該車体に取り付けられた液体を散布するノズルと、
該ノズルを支持し、前記車体の前側又は後側に該ノズルを切り替えて配置する支持部と、
前記車体に取り付けられ、レールを走行するための車輪と、
前記車輪に動力を供給する駆動源と、
該駆動源の駆動を制御する制御部と、
前記車体を前進させた後、後進させる第一動作モード及び前記車体を後進させた後、前進させる第二動作モードの選択を受け付ける受付部と
を備え、
前記第一動作モード又は前記第二動作モードに応じて、前記車体の前側又は後側に該ノズルを切り替えて配置する
散布装置。
【請求項3】
車体と、
該車体に取り付けられた液体を散布する複数のノズルと、
該ノズルを支持し、前記車体の前側又は後側に該ノズルを切り替えて配置する支持部と
該支持部に支持され、上方向に延びる支持棒と
を備え、
前記複数のノズルは複数対のノズルを含み、
前記支持棒に、上下方向に所定の間隔を隔てて前記複数対のノズルが並設され、
各対を構成する二つの前記ノズルの噴射口はそれぞれ左右両側に向く
散布装置。
【請求項4】
前記支持部は回転可能に構成されている請求項1
から3のいずれか一つに記載の散布装置。
【請求項5】
前記ノズルが前記車体の前側又は後側に切り替えて配置されたときに、前記支持部の回転を抑止するピンを備える請求項
4に記載の散布装置。
【請求項6】
前記支持部に取り付けられ、前記支持部を回転させるためのハンドルを備える請求項
4又は5に記載の散布装置。
【請求項7】
前記ノズルが前記車体の前側又は後側に位置することを検知する検知部
を備える請求項
2又は3に記載の散布装置。
【請求項8】
前記車体に取り付けられており、レールを走行するための車輪と、
前記車輪に動力を供給する駆動源と、
該駆動源の駆動を制御する制御部と、
前記車体を前進させた後、後進させる第一動作モード及び前記車体を後進させた後、前進させる第二動作モードの選択を受け付ける受付部と
を備え、
前記第一動作モード又は前記第二動作モードに応じて、前記車体の前側又は後側に該ノズルを切り替えて配置する請求項1
又は3に記載の散布装置。
【請求項9】
車体に取り付けられた液体を散布するノズルが前記車体の前側又は後側に位置することを検知し、
検知結果に基づいて、前記
ノズルを、前記車体の前側又は後側に切り替えて配置し、
前記車体を被散布体が並ぶ方向に沿って移動させつつ、前記ノズルから前記液体を散布する
散布方法。
【請求項10】
液体を散布するノズルが取り付けられた車体を前進させた後、後進させる第一動作モード及び前記車体を後進させた後、前進させる第二動作モードの選択を受け付け、
受け付けた前記第一動作モード又は前記第二動作モードに応じて、前記車体の前側又は後側に前記ノズルを切り替えて配置し、
前記車体を被散布体が並ぶ方向に沿って移動させつつ、前記ノズルから前記液体を散布する
散布方法。
【請求項11】
左右に配置された被散布体の畝間に車体を配置し、
車体に取り付けられ、上下方向に所定の間隔を隔てて並設され、液体を散布する複数対のノズルであって、各対を構成する二つの前記ノズルの噴射口はそれぞれ左右両側に向く前記ノズルを、前記車体の前側又は後側に切り替えて配置し、
前記車体を前記被散布体が並ぶ方向に沿って移動させつつ、前記ノズルから前記液体を散布する
散布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、前進又は後進する車体を有し、液体、例えば薬液を散布する散布装置、及び散布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウス内に設けられたレールを移動する車体を備え、車体に薬液を散布する手段を設けた散布装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1によれば、天井にレール及び車体を設けているので、ハウス内の地上全体を圃場として使用することができる。
【0003】
