(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】親水撥油剤
(51)【国際特許分類】
C09D 133/16 20060101AFI20220708BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20220708BHJP
C09D 5/16 20060101ALI20220708BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
C09D133/16
C09K3/00 R
C09D5/16
C08F290/06
(21)【出願番号】P 2018076954
(22)【出願日】2018-04-12
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】岩木 徹
(72)【発明者】
【氏名】浅井 千穂
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/142047(WO,A1)
【文献】特開2011-088850(JP,A)
【文献】特開2008-297482(JP,A)
【文献】特開2017-105975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 133/16
C08F 290/06
C09K 3/00
C09D 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数1~6のフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート化合物(a1)と、
ポリオキシアルキレン基を有する(メタ)アクリレート化合物(a2)とを少なくとも含有する構成モノマーを重合してなる共重合体
であって、
前記ポリオキシアルキレン基を有する(メタ)アクリレート化合物(a2)のオキシアルキレン基の繰り返し単位数が、10以上100以下であり、
前記ポリオキシアルキレン基を有する(メタ)アクリレート化合物(a2)の含有割合が、前記炭素数1~6のフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート化合物(a1)100質量部に対して、300~600質量部である共重合体を含有する、親水撥油剤。
【請求項2】
前記ポリオキシアルキレン基を有する(メタ)アクリレート化合物(a2)が、ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレートであることを特徴とする、請求項1に記載の親水撥油剤。
【請求項3】
前記共重合体が、構成モノマーとして、(メタ)アクリル酸(a3)をさらに含有することを特徴とする、請求項1
又は2に記載の親水撥油剤。
【請求項4】
前記共重合体が、構成モノマーとして、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリレート(a4)をさらに含有することを特徴とする、請求項1~
3のいずれか1項に記載の親水撥油剤。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の親水撥油剤を用いて処理された物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性、撥油性、及び油除去性に優れた親水撥油剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス、金属、繊維等の基材表面に含フッ素化合物またはシリコーン化合物等の撥水剤を塗布して皮膜を形成することで表面を撥水性とする、撥水処理を施す方法が知られている。
【0003】
また、部材表面の水に対する接触角を低下させて、部材表面を水に濡れやすい親水性とする親水性処理を施す方法も知られている。例えばガラス表面に親水性処理を施すことにより、浴室や洗面所の鏡等に防曇性を付与することができる。
【0004】
また、含フッ素アルキル基を有する化合物等の撥油剤を基材表面に塗布して皮膜を形成することで表面を撥油性とする撥油処理を施す方法が知られている。含フッ素アルキル基は撥油性とともに撥水性を有するものであり、その性質を用いた撥水撥油剤は従来から広く用いられている。一方、対象物の表面に親水性と撥油性を併せ持たせることのできる親水撥油剤は、表面に付着した油分を水だけで容易に洗い流すことを可能にするものであるが、十分な性能を有する親水撥油剤は未だ得られていない。
【0005】
引用文献1には、このような親水性と撥油性とを併せ持つ親水撥油剤について開示されているが、実施例の記載(例えば段落0110)からも分かるように、汚れを除去するために水で十分に洗い流す必要があり、油除去性が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、親水性、撥油性、及び油除去性に優れた親水撥油剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の親水撥油剤は、炭素数1~6のフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート化合物(a1)と、ポリオキシアルキレン基を有する(メタ)アクリレート化合物(a2)とを少なくとも含有する構成モノマーを重合してなる共重合体であって、上記ポリオキシアルキレン基を有する(メタ)アクリレート化合物(a2)のオキシアルキレン基の繰り返し単位数が、10以上100以下であり、上記ポリオキシアルキレン基を有する(メタ)アクリレート化合物(a2)の含有割合が、上記炭素数1~6のフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート化合物(a1)100質量部に対して、300~600質量部である共重合体を含有するものである。
【0009】
上記成分(a2)は、ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレートであるものとすることができる。
【0012】
上記共重合体は、構成モノマーとして、(メタ)アクリル酸(a3)をさらに含有するものとすることができる。
【0013】
