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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】能動型振動制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20220708BHJP
   F16F 15/03 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
F16F15/02 A
F16F15/02 C
F16F15/03 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019149839
(22)【出願日】2019-08-19
(65)【公開番号】P2021032265
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】515157758
【氏名又は名称】公立大学法人 富山県立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】内藤 匠海
(72)【発明者】
【氏名】寺島 修
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 洋史
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 健一
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/199801(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/148011(WO,A1)
【文献】特開2017-203493(JP,A)
【文献】特開2017-203494(JP,A)
【文献】特開2017-133639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/02
F16F 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象物の振動を吸収する動吸振器として使用される能動型振動制御装置であって、
外部供給された印加電流に応じた磁束を発生させる磁力発生体と、前記磁束が通過する磁路を形成する磁性部材とを備え、
前記磁性部材は、外周面に前記磁力発生体が装着された柱状コア部と、内側に前記柱状コア部及び前記磁力発生体が同軸に配置された円環状コア部と、前記柱状コア部及び前記円環状コア部を、前記磁束が通過する位置で相互に連結する磁気粘弾性エラストマとで構成され、
前記円環状コア部は、前記制御対象物に直接又はハウジングを介して固定され、
前記柱状コア部及び前記磁力発生体は、前記磁気粘弾性エラストマが弾性的に変形することにより、前記円環状コア部に対して変位可能であり、前記磁気粘弾性エラストマは、自己の内部を通過する磁束密度の大きさに応じて弾性的性質を変化させることを特徴とする能動型振動制御装置。
【請求項2】
前記柱状コア部及び前記円環状コア部により形成される前記磁路の途中に、前記磁束を一定方向にバイアスする磁石が設けられている請求項1記載の能動型振動制御装置。
【請求項3】
前記柱状コア部及び前記円環状コア部の特定部分が、他の部分よりも透磁率が高い材料で形成されている請求項1又は2記載の能動型振動制御装置。
【請求項4】
前記磁力発生体は、前記円環状コア部に対向する部分が非磁性部材で覆われている請求項1乃至3のいずれか記載の能動型振動制御装置。
【請求項5】
前記磁力発生体の両端は、導電線により外部に引き出され、前記導電線は、前記柱状コア部の長さ方向の両端部の近傍から各々引き出されている請求項1乃至4のいずれか記載の能動型振動制御装置。
【請求項6】
前記磁力発生体の両端は、導電性薄帯により外部に引き出され、前記導電性薄帯は、前記柱状コア部の表面に沿うように配置され、さらに前記磁気粘弾性エラストマの表面に沿うように配置され又は前記磁気粘弾性エラストマの内部に埋設されて各々引き出されている請求項1乃至4のいずれか記載の能動型振動制御装置。
【請求項7】
前記磁気粘弾性エラストマは、前記円環状コア部側の端部から前記柱状コア部側の端部にかけて、厚みが徐々に薄くなるように形成されている請求項1乃至6のいずれか記載の能動型振動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御対象物の振動を吸収する動吸振器(アクティブ・マス・ダンパ)として使用される能動型振動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本願発明者らによる特許文献1,2に開示されているように、外部供給された印加電流に応じた磁束を発生させる励磁コイル等の磁力発生体と、磁力発生体が発生させた磁束が通過する磁路を形成する柱状コア及び円環状コア(第1及び第2の磁性体)と、柱状コア及び円環状コアを、磁束が通過する位置で相互に連結する磁気粘弾性エラストマと、柱状コアに装着された重錘体(調整マス)とを備えた独特な構造の能動型振動制御装置があった。磁気粘弾性エラストマは、自己を通過する磁束に応じて粘弾性的性質が変化する物質である。
