(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】ユニット型電力自動生成装置及び該電力自動生成装置つき移動手段
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0612 20160101AFI20220708BHJP
C01B 3/26 20060101ALI20220708BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20220708BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20220708BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20220708BHJP
【FI】
H01M8/0612
C01B3/26
H01M8/04 Z
H01M8/04 J
H01M8/0432
H01M8/04313
(21)【出願番号】P 2018096909
(22)【出願日】2018-05-21
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】391028328
【氏名又は名称】株式会社辰巳菱機
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(72)【発明者】
【氏名】近藤 豊嗣
【審査官】西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-120617(JP,A)
【文献】特開2017-081793(JP,A)
【文献】特開2018-012610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04 ー 8/0668
C01B 3/26
H01M 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、該燃料電池に燃料となる水素を生成して供給する水素生成供給手段と、前記水素生成供給手段を稼働させて、水素生成を行わせる稼働手段とを方形状のボックス内に配置して電力自動生成装置を形成してなり、
前記電力自動生成装置は、前記水素生成供給手段を、メチルシクロヘキサンと、該メチルシクロヘキサンを触媒と反応させて水素とトルエンとに分離する脱水素反応器とを有する脱水素装置で構成し、前記稼働手段を、前記触媒を加熱する加熱装置により構成し、前記脱水素装置の稼働後は、前記加熱装置に替えて前記分離生成されたトルエンの熱により前記触媒を加熱して水素とトルエンとに分離し、水素を生成して燃料電池の燃料とし、
前記ボックス内でのメチルシクロヘキサンの設置区画と加熱装置の設置区画はボックスの両端側に設け、該ボックスの両端部から前記メチルシクロヘキサン及び加熱装置あるいは加熱装置の燃料を取り替え可能、交換可能とした、
ことを特徴とする電力自動生成装置。
【請求項2】
燃料電池と、該燃料電池に燃料となる水素を生成して供給する水素生成供給手段と、前記水素生成供給手段を稼働させて、水素生成を行わせる稼働手段と制御装置とを1ユニットとして方形状のボックス内に配置してユニット型電力自動生成装置としてなり、
前記電力自動生成装置は、前記水素生成供給手段を、メチルシクロヘキサンと、該メチルシクロヘキサンを触媒と反応させて水素とトルエンとに分離する脱水素反応器とを有する脱水素装置で構成し、前記稼働手段を、前記触媒を加熱する加熱装置により構成し、前記脱水素装置の稼働後は、前記加熱装置に替えて前記分離生成されたトルエンの熱により前記触媒を加熱して水素とトルエンとに分離し、水素を生成して燃料電池の燃料とし、
前記制御装置は、前記触媒の温度を検知する触媒温度検知部と、水素とトルエンの分離後、前記トルエンの状態を検知するトルエン状態検知部とを有する、
ことを特徴とするユニット型電力自動生成装置。
【請求項3】
燃料電池と、該燃料電池に燃料となる水素を生成して供給する水素生成供給手段と、前記水素生成供給手段を稼働させて、水素生成を行わせる稼働手段と制御装置とを1ユニットとして方形状のボックス内に配置して電力自動生成装置としてなり、
前記電力自動生成装置は、前記水素生成供給手段を、メチルシクロヘキサンと、該メチルシクロヘキサンを触媒と反応させて水素とトルエンとに分離する脱水素反応器とを有する脱水素装置で構成し、前記稼働手段を、前記触媒を加熱する加熱装置により構成し、前記脱水素装置の稼働後は、前記加熱装置に替えて前記分離生成されたトルエンの熱により前記触媒を加熱して水素とトルエンとに分離し、水素を生成して燃料電池の燃料とし、
前記制御装置は、前記触媒の温度を検知する触媒温度検知部と、水素とトルエンの分離後、前記トルエンの状態を検知するトルエン状態検知部とを有する、
ことを特徴とする
電力自動生成装置。
【請求項4】
前記ボックス内には、メチルシクロヘキサンの設置区画と少なくとも脱水素装置及び燃料電池の設置区画との間、加熱装置と前記脱水素装置及び燃料電池の設置区画との間にボックス長手方向に移動可能な仕切り壁が設けられた、
ことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載のユニット型電力自動生成装置。
【請求項5】