上記共重合体は、構成モノマーとして、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリレート(a4)をさらに含有するものとすることができる。
【0014】
本発明の物品は、上記親水撥油剤を用いて処理されたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、親水性、撥油性、及び油除去性に優れた親水撥油剤、並びにこれを用いて処理された、防汚性や汚れ除去性に優れた物品を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の親水撥油剤は、炭素数1~6のフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート化合物(a1)と、ポリオキシアルキレン基を有する(メタ)アクリレート化合物(a2)とを少なくとも含有する構成モノマーを重合してなる共重合体を含有するものである。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0017】
本発明における炭素数1~6のフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート化合物(a1)としては、例えば、フルオロアルキル(メタ)アクリレート、フルオロアルキルアルキレン(メタ)アクリレート、フルオロアルキルポリオキシフルオロアルキレン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのうち、フルオロアルキル(メタ)アクリレート、フルオロアルキルアルキレン(メタ)アクリレートが好ましく、フルオロアルキルアルキレン(メタ)アクリレートがより好ましい。上記フルオロアルキル基は、炭素数2~6のフルオロアルキル基であることが好ましく、炭素数4~6のフルオロアルキル基であることがより好ましい。また、上記フルオロアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。なお、本明細書において、「(パー)フルオロ」は、パーフルオロまたはフルオロを意味する。
【0018】
フルオロアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、(パー)フルオロメチル(メタ)アクリレート、(パー)フルオロエチル(メタ)アクリレート、(パー)フルオロプロピル(メタ)アクリレート、(パー)フルオロブチル(メタ)アクリレート、(パー)フルオロペンチル(メタ)アクリレート、(パー)フルオロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、フルオロアルキル(メタ)アクリレートは、下記一般式(1)で表すこともできる。
Rf-O-X ・・・(1)
ただし、Rfはフルオロアルキル基であり、Xはアクリロイル基またはメタクリロイル基である。
【0019】
フルオロアルキルアルキレン(メタ)アクリレートとしては、例えば、(パー)フルオロメチルメチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロメチルエチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロエチルメチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロエチルエチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロプロピルメチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロプロピルエチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロブチルメチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロブチルエチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロペンチルメチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロペンチルエチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロヘキシルメチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロヘキシルエチレン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、フルオロアルキルアルキレン(メタ)アクリレートは、下記一般式(2)で表すこともできる。
Rf-Y-O-X ・・・(2)
ただし、Rfはフルオロアルキル基であり、Yはアルキレン基であり、Xはアクリロイル基またはメタクリロイル基である。
【0020】
フルオロアルキルポリオキシフルオロアルキレン(メタ)アクリレートとしては、例えば、(パー)フルオロメチルポリオキシフルオロエチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロエチルポリオキシフルオロエチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロプロピルポリオキシフルオロエチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロブチルポリオキシフルオロエチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロペンチルポリオキシフルオロエチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロヘキシルポリオキシフルオロエチレン(メタ)アクリレート、(パー)フルオロヘキシルポリオキシフルオロプロピレン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、フルオロアルキルポリオキシフルオロアルキレン(メタ)アクリレートは、下記一般式(3)で表すこともできる。
Rf-Z-O-X ・・・(3)
