(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】吐出器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/34 20060101AFI20220708BHJP
B65D 47/06 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
B65D47/34 200
B65D47/06 200
B65D47/34 100
(21)【出願番号】P 2018067758
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2020-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】坂田 耕太
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3186960(JP,U)
【文献】特開平09-173922(JP,A)
【文献】特開2004-322041(JP,A)
【文献】特開2012-210603(JP,A)
【文献】特開2012-187463(JP,A)
【文献】登録実用新案第3167653(JP,U)
【文献】特開2010-172864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 11/00
B65D 47/06
B65D 47/34
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方付勢状態で下方移動可能に配設されたステムと、
前記ステムの上端部に装着され、内容液の吐出孔が形成されたノズル筒を有する吐出ヘッドと、
前記ステムの上下動に連係するピストンと、
前記ピストンが上下摺動可能に収容されたシリンダと、を備え、
前記ステムを前記シリンダに対して下方移動させたときに、前記シリンダ内の内容液が前記ステム内を通して前記吐出孔から吐出される吐出器であって、
前記ノズル筒の先端部に外嵌された外筒体と、前記外筒体内に回転可能に嵌合された内筒体と、を有し、
前記外筒体および前記内筒体のうち少なくとも一方の内周面は、前記吐出孔に連通する発泡空間を形成し、
前記外筒体には、前記発泡空間に向けて外気を導入させる外気導入孔が形成され、
前記内筒体には、前記外筒体と前記内筒体との相対回転に伴って、前記外気導入孔の開口面積を変化させる遮蔽部が形成され、
前記発泡空間の開口端と前記吐出孔との間には障壁が設けられていない、吐出器。
【請求項2】
前記外筒体と前記内筒体との間に、前記外筒体に対する前記内筒体の回転量を規制する規制手段が配設されている、請求項1に記載の吐出器。
【請求項3】
前記内筒体は、前記ノズル筒のノズル軸方向および前記ノズル軸に交差するノズル径方向に沿って延びる板状のレバーを有する、請求項1または2に記載の吐出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるような、上方付勢状態で下方移動可能に配設されたステムと、ステムの上端部に装着され、内容液の吐出孔が形成された吐出ヘッドと、ステムの上下動に連係する筒状のピストンと、ピストンが上下摺動可能に収容されたシリンダと、を備え、ステムおよびピストンをシリンダに対して下方移動させたときに、シリンダ内の内容液がステム内を通して吐出孔から吐出される吐出器が知られている。
この吐出器では、まずステムがピストンとともに下方移動し、シリンダの内圧を上昇させ、その後、ステムがピストンに対して下方移動し、シリンダ内の内容液がステム内を通して吐出ヘッド内に至り、吐出孔から吐出される。また、吐出孔の上流側には発泡用メッシュが設けられており、内容物は泡状になって吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の吐出器では、泡質の切り替えを可能とすることが求められている。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、泡質の切り替えが可能な吐出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る吐出器は、上方付勢状態で下方移動可能に配設されたステムと、前記ステムの上端部に装着され、内容液の吐出孔が形成されたノズル筒を有する吐出ヘッドと、前記ステムの上下動に連係するピストンと、前記ピストンが上下摺動可能に収容されたシリンダと、を備え、前記ステムを前記シリンダに対して下方移動させたときに、前記シリンダ内の内容液が前記ステム内を通して前記吐出孔から吐出される吐出器であって、前記ノズル筒の先端部に外嵌された外筒体と、前記外筒体内に回転可能に嵌合された内筒体と、を有し、前記外筒体および前記内筒体のうち少なくとも一方の内周面は、前記吐出孔に連通する発泡空間を形成し、前記外筒体には、前記発泡空間に向けて外気を導入させる外気導入孔が形成され、前記内筒体には、前記外筒体と前記内筒体との相対回転に伴って、前記外気導入孔の開口面積を変化させる遮蔽部が形成され、前記発泡空間の開口端と前記吐出孔との間には障壁が設けられていない。