燃料電池と、該燃料電池に燃料となる水素を生成して供給する水素生成供給手段と、前記水素生成供給手段を稼働させて、水素生成を行わせる稼働手段とを方形状のボックス内に配置して電力自動生成装置とし、該電力自動生成装置を移動手段に搭載してなり、
前記電力自動生成装置は、前記水素生成供給手段を、メチルシクロヘキサンと、該メチルシクロヘキサンを触媒と反応させて水素とトルエンとに分離する脱水素反応器とを有する脱水素装置で構成し、前記稼働手段を、前記触媒を加熱する加熱装置により構成し、前記脱水素装置の稼働後は、前記加熱装置に替えて前記分離生成されたトルエンの熱により前記触媒を加熱して水素とトルエンとに分離し、水素を生成して燃料電池の燃料とし、
前記ボックス内でのメチルシクロヘキサンの設置区画と加熱装置の設置区画はボックスの両端側に設け、該ボックスの両端部から前記メチルシクロヘキサン及び加熱装置あるいは加熱装置の燃料を取り替え可能、交換可能とした、
ことを特徴とする電力自動生成装置つき移動手段。
【請求項6】
燃料電池と、該燃料電池に燃料となる水素を生成して供給する水素生成供給手段と、前記水素生成供給手段を稼働させて、水素生成を行わせる稼働手段と制御装置とを1ユニットとして方形状のボックス内に配置してユニット型電力自動生成装置とし、該ユニット型電力自動生成装置を移動手段に搭載してなり、
前記電力自動生成装置は、前記水素生成供給手段を、メチルシクロヘキサンと、該メチルシクロヘキサンを触媒と反応させて水素とトルエンとに分離する脱水素反応器とを有する脱水素装置で構成し、前記稼働手段を、前記触媒を加熱する加熱装置により構成し、前記脱水素装置の稼働後は、前記加熱装置に替えて前記分離生成されたトルエンの熱により前記触媒を加熱して水素とトルエンとに分離し、水素を生成して燃料電池の燃料とし、
前記制御装置は、前記触媒の温度を検知する触媒温度検知部と、水素とトルエンの分離後、前記トルエンの状態を検知するトルエン状態検知部とを有する、
ことを特徴とするユニット型電力自動生成装置つき移動手段。
【請求項7】
燃料電池と、該燃料電池に燃料となる水素を生成して供給する水素生成供給手段と、前記水素生成供給手段を稼働させて、水素生成を行わせる稼働手段と制御装置とを1ユニットとして方形状のボックス内に配置して電力自動生成装置とし、該電力自動生成装置を移動手段に搭載してなり、
前記電力自動生成装置は、前記水素生成供給手段を、メチルシクロヘキサンと、該メチルシクロヘキサンを触媒と反応させて水素とトルエンとに分離する脱水素反応器とを有する脱水素装置で構成し、前記稼働手段を、前記触媒を加熱する加熱装置により構成し、前記脱水素装置の稼働後は、前記加熱装置に替えて前記分離生成されたトルエンの熱により前記触媒を加熱して水素とトルエンとに分離し、水素を生成して燃料電池の燃料とし、
前記制御装置は、前記触媒の温度を検知する触媒温度検知部と、水素とトルエンの分離後、前記トルエンの状態を検知するトルエン状態検知部とを有する、
ことを特徴とする
電力自動生成装置つき移動手段。
【請求項8】
前記ボックス内には、メチルシクロヘキサンの設置区画と少なくとも脱水素装置及び燃料電池の設置区画との間、加熱装置と前記脱水素装置及び燃料電池の設置区画との間にボックス長手方向に移動可能な仕切り壁が設けられた、
ことを特徴とする請求項5、請求項6または請求項7記載のユニット型電力自動生成装置つき移動手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、商用電源に頼ることがなく、またガソリンなど化石燃料を主たる燃料とせず、1つのユニットボックスにまとめて収納でき、ユニットとして持ち運び及び移動可能に構成したユニット型電力自動生成装置及び当該電力自動生成装置を搭載して、発電された電力を走行用や内部の負荷に利用できる鉄道車両、自動車車両、航空機あるいは船舶など移動手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境汚染に対する取り組みが真摯に行われており、石油など化石燃料に頼らないクリーンエネルギーによる電力生成技術が脚光を浴びている。
その一手段として、水素を燃料にした電力生成法が注目されている。ここで、近年、燃料としての水素をそのまま水素として貯蔵、運搬するのではなく、一旦有機ハイドライドとして貯蔵、運搬することが近年盛んに行われている。有機ハイドライドは安全性が高く、また水素への変換率がきわめて高いからである。有機ハイドライドには数百倍の水素変換率があると言われている。
【0003】
しかしながら、有機ハイドライドから水素に変換して生成し、生成した当該水素を燃料電池に送入して発電し、発電した電力を鉄道車両、自動車車両、航空機あるいは船舶など移動手段の燃料として使用する技術は未だ確立されていないのが現状である。
【0004】
さらに、近年、大きな地震や津波あるいはその他の自然災害があった場合、その後のBCP対策を万全にしておく必要があり、特に陸上交通手段である鉄道車両や自動車車両が被災した場合、その車内に乗り合わせた乗客に対する安全やライフラインを確保しておく必要がある。
【0005】
そこで、前記陸上交通手段において、例えば、商用電源からの電力供給がストップし、しかも移動が不可能であるとき、単に名目上非常用発電機が前記陸上交通手段内に搭載されていたとしても、電力遮断が数日間に亘って行われたときには前記従来からの非常用発電機での電力生成は不充分で、前記移動手段のライフラインも途絶えてしまうこととなる。
【0006】