【0003】
制御対象物に取り付ける時は、円環状コア及び磁力発生体が制御対象物に一体に固定され、制御対象物が振動すると、柱状コア及び重錘体で構成される可動部が、磁気粘弾性エラストマが粘弾性的に変形することによって変位する。なお、重錘体は、可動部の質量調整用に設けられている。
【0004】
この能動型振動制御装置は、制御対象物の動作状態を示す特性値を取得し、その特性値に応じて磁力発生体の印加電流を変化させ、磁気粘弾性エラストマに通過させる磁束の大きさを制御し、磁気粘弾性エラストマの弾性係数を最適な値に可変調整して、優れた振動低減効果を得るものである。
【0005】
その他、特許文献1,2には、柱状コア及び円環状コアを磁気粘弾性エラストマで連結する部分の好ましい構造が複数記載されている。これらの構造を使用することによって、磁気粘弾性エラストマに対してより効果的に磁束を通過させることができ、さらなる装置のコストダウン及び低消費電力化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-203493号公報
【文献】特開2017-203494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2の能動型振動制御装置は、優れた振動低減効果が得られるが、可動体が柱状コア及び重錘体で構成され、制振機能を発揮するために大きな質量の重錘体が個別に必要であり、装置の質量が大きく、より多くの機械製品等に使用可能にするためには、装置をさらに軽量化することが課題となっていた。
【0008】
本発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、優れた振動低減効果が得られ、しかも従来の装置よりも大幅に軽量化できる能動型振動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、制御対象物の振動を吸収する動吸振器として使用される能動型振動制御装置であって、外部供給された印加電流に応じた磁束を発生させる磁力発生体と、前記磁束が通過する磁路を形成する磁性部材とを備え、前記磁性部材は、外周面に前記磁力発生体が装着された柱状コア部と、内側に前記柱状コア部及び前記磁力発生体が同軸に配置された円環状コア部と、前記柱状コア部及び前記円環状コア部を、前記磁束が通過する位置で相互に連結する磁気粘弾性エラストマとで構成され、前記円環状コア部は、前記制御対象物に直接又はハウジングを介して固定され、前記柱状コア部及び前記磁力発生体は、前記磁気粘弾性エラストマが弾性的に変形することにより、前記円環状コア部に対して変位可能であり、前記磁気粘弾性エラストマは、自己の内部を通過する磁束密度の大きさに応じて弾性的性質を変化させる能動型振動制御装置である。
【0010】
前記柱状コア部及び前記円環状コア部により形成される前記磁路の途中に、前記磁束を一定方向にバイアスする磁石が設けられていることが好ましい。また、前記柱状コア部及び前記円環状コア部の特定部分が、他の部分よりも透磁率が高い材料で形成されていることが好ましい。また、前記磁力発生体は、前記円環状コア部に対向する部分が非磁性部材で覆われていることが好ましい。
【0011】
前記磁力発生体の両端は、導電線により外部に引き出され、前記導電線は、前記柱状コア部の長さ方向の両端部の近傍から各々引き出されていることが好ましい。あるいは、前記磁力発生体の両端は、導電性薄帯により外部に引き出され、前記導電性薄帯は、前記柱状コア部の表面に沿うように配置され、さらに前記磁気粘弾性エラストマの表面に沿うように配置され又は前記磁気粘弾性エラストマの内部に埋設されて各々引き出されていることが好ましい。
【0012】
さらに、前記磁気粘弾性エラストマは、前記円環状コア部側の端部から前記柱状コア部側の端部にかけて、厚みが徐々に薄くなるように形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の能動型制御装置は、磁力発生体の質量が可動体の質量の一部になるので、質量調整用に重錘体を設ける場合、重錘体の質量を小さく抑えることができ、条件が合えば重錘体を省略することも可能である。したがって、従来の装置よりも大幅に小形軽量化を図ることができる。
【0014】
