(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】通信システム
(51)【国際特許分類】
H04L 61/5092 20220101AFI20220708BHJP
H04L 61/5038 20220101ALI20220708BHJP
H04L 12/28 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
H04L61/5092
H04L61/5038
H04L12/28 200Z
(21)【出願番号】P 2018062491
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】特許業務法人山王内外特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100101133
【氏名又は名称】濱田 初音
(74)【代理人】
【識別番号】100199749
【氏名又は名称】中島 成
(74)【代理人】
【識別番号】100188880
【氏名又は名称】坂元 辰哉
(74)【代理人】
【識別番号】100197767
【氏名又は名称】辻岡 将昭
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】西田 千穂
【審査官】羽岡 さやか
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-267835(JP,A)
【文献】特開平03-127531(JP,A)
【文献】特開2002-325079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 61/00-61/59
H04L 12/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信線を介して接続される上位装置及び複数の下位装置を備え、
前記上位装置は、
アドレスが記録される上位テーブルを保持する上位保持部と、
電文の受信を行う上位受信部と、
前記上位テーブルに記録されている使用中のアドレスをそれぞれ送信先アドレスとした電文である状態要求電文をポーリングセレクション方式で送信する上位送信部とを備え、
前記上位保持部は、規定回数以上、前記上位受信部により状態要求電文に対する応答を示す電文である応答電文が受信されない前記下位装置が存在する場合に、当該下位装置に対する通信異常フラグをオンに切替え、前記上位受信部により当該下位装置からの応答電文が受信された場合に、当該通信異常フラグをオフに戻し、
前記上位送信部は、前記上位保持部により通信異常フラグがオフに戻された場合に、当該通信異常フラグに対応する前記下位装置に対して、前記上位テーブルに関する情報を送信し、
前記下位装置は、
アドレスが記録される下位テーブルを保持する下位保持部と、
アドレスを仮設定する設定部と、
前記設定部により仮設定されたアドレスが、前記下位テーブルにおいて、前記下位装置のアドレスとして登録されている使用中のアドレスであるかを確認する確認部と、
前記確認部によりアドレスが前記下位テーブルにおいて使用中のアドレスではないことが確認された場合に、当該下位テーブルに、当該アドレスを自機のアドレスとして登録する下位登録部と、
電文の受信を行う下位受信部と、
前記下位受信部により自機宛ての状態要求電文が受信された場合に、応答電文を前記上位装置に送信する下位送信部とを備え、
前記下位保持部は、前記下位受信部により前記上位テーブルに関する情報が受信された場合に、前記下位テーブルの内容を更新する
ことを特徴とす
る通信システム。
【請求項2】
前記下位装置は、
前記下位登録部により登録されたアドレスを通知する電文であるアドレス決定電文を、自機に接続される全ての装置で共通なアドレスである共通アドレスに送信する下位送信部と、
電文の受信を行う下位受信部とを備え、
前記下位登録部は、前記下位受信部によりアドレス決定電文が受信された場合に、前記下位テーブルに、当該アドレス決定電文により通知されたアドレスを、当該アドレス決定電文の送信元である前記下位装置のアドレスとして登録する
ことを特徴とする請求項1記載の通信システム。
【請求項3】
前記設定部は、前記確認部によりアドレスが前記下位テーブルにおいて使用中のアドレスであることが確認された場合に、異なるアドレスへの仮設定を行う
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の通信システム。
【請求項4】
前記下位装置は、
前記下位登録部により登録されたアドレスを通知する電文であるアドレス決定電文を、自機に接続される全ての装置で共通なアドレスである共通アドレスに送信する下位送信部を備え、
前記上位装置は、
アドレスが記録される上位テーブルを保持する上位保持部と、
電文の受信を行う上位受信部と、