しかも、従来の非常用発電機はガソリンなどの化石燃料で稼働させるものであり、クリーンエネルギーが要望されている近年、社会の動向に一致しているとは言えない。
【0007】
そこで、前記ユニット化された電力自動生成装置をセットものとして構成しておき、当該ユニット化された電力自動生成装置を搭載した移動手段とすれば、たとえ自然災害に被災して移動が不可能になったとしても、充分にBCP対策が実行できる鉄道車両、自動車車両、航空機あるいは船舶など移動手段が提供出来るものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
かくして、本発明は、前記従来からの要請、従来なされた提案、近年の社会動向に鑑みて創案されたものであって、有機ハイドライドから水素に変換して生成し、生成した当該水素を燃料電池に送入して発電し、発電した電力を鉄道車両、自動車車両、航空機あるいは船舶など移動手段の燃料として使用し、あるいは内部の負荷に使用する技術を確立し、さらには、近年、大きな地震や津波あるいはその他の自然災害があった場合で移動が不可能になったとき、その後のBCP対策を万全にすることが出来、特に陸上交通手段に乗り合わせて移動が不可能なときの乗客に対する安全、ライフラインを確保すべく、地上において、例えば、商用電源からの電力供給がストップして移動が不可能になったとき、前記移動手段の走行燃料やライフラインも途絶えてしまう恐れがなく、しかも、クリーンエネルギーが要望されている社会の動向に一致し、移動可能な1つの収納ボックスに収納された電力自動生成装置を配置しておけば充分にBCP対策も行えるユニット化された電力自動制生成装置の提供及び当該ユニット化された電力自動生成装置つき移動手段を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
燃料電池と、該燃料電池に燃料となる水素を生成して供給する水素生成供給手段と、前記水素生成供給手段を稼働させて、水素生成を行わせる稼働手段とを方形状のボックス内に配置して電力自動生成装置を形成してなり、
前記電力自動生成装置は、前記水素生成供給手段を、メチルシクロヘキサンと、該メチルシクロヘキサンを触媒と反応させて水素とトルエンとに分離する脱水素反応器とを有する脱水素装置で構成し、前記稼働手段を、前記触媒を加熱する加熱装置により構成し、前記脱水素装置の稼働後は、前記加熱装置に替えて前記分離生成されたトルエンの熱により前記触媒を加熱して水素とトルエンとに分離し、水素を生成して燃料電池の燃料とし、
前記ボックス内でのメチルシクロヘキサンの設置区画と加熱装置の設置区画はボックスの両端側に設け、該ボックスの両端部から前記メチルシクロヘキサン及び加熱装置あるいは加熱装置の燃料を取り替え可能、交換可能とした、
ことを特徴とし、
または、
燃料電池と、該燃料電池に燃料となる水素を生成して供給する水素生成供給手段と、前記水素生成供給手段を稼働させて、水素生成を行わせる稼働手段と制御装置とを1ユニットとして方形状のボックス内に配置してユニット型電力自動生成装置としてなり、
前記電力自動生成装置は、前記水素生成供給手段を、メチルシクロヘキサンと、該メチルシクロヘキサンを触媒と反応させて水素とトルエンとに分離する脱水素反応器とを有する脱水素装置で構成し、前記稼働手段を、前記触媒を加熱する加熱装置により構成し、前記脱水素装置の稼働後は、前記加熱装置に替えて前記分離生成されたトルエンの熱により前記触媒を加熱して水素とトルエンとに分離し、水素を生成して燃料電池の燃料とし、
前記制御装置は、前記触媒の温度を検知する触媒温度検知部と、水素とトルエンの分離後、前記トルエンの状態を検知するトルエン状態検知部とを有する、
ことを特徴とし、
または、
燃料電池と、該燃料電池に燃料となる水素を生成して供給する水素生成供給手段と、前記水素生成供給手段を稼働させて、水素生成を行わせる稼働手段と制御装置とを1ユニットとして方形状のボックス内に配置して電力自動生成装置としてなり、
前記電力自動生成装置は、前記水素生成供給手段を、メチルシクロヘキサンと、該メチルシクロヘキサンを触媒と反応させて水素とトルエンとに分離する脱水素反応器とを有する脱水素装置で構成し、前記稼働手段を、前記触媒を加熱する加熱装置により構成し、前記脱水素装置の稼働後は、前記加熱装置に替えて前記分離生成されたトルエンの熱により前記触媒を加熱して水素とトルエンとに分離し、水素を生成して燃料電池の燃料とし、
前記制御装置は、前記触媒の温度を検知する触媒温度検知部と、水素とトルエンの分離後、前記トルエンの状態を検知するトルエン状態検知部とを有する、
ことを特徴とし、
または、
前記ボックス内には、メチルシクロヘキサンの設置区画と少なくとも脱水素装置及び燃料電池の設置区画との間、加熱装置と前記脱水素装置及び燃料電池の設置区画との間にボックス長手方向に移動可能な仕切り壁が設けられた、
ことを特徴とし、
または、
燃料電池と、該燃料電池に燃料となる水素を生成して供給する水素生成供給手段と、前記水素生成供給手段を稼働させて、水素生成を行わせる稼働手段とを方形状のボックス内に配置して電力自動生成装置とし、該電力自動生成装置を移動手段に搭載してなり、
前記電力自動生成装置は、前記水素生成供給手段を、メチルシクロヘキサンと、該メチルシクロヘキサンを触媒と反応させて水素とトルエンとに分離する脱水素反応器とを有する脱水素装置で構成し、前記稼働手段を、前記触媒を加熱する加熱装置により構成し、前記脱水素装置の稼働後は、前記加熱装置に替えて前記分離生成されたトルエンの熱により前記触媒を加熱して水素とトルエンとに分離し、水素を生成して燃料電池の燃料とし、
