(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】向上した性能を備える、ナノ結晶を利用した中遠赤外光検出器
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0264 20060101AFI20220708BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20220708BHJP
C01B 19/04 20060101ALI20220708BHJP
C01G 13/00 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
H01L31/08 N
G01J1/02 Y
C01B19/04 W
C01B19/04 A
C01G13/00 Z
(21)【出願番号】P 2018503538
(86)(22)【出願日】2016-07-28
(86)【国際出願番号】 EP2016068106
(87)【国際公開番号】W WO2017017238
(87)【国際公開日】2017-02-02
【審査請求日】2019-06-25
(32)【優先日】2015-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517338412
【氏名又は名称】ネクスドット
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ルイリエ,エマニュエル
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-220331(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0299772(US,A1)
【文献】国際公開第2014/191083(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0114436(KR,A)
【文献】特開2013-089969(JP,A)
【文献】ASIL, Demet et al.,Role of PbSe Structural Stabilization in Photovoltaic Cells,ADVANCED FUNCTIONAL MATERIALS,2015年,VOL.25,pp.928-935
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/20
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の有機配位子および無機配位子で被覆された複数の金属カルコゲナイドナノ結晶であって、
前記金属がHg、Pb、Sn、Cd、Bi、Sbまたはそれらの混合物から選択され;前記カルコゲンがS、Se、Teまたはそれらの混合物から選択され;
前記複数の無機配位子が、S
2-、HS
-、Se
2-、Te
2-、OH
-、BF
4
-、PF
6
-、Cl
-、Br
-、I
-、As
2Se
3、Sb
2S
3、Sb
2Se
3、As
2S
3またはそれらの混合物から選択される少なくとも1種の無機配位子を含み;
前記金属カルコゲナイドナノ結晶の表面の前記有機配位子と前記無機配位子の間のモル比は、0.001~0.25の範囲内にある、
複数の金属カルコゲナイドナノ結晶。
【請求項2】
被覆された金属カルコゲナイドナノ結晶の光吸収に対する有機配位子の光吸収が50%未満である、請求項1に記載の複数の金属カルコゲナイドナノ結晶。
【請求項3】
前記複数の金属カルコゲナイドナノ結晶は、3μm~50μmの範囲内の
波長に光吸収ピークおよび1cm
2V
-1s
-1以上のキャリア移動度を示す、
請求項1または請求項2に記載の複数の金属カルコゲナイドナノ結晶。
【請求項4】
前記複数の金属カルコゲナイドナノ結晶は、0.8μm~25μmの範囲内の
波長に光吸収ピークを示す、請求項1に記載の複数の金属カルコゲナイドナノ結晶。
【請求項5】
前記金属が、HgまたはHgとPb、Sn、Cd、Bi、Sbのうちの少なくとも1種との混合物から選択され;前記カルコゲンが、S、Se、Teまたはそれらの混合物から選択され;但し、無機配位子で被覆された前記金属カルコゲナイドナノ結晶は、As
2S
3で被覆されたHgTeではない、
請求項1~4のいずれか一項に記載の複数の金属カルコゲナイドナノ結晶。
【請求項6】
前記金属カルコゲナイドナノ結晶は、ドープされて
おり、
前記金属カルコゲナイドナノ結晶のドーピングは、n型ドーピングである、
請求項1~5のいずれか一項に記載の複数の金属カルコゲナイドナノ結晶。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の複数の金属カルコゲナイドナノ結晶を製造するための方法であって、以下の:
配位性溶媒中に金属カルボン酸塩を提供する工程;
60℃~130℃の範囲の温度にて、カルコゲナイド前駆体を前記溶液中に混合する工程;
金属カルコゲナイドナノ結晶を単離する工程;および
単離された金属カルコゲナイドナノ結晶を複数の無機配位子で被覆する工程、
を包含し、
前記複数の無機配位子が、S
2-、HS
-、Se
2-、Te
2-、OH
-、BF
4
-、PF
6
-、Cl
-、Br
-、I
-、As
2Se
3、Sb
2S
3、Sb
2Se
3、As
2S
3またはそれらの混合物から選択される少なくとも1種の無機配位子を含む、
方法。
【請求項8】
前記金属カルボン酸塩が、金属オレイン酸塩または金属酢酸塩である、請求項7に記載の複数の金属カルコゲナイドナノ結晶を製造するための方法。
【請求項9】
前記配位性溶媒が一級アミンから選択される、請求項7または8に記載の複数の金属カルコゲナイドナノ結晶を製造するための方法。
【請求項10】
前記一級アミンが、オレイルアミン、ヘキサデシルアミン、またはオクタデシルアミンである、請求項9に記載の複数の金属カルコゲナイドナノ結晶を製造するための方法。
【請求項11】
前記カルコゲナイド前駆体が、トリオクチルホスフィンカルコゲナイド、トリメチルシリルカルコゲナイド、またはジスルフィドカルコゲナイドから選択される、請求項7~10のいずれか一項に記載の複数の金属カルコゲナイドナノ結晶を製造するための方法。
【請求項12】
カルコゲナイド前駆体の注入後の1~60分間の範囲の所定の時間にわたって混合物を60℃~130℃の範囲の温度に維持する工程をさらに含む、請求項7~11のいずれか一項に記載の
複数の金属カルコゲナイドナノ結晶を製造するための方法。
【請求項13】
前記複数の無機配位子が、S
2-、HS
-、Se
2-、Te
2-、OH
-、BF
4
-、PF
6
-、Cl
-、Br
-、I
-、As
2Se
3、Sb
2S
3、Sb
2Te
3、Sb
2Se
3、As
2S
3またはそれらの混合物から選択される少なくとも1種の無機配位子を含む、
請求項7~12のいずれか一項に記載の
複数の金属カルコゲナイドナノ結晶を製造するための方法。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか一項に記載の複数の金属カルコゲナイドナノ結晶を含む光吸収層と、
前記光吸収層
に被着された第1の複数の電気的接続と、
を含む光伝導体であって、
前記複数の金属カルコゲナイドナノ結晶は、3μm~50μmの範囲の波長の光による前記光吸収層の照明に応答して前記電気的接続間の、および前記光吸収層全体の、伝導性が増加するように配置されており、
キャリア移動度が1cm
2V
-1s
-1以上である、
光伝導体。
【請求項15】
前記光吸収層が、3nm~1mmの範囲の厚さを有する、
請求項14に記載の光伝導体。
【請求項16】
前記光吸収層が、100nm
2~1m
2の範囲の面積を有する、
請求項14または請求項15に記載の光伝導体。
【請求項17】
請求項1~6のいずれか一項に記載の複数の金属カルコゲナイドナノ結晶を含む光吸収層と、
前記光吸収層
に被着された第1の複数の電気的接続と、
を含む光ダイオードであって、
前記複数の金属カルコゲナイドナノ結晶は、3μm~50μmの範囲の波長の光による前記光吸収層の照明に応答して前記電気的接続間の、および前記光吸収層全体の、伝導性が増加するように配置されており、
キャリア移動度が1cm
2V
-1s
-1以上である、
光ダイオード。
【請求項18】
前記光吸収層が、3nm~1mmの範囲の厚さを有する、
請求項17に記載の光ダイオード。
【請求項19】
前記光吸収層が、100nm
2~1m
2の範囲の面積を有する、
請求項17または請求項18に記載の光ダイオード。
【請求項20】
請求項1~6のいずれか一項に記載の複数の金属カルコゲナイドナノ結晶を含む光吸収層と、
前記光吸収層
に被着された第1の複数の電気的接続と、
を含む光トランジスタであって、
前記複数の金属カルコゲナイドナノ結晶は、3μm~50μmの範囲の波長の光による前記光吸収層の照明に応答して前記電気的接続間の、および前記光吸収層全体の、伝導性が増加するように配置されており、
キャリア移動度が1cm
2V
-1s
-1以上である、
光トランジスタ。
【請求項21】
前記光吸収層が、3nm~1mmの範囲の厚さを有する、
請求項20に記載の光トランジスタ。
【請求項22】
前記光吸収層が、100nm
2~1m
2の範囲の面積を有する、
請求項20または請求項21に記載の光トランジスタ。
【請求項23】
請求項14~22のいずれか一項に記載の複数の光伝導体、光ダイオードまたは光トランジスタと、前記複数の光伝導体、光ダイオードまたは光トランジスタに電気的に接続された読み出し回路と、を含むデバイス。
【請求項24】
請求項1~6のいずれか一項に記載の金属カルコゲナイドナノ結晶を含むIR吸収性コーティング材料。
【請求項25】
請求項1~6のいずれか一項に記載の金属カルコゲナイドナノ結晶を含むボロメーター。
【請求項26】
請求項1~6のいずれか一項に記載の金属カルコゲナイドナノ結晶を含むパイロメーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、赤外線イメージングの分野に属する。特に、本発明は、3μm~50μmの範囲内の波長での中遠波長赤外線イメージングの分野における方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
90年代初期に報告されたコロイドナノ結晶の最初の合成以来、そのようなナノ結晶の光電子デバイスへの組み込みに多くの関心が寄せられている。実際、コロイド量子ドット(CQD)は、その工程の容易さとその無機的性質に起因するその安定性との組み合わせのおかげで、低コストの光電子デバイスの構築の見込みを与える。初期段階では、その努力の大部分は可視波長に集中したが、これらのナノ材料を照明およびバイオイメージングなどの用途に使用するアイデアが急速に出現した。この分野が成長するにつれて、より多くの材料合成が利用可能になり、特に、鉛カルコゲナイドなどのナローバンドギャップIV-VI化合物の合成が可能になった。そのような材料は、太陽光発電用途のための太陽光の近赤外波長範囲の吸収に取り組むために重要であった。
【0003】
しかし、光電子工学用途へのコロイドナノ粒子の使用は、遥かに成熟しており既に費用対効果の高い相補型金属酸化膜半導体(CMOS)またはインジウムガリウムヒ素(InGaAs)などの既存の技術と競わなければならない。一方、紫外線(UV)および赤外線(IR)は依然として、より高価であり、技術的に困難である。IRでは、現在の技術(多重量子井戸、HgCdTeおよびII型超格子...)は依然として高コストな技術であり、この波長範囲の場合には、有機電子工学は非効率的である。
