(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】シールド掘進機、及びトンネル構築方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/06 20060101AFI20220708BHJP
E21D 9/087 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
E21D9/06 301E
E21D9/06 301D
E21D9/087 A
(21)【出願番号】P 2018105112
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沼宮内 克己
(72)【発明者】
【氏名】福田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】奥津 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】山崎 信一
(72)【発明者】
【氏名】本田 和之
(72)【発明者】
【氏名】阿部 聡
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-107684(JP,A)
【文献】特開2016-199912(JP,A)
【文献】特開2009-203732(JP,A)
【文献】特開平04-277292(JP,A)
【文献】特開平08-144697(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0093768(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/06
E21D 9/087
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘進機であって、
内部に開口を有する外胴部と、
前記開口を通じて前記外胴部内に収容可能に形成され、切羽を掘削する掘削部と、
前記開口を遮蔽すると共に前記外胴部内に収容された前記掘削部を前記切羽側から覆う遮蔽部と、
前記開口と前記切羽との間にコンクリート材料を供給するコンクリート材料供給部と、を備え、
前記掘削部が前記切羽から前記開口を通じて前記外胴部内に収容された状態で前記遮蔽部が前記開口を遮蔽すると共に前記掘削部を前記切羽側から覆い、前記遮蔽部が前記開口を遮蔽した状態で前記コンクリート材料供給部が前記開口と前記切羽との間にコンクリート材料を供給する
シールド掘進機。
【請求項2】
シールド掘進機であって、
内部に開口を有する外胴部と、
前記開口を通じて前記外胴部内に収容可能に形成され、切羽を掘削する掘削部と、
前記開口を遮蔽する遮蔽部と、
前記開口と前記切羽との間にコンクリート材料を供給するコンクリート材料供給部と、
前記開口と前記切羽との間に充填材を供給する充填材供給部と、
前記開口と前記切羽との間の泥土を排出する泥土排出部と、を備え、
前記掘削部が前記切羽から前記開口を通じて前記外胴部内に収容された状態で前記遮蔽部が前記開口を遮蔽し、前記遮蔽部が前記開口を遮蔽した状態で前記コンクリート材料供給部が前記開口と前記切羽との間にコンクリート材料を供給し、
前記開口が開放された状態で前記充填材供給部が前記開口と前記切羽との間に充填材を供給すると共に前記泥土排出部が前記開口と前記切羽との間の泥土を排出する、
シールド掘進機。
【請求項3】
シールド掘進機であって、
内部に開口を有する外胴部と、
前記開口を通じて前記外胴部内に収容可能に形成され、切羽を掘削する掘削部と、
前記開口を遮蔽する遮蔽部と、
前記開口と前記切羽との間に充填材を供給する充填材供給部と、
前記開口と前記切羽との間の泥土を排出する泥土排出部と、を備え、
前記開口が開放された状態で前記充填材供給部が前記開口と前記切羽との間に充填材を供給すると共に前記泥土排出部が前記開口と前記切羽との間の泥土を排出し、前記掘削部が前記切羽から前記開口を通じて前記外胴部内に収容された状態で前記遮蔽部が前記開口を遮蔽する