特許文献1の散布装置は、ハウス毎にレールを設置する。車輪と、薬液を散布する散布ノズルとを備える直進式の一つの散布装置を準備し、散布装置を複数のハウスそれぞれに移動させることによって、複数のハウスに対して作業を行う。ハウス内では、例えば作業用通路を開始地点及び終了地点として、散布装置を二つの作物の列の間を、列に沿って往復させて、作物に薬液を付着させる。往復後は、作業者が散布装置の向きを変更し、未作業の二つの列の間まで散布装置を移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作物の列間を自動で往復走行し、散布作業を行う従来の散布装置において、車体の前側又は後側のどちらかに散布のためのノズルを固定して散布作業を行っていた。例えばノズルが車体の前側に配置され、列に沿い、後進走行して散布を行う場合、列の後端から車体を突出させることができないときには、車体の長さ分、無散布領域が生じるという問題がある。無散布領域が生じないようにするためには、列間の通路内で散布装置を180度方向転換する必要があるが、散布装置の重量が重い場合、旋回作業は困難であり、作業者の負担が大きくなりやすい。通路の端部で旋回できない場合もある。
【0006】
本開示の目的は、薬液の散布時に、薬液が散布されない無散布領域が生じるのが抑制される散布装置、及び散布方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る散布装置は、車体と、該車体に取り付けられた液体を散布するノズルと、該ノズルを支持し、前記車体の前側又は後側に切り替えて配置する支持部とを備える。
【0008】
上記構成によれば、支持部により支持されたノズルの位置を車体の前側又は後側に切り替えることにより、作物等の被散布体の列に車体の長さ分、無散布領域が生じるのが抑制される。作業者は重量がある散布装置を旋回させる必要がない。
【0009】
上述の散布装置は、前記支持部は回転可能に構成されていてもよい。
【0010】
上記構成によれば、支持部を回転させることにより、容易にノズルの位置を切り替えることができる。
【0011】
上述の散布装置は、前記ノズルが前記車体の前側又は後側に切り替えて配置されたときに、前記支持部の回転を抑止するピンを備えてもよい。
【0012】
上記構成によれば、ノズルが車体の前側又は後側に配置された後、ノズルが動くのが抑止される。
【0013】
上述の散布装置は、前記支持部に取り付けられ、前記支持部を回転させるためのハンドルを備えてもよい。
【0014】
上記構成によれば、作業者はハンドルを握って支持部を回転させることにより、容易にノズルの位置を切り替えることができる。
【0015】
上述の散布装置は、前記ノズルが前記車体の前側又は後側に位置することを検知する検知部を備えてもよい。
【0016】
上記構成によれば、ノズルが車体の前側又は後側のいずれに位置するかが判定される。作業者が位置を確認する必要がない。ノズルの位置が検出されるので、自動的にノズルの位置を決めて、散布を行うことができる。
【0017】
上述の散布装置は、前記車体に取り付けられており、レールを走行するための車輪と、前記車輪に動力を供給する駆動源と、該駆動源の駆動を制御する制御部と、前記車体を前進させた後、後進させる第一動作モード及び前記車体を後進させた後、前進させる第二動作モードの選択を受け付ける受付部とを備え、前記第一動作モード又は前記第二動作モードに応じて、前記車体の前側又は後側に該ノズルを切り替えて配置してもよい。
【0018】
上記構成によれば、前進後、後進する第一動作モードの終了後に、後進後、前進する第二動作モードを選択する。作業者は、作業用通路よりも前側に配置された作物に対して、散布作業を行った後、受付部を操作するだけで、車体を回転させることなく、作業用通路よりも後側に配置された作物に対して、散布作業を行うことができる。
そして、上記構成によれば、各動作モードの前進又は後進時に、ノズルの配置を制御することで、無散布領域が生じるのを良好に抑制することができる。
【0019】