前記上位受信部によりアドレス決定電文が受信された場合に、前記上位テーブルに、当該アドレス決定電文により通知されたアドレスを、当該アドレス決定電文の送信元である前記下位装置のアドレスとして登録する上位登録部とを備えた
ことを特徴とする請求項1記載の通信システム。
【請求項5】
前記上位装置は、
アドレスが記録される上位テーブルを保持する上位保持部と、
電文の受信を行う上位受信部と、
前記上位テーブルに記録されている全てのアドレスをそれぞれ送信先アドレスとした電文である通信確認電文をポーリングセレクション方式で送信する上位送信部と、
前記上位受信部により通信確認電文に対する応答を示す電文である応答電文が受信された場合に、前記上位テーブルに、当該通信確認電文の送信先アドレスを、当該応答電文の送信元である前記下位装置のアドレスとして登録する上位登録部とを備え、
前記下位装置は、
電文の受信を行う下位受信部と、
前記下位受信部により自機宛ての通信確認電文が受信された場合に、応答電文を前記上位装置に送信する下位送信部とを備えた
ことを特徴とする請求項1記載の通信システム
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通信線を介して接続される上位装置及び複数の下位装置を備えた通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、通信システムでは、上位装置と複数の下位装置との間で通信を行うため、下位装置に対するアドレスを設定している(例えば特許文献1参照)。この特許文献1に開示された通信システムでは、下位装置は予めランダム数から成るシリアル番号をアドレスとして設定する。そして、下位装置のうちの1台が親局となり、この親局が、シリアル番号が重複する下位装置を検出した場合にシリアル番号の変更を行う。これにより、下位装置はアドレス重複を回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の通信システムでは、下位装置のアドレス重複を検知するために複雑な工程を経る必要がある。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、従来構成に対してより簡易に、下位装置に対するアドレスの重複を回避可能な通信システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る通信システムは、通信線を介して接続される上位装置及び複数の下位装置を備え、上位装置は、アドレスが記録される上位テーブルを保持する上位保持部と、電文の受信を行う上位受信部と、上位テーブルに記録されている使用中のアドレスをそれぞれ送信先アドレスとした電文である状態要求電文をポーリングセレクション方式で送信する上位送信部とを備え、上位保持部は、規定回数以上、上位受信部により状態要求電文に対する応答を示す電文である応答電文が受信されない下位装置が存在する場合に、当該下位装置に対する通信異常フラグをオンに切替え、上位受信部により当該下位装置からの応答電文が受信された場合に、当該通信異常フラグをオフに戻し、上位送信部は、上位保持部により通信異常フラグがオフに戻された場合に、当該通信異常フラグに対応する前記下位装置に対して、上位テーブルに関する情報を送信し、下位装置は、アドレスが記録される下位テーブルを保持する下位保持部と、アドレスを仮設定する設定部と、設定部により仮設定されたアドレスが、下位テーブルにおいて、下位装置のアドレスとして登録されている使用中のアドレスであるかを確認する確認部と、確認部によりアドレスが下位テーブルにおいて使用中のアドレスではないことが確認された場合に、当該下位テーブルに、当該アドレスを自機のアドレスとして登録する下位登録部と、電文の受信を行う下位受信部と、下位受信部により自機宛ての状態要求電文が受信された場合に、応答電文を上位装置に送信する下位送信部とを備え、下位保持部は、下位受信部により前記上位テーブルに関する情報が受信された場合に、下位テーブルの内容を更新することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、上記のように構成したので、従来構成に対してより簡易に、下位装置に対するアドレスの重複を回避可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】この発明の実施の形態1に係る通信システムの構成例を示す図である。
【
図2】この発明の実施の形態1に係る上位装置の構成例を示す図である。
【
図3】この発明の実施の形態1に係る下位装置の構成例を示す図である。
【
図4】この発明の実施の形態1に係る下位装置によるアドレス設定動作の一例を示すフローチャート図である。
【
図5】この発明の実施の形態1に係る上位装置によるアドレス収集動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】この発明の実施の形態1に係る上位装置による復旧した下位装置に対するテーブル情報提示動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7A、
