(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】電動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 7/116 20060101AFI20220708BHJP
G01B 7/30 20060101ALI20220708BHJP
H02K 11/215 20160101ALI20220708BHJP
F02D 9/00 20060101ALI20220708BHJP
F02D 9/02 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
H02K7/116
G01B7/30 H
H02K11/215
F02D9/00 A
F02D9/02 351M
(21)【出願番号】P 2017087551
(22)【出願日】2017-04-26
【審査請求日】2020-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】北山 直嗣
(72)【発明者】
【氏名】松任 卓志
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-508470(JP,A)
【文献】特開2006-046318(JP,A)
【文献】特開2016-011628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/116
G01B 7/30
H02K 11/215
F02D 9/00
F02D 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
減速機を介して回転操作軸を回転駆動させるモータ部と、
前記モータ部の回転角度を検出する回転角度検出装置とを備えた電動アクチュエータであって、
前記回転角度検出装置は、
前記モータ部の出力軸と一体的に回転するように設けられ、回転方向にS極とN極の異なる磁極に着磁された磁石と、前記磁石の磁束を検出して正弦波の出力信号と余弦波の出力信号が得られるように配置された磁気センサとを有し、
前記回転操作軸の可動範囲をθ°とすると、前記減速機の減速比を
0より大きく360°/θ°未満としたことを特徴とする電動アクチュエータ。
【請求項2】
前記回転操作軸を一体的に回転するように連結する連結部が、前記モータ部の出力軸と同軸上に配置された請求項1に記載の
電動アクチュエータ。
【請求項3】
前記磁石を保持する磁石保持部材と、前記磁石保持部材が嵌め込まれた取付部材とを備え、
前記取付部材を前記モータ部の出力軸の内周面に取り付けた請求項1又は2に記載の
電動アクチュエータ。
【請求項4】
前記取付部材は、前記磁石保持部材が脱落しないように前記磁石保持部材に重なるように設けられた脱落防止部を有する請求項3に記載の
電動アクチュエータ。
【請求項5】
前記取付部材の外周縁の周方向に間隔をあけて複数の溝部を形成し、前記外周縁を径方向に弾性変形可能に構成した請求項3又は4に記載の
電動アクチュエータ。
【請求項6】
前記回転操作軸は、流体通路の開度を調整するバタフライバルブの回転操作軸である請求項1から5のいずれか1項に記載の
電動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
回転操作軸を回転操作する駆動装置として、モータを備える電動アクチュエータが用いられている。
【0003】
この種の電動アクチュエータとして、例えば、特許文献1(特開2006-46318号公報)には、バタフライバルブを回転操作して開度を調整するアクチュエータが記載されている。また、特許文献2(特開2009-270440号公報)には、モータの回転角度からバルブの開度を特定する手段として、モータにおけるロータのコイルから出力される電圧の位相変化を利用してロータの回転角を検出するレゾルバ等の回転角センサを用いた構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-46318号公報
【文献】特開2009-270440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような回転角センサを備える電動アクチュエータにおいては、小型化を図る上で、回転角センサの設置スペースを小さくすることが解決課題の1つであった。
【0006】
そこで、本発明は、回転角度検出装置の設置スペースを小さくして小型化を図れる電動アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、減速機を介して回転操作軸を回転駆動させるモータ部と、モータ部の回転角度を検出する回転角度検出装置とを備えた電動アクチュエータであって、回転角度検出装置は、モータ部の回転方向にS極とN極の異なる磁極に着磁され、モータ部の出力軸と一体的に回転する磁石の磁束を検出するように構成され、回転操作軸の可動範囲をθ°とすると、減速機の減速比を360°/θ°未満としたことを特徴とする。
