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  • 特許-熱収縮性フィルムおよび熱収縮性ラベル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】熱収縮性フィルムおよび熱収縮性ラベル
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20220708BHJP
   B29C 55/14 20060101ALI20220708BHJP
   B29C 61/02 20060101ALI20220708BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20220708BHJP
   B32B 7/028 20190101ALI20220708BHJP
   G09F 3/04 20060101ALI20220708BHJP
   B29K 67/00 20060101ALN20220708BHJP
   B29K 105/02 20060101ALN20220708BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
B29C55/14
B29C61/02
B32B27/36
B32B7/028
G09F3/04 C
B29K67:00
B29K105:02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018102332
(22)【出願日】2018-05-29
(65)【公開番号】P2019206639
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2020-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】金子 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 正浩
(72)【発明者】
【氏名】勘坂 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】弓削 秀太
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-071926(JP,A)
【文献】特開2014-012379(JP,A)
【文献】特表2014-534911(JP,A)
【文献】特表2014-507594(JP,A)
【文献】特開2002-203525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02;5/12-5/22
B29C 55/00-55/30
B29C 61/00-61/10
B32B 1/00-43/00
G09F 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルを含む熱収縮性フィルムであり、
前記ポリエステルを構成するジカルボン酸成分が、テレフタル酸を95モル%以上含み、
前記ポリエステルを構成するジオール成分が、エチレングリコールを67~71モル%、シクロヘキサンジメタノールを24~28モル%、およびジエチレングリコールを3~7モル%含み、
前記熱収縮性フィルムを70℃の温水中に30秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率が20%以下であり、
前記熱収縮性フィルムを80℃の温水中に30秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率が45~65%であり、
前記熱収縮性フィルムを98℃の温水中に30秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率が65%以上である、熱収縮性フィルムであって、
前記ポリエステルを含む樹脂材料を溶融押出しして未延伸フィルムを得る押出成形工程と、
前記未延伸フィルムを長手方向に延伸し、ついで幅方向に延伸して延伸フィルムを得る延伸工程と、
前記延伸フィルムを熱処理する熱処理工程とを有し、
前記延伸工程において前記未延伸フィルムを長手方向に延伸する際の延伸倍率が3.5~5倍であり、前記未延伸フィルムを長手方向に延伸する際の延伸温度が前記ポリエステルのガラス転移温度よりも5~15℃高い温度であり、前記未延伸フィルムを幅方向に延伸する際の延伸倍率が1~1.3倍であり、前記未延伸フィルムを幅方向に延伸する際の延伸温度が前記ポリエステルのガラス転移温度よりも-5~10℃高い温度であり、
前記熱処理工程において熱処理温度が前記未延伸フィルムを幅方向に延伸する際の延伸温度よりも0~20℃高い温度である、熱収縮性フィルムの製造方法によって製造される、
熱収縮性フィルム。
【請求項2】
前記ポリエステルのガラス転移温度が、63~85℃である、請求項1に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項3】
