(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】携帯情報端末、生体情報管理方法、生体情報管理プログラム、およびコンピュータが読み取り可能な記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G06F 3/04845 20220101AFI20220708BHJP
G06F 3/0488 20220101ALI20220708BHJP
G06Q 50/22 20180101ALI20220708BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
G06F3/04845
G06F3/0488
G06Q50/22
A61B5/00 D
(21)【出願番号】P 2018056604
(22)【出願日】2018-03-23
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今野 徳人
【審査官】円子 英紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-525065(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0243040(US,A1)
【文献】特開2000-097728(JP,A)
【文献】特開2015-170365(JP,A)
【文献】特表2017-517813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/048-3/04895
G06Q 50/22
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の生体情報に対応するセンサ信号を受信する無線通信装置と、
前記センサ信号に基づいて、前記被検者の生体情報の経時変化を示す波形を表示するディスプレイと、
所定の操作を受け付けるユーザインターフェースと、
を備えており、
前記所定の操作により前記波形の一部が指定されると、当該波形の一部のトリミング画像が前記ディスプレイに表示される
とともに、前記ディスプレイにおける当該トリミング画像の背後に位置する領域の視認性が低下され、
前記波形の一部の付帯情報が、前記視認性が低下された領域に表示される、
携帯情報端末。
【請求項2】
前記トリミング画像は、前記波形に重畳して表示される、
請求項1に記載の携帯情報端末。
【請求項3】
前記トリミング画像は、前記波形の一部の拡大画像を含む、
請求項1
または2に記載の携帯情報端末。
【請求項4】
前記ユーザインターフェースは、前記ディスプレイに対するタッチ入力を許容するタッチパネル装置であり、
前記所定の操作は、ピンチアウト操作である、
請求項1から
3のいずれか一項に記載の携帯情報端末。
【請求項5】
被検者の生体情報に対応するセンサ信号を無線送信するセンサと、
プロセッサを備えており、前記センサ信号を受信する携帯情報端末と、
を含む生体情報管理システムにおいて、前記プロセッサにより実行される生体情報管理方法であって、
前記センサ信号に基づいて、前記被検者の生体情報の経時変化を示す波形を前記携帯情報端末のディスプレイに表示し、
前記携帯情報端末のユーザインターフェースを通じて前記波形の一部が指定されると、当該波形の一部のトリミング画像を前記ディスプレイに表示する
とともに、前記ディスプレイにおける当該トリミング画像の背後に位置する領域の視認性が低下され、
前記波形の一部の付帯情報が、前記視認性が低下された領域に表示される、
生体情報管理方法。
【請求項6】
請求項
5に記載の生体情報管理方法を携帯情報端末に実行させる、
生体情報管理プログラム。
【請求項7】
請求項
6に記載の生体情報管理プログラムが記憶されている、
コンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検者の生体情報を管理するための携帯情報端末、生体情報管理方法、当該生体情報管理方法を携帯情報端末に実行させる生体情報管理プログラム、および当該生体情報管理プログラムが記憶されたコンピュータが読み取り可能な記憶媒体に関連する。
【背景技術】
【0002】
被検者の生体情報を携帯情報端末上で確認したいという要望がある。特許文献1に記載された構成は、このような要望に応えようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、携帯情報端末の比較的小さな表示領域に生体情報が表示される場合において、ユーザによる情報の確認作業を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための一態様は、携帯情報端末であって、
被検者の生体情報に対応するセンサ信号を受信する無線通信装置と、
前記センサ信号に基づいて、前記被検者の生体情報の経時変化を示す波形を表示するディスプレイと、
所定の操作を受け付けるユーザインターフェースと、
を備えており、
前記所定の操作により前記波形の一部が指定されると、当該波形の一部のトリミング画像が前記ディスプレイに表示される。
【0006】
上記の目的を達成するための一態様は、
被検者の生体情報に対応するセンサ信号を無線送信するセンサと、
プロセッサを備えており、前記センサ信号を受信する携帯情報端末と、
を含む生体情報管理システムにおいて、前記プロセッサにより実行される生体情報管理方法であって、
前記センサ信号に基づいて、前記被検者の生体情報の経時変化を示す波形を前記携帯情報端末のディスプレイに表示し、
前記携帯情報端末のユーザインターフェースを通じて前記波形の一部が指定されると、当該波形の一部のトリミング画像を前記ディスプレイに表示する。