本開示の散布方法は、車体に取り付けられた液体を散布するノズルを、前記車体の前側又は後側に切り替えて配置し、前記車体を被散布体が並ぶ方向に沿って移動させつつ、前記ノズルから前記液体を散布する。
【0020】
上記構成によれば、車体の移動方向に応じて、ノズルの位置を車体の前側又は後側に切り替えて配置するので、無散布領域が生じるのが良好に抑制される。
【発明の効果】
【0021】
本開示に係る散布装置にあっては、支持部により支持されたノズルの位置を車体の前側又は後側に切り替えることにより、作物等の被散布体の列に車体の長さ分、無散布領域が生じるのが抑制される。作業者は重量がある散布装置を旋回させる必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施の形態1に係る散布装置を示す斜視図である。
【
図5】散布装置のノズル部が車体の後側に配置された状態を示す左側面図である。
【
図7】散布装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【
図9】FPGAによる散布処理を説明するフローチャートである。
【
図10】ノズル部の位置の切替構造を有さない散布装置により散布作業を行う場合の説明図である。
【
図11】ノズル部の位置の切替構造を有する散布装置により散布作業を行う場合の説明図である。
【
図12】実施の形態2に係る散布装置を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。以下の説明では、図に示す上下前後左右を使用する。
図1は実施の形態1に係る散布装置20を示す斜視図、
図2は
図1の一部拡大図、
図3は散布装置20の平面図、
図4は散布装置20の左側面図、
図5は散布装置20のノズル部が車体の後側に配置された状態を示す左側面図、
図6は散布装置20の背面図である。
【0024】
散布装置20は前後方向に延びる直方体状の車体1を備える。車体1は、左右各一対の前輪2,2、及び後輪3,3により支持されている。後輪3,3は車体1内に設けたモータ16(
図7参照)により回転(正逆)駆動される駆動輪である。前輪2,2は従動輪であり、車体1は後輪3,3の回転に応じて、レール31に沿って前進又は後進する。
前輪2,2、及び後輪3,3は夫々の外側を大径化して形成された鍔を有する。各鍔は、レール31に外側から接して、レール31に沿った走行をガイドする。
【0025】
車体1の上部には、左右の側板の略中央から立ち上がる脚柱間に横梁を架け渡してなる支持体5が設けられている。支持体5の横梁には、上下方向の軸回りに回転可能な回転板7が支持されている。回転板7には、ハンドル4と、ノズル支持管6とが取り付けられている。ハンドル4は、後方に延びる左右両側の支え棒と、両支え棒の後端間に横架された把持棒とを備える枠型の部材である。作業者は車体1の後側に立ち、ハンドル4の把持棒を把持して回転板7を回転操作することができる。なお、ハンドル4の支え棒は後側部分が前側部分より高くなるように屈曲させてあり、作業者が無理のない姿勢で把持棒を把持できるようにしてある。
【0026】
ハンドル4には、取付部材を介して、ディスプレイ及び複数のスイッチを有する操作部10が取り付けられている。操作部10は制御部15(
図7参照)を内蔵する。操作部10は、作業者の操作を受け付ける。例えば、作業者は操作部10を操作し、後述する第一動作モード又は第二動作モードを選択する。操作部10は、ノズル部9の前後位置の切り替えの操作を受け付けることにしてもよい。
【0027】
ノズル支持管6は、回転板7の上面から立ち上がり、前方に向けて屈曲している。
ノズル支持管6の前端には、上下方向に延びる支持棒91が取り付けられている。支持棒91は中途に設けたヒンジ92により折り曲げが可能であり、支持棒91を折り曲げた状態で、散布装置20を収納場所に収納できるように構成されている。支持棒91には、上下方向に所定の間隔を隔てて複数のノズル94が取り付けられている。一対のノズル94は左右両側に向けた噴出口を有する。ノズル94として、例えば静電ノズルが挙げられる。