【0004】
中遠IRでは、代替技術の探求は遥かに明らかではなく、これは、この波長範囲では有機材料が有効ではないためである。従って、低コストの光電子デバイスを達成するためにコロイドナノ結晶を用いて中遠IRに対処するという真の課題が存在する。ナノ結晶は、12μmより上での吸収およびより高い移動度を示すことができれば、既存の技術と競うためのいくつかの興味深い特性を提供する可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、(i)このタイプの材料で対処することができる、より広い波長範囲を実証することによって、および(ii)第2にそれらの輸送特性を改善することによって(特により高いキャリア移動度を実証することによって)、2つの方向性でナノ結晶の光電子特性をさらに後押しすることである。これら2つの特徴が合わさって、ナノ結晶を利用した光電子デバイスとより成熟したIR専用半導体デバイスとの間のギャップを埋めると期待される。
【0006】
US2014/0299772は、HgTeナノ粒子を含む中赤外光検出器であって1.7~12μmの範囲内の波長の光による照明の下で光吸収層全体の伝導性の増加を示す中赤外光検出器を開示する。この特許およびAdv Mat 25, 137(2013)において、その著者らは、赤外活性材料(infrared active material)としてのHgTe CQDの使用を説明している。しかし、その輸送特性および特にキャリア移動度は、かなり低いままであり(0.1cm
2
V
-1
s
-1
未満)、システムの全体的な光応答を制限する。
【0007】
この分野における重要なブレイクスルーは、水銀カルコゲナイドに基づく自然に自己ドープされるCQDの発見であった。CQDの自己ドープは、バンド間遷移だけでなく、エネルギーの間隔がより狭くなる傾向のあるバンド内遷移も観察することを可能にする。結果として、HgSおよびHgSeのCQDは、外部の帯電プロセスを必要とすることなく低エネルギー遷移を示す(J.Phys Chem Lett 5, 1139(2014)およびACS Nano 8, 11707(2014)を参照のこと)。しかし、説明される材料は、やはり、その光伝導特性に対して非常に有害である低い移動度(0.01cm
2
V
-1
s
-1
未満)を示す。さらに、ピークバンド内遷移は6μm未満に制限されたままである。本発明において、我々は、3~50μmのバンド内遷移に対して吸収ピーク波長を容易に調整できるナノ結晶およびそれを得るための方法を提供する。
【0008】
さらに、これらのナノ結晶を無機キャッピングとカップリングさせることによって、我々は、ナノ結晶の薄膜において大きな移動度を達成した。移動度は、100cm
2
V
-1
s
-1
より大きくすることができる。
【0009】
当技術分野の現状と比較すると、達成された本発明のナノ結晶の移動度は、典型的には、2~3桁大きい。そのような改善は、材料の光電子特性に直接影響を及ぼす。著しい改善は、同じ検出性能を達成するために、我々の材料は室温で稼働できるが以前の報告(ACS Nano 8, 11707(2014))では極低温条件(すなわち、200K未満)において稼働されたという事実である。
【発明の概要】
【0010】
概要
本発明は、複数の有機配位子および/または無機配位子で被覆された複数の金属カルコゲナイドナノ結晶であって、
前記金属がHg、Pb、Sn、Cd、Bi、Sbまたはそれらの混合物から選択され;前記カルコゲンがS、Se、Teまたはそれらの混合物から選択され;
前記複数の無機配位子が、S
2-
、HS
-
、Se
2-
、Te
2-
、OH
-
、BF
4
-
、PF
6
-
、Cl
-
、Br
-
、I
-
、As
2
Se
3
、Sb
2
S
3
、Sb
2
Te
3
、Sb
2
Se
3
、As
2
S
3
またはそれらの混合物から選択される少なくとも1種の無機配位子を含み;
金属カルコゲナイドナノ結晶の吸収に対する有機配位子の吸収が50%未満(好ましくは20%未満)である、
複数の金属カルコゲナイドナノ結晶に関する。
【0011】
一実施形態によれば、前記複数の金属カルコゲナイドナノ結晶は、3μm~50μmの範囲内の光吸収特性および1cm
2
V
-1
s
-1
以上のキャリア移動度を示す。
【0012】
一実施形態によれば、前記金属は、HgまたはHgとPb、Sn、Cd、Bi、Sbのうちの少なくとも1種との混合物から選択され;前記カルコゲンは、S、Se、Teまたはそれらの混合物から選択され;但し、無機配位子で被覆された前記金属カルコゲナイドナノ結晶は、As
2
S
3
で被覆されたHgTeではない。
【0013】
本発明はまた、本発明による複数の金属カルコゲナイドナノ結晶を製造するための方法であって以下の工程を含む方法にも関する:
好ましくは一級アミン、より好ましくはオレイルアミン(oleyamine)、ヘキサデシルアミンまたはオクタデシルアミン、から選択される配位性溶媒中に金属カルボン酸塩(好ましくは金属オレイン酸塩または金属酢酸塩)を提供する工程;
60℃~130℃の範囲の温度にて、好ましくはトリオクチルホスフィンカルコゲナイド、トリメチルシリルカルコゲナイドまたはジスルフィドカルコゲナイドから選択されるカルコゲナイド前駆体を前記溶液中に混合する工程;
金属カルコゲナイドナノ結晶を単離する工程;および
単離された金属カルコゲナイドナノ結晶を複数の無機配位子で被覆する工程。
【0014】
一実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶を単離する工程は、チオールおよび/またはホスフィンをナノ結晶と混合することと;それにより、クエンチされた混合物を形成することと;その後に、クエンチされた混合物からナノ結晶を抽出することと、を含む。
【0015】
一実施形態によれば、本発明によるコロイド金属カルコゲナイドナノ結晶を製造するための方法は、カルコゲナイド前駆体の注入後の1~60分間の範囲の所定の時間にわたって混合物を60℃~130℃の範囲の温度に維持する工程をさらに含む。
【0016】
一実施形態によれば、前記複数の無機配位子は、S
2-
、HS
-
、Se
2-
、Te
2-
、OH
-
、BF
4
-
、PF
6
-
、Cl
-
、Br
-
、I
-
、As
2
Se
3
、Sb
2
S
3
、Sb
2
Te
3
、Sb
2
Se
3
、As
2
S
3
またはそれらの混合物から選択される少なくとも1種の無機配位子を含む。
【0017】
本発明はまた、
本発明による複数の金属カルコゲナイドナノ結晶、または本発明に従って製造された複数の金属カルコゲナイドナノ結晶、を含む光吸収層と;
光吸収層を橋渡しする第1の複数の電気的接続と、
を含む光伝導体、光ダイオードまたは光トランジスタであって、
複数の金属カルコゲナイドナノ結晶は、3μm~50μmの範囲の波長の光による光吸収層(photoabsortive layer)の照明に応答して電気的接続間の、および光吸収層全体の、伝導性が増加するように配置されており、
キャリア移動度は1cm
2
V
-1
s
-1
以上である、
光伝導体、光ダイオードまたは光トランジスタにも関する。
【0018】
一実施形態によれば、光吸収層は、3nm~1mmの範囲の厚さを有する。一実施形態によれば、光吸収層は、100nm
2
~1m
2
の範囲の面積を有する。
【0019】
本発明はまた、本発明による複数の光伝導体、光ダイオードまたは光トランジスタと、複数の光伝導体、光ダイオードまたは光トランジスタに電気的に接続された読み出し回路と、を含むデバイスにも関する。
【0020】
本発明はまた、本発明による金属カルコゲナイドナノ結晶、または本発明に従って製造された金属カルコゲナイドナノ結晶、を含むIR吸収性コーティング材料にも関する。
【0021】
本発明はまた、本発明による金属カルコゲナイドナノ結晶、または本発明に従って製造された金属カルコゲナイドナノ結晶、を含むボロメーターまたはパイロメーターにも関する。
【0022】
本発明はまた、複数の有機配位子で被覆された複数の金属カルコゲナイドナノ結晶を含むボロメーターまたはパイロメーターであって、前記金属は、HgまたはHgとPb、Sn、Cd、Bi、Sbのうちの少なくとも1種との混合物から選択され;前記カルコゲンは、S、Se、Teまたはそれらの混合物から選択される、ボロメーターまたはパイロメーターにも関する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
本発明において、以下の用語は以下の意味を有する。
【0024】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、そうではないことを文脈が明確に示さない限り、複数への言及を包含する。
【0025】
「約(about)」なる用語は、本明細書において、「およそ(approximately)」、「大体(roughly)」、「付近(around)」または「ほぼ(in the region of)」を意味するために使用される。「約」なる用語は、数値範囲と共に使用される場合、記載される数値より上および下に境界を拡張することによってその範囲を変更する。一般に、「約」なる用語は、本明細書において、数値を20パーセントの変動で、記載される値より上および下に変更するために使用される。
【0026】
「キャリア移動度」は、半導体における電子移動度および正孔移動度の両方を指す。電子移動度および正孔移動度は、印加される電場の関数として各キャリアの速度に関係する。
【0027】
「遠赤外」は、10~300μmの範囲の波長、1~30THzの周波数および4~120meVの光子エネルギーに該当する電磁スペクトルの領域を指す。
【0028】
「中赤外」は、2~12μmの範囲の波長、24~150THzの周波数および100~621meVの光子エネルギーに該当する電磁スペクトルの領域を指す。
【0029】
「ナノ結晶」は、少なくとも1つの寸法が0.1~100ナノメートルの範囲内である任意の形状の粒子を指す。
【0030】
「シェル」は、金属カルコゲナイドナノ結晶の各面(すなわち表面全体;但し、成長プロセスが基材上で実施される場合には前記基材と接触している表面を除く)を覆う少なくとも1原子厚の膜または層を指す。
【0031】
詳細な説明
第一の態様によれば、本発明は、無機配位子で被覆された金属カルコゲナイドナノ結晶または無機配位子で被覆された複数の金属カルコゲナイドナノ結晶に関する。
【0032】
一実施形態において、金属カルコゲナイドナノ結晶は、複数の有機配位子および/または無機配位子で被覆されている。
【0033】
一実施形態において、本発明のナノ結晶は、例えば、量子ドット、ナノシート、ナノロッド、ナノプレートレット、ナノプレート、ナノプリズム、ナノウォール、ナノディスク、ナノ粒子、ナノワイヤ、ナノ粉末、ナノチューブ、ナノテトラポッド、ナノリボン、ナノベルト、ナノワイヤ、ナノニードル、ナノキューブ、ナノボール、ナノコイル、ナノコーン、ナノピラー(nanopiller)、ナノフラワーまたはそれらの組み合わせである。
【0034】
一実施形態によれば、前記金属カルコゲナイドナノ結晶は、0D、1Dまたは2Dの次元を有する。
【0035】
