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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】建築板
(51)【国際特許分類】
   B27D 1/04 20060101AFI20220708BHJP
   B27K 5/00 20060101ALI20220708BHJP
   B32B 21/13 20060101ALI20220708BHJP
   B32B 21/14 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
B27D1/04 C
B27K5/00 F
B32B21/13
B32B21/14
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018059633
(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公開番号】P2019171591
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】304046269
【氏名又は名称】後藤木材株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390030340
【氏名又は名称】株式会社ノダ
(74)【代理人】
【識別番号】100085589
【弁理士】
【氏名又は名称】▲桑▼原 史生
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆行
(72)【発明者】
【氏名】杉山 憲治
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-52703(JP,A)
【文献】特開2012-56303(JP,A)
【文献】特開2006-192817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27D 1/00 - 5/00
B27K 5/00
B27M 1/00 - 3/00
B32B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一枚に節がある単位構成板が複数枚積層されてなる木質積層板を圧密処理して得られる建築板であって、節は圧縮変形せずにそのまま残るがその上方および/または下方に隣接する一または複数の単位構成板における節対応部分が節に圧縮されて変形されてなる表面平滑な建築板。
【請求項2】
単位構成板が針葉樹の単板または挽き板であり、木質積層板が針葉樹合板、針葉樹LVL、針葉樹集成材および針葉樹CLTのいずれか一またはこれらの任意複合板である、請求項1記載の建築板。
【請求項3】
節を有する単位構成板が木質積層板の表面に位置する表面板であり、該表面板の下方に位置する一または複数枚の単位構成板が表面板の節対応部分で圧密処理の圧縮率より大きく圧縮変形している、請求項1または2記載の建築板。
【請求項4】
節を有する単位構成板が木質積層板の中間に位置する中間板であり、該中間板の上方および下方に位置する一または複数枚の単位構成板が中間板の節対応部分で圧密処理の圧縮率より大きく圧縮変形している、請求項1または2記載の建築板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は床材、家具、棚板などに使用される建築板に関し、特に、店舗などで使用される土足対応可能な床材として好適に使用される建築板に関する。
【背景技術】
【0002】
店舗などで使用される土足対応可能な床材は、表面が硬く傷がつきにくい物性を有することが要求され、このような床材を木質材を主材として構成するための技術として圧密処理が知られている。圧密処理は、主として無垢材を対象として行われており、一対の加熱プレート間に対象材を挟んで両側から長時間熱圧し、水蒸気処理することにより、全体を略均一に圧縮して密度を大きくし、硬度を増大させるものであり、特許文献1などに公知である。圧密処理された木材は、水に濡れても元に戻らず、永久的に形状を持続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-183631号公報
【文献】特許第5754836号公報(段落0005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載されるように、節を有する木材(無垢材)を圧密処理すると、1)節部を圧密しきれないので、節部表面が膨れた状態となり、平滑にならない、2)節部に割れや亀裂が発生する、3)節部から溶出したヤニ等の樹脂分が平板プレス機の熱盤に付着し、圧密木材を熱盤から容易に取り出すことができなくなる、4)節部が黒褐色になり、意匠感を損なう、5)圧密する際に、平板プレス機の熱盤の表面を窪ませてしまう等の問題が発生する(段落0005の記載から引用)こと、また、節部が座屈破壊して押し潰されると節部の周辺についても木材の繊維方向に割れが発生することから、節を有する木材は圧密処理には適さないものと考えられていた。
【0005】
本出願人は、良質な広葉樹単板が枯渇化している現状に鑑みて、針葉樹単板を用いた合板(針葉樹合板)を圧密処理することを検討した。針葉樹単板は公知のように節を多く有することから、上記のような問題ないし欠点を生じさせないような針葉樹合板を得るために考察と実験を重ねて、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、節を有する板を積層してなる木質積層板(針葉樹単板など)を圧密処理して店舗フロアや家具、棚板などに好適に用いることができる建築板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に係る本発明は、少なくとも一枚に節がある単位構成板が複数枚積層されてなる木質積層板を圧密処理して得られる建築板であって、節は圧縮変形せずにそのまま残るがその上方および/または下方に隣接する一または複数の単位構成板における節対応部分が節に圧縮されて変形されてなる表面平滑な建築板である。