【0007】
上記態様によれば、ステムをシリンダに対して下方移動させたときに、シリンダ内の内容液がステム内を通して吐出孔から吐出される。この内容液が発泡空間に進入すると、発泡空間内が負圧になり、外気導入孔から発泡空間に外気が導入される。これにより、発泡空間で内容液と外気とが混合されて発泡し、泡状となって発泡空間内から噴出される。なお、内容液の発泡は、特に、発泡空間を形成する外筒体または内筒体の内周面に、内容液と外気との混合流体が衝突することにより発生する。
そして、外筒体と内筒体とを相対回転させることで、遮蔽部が外気導入孔に対して移動し、外気導入孔の開口面積を変化させることができる。これにより、発泡空間への外気の導入量を調整して、泡質の切り替えを行うことが可能となる。
また、外筒体がノズル筒に外嵌され、内筒体が外筒体内に嵌合されている。この構成により、既存の吐出器のノズル筒に軽微な設計変更を加えることで、または設計変更を加えることなく、外筒体および内筒体を当該ノズル筒に取り付けることができる。したがって、例えば既存の吐出器を製造するための金型などを流用することが可能となり、コストダウンを図ることができる。
【0008】
ここで、前記外筒体と前記内筒体との間に、前記外筒体に対する前記内筒体の回転量を規制する規制手段が配設されていてもよい。
【0009】
この場合、規制手段によって、外気導入孔に対する遮蔽部の移動量も規制することができる。これにより、外気導入孔の開口面積を一定の範囲内に規制することができる。
【0010】
また、前記内筒体は、前記ノズル筒のノズル軸方向および前記ノズル軸に交差するノズル径方向に沿って延びる板状のレバーを有していてもよい。
【0011】
この場合、板状のレバーを操作することで、内筒体を外筒体に対して容易に回転させることができる。
【発明の効果】
【0012】
上記態様によれば、泡質の切り替えが可能な吐出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る吐出器に、正倒立両用アダプタが装着された状態を示す縦断面図である。
【
図4】(a)は、
図1の外筒体および内筒体をノズル軸方向から見た図である。(b)は、(a)のB方向矢視図である。
【
図5】(a)は、
図4(a)の状態から内筒体を回転させた図である。(b)は、(a)のB方向矢視図である。
【
図6】(a)は、
図5(a)の状態から内筒体をさらに回転させた図である。(b)は、(a)のB方向矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態に係る吐出器の構成を、
図1~
図6を参照しながら説明する。
図1に示すように、吐出器1は、上方付勢状態で下方移動可能に配設されたステム12と、ステム12の上端部に装着された吐出ヘッド13と、ステム12の上下動に連係するピストン41と、ピストン41が上下摺動可能に収容されたシリンダ42と、を備えている。
【0015】
吐出ヘッド13は、内容液の吐出孔13Aが形成されたノズル筒32を有している。吐出器1は、ステム12をシリンダ42に対して下方移動させたときに、シリンダ42内の内容液がステム12内を通して吐出孔13Aから吐出されるように構成されている。
【0016】
(方向定義)
ここで、ステム12、ピストン41、およびシリンダ42は、それぞれの中心軸線が共通軸上に位置した状態で配設されている。
以下、この共通軸を中心軸線O1といい、中心軸線O1に沿う方向を上下方向という。また、上下方向から見た平面視において、中心軸線O1に交差する方向を径方向といい、中心軸線O1回りに周回する方向を周方向という。
また、ノズル筒32の中心軸線をノズル軸O2といい、ノズル軸O2に沿う方向をノズル軸方向という。ノズル軸方向から見て、ノズル軸O2に交差する方向をノズル径方向といい、ノズル軸O2回りに周回する方向をノズル周方向という。平面視でノズル軸O2が延びる方向を前後方向といい、前後方向に沿ってノズル筒32の根元側を後方といい、ノズル筒32の先端側を前方という。上下方向および前後方向の双方に直交する方向を左右方向という。
【0017】
吐出器1はさらに、容器本体2の口部3に取り付けられる有頂筒状の装着キャップ11と、ステム12を上方付勢するコイルバネ95(付勢部材)と、ステム12から下方に向けて延設され、ピストン41の内側を上下方向に貫くピストンガイド43と、を備えている。
