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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】泡吐出器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/34 20060101AFI20220708BHJP
   B05B 1/02 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
B65D47/34 110
B05B1/02 101
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017248927
(22)【出願日】2017-12-26
(65)【公開番号】P2019112129
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】角田 義幸
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-067353(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0119864(US,A1)
【文献】特開2016-190665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00-55/16
B05B 1/02
B05B 7/00-7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容液が収容された容器本体の口部に上方付勢状態で下方移動可能に立設されるステムと、
前記ステムに連係する液用ピストンおよび空気用ピストンと、
前記液用ピストンが内部に上下摺動自在に収容された液用シリンダと、
前記空気用ピストンが内部に上下摺動自在に収容された空気用シリンダと、
前記液用シリンダからの内容液と前記空気用シリンダからの空気とを混合する気液混合室と、
前記ステムに配置された弁座と、
前記弁座に離反可能に着座し、前記弁座から離反することで前記液用シリンダ内から前記気液混合室への流体の流出を許容し、前記弁座に着座することで前記気液混合室から前記液用シリンダ内への流体の流入を規制する液吐出弁と、
前記弁座から離反した前記液吐出弁に当接し、前記液吐出弁の前記弁座からの離反量を制限する押さえ部材と、
前記空気用シリンダ内と前記気液混合室とを連通可能な空気通路と、
前記空気用シリンダ内から前記気液混合室への前記空気通路を通した流体の流出を許容し、前記気液混合室から前記空気用シリンダ内への前記空気通路を通した流体の流入を規制する逆止弁と、を備え、
前記押さえ部材は、頂壁部に前記液吐出弁が当接するとともに周壁部に連通孔が形成された有頂筒状であり、
前記逆止弁は、前記押さえ部材を径方向の外側から覆う筒状に形成され、
前記逆止弁と前記押さえ部材とは、一体に形成され、
前記逆止弁の下端部は、前記押さえ部材の下端部に連結され、
前記空気通路は、前記ステムの内周面に開口し、
前記逆止弁の上端部が前記ステムの内周面に圧接することで、前記気液混合室と前記空気通路との連通が遮断され、かつ、前記逆止弁が径方向の内側に向けて弾性変形し、前記逆止弁の上端部が前記ステムの内周面から離反することで、前記気液混合室と前記空気通路とが連通する泡吐出器。
【請求項2】
前記逆止弁は、前記気液混合室と前記空気通路との接続部分に配置されている請求項1に記載の泡吐出器。
【請求項3】
前記気液混合室からの気液混合体を発泡する発泡部材を更に備え、
前記気液混合室と前記空気通路とは、前記発泡部材を通さずに連通する請求項1または2に記載の泡吐出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下記特許文献1に記載の泡吐出器が知られている。