シールド掘進機。
【請求項4】
開口を有する外胴部と、前記開口を通じて前記外胴部内に収容可能に形成される掘削部と、前記開口を遮蔽すると共に前記外胴部内に収容された前記掘削部
を切羽側から覆う遮蔽部と、を備えるシールド掘進機を用いたトンネル構築方法であって、
前記掘削部を用いて切羽を掘削して前記シールド掘進機を掘進させる掘進工程と、
前記掘削部を前記切羽から前記開口を通じて前記外胴部内に収容する収容工程と、
前記遮蔽部を用いて前記開口を遮蔽する共に前記掘削部を前記切羽側から覆う遮蔽工程と、
前記開口と前記切羽との間にコンクリート材料を供給するコンクリート材料供給工程と、
を備えるトンネル構築方法。
【請求項5】
外胴部に移動可能に装着されて切羽を掘削する掘削部を用いたトンネル構築方法であって、
前記掘削部を第1外胴部に装着すると共に、前記掘削部を前記第1外胴部の内部に設けられた開口から切羽側に移動させ、第1分岐トンネルを掘進する第1掘進工程と、
前記掘削部を前記切羽から前記開口を通じて前記第1外胴部内に収容する収容工程と、
前記第1外胴部の前記開口を遮蔽する遮蔽工程と、
前記第1外胴部の前記開口と前記切羽との間にコンクリート材料を供給するコンクリート材料供給工程と、
前記掘削部を前記第1外胴部から取り外して第2外胴部に装着すると共に、第2外胴部の内部に設けられた開口から切羽側に移動させ、第2分岐トンネルを掘進する第2掘進工程と、
を備えるトンネル構築方法。
【請求項6】
前記収容工程において、前記開口と前記切羽との間に充填材を供給すると共に、前記開口と前記切羽の間の泥土を排出する
請求項4又は5に記載のトンネル構築方法。
【請求項7】
前記第1分岐トンネルと前記第2分岐トンネルとを、一の地下空洞の内壁面から形成する、
請求項5に記載のトンネル構築方法。
【請求項8】
開口を有する外胴部と、前記開口を通じて前記外胴部内に収容可能に形成される掘削部と、前記開口を遮蔽する遮蔽部と、を備えるシールド掘進機を用いたトンネル構築方法であって、
前記掘削部を用いて切羽を掘削して前記シールド掘進機を掘進させる掘進工程と、
前記掘削部を前記切羽から前記開口を通じて前記外胴部内に収容する収容工程と、
前記遮蔽部を用いて前記開口を遮蔽する遮蔽工程と、
前記開口と前記切羽との間にコンクリート材料を供給するコンクリート材料供給工程と、を備え、
前記収容工程において、前記開口と前記切羽との間に充填材を供給すると共に、前記開口と前記切羽の間の泥土を排出する、
トンネル構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機、及びシールド掘進機を用いたトンネル構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や鉄道用のトンネルでは、本線トンネルから分岐する分岐トンネルを非貫通状態で複数構築し、複数の非貫通トンネルを非常時用の駐車帯、避難帯及び機材置場として利用することがある。非貫通トンネルは、例えば、NATM工法によって構築される。
【0003】
NATM工法では、発破工程、ズリ出し工程、一次コンクリート吹付工程、支保工建込工程及び二次コンクリート吹付工程を所定距離(例えば1~3m)毎に繰返すことにより、トンネルを軸方向に構築していく。一次コンクリート吹付工程が完了するまでは、地山が露出しており地下水がトンネル内に流入するおそれがあるため、予め、地山に止水薬液を注入して地下水の流れを止める薬液注入工法や、地下水の水位を低下させる地下水低下工法等の補助工法が行われる。
【0004】
地下水低下工法は、地山から地下水を抜いて地下水の水位を低下させるため、都市部で採用した場合には地表面が沈下するおそれがある。また、薬液注入工法では、地下水の流れが止まったかどうかの判断が難しい。そのため、掘削中に突発湧水が発生しトンネル崩落に繋がる懸念があり、対策工費の増加や工期の延長を招くおそれがある。
【0005】
