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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】LEDパッケージ
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/62 20100101AFI20220708BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20220708BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
H01L33/62
H01L33/50
H01L21/60 301F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2016257016
(22)【出願日】2016-12-28
(65)【公開番号】P2017126743
(43)【公開日】2017-07-20
【審査請求日】2019-12-03
(31)【優先権主張番号】P 2016003663
(32)【優先日】2016-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000131430
【氏名又は名称】シチズン電子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】飯野 高史
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-015418(JP,A)
【文献】特開2009-055006(JP,A)
【文献】特開2010-157608(JP,A)
【文献】特開2007-067183(JP,A)
【文献】特開2006-295132(JP,A)
【文献】特開2013-172041(JP,A)
【文献】特開2009-135306(JP,A)
【文献】特開2001-148512(JP,A)
【文献】特開2010-199547(JP,A)
【文献】特開昭62-085481(JP,A)
【文献】特開2011-146480(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0194794(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1組の接続電極が形成された基板と、
前記基板上に実装されたLED素子と、
前記LED素子を前記1組の接続電極に電気的に接続するボンディングワイヤと、
前記ボンディングワイヤの延伸方向に沿って配置され、前記ボンディングワイヤの表面を被覆し前記ボンディングワイヤの腐食を防止する保護層と、
蛍光体を含有し前記ボンディングワイヤ及び前記保護層の表面を被覆する被覆層と、
前記LED素子、前記ボンディングワイヤおよび前記被覆層の周囲を囲むように配置され、前記LED素子からの出射光により励起されて第2の光を発する第2の蛍光体を含有し、前記LED素子、前記ボンディングワイヤ、前記保護層および前記被覆層を一体的に封止する封止樹脂と、を有し、
前記被覆層の蛍光体は、前記出射光により励起されて、前記ボンディングワイヤでの吸収率が前記出射光よりも低くかつ前記出射光よりも長い波長の光を発し、
前記被覆層の蛍光体は、前記第2の光よりも長い波長の光を発する、ことを特徴とするLEDパッケージ。
【請求項2】
第3の蛍光体を含有し前記基板上の配線パターンを被覆する基板被覆層をさらに有し、
前記第3の蛍光体は、前記出射光により励起されて、前記配線パターンでの吸収率が前記出射光よりも低くかつ前記出射光および前記第2の光よりも長い波長の光を発する、請求項に記載のLEDパッケージ。
【請求項3】
前記LED素子は、前記出射光として青色光を発する素子であり、
前記被覆層の蛍光体は赤色光を発する蛍光体である、請求項1または2に記載のLEDパッケージ。
【請求項4】
1組の接続電極が形成された基板と、
前記基板上に実装されたLED素子と、
前記LED素子を前記1組の接続電極に電気的に接続するボンディングワイヤと、
蛍光体を含有し前記ボンディングワイヤを被覆する被覆層と、
前記ボンディングワイヤの周囲に設けられ、前記被覆層の表面を被覆し前記ボンディングワイヤの腐食を防止する保護層と、を有し、