前記ボックス内でのメチルシクロヘキサンの設置区画と加熱装置の設置区画はボックスの両端側に設け、該ボックスの両端部から前記メチルシクロヘキサン及び加熱装置あるいは加熱装置の燃料を取り替え可能、交換可能とした、
ことを特徴とし、
または、
燃料電池と、該燃料電池に燃料となる水素を生成して供給する水素生成供給手段と、前記水素生成供給手段を稼働させて、水素生成を行わせる稼働手段と制御装置とを1ユニットとして方形状のボックス内に配置してユニット型電力自動生成装置とし、該ユニット型電力自動生成装置を移動手段に搭載してなり、
前記電力自動生成装置は、前記水素生成供給手段を、メチルシクロヘキサンと、該メチルシクロヘキサンを触媒と反応させて水素とトルエンとに分離する脱水素反応器とを有する脱水素装置で構成し、前記稼働手段を、前記触媒を加熱する加熱装置により構成し、前記脱水素装置の稼働後は、前記加熱装置に替えて前記分離生成されたトルエンの熱により前記触媒を加熱して水素とトルエンとに分離し、水素を生成して燃料電池の燃料とし、
前記制御装置は、前記触媒の温度を検知する触媒温度検知部と、水素とトルエンの分離後、前記トルエンの状態を検知するトルエン状態検知部とを有する、
ことを特徴とし、
または、
燃料電池と、該燃料電池に燃料となる水素を生成して供給する水素生成供給手段と、前記水素生成供給手段を稼働させて、水素生成を行わせる稼働手段と制御装置とを1ユニットとして方形状のボックス内に配置して電力自動生成装置とし、該電力自動生成装置を移動手段に搭載してなり、
前記電力自動生成装置は、前記水素生成供給手段を、メチルシクロヘキサンと、該メチルシクロヘキサンを触媒と反応させて水素とトルエンとに分離する脱水素反応器とを有する脱水素装置で構成し、前記稼働手段を、前記触媒を加熱する加熱装置により構成し、前記脱水素装置の稼働後は、前記加熱装置に替えて前記分離生成されたトルエンの熱により前記触媒を加熱して水素とトルエンとに分離し、水素を生成して燃料電池の燃料とし、
前記制御装置は、前記触媒の温度を検知する触媒温度検知部と、水素とトルエンの分離後、前記トルエンの状態を検知するトルエン状態検知部とを有する、
ことを特徴とし、
または、
前記ボックス内には、メチルシクロヘキサンの設置区画と少なくとも脱水素装置及び燃料電池の設置区画との間、加熱装置と前記脱水素装置及び燃料電池の設置区画との間にボックス長手方向に移動可能な仕切り壁が設けられた、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、有機ハイドライドから水素に変換して生成し、生成した当該水素を燃料電池に送入して発電し、発電した電力を鉄道車両、自動車車両、航空機あるいは船舶など移動手段の燃料や内部の負荷に使用する技術を確立でき、さらには、大きな地震や津波あるいはその他の自然災害に前記移動手段が被災して移動が不可能になったとき、その後のBCP対策が万全に行え、たとえ乗客が被災したとしてもその乗客に対する安全管理、及びライフラインを確保でき、電力遮断が数日間に亘って行われたときにも前記移動手段の走行燃料やライフラインが途絶えてしまう恐れがなく、しかも、移動可能なユニット化された電力自動生成装置を構成して、当該電力自動生成装置が搭載された移動手段であれば、充分にBCP対策が行えるとの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による電力自動生成装置の構成を説明する構成説明図である。
【
図2】本発明の全体構成を説明する全体構成説明図である。
【
図3】制御装置と外部サイトとの送受信状態を説明する説明図である。
【
図4】制御装置の構成を説明する構成説明図である。
【
図5】演算制御部の構成を説明する構成説明図である。
【
図6】ユニット型電力自動生成装置を搭載したトラックで、横型風車を搭載した実施例の構成説明図(1)である。
【
図7】ユニット型電力自動生成装置を搭載したトラックで、横型風車を搭載した実施例の構成説明図(2)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施例につき図を参照して説明する。
図1において符号1は、電力自動生成のために使用する装置を1セットのユニットにまとめて構成した本発明のユニット化された電力自動生成装置を示す。
【0014】
該電力自動生成装置1は、燃料電池2と脱水素装置3と該脱水素装置3内の反応器に流入させ、反応器内に取り付けられた白金などの触媒18と反応させるメチルシクロヘキサン4と、該脱水素装置3内の触媒18を加熱し、脱水素装置3を起動させる加熱装置5と各種の制御を行う制御装置7とを有して構成されている。
【0015】
前記加熱装置5による触媒18の加熱であるが、その加熱方法については何ら限定されない。例えば、電磁誘導を利用して加熱する方法で高周波誘導加熱、電磁誘導加熱とも呼ばれる加熱方法でも構わない。
【0016】
交流電源に接続されたコイルに電流を流すと、その周りには磁力線が発生する。コイルの中あるいはその近くに電気を通す金属を置くと、金属内には磁束の変化を妨げる方向に“うず電流”が流れる。金属には電気抵抗があるため、ジュール熱が発生して金属が加熱される。この現象を誘導加熱という。
【0017】
この方式は被加熱物に電流を流す直接加熱方式であり、被加熱物が導電体であることが条件となる。絶縁体の触媒18を誘導加熱する場合は、導電性のケースなどを用い、該ケースなどに触媒18を入れ、前記ケースなどを誘導加熱して熱伝達させる。