薬液注入工法や地下水低下工法等の補助工法を用いることなく都市部にトンネルを構築する方法としては、シールド掘進機を用いた方法が知られており、特許文献1には、非貫通トンネルを構築するためのシールド掘進機が開示されている。このシールド掘進機は、切羽後方の地山内壁面を支える筒状の外胴と、外胴の前端部内に設けられる隔壁と、隔壁の開口部を通過可能に形成されるカッターヘッドと、を備えている。ある非貫通トンネルの掘削が完了すると、カッターヘッドは隔壁の開口部を通過してトンネル後方に外胴から引き抜かれ、別の非貫通トンネルを掘削する際に再利用される。隔壁の開口部は、カッターヘッドの通過後、ゲートによって遮蔽される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されるシールド掘進機では、カッターヘッドを外胴から引き抜いた後に、切羽と隔壁の間に空間が形成される。そのため、この空間内で切羽が崩落し周辺地盤の変状が発生する懸念がある。このような理由から、切羽を崩落させることなく非貫通トンネルをシールド掘進機により構築し、トンネル工事の安全性を高めることが求められている。
【0008】
本発明は、トンネル工事の安全性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、シールド掘進機であって、内部に開口を有する外胴部と、開口を通じて外胴部内に収容可能に形成され、切羽を掘削する掘削部と、開口を遮蔽すると共に外胴部内に収容された掘削部を切羽側から覆う遮蔽部と、開口と切羽との間にコンクリート材料を供給するコンクリート材料供給部と、を備え、掘削部が切羽から開口を通じて外胴部内に収容された状態で遮蔽部が開口を遮蔽すると共に掘削部を切羽側から覆い、遮蔽部が開口を遮蔽した状態でコンクリート材料供給部が開口と切羽との間にコンクリート材料を供給する。
また、本発明は、シールド掘進機であって、内部に開口を有する外胴部と、開口を通じて外胴部内に収容可能に形成され、切羽を掘削する掘削部と、開口を遮蔽する遮蔽部と、開口と切羽との間にコンクリート材料を供給するコンクリート材料供給部と、開口と切羽との間に充填材を供給する充填材供給部と、開口と切羽との間の泥土を排出する泥土排出部と、を備え、掘削部が切羽から開口を通じて外胴部内に収容された状態で遮蔽部が開口を遮蔽し、遮蔽部が開口を遮蔽した状態でコンクリート材料供給部が開口と切羽との間にコンクリート材料を供給し、開口が開放された状態で充填材供給部が開口と切羽との間に充填材を供給すると共に泥土排出部が開口と切羽との間の泥土を排出する。
【0010】
また、本発明は、シールド掘進機であって、内部に開口を有する外胴部と、開口を通じて外胴部内に収容可能に形成され、切羽を掘削する掘削部と、開口を遮蔽する遮蔽部と、開口と切羽との間に充填材を供給する充填材供給部と、開口と切羽との間の泥土を排出する泥土排出部と、を備え、開口が開放された状態で充填材供給部が開口と切羽との間に充填材を供給すると共に泥土排出部が開口と切羽との間の泥土を排出し、掘削部が切羽から開口を通じて外胴部内に収容された状態で遮蔽部が開口を遮蔽する。
【0011】
また、本発明は、開口を有する外胴部と、開口を通じて外胴部内に収容可能に形成される掘削部と、開口を遮蔽すると共に外胴部内に収容された掘削部を切羽側から覆う遮蔽部と、を備えるシールド掘進機を用いたトンネル構築方法であって、掘削部を用いて切羽を掘削してシールド掘進機を掘進させる掘進工程と、掘削部を切羽から開口を通じて外胴部内に収容する収容工程と、遮蔽部を用いて開口を遮蔽する共に掘削部を切羽側から覆う遮蔽工程と、開口と切羽との間にコンクリート材料を供給するコンクリート材料供給工程と、を備える。
【0012】
また、本発明は、外胴部に進退可能に装着されて切羽を掘削する掘削部を用いたトンネル構築方法であって、掘削部を第1外胴部に装着すると共に第1外胴部の内部に設けられた開口から切羽側に進出させ、第1分岐トンネルを掘進する第1掘進工程と、掘削部を切羽から第1外胴部の開口を通じて第1外胴部内に収容する収容工程と、第1外胴部の開口を遮蔽する遮蔽工程と、開口と切羽との間にコンクリート材料を供給するコンクリート材料供給工程と、掘削部を第1外胴部から取り外して第2外胴部に装着すると共に第2外胴部の内部に設けられた開口から切羽側に進出させ、第2分岐トンネルを掘進する第2掘進工程と、を備える。