図7Bは、この発明の実施の形態1に係る上位装置及び下位装置のハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る通信システムの構成例を示す図である。
通信システムは、
図1に示すように、通信線を介して接続される上位装置1及び複数の下位装置2を備えている。この通信システムは、RS-485通信を採用し、上位装置1から複数の下位装置2に対してポーリングセレクション方式のシリアル通信を行う。
【0010】
上位装置1は、
図2に示すように、保持部(上位保持部)101、モード設定部102、電文作成部103、電文受信部(上位受信部)104、電文送信部(上位送信部)105、送信制御部106及び登録部(上位登録部)107を有している。
【0011】
保持部101は、アドレス(論理的アドレス)が記録されるテーブル(上位テーブル)を保持する。初期状態では、テーブルには、アドレス設定において下位装置2に対して設定可能な番号のアドレスが全て未使用の状態(下位装置2のアドレスとして登録されていない状態)で記録されている。
また、保持部101は、アドレスが登録済みである下位装置2の状態を管理している。保持部101は、通信異常が発生した下位装置2が存在する場合、すなわち、規定回数以上、電文受信部104により後述する状態要求電文に対する応答電文が受信されない下位装置2が存在する場合、当該下位装置2に対する通信異常フラグをオフからオンに切替える。その後、保持部101は、電文受信部104により上記下位装置2からの応答電文が受信された場合には、上記通信異常フラグをオンからオフに戻す。
【0012】
図1では、アドレス設定において下位装置2に対して設定可能なアドレスの番号が1~240である場合を想定している。また
図1では、下位装置(No.3)ではアドレス(3)が登録され、下位装置(No.4)ではアドレス(4)が登録され、その他の下位装置2ではアドレスが未登録である場合を示している。また、アドレスが未登録の下位装置2には、初期のアドレスとして、事前に決められた第1の仮アドレスが登録されている。第1の仮アドレスは、アドレス設定において下位装置2に対して設定可能な番号とは異なる番号のアドレスである。
図1では、第1の仮アドレスの番号は254となっている。
【0013】
なお、保持部101としては、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically EPROM)等の不揮発性又は揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、又はDVD(Digital Versatile Disc)等が該当する。
【0014】
なお
図2では、上位装置1の内部に保持部101が設けられた場合を示した。しかしながら、これに限らず、上位装置1の外部に保持部101が設けられてもよい。
【0015】
モード設定部102は、上位装置1の動作モードを設定する。上位装置1の動作モードとしては、通常モード及び試運転モードがある。通常モードは、通常動作を行うモードであり、下位装置2の運転情報をモニタするためのモードである。試運転モードは、下位装置2のアドレスを確認するためのモードである。
【0016】
電文作成部103は、電文を作成する。
この電文作成部103は、上位装置1が通常モードである場合に、アドレスが登録済みである下位装置2を対象とし、運転情報の送信を要求する電文(状態要求電文)を作成する。この状態要求電文は、識別コード、電文の種別、電文の送信元である自機(上位装置1)のアドレス(送信元アドレス)、及び、電文の送信先のアドレス(送信先アドレス)等を示す情報を有する。なお、電文作成部103は、送信先アドレスとして、自身のテーブルに記録されている使用中のアドレス(下位装置2のアドレスとして登録されているアドレス)を用いる。
【0017】
また、電文作成部103は、上位装置1が試運転モードである場合に、自身のテーブルに記録されている全てのアドレス先を対象とし、通信を確認する電文(通信確認電文)を作成する。この通信確認電文は、識別コード、電文の種別、電文の送信元である自機のアドレス(送信元アドレス)、及び、電文の送信先のアドレス(送信先アドレス)等を示す情報を有する。なお、電文作成部103は、送信先アドレスとして、自身のテーブルに記録されている全てのアドレス(使用中のアドレス及び未使用のアドレス)をそれぞれ用いる。
【0018】
電文受信部104は、電文の受信を行う。また、電文受信部104は、電文を受信した場合に、電文に含まれる送信先アドレスから当該電文が自機宛ての電文であるかを判断する。そして、電文受信部104は、電文が自機宛ての電文であると判断した場合には当該電文を取得し、電文が自機宛ての電文ではないと判断した場合には当該電文を読み捨てる。
【0019】
