(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】自転車用折り畳み装置
(51)【国際特許分類】
B62K 15/00 20060101AFI20220708BHJP
【FI】
B62K15/00
(21)【出願番号】P 2018034715
(22)【出願日】2018-02-28
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】596150301
【氏名又は名称】株式会社良品計画
(74)【代理人】
【識別番号】110001391
【氏名又は名称】特許業務法人レガート知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 広太
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-16890(JP,A)
【文献】登録実用新案第3002592(JP,U)
【文献】中国実用新案第207389422(CN,U)
【文献】特開平9-175466(JP,A)
【文献】特開2009-214756(JP,A)
【文献】実開平5-66183(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒンジを介してフレームを回動可能に連結し、前記ヒンジを回動させて前記フレームの連結側端面同士を突き合わせたり乖離させたりすることにより前記フレームの組み立て及び折り畳みを行う自転車用折り畳み装置において、
前記フレームの一のフレームの連結側端部内側に、外筒と、前記外筒内を前記一のフレームの軸方向に摺動可能な内筒とを配設し、
前記外筒及び内筒の周壁には、前記内筒の一端が前記一のフレームの連結側端面より突出した状態のときに連通状態となる孔がそれぞれ形成され、
前記連通状態の孔にロックピンを挿脱可能に挿入することにより前記内筒の前記一のフレームの連結側端面からの突出状態が保持され
、
前記ヒンジを回動させて前記フレームを組み立てる際に、前記突出状態が保持された前記内筒の先端が他のフレームの連結側端面に当接することでそれ以上前記フレームの連結側端面同士が突き合わされる方向に回動しないようにする安全機構を備えた、
自転車用折り畳み装置。
【請求項2】
内筒は弾性部材によって支持され、前記弾性部材の弾性力によってフレームの連結側端面方向に付勢されるようにした、請求項1記載の自転車用折り畳み装置。
【請求項3】
ロックピンは弾性部材によって支持され、前記弾性部材の弾性力によって内筒方向に付勢されるようにした、請求項1又は2記載の自転車用折り畳み装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、折り畳み式自転車に用いられる自転車用折り畳み装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、フレームやハンドルを折り畳むことによってコンパクトなサイズに変形できるようにした折り畳み式自転車として種々のものが提案されている。
【0003】
この折り畳み式自転車は、自転車のフレーム等にヒンジを設け、このヒンジを回転軸としてフレーム等を回動させることにより折り畳み可能とするものが一般的である。すなわち、一般的な自転車用折り畳み装置は、フレームをヒンジを介して回動可能に連結し、このヒンジをフレームの外側方向に回動させてフレームの連結側端面同士を乖離させることによりフレームの折り畳みを行い、これとは逆に、ヒンジをフレームの内側方向に回動させてフレームの連結側端面同士を突き合わせることによりフレームの組み立てが行われるようになっている。
【文献】特開2000-326884号公報
【0004】
ここで、上記したような一般的な自転車用折り畳み装置にあっては、ヒンジをフレームの内側方向に回動させてフレームの連結側端面同士を突き合わせることによりフレームが組み立て状態となる機構を採用しているので、ヒンジをフレームの内側方向に回動させてフレームの連結側端面同士を突き合わせる際、対向するフレームの連結側端面同士の間に作業者の手や指などが挟まれ、作業者がけがをするおそれがある。
【0005】
また、折り畳み式自転車の折り畳み方式には、フレームを水平方向に回動して折り畳むようにした水平展開式と、フレームを鉛直方向に回動して折り畳むようにした鉛直展開式とがあるところ、特に、鉛直展開式にあっては、折り畳んだ状態を解除してフレームを組み立てる際、フレームの自重によって一気にヒンジが回動してフレームの連結側端面同士が勢いよく突き合わされやすいため、作業者の手や指などが対向するフレームの連結側端面同士の間に挟まると、作業者が大けがを負う危険性がある。
【0006】