また、磁力発生体と柱状コア部との位置関係が固定されるので、磁力発生体で発生する磁力の磁力線が常に同一の閉ループとなり、磁気粘弾性エラストマに対して常に効率的に、且つタイミングのずれが生じることなく、磁場を印加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の能動型振動制御装置の一実施形態の構造を示す縦断面図(a)、A-A断面図(b)である。
図2】この実施形態の能動型振動制御装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。
図3】磁性部材の第一の変形例の構造を示す縦断面図(a)、この変形例の特性を示すグラフ(b)である。
図4】磁性部材の第二の変形例の構造を示す縦断面図(a)、柱状コア部及び円環状コア部の分解斜視図(b)である。
図5】磁気粘弾性エラストマの形状の変形例を示す縦断面図(a)、(b)である。
図6】磁力発生体の両端を引き出す構造の変形例を示す縦断面図(a)、(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の能動型振動制御装置の一実施形態について、図面に基づいて説明する。この実施形態の能動型振動制御装置10は、制御対象物STの表面に取り付けて使用され、制御対象物STに発生する振動を吸収する動吸振器として動作する装置である。制御対象物STは、例えば、エンジンやモータ等が搭載された機器である
能動型振動制御装置10は、図1(a)、(b)に示すように、外部供給された印加電流iに応じた磁束φを発生させる磁力発生体12と、磁束φが通過する磁路を形成する磁性部材14とを備えている。磁力発生体12は、例えば励磁コイルであり、導電線12aを、合成樹脂等で成るボビン12bに巻回することによって形成される。磁性部材14は、柱状コア部16、円環状コア部18及び磁気粘弾性エラストマ20a,20bとで構成される。柱状コア部16は、所定の透磁率を有した磁性体で成り、円柱状の本体部分の両端に、外向きフランジ部16a,16bが一対に形成されている。円環コア部18は、所定の透磁率を有した磁性体で成り、円筒状の本体部分の両端に、内向きフランジ部18a,18bが一対に設けられている。柱状コア部16の長さと円環コア部18の長さはほぼ同じである。
【0017】
磁気粘弾性エラストマ20a,20bは、所定のシール性を有し、内部を通過する磁束密度の大きさに応じて粘弾性的性質が変化する部材である。例えば、ゴム等の弾性材に鉄粉等の磁性粒子を添加することによって製造され、内部を通過する磁束密度が小さい時に剛性が低くなり、磁束密度が大きくなると剛性が高くなる性質がある。
【0018】
磁性部材14は、柱状コア部16の外周面に磁力発生体12が装着され、円環状コア部18の内側に柱状コア部16及び磁力発生体12が同軸に配置される。そして、柱状コア部16及び円環状コア部18の内部に、磁力発生体12が発生させた磁束φが通過する磁路(磁気抵抗が非常に小さい経路)、すなわち、柱状コア部16の内部を長さ方向に進み、円環状コア部18の内部を長さ方向に戻るループ状の磁路が形成される。
【0019】
柱状コア部16及び円環状コア部18は、外向きフランジ部16aと内向きフランジ部18aの端面同士が磁気粘弾性エラストマ20aを介して相互に連結され、外向きフランジ部16bと内向きフランジ部18bの端面同士が磁気粘弾性エラストマ20bを介して相互に連結される。磁気粘弾性エラストマ20a,20bで連結される2箇所は、どちらも磁束φが通過する位置である。
【0020】
磁力発生体12が装着された磁性部材14は、合成樹脂等で成る保護用のハウジング22の内部に収容される。ハウジング22は、内面に磁性部材14の円環状コア部18が一体に固定され、外面が制御対象物STの表面に固定される。したがって、柱状コア部16及び磁力発生体12は、円環状コア部18に対して変位可能な空間を介して設けられ、磁気粘弾性エラストマ20a,20bが弾性的に変形することにより、円環状コア部18及びハウジング22及び制御対象物STに対して変位する可動体24となる。ここでは、可動体24が変位する方向は、柱状コア部16の長さ方向に想定されている。
【0021】
図2は、能動型振動制御装置20の制御系の概略構成を示している。テーブル26は、制御対象物STの動作状態を示す特性値αxを取得し、取得した特性値αxに応じた印加電流ixを導出するのに使用される。特性値αを何にするかは自由であり、例えば、制御対象物STの振動の大きさ(変位等)の測定値をしたり、制御対象物STが車両のエンジンであれば、回転部材の回転速度の測定値を使用したりすることができる。そして、半導体スイッチング素子等で構成したパワードライバ28により、磁力発生体12の印加電流iをixに可変制御する。これによって、磁気粘弾性エラストマ20a,20bに通過する磁束φの密度が変化し、磁気粘弾性エラストマ20a,20bの弾性係数kが、特性値αxに対応した値kxに変化する。
【0022】