また、本発明は、開口を有する外胴部と、開口を通じて外胴部内に収容可能に形成される掘削部と、開口を遮蔽する遮蔽部と、を備えるシールド掘進機を用いたトンネル構築方法であって、掘削部を用いて切羽を掘削してシールド掘進機を掘進させる掘進工程と、掘削部を切羽から開口を通じて外胴部内に収容する収容工程と、遮蔽部を用いて開口を遮蔽する遮蔽工程と、開口と切羽との間にコンクリート材料を供給するコンクリート材料供給工程と、を備え、収容工程において、開口と切羽との間に充填材を供給すると共に、開口と切羽の間の泥土を排出する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、トンネル工事の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るシールド掘進機により構築されるトンネルを鉛直上方から見た断面図であり、第1分岐トンネルを構築している状態を示す。
【
図2】本発明の実施形態に係るシールド掘進機により構築されるトンネルを鉛直上方から見た断面図であり、第2分岐トンネルを構築している状態を示す。
【
図3】本発明の実施形態に係るシールド掘進機の断面図であり、分岐トンネルを掘進している状態を示す。
【
図4】チャンバに充填材を充填している状態を示す。
【
図6】開口をシャッターにより遮蔽した状態を示す。
【
図7】切羽と開口との間にコンクリート材料を供給した状態を示す。
【
図8】外胴部からカッターを引き抜いた状態を示す。
【
図9】外胴部の内周面に覆工コンクリートを打設した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るシールド掘進機100、及びシールド掘進機100を用いてトンネルを構築するトンネル構築方法について説明する。ここでは、自動車や鉄道用のトンネルを構築するためのシールド掘進機100及びトンネル構築方向について、説明する。
【0016】
自動車や鉄道用のトンネルTでは、
図2に示すように、地下空洞としての本線トンネルTaから分岐する分岐トンネルTbが非貫通状態で構築されることがある。このような非貫通状態の分岐トンネルTbは、例えば本線トンネルTaにおいて所定の間隔で複数構築され、非常時用の駐車帯、避難帯及び機材置場として利用される。シールド掘進機100は、分岐トンネルTbの構築に用いられる。
【0017】
まず、分岐トンネルTbを構築する手順について、
図1及び
図2を参照して簡単に説明する。ここでは、分岐トンネルTbとしての第1及び第2分岐トンネルTb1、Tb2をこの順に構築する場合について説明する。
図1は、第1分岐トンネルTb1を構築している状態を示しており、
図2は、第1分岐トンネルTb1の構築が完了し第2分岐トンネルTb2を構築している状態を示している。
【0018】
図1及び
図2に示すように、シールド掘進機100は、切羽Sの後方の地山内壁面を支える外胴部10と、外胴部10と切羽Sとの間に設けられて切羽Sを掘削する掘削部としてのカッター20と、を備えている。
図1に示すように、シールド掘進機100が第1分岐トンネルTb1を掘進する際には、カッター20は外胴部10に装着されており、外胴部10とカッター20は一体となって前進する。外胴部10の前進に併せて、セグメントリング90が組み立てられる。
【0019】
第1分岐トンネルTb1を所望長さ(例えば20m)掘進したところで、第1分岐トンネルTb1の掘進を終了する。次に、外胴部10からカッター20を取り外し、不図示の装置や重機を用いて外胴部10からカッター20を引き抜く。外胴部10を第1分岐トンネルTb1内に残した状態で外胴部10の内周面とセグメントリング90の内周面に覆工コンクリートを打設することにより(
図2)、第1分岐トンネルTb1の構築が完了する。
【0020】