電文送信部105は、電文の送信を行う。この電文送信部105は、電文作成部103により状態要求電文が作成された場合に、当該状態要求電文をポーリングセレクション方式で送信する。また、電文送信部105は、電文作成部103により通信確認電文が作成された場合に、当該通信確認電文をポーリングセレクション方式で送信する。また、電文送信部105は、保持部101により通信異常フラグがオンからオフに戻された場合に、当該通信異常フラグに対応する下位装置2に対して、保持部101で保持されているテーブルに関する情報を送信する。
送信制御部106は、電文送信部105による電文の送信を制御する。
【0020】
登録部107は、電文受信部104により後述するアドレス決定電文が受信された場合に、自身のテーブルに、当該アドレス決定電文により通知されたアドレスを、当該アドレス決定電文の送信元である下位装置2のアドレスとして登録する。
また、登録部107は、電文受信部104により通信確認電文に対する応答電文が受信された場合に、自身のテーブルに、当該通信確認電文の送信先アドレスを、当該応答電文の送信元である下位装置2のアドレスとして登録する。
【0021】
下位装置2は、
図3に示すように、保持部(下位保持部)201、電文作成部202、電文受信部(下位受信部)203、電文送信部(下位送信部)204、送信制御部205、設定部206、確認部207及び登録部(下位登録部)208を有している。
【0022】
保持部201は、アドレスが記録されるテーブル(下位テーブル)を保持する。初期状態では、テーブルには、アドレス設定において下位装置2に対して設定可能な番号のアドレスが全て未使用の状態で記録されている。また、初期状態では、保持部201は、自機のアドレスとして第1の仮アドレスを記録している。また、保持部201は、電文受信部203によりテーブルに関する情報が受信された場合には、当該情報に基づいて、自身のテーブルの内容を更新する。
なお、保持部201としては、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の不揮発性又は揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、又はDVD等が該当する。
【0023】
なお
図3では、下位装置2の内部に保持部201が設けられた場合を示した。しかしながら、これに限らず、下位装置2の外部に保持部201が設けられてもよい。
【0024】
電文作成部202は、電文を作成する。
この電文作成部202は、登録部208によりアドレスが登録された場合に、当該登録されたアドレスを通知する電文(アドレス決定電文)を作成する。このアドレス決定電文は、識別コード、電文の種別、電文の送信元である自機のアドレス(送信元アドレス)、及び、電文の送信先のアドレス(送信先アドレス)等を示す情報を有する。なお、電文作成部202は、送信元アドレスとして、登録部208により登録されたアドレスを用いる。また、電文作成部202は、送信先アドレスとして、通信システムで事前に決められている全ての装置(上位装置1及び下位装置2)で共通なアドレスである共通アドレスを用いる。
【0025】
また、電文作成部202は、電文受信部203により自機宛ての状態要求電文が受信された場合に、当該状態要求電文に対する応答を示す電文(応答電文)を作成する。応答電文は、自機の運転情報を通知する電文である。この応答電文は、識別コード、電文の種別、電文の送信元である自機のアドレス(送信元アドレス)、及び、電文の送信先である上位装置1のアドレス(送信先アドレス)等を示す情報に加え、自機の運転情報(運転状態、温度情報及び冷媒状態等を示す情報)を有する。
【0026】
また、電文作成部202は、電文受信部203により自機宛ての通信確認電文が受信された場合に、当該通信確認電文に対する応答を示す電文(応答電文)を作成する。この応答電文は、識別コード、電文の種別、電文の送信元である自機のアドレス(送信元アドレス)、及び、電文の送信先である上位装置1のアドレス(送信先アドレス)等を示す情報を有する。
【0027】
電文受信部203は、電文の受信を行う。また、電文受信部203は、電文を受信した場合に、電文に含まれる送信先アドレスから当該電文が自機宛ての電文であるかを判断する。そして、電文受信部203は、電文が自機宛ての電文であると判断した場合には当該電文を取得し、電文が自機宛ての電文ではないと判断した場合には当該電文を読み捨てる。
【0028】
電文送信部204は、電文の送信を行う。この電文送信部204は、電文作成部202によりアドレス決定電文が作成された場合に、当該アドレス決定電文を送信する。また、電文送信部204は、電文作成部202により応答電文が作成された場合に、当該応答電文を送信する。
送信制御部205は、電文送信部204による電文の送信を制御する。
【0029】
設定部206は、アドレスを仮設定する。また、設定部206は、確認部207によりこのアドレスが自身のテーブルにおいて使用中のアドレスであることが確認された場合には、異なるアドレスへの仮設定を行う。