なお図示の例では、吐出器1に、後述する正倒立両用アダプタ200が装着されている。
【0018】
図2に示すように、装着キャップ11は、中央に開口部11cが形成された円環状の頂壁部11aと、頂壁部11aの外周縁から下方に向けて延びる円筒状の周壁部11bと、を有する。周壁部11bの内周面には、容器本体2の口部3における外周面に形成された雄ネジに螺着する雌ネジが形成されている。
【0019】
ステム12は、容器本体2の口部3に上方付勢状態で下方移動可能に立設されている。
ステム12の下部の内径および外径は、ステム12の上部の内径および外径よりも大きい。ステム12の上部と下部との間には、テーパ状の段筒部12Aが形成されている。
図2および
図3に示すように、ステム12とピストン41との間には、ピストン41に対するステム12およびピストンガイド43の下方移動に伴って、ピストン41およびステム12により上下方向の圧縮力が加えられる弾性片25が配設されている。
【0020】
弾性片25は、表裏面が径方向を向き、上下方向に延びる板状に形成されている。弾性片25は、ステム12の下端開口縁に形成され、周方向に等間隔をあけて複数(本実施形態では6つ)配置されている。弾性片25はステム12と一体に形成されている。複数の弾性片25は、互いに同等の形状かつ同等の大きさに形成されている。弾性片25の径方向の大きさ(厚み)は、ステム12の厚みよりも薄くなっている。なお、ステム12および弾性片25は、弾性片25が一定の力が加えられたときに変形するような、ある程度剛性を有する材質、例えばポリプロピレン等で形成される。
【0021】
吐出ヘッド13は、ステム12の上端部に装着された有頂筒状の装着筒部31と、装着筒部31から前方に向けて突設された筒状のノズル筒32と、を有している。
装着筒部31は、ステム12内に嵌合されている。装着筒部31の上端部には、左右方向に突出する軸部10Aが形成されている。軸部10Aは左右方向から見て円形状を呈している。装着筒部31の上端部に、後方に向けて突出する被係止部120が形成されている。
【0022】
被係止部120は、左右方向に開口する一対の肉抜き孔を有するブロック状に形成されている。被係止部120には、後述するストッパー130の規制位置から規制解除位置への移動を抑止するための係合突起122が形成されている。
係合突起122は、被係止部120の後端部から下方に突設されている。係合突起122の下端は、ステム12の上端よりも上方に位置する。係合突起122の後部には、後方に向かうに従い漸次、上方に向けて延びる斜面122aが形成されている。
【0023】
ノズル筒32内には、前後方向に延在する芯棒体35と、芯棒体35の前端部に被着された有頂筒状のチップ36と、が配設されている。
芯棒体35の外周面には、前後方向に延びるとともに、ノズル筒32の内周面との間で内容液の流動を可能とする複数の流路溝部35Aが形成されている。チップ36は、芯棒体35と同軸上に配設されており、内側に芯棒体35が嵌合された円筒状のチップ筒部37と、チップ筒部37の前端部に設けられた端壁部38と、を有している。
【0024】
チップ筒部37は、ノズル筒32内に嵌合されている。端壁部38は、芯棒体35の前端面に当接している。端壁部38のうち芯棒体35の前端面に当接する後面には、芯棒体35の流路溝部35Aに連通するスピン流路38Aが形成されている。端壁部38の中央部分には、スピン流路38Aに連通する吐出孔13Aが前方に向けて開口している。
【0025】
ピストン41は、シリンダ42内に上下摺動可能に嵌合された外筒ピストン51と、外筒ピストン51における径方向の内側に配置され、ピストンガイド43を径方向の外側から囲繞する内筒ピストン52と、外筒ピストン51と内筒ピストン52とを連結する環状連結部53と、を備えている。これら外筒ピストン51、内筒ピストン52、および環状連結部53はそれぞれ、中心軸線O1と同軸に配設されている。図示の例では、外筒ピストン51、内筒ピストン52、および環状連結部53は一体に形成されている。
【0026】
シリンダ42は、多段の円筒状に形成されている。シリンダ42は、上下方向に延在する上筒部62と、上筒部62の下端部から下方に向けて延在し、上筒部62よりも内径および外径が小さい下筒部63と、下筒部63の下端部から下方に向けて延在し、下筒部63よりも内径および外径が小さい小径部64と、上筒部62の下端部と下筒部63の上端部とを接続する環状の段部65と、小径部64から下方に向けて延びる接続筒部69と、を備える。
【0027】