なお、セグメントリング90の内周面に覆工コンクリートを打設することなく第1分岐トンネルTb1の構築を完了してもよい。つまり、外胴部10の内周面にだけ覆工コンクリートが打設されセグメントリング90の内周面が露出した状態であってもよい。
【0021】
第2分岐トンネルTb2を掘進する際には、別に用意した外胴部10に、第1分岐トンネルTb1の掘進に用いたカッター20を装着する。その後、第1分岐トンネルTb1を構築した手順と同様の手順により、第2分岐トンネルTb2を構築する。
【0022】
以上の手順によれば、1つのカッター20で第1及び第2分岐トンネルTb1,Tb2を掘進することができる。そのため、トンネルTの構築費用を削減することができる。
【0023】
ところで、切羽Sは崩落するおそれがあり、切羽Sが露出すると危険である。外胴部10にカッター20が装着されている状態では、シールド掘進機100によって切羽Sが覆われているため安全であるが、覆工コンクリートを打設する際には、カッター20が外胴部10から引き抜かれるためシールド掘進機100によって切羽Sを覆うことができない。そのため、トンネル工事の安全性を高めるためには、外胴部10からカッター20を引き抜く前に、切羽Sを安定させることが望ましい。
【0024】
本実施形態に係るシールド掘進機100及びトンネル構築方法は、外胴部10にカッター20を装着した状態で切羽Sにコンクリート材料を打設するように構成されている。そのため、外胴部10からカッター20が引き抜かれた状態においても切羽Sが安定する。したがって、切羽Sの崩落を防ぐことができ、トンネル工事の安全性を高めることができる。
【0025】
以下、シールド掘進機100の構成及びトンネル構築方法について、
図3から
図9を参照して具体的に説明する。
【0026】
図3に示すように、シールド掘進機100の外胴部10は、円筒状のスキンプレート11と、スキンプレート11の内周面から突出する隔壁12と、を有する。隔壁12は環状に形成され、隔壁12によって外胴部10の内部に開口13が形成されている。開口13は、2辺が水平方向に延在し他の2辺が鉛直方向に延在する略矩形に形成される。
【0027】
スキンプレート11の内側には、カッター20を回転駆動させる駆動部30が設けられる。駆動部30は、回転シャフト31を介してカッター20を回転可能に支持する支持ドラム32と、支持ドラム32に固定されたモータ33と、を有する。モータ33は、減速機構34を介して回転シャフト31と連結されており、モータ33の回転は、減速機構34を介して回転シャフト31に伝達される。
【0028】
カッター20は、回転シャフト31から径方向に延在するカッタースポーク21と、カッタースポーク21の先端から径方向に突出可能に設けられるオーバーカッター22と、を有する。カッタースポーク21及びオーバーカッター22には不図示のビットが取り付けられており、カッター20の回転によって切羽Sが掘削される。
【0029】
駆動部30の支持ドラム32は、ガイド部材40を介してスキンプレート11に軸方向に移動可能に支持されている。ガイド部材40は、支持ドラム32を、カッター20による切羽Sの掘削を可能にする掘削位置と、カッター20をスキンプレート11内に収容する収容位置(
図5参照)と、に案内可能である。
【0030】
切羽Sを掘削する際には、
図3に示すように、支持ドラム32は掘削位置に保持される。このとき、支持ドラム32は、外胴部10の開口13を閉塞し、隔壁12と共に切羽Sとの間にチャンバCを形成する。切羽Sの掘削により生じた泥土は、チャンバCに取り込まれ、一時的に蓄えられる。チャンバCに蓄えられた泥土は、支持ドラム32に形成された排出口32aから泥土排出部としてのスクリュコンベア50を用いて排出される。
【0031】
排出口32aは、回転シャフト31よりも鉛直下方に形成されている。したがって、チャンバCに蓄積された泥土をスクリュコンベア50を用いて容易に排出することができる。
【0032】