【0018】
尚、誘導加熱では、周波数の選定が極めて重要であり、加熱効率ひいてはその経済性に大きな影響を与える。触媒18が小さいほど高い周波数が、また、触媒18が大きい場合には比較的低い周波数が必要となる。
【0019】
次に、前記メチルシクロヘキサン4は液体タンク6内に貯留され、保存される。
【0020】
ここで、制御装置7では、メチルシクロヘキサン4の脱水素装置3への導入制御が行われる。すなわち、メチルシクロヘキサン4を脱水素装置3に導入して触媒18に対し、所定時間の間隔をあけて噴霧する制御などが行われる。触媒18の温度変化、また触媒18に噴霧した後の反応状態、すなわち水素とトルエンとの分離状態を連続的に検知し、前記の噴霧する所定時間の決定あるいはメチルシクロヘキサン4の噴霧量などの制御判断が行われる。
【0021】
また、加熱装置5により触媒18は高温に加熱されるが、前記触媒18につきメチルシクロヘキサン4が噴霧されて反応が起こる温度まで達したか否かの判断制御も行われ、前記触媒18が所定の高温度に達したとき、例えば800℃程度に達したとき、メチルシクロヘキサン4を触媒18に噴霧する。すなわち、制御装置7の演算制御部11には、触媒18の温度検知部30が設けられており、該触媒温度検知部30で検知された温度に基きメチルシクロヘキサン4の噴霧制御がなされる。
【0022】
さらに、メチルシクロヘキサン4が触媒18に噴霧後、蒸発して分離した高温(400℃乃至200℃)のトルエンは、排出されることなく脱水素装置3内を巡回させる様に構成してある。
【0023】
高温のトルエンを巡回させ、触媒18を冷却させずに高熱維持させることにより触媒18の高温度維持が図れる。ここで、制御装置7は、演算制御部11にトルエン状態検知部31が設けられており、該トルエン状態検知部31によりトルエンの巡回回数や巡回中のトルエンの温度状態などを検知し、巡回するトルエンの触媒18に対する接触面積、接触時間などの制御を行い、触媒18がメチルシクロヘキサン4の噴霧により水素とトルエンとの分離反応が効率よく行われるよう構成されている。
【0024】
そして、トルエンによる触媒18の加熱制御において、触媒18の分離反応が効率よく行われるまで加熱しないときは積極的に触媒18を加熱する制御も行われる。例えば、別途、加熱装置5を起動させ、前記トルエンの巡回操作のみで触媒18が分離反応できるまで加熱するなどの制御も前記トルエン状態検知部31の検知信号に従って行われる。
【0025】
尚、例えば鉄道車両など移動手段に対し、商用電源からの電力供給が可能な場合には、本発明による電力自動生成装置1からの電力供給と共に、商用電源からの電力供給の切り替え制御も行える様に構成する。
すなわち、触媒18の温度が分離反応を起こす程度の温度にならない場合に商用電源からの電力によっても触媒18を加熱できるものとしてある。
【0026】
ところで、例えば、
図1に示すように、本発明では、方形体状のボックスをなすコンテナ、キュービクルなどボックス体32を用意し、該ボックス体32内に前記燃料電池2と脱水素装置3と、メチルシクロヘキサン4が貯留されている液体タンク6及び加熱装置5、制御装置7などを配置して、移動可能にユニット化された電力自動生成装置1を形成してある。ここで、コンテナやキュービクルなどのボックス体32内に前記装置類をどのような順番で、どの様な配置でセットするかが重要であり、本発明では高効率で水素が取りだせ、しかも作業効率の良い配置順番などを創案したものである。
【0027】
すなわち、なるべく少ない量のメチルシクロヘキサン4で、また触媒18の加熱もなるべく低い温度で、最大限の分離反応が行え、最大限の水素が得られ、しかも作業効率も優れた状態にセットするのが重要だからである。
【0028】
そのため、コンテナやキュービクルを構成するボックス体32の壁体33の素材も重要で、少なくとも断熱性、遮音性、密閉性に優れた素材で前記壁体33を構成するものとする。
【0029】
さらに、前記コンテナやキュービクルなどボックス体32内に仕切り壁34を設けて、配置する装置類の間を仕切っているが、該仕切り壁34も断熱性、遮音性、密閉性に優れた素材のものとし、かつ仕切り間隔が自在に調整出来る部材にすることが重要である。なぜなら、メチルシクロヘキサン4を貯留した液体タンク6の本数が多い場合には、その区画は広く取らなければならないし、加熱装置5の種類や大きさにより、加熱装置5を配置する区画も広く変動させる必要があるからである。
【0030】
ボックス体32は
図1から理解されるように、直方体状に構成されている。そして長手方向両端側に液体タンク6と加熱装置5が配置される。両端部側に液体タンク6と加熱装置5を配置することが重要である。左右いずれの方向の端部に液体タンク6や加熱装置5を配置するかは問わない。
【0031】
しかして、ボックス体32の長手方向両端部にはそれぞれ搬入口35が設けられており、該搬入口35から液体タンク6の入れ替えや、加熱装置5自体の入れ替えあるいは加熱装置5の燃料の交換等が頻繁に行われるものであり、この状況を踏まえて液体タンク6と加熱装置5は長手方向両端部側に簡単に交換できて取り出せやすいように配置した。次に、脱水素装置3、燃料電池2及びこれらの動作を制御する制御装置7はボックス体32の中央部分に配置する。
【0032】