前記蛍光体は、前記LED素子からの出射光により励起されて、前記ボンディングワイヤでの吸収率が前記出射光よりも低くかつ前記出射光よりも長い波長の光を発する、
ことを特徴とするLEDパッケージ。
【請求項5】
1組の接続電極が形成された基板と、
前記基板上に実装されたLED素子と、
前記LED素子を前記1組の接続電極に電気的に接続するボンディングワイヤと、
前記LED素子からの出射光により励起されて、前記ボンディングワイヤでの吸収率が前記出射光よりも低くかつ前記出射光よりも長い波長の光を発する第1の蛍光体を含有し、前記ボンディングワイヤを被覆する被覆層と、
前記ボンディングワイヤの周囲に設けられ、前記被覆層の表面を被覆し前記ボンディングワイヤの腐食を防止する保護層と、
前記出射光により励起されて第2の光を発する第2の蛍光体を含有し、前記LED素子、前記ボンディングワイヤ、前記被覆層及び前記保護層を一体的に封止する封止樹脂と、を有し、
前記第1の蛍光体は、前記第2の光よりも長い波長の光を発し、
前記保護層のうち前記基板および前記LED素子に近い下側部分は、前記封止樹脂よりも屈折率が低い材料で構成されている、
ことを特徴とするLEDパッケージ。
【請求項6】
前記保護層は二酸化ケイ素で構成され、
前記ボンディングワイヤは銀で構成されている、請求項1~のいずれか一項に記載のLEDパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ボンディングワイヤ同士の短絡を防ぐために、銅線または銅合金線の表面に絶縁層および防食性を有する被覆層が形成され、この被覆層の上に潤滑層が形成された半導体素子用のボンディングワイヤが記載されている。
【0003】
基板上にLED(発光ダイオード)素子が実装された面実装型の発光装置(LEDパッケージ)が知られている。こうしたLEDパッケージでは、蛍光体を含有する透光性の樹脂によりLED素子を封止し、LED素子からの光と、その光により蛍光体を励起させて得られる光とを混合させることで、用途に応じて白色光などが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平01-251727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワイヤボンディングにより基板上の接続電極とLED素子とが電気的に接続された面実装型のLEDパッケージでは、LED素子からの出射光がボンディングワイヤによって吸収されて、LED素子の出射光の強度が低下することがある。
【0006】
図8は、金属材料の分光反射率を示すグラフである。図8の横軸λ(nm)は波長を示し、縦軸R(%)は反射率を示す。図8では、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、Au(金)およびCu(銅)の4種類の金属材料について、200~1000nmの波長域における反射スペクトルを示している。
【0007】
例えば、Auの場合、波長が650nm程度の赤色光に対しては、反射率は95%程度であるが、波長が450nm程度以下の青色光から紫外光に対しては、反射率は40%以下と低くなる。このため、例えば、LED素子として青色LEDを使用し、ボンディングワイヤとして金線を使用した場合には、LED素子からの青色光が金線に吸収されやすいため、LEDパッケージの青色光が減衰する。このことは、例えば、LED素子として紫色光を発光するものを使用した場合、またはボンディングワイヤとして銅線を使用した場合などでも同様である。したがって、LED素子の発光波長とボンディングワイヤの金属材料との組合せによっては、ボンディングワイヤでの吸収に起因して、LED素子の出射光の強度が低下し得る。
【0008】
そこで、本発明は、LED素子の導通用のボンディングワイヤによるLED素子の出射光の減衰が起こりにくいLEDパッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1組の接続電極が形成された基板と、基板上に実装されたLED素子と、LED素子を1組の接続電極に電気的に接続するボンディングワイヤと、蛍光体を含有しボンディングワイヤを被覆する被覆層とを有し、蛍光体は、LED素子からの出射光により励起されて、ボンディングワイヤでの吸収率が出射光よりも低くかつ出射光よりも長い波長の光を発することを特徴とするLEDパッケージが提供される。
【0010】