なお、磁力発生体12をパワードライバ28に配線するためには、磁力発生体12の導電線12aの両端部12cを磁性部材14及びハウジング22の外に引き出す必要がある。能動型振動制御装置10では、図1(a)に示すように、両端部12cを、柱状コア部16の長さ方向の両端部の近傍から各々引き出している。これによって、制御対象物STが振動した時、可動体24(柱状コア部16、磁力発生体12)の変位が特定方向に偏ってしまうのを防止することができる。
【0023】
また、能動型振動制御装置10では、磁力発生体12の、円環状コア部18に対向する部分が非磁性部材30で覆われていてもよい。これは、磁力発生体12が発生した磁束φが、磁気粘弾性エラストマ20a,20bを通過せずに円環状コア部18に達するのを防止するためであり、これによって、特性値αxと弾性係数kxとの対応に大きな誤差が生じるのを抑えることができる。非磁性部材30は、例えば、絶縁テープ等の非磁性材料で磁力発生体12の外周面を覆う形態が好ましく、これによって、磁力発生体12と円環状コア部18との間に一定以上の空間(透磁率が非常に低い空間)を容易に設けることができる。なお非磁性部材30は、磁力発生体12の外周面を覆う形態にしてもよいし、円環状コア部18の内面を覆う形態にしてもよい。
【0024】
次に、能動型振動制御装置10の動作を説明する。まず、図1(a)に示すように、能動型振動制御装置10を制御対象物STの表面に取り付ける。そして、制御対象物STの表面に振動が発生すると、可動体24が柱状コア部16の長さ方向に振動し、磁気粘弾性エラストマ20a,20bには、厚み方向にせん断力が加わり、内部の磁性粒子の並びがずれる。このときに磁力発生体12が発生させた磁束φが通過し、磁性粒子が磁束φが通過する方向に並ぼうとする。これが、外力に対する抵抗になり、見かけ上、磁気粘弾性エラストマ20a,20bの剛性が高くなる。
【0025】
磁気粘弾性エラストマ20a,20bの剛性が変化すると、可動体24の固有振動数が変化し、減衰可能な振動の周波数が変化する。ここでは、テーブル26により、減衰可能な振動の周波数を制御対象物STの動作状態に応じて能動的に変化させるので、制御対象物STに発生する振動を常に効果的に低減させることができる。
【0026】
この実施形態の能動型振動制御装置10と先に説明した従来の能動型振動制御装置(特許文献1,2)とを比較すると、従来の能動型振動制御装置は、可動体が柱状コア及び重錘体で構成され、磁力発生体は可動体の一部にならない構造なので、可動体の質量を所定の値に調整する時、相対的により質量が大きい重錘体が必要になる。したがって、磁力発生体の質量が装置の軽量化を妨げる大きな要因となる。
【0027】
これに対して、能動型振動制御装置10の場合は、磁力発生体12が可動体24の一部になり、磁力発生体12が重錘体の役割も果たしているので、ここでは重錘体が省略されている。仮に、質量調整用に重錘体を設ける必要が生じたとしても、質量が小さいものを付加するだけでよい。したがって、能動型振動制御装置10は、従来の装置よりも大幅に軽量化を図ることができる。
【0028】
なお、本発明の能動型振動制御装置は、上記実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、上記の能動型制御装置10が有する磁性部材14は、構成の一部を、図3に示す磁性部材32や図4に示す磁性部材34のように変更することができる。
【0029】
第一の変形例の磁性部材32は、図3(a)に示すように、柱状コア部16及び円環状コア部18により形成される磁路の途中に、磁束φを一定方向にバイアスする磁石34が設けられている。図3(b)のグラフに示すように、上記の磁性部材14の場合、磁石34を有していないので、印加電流i=0の時に磁束φ≒0となる。これに対して、磁石34を有する磁性部材32の場合、印加電流i=0の時に磁束φ=φo(>0)となる。つまり、印加電流i≧0の範囲で最低限の磁束φoが確保され、磁気粘弾性エラストマ20a,20bの剛性を一定以上の値に保持することができる。したがって、例えば、より高い周波数の振動に対応可能とすることができ、不意に能動型制御装置10をどこかにぶつけて衝撃が加わったとしても、磁気粘弾性エラストマ20a,20bが簡単に破損しないように保護することができる。なお、磁石34は、柱状コア部16に設けてもよいし円環状コア部18に設けてもよく、同様の効果が得られる。ただし、可動体24の質量を考える時、前者は磁石34が可動体24の一部となるが、後者は磁石34が可動体24の一部にならない。
【0030】