尚、ボックス体32の大きさは複数種類用意されており、発電する電力量に応じてその大きさが決定される。すなわち、発電電力量が大きい場合には大型のボックス体32が使用され、発電電力量が小さい場合には小型のボックス体32が使用され、中間程度の場合には中型のボックス体32が使用される。
【0033】
さらに前述の様に、仕切り壁34は長手方向に移動可能になるよう取り付けられており、液体タンク6の本数などを増加させたり、また加熱装置5の大きさや加熱装置5に使用する燃料(燃料用ボンベなど)の本数を増加させる場合に迅速に対応出来るように構成されている。
【0034】
次に、本発明のボックス体32は、防水性を有すことが必要である。すなわち、ボックス体32を構成する壁体33及び壁体33と直角に曲がる隣の壁体33との接合部は防止性ある部材で構成され、外側からの水がボックス体32内に浸透しないように構成されている。
【0035】
また、長手方向両端部には搬入口35が各々設けられているが、これら搬入口35も防水性を有する扉により、閉扉したときには、外部の水がボックス体32内部に浸透しないよう構成されている。
【0036】
ところで、電力自動生成装置1を作動させるには、すでに述べたように前記脱水素装置3内の触媒18を加熱装置5により反応が起こる温度にまで加熱しなければならない。ここで、加熱装置5の構成にも触媒の加熱手段にも何ら限定はない。移動手段の屋上にソーラーパネル40を設置し、該ソーラーパネル40で構成した太陽電池システムからの電力を利用して加熱装置5としても良い。さらに、電力自動生成装置1にセットする加熱装置5として、例えば、LPガスを用いた発電機が考えられる。これら発電機で発電した電力を例えば加熱ヒーターなどの加熱電力、前述した誘導加熱用電力として使用し、触媒18を加熱するのである。
【0037】
また、本発明による移動手段の屋上に太陽熱温水器41を設置し、この温水を利用するバイナリー発電機を前記電力自動生成装置1内に取り付け、発電した電力を前記加熱装置5としても構わないし、バイナリー発電機で発電した電力を移動手段内に取り込み、その電力を移動手段内の負荷に使用するよう構成することも出来る。
【0038】
本発明によるバイナリー発電機は、その効率性が極めて高く、100℃程度の温水でなくとも、例えば60℃程度の温水で充分に発電が行える様構成されている。よって、太陽熱温水器で60℃程度の温水とされた温水を利用し、これをバイナリー発電機で使用出来るものとなる。これら構成は移動手段が船舶であるときに威力が発揮される。
【0039】
また、移動手段である鉄道車両、自動車車両、船舶などが移動中には、風力発電機37の設置が有効である。近年小型で発電効率に優れ、設置場所をとらず、しかも横方向に設置できる風車を使用した風力発電機37が創案されており、小型であっても大きい発電量が得られる。よって、該風力発電機37からの電力を前記加熱装置5として使用し、かつ移動手段内部の負荷にも使用することが出来る。
【0040】
前記横型風車の風力発電機37は、鉄道車両や自動車車両であれば、例えば鉄道車両や自動車車両の屋上に設置する。そして、走行方向に向かい風を受けられ、後方に前記風が抜けるよう設置する。すなわち、走行方向と直交する方向である鉄道車両や自動車車両の幅方向に延出させて横型風車を設置するものとなる。
【0041】
図7はトラック43の運転席上部に横型風車を設置した例である。横型風車は流線型をなす略弾丸状に形成されたケース42内に配置され、前記弾丸状をなすケース42の前面には縦方向に延びる風取り入れ口44が間隔をあけてトラック43の幅方向に複数個設けられている。この風取り入れ口44からの風を受けて横型風車は回転する。流入した風はケース42の後方上部の排出口45から排出される。
【0042】
ケース42を設けず、そのまま横型風車を運転席上部に設置することも考えられるが、風の抵抗をダイレクトにトラック43が受けてしまい、長時間の運転には好ましくない。しかし、前記流線型をなす弾丸状のケース42を設け、該ケース42内に横型風車を設置すると共に、ケース42の前面に複数個の風取り入れ口44を設ければ、該風取り入れ口44からケース42内に流入した風はケース42内でケース42の長手方向、すなわちトラック43の幅方向に広がり、効率よく横型風車を回転させることが出来る。しかも、ケース42の前面は風の抵抗を受けないよう流線型、すなわち弾丸状に形成してある。よって、長時間の運転によっても燃費が上がることがない。
尚、鉄道車両の走行方向に向かい間隔をあけて複数台横型風車を設置しても良い。
また、前記横型風車を使用した風力発電機37は、船舶にも設置できる。
【0043】
この様にクリーンエネルギーを利用した発電機を多数搭載するが、発電時の天候(晴れ、曇り、雨など)、気温、あるいは風速などにより、どの発電機を使用して電力を取得するかは選択出来るものとなっている。
【0044】
すなわち、制御装置7では、移動手段の走行時における天候、気温、あるいは風速などを検知する天候検知部38を有しており、該天候検知部38で検知された情報は発電装置選択部39へ送出される。発電装置選択部39で前記情報に基づき瞬時に最大限の電力が得られる発電機が選択され、加熱装置5として使用され、かつ内部の負荷に使用される。
なお、複数の発電機からの電力をまとめて取り込んでも構わない。この場合、蓄電池を搭載しておき、該蓄電池に充電しておくことも出来る。
【0045】