【0030】
確認部207は、設定部206によりアドレスが仮設定された場合に、当該アドレスが自身のテーブルにおいて使用中のアドレスであるかを確認する。
【0031】
登録部208は、確認部207によりアドレスが自身のテーブルにおいて使用中のアドレスではないことが確認された場合に、自身のテーブルに、当該アドレスを自機のアドレスとして登録する。
また、登録部208は、電文受信部203によりアドレス決定電文が受信された場合に、自身のテーブルに、当該アドレス決定電文により通知されたアドレスを、当該アドレス決定電文の送信元である下位装置2のアドレスとして登録する。
【0032】
次に、実施の形態1に係る通信システムの動作例について説明する。
まず、下位装置2によるアドレス設定動作の一例について、
図4を参照しながら説明する。以下では、上位装置1及び複数の下位装置2が通信線を介して接続されているものとする。
下位装置2によるアドレス設定動作では、
図4に示すように、まず、設定部206は、アドレスを仮設定する(ステップST401)。なお、設定部206は、任意のアドレスを仮設定可能である。例えば、設定部206は、下位装置2を操作するユーザにより指定されたアドレスを自機のアドレスとして仮設定してもよい。また、上位装置1が、テーブルに記録されている未使用のアドレスのうちの1つを、アドレスが未登録である下位装置2に通知する機能を有する場合には、設定部206は、この通知された未使用のアドレスがユーザにより選択された場合に当該未使用のアドレスを自機のアドレスとして仮設定してもよい。
【0033】
次いで、確認部207は、設定部206により仮設定されたアドレスが自身のテーブルにおいて使用中のアドレスであるかを確認する(ステップST402)。
【0034】
このステップST402において、確認部207がアドレスが自身のテーブルにおいて使用中のアドレスであることを確認した場合には、シーケンスはステップST401に戻り、設定部206は、異なるアドレスへの仮設定を行う。
なおここでは、確認部207によりアドレスが自身のテーブルにおいて使用中のアドレスであることが確認された場合に、設定部206が異なるアドレスへの仮設定を行うものとした。しかしながら、これに限らず、例えば、確認部207によりアドレスが自身のテーブルにおいて使用中のアドレスであることが確認された場合に、下位装置2が有する表示器(不図示)にアドレスが重複している旨を表示(LEDランプの点灯等)してアドレス設定動作を終了してもよい。
【0035】
一方、ステップST402において、確認部207がアドレスが自身のテーブルにおいて使用中のアドレスではないことを確認した場合には、電文作成部202はアドレス決定電文を作成する(ステップST403)。なお、電文作成部202は、送信先アドレスとして共通アドレスを用いる。
次いで、電文送信部204は、送信制御部205による制御に従い、電文作成部202により作成されたアドレス決定電文を送信する(ステップST404)。なお、ポーリングセレクション方式では、通常、上位装置1から状態要求電文等の要求電文を送信して下位装置2は要求電文に対する応答電文を送信する形式をとるが、ここでは、例外的に、下位装置2から自発的に電文を送信可能としている。また、電文送信部204は、アドレス決定電文を、要求電文及び応答電文が送信される送信期間の空き時間を利用して送信する。
【0036】
ここで、共通アドレスは、通信システムが有する上位装置1及び複数の下位装置2の全てにおいて共通なアドレスである。よって、下位装置2から送信されたアドレス決定電文は、上位装置1及び当該下位装置2以外の下位装置2において自機宛ての電文として取得される。そして、これらの装置は、自身のテーブルに、当該アドレス決定電文により通知されたアドレスを、当該アドレス決定電文の送信元である下位装置2のアドレスとして登録する。
【0037】
また、登録部208は、自身のテーブルに、設定部206により仮設定されたアドレスを自機のアドレスとして登録する(ステップST405)。
【0038】
このように、実施の形態1に係る通信システムでは、下位装置2に対するアドレス設定の際に、下位装置2自身がアドレスを監視することでアドレス重複を検知している。これにより、従来構成に対してより簡易に、下位装置2に対するアドレスの重複を回避可能である。
【0039】
なお上記では、上位装置1及び複数の下位装置2が通信線を介して接続された場合での、アドレス設定を示した。一方、上位装置1が接続されておらず、複数の下位装置2のみが通信線を介して接続されている場合には、ポーリングセレクションは存在しないが、基本的な動作は上記と同様である。また、この場合には、下位装置2によるアドレス決定電文は上位装置1には送信されない。そして、上位装置1が下位装置2に対して接続された後、上位装置1は、例えば
図5に示す手順で、下位装置2のアドレスを収集する。
【0040】