泡吐出器は、内容液が収容された容器本体の口部に上方付勢状態で下方移動可能に立設されるステムと、ステムに連係する液用ピストンおよび空気用ピストンと、液用ピストンが内部に上下摺動自在に収容された液用シリンダと、空気用ピストンが内部に上下摺動自在に収容された空気用シリンダと、液用シリンダからの内容液と空気用シリンダからの空気とを混合する気液混合室と、空気用シリンダ内と気液混合室内とを連通する空気通路と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-163515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の泡吐出器では、例えば、液用シリンダ内から気液混合室に供給された内容液の一部などが、空気通路を通して空気用シリンダ内に流入するおそれがある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、空気用シリンダ内への液体の侵入を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る泡吐出器は、内容液が収容された容器本体の口部に上方付勢状態で下方移動可能に立設されるステムと、前記ステムに連係する液用ピストンおよび空気用ピストンと、前記液用ピストンが内部に上下摺動自在に収容された液用シリンダと、前記空気用ピストンが内部に上下摺動自在に収容された空気用シリンダと、前記液用シリンダからの内容液と前記空気用シリンダからの空気とを混合する気液混合室と、前記ステムに配置された弁座と、前記弁座に離反可能に着座し、前記弁座から離反することで前記液用シリンダ内から前記気液混合室への流体の流出を許容し、前記弁座に着座することで前記気液混合室から前記液用シリンダ内への流体の流入を規制する液吐出弁と、前記弁座から離反した前記液吐出弁に当接し、前記液吐出弁の前記弁座からの離反量を制限する押さえ部材と、前記空気用シリンダ内と前記気液混合室とを連通可能な空気通路と、前記空気用シリンダ内から前記気液混合室への前記空気通路を通した流体の流出を許容し、前記気液混合室から前記空気用シリンダ内への前記空気通路を通した流体の流入を規制する逆止弁と、を備え、前記押さえ部材は、頂壁部に前記液吐出弁が当接するとともに周壁部に連通孔が形成された有頂筒状であり、前記逆止弁は、前記押さえ部材を径方向の外側から覆う筒状に形成され、前記逆止弁と前記押さえ部材とは、一体に形成され、前記逆止弁の下端部は、前記押さえ部材の下端部に連結され、前記空気通路は、前記ステムの内周面に開口し、前記逆止弁の上端部が前記ステムの内周面に圧接することで、前記気液混合室と前記空気通路との連通が遮断され、かつ、前記逆止弁が径方向の内側に向けて弾性変形し、前記逆止弁の上端部が前記ステムの内周面から離反することで、前記気液混合室と前記空気通路とが連通する。
【0007】
この発明では、泡吐出器が逆止弁を備えている。したがって、例えば、空気用シリンダ内が負圧になったときや、気液混合室が正圧になったときに、これらの負圧や正圧が逆止弁に作用すること等により、空気通路を通した空気用シリンダ内と気液混合室との連通を逆止弁によって遮断することができる。これにより、空気用シリンダ内への液体の侵入を抑制することができる。
なお、空気用シリンダ内に液体が侵入した場合であって、空気用シリンダの内面のうちの空気用ピストンが摺動する摺動面に内容液が付着したときには、空気用ピストンの摺動抵抗が高まって泡吐出器の性能に影響が生じるおそれがある。そのため、この泡吐出器のように空気用シリンダ内への液体の侵入を抑制することで、泡吐出器の性能を確保し易くすることもできる。
また、逆止弁と押さえ部材とが、一体に形成されているので、部品点数の増加を抑えることができる。
【0008】
前記逆止弁は、前記気液混合室と前記空気通路との接続部分に配置されていてもよい。
【0009】
この場合、逆止弁が、気液混合室と空気通路との接続部分に配置されている。したがって、液体の空気用シリンダ内への侵入だけでなく、液体の空気通路への侵入も抑制することができる。
【0012】
前記気液混合室からの気液混合体を発泡する発泡部材を更に備え、前記気液混合室と前記空気通路とは、前記発泡部材を通さずに連通していてもよい。
【0013】
この場合、気液混合室からの気液混合体が発泡部材に圧送されることで泡体が生成される。ここで例えば、内容液が乾燥すること等によって発泡部材に目詰まりが生じ、気液混合室から発泡部材に圧送される気液混合体に対する発泡部材の流通抵抗が高くなっていると、気液混合体が気液混合室から発泡部材ではなく空気通路に圧送されて(逆流して)空気用シリンダ内に流入するおそれがある。
そこで泡吐出器は、逆止弁を備えている。したがって、前述のような空気用シリンダ内への気液混合体の流入を逆止弁によって抑制することができる。これにより、空気用シリンダ内への内容液の侵入を効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、空気用シリンダ内への液体の侵入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る泡吐出器を示す縦断面図である。