不活性粒子をさらに含む、請求項1または2に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項4】
前記不活性粒子の平均粒子径が、1.5~3.0μmである、請求項3に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項5】
前記熱収縮性フィルム中の前記不活性粒子の割合が、0.01~0.08質量%である、請求項3または4に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の熱収縮性フィルムと、前記熱収縮性フィルムの一方の表面に設けられた接着剤層とを有する、熱収縮性ラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性フィルムおよび熱収縮性ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
ボトル等の容器のラベルとして、熱収縮性フィルムの一方の表面に接着剤層を設けた熱収縮性ラベルが用いられている。
熱収縮性ラベルは、ロールオンシュリンク装着機等の公知のラベル装着装置に供され、容器に装着される。
【0003】
ラベル装着装置を用いた容器へのラベルの装着は、以下のように行われる。
容器を搬送しながら、離型紙が剥離された熱収縮性ラベルを、熱収縮性ラベルの接着剤層が容器に接するように、容器に押し付ける。熱収縮性ラベルが押し付けられた容器が、容器の中心軸を中心に回転すると、熱収縮性ラベルが容器に巻き付けられる。
容器を、容器の中心軸を中心に回転させながら、容器に巻き付けられた熱収縮性ラベルに、ブロアーから熱風を吹き付け、熱収縮性ラベルを容器の形状に合わせて収縮させる。
【0004】
ボトル等の容器は、通常、胴部の径と口部の径とに差がある。特に、図1に示すようなバイアル瓶は、胴部の径と口部の径との差が大きい。そのため、図1に示すように、容器100の胴部102から口部104にわたってラベルを装着する場合、熱収縮性ラベル200を容器100の胴部102に巻き付けたとき、容器100の口部104においては容器100と熱収縮性ラベル200との間に大きな隙間が生じる。そのため、口部104において熱収縮性ラベル200を大きく収縮させる必要がある。したがって、容器の口部にもラベルを装着する場合、容器の周方向(熱収縮性ラベルの長手方向)の収縮率の高い熱収縮性フィルムが必要となる。
【0005】
収縮率の高い熱収縮性フィルムとしては、下記のものが提案されている。
・全ポリステル樹脂成分中における多価アルコール成分100モル%中、1,4-シクロヘキサンジメタノール成分が15モル%以上であるポリエステル樹脂からなり、ポリエステル系フィルムの温湯収縮率が、主収縮方向において、処理温度70℃・処理時間5秒で5~60%であり、85℃・5秒で75%以上であり、主収縮方向と直交する方向において、85℃・5秒で10%以下であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-266537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
バイアル瓶は、大容量になると胴部の径と口部の径との差がさらに大きくなる。このような胴部の径と口部の径との差が大きい容器に、特許文献1に記載の熱収縮性フィルムからなる熱収縮性ラベルを用いた場合、口部においてラベルにシワやヒケが発生する。
【0008】
本発明は、胴部の径と口部の径との差が大きい容器に装着する際に、口部において十分に収縮し、かつ口部においてシワやヒケが発生しにくい熱収縮性フィルムおよび熱収縮性ラベルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記の態様を有する。
<1>ポリエステルを含む熱収縮性フィルムであり、前記ポリエステルを構成するジカルボン酸成分が、テレフタル酸を95モル%以上含み、前記ポリエステルを構成するジオール成分が、エチレングリコールを50モル%以上およびシクロヘキサンジメタノールを15モル%以上含み、前記熱収縮性フィルムを70℃の温水中に30秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率が20%以下であり、前記熱収縮性フィルムを80℃の温水中に30秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率が45~65%であり、前記熱収縮性フィルムを98℃の温水中に30秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率が65%以上である、熱収縮性フィルム。
<2>前記ポリエステルを構成するジオール成分が、エチレングリコールを61~77.9モル%、シクロヘキサンジメタノールを22~29モル%、およびジエチレングリコールを0.1~10モル%含む、前記<1>の熱収縮性フィルム。