【0008】
回転操作軸の可動範囲(θ°)に対して、減速機の減速比を、360°/θ°未満に設定することで、回転操作軸の回転操作に必要なモータ部の回転範囲を、360°未満の範囲で制御することができるようになる。この場合、モータ部の絶対角度位置を検出することで回転操作軸の絶対値(回転角度)を推定することができるようになるので、回転角度検出装置として、モータ部の回転方向にS極とN極の異なる磁極に着磁され、モータ部の出力軸と一体的に回転する磁石の磁束を検出するものを用いて、モータ部の回転角度を検出し、回転操作軸の回転角度を制御できるようになる。そして、このような回転角度検出装置を用いることで、レゾルバ等の回転角センサに比べて設置スペースを小さくすることが可能となる。
【0009】
また、上記のような設置スペースを小さくできる回転角度検出装置として、モータ部の出力軸と一体的に回転するように設けられ、異なる磁極に着磁された磁石と、磁石の磁束を検出することで正弦波の出力信号と余弦波の出力信号とが得られる磁気センサとを備えるものを用いることができる。
【0010】
また、本発明は、例えば、回転操作軸を一体的に回転するように連結する連結部が、モータ部の出力軸と同軸上に配置された電動アクチュエータに適用することが可能である。
【0011】
また、本発明に係る電動アクチュエータが、磁石を保持する磁石保持部材と、磁石保持部材が嵌め込まれた取付部材とを備える場合、取付部材をモータ部の出力軸の内周面に取り付けることで、磁石を出力軸の内周に配置することができる。これにより、出力軸内の空間を磁石の設置スペースとして有効活用することができ、小型化を図れる。
【0012】
また、取付部材は、磁石保持部材が脱落しないように磁石保持部材に重なるように設けられた脱落防止部を有することが望ましい。
【0013】
また、取付部材の外周縁の周方向に間隔をあけて複数の溝部を形成し、外周縁を径方向に弾性変形可能に構成することで、モータ部の出力軸内へ取付部材の取付作業を容易に行うことができるようになる。
【0014】
また、本発明に係る電動アクチュエータは、流体通路の開度を調整するバタフライバルブの回転操作軸を回転操作する電動アクチュエータに適用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、回転角度検出装置の設置スペースが小さくなるので、電動アクチュエータの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電動アクチュエータをバタフライバルブの回転操作軸に連結した状態を示す外観図である。
【
図2】本実施形態に係る電動アクチュエータの縦断面図である。
【
図4】磁気センサが出力する正弦波の出力信号および余弦波の出力信号の波形図である。
【
図5】正弦波の出力信号および余弦波の出力信号から算出される逆正接の波形図である。
【
図8】減速機を備えていない電動アクチュエータの縦断面図である。
【
図9】シリーズ化に適した電動アクチュエータの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面に基づき、本発明に係る電動アクチュエータの実施の一形態として、バタフライバルブ用のアクチュエータに適用した場合を例に説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る電動アクチュエータにバタフライバルブを連結した状態の外観図である。
図1に示すように、バタフライバルブ1は、回転操作対象物としての円盤状の弁体2と、弁体2の直径部分に設けられた回転操作軸3とで構成されている。回転操作軸3は、流体通路4が形成されたハウジング5に回転可能に取り付けられ、弁体2は流体通路4内に配置されている。また、回転操作軸3の一端部は電動アクチュエータ6に連結されており、電動アクチュエータ6によって回転操作軸3が回転操作されることで、弁体2が回転し、流体通路4の開口面積が調整される。
【0019】
図2は、本実施形態に係る電動アクチュエータの縦断面図である。
図2に示すように、本実施形態に係る電動アクチュエータ6は、回転操作軸3を回転駆動させる駆動源としてのモータ部7と、モータ部7の回転を減速して回転操作軸3に伝達する減速機8とを主要な構成要素とする。
【0020】
モータ部7は、ケーシング9に固定されたステータ10と、ステータ10の半径方向内側に隙間をもって対向するように配置されたロータ11と、ロータ11の内周面に固定された円筒状の出力軸12とを備える電動モータで構成される。この出力軸12のロータ11が固定された部分の軸方向両側における外周面には、それぞれ軸受13,14が固定されており、これらの軸受13,14によって出力軸12がケーシング9に対して回転可能に支持されている。軸受13,14としては、ラジアル荷重とスラスト荷重の双方を支持できる転がり軸受、例えば深溝玉軸受を使用することができる。