図2図1に示す泡吐出器の要部の縦断面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る泡吐出器を示す縦断面図である。
図4図3に示す泡吐出器において、押下ヘッドを押下したときに形成される導入隙間を説明するための要部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、図1および図2を参照し、本発明の第1実施形態に係る泡吐出器10を説明する。泡吐出器10は、内容液を泡状にして吐出する。内容液としては、例えば皮膚洗浄液(ハンドソープ、ボディソープ)等が挙げられる。しかし、内容液は特にこれらに限定されず、泡状に吐出される様々な内容液を用いることが可能である。
【0017】
図1に示すように、泡吐出器10は、内容液が収容される容器本体1の口部1aに装着される装着キャップ11と、口部1aに上方付勢状態で下方移動可能に立設されたステム12を有するポンプ13と、ステム12に装着され、ノズル孔14が形成された押下ヘッド15と、装着キャップ11に着脱自在に装着され、押下ヘッド15の押下を規制する規制部材19と、を備えている。
【0018】
ここで、装着キャップ11は上下に開口する筒状に形成され、押下ヘッド15は有頂筒状に形成されている。装着キャップ11、ステム12および押下ヘッド15の各中心軸線は共通軸上に位置している。以下、この共通軸を軸線Oといい、軸線Oに沿う方向を上下方向といい、上下方向に沿う押下ヘッド15側を上側といい、その反対側を下側という。この泡吐出器10を、上下方向から見た平面視において、軸線Oに直交する方向を径方向といい、軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0019】
装着キャップ11は、ポンプ13を容器本体1に装着させる。装着キャップ11は、容器本体1の口部1a上に配置された環状の天壁部16と、天壁部16の内周縁部に立設された案内筒部17と、天壁部16の外周縁部から下方に向けて延び、口部1aに装着される装着周壁部18と、を備えている。なお本実施形態では、口部1aに形成された雄ねじと、装着周壁部18に形成された雌ねじと、が螺合することによって、口部1aと装着周壁部18とが嵌合されている。ただし、口部1aと装着周壁部18とを、アンダーカット嵌合などの他の嵌合方法によって嵌合させることもできる。
規制部材19は、前記平面視においてC字状に形成され、案内筒部17に着脱自在に嵌合されている。
【0020】
ステム12は、装着キャップ11内に挿通されている。ステム12は、下ステム20と、上ステム21と、を備えている。
下ステム20の上端部は、案内筒部17内に配置されている。下ステム20の上端部の内周面には、径方向の内側に向けて突出する環状の弁座22が設けられている。弁座22は、ステム12に配置されている。弁座22には、球状の液吐出弁23が着座および離反可能に設けられている。
【0021】
液吐出弁23は、弁座22に離反可能に着座する。液吐出弁23は、弁座22から離反することで液用シリンダ26内から気液混合室29への流体(例えば、内容液など)の流出を許容する。液吐出弁23は、弁座22に着座することで気液混合室29から液用シリンダ26内への流体(例えば、気液混合体や内容液、空気)の流入を規制する。液吐出弁23は、いわゆるボール弁である。
【0022】
液吐出弁23の上昇移動量は、下ステム20の上端部内に設けられた押さえ部材24により制限されている。押さえ部材24は、弁座22から離反した液吐出弁23に当接し、液吐出弁23の弁座22からの離反量を制限する。押さえ部材24は、有頂筒状に形成されている。液吐出弁23は、押さえ部材24の頂壁部に当接するまで、弁座22から離反する。押さえ部材24の周壁部には、連通孔24aが形成されている。連通孔24aは、周方向に間隔をあけて複数配置されている。
【0023】
上ステム21の下側部分は、下ステム20の上端部に外側から嵌合されていて、上ステム21は、装着キャップ11の案内筒部17内に上下動自在に挿入されている。上ステム21の下側部分は、内径が小さく上側に位置する小内径部と、内径が大きく下側に位置する大内径部と、を備えていて、これらのうちの小内径部が、下ステム20の上端部に嵌合されている。なお前記大内径部は、この上ステム21の下端部を構成している。