【0007】
携帯情報端末のディスプレイは、比較的小さいことが一般的である。したがって、視認性を優先して波形の画像を大きくすると表示可能な情報量が制限され、一覧性を優先して多くの生体情報を表示すると、個々の情報の大きさが小さくなることが避けられない。しかしながら、上記の構成によれば、まず所望量の生体情報がディスプレイに表示されることによって一覧性が確保される。続いてより詳細な確認を要する箇所が指定されると、当該箇所の画像情報のみを含むトリミング画像が表示されるので、被検者自身や医療従事者を含むユーザの視線がトリミング画像内に導かれ、波形の注視が容易とされる。したがって、携帯情報端末の比較的小さな表示領域に生体情報が表示される場合において、ユーザによる情報の確認作業を支援できる。
【0008】
上記の目的を達成するための一態様は、上記の生体情報管理方法を携帯情報端末に実行させる、生体情報処理プログラムである。
【0009】
上記の目的を達成するための一態様は、上記の生体情報処理プログラムが記憶されている、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る携帯情報端末の機能構成を示している。
【
図2】上記の携帯情報端末により行なわれる処理の流れを示している。
【
図3】上記の携帯情報端末のディスプレイにおける表示例を示している。
【
図4】上記の携帯情報端末のディスプレイにおける表示例を示している。
【
図5】上記の携帯情報端末のディスプレイにおける表示例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付の図面を参照しつつ、実施形態の例を以下詳細に説明する。
図1は、一実施形態に係る携帯情報端末1の機能構成を示している。
【0012】
携帯情報端末1は、表示機能と情報処理機能を有する可搬型の装置である。携帯情報端末1としては、スマートフォン、タブレット端末、ヘッドマウントディスプレイなどが例示されうる。携帯情報端末1は、少なくとも一人の被検者に装着される少なくとも一つのセンサ2とともに生体情報管理システムを構成する。
【0013】
センサ2は、被検者の生体情報を検出し、当該生体情報に対応するセンサ信号Sを出力する構成を備えている。生体情報としては、体温、血圧、心電図、筋電図、脳波、動脈血酸素飽和度(SpO2)、呼吸気における二酸化炭素または酸素の濃度または分圧などが例示されうる。
【0014】
携帯情報端末1は、無線通信装置11を備えている。無線通信装置11は、センサ2と無線通信を行なうことが可能な通信インターフェースを備えている。そのようなインターフェースとしては、RFID(Radio Frequency Identification)、NFC(Near Field Communication)、Bluetooth(登録商標)やWi-Fiなどの規格に準拠した通信インターフェースが例示されうる。無線通信装置11は、少なくとも一人の被検者に装着された少なくとも一つのセンサ2から少なくとも一つのセンサ信号Sを受信する。
【0015】
携帯情報端末1は、ディスプレイ12を備えている。ディスプレイ12は、各種の情報を表示可能に構成されている。ディスプレイ12としては、液晶表示装置や有機EL表示装置が例示されうる。
【0016】
携帯情報端末1は、ユーザインターフェース13を備えている。ユーザインターフェース13は、ユーザから所定の操作を受け付けるように構成されている。ユーザインターフェース13としては、ボタンやレバーなどの物理的スイッチ、ディスプレイ12と一体化されてタッチ入力を許容するタッチパネル装置、音声指示の入力を受け付ける音声認識装置、視線入力による指示を受け付ける視線認識装置などが例示されうる。
【0017】
携帯情報端末1は、制御部14を備えている。制御部14は、プロセッサを備えている。プロセッサは、後述する生体情報管理方法の少なくとも一部を実行するように構成されている。プロセッサの機能は、メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されてもよいし、マイクロコントローラ、FPGA、ASICなどの専用集積回路によって実現されてもよい。
【0018】
携帯情報端末1は、通信バス15を備えている。無線通信装置11、ディスプレイ12、ユーザインターフェース13、および制御部14は、通信バス15を介して相互に信号やデータのやり取りが可能とされている。
【0019】
図2は、上記のように構成された携帯情報端末1において行なわれる生体情報管理方法の一例を示している。携帯情報端末1において実行される処理は、制御部14の制御下において行なわれる。
【0020】
携帯情報端末1は、被検者に装着されたセンサ2から受信したセンサ信号Sに基づいて、当該被検者の生体情報の経時変化を示す波形を、ディスプレイ12に表示する(STEP1)。
【0021】
図3の(A)は、表示態様の一例を示している。本例においては、一人の被検者に装着された複数のセンサ2から受信した複数のセンサ信号Sに基づいて、複数種の生体パラメータの経時的変化を示す複数の波形が、ディスプレイ12に表示されている。例えば、単一チャネルの心電図の経時変化を示す波形、非観血動脈血酸素飽和度の経時変化を示す波形、および呼吸気における二酸化炭素濃度の経時変化を示す波形が表示されうる。
【0022】
図3の(B)は、表示態様の別例を示している。本例においては、一人の被検者に装着された複数のセンサ2から受信した複数のセンサ信号Sに基づいて、複数チャネルの心電図の経時変化を示す複数の波形が、ディスプレイ12に表示されている。
【0023】