一実施形態によれば、前記金属カルコゲナイドナノ結晶は、以下を含む群または以下からなる群より選択される半導体を含む:IV族、IIIA-VA族、IIA-VIA族、IIIA-VIA族、IA-IIIA-VIA族、IIA-VA族、IVA-VIA族、VIB-VIA族、VB-VIA族、IVB-VIA族またはそれらの混合物。
【0036】
別の実施形態によれば、前記金属は、以下を含む群または以下からなる群より選択される:Hg、Pb、Sn、Cd、Bi、Sbまたはそれらの混合物。
【0037】
別の実施形態によれば、前記金属は、以下を含む群または以下からなる群より選択される:HgまたはHgとPb、Sn、Cd、Bi、Sbのうちの少なくとも1種との混合物。
【0038】
別の実施形態によれば、前記カルコゲナイドは、以下を含む群または以下からなる群より選択される:S、Se、Teまたはそれらの混合物。
【0039】
別の実施形態によれば、前記金属カルコゲナイドナノ結晶は、以下を含む群または以下からなる群より選択される材料を含む:HgS、HgSe、HgTe、Hg
x
Cd
1-x
Te(式中、xは、0と1との間に厳密に含まれる実数である)、PbS、PbSe、PbTe、Bi
2
S
3
、Bi
2
Se
3
、Bi
2
Te
3
、SnS、SnS
2
、SnTe、SnSe、Sb
2
S
3
、Sb
2
Se
3
、Sb
2
Te
3
および合金ならびにそれらの混合物。
【0040】
別の実施形態によれば、前記金属カルコゲナイドナノ結晶は、以下を含む群または以下からなる群より選択される材料を含む:HgS、HgSe、HgTeおよび合金ならびにそれらの混合物。
【0041】
別の実施形態によれば、前記金属カルコゲナイドナノ結晶は、HgSeを含むか、またはHgSeからなる。
【0042】
別の実施形態によれば、前記金属カルコゲナイドナノ結晶は、HgSeTeを含むか、またはHgSeTeからなる。
【0043】
一実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、追加的な元素を少量含む。「少量」なる用語は、本明細書において、0.0001モル%~10モル%(好ましくは0.001モル%~10モル%)の範囲の量を指す。
【0044】
一実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、遷移金属またはランタニドを少量含む。「少量」なる用語は、本明細書において、0.0001モル%~10モル%(好ましくは0.001モル%~10モル%)の範囲の量を指す。
【0045】
一実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、そのナノ結晶だけの場合と比較して電子の過剰または欠損を誘発する元素を少量含む。「少量」なる用語は、本明細書において、0.0001モル%~10モル%(好ましくは0.001モル%~10モル%)の範囲の量を指す。
【0046】
一実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、そのナノ結晶だけの場合と比較して光学特性の改変を誘発する元素を少量含む。「少量」なる用語は、本明細書において、0.0001モル%~10モル%(好ましくは0.001モル%~10モル%)の範囲の量を指す。
【0047】
一実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、当業者に公知のコア/シェル構造または本発明によるコア/シェルを含むか、当業者に公知のコア/シェル構造または本発明によるコア/シェルからなる。一実施形態によれば、「コア」は、そのコアの表面上にオーバーコーティングまたはシェルを有してよい。
【0048】
一実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶はコアシェル構造を有し、シェルはCdS、CdSe、PbS、PbSe、PbTe、ZnO、ZnS、ZnSeでできている。
【0049】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、0.3nm~10μm(より好ましくは1nm~1μm、より好ましくは3nm~100nm、さらにより好ましくは5nm~50nm)の範囲のサイズを有する。
【0050】
一実施形態によれば、シェルの厚さは、0.2nm~10mm、0.2nm~1mm、0.2nm~100μm、0.2nm~10μm、0.2nm~1μm、0.2nm~500nm、0.2nm~250nm、0.2nm~100nm、0.2nm~50nm、0.2nm~25nm、0.2nm~20nm、0.2nm~15nm、0.2nm~10nmまたは0.2nm~5nmの範囲である。
【0051】
別の実施形態によれば、前記金属カルコゲナイドナノ結晶は、異なる半導体を含むか異なる半導体からなる、ヘテロ構造である。
【0052】
一実施形態によれば、前記金属カルコゲナイドナノ結晶は、真性半導体またはドープされていない半導体である。
【0053】
別の実施形態によれば、前記金属カルコゲナイドナノ結晶は、外因性半導体またはドープされた半導体である。
【0054】
一実施形態によれば、ドーピングは、表面効果によって誘発される。
【0055】
一実施形態によれば、ドーピングは、金属カルコゲナイドナノ結晶のその環境による還元によって誘発される。
【0056】
一実施形態によれば、ドーピングは、金属カルコゲナイドナノ結晶の水による還元によって誘発される。
【0057】
一実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶のドーピングは、n型ドーピングである。
【0058】
一実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、電気化学によってドープされる。
【0059】
一実施形態によれば、ドーピングの規模は、キャッピング配位子を変更することによって制御されてよい(
図7bを参照のこと)。
【0060】
一実施形態によれば、ドーピングの規模は、金属カルコゲナイドナノ結晶の表面の分子に付随する表面双極子に依存する。
【0061】
別の実施形態によれば、ドーピングは、前記金属カルコゲナイドナノ結晶の不定比性によって誘発される。
【0062】
別の実施形態によれば、ドーピングは、不純物または複数の不純物によって誘発される。
【0063】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、カチオンに富んだ表面を有する。
【0064】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、アニオンに富んだ表面を有する。
【0065】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、ドープされる。
【0066】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶のドーピングは、ナノ結晶1つあたり0~2個の電子である。
【0067】
本発明の別の実施形態によれば、各金属カルコゲナイドナノ結晶は、ナノ結晶1つあたり100個未満のドーパント(より好ましくは10個未満のドーパント)を含む。
【0068】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、有機配位子(アミン、チオール、カルボン酸、ホスフィン、ホスフィンオキシドなど)によってさらに取り囲まれてよい。
【0069】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、アミン(オレイルアミン、ドデシルアミン、オクタデシルアミン、テトラデシルアミン、オクチルアミン、アニリン、ヘプタジアミン、ブチルアミン、プロピルアミンなど)で被覆されてよい。
【0070】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、チオール(ドデカンチオール、オクタデカンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、エタンジチオールなど)で被覆されてよい。
【0071】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、カルボン酸(オレイン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、デカン酸、酪酸、エタン酸、メタン酸など)で被覆されてよい。
【0072】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、ホスフィン(トリオクチルホスフィン、トリブチルホスフィン、フェニルホスフィン、ジフェニルホスフィンなど)で被覆されてよい。
【0073】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、ホスフィンオキシド(トリオクチルホスフィンオキシドなど)で被覆されてよい。
【0074】
別の実施形態によれば、ナノ結晶の表面の有機配位子の密度は、0.01配位子・nm
-2
~100配位子・nm
-2
(より好ましくは0.1配位子・nm
-2
~10配位子・nm
-2
)の範囲である。
【0075】
一実施形態によれば、本発明の金属カルコゲナイドナノ結晶は、無機配位子で被覆される。
【0076】
一実施形態によれば、無機配位子は、以下を含む群または以下からなる群より選択される:S
2-
、HS
-
、Se
2-
、Te
2-
、OH
-
、BF
4
-
、PF
6
-
、Cl
-
、Br
-
、I
-
、As
2
S
3
、As
2
Se
3
、Sb
2
S
3
、As
2
Te
3
、Sb
2
S
3
、Sb
2
Se
3
、Sb
2
Te
3
またはそれらの混合物。
【0077】
一実施形態によれば、無機配位子は、好ましくはAS
2
Se
3
、S
2-
、HS
-
である。
【0078】
一実施形態によれば、無機配位子は、好ましくはAS
2
Se
3
である。
【0079】
別の実施形態によれば、ナノ結晶の表面の無機配位子の密度は、0.01配位子・nm
-2
~100配位子・nm
-2
(より好ましくは0.1配位子・nm
-2
~10配位子・nm
-2
)の範囲である。
【0080】
一実施形態によれば、ナノ結晶の表面の有機配位子と無機配位子との比は、0.001~0.25(好ましくは0.001~0.2、より好ましくは0.001~0.1、さらにより好ましくは0.001~0.01)の範囲である。
【0081】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、As
2
S
3
で被覆されたHgTeを含まないか、As
2
S
3
で被覆されたHgTeではない。
【0082】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、PbSを含まないか、PbSではない。
【0083】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、PbSeを含まないか、PbSeではない。
【0084】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、HgSである。
【0085】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、HgSeである。