各ノズル94には、薬液を供給するためのチューブ93が接続されている。チューブ93は支持棒91に沿わせて下方に延び、車体1の後部に設けた接続口11に接続されている(
図4参照)。接続口11は薬液が通流する通流管(図示略)に接続され、通流管は、薬液を送出するポンプ(図示略)に接続されている。接続口11とチューブ93の一端部とを接続し、車体1内を通る管(図示略)には、電磁弁17(
図7参照)が設けられている。支持棒91、ヒンジ92、チューブ93、及びノズル94によりノズル部9が構成される。
【0028】
回転板7上の、ノズル支持管6の側方にピン取付台81が設けられており、ピン取付台81には上面から先端が突出する状態で、ピン8が昇降可能に取り付けられている。ピン8の先端は、支持体5の該当位置に設けたロック孔(図示略)に係合されるように構成されている。
ピン8はバネ(図示略)で下向きに付勢されている。ピン8は、ワイヤ4bを介しハンドル4の把持棒に設けたブレーキレバー4aに連結されている。作業者がブレーキレバー4aを握る操作をすると、ワイヤ4bに引かれてピン8はバネ力に抗して上昇する。ブレーキレバー4aを離した場合、圧縮バネのバネ荷重でピン8が下降する。
【0029】
作業者がブレーキレバー4aを握り、ピン8を上げた状態で、ハンドル4を回すことにより回転板7が回転して、ノズル部9の配置が初期位置の車体1の前側から後側へ切り替わる。
図5は、ノズル部9の配置が車体1の後側へ切り替わった状態を示す左側面図である。ノズル部9の回転が終了した時点で、ブレーキレバー4aを離すことにより、ピン8が下降してロック孔に嵌り、回転板7の回転が抑止される。
回転板7はモータにより駆動することにしてもよい。ピン8はソレノイドにより昇降させることにしてもよい。
【0030】
図6に示すように、支持体5の後側の左右には、位置検出スイッチ12,12が設けられている。ピン8が下降したときに、ピン8の先端部が位置検出スイッチ12の接点12aに接してオンになり、信号が制御部15へ送られ、ノズル部9の位置が検出される。
図5においては、ノズル部9が車体1の後側にあり、左側の位置検出スイッチ12の接点12aに接している状態を示す。ノズル部9が180度回転し、後側に移動した場合、ピン8は右側の位置検出スイッチ12の接点に接する。左右のいずれの位置検出スイッチ12の接点12aにピン8が接しているのかが検出されることにより、ノズル部9の位置が検出される。
【0031】
図7は、散布装置20の制御部15の構成を示すブロック図である。散布装置20は、後輪3を駆動するモータ16と、前記管を開閉する電磁弁17と、該電磁弁17及びモータ16の駆動を制御する制御部15とを備える。モータ16の回転は、減速機(図示略)及び伝動部材を介して、後輪3,3に伝達される。なお、車体1は四輪駆動されてもよい。制御部15は、FPGA15a(Field Programmable Gate Array)、記憶部15b及びタイマ15cを備える。記憶部15bは、例えば不揮発性メモリ又は揮発性メモリを有する。記憶部15bには、車体1を前進させた後、後進させる第一動作モードを実行する第一プログラムと、車体1を後進させた後、前進させる第二動作モードを実行する第二プログラムとが記憶されている。
【0032】
なおFPGA15aに代えて、プロセッサ、例えばCPU(Central Processing Unit)
又はMPU(Micro Processing Unit)を使用してもよい。制御部15には、操作部10、位置検出スイッチ12、及び磁気センサ13からの出力信号が入力される。磁気センサ13は車体1の底部前側に設けられており、後述する第一磁石41~第四磁石44の磁気を検出する。FPGA15aは、モータ16に対して、前進信号、後進信号又は停止信号を出力し、電磁弁17に対して、開閉信号を出力する。
【0033】