段部65は、ピストン41の外筒ピストン51に上下方向で対向している。ピストン41が下降端位置に位置したとき、外筒ピストン51の下端部が段部65の上面65bに当接する。段部65の上面65bは、径方向外側に向かうに従って漸次下方に向かって延びている。段部65の内周面のうち、少なくとも段部65の上面65bに連なる部分には、下方に向かうに従って漸次縮径するテーパ面65aが形成されている。テーパ面65aは、吐出器1の製造時に、コイルバネ95を下筒部63内に挿入する作業を円滑にする役割を有している。なお、本実施形態では、段部65の上端開口縁から下筒部63の上端部にかけてテーパ面65aが延在しているが、テーパ面65aは段部65の内周面の一部分にのみ形成されていてもよい。
【0028】
上筒部62の上部には、上筒部62の内外を連通させる空気孔62Bが形成されている。上筒部62の上端部には、径方向の外側に向けて突出する円環状の支持板部61が形成されている。支持板部61の上面における外周部に、装着キャップ11の頂壁部11aの下面が当接している。支持板部61と容器本体2の口部3における上端開口縁3aとの間に、第1パッキン66が配設されている。装着キャップ11の周壁部11bが、口部3に螺着されることにより、支持板部61および第1パッキン66が、装着キャップ11の頂壁部11aと、口部3と、の間に固定される。これら支持板部61、上筒部62、下筒部63、および小径部64は、中心軸線O1と同軸に配設されている。
【0029】
支持板部61の上面には、上方に向けて延び、かつ装着キャップ11の開口部11cに挿通された立設筒部60が形成されている。立設筒部60の外径および内径は、上筒部62の外径および内径よりも大きくなっている。立設筒部60の上端開口縁60Aは、ステム12の段筒部12Aと上下方向において同等の位置に位置している。
支持板部61のうち、立設筒部60より径方向の内側に位置する内周部の上面には、環状の第2パッキン56が配設されている。
【0030】
小径部64は、下筒部63の下端部から下方に向けて真っ直ぐ延びる直筒部67と、直筒部67の下端部から下方に向かうに従い漸次、内径および外径が小さくなるテーパ筒部68と、を有している。テーパ筒部68の内側には、弁体44がテーパ筒部68のテーパ面に離着可能に配設されている。
なお、弁体44は、球状に形成された合成樹脂製のいわゆるボール弁とされている。弁体44は、廃棄時における分別の手間を抑制する観点で合成樹脂製とすることが好ましい。また、弁体44は、金属製等であってもよい。さらに、ボール弁に替わる種々の弁体を用いた逆止弁でもよい。
【0031】
テーパ筒部68の内周面には、径方向の外側から内側に向かうに従い漸次、上方に向けて延びる規制突部68Aが突設されている。規制突部68Aの上端の内径は、弁体44の外径よりも小さくなっている。これにより、弁体44が規制突部68Aから上方に離脱するのを規制している。なお、規制突部68Aには、周方向の延在を中断する間隙が形成されている。
【0032】
ピストンガイド43は、ステム12から下方に向けて延びる周筒部43Dおよび底壁部を備える有底筒状に形成されている。底壁部には、径方向の外側に向けて突出する円環状のフランジ部43Aが形成されている。
ピストンガイド43における周筒部43Dの下端部に、外径がフランジ部43Aの上面から上方に向かうに従い漸次、縮径した当接部43Eが形成されている。この当接部43Eに、ピストン41の内筒ピストン52の下端部が当接している。
【0033】
ピストンガイド43の周筒部43Dには、ピストンガイド43内とシリンダ42内とを連通させる連通孔43Bが形成されている。連通孔43Bは、例えば中心軸線O1を径方向で挟む両側に配置されている。連通孔43Bは、内筒ピストン52が当接する当接部43Eよりも上方に位置している。これにより、連通孔43Bとシリンダ42の上筒部62内との連通が遮断されている。
【0034】
ピストンガイド43の周筒部43Dには、ピストンガイド43内とステム12内とを連通する貫通孔43Cが形成されている。貫通孔43Cは、連通孔43Bと同様に、例えば中心軸線O1を径方向で挟む両側に配置されている。貫通孔43Cは、連通孔43Bよりも上方に配置され、ステム12の段筒部12Aにおける内周面に向けて開口している。連通孔43Bおよび貫通孔43Cがピストンガイド43に形成されていることで、ピストンガイド43とピストン41との間、並びにピストンガイド43とステム12との間の空気が滞留するのを防ぐことができる。
ピストンガイド43のうち貫通孔43Cよりも上側に位置する部分は、ステム12内に嵌合している。これにより、ピストンガイド43は、ステム12と共に一体に上下動する。
【0035】