【0086】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、HgSeTeである。
【0087】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、SnTe、SnS
2
、SnS、Bi
2
S
3
、Bi
2
Te
3
、Bi
2
Se
3
、Sb
2
S
3
、Sb
2
Se
3
、Sb
2
Te
3
である。
【0088】
一実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、可視光、近IR、中IR、遠IRに光吸収特性を有する。
【0089】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、バンド間遷移に由来する光吸収特性を有する。
【0090】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、バンド内遷移に由来する光吸収特性を有する。
【0091】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、プラズモン効果に由来する光吸収特性を有する。
【0092】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、400nm~50μm(好ましくは0.8μm~25μm、より好ましくは1μm~20μm)の光吸収特性を有する。
【0093】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、3μm~50μmの光吸収特性を有する。
【0094】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、1μm~3μmの光吸収特性を有する。
【0095】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、3μm~5μmの光吸収特性を有する。
【0096】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、3μm~8μmの光吸収特性を有する。
【0097】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、8μm~15μmの光吸収特性を有する。
【0098】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、8μm~12μmの光吸収特性を有する。
【0099】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、12μm超の光吸収特性を有する。
【0100】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、15μm超の光吸収特性を有する。
【0101】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、1nm~100μm(より好ましくは100nm~10μm)の光吸収深さを有する。
【0102】
本発明の別の実施形態によれば、複数の金属カルコゲナイドナノ結晶は、第1の光学的特徴で100cm
-1
~5×10
5
cm
-1
(より好ましくは500cm
-1
~10
5
cm
-1
、さらにより好ましくは1000cm
-1
~10
4
cm
-1
)の範囲の吸収係数を有する。
【0103】
第二の態様によれば、本発明は、複数の金属カルコゲナイドナノ結晶に関し、ここで、前記複数の金属カルコゲナイドナノ結晶は、3μm~50μmの範囲内の波長にフォトルミネッセンスピークを示し、1cm
2
V
-1
s
-1
以上のキャリア移動度を示し、前記金属は、Hg、Pb、Sn、Cd、BiまたはSbから選択され、前記カルコゲンは、S、SeまたはTeから選択される。
【0104】
一実施形態によれば、複数の金属カルコゲナイドナノ結晶は、1μm~2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50μmの範囲内の波長に光吸収ピークを示す。
【0105】
一実施形態によれば、中IRまたは遠IRにおける吸収ピークの半値幅は、バンド内ピークのエネルギーにおいて50%未満であり、好ましくはバンド内ピークのエネルギーにおいて20%未満であり、好ましくはバンド内ピークのエネルギーにおいて10%未満であり、さらにより好ましくはバンド内ピークのエネルギーにおいて5%未満である。
【0106】
一実施形態によれば、中IRまたは遠IRにおける吸収ピークの半値幅は、2000cm
-1
未満であり、好ましくは1000cm
-1
未満であり、さらにより好ましくは500cm
-1
未満である。
【0107】
一実施形態によれば、中IRまたは遠IRにおける吸収ピークの半値幅は、200meV未満であり、好ましくは100meV未満であり、さらにより好ましくは50meV未満である。
【0108】
一実施形態によれば、複数の金属カルコゲナイドナノ結晶は、1μm~2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50μmの範囲内の波長にフォトルミネッセンスピークを示す。
【0109】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、配位子(アミン、チオール、カルボン酸、ホスフィン、ホスフィンオキシドなど)によってさらに取り囲まれる。
【0110】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、以下を含む群または以下からなる群において選択される無機配位子によって取り囲まれる:S
2-
、HS
-
またはAs
2
S
3
。
【0111】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、以下を含む群または以下からなる群において選択される無機配位子によってさらに取り囲まれてよい:S
2-
、HS
-
、Se
2-
、Te
2-
、OH
-
、BF
4
-
、PF
6
-
、Cl
-
、Br
-
、I
-
、As
2
Se
3
、Sb
2
S
3
、Sb
2
Te
3
、Sb
2
Se
3
、As
2
S
3
またはそれらの混合物。
【0112】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶は、以下を含む群または以下からなる群において選択される無機配位子によってさらに取り囲まれてよい:CdSe、CdTe SnS
2
、AsS
3+
、LiS
2
、FeS
2
、Cu
2
Sまたはそれらの混合物。
【0113】
別の実施形態によれば、最初の有機配位子を除去してナノ結晶を新しい無機配位子でキャッピングするための配位子交換手順は、固体アプローチ(solid state approach)を用いて行われる。
【0114】
別の実施形態によれば、最初の有機配位子を除去してナノ結晶を新しい無機配位子でキャッピングするための配位子交換手順は、液相アプローチ(liquid phase approach)を用いて行われる。
【0115】
別の実施形態によれば、最初の有機配位子を除去してナノ結晶を新しい無機配位子でキャッピングするための配位子交換手順は、液相移動法(liquid phase transfer method)を用いて行われる。
【0116】
別の実施形態によれば、最初の有機配位子を除去し、新しい表面ケミストリー(surface chemistry)を気体の形態でナノ結晶にもたらしながらナノ結晶を新しい無機配位子でキャッピングするための配位子交換手順。
【0117】
一実施形態によれば、配位子交換手順は、ナノ結晶の表面に最初に存在する有機配位子と比べて吸収の減少を伴い、特に有機配位子のC-H結合と比べて吸収の減少を伴う。
【0118】
一実施形態によれば、配位子交換は、有機配位子と比べて吸収の減少をもたらし、これは、金属カルコゲナイドナノ結晶の吸収の50%よりも高く、好ましくは金属カルコゲナイドナノ結晶の吸収の60%、70%、75%、80%、90%または95%よりも高い。
【0119】
一実施形態によれば、配位子交換は、有機配位子と比べて吸収の減少をもたらし、これは、金属カルコゲナイドナノ結晶のバンド間ピークまたはバンド内ピークの吸収の50%よりも高く、好ましくは金属カルコゲナイドナノ結晶のバンド間ピークまたはバンド内ピークの吸収の60%、70%、75%、80%、90%または95%よりも高い。
【0120】
一実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶の吸収に対する有機配位子の吸収は、50%よりも低く、好ましくは40%、30%、25%、20%、10%または5%よりも低い。
【0121】
一実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶のバンド間ピークまたはバンド内ピークの吸収に対する有機配位子の吸収は、50%よりも低く、好ましくは40%、30%、25%、20%、10%または5%よりも低い。
【0122】
金属カルコゲナイドナノ結晶がドープまたは自己ドープされている一実施形態(例えばHgSeまたはHgSの場合など)によれば、配位子交換は、有機配位子と比べて吸収の減少をもたらし、これは、金属カルコゲナイドナノ結晶のバンド内ピークの吸収の50%よりも高く、好ましくは金属カルコゲナイドナノ結晶のバンド内ピークの吸収の60%、70%、75%、80%、90%または95%よりも高い。
【0123】
金属カルコゲナイドナノ結晶がドープまたは自己ドープされている一実施形態(例えばHgSeまたはHgSの場合など)によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶のバンド内ピークの吸収に対する有機配位子の吸収は、50%よりも低く、好ましくは40%、30%、25%、20%、10%または5%よりも低い。
【0124】
金属カルコゲナイドナノ結晶がドープされていない一実施形態(例えばHgTe、PbTe、PbSeまたはPbSの場合など)によれば、配位子交換は、有機配位子と比べて吸収の減少をもたらし、これは、金属カルコゲナイドナノ結晶のバンド間ピークの吸収の50%よりも高く、好ましくは金属カルコゲナイドナノ結晶のバンド間ピークの吸収の60%、70%、75%、80%、90%または95%よりも高い。
【0125】
金属カルコゲナイドナノ結晶がドープされていない一実施形態(例えばHgTe、PbTe、PbSeまたはPbSの場合など)によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶のバンド間ピークの吸収に対する有機配位子の吸収は、50%よりも低く、好ましくは40%、30%、25%、20%、10%または5%よりも低い。
【0126】
一実施形態によれば、有機配位子の吸収は、本明細書では、有機配位子のC-H結合の吸収を指す。
【0127】
一実施形態によれば、光学密度での有機配位子の吸収(特にC-Hの吸収)は、ナノ結晶のバンド内特性に関連する吸収よりも弱い。
【0128】
一実施形態によれば、ナノ結晶のバンド内特性の吸収に対する有機配位子の吸収(特にC-Hの吸収)の比率は、1未満であり、好ましくは50%未満であり、より好ましくは20%未満であり、さらにより好ましくは10%未満である。
【0129】