第二の変形例の磁性部材34は、図4(a)、(b)に示すように、柱状コア部16が、円柱形の磁性体ブロック16(1)と円板形の磁性体ブロック16(2),16(3)とを接合することによって形成されているという特徴がある。磁性体ブロック16(2),16(3)の外側の周縁部は、柱状コア部16の外向きフランジ部16a,16bとなる部分である。同様に、円環状コア部18が、円筒形の磁性体ブロック18(1)とドーナツ形の磁性体ブロック18(2),18(3)とを接合することによって形成されているという特徴がある。磁性体ブロック18(2),18(3)の内側の周縁部は、円環状コア部18の内向きフランジ部18a,18bとなる部分である。このように、柱状コア部16及び円環状コア部18は、複数の磁性体ブロックを接合することによって各々形成することができる。さらに、磁性体ブロック16(2),16(3),18(2),18(3)は、通常よりも透磁率が高い磁性材料を使用することが好ましい。磁性体ブロック16(2),16(3),18(2),18(3)は、磁気粘弾性エラストマ20a,20bによって相互に連結される部分なので、透磁率が高い磁性材料を使用することによって、磁気粘弾性エラストマ20a,20bに対してより効果的に磁束φを通過させることができ、さらなる装置のコストダウン及び低消費電力化を図ることができる。
【0031】
柱状コア及び円環状コアを磁気粘弾性エラストマで連結する部分の構造は、上記実施形態の構造(図1(a)等)に限定されず、例えば特許文献1に記載されている各実施形態のような構造に変更してもよい。また、磁気粘弾性エラストマの構造は、磁気粘弾性エラストマ20a,20bのようなドーナツ形の構造(図1(b))に限定されず、例えば特許文献2に記載されている各実施形態のような構造に変更してもよい。このように変更することによって、磁気粘弾性エラストマに対してより効果的に磁束を通過させることができ、さらなる装置のコストダウン及び低消費電力化を図ることができる。
【0032】
また、例えば図5(a)、(b)に示すように、磁気粘弾性エラストマ20a,20bの形状を、円環状コア部18側の端部から柱状コア部16側の端部にかけて、厚みが徐々に薄くなるように形成してもよい。磁気粘弾性エラストマ20a,20bは、ゴム等の弾性材に鉄粉等の磁性粒子36を添加することによって製造されるが、磁性粒子36を弾性材の中に均一に分散させるのは容易ではなく、表層部に集まりやすい傾向がある。したがって、円環状コア部18側の端部から柱状コア部16側の端部にかけて厚みが徐々に薄くなる形状にすることによって、多数の磁性粒子36に対してより効果的に磁束φを作用させることができる。さらに、磁気粘弾性エラストマ20a,20bの撓みを容易にし、可動体24(磁力発生体12、柱状コア部16等)をより変位しやすくすることができるという利点もある。
【0033】
上記の能動型制御装置が有する磁力発生体は、導電線を巻回した励磁コイルであるが、磁力発生体は、印加電流に応じた磁束を柱状コア部に発生させることができる部材であればよく、励磁コイル以外の部材を使用してもよい。
【0034】
また、上記の磁力発生体の導電線の両端部は、両端部が可動体の動きに影響しないようにすることが重要である。上記の磁力発生体12では、導電線12aの両端部12cを、柱状コア部16の長さ方向の両端部の近傍から各々引き出す構造にして、可動体の変位の偏りを抑えているが、例えば図6(a)に示すように、磁力発生体12の両端を、所定の柔軟性を有した導電性薄帯38により引き出す構造にしてもよい。これにより、導電線等の引き出し線が可動体に与える影響をほぼ除去することができる。導電性薄帯38は、例えば厚みが10μ~200μm程度のアルミ箔又は銅箔であることが好ましく、導電性薄帯38を柱状コア部16の表面に沿うように配置し、さらに磁気粘弾性エラストマ20aの表面に沿うように配置して外部に引き出す。あるいは、図6(b)に示すように、導電性薄帯38を柱状コア部16の表面に沿うように配置し、さらに磁気粘弾性エラストマ20aの内部に埋設して外部に引き出すようにしてもよい。図6(a)と(b)のどちらを選択するかは、柱状コア16及び円環状コア18の形状(磁気粘弾性エラストマ20aで連結される部分の形状)や装置の組み立てやすさ等を考慮して選択すればよい。なお、図6(a)、(b)では省略しているが、導電性薄帯38が柱状コア部16及び円環状コア部18と接触して相互に導通しないようにするため、間に絶縁シート等を配置することが好ましい。 その他、上記のハウジング22の構造は、適宜変更することができる。また、例えば制御対象物の筐体等に、磁性部材及び磁力発生体を設置するための収容室が設けられている場合は、ハウジング22は不要なので省略してもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 能動型振動制御装置
12 磁力発生体
14,32,34 磁性部材
16 柱状コア部
16(3) 透磁率が高い磁性体ブロック
18 円環状コア部
18(3) 透磁率が高い磁性体ブロック
20a,20b 磁気粘弾性エラストマ
24 可動体
30 非磁性部材
38 導電性薄帯
i 印加電流
ST 制御対象物
φ 磁束
図1
図2
図3
図4
図5
図6