上位装置1によるアドレス収集動作では、
図5に示すように、まず、モード設定部102は、動作モードを試運転モードに設定する(ステップST501)。例えば、上位装置1が有する表示器(不図示)に試運転ボタンが表示されており、上位装置1を操作するユーザが試運転ボタンを選択することで、モード設定部102は動作モードを試運転モードに設定する。
【0041】
次いで、電文作成部103は、通信確認電文を作成する(ステップST502)。なお、電文作成部103は、送信先アドレスとして、自身のテーブルに記録されている全てのアドレスをそれぞれ用いる。
【0042】
次いで、電文送信部105は、送信制御部106による制御に従い、電文作成部103により作成された通信確認電文をポーリングセレクション方式で送信する(ステップST503)。
ここで、通信確認電文の送信先アドレスと同一のアドレスを自機のアドレスとして登録している下位装置2は、この通信確認電文を受信して応答電文を作成し、この応答電文を上位装置1に返信する。
【0043】
次いで、電文受信部104は、一定期間内に通信確認電文に対する応答電文を受信したかを判断する(ステップST504)。
このステップST504において、電文受信部104が一定期間内に通信確認電文に対する応答電文を受信した場合には、登録部107は、自身のテーブルに、当該通信確認電文の送信先アドレスを、当該応答電文の送信元である下位装置2のアドレスとして登録する(ステップST505)。その後、シーケンスはステップST502に戻り、上位装置1は、次の送信先アドレスに対する通信確認電文の作成へ移行する。
【0044】
一方、ステップST504において、電文受信部104が一定期間内に通信確認電文に対する応答電文を受信しない場合には、シーケンスはステップST502に戻り、上位装置1は、次の送信先アドレスに対する通信確認電文の作成へ移行する。すなわち、この場合には、上位装置1は、通信確認電文の送信先に下位装置2は存在しないと判断する。
【0045】
ここで、例えば特許文献2に示されるように、上位装置が複数の下位装置に対するアドレス設定を行う通信システムも知られている。この通信システムでは、下位装置のアドレス重複を回避可能である。しかしながら、この通信システムでは、上位装置と下位装置との間での通信が必須となる。そのため、上位装置及び下位装置の配置及び配線が完了した後でないとアドレス設定を実施できない。
これに対し、実施の形態1に係る通信システムでは、上位装置1が下位装置2に接続されているかいないかに関わらず、下位装置2に対するアドレス設定をアドレス重複なく実施可能である。そのため、上位装置1が未設置又は未通電の場合、上位装置1の入れ替え時又はデータ破損の際にも、上位装置1との通信を行うことなく、下位装置2に対するアドレス設定が可能であり、作業利便性が増す。
【文献】特開2006-29769号公報
【0046】
また、通信システムが運用中において、ある下位装置2に通信異常が発生してその後に復旧した場合、その間に別の下位装置2がアドレス設定を行っていると、復旧した下位装置2ではその情報を得ることができない。そこで、上位装置1は、例えば
図6に示す手順で、最新のテーブルに関する情報を上記復旧した下位装置2に対して通知する。なお以下では、上位装置1の保持部101は、通信異常が発生した下位装置2の通信異常フラグをオンとしているものとする。
【0047】
上位装置1による復旧した下位装置2に対するテーブル情報提示動作では、
図6に示すように、まず、電文送信部105は、通信異常が発生した下位装置2に対して状態要求電文をポーリングセレクション方式で送信する(ステップST601)。
次いで、電文受信部104は、一定期間内に状態要求電文に対する応答電文を受信したかを判断する(ステップST602)。このステップST602において、電文受信部104が一定期間内に応答電文を受信しない場合には、シーケンスはステップST601に戻る。
【0048】
一方、ステップST602において、電文受信部104が一定期間内に状態要求電文に対する応答電文を受信した場合には、保持部101は、上記下位装置2に対する通信異常フラグをオフとする(ステップST603)。
次いで、電文送信部105は、保持部101が保持しているテーブルに関する情報を上記下位装置2に送信する(ステップST604)。これにより、復旧した下位装置2は、自身に通信異常が発生してから復旧するまでの間に更新されたテーブルに関する情報を得ることができ、自身のテーブルを最新の状態に更新できる。
【0049】
次に、実施の形態1に係る通信システムの適用例について説明する。
実施の形態1に係る通信システムは、例えば、下位装置2をショーケースの制御コントローラとして用い、上位装置1を複数のショーケースを統括管理する上位コントローラとして用いた冷却システムに適用可能である。
また、実施の形態1に係る通信システムは、例えば、下位装置2を空調機の制御コントローラとして用い、上位装置1を複数の空調機を統括管理する上位コントローラとして用いた空調システムに適用可能である。