前記触媒18が加熱装置5により加熱されると、この加熱された高温の触媒18にメチルシクロヘキサン4が接触して反応を起こし、水素とトルエンとに分離する。そして、この分離された水素を取り出し、前記燃料電池2に燃料として導入する。また、水素ボンベなどに蓄積するなど行う。
【0046】
図1から理解されるように、符号6はメチルシクロヘキサン4を貯蔵する液体タンクである。メチルシクロヘキサン4は、通常、液体タンク6内に200リットル貯留される。尚、法律などの改正によって200リットル以上液体タンクに貯留出来るようになる場合もあり、200リットル貯留の液体タンク6に限定されない。
【0047】
脱水素装置3内の反応器には白金などから構成された触媒18が設けられており、該触媒18は加熱装置5により加熱され、加熱されて高温になった触媒18にメチルシクロヘキサン4が接触し、水素とトルエンに分離するものとなる。
【0048】
ここで、例えば、約800℃の高温下で触媒18とメチルシクロヘキサン4との間で反応が起き、それによりトルエンは分離生成される。分離されたトルエンは、200℃以上の高温になっており、このトルエンの高熱は再度利用出来ることはすでに述べたとおりである。よって、トルエンを排出することなく脱水素装置3内に戻し、巡回させている。すなわち、トルエンの高熱を利用して触媒18を加熱し、触媒18の高温状態を維持している。
【0049】
また、触媒18自体も連続状態での反応動作により高温度状態が維持されており、200℃程度の温度であるトルエンでの加熱によっても触媒18の高温化は保持され、触媒18とメチルシクロヘキサン4との反応動作を充分に遂行することが出来、もって水素とトルエンの分離は引き続き行えることになる。
【0050】
すなわち、LPガス発電機、あるいはクリーンエネルギーを利用した発電機などの加熱装置5による前記触媒18の加熱は当初の脱水素装置3の稼働時(例えば約1時間程度)のみでよく、水素とトルエンとの分離が行われた後は、高温のトルエンが発生するため、該トルエンの熱を加熱装置5の替わりに触媒18の加熱に使用するのである。
【0051】
ここで、メチルシクロヘキサン4を使用しての脱水素化反応により水素を生成する場合の手順を要約して説明すると、まず、加熱装置5を用いて白金などの触媒18を加熱する。次に、液体タンク6のポンプをオンにする。そして液体タンク6内のメチルシクロヘキサン4を脱水素装置3の反応器に向けて送る。例えば、バルブを一定時間毎に開き、噴霧ノズルからメチルシクロヘキサン4を一定時間毎に噴霧する。すると触媒18の表面にて、噴霧されたメチルシクロヘキサン4の脱水素化反応が生じることにより、水素とトルエンとが分離生成される。高温化したトルエンは排出することなく回収してさらに触媒18の加熱に使用する。
【0052】
尚、
図2に示すように、熱を有するトルエンの通過路、例えば移動手段の下部に設けたトルエン下部タンク22に向かう通過路に熱発電機26を設置し、この熱発電機26で得られた電力を移動手段内の各種負荷に利用することも考えられる。さらに、この熱発電機26を前記コンテナやキュービクル内に設置した電力自動生成装置1内に設置することも出来る。
【0053】
すなわち分離したトルエンの熱を使用して前記熱発電機で発電し、その電力を移動手段内で使用すすることも出来る。
尚、その後、トルエンは冷却して液体化させ、トルエン下部タンク22へ貯留する。そして、生成した水素は、配管を通って燃料電池2へ送出する。
【0054】
つぎに、制御装置7は、インターネットなどの回線網8を介して複数の外部サイト9と接続して送受信を行う送受信部10を有している。
また、各種の演算制御を行う演算制御部11と、演算制御したデータを格納する記憶部12と、キーボードあるいはタッチパネルなどから構成される入力部13及びモニターディスプレイなどの表示部14を有して構成される。
【0055】
制御装置7は電力自動生成装置1内に設けられるが、移動できる制御装置7であっても良い。持ち運び可能な制御装置7でも良い。電力自動生成装置1の外部から制御装置7を作動させ、電力自動生成装置1内には、受信部をおいて制御信号を受信するタイプのものを設置することでも構わない。
【0056】
ここで、制御装置7では、電力自動生成装置1を搭載した移動手段、特に鉄道車両や自動車車両を新規に構築する際、あるいは既存の陸上車両に電力自動生成装置1を導入する際のシステム設計が行えるよう構成されている。
【0057】
すなわち、制御装置7では、演算制御部11の走行時近郊エリアにおける浸水高さ取得部15によって、外部サイト9から、例えば移動手段の走行時において、地震が発生し、津波が予見される場合、走行路における近郊エリアにの浸水高さが取得出来、これによって津波などによる浸水に遭遇しない高さのエリアを取得出来るものとなっている。緊急の場合、津波などによる浸水に遭遇しない高さのエリアに移動するためである。
【0058】
さらに、地震など自然災害の発生により、津波の発生や火災の発生が懸念されるとき、当該懸念信号が制御装置7内の密閉支持部36に送出される。
【0059】
そして、密閉支持部36では、前記懸念信号に基づき、電力自動生成装置1が設置されているコンテナやキュービクルなどボックス体32の壁体33及び搬入口35などをすべて閉めて密閉する。これにより、電力自動生成装置1内の機材類の水没水浸しや損壊を防止でき、また火災などによる二次災害も防止することも出来る。さらに、本発明のボックス体32は、水没情報を検知したとき、密閉状態になると共に、設置されている鉄道車両、自動車車両などの移動手段から切り離し状態となり、浸水したときには水面に浮かぶよう構成されている。よって、水面に浮かんだ状態で、緊急の非常電力を発電することが出来る。