この点、ヒンジ部に手が挟まれないよう安全性に配慮した折り畳み式自転車として、特開平11-20767号公報に記載された発明がある。この発明によれば、フロントフレームとメインフレームとが前後方向の軸線回りに回転可能に直接ヒンジ結合されている(回転可能に軸止されている)ため、フロントフレームを回転させて折り畳んだ際に両フレームの連結面が乖離して露出することがなく、折り畳み状態から組立状態にするためにフロントフレームを前方に回動させた際に、作業者の手や指が両フレームの連結面の間に挟まれるおそれはない。
【0007】
しかしながら、この自転車の折り畳み構造は、フロントフレームがメインフレームに回転可能に軸止されたものであって、ヒンジを回動させてフレームの連結側端面同士を突き合わせたり乖離させたりすることによってフレームの組み立て、折り畳みを行う構造のものではない。
【文献】特開平11-20767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、ヒンジを回動させてフレームの連結側端面同士を突き合わせたり乖離させたりすることによってフレームの組み立て及び折り畳みを行う自転車の折り畳み装置において、フレームの組み立て作業時に対向するフレームの連結側端面の間に作業者の手や指が挟まれることを防止する安全機構を備えた自転車用折り畳み装置を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の自転車用折り畳み装置は、ヒンジを介してフレームを回動可能に連結し、前記ヒンジを回動させて前記フレームの連結側端面同士を突き合わせたり乖離させたりすることにより前記フレームの組み立て及び折り畳みを行う自転車用折り畳み装置において、前記フレームの一のフレームの連結側端部内側に、外筒と、前記外筒内を前記一のフレームの軸方向に摺動可能な内筒とを配設し、前記外筒及び内筒の周壁には、前記内筒の一端が前記一のフレームの連結側端面より突出した状態のときに連通状態となる孔をぞれぞれ形成し、前記連通状態の孔にロックピンを挿脱可能に挿入することにより前記内筒の前記一のフレームの連結側端面からの突出状態が保持され、前記ヒンジを回動させて前記フレームを組み立てる際に、前記突出状態が保持された前記内筒の先端が他のフレームの連結側端面に当接することでそれ以上前記フレームの連結側端面同士が突き合わされる方向に回動しないようにする安全機構を備えるようにして構成する。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の自転車用折り畳み装置において、内筒を弾性部材で支持し、前記弾性部材の弾性力によって前記内筒をフレームの連結側端面方向に付勢するようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2の自転車用折り畳み装置において、ロックピンを弾性部材で支持し、前記弾性部材の弾性力によって前記ロックピンを内筒方向に付勢するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、ヒンジを介してフレームを回動可能に連結し、前記ヒンジを回動させて前記フレームの連結側端面同士を突き合わせたり乖離させたりすることにより前記フレームの組み立て及び折り畳みを行う自転車用折畳装置において、前記フレームの一のフレームの連結側端部内側に、外筒と、前記外筒内を前記一のフレームの軸方向に摺動可能な内筒とを配設し、前記外筒及び内筒の周壁には、前記内筒の一端が前記一のフレームの連結側端面より突出した状態のときに連通状態となる孔をそれぞれ形成し、前記連通状態の孔にロックピンを挿脱可能に挿入することにより前記内筒の前記一のフレームの連結側端面からの突出状態が保持され、前記ヒンジを回動させて前記フレームを組み立てる際に、前記突出状態が保持された前記内筒の先端が他のフレームの連結側端面に当接することでそれ以上前記フレームの連結側端面同士が突き合わされる方向に回動しないようにする安全機構を備えるようにしたので、ヒンジを回動させてフレームを組み立てる際、フレームの連結側端面同士が突き合わされるよりも前に一のフレームの連結側端面から突出した内筒の先端と他のフレームの連結側端面とが当接し、それ以上ヒンジをフレームの連結側端面を突き合わせる方向に回動させることができない。すなわち、折り畳み状態からフレームを展開して組み立てる際に、内筒が一時的なストッパーとして機能し、両フレームの連結側端面同士が一気に突き合わせ状態となることを防ぐことができる。しかも、内筒は一のフレームの連結側端部内側に配設されているので、作業者の手が入りにくく、内筒と他のフレームの連結側端面とが当接する際に手や指が挟まれる危険性も低い。