第三の態様によれば、本発明は、本明細書で開示される金属カルコゲナイドナノ結晶を製造するための方法に関する。
【0130】
一実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶を製造するための方法は、
オレイルアミン、ヘキサデシルアミンまたはオクタデシルアミンを含む群またはそれらからなる群より選択される一級アミンから選択される配位性溶媒中に金属カルボン酸塩(好ましくは金属オレイン酸塩または金属酢酸塩)を提供することと;
60℃~130℃の範囲の温度にて、トリオクチルホスフィンカルコゲナイド、トリメチルシリルカルコゲナイドまたはジスルフィドカルコゲナイドを含む群またはそれらからなる群より選択されるカルコゲナイド前駆体を溶液中に混合することと;
金属カルコゲナイドナノ結晶を単離することと;
を含み、ここで、前記金属は、Hg、Pb、Sn、Cd、Bi、Sbまたはそれらの混合物から選択され、前記カルコゲナイドは、S、Se、Teまたはそれらの混合物から選択される。
【0131】
一実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶を製造するための方法は、0℃~350℃(より好ましくは80℃~250℃、さらにより好ましくは60℃~130℃)の温度にて実施される。
【0132】
一実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶を単離する工程は、チオールおよび/またはホスフィンをナノ結晶と混合することと;それにより、クエンチされた混合物を形成することと;その後に、クエンチされた混合物からナノ結晶を抽出することと、を含む。
【0133】
一実施形態によれば、カルコゲナイド前駆体との混合物は、カルコゲナイド前駆体の注入後の1~60分間の範囲の所定の時間にわたって60℃~130℃の範囲の温度に維持される。
【0134】
一実施形態によれば、上記で説明されるような金属カルコゲナイドナノ結晶を製造するための方法は、単離された金属カルコゲナイドナノ結晶を、アミン、チオール、カルボン酸、ホスフィン、ホスフィンオキシド、S
2-
、HS
-
、Se
2-
、Te
2-
、OH
-
、BF
4
-
、PF
6
-
、Cl
-
,Br
-
、I
-
、As
2
Se
3
、Sb
2
S
3
、Sb
2
Te
3
、Sb
2
Se
3
、As
2
S
3
またはそれらの混合物から選択される配位子で被覆する工程をさらに含む。
【0135】
別の実施形態によれば、上記で説明されるような金属カルコゲナイドナノ結晶を製造するための方法は、単離された金属カルコゲナイドナノ結晶を、CdSe、CdTe SnS
2
、AsS
3+
、LiS
2
、FeS
2
、Cu
2
Sまたはそれらの混合物から選択される配位子で被覆する工程をさらに含む。
【0136】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶を製造するための方法は、容積が10mL~100L(好ましくは50mL~250mL)である三つ口フラスコ内で実施される。
【0137】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶を製造するための方法は、容積が10mL~100L(好ましくは250mL~50L、より好ましくは1L~30L)である自動装置内で実施される。
【0138】
別の実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶を製造するための方法は、連続流リアクターである。
【0139】
一実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶を製造するための方法は、オレイルアミン、ヘキサデシルアミンまたはオクタデシルアミンなどの配位性溶媒の使用を含む。
【0140】
一実施形態によれば、カルコゲンがSeである金属カルコゲナイドナノ結晶を製造するための方法は、TOPSe、Se粉末、SeS
2
およびセレノ尿素などのセレン前駆体の高温での注入を含む。
【0141】
一実施形態において、セレノ尿素は、Se源としては使用されない。
【0142】
一実施形態によれば、金属がHgである金属カルコゲナイドナノ結晶を製造するための方法は、水銀源としてカルボン酸水銀(mercury carboxylatye)を使用することを含む。
【0143】
一実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶HgSeを製造するための方法は、は、水銀源としてオレイン酸水銀を使用することを含む。
【0144】
一実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶HgSeを製造するための方法は、化学量論比で前駆体を注入することを含む。
【0145】
一実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶HgSeを製造するための方法は、Seと比較して10倍(より好ましくは3倍)を超えない率で過剰にHg前駆体を注入することを含む。
【0146】
一実施形態によれば、金属カルコゲナイドナノ結晶HgSeを製造するための方法は、Hgと比較して10倍(より好ましくは3倍)を超えない率で過剰にSe前駆体を注入することを含む。
【0147】
第四の態様によれば、本発明は、光伝導体、光ダイオードまたは光トランジスタに関する。
【0148】
一実施形態によれば、複数の金属カルコゲナイドナノ結晶は、トランジスタ、伝導体またはダイオード(好ましくは光トランジスタ、光伝導体または光ダイオード)における使用のためのものである。
【0149】
別の実施形態によれば、光伝導体、光トランジスタまたは光ダイオードは、電荷結合素子(CCD)、発光プローブ、レーザー、熱画像装置、暗視システムおよび光検出器という群において選択されてよい。
【0150】
別の実施形態によれば、複数の金属カルコゲナイドナノ結晶は、高い移動度を有するトランジスタ、伝導体またはダイオードにおける使用のためのものである。
【0151】
別の実施形態によれば、本発明のトランジスタ、伝導体またはダイオードは、1cm
2
V
-1
s
-1
よりも高い(好ましくは5cm
2
V
-1
s
-1
よりも高い、さらにより好ましくは10cm
2
V
-1
s
-1
よりも高い)移動度を有するトランジスタ、伝導体またはダイオードにおける使用のためのものである。
【0152】
一実施形態によれば、本発明のトランジスタ、伝導体またはダイオードは、第1のカソード層を含み、このカソード層は、上記で説明されるような複数の金属カルコゲナイドナノ結晶または上記で説明されるような方法に従って製造された複数の金属カルコゲナイドナノ結晶を含む第1の光吸収層に電子的に連結されており、この第1の光吸収層は、第1のアノード層に連結されている。
【0153】
一実施形態によれば、光伝導体、光ダイオードまたは光トランジスタは、
上記で説明されるような複数の金属カルコゲナイドナノ結晶または上記で説明されるような方法に従って製造された複数の金属カルコゲナイドナノ結晶を含む光吸収層または光吸収膜と、
光吸収層を橋渡しする第1の複数の電気的接続と、
を含み、ここで、
複数の金属カルコゲナイドナノ結晶は、3μm~50μmの範囲の波長の光による光吸収層の照明に応答して電気的接続間の、および光吸収層全体の、伝導性が増加するように配置されており、
キャリア移動度は1cm
2
V
-1
s
-1
以上である。
【0154】
一実施形態によれば、光吸収層または光吸収膜は、3nm~1mm(より好ましくは10nm~10μm、より好ましくは30nm~1μm)の厚さを有する。
【0155】
別の実施形態によれば、光吸収層または光吸収膜は、10nm~50μm、0.05μm~25μm、0.1μm~12.5μmまたは0.5μm~10μmの厚さを有する。
【0156】
別の実施形態によれば、光吸収層または光吸収膜は、100nm
2
~1m
2
(好ましくは1μm
2
~10cm
2
、より好ましくは50μm
2
~1cm
2
)の面積を有する。
【0157】
本発明の別の実施形態によれば、光吸収層または光吸収膜は、ドロップキャスティング、ディップコーティング、スピンコーティング、電気泳動堆積によって調製される。
【0158】
本発明の別の実施形態によれば、光吸収層または光吸収膜は、キャッピング層によってさらに保護される。
【0159】
本発明の別の実施形態によれば、キャッピング層は無機層である。
【0160】
本発明の別の実施形態によれば、光吸収層または光吸収膜は、ZnO、ZnS、ZnSe、Al
2
O
3
、SiO
2
、MgO、As
2
S
3
、As
2
Se
3
を含む、またはZnO、ZnS、ZnSe、Al
2
O
3
、SiO
2
、MgO、As
2
S
3
、As
2
Se
3
からなる、無機層によって保護される。
【0161】
本発明の別の実施形態によれば、光吸収層または光吸収膜は、ポリマー層(例えばシリコン系ポリマー、PETまたはPVAなど)によって保護される。
【0162】
本発明の別の実施形態によれば、光吸収層または光吸収膜は、原子層堆積によって堆積された無機層によって保護される。
【0163】
本発明の別の実施形態によれば、光吸収層または光吸収膜は、化学浴堆積によって堆積された無機層によって保護される。
【0164】
本発明の別の実施形態によれば、光吸収層または光吸収膜は、O
2
遮蔽層によって保護される。
【0165】
本発明の別の実施形態によれば、光吸収層または光吸収膜は、H
2
O遮蔽層によって保護される。
【0166】
本発明の別の実施形態によれば、光吸収層または光吸収膜は、その役割がナノ粒子の温度の熱管理である層によって保護される。
【0167】
本発明の別の実施形態によれば、光吸収層または光吸収膜は、第1の光学的特徴で100cm
-1
~5×10
5
cm
-1
(より好ましくは500cm
-1
~10
5
cm
-1
、さらにより好ましくは1000cm
-1
~10
4
cm
-1
)の範囲の吸収係数を有する。
【0168】
本発明の別の実施形態によれば、キャリア移動度は、1cm
2
V
-1
s
-1
以上であり、好ましくは10cm
2
V
-1
s
-1
よりも大きく、さらにより好ましくは50cm
2
V
-1
s
-1
よりも高い。
【0169】
一実施形態によれば、光吸収層または光吸収膜は、少なくとも2つの電極に接続される。
【0170】
一実施形態によれば、光吸収層または光吸収膜は、それらのうちの1つがゲート電極として使用される3つの電極に接続される。
【0171】
一実施形態によれば、光吸収層または光吸収膜は、電極のアレイに接続される。
【0172】
一実施形態によれば、光吸収層または光吸収膜は、電気化学によって調整されるスペクトルを示す。
【0173】
一実施形態によれば、光吸収層または光吸収膜は、表面ケミストリーの変更によって調整される赤外スペクトルを示す。
【0174】
別の実施形態によれば、光検出器は、火炎検出器としての使用のためのものである。
【0175】
別の実施形態によれば、光検出器は、二色検出を可能にする。
【0176】
別の実施形態によれば、構築された検出器は二色検出を可能にし、波長のうちの1つは4.2μmのCO
2
吸収を中心とする。
【0177】
別の実施形態によれば、光検出器は二色検出を可能にし、波長のうちの1つは3.3μmのCH吸収を中心とする。
【0178】