図8は、ハウス50内の構成を示す平面図である。ハウス50内には、左右に延びた作業用通路52が設けられている。作業用通路52の前側に、前後に延びた作物の列(畝)51、51が左右に並んでいる。以下、作物の列51を単に列51という。作業用通路52の後側にも、前後に延びた作物の列51、51が左右に並んでおり、列51、51の間には、前後に延びる二つのレール31、31が設けられている。
【0034】
作業用通路52よりも前側において、二つのレール31、31の間に、第一磁石41及び第二磁石42が設けられている。第一磁石41は、レール31の後端部、即ち作業用通路52側の端部付近に設けられており、第二磁石42は、レール31の前端部、即ち作業用通路52の反対側端部付近に設けられている。
【0035】
作業用通路52よりも後側において、二つのレール31、31の間に、第三磁石43及
び第四磁石44が設けられている。第三磁石43は、レール31の前端部、即ち作業用通路52側の端部付近に設けられており、第四磁石44は、レール31の後端部、即ち作業用通路52の反対側端部付近に設けられている。第一磁石41~第四磁石44は、地中に埋められている。なお第一磁石41~第四磁石44を地上に設置してもよい。
【0036】
以下、散布装置20を用い、ハウス50内にて、薬液を散布する散布処理について説明する。作業者によって、散布装置20における前輪2が、作業用通路52よりも前側で、前側の列51の後端部に臨む位置に配置されているものとし(
図8参照)、電磁弁17は閉じており、磁気センサ13は第一磁石41よりも後側に配置され、モータ16は停止しているものとする。
以下の説明では、回転板7は、作業者がハンドル4を回すことにより回転させられるのではなく、モータ(図示略)により回転駆動され、ピン8は電動により昇降されるものとする。
【0037】
図9は、FPGA15aによる散布処理を説明するフローチャートである。
FPGA15aは、操作部10からの信号を取り込み、第一動作モードが選択されているか否かを判定する(S1)。第一動作モードが選択されている場合(S1:YES)、FPGA15aは、操作部10からの信号を取り込み、移動開始信号が入力されたか否か判定する(S2)。移動開始信号が入力されていない場合(S2:NO)、FPGA15aは待機する。
移動開始信号が入力された場合(S2:YES)、FPGA15aはモータ16に前進信号を出力する(S3)。モータ16は正回転し、前輪2及び後輪3はレール31上を移動し、散布装置20の車体1は前進する。
【0038】
FPGA15aは、磁気を二回検出したか否かを判定する(S4)。即ち、第一磁石41を検出した後に、更に第二磁石42を検出したか否かを判定する。第一磁石41及び第二磁石42を検出した場合、車体1は、作業用通路52よりも前側において、作物の列51の前端部に位置すると判定される。磁気を二回検出していない場合(S4:NO)、FPGA15aは待機する。磁気を二回検出していない場合、車体1は列51の前端部に至っていないと判定される。車体1は、第一磁石41と第二磁石42との間に位置している。なお磁気を検出した場合、FPGA15aは、磁気を検出したことを示す情報を記憶部15bに記憶する。記憶部15bは、磁気を一回目に検出した情報と、磁気を二回目に検出した情報とを記憶する。
【0039】
磁気を二回検出した場合(S4:YES)、FPGA15aはモータ16に停止信号を出力し、ノズル部9の位置が車体1の前側であるか否かを判定する(S5)。FPGA15aは、ピン8の下降によりオンになっている位置検出スイッチ12が左の位置検出スイッチ12であるかを検出して、ノズル部9の位置が車体1の前側であるか否かを判定する。
【0040】
FPGA15aはノズル部9の位置が車体1の前側であると判定した場合(S5:YES)、処理をS7へ進める。
FPGA15aはノズル部9の位置が車体1の前側でないと判定した場合(S5:NO)、モータにより回転板7を回転させ、ノズル部9を車体1の前側に配置する(S6)。FPGA15aはピン8を下降させて回転板7の回転を抑止する。ピン8の下降により左の位置検出スイッチ12がオンになり、FPGA15aはノズル部9が前側に位置することを検出する。
【0041】