【0021】
ケーシング9は、組み立ての都合上、軸方向の一箇所もしくは複数箇所で分割される。本実施形態では、ケーシング9を、有底円筒状の底部91と、両端を開口した筒部92と、蓋部93とに分割している。筒部92の軸方向一方側に蓋部93が配置され、筒部92の軸方向他方側に底部91が配置される。底部91、筒部92、および蓋部93は、ボルト等の締結手段を用いて一体化される。モータ部7の出力軸12を支持する軸受13,14のうち、軸方向一方側の軸受13は筒部92の内周面に固定され、軸方向他方側の軸受14は底部91の内周面に固定される。
【0022】
続いて、
図2、および
図2のY-Y線矢視断面図である
図3に基づき、減速機8の構成について説明する。
減速機8は、太陽ローラ15と、外側リング16と、複数の遊星ローラ17と、キャリア18とを備える、トラクションドライブ式の遊星減速機である。本実施形態では、太陽ローラ15をモータ部7の出力軸12の軸方向一端部に一体に設けている。遊星ローラ17は、中空軸19の外周に装着された転がり軸受20(例えば、深溝玉軸受)によってキャリア18に対して回転可能に取り付けられている。中空軸19は、その軸方向の一端部(
図2における右側の端部)が加締められることで、他端部に設けられたフランジ部との間に転がり軸受20の内輪とキャリア18を挟んで固定されている。
【0023】
遊星ローラ17には、外側リング16によって内径方向のトラクション(予圧)が付与されている。詳しくは、外側リング16を所定の締め代でケーシング9(筒部92)内に圧入又は焼嵌めすることにより外側リング16を縮径させ、外側リング16と遊星ローラ17との接触部、および遊星ローラ17と太陽ローラ15との接触部にトラクションが付与される。
【0024】
キャリア18は、回転操作軸3が一体的に回転するように連結されると共に、モータ部7からの回転を回転操作軸3へ減速して出力する出力軸として機能する。キャリア18は、半径方向に延び、上記中空軸19を介して転がり軸受20や遊星ローラ17が取り付けられる円盤部181と、円盤部181の中央部からモータ部7の出力軸12側に延び、出力軸12の内周に配置された内方筒部182と、円盤部181の中央部からモータ部7の出力軸12側とは反対側に延び、出力軸12の軸方向外側に配置された外側筒部183とを有する。内方筒部182の外周面には転がり軸受22(例えば、深溝玉軸受)が固定され、この転がり軸受22によってキャリア18はモータ部7の出力軸12に対して回転可能に支持されている。外側筒部183の外周面には環状のシール部材21が装着され、シール部材21によって外側筒部183とケーシング9(蓋部93)との間が封止されている。
【0025】
内方筒部182と外側筒部183とは、互いに同じ外径、同じ内径に形成され、モータ部7の出力軸12と同軸上に配置されている。これらの内周には筒状の断熱材24が挿入されており、この断熱材24を介して回転操作軸3が内方筒部182および外側筒部183と連結される。従って、内方筒部182および外側筒部183の内周には、回転操作軸3が一体的に回転するように連結される連結部23がモータ部7の出力軸12と同軸上に配置されている。断熱材24は、内方筒部182および外側筒部183のそれぞれの内周面に対してスプライン(又はセレーション)嵌合により連結され、回転操作軸3も、断熱材24の内周面に対してスプライン(又はセレーション)嵌合により連結される(
図3参照)。断熱材24は、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)にGF(ガラス繊維)を混合した耐熱性合成樹脂で構成されており、冷気や熱気が通ることで変化するバルブの温度が回転操作軸3を介して電動アクチュエータ6に与える影響を抑制するために設けられている。
【0026】
上記の如く構成された減速機8を備える電動アクチュエータ6においては、モータ部7の出力軸12が回転すると、出力軸12と一体の太陽ローラ15が回転することで、複数の遊星ローラ17が自転しながら外側リング16に沿って公転する。そして、この遊星ローラ17の公転運動によりキャリア18が回転することで、回転が減速されて回転操作軸3に伝達される。
【0027】
また、
図2に示すように、本実施形態に係る電動アクチュエータ6においては、モータ部7の回転角度を検出する回転角度検出装置30が設けられている。回転角度検出装置30は、回転方向にS極とN極の異なる磁極に着磁された一対の磁石31,32と、各磁石31,32の磁束を検出する磁気センサ33とを有する。各磁石31,32は、磁石保持部材34に保持され、磁石保持部材34は円盤状の取付部材35を介してモータ部7の出力軸12の内周面に取り付けられている。これに対し、磁気センサ33は、各磁石31,32に対して間隔をあけて対向するようにケーシング9(底部91)に固定されている。