図示を省略するが、一人の被検者の単一チャネルの心電図の経時変化を示す波形が、複数行にわたってカスケード表示されてもよい。あるいは、複数の被検者について少なくとも一つの生体情報の経時変化を示す波形が表示されてもよい。
【0024】
続いて、
図4の(A)に示されるように、ディスプレイ12に表示された波形の一部が指定される(
図2におけるSTEP2)。具体的には、ユーザインターフェース13が所定の操作を受け付けることにより、波形の一部の指定がなされる。同図において選択された領域は破線で囲まれている。
【0025】
本明細書において「波形の一部の指定」とは、複数の被検者に係る波形を表示する複数の領域から一人の被検者に係る一つの領域を選択すること、一人の被検者に係る複数種の生体パラメータの経時変化を示す複数の波形から一つの波形を選択すること、一人の被検者に係る特定の生体パラメータの経時変化を示す波形の一部(すなわち特定の時間範囲)を指定することなどを通じて、初めにディスプレイ12に表示された生体情報よりも少ない情報量を含む領域を指定する操作を意味する。
【0026】
所定の操作としては、物理的スイッチの操作、タッチ入力パネルへのタッチ操作入力、音声指示入力、視線指示入力などが例示されうる。
【0027】
その結果、
図4の(B)に示されるように、指定された波形の一部のトリミング画像Tがディスプレイ12に表示される(
図2におけるSTEP3)。トリミング画像Tは、独立した表示領域として提供され、ユーザインターフェース13を通じて指定されたディスプレイ12の一部領域に初めに表示されていた画像情報のみを含んでいる。
【0028】
携帯情報端末1のディスプレイ12は、比較的小さいことが一般的である。したがって、視認性を優先して波形の画像を大きくすると表示可能な情報量が制限され、一覧性を優先して多くの生体情報を表示すると、個々の情報の大きさが小さくなることが避けられない。しかしながら、上記の構成によれば、まず所望量の生体情報がディスプレイ12に表示されることによって一覧性が確保される。続いてより詳細な確認を要する箇所が指定されると、当該箇所の画像情報のみを含むトリミング画像Tが独立して表示されるので、被検者自身や医療従事者を含むユーザの視線がトリミング画像T内に導かれ、波形の注視が容易とされる。したがって、携帯情報端末1の比較的小さな表示領域に生体情報が表示される場合において、ユーザによる情報の確認作業を支援できる。
【0029】
図示された例においては、トリミング画像Tは、初めにディスプレイ12に表示された波形に重畳して表示されている。すなわち、初めにディスプレイ12に表示された波形のうち、確認の重要度が相対的に低い部分は、トリミング画像Tによって覆い隠される。
【0030】
このような構成によれば、ディスプレイ12の限られた表示領域を最大限に活用しつつ、トリミング画像Tへの視線誘導をより容易にできる。
【0031】
このとき、
図5の(A)に示されるように、トリミング画像Tの背後に位置する波形の視認性を低下させてもよい。視認性の低下は、波形を含む画面のグレイアウトや波形画像のオフフォーカスといった画像処理により実現されうる。
図5の(B)に示されるように、初めにディスプレイ12に表示された波形を完全に消去してもよい。
【0032】
このような構成によれば、トリミング画像T内の画像情報への注意力をより高めることができる。
【0033】
図示された各例のように、トリミング画像Tは、指定された波形の一部の拡大画像を含みうる。
【0034】
このような構成によれば、指定された波形の一部についてより詳細な情報を取得することが容易になる。
【0035】
図5の(B)において破線で囲まれた領域Rには、トリミング画像Tに含まれる波形の一部の付帯情報が表示されうる。付帯情報とは、当該波形の一部に関連付けられて記録された波形以外の情報を意味する。付帯情報としては、当該波形に係る生体パラメータの名称、特徴的な測定値(最大値、最小値、平均値など)、アラーム情報(測定値の所定範囲からの逸脱、不整脈判定など)、測定時刻情報、測定時刻に関連付けられたイベント情報などが例示されうる。
【0036】
このような構成によれば、ディスプレイ12の限られた表示領域を最大限に活用しつつ、ユーザによる情報確認を支援しうるより多くの情報を提供できる。
【0037】
図4の(A)と(B)に示された例においては、波形の一部を指定してトリミング画像Tを表示させるためにユーザインターフェース13が受け付ける所定の操作は、タッチパネル装置に対して行なわれるピンチアウト操作である。
【0038】
このような構成によれば、初めにディスプレイ12に表示された生体情報の一部を、直観的かつ容易に指定できる。したがって、携帯情報端末1の比較的小さな表示領域に多くの生体情報が表示される場合において、ユーザによる情報の確認作業を支援できる。
【0039】
上記の生体情報管理方法は、携帯情報端末1のプロセッサが生体情報管理プログラムを実行することによって実現される。当該プログラムは、プロセッサと協働するメモリに予め組み込まれていてもよいし、当該プログラムを記憶している記憶媒体から読み出してもよい。そのような記憶媒体は、SDカードやUSBメモリのような可搬型記憶媒体として提供されてもよいし、携帯情報端末1が通信ネットワークを介して接続可能なサーバ装置が備える記憶媒体であってもよい。
【0040】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための例示にすぎない。上記の実施形態に係る構成は、本発明の趣旨を逸脱しなければ、適宜に変更・改良されうる。
【符号の説明】
【0041】
1:携帯情報端末、11:無線通信装置、12:ディスプレイ、13:ユーザインターフェース、14:制御部、2:センサ、S:センサ信号、T:トリミング画像