【0024】
上ステム21において上側部分と下側部分との間に位置する中間部分には、縮径部21aが形成されている。縮径部21a内には、押さえ部材24の上端部が配置されている。
上ステム21の下側部分における前記小内径部の内周面には、上下方向に延在する縦溝21bが複数形成されている。縦溝21bの上端部は、下ステム20の上端部に形成された第1貫通孔20aに連通している。第1貫通孔20aは、後述する気液混合室29に連通可能である。縦溝21bの下端部は、下方に開口して前記大内径部内に連通している。
【0025】
ところで前記ポンプ13は、ステム12に連係する液用ピストン25と、液用ピストン25が内部に上下摺動自在に収容された液用シリンダ26と、ステム12に連係する空気用ピストン27と、空気用ピストン27が内部に上下摺動自在に収容された空気用シリンダ28と、液用シリンダ26からの内容液と空気用シリンダ28からの空気とを混合する気液混合室29と、気液混合室29とノズル孔14との間に配設され、気液混合室29からの気液混合体を発泡する発泡部材30と、を更に備えている。
【0026】
空気用シリンダ28は容器本体1内に収容される有底筒状に形成され、液用シリンダ26は筒状に形成されている。これらの両シリンダは、軸線Oと同軸に配設されている。空気用シリンダ28の上端部には、径方向の外側に突出するフランジが設けられ、前記フランジは、パッキンを介して口部1a上に配置されている。空気用シリンダ28の底部は、容器本体1内の内容液の液面よりも上側に位置し、液用シリンダ26は、空気用シリンダ28の底部から下方に向けて延びている。液用シリンダ26および空気用シリンダ28は一体に形成されている。液用シリンダ26は、空気用シリンダ28よりも小径に形成されている。
空気用シリンダ28の周壁部には、空気孔28bが設けられている。空気孔28bは、容器本体1内に開口していて、容器本体1内に外気を導入する。
【0027】
空気用ピストン27は、ステム12と一体に形成されている。本実施形態では、空気用ピストン27が下ステム20と一体に形成されている。空気用ピストン27は、空気用シリンダ28内に気密状態で上下摺動自在に嵌合された外摺動筒31と、外摺動筒31の内周面と下ステム20の外周面とを連結する連結板33と、を備えている。
連結板33は、下ステム20における上下方向の中央部に連結されている。連結板33における内周縁部には、連結板33を上下方向に貫通する第2貫通孔34が形成されている。第2貫通孔34は、縦溝21bと空気用シリンダ28内とを連通する。
【0028】
連結板33には、シール筒56と、空気導入孔57と、空気弁58と、が設けられている。
シール筒56は、軸線Oと同軸に配置され、連結板33から上方に向けて突出している。シール筒56は、連結板33を上下方向から見た平面視において、第2貫通孔34を径方向の外側から囲っている。シール筒56内には、上ステム21の下端部が嵌合されている。
【0029】
空気導入孔57は、空気用シリンダ28内に空気を導入する。空気導入孔57は、連結板33を上下方向に貫通している。空気導入孔57は、シール筒56よりも径方向の外側に配置されている。空気導入孔57は、周方向に間隔をあけて複数配置されている。
空気弁58は、連結板33とは別体に形成され、連結板33に装着されている。空気弁58は、連結板33の下面に離間可能に着座し、空気用シリンダ28内と空気導入孔57との連通を遮断する。空気弁58は、空気導入孔57を下方から開放可能に閉塞している。空気弁58は、逆止弁として機能し、空気用シリンダ28内から空気導入孔57を通した外部への空気の流出を規制している。
【0030】
気液混合室29は、下ステム20と上ステム21と押さえ部材24との間に設けられている。気液混合室29は、ポンプ13に備えられた空気通路36を通して、空気用シリンダ28内と連通可能とされている。空気通路36は、空気用シリンダ28内の空気を気液混合室29に導く。図示の例では、空気通路36は、第1貫通孔20aと、縦溝21bと、前記大内径部内と、第2貫通孔34と、を備えている。気液混合室29と空気通路36は、発泡部材30を通さずに連通可能である。
【0031】
空気通路36には、逆止弁61が配置されている。本実施形態では、逆止弁61は、気液混合室29と空気通路36との接続部分に配置されている。逆止弁61は、空気用シリンダ28内から気液混合室29への空気通路36を通した流体(例えば空気など)の流出を許容する。逆止弁61は、気液混合室29から空気用シリンダ28内への空気通路36を通した流体(例えば、気液混合体や空気、内容液、外部から流入する水など)の流入を規制する。