別の実施形態によれば、光検出器は二色検出を可能にし、波長のうちの1つは3μmのH
2
O吸収を中心とする。
【0179】
別の実施形態によれば、光検出器は二色検出を可能にし、波長のうちの1つは3μm~4.2μmを中心とする。
【0180】
別の実施形態によれば、光検出器は二色検出を可能にし、波長のうちの1つは1.3μmを中心とする。
【0181】
別の実施形態によれば、光検出器は二色検出を可能にし、波長のうちの1つは1.55μmを中心とする。
【0182】
別の実施形態によれば、光検出器は二色検出を可能にし、波長のうちの1つは3μm~5μmを中心とする。
【0183】
別の実施形態によれば、光検出器は二色検出を可能にし、波長のうちの1つは8μm~12μmを中心とする。
【0184】
別の実施形態によれば、光検出器は、多色検出を可能にする。
【0185】
別の実施形態によれば、本発明の光吸収層または光吸収膜は、赤外線カメラの吸収層として使用される。
【0186】
本発明はまた、本発明による複数の光伝導体、光ダイオードまたは光トランジスタと、複数の光伝導体、光ダイオードまたは光トランジスタに電気的に接続された読み出し回路と、を含むデバイスにも関する。
【0187】
第五の態様によれば、本発明は、シングルピクセルデバイスに関する。
【0188】
一実施形態によれば、本発明の金属カルコゲナイドナノ結晶は、マトリックスの形態で加工される。
【0189】
別の実施形態によれば、本発明の金属カルコゲナイドナノ結晶は、いくつかのピクセルを設計するように加工される。
【0190】
別の実施形態によれば、本発明の金属カルコゲナイドナノ結晶は、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つのピクセルを設計するように加工される。
【0191】
別の実施形態によれば、本発明の金属カルコゲナイドナノ結晶は、ピクセルのアレイを設計するように加工される。
【0192】
別の実施形態によれば、本発明の金属カルコゲナイドナノ結晶からなるピクセルは、1D(線)検出器を形成する。
【0193】
別の実施形態によれば、本発明の金属カルコゲナイドナノ結晶からなるピクセルは、2D(線)検出器を形成する。
【0194】
別の実施形態によれば、本発明のピクセルのアレイは、少なくとも50×50ピクセルまたは256×256ピクセルまたは512×512ピクセルまたは1024×1024ピクセルを含む。
【0195】
別の実施形態によれば、本発明のピクセルのアレイは、メガピクセルマトリックスである。
【0196】
別の実施形態によれば、本発明のピクセルのアレイは、1メガピクセル超(好ましくは2、4、8、16、32または64メガピクセル超)を含む。
【0197】
別の実施形態によれば、ピクセルのアレイは、40%超の充填率を有し(すなわち、マトリックス(matric)全体の面積の40%超がピクセルで構成されている)、より好ましくは50%超、より好ましくは60%超、より好ましくは70%超、より好ましくは80%超、さらにより好ましくは90%超の充填率を有する。
【0198】
別の実施形態によれば、ピクセル間の間隔はピクセルのサイズよりも小さく、好ましくはピクセルのサイズの50%未満であり、より好ましくはピクセルのサイズの20%未満である。
【0199】
別の実施形態によれば、ピクセルは、読み出し回路に接続される。
【0200】
別の実施形態によれば、ピクセルは、平面配置で読み出し回路に接続される。
【0201】
別の実施形態によれば、ピクセルは、垂直配置で読み出し回路に接続される。
【0202】
別の実施形態によれば、ピクセルのサイズは、1nm~10cm(好ましくは100nm~1mm、さらにより好ましくは1μm~1mm)に含まれる。
【0203】
第六の態様によれば、本発明は、IR吸収コーティングに関する。
【0204】
一実施形態によれば、本発明は、IR吸収コーティングを含むかIR吸収コーティングからなる層であって、従ってナローバンドギャップ吸収層を形成する、層に関する。
【0205】
本発明の別の実施形態によれば、IR吸収コーティングを含む層は、赤外線吸収のための別の材料を増感させる。
【0206】
本発明の別の実施形態によれば、IR吸収コーティングを含む層は、ボロメーターデバイスの赤外線吸収を向上させる。
【0207】
本発明はまた、本発明による複数の金属カルコゲナイドナノ結晶を含むIR吸収コーティングを含むボロメーターまたはパイロメーターにも関する。
【0208】
一実施形態によれば、ボロメーターまたはパイロメーターは、複数の有機配位子で被覆された複数の金属カルコゲナイドナノ結晶を含み、ここで、前記金属は、HgまたはHgとPb、Sn、Cd、Bi、Sbのうちの少なくとも1種との混合物から選択され;前記カルコゲンは、S、Se、Teまたはそれらの混合物から選択される。一実施形態によれば、前記コーティングは、有機配位子を含むか、または有機配位子からなる。
【0209】
一実施形態によれば、ナローバンドギャップ吸収層は、金属電極に直接接続されない。
【0210】
別の実施形態によれば、ナローバンドギャップ吸収層は、単極障壁(unipolar barrier)によって金属電極から離間されている。
【0211】
別の実施形態によれば、単極障壁は、暗電流を減少させるために使用される。
【0212】
別の実施形態によれば、単極障壁は、多数キャリア電流(majority carrier current)を減少させるために使用される。
【0213】
別の実施形態によれば、暗電流を減少させるために使用される単極障壁は、正孔ブロック層である。
【0214】
別の実施形態によれば、暗電流を減少させるために使用される単極障壁は、電子ブロック層である。
【0215】
一実施形態によれば、IR吸収コーティングを含む層は、読み出し回路に接続される。
【0216】
本発明の別の実施形態によれば、IR吸収コーティングを含む層は、ペルティエ素子によって冷却される。
【0217】
本発明の別の実施形態によれば、IR吸収コーティングを含む層は、極低温冷却器によって冷却される。
【0218】
本発明の別の実施形態によれば、IR吸収コーティングを含む層は、液体窒素を用いて冷却される。
【0219】
本発明の別の実施形態によれば、IR吸収コーティングを含む層は、液体ヘリウムを用いて冷却される。
【0220】
本発明の別の実施形態によれば、IR吸収コーティングを含む層は、1.5K~350K(より好ましくは4K~310K、さらにより好ましくは70K~300K)で稼働される。
【0221】
本発明の別の実施形態によれば、IR吸収コーティングを含む層は、前面側から照明される。
【0222】
本発明の別の実施形態によれば、IR吸収コーティングを含む層は、背面側から(透明な基板を通して)照明される。
【0223】
本発明の別の実施形態によれば、IR吸収コーティングを含む層は、赤外線放出層として使用される。
【0224】
本発明の別の実施形態によれば、IR吸収コーティングを含む層は、1μA・W
-1
~1kA・W
-1
(より好ましくは1mA・W
-1
~50A・W
-1
、さらにより好ましくは10mA・W
-1
~10A・W
-1
)の光応答を有する。
【0225】
本発明の別の実施形態によれば、IR吸収コーティングを含む層は、1/fノイズによって制限されるノイズ電流密度を有する。
【0226】
本発明の別の実施形態によれば、IR吸収コーティングを含む層は、ジョンソンノイズによって制限されるノイズ電流密度を有する。
【0227】
本発明の別の実施形態によれば、IR吸収コーティングを含む層は、10
6
~10
14
jones(より好ましくは10
7
~10
13
jones、さらにより好ましくは10
8
~5×10
12
jones)の比検出能を有する。
【0228】
本発明の別の実施形態によれば、IR吸収コーティングを含む層は、1Hz超(より好ましくは10Hz超、より好ましくは100Hz超、さらにより好ましくは1kHz超)のバンド幅を有する。
【0229】
本発明の別の実施形態によれば、光パルスの下での光吸収層または光吸収膜の時間応答は、1ms未満(好ましくは100μs未満、より好ましくは10μs未満、さらにより好ましくは1μs未満)である。
【0230】
本発明の別の実施形態によれば、光パルスの下での光吸収層または光吸収膜の時間応答は、1μs未満(好ましくは100ns未満、より好ましくは10ns未満、さらにより好ましくは1ns未満)である。
【0231】
本発明の別の実施形態によれば、光パルスの下での光吸収層または光吸収膜の時間応答は、1ns未満(好ましくは100ps未満、より好ましくは10ps未満、さらにより好ましくは1ps未満)である。
【0232】
本発明の別の実施形態によれば、光吸収層または光吸収膜の光応答の大きさおよびサイン(sign)は、ゲートバイアスによって調整または制御される。
【0233】
本発明の別の実施形態によれば、光吸収層または光吸収膜の光応答の大きさおよびサインは、光の入射波長により調整される。
【0234】
本発明の別の実施形態によれば、デバイスの時間応答は、電極間の間隔を小さくすることによって固定される。
【0235】
本発明の別の実施形態によれば、デバイスの時間応答は、μm間隔の電極と比較してナノ溝形状を用いることによって固定される。
【0236】
本発明の別の実施形態によれば、光伝導体、光ダイオードまたは光トランジスタの時間応答は、ゲートバイアスにより調整または制御される。
【0237】
本発明の別の実施形態によれば、光伝導体、光ダイオードまたは光トランジスタの時間応答は、光の入射波長に依存する。
【0238】
本発明の別の実施形態によれば、光伝導体、光ダイオードまたは光トランジスタの時間応答は、1s未満(好ましくは100ms未満、より好ましくは10ms未満、さらにより好ましくは1ms未満)である。
【0239】
別の実施形態によれば、光検出器の光応答の大きさ、サインおよび持続時間は、ゲートバイアスによって調整または制御される。
【0240】
別の実施形態によれば、光検出器の光応答の大きさ、サインおよび持続時間は、入射波長に依存する。
【図面の簡単な説明】
【0241】
【
図1】
図1は、小さなHgSe QDの透過型電子顕微鏡観察の画像を表す。
【
図2】
図2は、大きなHgSe QDの透過型電子顕微鏡観察の画像を表す。
【
図3】
図3は、小さなHgSe QDおよび大きなHgSe QDの赤外線吸収スペクトルを表す。
【
図4】
図4は、異なるサイズの小さなHgSe QDおよび大きなHgSe QDの吸光度スペクトルを表す。波長の範囲は、バンド内遷移を強調するように選択される。
【
図5】
図5は、HgSe CQDのXRDディフラクトグラムを表す。
【
図6】
図6は、小さなHgSe QDの大規模バッチの画像を表す。この合成により、10g超の固体のQDを得た。
【
図7】a.合成後のHgSe CQDの赤外スペクトル;b.液相配位子交換後。
【
図7-2】a.異なる配位子での配位子交換の後のHgSe CQDの赤外スペクトル;b.異なる表面キャッピング配位子についての表面双極子の大きさの関数としての伝導帯1s状態の数。
【
図8】
図8は、薄いHgSe CQD膜に基づくデュアル(ボトムおよび電解)ゲート型トランジスタの模式図である。
【
図9】
図9は、異なるゲートバイアスの下でのHgSe QDの薄膜についての電圧の関数としての電流を表す。
【
図10】
図10のaは、
As
2
S
3