上記のLEDパッケージでは、出射光により励起されて第2の光を発する第2の蛍光体を含有し、LED素子、ボンディングワイヤおよび被覆層を一体的に封止する封止樹脂をさらに有し、被覆層の蛍光体は、第2の光よりも長い波長の光を発することが好ましい。
【0011】
上記のLEDパッケージでは、第3の蛍光体を含有し基板上の配線パターンを被覆する基板被覆層をさらに有し、第3の蛍光体は、出射光により励起されて、配線パターンでの吸収率が出射光よりも低くかつ出射光および第2の光よりも長い波長の光を発することが好ましい。
【0012】
上記のLEDパッケージでは、LED素子は、出射光として青色光を発する素子であり、ボンディングワイヤは金で構成された金線であり、被覆層の蛍光体は赤色光を発する蛍光体であることが好ましい。
【0013】
上記のLEDパッケージは、ボンディングワイヤの表面を被覆しボンディングワイヤの腐食を防止する保護層をさらに有し、被覆層は保護層を被覆していることが好ましい。
【0014】
あるいは、上記のLEDパッケージは、被覆層の表面を被覆しボンディングワイヤの腐食を防止する保護層をさらに有することが好ましい。
【0015】
上記のLEDパッケージでは、保護層のうち基板およびLED素子に近い下側部分は、封止樹脂よりも屈折率が低い材料で構成されていることが好ましい。
【0016】
上記のLEDパッケージでは、保護層は二酸化ケイ素で構成され、ボンディングワイヤは銀で構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
上記のLEDパッケージによれば、LED素子の導通用のボンディングワイヤによるLED素子の出射光の減衰が起こりにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】LEDパッケージ1の縦断面図である。
図2A】LEDパッケージ1の製造工程を示す上面図である。
図2B図2Aに対応する縦断面図である。
図3A】LEDパッケージ1の製造工程を示す上面図である。
図3B図3Aに対応する縦断面図である。
図4】別のLEDパッケージ2の断面図である。
図5A】LEDパッケージ2の製造工程を示す上面図である。
図5B図5Aに対応する縦断面図である。
図6A】LEDパッケージ2の製造工程を示す上面図である。
図6B図6Aに対応する縦断面図である。
図7A】保護層35Aを有する防食ワイヤ31Aの断面図である。
図7B】保護層35Bを有する別の防食ワイヤ31Bの断面図である。
図7C】保護層35Cを有するさらに別の防食ワイヤ31Cの断面図である。
図8】金属材料の分光反射率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、LEDパッケージについて説明する。ただし、本発明は図面または以下に記載される実施形態には限定されないことを理解されたい。
【0020】
図1は、LEDパッケージ1の縦断面図である。LEDパッケージ1は、基板10、LED素子30および封止樹脂40を有する。LEDパッケージ1は、LED素子30が基板10上に実装され、蛍光体を含有する封止樹脂40により封止された面実装型の発光装置である。
【0021】
基板10は、その上面に1組の接続電極11,12が形成された絶縁性の基板である。図示した例では、接続電極11は基板10の左側の端部で、接続電極12は基板10の右側の端部で、それぞれ基板10上面側から裏面側に回り込んでいる。接続電極11と接続電極12の間に電圧が掛けられることによって、LED素子30は発光する。
【0022】
LED素子30は、例えば、紫外域から青色領域にわたる波長の光を出射する窒化ガリウム系化合物半導体などのLED素子である。以下では、LED素子30は、例えば発光波長帯域が450~460nm程度の青色光を発光する青色LED素子であるとする。ただし、LED素子30は、紫色光または紫外光といった他の波長の光を発光する素子であってもよい。LED素子30は、基板10の上面に実装されており、2本のボンディングワイヤ31(以下、単に「ワイヤ31」という)により基板10の接続電極11,12との間で導通がとられている。
【0023】