【0032】
図2に示すように、逆止弁61と押さえ部材24とは、一体に形成されている。逆止弁61は、押さえ部材24を径方向の外側から覆う筒状に形成され、ステム12内(図示の例では、下ステム20の上端部内)に配置されている。逆止弁61の下端部は、押さえ部材24の下端部に連結されている。逆止弁61の上端部は、第1貫通孔20aよりも上側に位置している。逆止弁61の上端部は、押さえ部材24の頂壁部と上下方向に同等の位置に配置されている。
【0033】
図1に示すように、逆止弁61の上端部がステム12の内周面に圧接することで、気液混合室29と空気通路36との連通が遮断されている。逆止弁61は、径方向に弾性変形可能である。逆止弁61が径方向の内側に向けて弾性変形し、逆止弁61の上端部がステム12の内周面から離反することで、気液混合室29と空気通路36とが連通する。
逆止弁61は、逆止弁61の下部を形成するベース部62と、逆止弁61の上部を形成する変形部63と、を備えている。ベース部62は、上下方向に真っ直ぐ延びる筒状に形成されている。変形部63は、上方に向かうに従い拡径する筒状に形成されている。
【0034】
液用ピストン25は、下側から上側に向けて漸次、縮径する多段筒状に形成されていて、この液用ピストン25からは、前記ステム12が上方に向けて延びている。液用ピストン25は、ステム12内に液密状態で嵌合された上側筒部25aと、ステム12の下端開口縁から下方に突出し、液用シリンダ26内に上下摺動自在に嵌合された下側筒部25bと、を備えている。
【0035】
前記上側筒部25aと、液用シリンダ26の下端部の内面と、の間には、液用ピストン25を上方付勢状態で下方移動可能に支持するコイルスプリング38が配設されている。
液用ピストン25および液用シリンダ26の内部には、上下方向に延在する棒状の弁部材39が設けられている。弁部材39の上端部は、液用ピストン25の上側筒部25aの上端開口部に着座および離反可能な上部弁体39aとされ、弁部材39の下端部は、液用シリンダ26内の下端開口部に着座および離反可能な下部弁体39bとされている。
【0036】
発泡部材30は、ステム12内に設けられ、図示の例では、上ステム21の上側部分内に嵌合されている。発泡部材30は、発泡エレメント30aが、上下方向に複数、図示の例では2つ連設されて構成されている。各発泡エレメント30aは、上ステム21内に嵌合された筒体30bと、筒体30bの開口端縁上に配設された網体30c(メッシュ)と、を備えている。2つの発泡エレメント30aのうち、下側に位置する発泡エレメント30aでは、網体30cが筒体30bに対して下方に位置し、上側に位置する発泡エレメント30aでは、網体30cが筒体30bに対して上方に位置する。言い換えると、2つの発泡エレメント30aの筒体30b同士では、網体30cが配設されていない開口端縁同士が互いに突き合わされている。なお、発泡エレメント30aは1つであってもよい。
【0037】
押下ヘッド15は、ヘッド本体41と、外装筒部42と、を備えている。ヘッド本体41と外装筒部42とは、別体に形成されるとともに互いに組み付けられている。ヘッド本体41は、頂壁部43と、装着筒部44と、嵌合筒部45と、ノズル筒部47と、を備えている。頂壁部43は、ステム12の上側に配置されている。
【0038】
装着筒部44は、頂壁部43から下側に向けて延びステム12に装着されている。装着筒部44は、軸線Oと同軸に配置され、上ステム21の上端部に外側から嵌合している。装着筒部44の下端部は、案内筒部17内に挿入されていて、装着筒部44は、案内筒部17内を上下動自在とされている。
嵌合筒部45は、頂壁部43から下側に向けて突出し、軸線Oと同軸に配置されている。嵌合筒部45は、装着筒部44の上端部を径方向の外側から囲繞している。
【0039】
ノズル筒部47は、装着筒部44から径方向の外側に向けて延び、嵌合筒部45よりも径方向の外側に突出している。ノズル筒部47内は、装着筒部44の上端部内を通してステム12内に連通していて、ノズル筒部47の突端部内には、前記ノズル孔14が設けられている。
【0040】