そして、ロックピンを内筒周壁に形成された孔から引き抜くことにより内筒が外筒内を摺動可能となるので、再びヒンジを回動させて両フレームの連結側端面同士を突き合わせることができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、内筒を弾性部材で支持し、前記弾性部材の弾性力によって前記内筒をフレームの連結側端面方向に付勢するようにしたので、フレームの組み立て状態が解除されてフレームの連結側端面同士が乖離すると、内筒がフレームの連結側端面方向に付勢され、自動的に内筒の先端がフレームの連結側端面から突出した状態とすることができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、ロックピンを弾性部材で支持し、前記弾性部材の弾性力によって前記ロックピンを内筒方向に付勢するようにしたので、内筒が外筒内を摺動して内筒及び外筒の周壁に形成された孔が連通状態となると自動的にロックピンがこの連通状態の孔に挿入されて内筒がロックされた状態となり、一のフレームの連結側端面からの内筒の突出状態を保持することができる。
【0015】
また、請求項2の自転車用折り畳み装置に請求項3の発明の上記構成を適用した場合には、フレームの組み立て状態が解除されフレームの連結側端面同士が乖離すると、内筒が弾性部材の弾性力によりフレームの連結側端面方向に付勢されて自動的に外筒内を摺動し、内筒及び外筒の周壁に形成された孔が連通状態となると、自動的にロックピンが連通状態の孔に挿入されて内筒の連結側端面からの突出状態が保持される。すなわち、フレームの連結側端面同士が乖離された状態になると、自動的にロックピンが外筒及び内筒の周壁に形成された連通状態の孔に挿入されて内筒がロック状態となり、内筒の一のフレームの連結側端面からの突出状態が保持されるので、フレームの組み立て作業を行う際、内筒が一時的なストッパーとして確実に機能する状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明の自転車用折り畳み装置を用いた自転車の組み立て状態を示す図
【
図3】この発明の自転車用折り畳み装置の折り畳み状態の概要を示す図
【
図7】この発明の自転車用折り畳み装置の概要を示す分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1及び
図2は、この発明の自転車用折り畳み装置を用いた折り畳み自転車
の概要を示す図である。この発明の自転車用折り畳み装置は、折り畳み自転車のメインフレーム1を組み立てたり(
図1)、折り畳んだり(
図2)するために使用される装置であり、折り畳み自転車のメインフレーム1の内部(図中破線円部分)に組み込まれている。
【0018】
図3ないし
図6は、この発明の自転車用折り畳み装置の概要を示すとともに、折り畳み状態(
図3)から組み立て状態(
図6)への操作過程を説明する図である。なお、
図3ないし
図6の各図における[B]図は、各図における[A]図のX線部分の断面図によってその内部構造を示している。また、
図7はこの発明の自転車用折り畳み装置の内部構造を示すための分解斜視図である。
【0019】
図3はメインフレーム1の折り畳み状態におけるこの発明の自転車用折り畳み装置を示す図である。
【0020】
メインフレーム1は前方フレーム11と後方フレーム12とがヒンジ2によって回動可能に連結されることにより構成されている。ヒンジ2は回転軸により回動可能に連結された前座21と後座22とを備え、前座21が前方フレーム11の後方側端部に、後座22が後方フレーム12の前方側端部にそれぞれ溶着されており、前座21は前方フレーム11の連結側端面111を、後座22は後方フレーム12の連結側端面121を構成している。このヒンジ2の前座21は、折り畳み時に後座22が内側にすっぽり収まるような凹陥状に形成されている。
また、このヒンジ2は、メインフレーム1を鉛直方向に折り畳む際に自転車の前後輪が干渉しないよう、ヒンジ2の回転軸の軸心が平面視におけるメインフレーム1の軸心に対して直角ではなく側面方向に僅かに傾くように設けてある。
さらに、ヒンジ2の後座22の連結軸側と反対側の端縁には固定レバー3が回動可能に取り付けられており、この固定レバー3の下側(フレーム1側)にはジョイント4の一端が回動可能に取り付けられている。そして、ジョイント4の他端は前方フレーム11の上面に回動可能に取り付けられている。また、固定レバー3の側面には係合ピン31が設けられており、メインフレーム1の組み立て状態において前方フレーム11の上面に設けられた係合レバー5に係合されるようにしてある。
【0021】
ヒンジ2の後座22(すなわち後方フレーム12の連結側端面121)には円孔121hが形成されており、この円孔121hに安全機構6が取り付けられている。
【0022】
この安全機構6は、両端に形成された開口部のうち一端側の開口部がキャップ61によって閉塞された略円筒状の外筒62の内部にスプリング63と内筒64とが配設されており、内筒64をスプリング63で弾性的に付勢しつつ外筒62内を軸方向に摺動可能なものとして構成されている。この内筒64の外周には段部641が設けられており、先端側の外径が他の部分の外径より一回り小さくなっているので、スプリング63によって内筒64が連結側端面121側に付勢されても、この段部641が外筒62の開口部621の縁に引っかかり、それ以上内筒64が外筒62から飛び出さないようになっている。ここで、内筒64が連結側端面121側に付勢されて外筒62の開口部621の縁と当接した状態において、内筒64の先端側は外筒62の開口部621から突出して後方フレーム12の連結側端面121から突出した状態となっている。また、内筒64の先端部は凹曲面状に構成されている。