FPGA15aはモータ16に後進信号を出力する(S7)。車体1は後進する。即ち、車体1の移動方向は反転する。このとき、FPGA15aは、記憶部15bに記憶された、一回目及び二回目に磁気を検出したことを示す情報をクリアする。
【0042】
FPGA15aは、電磁弁17に開信号を出力する(S8)。電磁弁17は開き、ノズル94から薬液が散布される。散布装置20は、後進しながら薬液の散布を実行する。FPGA15aは、磁気を二回検出したか否か判定する(S9)。即ち、第二磁石42を検出した後に、更に第一磁石41を検出したか否かを判定する。第二磁石42及び第一磁石41を検出した場合、車体1は、作業用通路52よりも前側において、作物の列51の後端部に位置すると考えられる。
【0043】
磁気を二回検出していない場合(S9:NO)、FPGA15aは待機する。磁気を二回検出していない場合、車体1は列51の後端部に至っていないと判定される。例えば、車体1は、第一磁石41と第二磁石42との間に位置していると判定される。磁気を二回検出した場合(S9:YES)、FPGA15aはタイマ15cによって所定時間、例えば2~5秒が経過したか否かを判定する(S10)。所定時間が経過していない場合(S10:NO)、FPGA15aは待機する。所定時間待機することによって、車体1は第一磁石41よりも後側に移動し、作物の列51の後端に車体1を位置させることができる。所定時間が経過した場合(S10:YES)、FPGA15aは電磁弁17に閉信号を出力し(S11)、モータ16に停止信号を出力する(S12)。散布装置20は薬液の散布を停止し、作業用通路52にて停止する。FPGA15aはS1に処理を戻す。
【0044】
S1において、第一動作モードが選択されていない場合(S1:NO)、FPGA15aは、操作部10からの信号を取り込み、第二動作モードが選択されているか否かを判定する(S13)。前述したように、S1~12を実行した後、散布装置20は作業用通路52にて停止し、薬液の散布を停止している。作業者は、第二動作モードを選択することによって、車体1を回転させることなく、作業用通路52よりも後側に配置された作物の列51に対しても、引き続き薬液を散布することができる。
【0045】
第二モードが選択されている場合(S13:YES)、FPGA15aは、操作部10からの信号を取り込み、移動開始信号が入力されたか否か判定する(S14)。移動開始信号が入力されていない場合(S14:NO)、FPGA15aは待機する。移動開始信号が入力された場合(S14:YES)、FPGA15aはモータ16に後進信号を出力する(S15)。モータ16は逆回転し、前輪2及び後輪3はレール31上を移動し、車体1は後進する。
【0046】
FPGA15aは、磁気を二回検出したか否かを判定する(S16)。即ち、第三磁石43を検出した後に、更に第四磁石44を検出したか否かを判定する。第三磁石43及び第四磁石44を検出した場合、車体1は、作業用通路52よりも後側において、作物の列51の後端部に位置すると判定される。磁気を二回検出していない場合(S16:NO)、FPGA15aは待機する。磁気を二回検出していない場合、車体1は列51の後端部に至っていないと判定される。車体1は、第三磁石43と第四磁石44との間に位置していると判定される。
【0047】
磁気を二回検出した場合(S16:YES)、FPGA15aはモータ16に停止信号を出力し、ノズル部9の位置が車体1の後側であるか否かを判定する(S17)。FPGA15aはピン8の下降によりオンになっている位置検出スイッチ12が右の位置検出スイッチ12であるかを検出して、ノズル部9の位置が車体1の後側であるか否かを判定する。
FPGA15aはノズル部9の位置が車体1の後側であると判定した場合(S17:YES)、処理をS19へ進める。
FPGA15aはノズル部9の位置が車体1の後側でないと判定した場合(S17:NO)、モータにより回転板7を回転させ、ノズル部9を車体1の後側に配置する(S18)。FPGA15aはピン8を下降させて回転板7の回転を抑止する。ピン8の下降により右の位置検出スイッチ12がオンになり、FPGA15aはノズル部9が後側に位置することを検出する。