ただし、Rfはフルオロアルキル基であり、Zはポリオキシフルオロアルキレン基である、Xはアクリロイル基またはメタクリロイル基である。
【0021】
本発明におけるポリオキシアルキレン基を有する(メタ)アクリレート化合物(a2)としては、例えば、下記一般式(4)で表されるものが挙げられる。なお、成分(a1)に該当するものは除く。
R1-O-(YO)n-X ・・・(4)
ただし、R1は水素原子、又は炭素原子数1~6のアルキル基であり、Yはアルキレン基であり、nは2以上の整数であり、Xはアクリロイル基またはメタクリロイル基である。
【0022】
上記一般式(4)中のR1は、炭素数1~6のアルキル基であることが好ましい。一般式(4)の化合物としては、ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0023】
上記一般式(4)中のアルキレン基としては、油除去性がより優れることから、炭素数1~20の直鎖または分岐のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~10であることがより好ましく、炭素数1~5であることがさらに好ましく、炭素数2~4が特に好ましい。具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられ、これらのアルキレン基は、ハロゲン以外の置換基を有するものであってもよい。これらのうち、エチレン基、プロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。また、ポリオキシアルキレン基としては、これらのアルキレン基のうちの1種が重合したものであってもよく、2種以上が重合したものであってもよい。2種以上のアルキレン基が重合する場合、ランダム重合であってもよく、ブロック重合であってもよい。
【0024】
上記一般式(4)中のオキシアルキレン基の繰り返し単位数nは、特に限定されないが、油除去性および耐久性がより優れることから、8以上150以下であることが好ましい。下限値は、10以上であることがより好ましく、15以上であることがさらに好ましい。上限値は、120以下であることがより好ましく、100以下であることがさらに好ましい。
【0025】
上記成分(a2)の含有割合は、特に限定されないが、油除去性および耐久性がより優れることから、上記成分(a1)100質量部に対して、100~900質量部であることが好ましい。下限値は、200質量部以上であることがより好ましく、300質量部以上であることがさらに好ましい。上限値は、750質量部以下であることがより好ましく、600質量部以下であることがさらに好ましい。
【0026】
上記構成モノマーは、耐久性を向上させる観点から、さらに(a3)(メタ)アクリル酸を含むことが好ましい。このような化合物としては、アクリル酸、メタアクリル酸が挙げられる。
【0027】
上記成分(a3)の含有割合は、特に限定されないが、油除去性および耐久性がより優れることから、成分(a1)100質量部に対して、1~50質量部であることが好ましい。下限値は、2質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることがさらに好ましい。上限値は、30質量部以下であることがより好ましい。
【0028】
また上記成分(a3)の含有割合は、特に限定されないが、油除去性および耐久性がより優れることから、成分(a2)100質量部に対して、0.5~20質量部であることが好ましい。下限値は、1質量部以上であることがより好ましい。上限値は、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましい。
【0029】
上記構成モノマーは、耐久性を向上させる観点から、さらに(a4)アルコキシシリル基含有(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。このような化合物としては、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0030】
上記成分(a4)の含有割合は、特に限定されないが、耐久性がより優れることから、成分(a1)100質量部に対して、1~60質量部であることが好ましい。下限値は、2質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることがさらに好ましい。上限値は、40質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることがさらに好ましい。
【0031】
また上記成分(a4)の含有割合は、特に限定されないが、耐久性がより優れることから、成分(a2)100質量部に対して、0.5~20質量部であることが好ましい。下限値は、1質量部以上であることがより好ましい。上限値は、15質量部以下であることがより好ましい。
【0032】
上記構成モノマーは、発明の目的に反しない範囲で、上記成分(a1)~(a4)以外に、(メタ)アクリレート化合物(a5)をさらに含んでいてもよい。このような化合物としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、オキシアルキレン基含有(メタ)アクリレートモノマーなどが挙げられる。
【0033】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0034】
オキシアルキレン基含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0035】
また、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アミド、N-メチロール(メタ)アクリル酸アミド、ジアセトン(メタ)アクリル酸アミド、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、ポリシロキサンを有する(メタ)アクリレート、2-メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレートなども使用できる。
【0036】