ピストンガイド43の下端部には、下方に向けて突出し、コイルバネ95が外装されるガイド突部43Fが形成されている。ガイド突部43Fは、表裏面が周方向を向く板体が中心軸線O1回りに複数配置されて構成されている。ガイド突部43Fは、シリンダ42における上筒部62の下部から下筒部63の上部にわたって配設されている。
コイルバネ95のうち、上端部はフランジ部43Aの下面に当接し、下端部はシリンダ42における直筒部67の上端開口縁に当接している。これにより、ピストンガイド43はコイルバネ95から上向きの付勢力を受けている。
【0036】
さらに本実施形態では、吐出器1は、装着キャップ11の後部に立設された支持部材15と、支持部材15に回転軸L回りに回転可能に配設され、吐出ヘッド13を押下げる押下部材16と、吐出ヘッド13の下方移動を規制するストッパー130と、を備えている。なお、吐出器1は、支持部材15、押下部材16、およびストッパー130を有しなくてもよい。
【0037】
支持部材15は、シリンダ42の立設筒部60に外装された有頂筒状の囲繞筒部15aと、囲繞筒部15aの頂壁から上方に向けて延びるガイド筒15cと、囲繞筒部15aから後方に向けて突設され、左右方向に間隔をあけて配設された一対の側壁部77と、側壁部77の後端縁同士を左右方向に接続する後壁部78と、を有している。
【0038】
囲繞筒部15aの頂壁は環状に形成され、この頂壁の内周縁部にガイド筒15cが配置されている。ガイド筒15c内には、ステム12が下方移動可能に挿通されている。囲繞筒部15aの頂壁の下面には、内側にステム12が挿通された内側垂下筒部15dと、内側垂下筒部15dと囲繞筒部15aの周壁との間に配置された外側垂下筒部15eと、が形成されている。ガイド筒15c、内側垂下筒部15d、および外側垂下筒部15eは、中心軸線O1と同軸に配設されている。
【0039】
囲繞筒部15aの周壁の下端部は、装着キャップ11の頂壁部11aと隙間を介して上下方向に対向している。
外側垂下筒部15eは、立設筒部60内に嵌合されている。外側垂下筒部15eの下端開口縁は、第2パッキン56を介して、シリンダ42における支持板部61の内周部の上面に押し当てられている。
内側垂下筒部15dは、ステム12の下部に外装されている。内側垂下筒部15dの下端開口縁は、第2パッキン56を介して、ピストン41の外筒ピストン51の上端開口縁に押し当てられている。
【0040】
側壁部77は、前側から後側に向かうに従い漸次、上側に向けて延びている。側壁部77の上端には、左右方向から見た正面視で上方に向けて突の半円形状に形成された突出片80が形成されている。突出片80には、円柱状の軸体77Aが左右方向の外側に向けて突設されている。軸体77Aは、ステム12より後方に配置されている。軸体77Aの中心を通り、かつ左右方向に延びる仮想の軸線が押下部材16の揺動軸Lとなる。これにより、揺動軸Lは、ステム12より後方に配置されるとともに左右方向に延びている。
後壁部78の内面には、上方に向かって突出し、一対の側壁部77の内面同士および突出片80同士を左右方向に一体に連結する補強壁78aが形成されている。
【0041】
押下部材16は、軸体77Aを介して支持部材15に取り付けられている。これにより、押下部材16は、支持部材15に対して揺動軸L回りに揺動可能に連結されている。
押下部材16は、吐出ヘッド13を上方から覆う天板部90と、天板部90の前端縁から前方に向かうに従い漸次、下方に向けて延びる前板部91と、天板部90の左右両側の側端縁から下方に向けて延在し、左右方向に向かい合う一対の側板部92と、を有している。
そして、天板部90と一対の側板部92とで囲まれる内部空間に吐出ヘッド13が配置されている。よって、一対の側板部92は、吐出ヘッド13を左右方向から挟むように配置されている。
【0042】
天板部90は、上方に向けて膨らむように滑らかに湾曲した形状とされ、その後端部は支持部材15における後壁部78の上端部に上方から当接している。これにより、押下部材16は、揺動軸Lを中心としたこれ以上の上方への揺動が規制されている。
天板部90の前側部分には、天板部90を貫通する第1貫通孔93が形成されている。
この第1貫通孔93は、天板部90における左右方向の中央部分に形成されているとともに、前方に開口している。これにより、天板部90の前側部分は、左右方向に二股に分かれた形状とされている。前板部91は、二股に分かれた天板部90の前端縁から前方に向かうに従い漸次、下方に向けて延在している。
【0043】
第1貫通孔93内に吐出ヘッド13のノズル筒32が挿通されている。これにより、ノズル筒32は、第1貫通孔93を通して前板部91から前方に向けて突出しており、押下部材16と吐出ヘッド13との中心軸線O1回りにおける相対的な回転が規制されている。なお、前板部91の下側部分は、指先を掛けるための指掛部分とされている。