外装筒部42は、頂壁部43の下方に設けられ、外装筒部42の上端部は、嵌合筒部45内に嵌合されている。外装筒部42の上端部には、ノズル筒部47が収容される収容孔42aが形成されている。収容孔42aは、上方に向けて開口する切欠き状に形成されている。ノズル筒部47の外周面と収容孔42aの内周面との間には、外装筒部42の内部と外部とを連通する隙間が設けられている。外装筒部42は、装着筒部44および案内筒部17を径方向の外側から囲繞していて、外装筒部42内は、案内筒部17内および空気導入孔57を通して空気用シリンダ28内に連通可能となっている。
【0041】
次に、前記泡吐出器10の作用について説明する。
【0042】
前記泡吐出器10において、内容液を吐出するときには、規制部材19を取り外し、押下ヘッド15を押し下げる。すると案内筒部17が、装着筒部44と外装筒部42との間の隙間に進入し、ステム12および液用ピストン25が、コイルスプリング38を上下方向に圧縮変形させながら下方に移動する。
このとき、液用ピストン25の下方への移動に伴い、液用ピストン25の上端部が、弁部材39の上部弁体39aから下方に離反し、液用シリンダ26内とステム12内とが連通し、弁部材39の下部弁体39bも下方に移動させられ、この下部弁体39bが液用シリンダ26内の下端開口部に着座して閉塞する。
【0043】
また、空気用ピストン27も下方に移動させられる。このとき、空気用シリンダ28内において空気用ピストン27の上方に位置する上室に、装着筒部44と案内筒部17との間などを通して外気が吸入されながら、空気用シリンダ28内において空気用ピストン27の下方に位置する下室内の空気が圧縮させられる。これにより、この下室内の空気が、空気通路36内に流入して気液混合室29に移送される。このとき、空気用シリンダ28の内圧(正圧)が空気通路36を通して逆止弁61に作用し、逆止弁61が径方向の内側に向けて弾性変形してステム12の内周面から離反する。その結果、逆止弁61が開状態となり、空気用シリンダ28内から気液混合室29へ空気通路36を通して空気が供給される。
【0044】
さらにこのとき、弁部材39の下部弁体39bが、液用シリンダ26の下端開口部を閉塞した状態で、液用ピストン25が下方移動することで、液用シリンダ26内の内容液が上昇してステム12内に到達する。そして液用シリンダ26内の液圧を、ステム12内の液吐出弁23に作用させ、この液吐出弁23を弁座22から上方に離反させることにより、液用シリンダ26内の内容液を気液混合室29内に流入させる。
【0045】
このようにして、気液混合室29内で内容液および空気を合流させ、発泡部材30を通過させて内容液を発泡させた後に、装着筒部44の上端部内およびノズル筒部47内を通過させノズル孔14から泡体を吐出させる。
【0046】
その後、押下ヘッド15の押し下げを解除すると、コイルスプリング38の弾性復元力により液用ピストン25が上方に押し上げられる。これにより、液用ピストン25の上側筒部25aの上端開口部が上部弁体39aに当接して、液用シリンダ26内とステム12内との連通が遮断されるとともに、下部弁体39bが、液用シリンダ26内の下端開口部から離反し、容器本体1内と液用シリンダ26内とが連通して、容器本体1内の内容液が液用シリンダ26内に流入する。なおこのとき、容器本体1内が負圧になり、前記上室に吸入された外気が、空気孔28bから容器本体1内に導入される。
【0047】
また、このように上昇する液用ピストン25とともに、ステム12および空気用ピストン27が一体的に上昇すると、前記下室の内圧が低下して負圧が空気弁58および逆止弁61に作用する。すると、空気弁58が弾性変形することで空気導入孔57が開放され、前記下室内に、前記上室内の空気が、空気導入孔57を通して吸入される。また、逆止弁61が径方向の外側に向けて復元変形してステム12の内周面に圧接する。その結果、逆止弁61が閉状態となり、空気用シリンダ28内から気液混合室29へ、例えば内容液などが流入することが規制される。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係る泡吐出器10によれば、泡吐出器10が逆止弁61を備えている。したがって、例えば、空気用シリンダ28内が負圧になったときや、気液混合室29が正圧になったときに、これらの負圧や正圧が逆止弁61に作用すること等により、空気通路36を通した空気用シリンダ28内と気液混合室29との連通を逆止弁61によって遮断することができる。これにより、空気用シリンダ28内への液体の侵入を抑制することができる。
【0049】