【0060】
また、制御装置7は、自然災害などによって商用電源の供給が停止されたときで移動手段が移動できない状態となったとき、例えば、鉄道車両などの陸上で商用電源を利用する移動手段内で24時間(1日)の間、どの程度の電力が必要なのかを計測する必要電力計測部17を有している。この必要電力計測部17では、商用電源からの電力供給がストップする緊急時における電力自動生成装置1で生成される電力がどの程度必要なのかの計測を行うものである。
【0061】
そして、前記必要電力の計測に際しては、移動手段規模情報部27からのデータが参酌される。すなわち、移動手段規模情報部27では、該当する移動手段が、どの程度の人数の乗客を乗せた移動手段なのか、また食堂車両がある移動手段なのかなどの情報データが迅速に収集される。そして、これら収集された移動手段規模情報部27の情報データは必要電力計測部17に送出され、必要電力計測部17では前記の情報データに基づき該当移動車両において例えば24時間(1日)の間、どの程度の電力が必要なのかが計測される。
【0062】
ここで、所定の脱水素装置3において、200リットルのメチルシクロヘキサン4からは、約100m3の水素が得られ、この100m3の水素を燃料にして燃料電池2では120kWhの電力が生成されることが確認されている。
【0063】
よって、この規模の電力自動生成装置1であれば、約24時間(約1日)の間に120kWhの電力が使用出来ることになる。しかしてこの電力使用、すなわち24時間の間に120kWhの電力消費に見合う乗客を乗せた鉄道車両なのかの判断が出来る。
【0064】
すなわち、鉄道車両内の照明灯用などの電力として、例えば1時間当たり5kWhの電力が使用されるとして約24時間提供出来るものとなる。またBCP対策として、例えば3日間電力供給出来るシステムを構築する場合には、1時間当たり1.5kWhの電力を供給することが出来る。近年照明灯用などの電力は省電力のLEDが使用されていることが多く、1.5kWhの電力供給でも充分であると言われている。また、例えば乗客などが所有する携帯電話やパソコンの充電も充分に行えるものとなる。
【0065】
もし、さらに多数の乗客を乗せた鉄道車両であれば、前記のメチルシクロヘキサン4を収納した液体タンク6の数を数本設置し、燃料となる水素の生成量を増やすことが考えられる。
【0066】
この様に、24時間に対応する電力だけではなく、2日分、3日分の消費電力が必要とされる場合にはその必要時間に合わせた液体タンク6の本数を設置することになる。
【0067】
図2に、本発明の全体構成例を示す。
図2では、電力を自動的に生成する電力生成装置1を備えた移動手段を示している。
【0068】
この移動手段の下部には、まずメチルシクロヘキサン4を貯留するMCH下部タンク21を有している。また電力自動生成装置1の稼働により水素とトルエンが分離生成されるが、分離されたトルエンを貯留するトルエン下部タンク22を有している。
【0069】
このシステムでは、電力自動生成装置1のみで移動手段の走行及び移動手段内の電力需要を賄うことが出来る。すなわち、MCH下部タンク21からメチルシクロヘキサン4を吸い上げて脱水素装置3に供給し、水素とトルエンとに分離する。水素は燃料電池2に供給して、発電させ、その電力を移動手段の走行及び移動手段内の負荷に使用する。分離後のトルエンはトルエン下部タンク22に溜め、定期的に排出するものとなる。また、分離した水素は燃料電池2に送出するのみならず、水素ボンベに貯留しておくことも出来る。
【0070】
ところで、地震などの自然災害や突発的な事故などが生じ、浸水が予想される場合には、浸水予想部23からその情報が通知される。
【0071】
この通知を受けて、浸水しない場所へ速やかに移動することとなる。その場合、MCH下部タンク21とトルエン下部タンク22と電力自動生成装置1を連結している連結パイプ24を遮断する必要はない。すなわち、MCH下部タンク21とトルエン下部タンク22は浸水の恐れがなくなるからである。
【0072】
しかし、通知を受けて、速やかに浸水しない場所へ移動出来ないことが考えられる。この場合、MCH下部タンク21とトルエン下部タンク22と電力自動生成装置1を連結している連結パイプ24を遮断できる構造とする。すなわち、MCH下部タンク21とトルエン下部タンク22は密閉状態にされて流出の恐れが回避されるのである。尚、
図2において、符号25は各々通気口を示している。
【符号の説明】
【0073】
1 電力自動生成装置
2 燃料電池
3 脱水素装置
4 メチルシクロヘキサン
5 加熱装置
6 液体タンク
7 制御装置
8 回線網
9 外部サイト
10 送受信部
11 演算制御部
12 記憶部
13 入力部
14 表示部
15 浸水高さ取得部
17 必要電力計測部
18 触媒
21 MCH下部タンク
22 トルエン下部タンク
23 浸水予想部
24 連結パイプ
25 通気口
26 熱発電機
27 移動手段規模情報部
30 触媒温度検知部
31 トルエン状態検知部
32 ボックス体
33 壁体
34 仕切り壁
35 搬入口
36 密閉支持部
37 風力発電機
38 天候検知部
39 発電機選択部
40 ソーラーパネル
41 太陽熱温水器
42 ケース
43 トラック
44 風取り入れ口
45 排出口