構成モノマー中の成分(a1)の含有割合は、特に限定されないが、油除去性および耐久性がより優れることから、5~50質量%であることが好ましい。下限値は、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましい。上限値は、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0037】
構成モノマー中の成分(a2)の含有割合は、特に限定されないが、油除去性および耐久性がより優れることから、40~95質量%であることが好ましい。下限値は、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。上限値は、94.9質量%以下であることがより好ましく、94.5質量%以下であることがさらに好ましく、特に、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましい。
【0038】
構成モノマー中の成分(a3)の含有割合は、特に限定されないが、耐久性がより優れることから、0.1~20質量%であることが好ましい。下限値は、0.5質量%以上であることがより好ましく、0.7質量%以上であることがさらに好ましく、0.9質量%以上であることが特に好ましい。上限値は、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、8質量%以下であることが特に好ましい。
【0039】
構成モノマー中の成分(a4)の含有割合は、特に限定されないが、耐久性がより優れることから、0.1~20質量%であることが好ましい。下限値は、0.5質量%以上であることがより好ましく、0.7質量%以上であることがさらに好ましく、0.9質量%以上であることが特に好ましい。上限値は、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、8質量%以下であることが特に好ましい。
【0040】
構成モノマー中の成分(a5)の含有割合は、特に限定されないが、20質量%以下であることが好ましい。
【0041】
本発明で用いる共重合体は、特に限定されないが、重量平均分子量が5,000~100,000であることが好ましく、8,000~50,000であることがより好ましく、10,000~20,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であると、親水性、撥油性、及び油除去性に優れた親水撥油剤が得られやすい。なお、重量平均分子量は、GPCカラムクロマトグラフィ法を用いて、下記の条件で測定することができ、標準サンプルとして分子量300、2000、8000、及び20000のポリエチレングリコールで校正したものを用いた。
【0042】
・装置:LC-10AD(島津製作所社製)
・検出器:RID-10A(島津製作所社製)
・カラム:Shodex GPC KF-G、KF-803、KF802.5、KF-802、KF-801を連結したもの(いずれも昭和電工社製)
・溶離液:テトラヒドロフラン
・サンプル注入:0.5重量%溶液、100μL
・流速:0.8mL/min
・温度:25℃
【0043】
次に本発明の親水撥油剤に用いる共重合体の製造方法を説明する。共重合体の製造方法は、特に限定されないが、例えば、フルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート化合物(a1)、ポリオキシアルキレン基を有する(メタ)アクリレート化合物(a2)、重合開始剤、溶剤(b)を少なくとも混合する工程と、この混合物を加熱して、フルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート化合物(a1)とポリオキシアルキレン基を有する(メタ)アクリレート化合物(a2)とを少なくとも重合させる工程とを有するものとすることができる。
【0044】
重合方法は、特に限定されないが、溶液重合であることが好ましい。重合温度は、特に限定されないが、通常は40~120℃の範囲が好ましい。重合時間は、特に限定されないが、通常は4~15時間程度であることが好ましい。
【0045】
重合開始剤としては、従来公知のものを使用でき、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。その使用量は特に限定されないが、通常は、構成モノマー100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましい。
【0046】
溶剤(b)は、水であってもよく、有機溶剤であってもよい。有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、シクロヘキサン、イソホロンなどの脂環族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルエステル系溶剤、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられ、この中でも、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルであることが好ましい。
【0047】
重合後のポリマー組成物は、そのまま親水撥油剤として使用することもでき、必要に応じて上記溶剤(b)で希釈してから親水撥油剤として使用してもよい。
【0048】
本発明の親水撥油剤には、発明の目的に反しない範囲で、他の親水剤、その他の撥油剤、撥水剤、架橋剤、防虫剤、難燃剤、防シワ剤、帯電防止剤、柔軟仕上げ剤、防腐剤、芳香剤、酸化防止剤を必要に応じて含有させることができる。
【0049】
本発明の親水撥油剤による処理対象は特に限定されず、ガラス、プラスチック、金属、電子基板、繊維製品、皮革、石材、木材、紙等を含む種々の物品に使用することができる。処理対象に応じて、スプレー、スピンコート、浸漬等の塗布方法を適宜選択し、必要に応じて加熱処理して乾燥や架橋させる等の方法を用いることができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、「部」又は「%」とあるのは特に指定しない限り、質量基準とする。
【0051】
(使用原料)
炭素数1~6のフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート化合物(a1)