【0023】
そして、外筒62の周壁と内筒64の周壁には、それぞれ外筒円孔622、内筒円孔642が設けられており、内筒64が後方フレーム12の連結側端面121側に付勢されて外筒62の開口部621の縁と当接した状態において、外筒円孔622と内筒円孔642とが連通した連通孔となるようにしてある。内筒円孔642の外径は、外筒円孔622よりも一回り小さく形成されている。
【0024】
さらに、後方フレーム12側壁の外筒円孔622と対向する位置に円孔12hが形成されており、この円孔12hにロック機構7が取り付けられている。
【0025】
このロック機構7は、円孔12hに溶着された外カラー71内に、両端に開口部を備えた略円筒状の内カラー72をその一端側の先端が外筒円孔622に嵌挿されるようにして嵌合してあり、この内カラー72の内部にスプリング73とロックピン74とを配設し、ロックピン74をスプリング73によって安全機構6側に弾性的に付勢しつつ内カラー72内を軸方向に摺動可能なものとして構成されている。ロックピン74の外径は内筒円孔742の内径よりも僅かに小さな大きさに形成され、その先端側には鍔741が形成されている。このロックピン74はスプリング73の内側に嵌挿された状態で内カラー72内に配設されており、スプリング73の先端がロックピン74の鍔741の段部に当接してロックピン74を常に安全装置6側に付勢するようにしてある。そして、内筒64が後方フレーム12の連結側端面121側に付勢されて外筒円孔622と内筒円孔642とが連通状態となっているとき、ロックピン74は内筒円孔642に挿入された状態となる。このとき、ロックピン74の外径は内筒円孔642よりも僅かに小さな径としてあるとともにその先端側には鍔741が設けられているので、スプリング73の弾性力によってロックピン74の先端が内筒円孔642に挿入されるとともに鍔741が内筒円孔642の縁に当接して引っかかり、それ以上ロックピン74が内筒円孔642に挿入されることがない(鍔741がストッパーとして機能する)ようになっている。
また、ロックピン74の他端にはロックピン74を内筒円孔642から引き抜く際に使用するプルリング75が回動可能に取り付けられている。
【0026】
さらに、ヒンジ2の前座21(すなわち前方フレーム11の連結側端面111)には突起8が形成されている。この突起8は、メインフレーム1の組み立て時に後方フレーム12内に設けられた安全機構6の内筒64の先端側の受け部に突き合わされるものであり、その表面は凸曲面状に形成されている。
この発明の自転車用折り畳み装置において、前方フレーム連結側端面111の突起は必ずしも必須ではないが、前方フレーム連結側端面111に突起8を設けておくことにより、内筒64の後方フレーム12の連結側端面121からの突出量を抑えることができる。すなわち、 折り畳み状態からメインフレーム1を展開して組み立てる際、前方フレーム11の連結側端面111と後方フレーム12の連結側端面121との間に指を挟まないようにするために、両フレームの連結側端面間に「V」字状に所定間隔を介在させた状態を一時的に維持する必要があるところ、両フレームの連結側端面間に同じ間隔の「V」字状の所定間隔を得ようとした場合、前方フレーム11の連結側端面111に内筒64と突き合わされる突起8を設けた場合と設けない場合とでは、後者においては、内筒64の後方フレーム連結側端面121からの突出量を大きくしなければならず、折り畳み時に邪魔になるおそれがある。
【0027】
以下、
図3ないし
図6により、この発明の自転車用折り畳み装置の操作過程を説明する。
【0028】
図3は、メインフレーム1を折り畳んだ状態を示す図である。メインフレーム1を折り畳んだ状態において、後方フレーム12に設けられた安全機構6の内筒64は、スプリング63により外筒62内において後方フレーム連結側端面121側に付勢されており、その先端部が後方フレーム連結側端面121から突出した状態となっている。そして、ロック機構7のロックピン74が、スプリング73により内カラー72内において内筒64側に付勢されており、その先端部が内筒円孔642に挿入されている。
【0029】
図4は、折り畳み状態のメインフレーム1を展開して組み立てる際、安全機構6が機能している状態を示す図である。
メインフレーム1を組み立てようとして展開すると、各フレームの連結側端面同士が突き合わされる状態となる前に、前方フレーム連結側端面111に設けられた突起8が後方フレーム連結側端面121から突出した安全機構6の内筒64の先端部に突き当たる。このとき、ロック機構7のロックピン74が内筒円孔642に挿入されていることにより内筒64がロック状態となっているため、内筒64の先端に突起8が突き当たって内筒64を押圧する力が加わっても内筒64は外筒62内を摺動することができない。したがって、このままの状態ではメインフレーム1がこれ以上展開されることはない。