<3>前記ポリエステルのガラス転移温度が、63~85℃である、前記<1>または<2>の熱収縮性フィルム。
<4>不活性粒子をさらに含む、前記<1>~<3>のいずれかの熱収縮性フィルム。
<5>前記不活性粒子の平均粒子径が、1.5~3.0μmである、前記<4>の熱収縮性フィルム。
<6>前記熱収縮性フィルム中の前記不活性粒子の割合が、0.01~0.08質量%である、前記<4>または<5>の熱収縮性フィルム。
<7>前記<1>~<6>のいずれかの熱収縮性フィルムと、前記熱収縮性フィルムの一方の表面に設けられた接着剤層とを有する、熱収縮性ラベル。
【発明の効果】
【0010】
本発明の熱収縮性フィルムおよび熱収縮性ラベルは、胴部の径と口部の径との差が大きい容器に装着する際に、口部において十分に収縮し、かつ口部においてシワやヒケが発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】容器に巻き付けられた熱収縮性ラベルを収縮させる様子を示す側面図(熱収縮性ラベルのみ断面図)である。
図2】実施例における熱収縮性フィルムの、温水の温度に対する収縮率の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
収縮率は、JIS Z 1709-1995に準じ、熱媒液として温水を用いて測定した値である。
ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121-1987(対応国際規格ISO 3146)に準じ、示差走査熱量測定(DSC)法で測定した中間点ガラス転移温度である。
平均粒子径は、レーザー回折・散乱法で測定した、体積基準の累積50%径である。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0013】
<熱収縮性フィルム>
本発明の熱収縮性フィルムは、ポリエステルを含む。
本発明の熱収縮性フィルムは、不活性粒子をさらに含むことが好ましい。
本発明の熱収縮性フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じてポリエステルおよび不活性粒子以外の成分(以下、「他の成分」とも記す。)を含んでいてもよい。
【0014】
(ポリエステル)
ポリエステルは、ジカルボン酸成分とジオール成分とを縮重合して得られたものである。
ポリエステルを構成するジカルボン酸成分は、テレフタル酸を95モル%以上含み、ポリエステルを構成するジオール成分は、エチレングリコールを50モル%以上およびシクロヘキサンジメタノールを15モル%以上含む。ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を95モル%以上含み、かつジオール成分としてエチレングリコールを50モル%以上およびシクロヘキサンジメタノールを15モル%以上含むポリエステルは、結晶性が低いため、適度な熱収縮性および熱収縮開始温度を有し、また、鮮明な容器ラベルデザインを可能にする透明性を有する。
【0015】
テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸(アジピン酸、アゼライン酸等)、芳香族ジカルボン酸(ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸等)、脂環式ジカルボン酸(1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等)、これらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
ポリエステルを構成するジカルボン酸成分は、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分を5モル%程度まで含んでもよい。
【0016】
エチレングリコール以外のジオール成分としては、脂肪族ジオール(ジエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等)、脂環式ジオール(1,4-シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族ジオール等が挙げられる。
ポリエステルを構成するジオール成分中の、エチレングリコール割合は、50モル%以上であり、50~80モル%が好ましく、60~75モル%がより好ましい。
ポリエステルを構成するジオール成分中の、エチレングリコール以外のジオール成分の割合は、20モル%以上が好ましく、20~50モル%がより好ましく、25~40モル%がさらに好ましい。
【0017】
ポリエステルを構成するジオール成分は、エチレングリコールを61~77.9モル%、シクロヘキサンジメタノールを22~29モル%、およびジエチレングリコールを0.1~10モル%含むことが好ましく、エチレングリコールを65~73モル%、シクロヘキサンジメタノールを23~29モル%、およびジエチレングリコールを1モル%以上含むことがより好ましく、エチレングリコールを67~71モル%、シクロヘキサンジメタノールを24~28モル%、およびジエチレングリコールを3~7モル%含むことがさらに好ましい。