【0028】
モータ部7が駆動して出力軸12が回転すると、各磁石31,32が出力軸12と一体的に回転し、各磁石31,32の磁束を磁気センサ33が検出する。磁気センサ33は、回転方向に所定の位相差(例えば、90°)を設けて配置された2つの磁気検出素子を有しており、これらによって検出された磁束から
図4に示すような正弦波αの出力信号と余弦波βの出力信号が得られる。そして、これらの出力信号の大小関係から場合分けをして、回転角度を算出する。詳しくは、
図4に示す正弦波αの出力信号と余弦波βの出力信号から逆正接Arctanθ(=tan
-1(sinθ/cosθ))を算出する。この逆正接Arctanθは、
図5に示すように、実角度に対する算出角度の波形γが直線性を有する特性を有することから、これを用いて角度演算を行うことで、出力軸12の回転角度を把握することができる。これにより、モータ部7の出力軸12を所定角度回転させて、バタフライバルブの開度を適切な度合いに調整することができる。
【0029】
ここで、本発明に係る電動アクチュエータにおいては、回転操作軸3の可動範囲(最大回転角度)をθ°とすると、減速機8の減速比は360°/θ°未満となるように設定されている。例えば、回転操作軸3の可動範囲が90°であるとすると、減速機8の減速比は360°/90°=4未満に設定される。
【0030】
このように、本発明に係る電動アクチュエータにおいては、減速機8の減速比を360°/θ°未満となるように設定することで、回転操作軸3の回転操作に必要なモータ部7の回転範囲を、360°未満の範囲で制御できるようになる。この場合、モータ部7の絶対角度位置を検出することで回転操作軸3の絶対値(回転角度)を推定することができるようになるので、回転角度検出装置として、上記のような異なる磁極に着磁された一対の磁石31,32と、これらの磁束を検出することで正弦波の出力信号と余弦波の出力信号とが得られる磁気センサ33とを備える回転角度検出装置30を用いることができるようになる。そして、このような回転角度検出装置30を用いることで、レゾルバ等の回転角センサに比べて設置スペースを小さくすることができ、電動アクチュエータの小型化を図れるようになる。
【0031】
また、
図2に示すように、本実施形態では、各磁石31,32をモータ部7の出力軸12の内周に配置し、出力軸12内の空間を磁石31,32の設置スペースとして有効活用することで、より一層の小型化を図っている。すなわち、本実施形態の構成においては、磁石31,32の設置スペースをモータ部7の出力軸12の軸方向外側に確保しなくてもよいので、軸方向の小型化を図れる。
【0032】
図6に示すように、本実施形態において、各磁石31,32は、磁石保持部材34の中央に設けられた凹部34aに嵌め込まれることで保持されている。また、磁石保持部材34は、取付部材35の中央に設けられた凹部35aに嵌め込まれている。このように、取付部材35の凹部35aに磁石保持部材34が嵌め込まれることで、基本的に磁石保持部材34は取付部材35から脱落しないように保持される。
【0033】
しかし、取付部材35による磁石保持部材34の保持力に不安がある場合は、さらに、
図7に示すように、取付部材35に磁石保持部材34の脱落を防止する複数の脱落防止部35bを設けてもよい。これにより、磁石保持部材34は、複数の脱落防止部35bによって取付部材35の凹部35aから脱落しないように規制される。脱落防止部35bは、例えば、板金製の取付部材35にU字型の切れ込みを入れて形成された切れ込み片を、磁石保持部材34に重なるように加締め加工(曲げ加工)することで形成することができる。また、脱落防止部35bは、各磁石31,32には重ならないように配置されており、脱落防止部35bが各磁石31,32の磁束に影響を及ぼさないようにしている。
【0034】
また、
図6に示すように、本実施形態では、モータ部7の出力軸12の内周面が段差状に形成されており、取付部材35は、磁気センサ33側の開口内周部12aよりも奥側に大きい内径で形成された大径内周部12bに嵌合して取り付けられている。斯かる取付構造において、取付部材35を磁気センサ33側から大径内周部12bに挿入するには、開口内周部12aおいて取付部材35を内径方向に弾性変形させる必要がある。そのため、本実施形態では、
図7に示すように、取付部材35の外周縁35cに周方向に間隔をあけて複数の溝部(切欠き)35dを形成し、特に外周縁35cの部分が内径方向に弾性変形しやすいように形成している。これにより、モータ部7の出力軸12内への取付部材35の取付作業が容易となる。
【0035】
本実施形態では、モータ部7として、ケーシング9に固定されたステータ10と、ステータ10の半径方向内側に隙間をもって対向するように配置されたロータ11とを備えるラジアルギャップ型の電動モータを例示したが、任意の構成のモータを採用することができる。例えば、ケーシングに固定されたステータと、ステータの軸方向内側に隙間をもって対向するように配置されたロータとを備えるアキシャルギャップ型の電動モータであってもよい。