ワイヤ31は、LED素子30を1組の接続電極11,12に電気的に接続する。以下では、ワイヤ31は金で構成された金線であるとして説明するが、ワイヤ31の材質は、銀、銅またはアルミニウムなどの別の金属であってもよい。ワイヤ31の一方の端部は、2つの接合部33において、LED素子30の上面に形成された2つの素子電極に、例えばボールボンディングによりそれぞれ接合されている。ワイヤ31の他方の端部は、2つの接合部34において、接続電極11,12の上面に、例えばウエッジボンディングによりそれぞれ接合されている。また、ワイヤ31の表面には、被覆層32が設けられている。
【0024】
被覆層32は、例えば赤色蛍光体または赤色蛍光体を含有する樹脂で構成され、ワイヤ31の表面を被覆する。赤色蛍光体は、LED素子30が出射した青色光を吸収して赤色光に波長変換する、例えばCaAlSiN:Eu2+などの粒子状の蛍光体材料である。
【0025】
封止樹脂40は、例えば、YAG(Yttrium Aluminum Garnet)などの黄色蛍光体が分散混入された、エポキシ樹脂またはシリコーン樹脂などの透光性の樹脂である。封止樹脂40は、LED素子30、ワイヤ31および被覆層32の全体を一体的に封止する。なお、図示した例とは異なり、例えば、上方が開口した枠体を基板10上に配置してLED素子30の周囲を囲い、その枠体で形成された凹部に透光性の樹脂を充填してLED素子30、ワイヤ31および被覆層32を封止してもよい。
【0026】
封止樹脂40の黄色蛍光体は、第2の蛍光体の一例であり、LED素子30からの出射光により励起されて、第2の光として黄色光を発する。図1では、この黄色蛍光体の粒子を符号41で示している。LEDパッケージ1は、主に、青色LEDであるLED素子30からの青色光と、それによって黄色蛍光体を励起させて得られる黄色光とを混合させることで得られる白色光を出射する。
【0027】
被覆層32の赤色蛍光体は、LED素子30からの出射光である青色光により励起されて、赤色光を発する。Auについては、図8を参照して説明したように反射率は青色光よりも赤色光の方が高いので、吸収率は青色光よりも赤色光の方が低い。したがって、赤色光は、金線であるワイヤ31での吸収率が青色光よりも低くかつ青色光よりも長い波長の光である。
【0028】
LEDパッケージ1では、LED素子30からの青色光は、金線であるワイヤ31で吸収される前に、ワイヤ31の表面に設けられた被覆層32の赤色蛍光体によって、吸収されにくい赤色光に波長変換される。このため、LEDパッケージ1では、被覆層32がない場合と比べて、ワイヤ31での吸収による光の減衰が少なくなる。
【0029】
なお、Auについては、反射率は青色光よりも黄色光の方が高く、吸収率は青色光よりも黄色光の方が低いので、被覆層32を、黄色蛍光体または黄色蛍光体を含有する樹脂で形成してもよい。ただし、被覆層32の蛍光体は、封止樹脂40の黄色蛍光体よりも長い波長の光を発する赤色蛍光体であることが好ましい。すなわち、被覆層32の蛍光体は、封止樹脂40の蛍光体とは別の蛍光体または蛍光体を含有する樹脂であり、かつ封止樹脂40の蛍光体よりも長波長の光を発する蛍光体であることが好ましい。
【0030】
LED素子30からの出射光と封止樹脂40の蛍光体が発する光の両方よりも長波長の光を発する蛍光体でワイヤ31を被覆すれば、LED素子30からの出射光だけでなく、封止樹脂40の蛍光体が発した光も、ワイヤ31で吸収されにくくなる。このため、LEDパッケージ1では、封止樹脂40の蛍光体よりも短波長の光を発する蛍光体でワイヤ31を被覆した場合と比べて、ワイヤ31での吸収による光の減衰がより少なくなる。
【0031】
なお、演色性を高めるために、例えば黄色蛍光体と赤色蛍光体の2種類など、複数種類の蛍光体を封止樹脂40に分散混入させてもよい。また、赤色蛍光体を被覆層32と封止樹脂40の両方に用いてもよい。特に、赤色蛍光体を単に封止樹脂40中に分散させるのではなく、ワイヤ31に直接塗布することにより、LED素子30からの光を無駄なく出射させることが可能になる。
【0032】
図2Aおよび図3Aは、LEDパッケージ1の製造工程を示す上面図である。図2Bおよび図3Bは、図2Aおよび図3Aにそれぞれ対応する縦断面図である。
【0033】
LEDパッケージ1の製造時には、まず、接続電極11,12を有する基板10の上面に、LED素子30が取り付けられる。次に、図2Aおよび図2Bに示すように、LED素子30の2つの素子電極と接続電極11,12とが、接合部33,34において、2本のワイヤ31によりそれぞれ接続される。
【0034】