【0018】
エチレングリコールの割合が前記範囲の下限値以上であれば、延伸工程における延伸の不均一が起こりにくい。エチレングリコールの割合が前記範囲の上限値以下であれば、結晶性が低くなり高い収縮率を得やすい。
シクロヘキサンジメタノールの割合が前記範囲の下限値以上であれば、胴部の径と口部の径との差が大きい容器に装着する際に、口部においてシワやヒケが発生しにくい熱収縮性フィルムを得やすい。シクロヘキサンジメタノールの割合が前記範囲の上限値以下であれば、延伸工程における延伸の不均一が起こりにくい。
ジエチレングリコールの割合が前記範囲の下限値以上であれば、加工温度を下げることができる。ジエチレングリコールの割合が前記範囲の上限値以下であれば、延伸工程における延伸の不均一が起こりにくい。
【0019】
ポリエステルのTgは、63~85℃が好ましく、70~85℃がより好ましく、78~85℃がさらに好ましい。Tgが前記範囲の下限値以上であれば、熱収縮性フィルムの保管中に配向緩和しにくく、熱収縮率が低下しにくい。Tgが前記範囲の上限値以下であれば、熱収縮性フィルムの熱収縮開始温度が高くなりすぎず、容器への装着が容易になる。
【0020】
ポリエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
2種以上のポリエステルを混合して用いる場合は、2種以上のポリエステルを混合した後のポリエステル全体として、ポリエステルを構成する各成分の割合やガラス転移温度が前記範囲内となればよい。
【0021】
(不活性粒子)
不活性粒子は、熱収縮性フィルムの印刷性、走行性等を向上させる成分である。
不活性粒子としては、無機微粒子(二酸化ケイ素、炭酸カルシウム、酸化チタン、カオリン、硫酸バリウム等)、有機微粒子(球状シリコーン、球状ポリスチレン、アクリル酸エステルとスチレンの共重合体等)等が挙げられる。不活性粒子としては、熱収縮性フィルムの印刷性、走行性等を十分に向上でき、経済性にも優れる点から、二酸化ケイ素が好ましい。
【0022】
不活性粒子の平均粒子径は、1.5~3.0μmが好ましい。不活性粒子の平均粒子径が前記範囲の下限値以上であれば、熱収縮性フィルムの滑り性が向上し、印刷時、容器への装着時等のフィルム走行中にシワが発生しにくく、走行性が向上する。また、走行性がよい熱収縮性フィルムには変形が生じにくいため、印刷性や密着性も向上する。不活性粒子の平均粒子径が前記範囲の上限値以下であれば、熱収縮性フィルムに精細印刷したときに印刷ドット抜けが発生しにくく、印刷性に優れる。
【0023】
熱収縮性フィルム中の不活性粒子の割合は、0.01~0.08質量%が好ましい。不活性粒子の割合が前記範囲の下限値以上であれば、熱収縮性フィルムの滑り性が向上し、印刷時、容器への装着時等のフィルム走行中にシワが発生しにくく、走行性が向上する。また、走行性がよい熱収縮性フィルムには変形が生じにくいため、印刷性や密着性も向上する。不活性粒子の割合が前記範囲の上限値以下であれば、熱収縮性フィルムに精細印刷したときに印刷ドット抜けが発生しにくく、印刷性に優れる。
【0024】
(他の成分)
他の成分としては、有機滑剤(長鎖脂肪酸エステル等)、安定剤、着色剤、酸化防止剤、消泡剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
熱収縮性フィルム中の他の成分の割合は、0~5質量%が好ましい。
【0025】
(収縮率)
熱収縮性フィルムを70℃の温水中に30秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率は、20%以下であり、10~20%が好ましく、15~20%がより好ましい。熱収縮性フィルムを70℃の温水中に30秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率が前記範囲内であれば、比較的低温の領域における熱収縮性フィルムの収縮が穏やかになり、熱収縮性フィルムがゆっくりと収縮することになるため、胴部の径と口部の径との差が大きい容器に装着する際に、口部においてシワやヒケが発生しにくい。
熱収縮性フィルムを70℃の温水中に30秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率を20%以下とするためには、ポリエステルを構成するジオール成分中の、シクロヘキサンジメタノールの割合を前記範囲内とするとともに、熱収縮性フィルムを製造する際の延伸条件(延伸倍率、延伸温度等)を後述する範囲内で調整すればよい。
【0026】
熱収縮性フィルムを80℃の温水中に30秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率は、45~65%であり、45~60%が好ましく、50~55%がより好ましい。熱収縮性フィルムを80℃の温水中に30秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率が前記範囲内であれば、70~80℃の領域における熱収縮性フィルムの収縮が穏やかになり、熱収縮性フィルムがゆっくりと収縮することになるため、胴部の径と口部の径との差が大きい容器に装着する際に、口部においてシワやヒケが発生しにくい。