【0036】
また、本実施形態では、バックラッシに起因するガタが少なく、回転方向の位置決め精度と低騒音性に優れる減速機として、トラクションドライブ式の遊星減速機を採用しているが、これに限らずギヤを用いた遊星ギヤ減速機を使用することもできる。また、遊星減速機以外の構成を有する減速機を使用してもよい。
【0037】
また、本実施形態では、トラクションドライブ式の遊星減速機にトラクションを与える手法として、外側リング16をケーシング9の内周面に所定の締め代で圧入又は焼嵌めすることにより、外側リング16を縮径させる手法を例に挙げたが、これに限らず任意の手法を採用することができる。例えば、外側リング16に軸方向の圧力をかけて外側リング16を内径側に撓むように弾性変形させることで、トラクションを付与することも可能である。なお、圧入又は焼嵌めにより外側リング16を縮径させる手法は、外側リング16を撓みやすく形成しなくてもよいため、断面がブロック状又は中実の外側リング16(
図2参照)を採用することができ、外側リング16の強度を向上させることができる。
【0038】
図8は、減速機を備えていない電動アクチュエータの例を示す図である。
図8に示す電動アクチュエータ6においては、上記のような減速機8が設けられていないため、回転操作軸3は、断熱材24を介してモータ部7の出力軸12に対して同軸上に連結される。また、減速機8のほか、減速機8を支持する上記転がり軸受22、上記ケーシング9の蓋部93、蓋部93の内周に配置される上記シール部材21も設けられていない。それ以外は上記
図1~
図3に示す電動アクチュエータ6と同様の構成である。
【0039】
このような電動アクチュエータ6においても、上述の実施形態に係る電動アクチュエータと同様に、モータ部7の回転角度を検出する回転角度検出装置として、一対の磁石31,32と磁気センサ33とを備える回転角度検出装置30を用いることで、設置スペースを小さくすることができ、電動アクチュエータの小型化を図れるようになる。
【0040】
また、
図9に示す例は、減速機8を備える電動アクチュエータ6であるが、ここでは、キャリア18の外側筒部183を内方筒部182よりも径方向に大きく形成している。そして、外側筒部183の内径φA1および外径φB1を、モータ部7の出力軸12の太陽ローラ15側の部分(
図9における右端部)の内径φA2および外径φB2と同じ大きさにしている(φA1=φA2、φB1=φB2)。また、この構成においては、内方筒部182内には断熱材24が挿入されておらず、外側筒部183内に挿入された断熱材24を介して回転操作軸3が連結される。それ以外は、
図1~3に示す上記実施形態と基本的に同様の構成である。
【0041】
このような構成とすることで、外側筒部183の外周面又は内周面に嵌合させる部材を、モータ部7の出力軸12の外周面又は内周面にも嵌合させることができるようになり、減速機8を備える場合と備えない場合とで共通の部材を使用することができる。例えば、
図8に示す減速機8を備えないタイプと、
図9に示す減速機8を備えるタイプとで、モータ部7の出力軸12内に嵌合させる断熱材24(
図8)と、キャリア18の外側筒部183内に嵌合させる断熱材24(
図9)に、同じ外径の断熱材24を用いることができるようになる。特に、このような構成は、電動アクチュエータを種々の用途に応じて多品種展開する場合に、多くの共通部品を換えることなくシリーズ化することができるので好ましい。
【0042】
なお、本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことである。上記施形態では、モータ部7の出力軸12と回転操作軸3とが同軸上に配置されているが、本発明はこのような電動アクチュエータに適用される場合に限らない。例えば、モータ部の出力軸と回転操作軸とが平行に配置された電動アクチュエータにおいても、減速機の減速比を360°/θ°(θは回転操作軸の可動範囲)未満に設定することで、上記と同様の回転角度検出装置を用いることができ、電動アクチュエータの小型化が図れるようになる。また、本発明に係る電動アクチュエータは、内燃機関の排気再循環システムに用いられるEGRバルブや、エンジン出力を制御するために燃焼機関への吸気量を調整するスロットルバルブ、あるいはロボットアーム等、回転操作軸がモータ部の360°未満の回転によって回転操作される装置や部材に対して適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
3 回転操作軸
6 電動アクチュエータ
7 モータ部
8 減速機
12 出力軸
23 連結部
30 回転角度検出装置
31 磁石
32 磁石
33 磁気センサ
34 磁石保持部材
35 取付部材
35b 脱落防止部
35c 外周縁
35d 溝部