続いて、図3Aおよび図3Bに示すように、2本のワイヤ31の表面に、例えば赤色蛍光体または赤色蛍光体を含有する樹脂で被覆層32が形成される。その際、LEDパッケージ1のサイズが特に小さい場合には、例えば赤色蛍光体を滴下させて被覆層32を形成してもよい。ただし、被覆層32の赤色蛍光体が塊になると、その部分で発する赤色光が目立ってしまうので、被覆層32は薄く形成することが好ましい。なお、被覆層32は、ワイヤボンディングの前に形成するとボンディング時に溶けてしまうため、ボンディング後に形成される。
【0035】
その後、黄色蛍光体が分散混入された封止樹脂40で、LED素子30、ワイヤ31および被覆層32の全体を一体的に封止することにより、図1に示すLEDパッケージ1が完成する。
【0036】
図4は、別のLEDパッケージ2の縦断面図である。LEDパッケージ2は、基板20、LED素子30および封止樹脂40を有する。LEDパッケージ2は基板のみがLEDパッケージ1とは異なり、その他の点ではLEDパッケージ1と同じ構成を有するので、以下では、LEDパッケージ2について、LEDパッケージ1とは異なる点を説明する。
【0037】
基板20は、その上面に1組の接続電極21,22が形成された絶縁性の基板である。接続電極21,22の表面には、例えばAuメッキが施されている。図4の断面図上では接続電極21,22の形状はLEDパッケージ1の接続電極11,12と同じであるが、図2Aと後述する図5Aを比較すると分かるように、接続電極21,22は、接続電極11,12よりも基板20の上面の広い範囲を覆っている。また、LEDパッケージ2では、基板20の上面におけるLED素子30以外の部分には、基板被覆層23が設けられている。
【0038】
基板被覆層23は、例えば赤色蛍光体または赤色蛍光体を含有する樹脂で構成され、基板20の上面における配線パターンである接続電極21,22を被覆する。基板被覆層23の赤色蛍光体は、第3の蛍光体の一例であり、LED素子30からの出射光により励起されて、第3の光として赤色光を発する。この赤色光は、Auメッキが施された配線パターンでの吸収率がLED素子30からの出射光である青色光よりも低い光であり、かつその出射光および封止樹脂40の黄色蛍光体が発する黄色光よりも長い波長の光である。
【0039】
Auメッキが施された基板20の接続電極21,22によって基板20の上面のほとんどが覆われていると、ワイヤ31だけでなく、基板20上のAuメッキによっても、吸収による光の減衰が起こり得る。しかしながら、LEDパッケージ2では、LED素子30からの青色光は、基板20上の配線パターンで吸収される前に、基板20の上面に設けられた基板被覆層23の赤色蛍光体によって、吸収されにくい赤色光に波長変換される。このため、LEDパッケージ2では、基板被覆層23がない場合と比べて、基板20上の配線パターンでの吸収による光の減衰が少なくなる。
【0040】
なお、基板被覆層23も、黄色蛍光体または黄色蛍光体を含有する樹脂で形成してもよい。また、例えば、基板被覆層23に赤色蛍光体を、被覆層32に黄色蛍光体をそれぞれ使用したり、基板被覆層23に黄色蛍光体を、被覆層32に赤色蛍光体をそれぞれ使用したりするなど、基板被覆層23と被覆層32で蛍光体の種類を変えてもよい。ただし、基板被覆層23の蛍光体は、封止樹脂40の黄色蛍光体よりも長い波長の光を発する赤色蛍光体であることが好ましい。すなわち、基板被覆層23の蛍光体は、封止樹脂40の蛍光体とは別の蛍光体または蛍光体を含有する樹脂であり、かつ封止樹脂40の蛍光体よりも長波長の光を発する蛍光体であることが好ましい。
【0041】
LED素子30からの出射光と封止樹脂40の蛍光体が発する光の両方よりも長波長の光を発する蛍光体で基板20上の配線パターンを被覆すれば、LED素子30からの出射光だけでなく、封止樹脂40の蛍光体が発した光も、配線パターンで吸収されにくくなる。このため、LEDパッケージ2では、封止樹脂40の蛍光体よりも短波長の光を発する蛍光体で基板20上の配線パターンを被覆した場合と比べて、配線パターンでの吸収による光の減衰がより少なくなる。
【0042】
図5Aおよび図6Aは、LEDパッケージ2の製造工程を示す上面図である。図5Bおよび図6Bは、図5Aおよび図6Aにそれぞれ対応する縦断面図である。
【0043】
LEDパッケージ2の製造時には、まず、接続電極21,22を有する基板20の上面に、LED素子30が取り付けられる。次に、図5Aおよび図5Bに示すように、LED素子30の2つの素子電極と接続電極21,22とが、接合部33,34において、2本のワイヤ31によりそれぞれ接続される。