【0044】
押下部材16の一対の側板部92は、支持部材15の一対の側壁部77における上部を左右方向に挟んでいる。これにより、支持部材15と押下部材16との中心軸線O1回りにおける相対的な回転が規制されている。一対の側板部92の後部側の内面には、軸体77Aが挿通される軸孔部92Aが形成されている。これにより、押下部材16は、軸体77A回り、すなわち揺動軸L回りに揺動可能に支持される。
【0045】
押下部材16には、吐出ヘッド13の軸部10Aに係合する係合溝31Aが形成されている。係合溝31Aは、押下部材16の一対の側板部92から左右方向の内側に向けて張り出した板部の下端部に、下方に向けて開口する半円形状に形成されている。この係合溝31A内に軸部10Aが挿入されている。
以上の構成において、押下部材16を揺動軸L回りに下方に揺動すると、係合溝31Aの内周面が軸部10Aの外周面を下方に向けて押し込むことにより、ステム12およびピストンガイド43が、コイルバネ95の上方付勢力に抗して下降する。
【0046】
ストッパー130は、押下部材16の揺動軸Lに平行な軸体131回りに揺動可能に設けられ、吐出ヘッド13の下方移動を規制する。ストッパー130は、吐出ヘッド13の下方移動を規制する規制位置と、規制位置に対して軸体131回りに後方に揺動し、吐出ヘッド13の下方移動を許容する規制解除位置と、の間を移動可能に配設されている。ストッパー130は、規制位置にある場合に吐出ヘッド13の下方移動を規制し、規制解除位置にある場合に吐出ヘッド13の下方移動を許容する。
【0047】
ストッパー130は、一対の側壁部77の間に架設された軸体131と、軸体131の上方に配設され、規制位置に位置するときに、被係止部120の下面とガイド筒15cの上端開口縁との間に挟み込まれる被挟持部132と、軸体131における左右方向の両端部に接続され、側板部92における左右方向の外側に位置する一対のレバー134と、を備えている。
軸体131は、左右方向に延在する棒状に形成され、軸体131の左右方向の両端部は、一対の側壁部77に形成された支持凹部82に中心軸回りに回転可能に嵌め込まれている。支持凹部82は、ステム12よりも後方であって、揺動軸Lよりも前方に配置されている。
【0048】
正倒立両用アダプタ200は、吐出器1の正立時および倒立時の双方で、シリンダ42内が負圧となったときに、内容液をシリンダ42内に供給するように構成されている。
【0049】
(外筒体および内筒体)
そして本実施形態の吐出器1は、ノズル筒32の先端部に外嵌された外筒体110と、外筒体110内に回転可能に嵌合された内筒体100と、を有している。
内筒体100の内周面は、吐出孔13Aに連通する発泡空間Sを形成している。外筒体110には、この外筒体110をノズル径方向に貫通する外気導入孔111が形成されている。外気導入孔111は、発泡空間S内に向けて外気を導入する。
【0050】
外筒体110は、ノズル軸O2と同軸上に配置されている。外筒体110は、ノズル軸方向における中央部から後端部にかけて、ノズル筒32に外嵌されている。外気導入孔111は、外筒体110のノズル軸方向における中央部に形成されている。外気導入孔111は、ノズル筒32の先端よりも前方に位置している。外気導入孔111は、ノズル周方向に沿って延びる長方形状に形成されている。
【0051】
外筒体110の外周面には、ノズル径方向の内側に向けて窪む規制凹部110aが形成されている。規制凹部110aは、ノズル周方向に間隔を空けて複数(2つ)形成されている。各規制凹部110aは、外筒体110のうち、外気導入孔111よりも前方に位置して、内筒体100の外側筒103に囲われた部分に形成されている。各規制凹部110aは、ノズル軸方向に延びるとともに、ノズル周方向に延びている。このため、図示は省略するが、各規制凹部110aはノズル軸方向から見て円弧状に形成されている。
【0052】
図2および
図4(b)に示すように、内筒体100は、嵌合筒101と、環状部102と、外側筒103と、一対のレバー104と、遮蔽部105と、を有している。嵌合筒101、環状部102、外側筒103、および遮蔽部105は、ノズル軸O2と同軸上に配置されている。
嵌合筒101は、ノズル軸方向に延び、外筒体110内に嵌合されている。嵌合筒101のうち、環状部102よりも後方に位置する部分は外筒体110内に位置している。
【0053】
嵌合筒101のうち、環状部102よりも後方に位置する部分の外周面には、ノズル径方向の外側に向けて突出する係止凸部101aが形成されている。係止凸部101aは、外筒体110の内周面に形成された係止凹部に係止されている。係止凸部101aおよび係止凹部は、ノズル周方向における全周にわたって形成されている。係止凸部101aおよび係止凹部によって、内筒体100は、外筒体110に対してノズル軸O2回りに相対回転可能な状態で、外筒体110に取り付けられている。嵌合筒101の先端部は、環状部102から前方に向けて突出している。