(a1-1)パーフルオロヘキシルエチルメタクリレート
(a1-2)パーフルオロブチルエチルメタクリレート
【0052】
ポリオキシアルキレン基を有する(メタ)アクリレート化合物(a2)
(a2-1)ポリオキシエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(オキシエチレン基の繰り返し単位数:15)
(a2-2)ポリオキシエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(オキシエチレン基の繰り返し単位数:23)
(a2-3)ポリオキシエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(オキシエチレン基の繰り返し単位数:40)
(a2-4)ポリオキシエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(オキシエチレン基の繰り返し単位数:90)
【0053】
上記成分(a1)及び(a2)以外の(メタ)アクリレート化合物(a3)
(a3-1)アクリル酸
(a3-2)メタクリル酸
【0054】
アルコキシシリル(メタ)アクリレート化合物(a4)
(a4-1)3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM-503)
【0055】
溶剤(b)
(b1)メチルエチルケトン
(b2)ジエチレングリコールジエチルエーテル
(b3)水
【0056】
(実施例1~13、16~22)
撹拌機、温度計、窒素導入管及び還流管を備えた反応容器に、表1に記載の割合で(a1)~(a4)の化合物、及び、溶剤として(b1)メチルエチルケトンを加え、窒素置換を行った。続いて、t-ブチルパーオキシピバレート(日油(株)製、商品名:パーブチルPV)を、上記(a1)~(a4)の化合物の合計量100質量部に対して3質量部となるように加え、65℃で8時間反応させることにより、共重合体(固形分25質量%)を得た。
【0057】
得られた共重合体(固形分25質量%)を、メタノールで25倍に希釈することにより、親水撥油剤を作製した。
【0058】
この親水撥油剤を、アルミ板(1cm×1cm)上に膜厚10μmとなるようにスピンコート法により塗布し、105℃のオーブンで10分間乾燥することにより、試験片を作製した。
【0059】
(実施例14)
溶剤(b)を、メチルエチルケトンからジエチレングリコールジエチルエーテルに変更した以外は、実施例5と同様の方法により、共重合体を得て、試験片を作製した。
【0060】
(実施例15)
実施例5で得られた共重合体(固形分25質量%)の有機溶剤を減圧留去した後、水400gを混合することにより、溶剤(b)が水である共重合体(固形分25質量%)を得て、実施例5と同様の方法により試験片を作製した。
【0061】
(比較例1)
共重合体を用いない以外は、実施例1と同様の方法により試験片を作製した。
【0062】
(比較例2)
共重合体の構成モノマーとして、(a4)及びトリフルオロエトキシエトキシメチルアクリルアミド(c1)の化合物を表1に記載の割合で用いた以外は実施例1と同様の方法により試験片を作製した。
【0063】
上記試験片を用いて、接触角(水およびヘキサデカン)、油除去性および耐久性を下記の方法により評価した。結果を表1に示す。
【0064】
(接触角)
接触角測定装置(協和界面科学社製、商品名:接触角計Drop Master 500)を用いて、塗布面における水およびヘキサデカンの接触角を測定し下記の基準で評価した。なお、水の液滴容量は2μL、ヘキサデカンの液滴容量は4μLとし、滴下30秒後の接触角を測定した。
【0065】
<水の接触角>
A:30°未満
B:30°以上40°未満
C:40°以上60°未満
D:60°以上80°未満
E:80°以上
【0066】
<ヘキサデカンの接触角>
A:60°以上
B:50°以上60°未満
C:40°以上50°未満
D:30°以上40°未満
E:30°未満
【0067】
(油除去性)
塗布面にヘキサデカン0.02gを滴下した。これを、塗布面が上になるように25℃の水60mLに10秒間浸漬したあと取り出し、水面へのヘキサデカンの浮き上がりの有無を確認した。また、ヘキサデカンが塗布面に残っている場合はさらに水2mLで洗い流し、ヘキサデカンの有無を確認することを最大3回繰り返した。
【0068】
A:水に10秒間浸漬した場合に少なくとも一部のヘキサデカンが水面に浮き上がり、さらに水2mlで1回洗い流すと塗布面にヘキサデカンが残らない。
B:水に10秒間浸漬した場合にヘキサデカンは水面に浮き上がらないが、さらに水2mLで1回洗い流すと塗布面にヘキサデカンが残らない。
C:水に10秒間浸漬し、さらに水2mLで2回洗い流すと塗布面にヘキサデカンが残らない。
D:水に10秒間浸漬し、さらに水2mLで3回洗い流すと塗布面にヘキサデカンが残らない。
E:水に10秒間浸漬し、さらに水2mLで3回洗い流しても塗布面にヘキサデカンが残る。
【0069】
(耐久性)
試験片を25℃の水200mLに、30秒間または10分間浸漬したあと取り出し、25℃で24時間乾燥させた。乾燥後の試験片を用いて、油除去性と同じ方法で評価した。
【0070】
【0071】
表1に示された結果から、(a2)ポリオキシアルキレン基を有する(メタ)アクリレート化合物を構成モノマーとして含有する、共重合体を含有する実施例の組成物は、共重合体を使用しない比較例1の組成物、及び、(c1)トリフルオロエトキシエトキシメチルアクリルアミドを構成モノマーとして含有する、共重合体を含有する比較例2の組成物と比較して、いずれも親水性、疎水性、及び油除去性に顕著に優れていることが分かる。
【0072】
また、実施例4~13の結果から、共重合体が(メタ)アクリル酸(a3)を構成モノマーとして含有する場合、耐久性が向上することが分かる。
【0073】
また、実施例16~22の結果から、共重合体がアルコキシシリル基含有(メタ)アクリレート(a4)を構成モノマーとして含有する場合、耐久性が向上することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の親水撥油剤は、対象物品の表面の防汚等を目的としたコーティング剤として好適に用いることができる。