熱収縮性フィルムを80℃の温水中に30秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率を45~65%とするためには、ポリエステルを構成するジオール成分中の、シクロヘキサンジメタノールの割合を前記範囲内とするとともに、熱収縮性フィルムを製造する際の延伸条件(延伸倍率、延伸温度等)を後述する範囲内で調整すればよい。
【0027】
熱収縮性フィルムを98℃の温水中に30秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率は、65%以上であり、70~75%が好ましい。熱収縮性フィルムを98℃の温水中に30秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率が前記範囲の下限値以上であれば、胴部の径と口部の径との差が大きい容器に装着する際に、口部において十分に収縮する。熱収縮性フィルムを98℃の温水中に30秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率が前記範囲の上限値以下であれば、収縮しすぎることがないため、熱収縮性フィルムに裂け、折れ曲がり、シワ等が発生しにくい。
熱収縮性フィルムを98℃の温水中に30秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率を65%以上とするためには、熱収縮性フィルムを製造する際の延伸条件(延伸倍率、延伸温度等)を後述する範囲内で調整すればよい。
【0028】
熱収縮性フィルムを98℃の温水中に30秒間浸漬したときの主収縮方向に直交する方向の収縮率は、0~10%が好ましく、5~8%がより好ましい。熱収縮性フィルムを98℃の温水中に30秒間浸漬したときの主収縮方向に直交する方向の収縮率が前記範囲の下限値以上であれば、熱収縮性フィルムを収縮させた際に、熱収縮性フィルムが主収縮方向に直交する方向に伸びることがなく、容器の縦方向に収縮ムラ、シワ等が発生しにくい。熱収縮性フィルムを98℃の温水中に30秒間浸漬したときの主収縮方向に直交する方向の収縮率が前記範囲の上限値以下であれば、熱収縮性フィルムを収縮させた際に、熱収縮性フィルムの幅方向の収縮が抑えられ、容器の縦方向にヒケが発生しにくい。
熱収縮性フィルムを98℃の温水中に30秒間浸漬したときの主収縮方向に直交する方向の収縮率を0~10%とするためには、熱収縮性フィルムを製造する際の延伸条件(延伸倍率、延伸温度等)を後述する範囲内で調整すればよい。
【0029】
熱収縮性フィルムの厚さは、15~80μmが好ましい。熱収縮性フィルムの厚さが前記範囲の下限値以上であれば、熱収縮性フィルムを製造しやすい。熱収縮性フィルムの厚さが前記範囲の上限値以下であれば、ラベル面積あたりの樹脂使用量が抑えられ、経済性がよい。
【0030】
(熱収縮性フィルムの製造方法)
本発明の熱収縮性フィルムは、ポリエステルを含む樹脂材料を溶融押出しして未延伸フィルムを得る押出成形工程と、未延伸フィルムを長手方向に延伸し、ついで幅方向に延伸して延伸フィルムを得る延伸工程と、延伸フィルムを熱処理する熱処理工程とを有する方法によって製造される。
【0031】
押出成形工程においては、例えば、樹脂材料を押出機で溶融し、Tダイからキャストロール上に吐出する。溶融温度は、例えば、230~300℃である。キャストロールの温度は、常温付近が好ましい。
【0032】
延伸工程において、未延伸フィルムを長手方向に延伸する際に用いる縦延伸装置としては、低速で回転する加熱ロール群と、加熱ロール群よりも高速で回転する非加熱ロール群とを備え、これらの回転速度差によってフィルムを縦延伸する装置が挙げられる。
【0033】
未延伸フィルムを長手方向に延伸する際の延伸倍率は、3.5~5倍が好ましく、4~4.5倍がより好ましい。未延伸フィルムを長手方向に延伸する際の延伸倍率が前記範囲の下限値以上であれば、98℃の温水中に30秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率が65%以上である熱収縮性フィルムを製造しやすい。未延伸フィルムを長手方向に延伸する際の延伸倍率が前記範囲の上限値以下であれば、延伸時にフィルムの白化や破断が生じにくい。
【0034】
未延伸フィルムを長手方向に延伸する際の延伸温度は、Tgよりも5~15℃高い温度が好ましく、Tgよりも7~12℃高い温度がより好ましい。未延伸フィルムを長手方向に延伸する際の延伸温度が前記範囲の下限値以上であれば、延伸時に未延伸フィルムの白化や破断が生じにくい。未延伸フィルムを長手方向に延伸する際の延伸温度が前記範囲の上限値以下であれば、樹脂の軟化による延伸装置への未延伸フィルムの粘着によるトラブルが起こりにくい。