FPGA15aは、前進信号を出力する(S19)。車体1は前進する。即ち、車体1の移動方向は反転する。このとき、FPGA15aは、記憶部15bに記憶された、一回目及び二回目に磁気を検出したことを示す情報をクリアする。
【0048】
FPGA15aは、電磁弁17に開信号を出力する(S20)。電磁弁17は開き、ノズル94から薬液が散布される。散布装置20は、前進しながら薬液の散布を実行する。FPGA15aは、磁気を二回検出したか否か判定する(S21)。即ち、第四磁石44を検出した後に、更に第三磁石43を検出したか否かを判定する。第四磁石44及び第三磁石43を検出した場合、車体1は、作業用通路52よりも後側において、作物の列51の前端部に位置すると判定される。
【0049】
磁気を二回検出していない場合(S21:NO)、FPGA15aは待機する。磁気を二回検出していない場合、車体1は列51の前端部に至っていないと推定される。車体1は、第三磁石43と第四磁石44との間に位置していると推定される。磁気を二回検出した場合(S21:YES)、FPGA15aはタイマ15cによって所定時間、例えば2~5秒が経過したか否かを判定する(S22)。所定時間が経過していない場合(S22:NO)、FPGA15aは待機する。所定時間待機することによって、車体1は第三磁石43よりも前側に移動し、作物の列51の前端に車体1を位置させることができる。所定時間が経過した場合(S22:YES)、FPGA15aは電磁弁17に閉信号を出力し(S23)、モータ16に停止信号を出力する(S24)。散布装置20は薬液の散布を停止し、作業用通路52にて停止する。その後、FPGA15aはS1に処理を戻す。S12において、第二動作モードが選択されていない場合(S13:NO)、FPGA15aはS1に処理を戻す。
【0050】
回転板7をモータではなく、手動で回転させる場合、前側の列51の先端部に散布装置20が位置したときに、作業者がハンドル4を回して回転板7を回転させ、ノズル部9を前側に位置させる。散布装置20は後進しながら薬液を散布する。そして、散布装置20が後側の列51の後端部に位置したときに、作業者がハンドル4を回して回転板7を回転させ、ノズル部9を後側に位置させる。散布装置20は前進しながら薬液を散布する。
【0051】
上述した第一動作モードにおいては、後進時に電磁弁17を開いており、第二動作モードにおいては、前進時に電磁弁17を開いているが、これには限定されない。第一動作モードの前進時に薬液を散布し、第二動作モードの後進時に薬液を散布してもよい。但し、ノズル部9の位置を制御して、無散布領域が生じないようにする。
【0052】
実施の形態1に係る散布装置20は、第一動作モードの終了後に第二動作モードを選択するか、又は第二動作モードの終了後に第一動作モードを選択することができる。作業者は、作業用通路52よりも前側に配置された作物に対して、散布作業を行った後、操作部10を操作するだけで、車体1を回転させることなく、作業用通路52よりも後側に配置された作物に対して、散布作業を行うことができる。または作業用通路52よりも後側に配置された作物に対して、散布作業を行った後、操作部10を操作するだけで、車体1を回転させることなく、作業用通路52よりも前側に配置された作物に対して、散布作業を行うことができる。
【0053】
散布装置20は、第一磁石41及び第二磁石42の間を自動的に往復し、第一動作モードを実行することができる。第三磁石43及び第四磁石44の間を自動的に往復し、第二動作モードを実行することができる。
【0054】
なおレール31は専用レールでもよいし、例えば温水パイプと兼用してもよい。また磁気センサ13及び第一磁石41~第四磁石44に代えて、近接センサ(例えば光センサ、ホールセンサ又は超音波センサなど)及びドグを使用してもよい。
【0055】
図10は、ノズル部9の位置の切替構造を有さない散布装置により散布作業を行う場合の説明図である。