【0044】
続いて、図6Aおよび図6Bに示すように、例えば赤色蛍光体または赤色蛍光体を含有する樹脂で、2本のワイヤ31の表面に被覆層32が、基板20の上面に基板被覆層23が、それぞれ形成される。なお、基板被覆層23と被覆層32は、ワイヤボンディングの前に形成するとボンディング時に溶けてしまうため、ボンディング後に形成される。
【0045】
その後、黄色蛍光体が分散混入された封止樹脂40で、LED素子30、ワイヤ31および被覆層32の全体を一体的に封止することにより、図4に示すLEDパッケージ2が完成する。
【0046】
LEDパッケージ1,2に用いられるワイヤ31の材質は、上記の通り、金に限らず、銀、銅またはアルミニウムなどでもよい。ただし、例えば銀は腐食しやすい材質であるため、ワイヤ31として銀で構成されたもの(銀線)を使用する場合には、腐食を防止するためにワイヤ31の周囲に保護層を設けるとよい。そこで、以下では、上記の被覆層32に加えて保護層を有するボンディングワイヤ(防食ワイヤ)について説明する。
【0047】
図7Aは、保護層35Aを有する防食ワイヤ31Aの断面図である。防食ワイヤ31Aは、銀線であるワイヤ31の表面を被覆する保護層35Aと、保護層35Aの表面を被覆する被覆層32とを有する。保護層35Aは、例えば二酸化ケイ素(SiO)で構成された薄膜であり、ワイヤ31の腐食を防止する働きをする。保護層35Aの材質としては、他にも、金属表面の腐食を防止する一般に知られた防食剤を使用可能である。被覆層32は、上記のものと同様に、例えば赤色蛍光体または赤色蛍光体を含有する樹脂で構成された蛍光体層または蛍光体含有樹脂層である。
【0048】
図7Bは、保護層35Bを有する別の防食ワイヤ31Bの断面図である。防食ワイヤ31Bは、銀線であるワイヤ31の表面を被覆する被覆層32と、被覆層32の表面を被覆する腐食防止のための保護層35Bとを有する。すなわち、防食ワイヤ31Bでは、被覆層と保護層の順序が防食ワイヤ31Aとは逆になっている。保護層35Bは、保護層35Aと同様に、例えば二酸化ケイ素(SiO)で構成された薄膜である。防食ワイヤ31Bのように、保護層は、ワイヤ31の表面に直接設けるのではなく、ワイヤ31の表面に設けられた被覆層32(蛍光体層または蛍光体含有樹脂層)の表面に設けてもよい。防食ワイヤ31Bでは、被覆層32の赤色蛍光体がワイヤ31に直接接触しているので、その蛍光体で発生した熱がワイヤ31を伝ってLEDパッケージの外部に逃げやすくなるという利点がある。
【0049】
図7Cは、保護層35Cを有するさらに別の防食ワイヤ31Cの断面図である。防食ワイヤ31Cは、防食ワイヤ31Bと同様に、銀線であるワイヤ31の表面を被覆する被覆層32と、被覆層32の表面を被覆する腐食防止のための保護層35Cとを有する。ただし、保護層35Cは、下側部分351と上側部分352が互いに異なる屈折率の材料で構成される点が保護層35A,35Bとは異なる。下側部分351は、保護層35Cのうちで、防食ワイヤ31Cを使用するLEDパッケージの基板10,20およびLED素子30に近い側のほぼ半分であり、そのLEDパッケージの封止樹脂40よりも屈折率が低い材料で構成される。一方、上側部分352は、保護層35Cのうちで基板10,20およびLED素子30から遠い側のほぼ半分であり、例えば封止樹脂40と同じ屈折率の材料で構成される。
【0050】
保護層35Cの下側部分351を屈折率が低い層とすることにより、防食ワイヤ31Cでは、被覆層32の赤色蛍光体から下側に出る光の一部が保護層35Cの表面で全反射される。このため、防食ワイヤ31Cでは、腐食防止の効果に加えて、被覆層32からその下方のLED素子30に向かう光が減り、LEDパッケージの上方に出射される光が増えるという利点がある。LEDパッケージ1,2のワイヤ31として、図7A図7Cに示したいずれかの防食ワイヤ31A~31Cを用いてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1,2 LEDパッケージ
10,20 基板
11,12,21,22 接続電極
23 基板被覆層
30 LED素子
31 ワイヤ
31A,31B,31C 防食ワイヤ
32 被覆層
35A,35B,35C 保護層
40 封止樹脂
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8