【0050】
上記では、実施の形態1に係る通信システムの適用先として、上記のような冷却システム又は空調システムを挙げたが、通信システムの適用先はこれに限らない。
【0051】
以上のように、この実施の形態1によれば、下位装置2は、アドレスが記録されるテーブルを保持する保持部201と、アドレスを仮設定する設定部206と、設定部206により仮設定されたアドレスが、上記テーブルにおいて使用中のアドレスであるかを確認する確認部207と、確認部207によりアドレスが上記テーブルにおいて使用中のアドレスではないことが確認された場合に、当該テーブルに、当該アドレスを自機のアドレスとして登録する登録部208とを備えた。これにより、実施の形態1に係る通信システムは、従来構成に対してより簡易に、下位装置2に対するアドレスの重複を回避可能である。
【0052】
最後に、
図7を参照して、実施の形態1に係る上位装置1及び下位装置2のハードウェア構成例を説明する。以下では、上位装置1のハードウェア構成例について説明するが、下位装置2についても同様である。
上位装置1における電文受信部104は受信装置により実現され、電文送信部105は送信装置により実現される。また、上位装置1におけるモード設定部102、電文作成部103、送信制御部106及び登録部107の各機能は、処理回路51により実現される。処理回路51は、
図7Aに示すように、専用のハードウェアであってもよいし、
図7Bに示すように、メモリ53に格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、又はDSP(Digital Signal Processor)ともいう)52であってもよい。
【0053】
処理回路51が専用のハードウェアである場合、処理回路51は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものが該当する。モード設定部102、電文作成部103、送信制御部106及び登録部107の各部の機能それぞれを処理回路51で実現してもよいし、各部の機能をまとめて処理回路51で実現してもよい。
【0054】
処理回路51がCPU52の場合、モード設定部102、電文作成部103、送信制御部106及び登録部107の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェア及びファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ53に格納される。処理回路51は、メモリ53に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。すなわち、上位装置1は、処理回路51により実行されるときに、例えば
図5,6に示した各ステップが結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ53を備える。また、これらのプログラムは、モード設定部102、電文作成部103、送信制御部106及び登録部107の手順及び方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。ここで、メモリ53としては、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の不揮発性又は揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、又はDVD等が該当する。
【0055】
なお、モード設定部102、電文作成部103、送信制御部106及び登録部107の各機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェア又はファームウェアで実現するようにしてもよい。例えば、モード設定部102については専用のハードウェアとしての処理回路51でその機能を実現し、電文作成部103、送信制御部106及び登録部107については処理回路51がメモリ53に格納されたプログラムを読み出して実行することによってその機能を実現することが可能である。
【0056】
このように、処理回路51は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0057】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 上位装置、2 下位装置、51 処理回路、52 CPU、53 メモリ、101 保持部(上位保持部)、102 モード設定部、103 電文作成部、104 電文受信部(上位受信部)、105 電文送信部(上位送信部)、106 送信制御部、107 登録部(上位登録部)、201 保持部(下位保持部)、202 電文作成部、203 電文受信部(下位受信部)、204 電文送信部(下位送信部)、205 送信制御部、206 設定部、207 確認部、208 登録部(下位登録部)。