【0035】
延伸工程において、未延伸フィルムを幅方向に延伸する際に用いる横延伸装置としては、未延伸フィルムの幅方向の両端部をクリップで把持して横延伸するテンター装置が挙げられる。
【0036】
未延伸フィルムを幅方向に延伸する際の延伸倍率は、1~1.3倍が好ましく、1~1.1倍がより好ましい。未延伸フィルムを幅方向に延伸する際の延伸倍率が前記範囲の下限値以上であれば、フィルムの幅方向の厚さ均一性を向上させるうえで好ましい。未延伸フィルムを幅方向に延伸する際の延伸倍率が前記範囲の上限値以下であれば、幅方向のフィルムの収縮が抑えられ、容器の縦方向にヒケが発生しにくい。
【0037】
未延伸フィルムを幅方向に延伸する際の延伸温度は、Tgよりも-5~10℃高い温度が好ましく、Tgよりも-5~5℃高い温度がより好ましい。未延伸フィルムを幅方向に延伸する際の延伸温度が前記範囲の下限値以上であれば、延伸時に未延伸フィルムの白化や破断が生じにくい。未延伸フィルムを幅方向に延伸する際の延伸温度が前記範囲の上限値以下であれば、98℃の温水中に30秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率が65%以上である熱収縮性フィルムを製造しやすい。
【0038】
熱処理工程においては、延伸フィルムの幅方向の両端部をクリップで把持した状態で熱処理することが好ましい。このような熱処理は、例えば、前記横延伸装置に用いられるテンター装置において、横延伸に続けて付設された熱処理ゾーンにて行うことが好ましい。
【0039】
熱処理温度は、未延伸フィルムを幅方向に延伸する際の延伸温度よりも0~20℃高い温度が好ましく、未延伸フィルムを幅方向に延伸する際の延伸温度よりも5~15℃高い温度がより好ましい。熱処理温度が前記範囲の下限値以上であれば、70℃の温水中に30秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率が20%以下である熱収縮性フィルムを製造しやすい。熱処理温度が前記範囲の上限値以下であれば、熱収縮性フィルムの主収縮方向の収縮率が低下しにくい。
【0040】
熱収縮性フィルムには、グラビア印刷機等の印刷機によって印刷を施してもよい。
熱収縮性フィルムには、特定の性能を付与するために、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、活性エネルギー線照射処理(紫外線、α線、β線、γ線、電子線等)、樹脂被覆処理(ポリアミド、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル等)、金属蒸着等を施してもよい。
【0041】
(作用機序)
以上説明した本発明の熱収縮性フィルムにあっては、ジカルボン酸成分がテレフタル酸を95モル%以上含み、ジオール成分がエチレングリコールを50モル%以上およびシクロヘキサンジメタノールを15モル%以上含むポリエステルを含む熱収縮性フィルムであって、熱収縮性フィルムを70℃の温水中に30秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率が20%以下であり、熱収縮性フィルムを80℃の温水中に30秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率が45~65%である、すなわち、比較的低温の領域における熱収縮性フィルムの収縮が穏やかになり、熱収縮性フィルムがゆっくりと収縮することになるため、胴部の径と口部の径との差が大きい容器に装着する際に、口部においてシワやヒケが発生しにくい。
一方、特許文献1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、温湯収縮率が、主収縮方向において、処理温度70℃・処理時間5秒で5~60%であり、85℃・5秒で75%以上であるため、比較的低温の領域において熱収縮性フィルムが急速に収縮し、その結果、口部においてシワやヒケが発生しやすい。
また、本発明の熱収縮性フィルムにあっては、熱収縮性フィルムを98℃の温水中に30秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率が65%以上であるため、胴部の径と口部の径との差が大きい容器に装着する際に、口部において十分に収縮する。
【0042】
<熱収縮性ラベル>
本発明の熱収縮性ラベルは、本発明の熱収縮性フィルムと、熱収縮性フィルムの一方の表面に設けられた接着剤層とを有する。
本発明の熱収縮性ラベルは、接着剤層の表面を保護するための離型紙をさらに有していてもよい。
【0043】
本発明の熱収縮性ラベルは、例えば、長手方向が主収縮方向である長尺の熱収縮性フィルムの表面に接着剤を塗布して接着剤層を形成し、接着剤層の表面を長尺の離型紙で覆った後、離型紙を残して熱収縮性フィルムおよび接着剤層を所定の大きさにハーフカットすることによって製造される。
接着剤としては、アクリル系接着剤、ゴム系接着剤、シリコーン系接着剤等が挙げられる。