【0054】
環状部102は、嵌合筒101のノズル軸方向における中間部から、ノズル径方向の外側に向けて延びている。環状部102は、ノズル軸方向から見て環状に形成されている。環状部102の後面は、外筒体110の前端面に、その前方から当接もしくは近接している。
外側筒103は、環状部102の外周縁から後方に向けて延びている。外側筒103は、内筒体100の前端部を囲っている。
【0055】
外側筒103の内周面には、ノズル径方向の内側に向けて突出する規制凸部103aが形成されている。規制凸部103aは、ノズル周方向に間隔を空けて複数(2つ)形成されている。各規制凸部103aは、ノズル軸方向に延びるとともに、規制凹部110aの内側に位置している。
外筒体110および内筒体100が相対回転可能な範囲は、規制凸部103aおよび規制凹部110aによって決められている。すなわち、規制凸部103aが規制凹部110a内で移動可能な範囲内において、外筒体110および内筒体100が相対回転する。このように、規制凸部103aおよび規制凹部110aは、外筒体110に対する内筒体100のノズル軸O2回りの回転量を規制する規制手段を構成している。
【0056】
図2、3に示すように、一対のレバー104は、嵌合筒101および外側筒103からノズル径方向の外側に向けて延びている。一対のレバー104は、L字の板状に形成されており、ノズル軸方向およびノズル径方向の双方に沿って延びている。ノズル軸方向において、一対のレバー104の後端は外側筒103の後端と同等の位置にあり、一対のレバー104の前端は嵌合筒101の前端と同等の位置にある。
図4(b)に示すように、遮蔽部105は、嵌合筒101の後端面の一部から後方に向けて延びている。
図4(b)、
図5(b)、
図6(b)に示すように、遮蔽部105はノズル周方向に沿って延びている。このため、図示は省略するが、遮蔽部105はノズル軸方向から見て円弧状に形成されている。
遮蔽部105のうちノズル周方向における一端面には、傾斜面106が形成されている。傾斜面106は、後方に向かうにしたがって、ノズル周方向における位置が漸次変わるように傾斜している。
【0057】
遮蔽部105は、外筒体110と内筒体100とのノズル軸O回りの相対回転に伴って、外気導入孔111を部分的に遮蔽し、外気導入孔111の開口面積を変化させるように構成されている。例えば
図4(a)、(b)に示す状態では、遮蔽部105は外気導入孔111を遮蔽しておらず、外気導入孔111はその全域にわたって開口している。この状態からレバー104を操作して外筒体110と内筒体100とを相対回転させると、
図5(b)または
図6(b)に示すように、遮蔽部105が外気導入孔111を部分的に遮蔽するため、外気導入孔111の開口面積が小さくなる。
【0058】
本実施形態では、
図4(a)、(b)に示すように、外気導入孔111の開口面積が最大となる状態(遮蔽部105が外気導入孔111からノズル周方向に最も離れた状態)における、ノズル軸方向から見たときのレバー104の中心軸線をL1と表す。この状態では、外気導入孔111の開口率は100%となっている。つまり、遮蔽部105が外気導入孔111を遮蔽していない。
図5(a)、(b)は、
図4(a)、(b)の状態からレバー104をノズル周方向に45°回転させた状態を示す図である。この状態では、外気導入孔111の開口率は70%となっている。つまり、外気導入孔111の開口面積の3割を遮蔽部105が遮蔽している。
【0059】
図6(a)、(b)は、
図4(a)、(b)の状態からレバー104をノズル周方向に90°回転させた状態を示す図である。この状態では、外気導入孔111の開口率は30%となっている。つまり、外気導入孔111の開口面積の7割を遮蔽部105が遮蔽している。
図6(a)、(b)の状態では、外筒体110と内筒体100とが相対回転可能な範囲内において、外気導入孔111の開口面積が最小となっている。本実施形態では、この状態における、ノズル軸方向から見たときのレバー104の中心軸線をL2と表す。
【0060】
本実施形態では、L1とL2とがなす角度が90°となっている。つまり、規制凸部103aおよび規制凹部110aは、外筒体110と内筒体100とがノズル軸O2回りに90°の範囲内で相対回転可能となるように構成されている。また、外気導入孔111の開口率は30%~100%の範囲内で調整可能となっている。なお、外気導入孔111の開口率の調整可能範囲や、外筒体110と内筒体100とが相対回転可能な範囲は、適宜変更してもよい。