また、切羽Sを掘削する際には、オーバーカッター22がカッタースポーク21から突出する。この状態では、カッター20の長さはスキンプレート11の外径と略等しくなる。したがって、スキンプレート11の外径と略等しい内径で分岐トンネルTbを掘進することができる。
【0033】
支持ドラム32を掘削位置から収容位置に移動させる際には、
図5に示すように、オーバーカッター22はカッタースポーク21内に引き入れられる。この状態では、カッター20の長さは、外胴部10の開口13の内径(具体的には、略矩形状の開口13の対角線長さ)よりも小さく、カッター20は開口13を通過可能である。したがって、支持ドラム32が掘削位置から収容位置に移動すると、カッター20は、切羽Sから開口13を通じて外胴部10内に収容される。
【0034】
シールド掘進機100は、外胴部10の開口13を遮蔽する遮蔽部としてのシャッター60を更に備える。シャッター60は、開口13を遮蔽していない状態では、スキンプレート11とガイド部材40との間に設けられる収容部61に収容されている。シャッター60は、隔壁12に固定されるシャッターゲート62を通じて収容部61から引き出されると、開口13の周縁に沿って隔壁12に固定されるシャッター案内溝63により、開口13を遮蔽するように案内される。
【0035】
シャッターゲート62及びシャッター案内溝63は、ガイド部材40によって開閉される。具体的には、ガイド部材40は、スキンプレート11の内周に取り外し可能に装着される第1ガイド筒41と、第1ガイド筒41の内周に摺動可能に設けられる第2ガイド筒42と、を有し、第2ガイド筒42によって、シャッターゲート62及びシャッター案内溝63が開閉される。
【0036】
第1ガイド筒41は、内周が隔壁12の開口13と略同じ形状に形成され、開口13から軸方向に延びる空間を画定する。シャッターゲート62及びシャッター案内溝63は、第1ガイド筒41の端部と隔壁12との間に設けられる。
【0037】
第2ガイド筒42は、外周が第1ガイド筒41の内周と略同じ形状、すなわち隔壁12の開口13と略同じ形状に形成される。そのため、第2ガイド筒42は、
図3に示すように、シャッターゲート62及びシャッター案内溝63を跨いで開口13に進入可能であり、開口13に進入することによって、シャッターゲート62及びシャッター案内溝63を閉塞する。
図6に示すように、第2ガイド筒42の全体が第1ガイド筒41内に移動することによって、シャッターゲート62及びシャッター案内溝63が開放される。これにより、シャッター60による開口13の遮蔽が可能になる。シャッター60は展開時・平面視で略矩形である。そのため、略矩形に形成されている開口13を好適に遮蔽することができる。また、開口13は、シャッター60により遮蔽することが可能であれば、矩形である必要はなく、円形等であってもよい。
【0038】
駆動部30の支持ドラム32は、外周が第2ガイド筒42の内周と略同じ形状に形成されており、第2ガイド筒42の内周を摺動する。したがって、支持ドラム32が収容位置に移動した状態では、チャンバCは、
図5に示すように、隔壁12、第2ガイド筒42及び支持ドラム32によって画定される。そして、
図6に示すように、シャッター60が開口13を遮蔽した状態では、チャンバCは、切羽Sとシャッター60との間に位置する第1チャンバC1と、支持ドラム32とシャッター60との間に位置する第2チャンバC2と、に区画される。
【0039】
シールド掘進機100は、切羽Sと開口13との間に充填材を供給する充填材供給部としての充填材ポンプ70と、切羽Sと開口13との間にコンクリート材料を供給するコンクリート材料供給部としてのコンクリートポンプ80と、を備える。
【0040】
充填材ポンプ70は、充填材導管71を通じて、隔壁12における開口13よりも鉛直上方に形成される充填材孔72に接続されている。充填材は、充填材ポンプ70によって、充填材孔72から切羽Sと開口13との間に供給される。充填材は可塑性充填材が好ましい。可塑性充填材は、高い粘性(例えば、300dPa・s以上)を有する流動性のある材料であり、例えば、ベントナイトを主成分として水ガラス溶液を混合させた可塑性充填材を用いることができる。なお、充填材として、高分子凝集剤の水溶液やベントナイト水溶液などの粘性のある溶液を用いることも可能である。