配位子でキャッピングされたHgSe CQDでチャネルができているトランジスタについてのゲート電圧の関数としてのドレイン電流を示す。このデバイスは、10mVのドレインバイアスの下で室温にて空気中で稼働される。bは、同じ材料でできている広範囲の膜について推定された移動度のヒストグラムである。
【
図11】
図11は、HgSe QDの薄膜におけるノイズ電流密度を表す。
【
図12】
図12は、1.5μmレーザーによって照明されたHgSe QDの薄膜の光応答を表す。
【
図13】
図13は、HgSe QDの薄膜から作製されたピクセルの走査型電子顕微鏡観察画像を表す。
【実施例】
【0242】
以下の実施例によって本発明がさらに説明される。
【0243】
実施例1:HgSeナノ結晶の合成-2段階合成
50mLの三つ口フラスコ内で2gの酢酸水銀(
Hg(OAc)
2
)および80mLのオレイン酸を85℃にて真空下で30分間脱気する。得られたストック溶液は、透明で黄色がかっている。4mLのこの溶液を10mLのオレイルアミンと混合し、85℃にて30分間脱気する。同時に、1.58gのSe粉末を超音波処理によって20mLのトリオクチルホスフィンに溶解させる(TOPSe)。最終的な溶液は清澄で透明である。60~130℃の温度のAr下で、Hg前駆体を含むフラスコ内に1mLのTOPSeを注入する。この混合物は、すぐに黒くなる。反応は、30秒間~60分間実施する。次いで、1mLのドデカンチオールを注入して反応をクエンチし、新鮮な空気流を用いてフラスコを急速に冷却する。フラスコの内容物を50mLのチューブに分け、エタノールを添加してナノ粒子を沈殿させる。5000rpmにて5分間の遠心分離の後、清澄な上清を捨て、ペレットを10mLの清澄なトルエンに再溶解させる。非溶媒としてエタノールを、良溶媒としてトルエンを用いて、この洗浄手順をもう一度繰り返す。再びペレットをトルエンに再溶解させ、3mLのアセトンを添加した後、この溶液を遠心分離する。形成されたペレットを保存し、窒素気流下で乾燥させた後、トルエンに再溶解させる。5mLのエタノールを上清に添加し、これをさらに遠心分離して第2のペレットを形成させる。後者も乾燥させ、トルエンに再溶解させる。最後に、20mLのエタノールを用いて残りのナノ結晶を上清中に沈殿させ、この第3の画分を、最初の2つの画分のようにさらに処理する。得られたナノ結晶は、10nm未満のサイズであり(
図1を参照のこと)、3~7μmの範囲の光学的特徴を有する(バンド内励起ピークで;
図3および
図4を参照のこと)。それらのCQDの結晶性は、XRDのパターンによって強調される(
図5を参照のこと)。
【0244】
実施例2:HgSナノ結晶の合成-2段階合成
50mLの三つ口フラスコ内で2gの酢酸水銀および80mLのオレイン酸を85℃にて真空下で30分間脱気する。得られたストック溶液は、透明で黄色がかっている。4mLのこの溶液を10mLのオレイルアミンと混合し、85℃にて30分間脱気する。同時に、11mgの硫黄粉末を超音波処理によって3mLのオレイルアミンに溶解させる。最終的な溶液は清澄かつオレンジ色である。60~120℃の温度のAr下で、Hg前駆体を含むフラスコ内に硫黄の溶液を注入する。この混合物は、すぐに黒くなる。反応は、30秒間~60分間実施する。次いで、1mLのドデカンチオールを注入して反応をクエンチし、新鮮な空気流を用いてフラスコを急速に冷却する。フラスコの内容物を50mLのチューブに分け、エタノールを添加してナノ粒子を沈殿させる。5000rpmにて5分間の遠心分離の後、清澄な上清を捨て、ペレットを10mLの清澄なトルエンに再溶解させる。非溶媒としてエタノールを、良溶媒としてトルエンを用いて、この洗浄手順をもう一度繰り返す。再びペレットをトルエンに再溶解させ、3mLのアセトンを添加した後、この溶液を遠心分離する。形成されたペレットを保存し、窒素気流下で乾燥させた後、トルエンに再溶解させる。5mLのエタノールを上清に添加し、これをさらに遠心分離して第2のペレットを形成させる。後者も乾燥させ、トルエンに再溶解させる。最後に、20mLのエタノールを用いて残りのナノ結晶を上清中に沈殿させ、この第3の画分を、最初の2つの画分のようにさらに処理する。
【0245】
実施例3:HgSeナノ結晶の合成-準1段階
25mLの三つ口フラスコ内で0.1gの酢酸水銀、4mLのオレイン酸および10mLのオレイルアミンを真空下で85℃にて30分間脱気する。この溶液は、清澄で黄色がかっている。同じ温度のAr下で、0.3mLのTOPSe(1M)を迅速に注入する。この溶液は、すぐに黒くなる。次いで、1mLのドデカンチオールを注入して反応をクエンチし、新鮮な空気流を用いてフラスコを急速に冷却する。フラスコの内容物を50mLのチューブに分け、エタノールを添加してナノ粒子を沈殿させる。5000rpmにて5分間の遠心分離の後、清澄な上清を捨て、ペレットを10mLの清澄なトルエンに再溶解させる。非溶媒としてエタノールを、良溶媒としてトルエンを用いて、この洗浄手順をもう一度繰り返す。再びペレットをトルエンに再溶解させ、3mLのアセトンを添加した後、この溶液を遠心分離する。形成されたペレットを保存し、窒素気流下で乾燥させた後、トルエンに再溶解させる。5mLのエタノールを上清に添加し、これをさらに遠心分離して第2のペレットを形成させる。後者も乾燥させ、トルエンに再溶解させる。最後に、20mLのエタノールを用いて残りのナノ結晶を上清中に沈殿させ、この第3の画分を、最初の2つの画分のようにさらに処理する。
【0246】
実施例4:小さなHgSeナノ結晶の大規模合成
1Lの自動リアクター内で10gの
Hg(OAc)
2
を200mLのオレイン酸に溶解させる。フラスコを真空下で85℃にて15分間脱気する。次いで、0.5Lのオレイルアミンを添加し、同じ温度でフラスコをさらに脱気する。雰囲気をArに変更し、温度を85℃に調整する。同時に、40mLのトリオクチルホスフィン(TOP)中で3.16gのSe粉末を超音波処理することによって40mLのTOPSe(1M)を調製する。32mLのTOPSe溶液をリアクター内に迅速に注入し、ポット全体が黒くなる。反応を15分間続けた後、5mlのドデカンチオールおよび1mLのTOPの添加によってクエンチする。フラスコの内容物を2Lのエルレンマイヤー内で同体積のメタノールと混合する。次いで、この溶液を濾過する。得られた固体を、ヘキサンおよびメタノールを用いてさらに洗浄する。10.8g超の固体を得た(
図6を参照のこと)。最終貯蔵は、トルエン中で行う。
【0247】
実施例5:大きなHgSeナノ結晶の合成
1500
cm
-1
未満の光学的特徴を有する、より大きなナノ結晶(
図2を参照のこと)については、以下の手順を開発した。25mLの三つ口フラスコ内で100mgのHg
(OAc)
2
を4mLのオレイン酸および10mLのオレイルアミンに溶解させる。フラスコを真空下で85℃にて30分間脱気する。雰囲気をArに変更し、期待される最終的なナノ結晶のサイズに応じて温度を60~130℃に調整する。同時に、0.13gの
SeS
2
を2mLのオレイルアミンに超音波処理下で溶解させる。この褐色の混合物をフラスコ内に注入し、色が黒くなる。1~60分後、1mLのドデカンチオールを用いて反応をクエンチする。加熱マントルを取り除き、新鮮な空気流を用いてフラスコを冷却する。エタノールの添加によってナノ結晶を沈殿させる。遠心分離の後、形成されたペレットをトルエンに再溶解させる。この洗浄手順をさらに2回繰り返す。ナノ粒子は、トルエン中で保存する。しかし、それらのサイズが大きいため(20nm)、それらのコロイド安定性は制限される。得られたナノ結晶は、10nm超のサイズであり(
図2を参照のこと)、7~25μmの範囲の光学的特徴を有する(バンド内励起ピークで;
図3および
図4を参照のこと)。
【0248】
硫黄系の前駆体を使用するにもかかわらず、最終化合物中に硫黄の形跡は見当たらない。X線回折は、Se前駆体としてTOPSeを用いて得られる材料と同じピークを提示する(
図5を参照のこと)。さらに、EDSのデータが導く硫黄含有量は、全くないか、または極端に限られた(数%の)硫黄含有量であり、これは、配位子として使用されるチオールと一致する。この結果は、TOPSeの代わりにTOPSを用いて小さなHgSe CQDの合成を実施すると前述の条件の場合には反応が起こらないという事実と一致するようである。
【0249】
実施例6:HgSeTeナノ結晶の合成
50mLの三つ口フラスコ内で2gの酢酸水銀および80mLのオレイン酸を85℃にて真空下で30分間脱気する。得られたストック溶液は、透明で黄色がかっている。8mLのこの溶液を20mLのオレイルアミンと混合し、85℃にて30分間脱気する。同時に、1.58gのSe粉末を20mLのトリオクチルホスフィンに超音波処理によって溶解させる。最終的な溶液は清澄で透明である。グローブボックス内で1.27gのテルル(Te)粉末を10mLのTOPに溶解させ、2日間撹拌する。最終的なTOPTe溶液は黄色で清澄である。85℃のAr下で、Hg前駆体を含むフラスコ内に1mLのTOPSeを注入する。この混合物は、すぐに黒くなる。直ちにTOPTe前駆体の滴下を開始し、30分かけて注入する。30分後、2mLのドデカンチオールを注入して反応をクエンチし、新鮮な空気流を用いてフラスコを急速に冷却する。フラスコの内容物を50mLのチューブに分け、エタノールを添加してナノ粒子を沈殿させる。5000rpmにて5分間の遠心分離の後、清澄な上清を捨て、ペレットを10mLの清澄なトルエンに再溶解させる。非溶媒としてエタノールを、良溶媒としてトルエンを用いて、この洗浄手順をもう一度繰り返す。再びペレットをトルエンに再溶解させ、3mLのアセトンを添加した後、この溶液を遠心分離する。形成されたペレットを保存し、窒素気流下で乾燥させた後、トルエンに再溶解させる。5mLのエタノールを上清に添加し、これをさらに遠心分離して第2のペレットを形成させる。後者も乾燥させ、トルエンに再溶解させる。最後に、20mLのエタノールを用いて残りのナノ結晶を上清中に沈殿させ、この第3の画分を、最初の2つの画分のようにさらに処理する。
【0250】
実施例7:HgSe-CdSコアシェル構造
HgSeのコアのナノ結晶上でCdSのシェルを成長させるために、以下の手順を用いる。4mLのバイアル内で30mgのNa
2
Sを2mlのNMFAに溶解するまで混合する。次いで、アセトニトリルの添加によりコアを沈殿させて過剰の硫化物を除去し、NMFAに再分散させる。次いで、NMFA中の0.2M酢酸カドミウム500μlをバイアルに添加する。ほぼ即時の反応の後、トルエンとアセトニトリルの混合物(5:1)によるナノ結晶の沈殿によって過剰の前駆体を除去する。遠心分離により得られた固体をNMFAに再溶解させる。この手順を3.5回繰り返す。
【0251】
実施例8:固体配位子交換
ドデカンチオール配位子でキャッピングされたHgSeナノ結晶の膜を、9:1のヘキサン・オクタン混合物中に分散させたナノ結晶の溶液をドロップキャストすることによって堆積させる。次いで、この膜を、1体積%のエタンジチオールのエタノール溶液に30秒間浸漬する。次いで、純粋なエタノールで膜をリンスする。
【0252】
実施例8-2:固体配位子交換
ドデカンチオール配位子でキャッピングされたHgSeナノ結晶の膜を、低濃度(0.1~0.5mg/mL
-1
)で9:1のヘキサン・オクタン混合物中に分散させたナノ結晶の溶液をドロップキャストすることによって堆積させる。次いで、この膜を、0.5体積%のエタンジチオールのエタノール溶液に60秒間浸漬する。次いで、純粋なエタノールで膜をリンスし、乾燥させる。この手順を10回繰り返して、亀裂の量が非常に限られた薄い均一な膜を構築する。