散布装置は第一動作モードにおいて前側の列51,51間を前進し、後進する場合にノズル部9から薬液を散布する。散布装置は第二動作モードにおいて後側の列51,51間を後進し、前進する場合にノズル部9から薬液を散布する。ノズル部9の位置が車体1の前側に固定されているので、ハウス50の壁面に当たる等の制約により、後側の列51の後端部から車体1が突出できない場合、第二動作モードで前進して散布するときに、車体1の長さ分、無散布領域が生じるのが分かる。無散布領域が生じるのを回避するためには、後側の列51,51間の後端部において、散布装置を旋回する必要があるが、散布装置を旋回させるのは困難であり、煩雑である。
【0056】
図11は、ノズル部9の位置の切替構造を有する散布装置20により散布作業を行う場合の説明図である。
図9のフローチャートを用いて説明したように、散布装置20は第一動作モードにおいて前側の列51,51間を前進し、列51の先端部でノズル部9を車体1の前側に配置し、後進するときにノズル部9から薬液を散布する。散布装置20は、この状態で第二動作モードにおいて後側の列51,51間を後進し、後端部でノズル部9を車体1の後側に配置し、前進するときにノズル部9から薬液を散布する。
図11に示すように、後側の列51の後端から薬液を散布することができるので、列51の後端部に無散布領域が生じないことが分かる。
【0057】
以上のように、本実施形態においては、回転板7に支持されたノズル部9の位置を車体1の前側又は後側に切り替えるので、列51に車体1の長さ分、無散布領域が生じるのが抑制される。作業者は重量がある散布装置20を旋回させる必要がない。
【0058】
手動の場合、作業者はハンドル4を握って回転板7を回転させることにより、容易にノズル部9の位置を切り替えることができる。
ノズル部9が車体1の前側又は後側に配置されたときに、ノズル部9が動くのがピン8により抑止される。
【0059】
位置検出スイッチ12により、ノズル部9が車体1の前側又は後側のいずれに位置するかが判定される。作業者が位置を確認する必要がない。ノズル部9の位置が検出されるので、自動的にノズル部9の位置を決めて、散布を行うことができる。作業者は車体1の進行方向を選択する必要がない。各動作モードにおいて、前進及び後進のいずれのときに薬液を散布するのかに基づいて、自動的にノズル部9の位置を検出し、必要に応じてノズル部9の位置を切り替えて、薬液を散布することができる。
【0060】
(実施の形態2)
図12は、実施の形態2に係る散布装置30を示す左側面図である。図中、
図4と同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図12に示すように、ノズル支持管6は支持体5の上部から前方に向けて延びており、先端部にノズル部9が取り付けられている。ノズル支持管6は支持体5の上部に設けられた、左右方向に延びる枢軸18の軸回りに回転可能に構成されている。
始めにノズル部9が車体1の前側に配置されていた場合に、ノズル支持管6を車体1の後側に回転させることにより、ノズル部9を後側に配置することができる。
【0061】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
例えば、車体1の上面に一対のレールを設け、ハンドル4及びノズル部9を取り付けた板体をレールを介して車体1の前後にスライドできるようにし、ノズル部9の配置を車体1の前側及び後側に切り替えるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 車体
2 前輪
3 後輪
4 ハンドル
4a ブレーキレバー
4b ワイヤ
5 支持体
6 ノズル支持管
7 回転板(支持部)
8 ピン
81 ピン取付台
9 ノズル部
94 ノズル
10 操作部(受付部)
12 位置検出スイッチ
13 磁気センサ
15 制御部
16 モータ
18 枢軸
20、30 散布装置
41 第一磁石
43 第三磁石
42 第二磁石
44 第四磁石