これにより、メインフレーム1を展開した際、前方フレーム連結側端面111と後方フレーム連結側端面121とが突き合わされる状態となる前に必ず各フレームの連結側端面間には「V」字状の所定間隔が介在した状態が維持されることとなるので、メインフレーム1の組み立て作業中に各フレームの連結側端面間に作業者の手や指が挟まれるおそれがない。そして、内筒64は作業者の手の入りにくい連結側端面の内側で突起8と突き当たっているので、内筒64が突起8に突き当たる際にも作業者の手や指が挟まれる可能性が低く、安全性が確保されている。
【0030】
図5は、折り畳み状態のメインフレーム1を展開して組み立てる際、安全機構6が機能している状態から安全機構6を解除した状態を示す図である。
安全機構6が機能している状態にあっては、ロック機構7のロックピン74の先端が内筒64の内筒円孔642に挿入された状態となっているところ、プルリング75を立ち上げてロックピン74を内筒円孔642から引き抜くことにより内筒64のロック状態が解除され、内筒64を外筒62内で摺動可能な状態とすることができる。このようにして内筒64のロック状態が解除されると、メインフレーム1をさらに展開して前方フレーム連結側端面111と後方フレーム連結側端面121とを完全に突き合わせることが可能となる。
【0031】
図6はメインフレーム1を完全に展開して組み合わせた状態を示す図である。
ロックピン74を内筒円孔642から引き抜いて内筒64のロック状態が解除された状態において、メインフレーム1を組み立てるべくこれをさらに展開すると、前方フレーム連結側端面111に設けられた突起8が内筒64を押圧し、前方フレーム連結側端面111と後方フレーム連結側端面121とが突き合わせ状態となるまで内筒64はスプリング63の付勢力に抗しながら外筒62内を軸方向に摺動する。
そして、前方フレーム連結側端面111と後方フレーム連結側端面121とが突き合わせ状態となったところで、固定レバー3を前方フレーム11側に倒し、固定レバー3に設けられたロックピン31をロックレバー5に係合して固定レバー3が外れないようにすることで、メインフレーム1の組み立てが完了する。
【0032】
メインフレーム1の組み立て状態において、内筒64は外筒62内においてスプリング63により後方フレーム連結側端面121方向に常時付勢されているとともに、ロック機構7のロックピン74は内カラー72内においてスプリング73により内筒64方向に常時付勢されているので、メインフレーム1の組み立て状態を解除して折り畳むと、内筒64がスプリング63の弾性力により後方フレーム連結側端面121方向に付勢され、内筒64の段部641が外筒62の開口部621の縁に当接するまで外筒62内を摺動する。そして、内筒64の段部641が外筒62の開口部621の縁に当接すると、内筒円孔642が外筒円孔622と連通してロック機構7のロックピン74が内カラー72内を内筒64方向に摺動可能な状態となるので、ロック機構7のスプリング73の弾性力によって常時付勢されているロックピン74が内カラー72内を内筒64方向に摺動し、その先端が内筒円孔642に挿入されて内筒64がロック状態となる。
以上のように、メインフレーム1を折り畳むと内筒64が自動的にロックされるので、作業者が何ら特別の作業を要することなく、メインフレーム1を組み立てる際に必ず安全機構6が機能する状態とすることができる。したがって、メインフレーム1の組み立て作業時に作業者が前方フレーム連結側端面111と後方フレーム連結側端面121との間に手や指を挟んでけがをするおそれがない。
【0033】
上記実施例にあっては、この発明の自転車用折り畳み装置を折り畳み自転車のメインフレームに組み込んだ例として説明したが、メインフレームに組み込むだけでなく、例えば、折り畳み可能なハンドルフレームに組み込むことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
この発明は、折り畳み式自転車に用いられる自転車用折畳装置に関するものであり、産業上の利用可能性を有するものである。
【符号の説明】
【0035】
1 メインフレーム
11 前方フレーム
111 前方フレーム連結側端面
12 後方フレーム
12h 円孔
121 後方フレーム連結側端面
121h 円孔
2 ヒンジ
21 前座
22 後座
3 固定レバー
31 係合ピン
4 ジョイント
5 係合レバー
6 安全機構
61 キャップ
62 外筒
621 開口部
622 外筒円孔
63 スプリング
64 内筒
641 段部
642 内筒円孔
7 ロック機構
71 外カラー
72 内カラー
73 スプリング
74 ロックピン
741 鍔
75 プルリング
8 突起