なお、空気用シリンダ28内に液体が侵入した場合であって、空気用シリンダ28の内面のうちの空気用ピストン27が摺動する摺動面(本実施形態では、空気用シリンダ28の内周面)に内容液が付着したときには、空気用ピストン27の摺動抵抗が高まって泡吐出器10の性能に影響が生じるおそれがある。そのため、この泡吐出器10のように空気用シリンダ28内への液体の侵入を抑制することで、泡吐出器10の性能を確保し易くすることもできる。
【0050】
また、逆止弁61が、気液混合室29と空気通路36との接続部分に配置されている。したがって、液体の空気用シリンダ28内への侵入だけでなく、液体の空気通路36への侵入も抑制することができる。
さらに、逆止弁61と押さえ部材24とが、一体に形成されているので、部品点数の増加を抑えることができる。
【0051】
ところで、この泡吐出器10では、気液混合室29からの気液混合体が発泡部材30に圧送されることで泡体が生成される。ここで例えば、内容液が乾燥すること等によって発泡部材30(網体30c)に目詰まりが生じ、気液混合室29から発泡部材30に圧送される気液混合体に対する発泡部材30の流通抵抗が高くなっていると、気液混合体が気液混合室29から発泡部材30ではなく空気通路36に圧送されて(逆流して)空気用シリンダ28内に流入するおそれがある。
そこで泡吐出器10は、逆止弁61を備えている。したがって、前述のような空気用シリンダ28内への気液混合体の流入を逆止弁61によって抑制することができる。これにより、空気用シリンダ28内への内容液の侵入を効果的に抑制することができる。
【0052】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る泡吐出器10Aを、図3を参照して説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0053】
本実施形態に係る泡吐出器10Aでは、空気用ピストン27は、外摺動筒31および連結板33に加えて、内摺動筒32を備えている。内摺動筒32は、外摺動筒31の内側に配置されている。連結板33は、外摺動筒31の内周面と内摺動筒32の外周面とを連結する。
内摺動筒32内には、ステム12が上下動自在に挿通されていて、本実施形態では、内摺動筒32内には、下ステム20が挿入されている。内摺動筒32は、下ステム20における上下方向の中央部に外装されていて、内摺動筒32の内周面と下ステム20の外周面との間には、内摺動筒32の上下方向の全長にわたって延びる連通路S2が設けられている。
【0054】
内摺動筒32の上端部は、上ステム21の下端部内に上下摺動自在に嵌合されている。内摺動筒32の上端縁と上ステム21の前記小内径部の下端縁との間には、上下方向の隙間である連通隙間S1が設けられている。この連通隙間S1には、上ステム21の前記縦溝21bの下端部、および連通路S2の上端部が各別に開口している。
【0055】
内摺動筒32の外周面には、凸リブ部32aが設けられている。凸リブ部32aは、周方向に間隔をあけて複数設けられている。凸リブ部32aは、上下方向に延びる縦リブ状に形成されている。凸リブ部32aの下端部は、連結板33に連結され、凸リブ部32aの上端部は、上ステム21の下端部に上下方向に間隔をあけて対向している。
【0056】
また本実施形態では、下ステム20のうち、空気用シリンダ28内に位置する部分には、径方向の外側に向けて突出する環状の当接部37が設けられている。当接部37の上面部分は、空気用ピストン27の内摺動筒32の下端縁に当接し、空気用シリンダ28内における空気通路36の開口部を塞いでいて、当接部37は、空気用シリンダ28の内部と気液混合室29との連通を遮断している。
なお本実施形態では、空気通路36は、第1貫通孔20aと、縦溝21bと、前記大内径部内と、第2貫通孔34と、を備えているのに代えて、第1貫通孔20aと、縦溝21bと、連通隙間S1と、連通路S2と、を備えている。
【0057】
次に、前記泡吐出器10Aの作用について説明する。
【0058】
前記泡吐出器10Aにおいて、内容液を吐出するときには、規制部材19を取り外し、押下ヘッド15を押し下げる。すると案内筒部17が、装着筒部44と外装筒部42との間の隙間に進入し、ステム12および液用ピストン25が、コイルスプリング38を上下方向に圧縮変形させながら下方に移動する。
このとき図4に示すように、内摺動筒32の下端と、ステム12における当接部37の上面部分と、の間に、周方向の全周にわたって延びる環状の導入隙間S3が形成され、導入隙間S3および空気通路36を通して空気用シリンダ28内と気液混合室29内とが連通する。