【0044】
本発明の熱収縮性ラベルは、ロールオンシュリンク装着機等の公知のラベル装着装置に供され、バイアル瓶等の容器に装着され、ラベルとなる。
ラベル装着装置を用いたバイアル瓶等の容器へのラベルの装着は、以下のように行われる。
【0045】
容器を搬送しながら、離型紙が剥離された熱収縮性ラベルを、熱収縮性ラベルの接着剤層が容器に接するように、容器に押し付ける。熱収縮性ラベルが押し付けられた容器が、容器の中心軸を中心に回転すると、熱収縮性フィルムの主収縮方向が容器の周方向となるように、また、図1に示すように、熱収縮性ラベル200が容器100の口部104の周囲にも位置するように、熱収縮性ラベル200が容器100に巻き付けられる。
容器100を、容器100の中心軸を中心に回転させながら、容器100に巻き付けられた熱収縮性ラベル200に、ブロアーから熱風を吹き付け、図1に示すように、熱収縮性ラベル200を容器100の形状に合わせて収縮させる。このようにして、容器100の胴部102および口部104にラベルを装着する。
【実施例
【0046】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0047】
(ガラス転移温度(Tg))
JIS K 7121-1987に準じ、熱分析システム(メトラー社製、メトラータTA3000)を用い、DSC法によって、昇温速度10℃/分の条件で中間点ガラス転移温度を測定した。
【0048】
(収縮率)
縦横各100mmの大きさにサンプリングした熱収縮性フィルムを所定の温度の温水中に30秒間浸漬した。温水中から取出して、0.5mm目盛のスケールで縦横各々の寸法変化を測定した。下記式にしたがって、縦(主収縮方向)および横(主収縮方向に直交する方向)それぞれについて、収縮率を求めた。
収縮率(%)={100(mm)-浸漬後の長さ(mm)}/100(mm)×100
【0049】
(装着適正)
容器として、下記の2つのバイアル瓶を用意した。
国内向けバイアル瓶:高さ:60mm、胴部の外径:25mm、口部の外径:20mm。
海外向けバイアル瓶:高さ:100mm、胴部の外径:53mm、口部の外径:20mm。
【0050】
バイアル瓶に合わせて所定の大きさにハーフカットされた熱収縮性ラベルを、ラベル装着装置に供し、熱収縮性ラベルの長手方向(主収縮方向)がバイアル瓶の周方向となるようにバイアル瓶に巻き付けた。ブロアーから熱収縮性ラベルに熱風を吹き付け、熱収縮性ラベルをバイアル瓶に装着した。ブロアーからの熱風の温度は200℃であり、バイアル瓶がブロアーの前を通過する時間は5秒であった。
【0051】
バイアル瓶に装着されたラベルの様子を観察し、シワ・ヒケについて下記の基準にて評価した。
○:シワ・ヒケなし。
×:シワ・ヒケあり。
【0052】
バイアル瓶に装着されたラベルの様子を観察し、収縮不足について下記の基準にて評価した。
○:収縮不足なし。
×:収縮不足あり。
【0053】
(ポリエステル)
ポリエステルとしては、表1に示すポリエステルA~Eを用意した。
【0054】
【表1】
【0055】
(不活性粒子)
不活性粒子としては、二酸化ケイ素粒子をポリエステルに分散させたマスターバッチ(ベルポリエステルプロダクツ社製、FMS20、二酸化ケイ素粒子の平均粒子径:2.7μm)を用意した。
【0056】
(実施例1、比較例1~4)
表2に示すポリエステルに、表2に示す割合で不活性粒子を添加した樹脂材料を、真空ベント式二軸押出機に供給して270℃で溶融し、25℃にコントロールした水冷式キャストロール上にTダイから押出して、未延伸フィルムを得た。
未延伸フィルムを縦延伸装置に供給して表2に示す延伸条件で延伸した後、テンター(横延伸装置)に導いて表2に示す延伸条件で延伸した。その後、表2に示す熱処理温度で熱処理して巻取機でロール状に巻取って、厚さ45μmの熱収縮性フィルムを得た。収縮率を表2および図2に示す。
熱収縮性フィルムの表面に接着剤(アクリル系接着剤)を塗布して厚さ17μmの接着剤層を形成し、接着剤層の表面を離型紙で覆った後、離型紙を残して熱収縮性フィルムおよび接着剤層を所定の大きさにハーフカットして熱収縮性ラベルを得た。装着適正の結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
比較例1、2は、98℃における収縮率は十分であったが、いずれのバイアル瓶においても装着時にシワが発生しやすかった。
比較例3は、98℃における収縮率は十分であったが、国内向けの小型のバイアル瓶においてシワが発生しやすかった。
比較例4は、98℃における収縮率が不十分であり、海外向けの大型のバイアル瓶においても装着時にシワが発生しやすかった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の熱収縮性フィルムは、バイアル瓶等の胴部の径と口部の径との差が大きい容器のラベルとして有用である。
【符号の説明】
【0060】
100 容器、
102 胴部、
104 口部、
200 熱収縮性ラベル。
図1
図2