【0253】
実施例9:固体配位子交換
ドデカンチオール配位子でキャッピングされたHgSeナノ結晶の膜を、9:1のヘキサン・オクタン混合物中に分散させたナノ結晶の溶液をドロップキャストすることによって堆積させる。次いで、この膜を、1体積%のNH
4
Clのエタノール溶液に30秒間浸漬する。次いで、純粋なエタノールで膜をリンスする。
【0254】
実施例10:固体配位子交換
ドデカンチオール配位子でキャッピングされたHgSeナノ結晶の膜を、9:1のヘキサン・オクタン混合物中に分散させたナノ結晶の溶液をドロップキャストすることによって堆積させる。同時に、As
2
S
3
粉末を(1~10mg/mLの濃度で)プロピルアミンまたはブチルアミンなどの短い液体アミンと混合する。この溶液を超音波処理して清澄な黄色の溶液を得る。この溶液をアセトニトリルで10倍に希釈する。この溶液にナノ結晶の膜を30秒間浸漬し、純粋なエタノールでリンスする。最後に、Ar気流を用いて膜を乾燥させる。
【0255】
実施例10-2:固体配位子交換
ドデカンチオール配位子でキャッピングされたHgSeナノ結晶の膜を、9:1のヘキサン・オクタン混合物中に分散させたナノ結晶の溶液をドロップキャストすることによって堆積させる。同時に、固体のNa
2
SまたはNaSHを0.5重量%でエタノールと混合する。この溶液を超音波処理して清澄な溶液を得る。この溶液にナノ結晶の膜を30秒間浸漬し、純粋なエタノールでリンスする。最後に、Ar気流を用いて膜を乾燥させる。
【0256】
実施例11:液体配位子交換
数mgのNa
2
Sを2mLのN-メチルホルムアミドに溶解させる。この溶液を2分間超音波処理する。前述の溶液1mLを、ヘキサン中に分散させたHgSe QD3mLと共に試験管に入れる。この溶液を強く撹拌し、さらに超音波処理する。ナノ粒子の相間移動が起こり、極性相が黒くなる。次いで、ヘキサンを添加して溶液を静置することによって非極性相を3回洗浄する。毎回、清澄な一番上の相を捨てる。最後に、3mLのエタノールを添加し、試験管を3000rpmにて3分間遠心分離する。液体を捨て、形成されたペレットを窒素気流下で乾燥させた後、新しいN-メチルホルムアミド中に再分散させる。
【0257】
実施例12:
As
2
S
3
での液体配位子交換
数mgの
As
2
S
3
を1mLのプロピルアミンに溶解させる。この溶液を1分間超音波処理する。最終的な溶液は黄色で清澄である。次いで、この溶液500μLを1mLのN-メチルホルムアミドと混合する。この溶液を2分間超音波処理する。前述の溶液1mLを、ヘキサン中に分散させたHgSe QD3mLと共に試験管に入れる。この溶液を強く撹拌し、さらに超音波処理する。ナノ粒子の相間移動が起こり、極性相が黒くなる。次いで、ヘキサンを添加して溶液を静置することによって非極性相を3回洗浄する。毎回、清澄な一番上の相を捨てる。最後に、3mLのエタノールを添加し、試験管を3000rpmにて3分間遠心分離する。液体を捨て、形成されたペレットを窒素気流下で乾燥させた後、新しいN-メチルホルムアミド中に再分散させる。
図7は、配位子交換プロセスによってHgSe CQDの赤外スペクトルがどのように影響されるかを示す。
【0258】
実施例13:Sb
2
S
3
での液体配位子交換
溶液を室温で24時間撹拌することによって数mgのSb
2
S
3
を1mLのエチレンジアミンに溶解させる。n。最終的な溶液は白く、少し濁っている。次いで、この溶液500μLを1mLのN-メチルホルムアミドと混合する。この溶液を2分間超音波処理する。前述の溶液1mLを、ヘキサン中に分散させたHgSe QD3mLと共に試験管に入れる。この溶液を強く撹拌し、ヒートガンで溶液を穏やかに加熱しながらさらに超音波処理する。ナノ粒子の相間移動が起こり、極性相が黒くなる。次いで、ヘキサンを添加して溶液を静置することによって非極性相を3回洗浄する。毎回、清澄な一番上の相を捨てる。最後に、3mLのエタノールを添加し、試験管を3000rpmにて3分間遠心分離する。液体を捨て、形成されたペレットを窒素気流下で乾燥させた後、新しいN-メチルホルムアミド中に再分散させる。
【0259】
実施例14:原子層堆積(ALD)封入
ドデカンチオール配位子でキャッピングされたHgSeナノ結晶の膜を、9:1のヘキサン・オクタン混合物中に分散させたナノ結晶の溶液をドロップキャストすることによって堆積させる。次いで、この膜を、1体積%のアンモニアのエタノール溶液に30秒間浸漬する。次いで、純粋なエタノールで膜をリンスする。次いで、膜をALD装置内に入れ、一次真空(primary vacuum)下に置く。次いで、膜をジエチル亜鉛と水の流れに順次に曝露させる。それぞれの曝露の後に、少なくとも1分の待機工程が続く。10層のZnOを堆積させ、最後に膜を70℃で10分間加熱する。
【0260】
実施例15:電極の製作
400nmのSiO
2
の最上層を有するn型ドープされたシリコンウェハーを1×1cm
2
の断片に切り分ける。次いで、この基板を超音波処理によってアセトン中で5分間リンスし、さらにイソプロパノール流の下でリンスする。次いで、基板をO
2
プラズマの下で5分間処理する。スピンコーティングを用いて感光性レジストAZ5214を堆積させる。さらに、このレジストを110℃のホットプレートの下で90秒間加熱する。UVリソグラフィマスクを用いて電極のパターンを2秒間照射する。125℃のホットプレート上での2回目のウェハーのベークを2分間行う。次いで、UVフラッド露光(UV flood exposure)を40秒間行う。最後に、膜をAZ326現像液に32秒間浸漬することによってレジストを現像する。次いで、熱蒸発器(thermal evaporator)によって3nmのCrおよび40nmの金を堆積させる。最後に、基板をアセトンに1時間浸漬した後に電極をイソプロパノールでリンスすることによって、リフトオフを行う。
【0261】
実施例16:透明で柔軟な電極の製作
ポリエチレンテレフタレート(PET)上にコーティングされたインジウムスズ酸化物(ITO)(60Ω/cm
2
の抵抗を有する約80nmのコーティング)のシートは、Sigma-Aldrichから購入する。アセトン、次いでイソプロパノールを用いて膜をリンスした後、乾燥させる。AZ5214Eレジストをスピンコーティングした後、110℃のホットプレート上で90秒間ベークする。次いで、シャドーマスクを通して膜をUVに4秒間曝露させる。次いで、レジストをAZ726中で45秒間現像し、純水でリンスする。次いで、裸のITOを、25%のHCl溶液を用いて15秒間エッチングした後、迅速に純水でリンスする。基板をアセトンに5分間浸漬した後にイソプロパノールで膜をリンスすることによって、レジストのリフトオフを行う。設計された電極は、50μmの間隔を有する互いにかみ合った電極である。それぞれの電極自体は、50μmの大きさであり、1mmの長さである。総有効面積は1mm
2
である。電解質ゲーティングのためにサイドゲート電極も存在する。
【0262】
実施例17:ナノ溝の製作
標準的な光リソグラフィまたは電子ビームリソグラフィのいずれかを用いてSi/SiO
2
ウェハー上に第1の電極を作製する。典型的な作製では、スピンコーティングによってウェハー上にAZ5214Eレジストを堆積させる。次いで、ウェハーを110℃で90秒間ベークする。リソグラフィマスクを用いた第1のUV露光を数秒間行う。次いで、膜を125℃にて2分間、さらにベークする。次いで、電子蒸発器(electron evaporator)を用いてTi(5nm)および金の層(54nm)を蒸発させることによって金属堆積物に処理する。最後に、基板をアセトンに12時間浸漬した後に電極をイソプロパノールでリンスすることによって、リフトオフを行う。同じリソグラフィ手順を用いて第2のパターンを作製する。第2の金属蒸着は、第1の電極が第2のパターンの一部を陰にするようにサンプルを60℃傾けながら行う。この場合、5nmのCrおよび50nmの金を堆積させる。このシャドー効果は、数十ナノメートルのスケールでのナノギャップの形成を可能にする。
【0263】
実施例18:単極障壁を有する光検出器
典型的には2mmの長さであり20μm離間している、2つの電極をSi/SiO
2
ウェハー上に設計した。次いで、一方の電極を高バイアスDC源に接続する。基板は、インジウムスズ酸化物(ITO)で被覆された1cm
2
のガラススライドに面している。この第2の電極は、DC高バイアス電圧源の負極側に接続される。2つの電極およびITO被覆電極で機能化された基板をCdTe NPLの溶液に浸漬する。400Vの電圧を30秒間印加する。正極上でのCdTeの堆積が観察される。そして、2つの電極を有する基板をNa
2
Sのエタノール溶液に1分間浸漬した後、純粋なエタノールでリンスする。最後に、空気流の下で電極を乾燥させる。次いで、300℃にて1時間、ホットプレート上で電極をアニールする。次いで、As
2
S
3
でキャッピングされたHgSeナノ粒子を、機能化された電極上にドロップキャストし、グローブボックス内のホットプレート上で100℃にて10分間加熱する。
【0264】
実施例19:光伝導素子の製作
グローブボックス内において100℃のホットプレート上で、As
2
S
3
でキャッピングされたHgSe CQDを電極上にドロップキャストする。
【0265】
実施例20:電解質の製作
Arを充填したグローブボックス内のホットプレート上で170℃にて2時間、50mgのLiClO
4
を230mgのPEGと混合する。
【0266】
実施例21:バックゲート型トランジスタの製作
グローブボックス内において100℃のホットプレート上で、As
2
S
3
でキャッピングされたHgSe CQDを電極上にドロップキャストする。膜が乾燥したら、保護層として純粋なポリエチレングリコールを刷毛塗りする。
【0267】
実施例22:デュアルゲート型トランジスタの製作
グローブボックス内において100℃のホットプレート上で、
As
2
S
3
でキャッピングされたHgSe CQDを電極上にドロップキャストする。同時に、電解質を100℃で軟化させる。融解した電解質は清澄であり、これをCQDの膜の上に刷毛塗りする。次いで、電解質の上に銅グリッドを堆積させるが、これはトップゲートとして使用できる。このデバイスの模式図を
図8に示す。デバイスの印加電圧の関数としての電流を
図9に示す。デバイスの印加ゲートバイアスの関数としての電流を
図10に示す。
図11では、デバイスのノイズがプロットされている。周波数の関数としてのシステムの光応答を
図12に示す。
【0268】
実施例23:ピクセルを設計するためのリソグラフィ
As
2
S
3
でキャッピングされたHgSe CQDの膜を、清潔なドープされたSiウェハー上にドロップキャストする。この膜は、典型的には、100nmの厚さである。クリーンルーム内で、PMMAをスピンコーティングし、160℃にて15分間ベークする。6.4nAの電流および20kVの電子加速を用いてe-ビームライティングを実施する。メチルイソブチルケトン(MIBK):イソプロパノール(IPA)の混合物を用いて膜を現像し、純粋なイソプロパノールでリンスする。ナノ結晶の膜のエッチングは、5分間実行される
O
2
プラズマによって生じる。最後に、純粋なアセトンに膜を5分間浸漬することによってレジストを除去する。この膜を純粋なIPAでさらにリンスし、乾燥させる。この方法は、20μmと60μmのピッチを有するピクセルのアレイの設計を可能にする(
図13を参照のこと)。