【0061】
次に、以上のように構成された吐出器1の作用について説明する。なお、以下の説明では、シリンダ42内に内容液が充填されているものとする。
【0062】
吐出器1を使用する際、まず、ストッパー130を規制位置から規制解除位置へと揺動させて、押下部材16及び吐出ヘッド13が下方移動可能な状態とする。次に、押下部材16を回転軸L回りに下方に向けて回転させる。この際、例えば押下部材16の前板部91の指掛部分に指先を掛けながら、コイルバネ95の付勢力に抗して押下部材16を下方に向けて回転させる。押下部材16を下方に向けて回転させると、吐出ヘッド13が下方移動し、弁体44によってシリンダ42のテーパ筒部68内を閉塞した状態で、ステム12およびピストンガイド43がシリンダ42に対して押し下げられる。
【0063】
ステム12がピストンガイド43とともに押し下げられると、ステム12に加えられた押し下げ力が、弾性片25を介してピストン41に伝えられ、ピストン41がステム12およびピストンガイド43と一体となって、シリンダ42に対して下方移動する。これにより、ピストン41の内筒ピストン52がステム12内とシリンダ42内との連通を遮断したままの状態で、シリンダ42内が加圧される。これにより、シリンダ42内の内容液がステム12内を上昇してノズル筒32内に導入され、吐出ヘッド13の吐出孔13Aから吐出される。
【0064】
そして本実施形態の吐出器1では、スピン流路38Aを介して吐出孔13Aから霧状に吐出された内容液が発泡空間S内に進入すると、発泡空間Sが負圧になり、外気導入孔111から発泡空間Sに外気が導入される。これにより、発泡空間Sで内容液と外気とが混合されて発泡し、泡状となって発泡空間Sから噴出される。なお、内容液の発泡は、特に、内筒体100の内周面に内容液と外気との混合流体が衝突することにより発生する。
【0065】
そして、外筒体110と内筒体100とをノズル軸O2回りに相対回転させることで、遮蔽部105が外気導入孔111に対して移動し、外気導入孔111の開口面積が変化する。これにより、発泡空間Sへの外気の導入量を調整して、泡質の切り替えを行うことが可能となる。
【0066】
また、外筒体110がノズル筒32に外嵌され、内筒体100が外筒体110内に嵌合されている。この構成により、既存の吐出器のノズル筒に軽微な設計変更を加えることで、または設計変更を加えることなく、外筒体110および内筒体100をノズル筒に取り付けることができる。したがって、例えば既存の吐出器を製造するための金型などを流用することが可能となり、コストダウンを図ることができる。
【0067】
また、外筒体110と内筒体100との間には、外筒体110に対する内筒体100の回転量を規制する規制手段(規制凸部103aおよび規制凹部110a)が配設されている。これにより、規制手段によって、外気導入孔111に対する遮蔽部105の移動量を規制し、外気導入孔111の開口面積を一定の範囲内に規制することができる。
【0068】
また、内筒体100は、ノズル軸方向およびノズル径方向に沿って延びる板状のレバー104を有している。このため、レバー104を操作することで、内筒体100を外筒体110に対して容易に回転させることができる。
【0069】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0070】
例えば、前記実施形態では、発泡空間Sが内筒体100の内周面によって形成されていたが、外筒体110の内周面が発泡空間Sを形成していてもよい。あるいは、内筒体100および外筒体110の内周面がともに発泡空間Sを形成していてもよい。
【0071】
また、前記実施形態では内筒体100に外気導入孔111が形成され、外筒体110に遮蔽部105が形成されていたが、この関係は逆であってもよい。つまり、外筒体110および内筒体100のいずれか一方に外気導入孔111が形成され、他方に遮蔽部105が形成されていればよい。
【0072】
また、外筒体110の外周面に、レバー104の位置に対応して泡質の程度を表示する「粗」「細」などの表示部を設けてもよい。この場合、表示部は、例えば外気導入孔111の開口面積が最大または最小となるレバー104の位置(
図6(a)のL1、L2参照)に基づいて設けるとよい。
【0073】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…吐出器 12…ステム 13…吐出ヘッド 13A…吐出孔 32…ノズル筒 41…ピストン 42…シリンダ 100…内筒体 103a…規制凸部(規制手段) 104…レバー 105…遮蔽部 110…外筒体 110a…規制凹部(規制手段) 111…外気導入孔 O2…ノズル軸