【0008】
請求項2に係る本発明は、請求項1の建築板において、単位構成板が針葉樹の単板または挽き板であり、木質積層板が針葉樹合板、針葉樹LVL、針葉樹集成材および針葉樹CLTのいずれか一またはこれらの任意複合板であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る本発明は、請求項1または2記載の建築板において、節を有する単位構成板が木質積層板の表面に位置する表面板であり、該表面板の下方に位置する一または複数枚の単位構成板が表面板の節対応部分で圧密処理の圧縮率より大きく圧縮変形していることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る本発明は、請求項1または2記載の建築板において、節を有する単位構成板が木質積層板の中間に位置する中間板であり、該中間板の上方および下方に位置する一または複数枚の単位構成板が中間板の節対応部分で圧密処理の圧縮率より大きく圧縮変形していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、少なくとも一枚に節がある単位構成板が複数枚積層されてなる木質積層板を対象として圧密処理して建築板が得られる。圧密処理後の木質積層板において、高密度で硬い節はほとんど圧縮されないが、その上方および/または下方に隣接する一または複数の単板における節対応部分(節の直上/直下/近傍部分)が節に圧縮されて変形する。すなわち、圧密処理したときの節による影響は、その上下に隣接する一または複数枚の単板の節対応部分が圧密処理における圧縮率より大きく圧縮することによって吸収することができるので、圧密処理後の木質積層板および建築板は平面平滑性を損なわない。これにより、高強度で意匠性に優れた建築板が得られる。
【0012】
また、節を有する単位構成板の上下の少なくとも一方に隣接して他の単位構成板が存在するので、節が圧縮されない分をその上下に隣接する他の単位構成板の圧縮ないし変形で補うことができる。したがって、圧密処理によって節に割れや亀裂が生じることがなく、実用的価値および商品価値を損なわない。また、節が無理に圧縮されないので、ヤニの溶出が抑制され、熱盤への付着量も少なくなるので、圧密処理後の木質積層板を熱盤から容易に取り出すことができる。
【0013】
さらに、木質積層板の表面板に節がある場合は、塗装などの表面化粧層が形成されていても、表面板の節が建築板の表面に現れるので、木質感が強調された独特の意匠性を有する建築板が得られる。すなわち、既述した特許文献2に記載される不利欠点は、木質積層板を圧密処理して建築板とする本発明によれば、すべて解消させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態における圧密処理前の針葉樹合板を示す斜視図(a)および圧密処理後の針葉樹合板を示す斜視図(b)である。この実施形態では、節を有する針葉樹単板が針葉樹合板の表面単板として用いられている。
図2図1の実施形態における圧密処理前の針葉樹合板の節のある部分の断面図(a)および圧密処理後の針葉樹合板の同部分の断面図(b)である。
図3】本発明の別の実施形態における圧密処理前の針葉樹合板の節のある部分の断面図(a)および圧密処理後の針葉樹合板の同部分の断面図(b)である。この実施形態では、節を有する針葉樹単板が針葉樹単板の中間単板として用いられている。
図4】本発明のさらに別の実施形態における圧密処理前の針葉樹合板の節のある部分の断面図(a)および圧密処理後の針葉樹合板の同部分の断面図(b)である。この実施形態では、節を有する針葉樹単板が針葉樹単板の表面単板、中間単板および裏面単板として用いられている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1および図2を参照して、本発明の一実施形態による建築板について説明する。この建築板10は、9枚の針葉樹単板を繊維方向を互い違いに直交させて積層した9プライ針葉樹合板11’(図1(a),図2(a))を常法(たとえば特許文献1の段落0063~0077に記載)により圧密処理して得た9プライ針葉樹合板11の表面に塗装などによる表面化粧層12が形成されてなる(図1(b),図2(b))。
【0016】
すなわち、この建築板10は、9枚のヒノキ単板からなる9プライ合板11’(たとえば、厚さ24mmまたは28mm、平面寸法910mm×1820mm)を約半分の厚さに圧密処理して得た圧密合板11に対し、表面切削および実加工を施すと共に塗装による表面化粧層12を形成して、床材として使用する建築板10としたものである。ヒノキのような針葉樹の単板には節を有するものが多く、この実施例では表面単板11aに節13がある。
【0017】
図2に模式的に示されるように、この圧密処理前の針葉樹合板11’を常法により上下熱盤間で圧密処理すると、節13のない部分では各単板11a~11iが約半分の厚さに圧縮されるが、表面単板11aが有する高密度で硬い節13の部分はほとんど圧縮されないため、その下方に隣接する一または複数の単板の節直下部分が節13に圧縮されて変形する。
【0018】
図示の例では、表面単板11aの下方に隣接する2枚の単板11b,11cが節13の直下およびその近傍部分において節13による圧縮を受けて大きく変形しているが、節13による圧縮を受けて変形する単板の枚数や変形の程度は、表面単板11aが有する節13の大きさや位置、圧密処理における圧縮率などによって異なる。
【0019】