【0059】
さらにこのとき、液用ピストン25の下方への移動に伴い、液用ピストン25の上端部が、弁部材39の上部弁体39aから下方に離反し、液用シリンダ26内とステム12内とが連通し、弁部材39の下部弁体39bも下方に移動させられ、この下部弁体39bが液用シリンダ26内の下端開口部に着座して閉塞する。
【0060】
そして、上ステム21の下端縁が前記凸リブ部32aの上端部に当接することで、空気用ピストン27も下方に移動させられる。このとき、空気用シリンダ28内において空気用ピストン27の上方に位置する上室に、装着筒部44と案内筒部17との間などを通して外気が吸入されながら、空気用シリンダ28内において空気用ピストン27の下方に位置する下室内の空気が圧縮させられる。これにより、この下室内の空気が、前記導入隙間S3から空気通路36内に流入して気液混合室29に移送される。このとき、空気用シリンダ28の内圧(正圧)が空気通路36を通して逆止弁61に作用し、逆止弁61が径方向の内側に向けて弾性変形してステム12の内周面から離反する。その結果、逆止弁61が開状態となり、空気用シリンダ28内から気液混合室29へ空気通路36を通して空気が供給される。
【0061】
さらにこのとき、弁部材39の下部弁体39bが、液用シリンダ26の下端開口部を閉塞した状態で、液用ピストン25が下方移動することで、液用シリンダ26内の内容液が上昇してステム12内に到達する。そして液用シリンダ26内の液圧を、ステム12内の液吐出弁23に作用させ、この液吐出弁23を弁座22から上方に離反させることにより、液用シリンダ26内の内容液を気液混合室29内に流入させる。
【0062】
このようにして、気液混合室29内で内容液および空気を合流させ、発泡部材30を通過させて内容液を発泡させた後に、装着筒部44の上端部内およびノズル筒部47内を通過させノズル孔14から泡体を吐出させる。
【0063】
その後、押下ヘッド15の押し下げを解除すると、コイルスプリング38の弾性復元力により液用ピストン25が上方に押し上げられる。これにより、液用ピストン25の上側筒部25aの上端開口部が上部弁体39aに当接して、液用シリンダ26内とステム12内との連通が遮断されるとともに、下部弁体39bが、液用シリンダ26内の下端開口部から離反し、容器本体1内と液用シリンダ26内とが連通して、容器本体1内の内容液が液用シリンダ26内に流入する。なおこのとき、容器本体1内が負圧になり、前記上室に吸入された外気が、空気孔28bから容器本体1内に導入される。
【0064】
また、このように上昇する液用ピストン25とともに、ステム12および押下ヘッド15が一体的に上昇し、ステム12の当接部37が、空気用ピストン27の内摺動筒32の下端縁に当接することで、空気通路36を通した前記下室と気液混合室29との連通が遮断される。この状態で、ステム12および空気用ピストン27が一体的に上昇すると、前記下室の内圧が低下して負圧が空気弁58に作用する。すると、空気弁58が弾性変形することで空気導入孔57が開放され、前記下室内に、前記上室内の空気が、空気導入孔57を通して吸入される。また、逆止弁61が径方向の外側に向けて復元変形してステム12の内周面に圧接する。その結果、逆止弁61が閉状態となり、空気用シリンダ28内から気液混合室29へ、例えば内容液などが流入することが規制される。
【0065】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0066】
例えば、規制部材19がなくてもよい。
また前記実施形態では、押下ヘッド15が、別体に形成されたヘッド本体41と外装筒部42とを備えているが、本発明はこれに限られない。例えば、押下ヘッドの全体が、一体に形成されていてもよい。
【0067】
逆止弁61は前記実施形態に示した構成に限られない。例えば、逆止弁61が、空気用ピストン27と空気通路36との接続部分に配置されていてもよく、空気通路36の内部に配置されていてもよい。さらに例えば、逆止弁61が筒状でなくてもよく、例えば球状などであってもよい。
【0068】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 容器本体
1a 口部
10、10A 泡吐出器
12 ステム
13 ポンプ
25 液用ピストン
26 液用シリンダ
27 空気用ピストン
28 空気用シリンダ
29 気液混合室
図1
図2
図3
図4