【0041】
コンクリートポンプ80は、コンクリート導管81を通じて、隔壁12における開口13よりも鉛直下方に形成されるコンクリート孔82に接続されている。コンクリート材料は、コンクリートポンプ80によって、コンクリート孔82から切羽Sと開口13との間に供給される。コンクリート材料は、例えば、水中不分離性コンクリートや高流動コンクリートであり、コンクリート材料には、モルタル等を含む。
【0042】
次に、シールド掘進機100を用いて分岐トンネルTbを構築する方法について、
図3から
図9を参照して説明する。
【0043】
まず、
図3に示すように、スキンプレート11にガイド部材40を取り付け、カッター20を駆動部30及びガイド部材40を介して外胴部10に装着する。次に、カッター20を用いて切羽Sを掘削し、シールド掘進機100を掘進させる。このとき、支持ドラム32を掘削位置に保持し、チャンバCを形成する。切羽Sの掘削により生じる泥土は、チャンバCに蓄えられると共に、チャンバCからスクリュコンベア50により排出される。
【0044】
分岐トンネルTbの掘進は、いわゆる推進工法により行われる。推進工法の詳細は省略する。なお、本実施形態のシールド掘進機100は、いわゆるシールド工法に用いられるものであってもよく、分岐トンネルTbの掘進は、シールド工法により行われてもよい。ここで、シールド工法では、シールド掘進機100内でセグメントリング90を組み立て、シールド掘進機100内の油圧ジャッキ(図示省略)によって、セグメントリング90から反力を得てシールド掘進機100を前進させる。推進工法では、本線トンネルTa(
図1又は
図2参照)内でセグメントリング90を組み立て、本線トンネルTa内に設置した油圧ジャッキ(図示省略)によりセグメントリング90を押すことによりシールド掘進機100を前進させる。
【0045】
分岐トンネルTbを所望長さ(例えば20m)掘進したところで、カッター20による切羽Sの掘削を停止する。その後、
図4に示すように、充填材ポンプ70を用いて充填材をチャンバCに供給すると共に、チャンバC内の泥土を、スクリュコンベア50を用いて排出する。これにより、チャンバC内の泥土が充填材に置き換えられる。したがって、チャンバC内の圧力が低下するのを防止することができ、切羽Sを安定させることができる。
【0046】
チャンバCに充填される充填材は、泥土よりもの比重の小さいことが好ましい。これにより、充填材は泥土よりも上方に溜まり、泥土を下方に集めることができる。排出口32aが回転シャフト31よりも鉛直下方に形成されているため、充填材の供給により下方に集められた泥土をスクリュコンベア50を用いて排出することができる。
【0047】
次に、
図5に示すように、支持ドラム32を第2ガイド筒42に対して移動させ、カッター20を切羽Sから外胴部10の開口13を通じて外胴部10内に収容する。このとき、オーバーカッター22をカッタースポーク21内に引き入れておく。これにより、カッター20の長さは、外胴部10の開口13の内径よりも小さくなる。したがって、カッター20を、外胴部10内に容易に収容することができる。
【0048】
支持ドラム32が移動しチャンバCが拡大する間は、充填材の供給を継続する。これにより、切羽Sに作用する圧力が低下するのを防止することができ、切羽Sを安定させることができる。
【0049】
また、カッター20を収容する際には、第2ガイド筒42により、シャッターゲート62及びシャッター案内溝63が閉塞されている。したがって、充填材がシャッターゲート62及びシャッター案内溝63を通じて漏出するのを防止することができる。
【0050】
次に、
図6に示すように、第2ガイド筒42を第1ガイド筒41に対して移動させ、シャッターゲート62及びシャッター案内溝63を開放する。次に、シャッター60を用いて開口13を遮蔽する。これにより、チャンバCが第1チャンバC1と第2チャンバC2とに区画される。