図3に示す実施形態による建築板10では、節13を有する中間単板11eを含む9枚の針葉樹単板を繊維方向を互い違いに直交させて積層した9プライ針葉樹合板11’(図3(a))を圧密処理して得た9プライ針葉樹合板11の表面に塗装などによる表面化粧層12が形成されている(図3(b))。すなわち、図1および図2に示す実施形態による建築板10では、節13を有する単板が表面単板11aであるのに対し、この実施形態による建築板10では、節13を有する単板が中間単板11eである点で異なっている。
【0020】
この実施形態による圧密処理前の針葉樹合板11’を常法により上下熱盤間で圧密処理すると、節13のない部分では各単板11a~11iが約半分の厚さに圧縮されるが、中間単板11eが有する高密度で硬い節13の部分はほとんど圧縮されないため、その上方および下方に隣接する一または複数の単板の節直上部分および直下部分が節13に圧縮されて変形する。
【0021】
図示の例では、中間単板11eの上方および下方に隣接する各1枚の単板11d,11fが節13の直上/直下およびそれらの近傍部分で節13による圧縮を受けて大きく変形しているが、節13による圧縮を受けて変形する単板の枚数や変形の程度は、中間単板11eが有する節13の大きさや位置、圧密処理における圧縮率などによって異なる。
【0022】
上記から明らかなことであるので図示しないが、他の中間単板11b~11d,11f~11hが節13を有する場合も、その上方および下方に隣接する一または複数の単板の節直上部分および直下部分が節13に圧縮されて変形する。
【0023】
図4に示す実施形態による建築板10では、節13を有する表面単板11a、中間単板11eおよび裏面単板11iを含む9枚の針葉樹単板を繊維方向を互い違いに直交させて積層した9プライ針葉樹合板11’(図4(a))を圧密処理して得た9プライ針葉樹合板11の表面に塗装などによる表面化粧層12が形成されている(図4(b))。すなわち、図1および図2に示す実施形態による建築板10では、節13を有する単板が表面単板11aであり、また、図3に示す実施形態による建築板10では、節13を有する単板が中間単板11eであるのに対し、この実施形態による建築板10では、節13を有する単板が表面単板11a、中間単板11eおよび裏面単板11iである点で異なっている。
【0024】
この実施形態による圧密処理前の針葉樹合板11’を常法により上下熱盤間で圧密処理すると、節13のない部分では各単板11a~11iが約半分の厚さに圧縮されるが、表面単板11a、中間単板11eおよび裏面単板11iが有する高密度で硬い節13の部分はほとんど圧縮されないため、その上方および下方に隣接する一または複数の単板の節直上部分および直下部分が節13に圧縮されて変形する。
【0025】
図示の例では、表面単板11a、中間単板11eおよび裏面単板11iの節13が厚さ方向に重なって位置しているため、これら単板の間に位置する中間単板11b~11d,11f~11hが節13の直上/直下およびそれらの近傍部分でが節13による圧縮を受けて大きく変形しているが、節13による圧縮を受けて変形する単板の枚数や変形の程度は、これらの単板が有する節13の大きさや位置、圧密処理における圧縮率などによって異なる。
【0026】
以上に本発明の実施形態の数例について図面を参照して説明したが、針葉樹合板11’における節13を有する単板の位置や枚数、節13同士の厚さ方向における位置関係などの要因は様々に異なり、したがって、圧密処理して得られる針葉樹合板11における各単板の変形の状態や程度も様々に異なる。しかしながら、図4に示す実施形態のように複数枚の単板の節13が厚さ方向において完全に重なり合うことは実際には稀であるから、圧密処理したときの節13による影響は、その上下に隣接する一または複数枚の(節のない)単板が圧密処理における圧縮率より大きく圧縮することによって吸収するので、表裏平滑な針葉樹合板11が得られる。
【0027】
すなわち、特許文献2を引用して既述したように、節のある無垢材を圧密処理を行うと節が圧縮されないことによって表面平滑性が損なわれるなどの問題が生ずるが、針葉樹単板11a~11iを複数枚積層してなる針葉樹合板11’を圧密処理する本発明によれば、節13が圧縮されないことによる影響をその上下に隣接する単板が圧縮ないし変形することによって吸収するので、表面平滑性が損なわれない。したがって、平板プレス機の熱盤の表面をくぼませてしまうこともない。
【0028】
また、節が圧縮されない分をその上下に隣接する単板の圧縮ないし変形で補うことができ、節を無理に圧縮することがないので、圧密処理によって節に割れや亀裂が生じることがなく、ヤニの溶出を抑制し、熱盤への付着量も少なくなるので、圧密処理後の木質積層板11を熱盤から容易に取り出すことができる。さらに、表面単板11aに節13がある場合は、塗装などの表面化粧層12が形成されていても、表面単板11aの節13が建築板10の表面に現れるので、木質感が強調された外観が得られる。すなわち、既述した特許文献2に記載される不利欠点は、針葉樹合板11’を圧密処理する本発明によれば、すべて解消させることができる。
【0029】
以上に述べたような作用効果は、単板を繊維方向を直交させて複数枚積層してなる合板に限らず、単板を繊維方向を平行にして複数枚積層してなるLVL(単板積層材)、挽き板を繊維方向を直交させて複数枚積層してなるCLT(クロスラミネーテッドティンバー)、挽き板を繊維方向を平行にして複数枚積層してなる集成材のいずれか一またはこれらの任意複合板など、単位構成板(単板または挽き板)を複数枚積層してなる木質積層板を圧密処理した場合にも同様に発揮することができる。すなわち、本発明は、少なくとも一の単位構成板が節を有する木質積層板を対象として適用可能である。
【符号の説明】
【0030】
10 建築板 11 針葉樹合板(木質積層板) 11a~11i 針葉樹単板(単位構成板) 12 表面化粧層 13 節
図1
図2
図3
図4