【0051】
次に、
図7に示すように、コンクリートポンプ80を用いてコンクリート材料をコンクリート孔82から第1チャンバC1に供給すると共に、第1チャンバC1内の充填材を、充填材孔72を通じて排出する。これにより、第1チャンバC1の充填材がコンクリート材料に置き換えられる。したがって第1チャンバC1内の圧力が低下するのを防止することができ、切羽Sを安定させることができる。
【0052】
充填材はコンクリート材料より比重が小さいことが好ましい。これにより、供給されたコンクリート材料が充填材よりも下方に溜まり、充填材を上方に集めることができる。充填材孔72は、隔壁12における開口13よりも上方に形成されているため、コンクリート材料の供給により上方に集められた充填材を充填材孔72から排出することができる。したがって、第1チャンバC1の充填材をコンクリート材料に容易に置き換えることができる。
【0053】
コンクリート材料を供給する際には、第2チャンバC2には充填材が充填されている。そのため、シャッター60は、第1チャンバC1内のコンクリート材料から圧力を受けるだけでなく、第2チャンバC2内の充填材から圧力を受ける。したがって、シャッター60を第2チャンバC2内の充填材により支えることができ、シャッター60の強度を高めることなくシャッター60の変形を防止することができる。これにより、シャッター60に強度の小さい安価な部材を用いることができ、シールド掘進機100の製造コストを削減することができる。
【0054】
コンクリート材料が固まったところで、スクリュコンベア50を用いて第2チャンバC2内の充填材を排出する。その後、第1ガイド筒41をスキンプレート11から取り外し、不図示の装置や重機を用いて、
図8に示すように、ガイド部材40、駆動部30及びカッター20を外胴部10から引き抜き回収する。このとき、切羽Sは、コンクリート材料により固められ、安定している。したがって、外胴部10からカッター20が引き抜かれた状態においても切羽Sの崩落を防ぐことができる。
【0055】
ガイド部材40、駆動部30及びカッター20を外胴部10から引き抜く際に、充填材導管71及びコンクリート導管81を隔壁12から取り外しておいてもよい。
【0056】
次に、
図9に示すように、スキンプレート11の内周面とセグメントリング90の内周面とシャッター60とに覆工コンクリートを打設する。このとき、切羽Sがコンクリート材料により既に固められて安定しているため、切羽Sの崩落を防ぐことができる。したがって、安全に覆工コンクリートを打設することができる。覆工コンクリートは不図示の型枠を使用して打設をする。
【0057】
以上により、分岐トンネルTbの構築が完了する。
【0058】
別の分岐トンネルTbを構築する際には、新たに外胴部10を用意し、新たな外胴部10のスキンプレート11にガイド部材40を取り付け、カッター20を駆動部30及びガイド部材40を介して外胴部10に装着する。以下、同様の手順により、別の分岐トンネルTbを構築することができる。
【0059】
新たな外胴部10に取り付けられるガイド部材40、駆動部30及びカッター20は、構築済みの分岐トンネルTbの掘進に使用され回収されたものである。そのため、1つのカッター20、駆動部30及びガイド部材40を用いて複数の分岐トンネルTbを掘進することができる。したがって、トンネルTの構築費用を削減することができる。
【0060】
以上により、複数の分岐トンネルTbの構築が完了する。
【0061】
以上の本実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0062】
シールド掘進機100及びトンネル構築方法では、カッター20が切羽Sから開口13を通じて外胴部10内に収容された状態で開口13が遮蔽され、開口13が遮蔽された状態で開口13と切羽Sとの間にコンクリート材料が供給される。そのため、外胴部10にカッター20を装着した状態で切羽Sがコンクリート材料により固められ、切羽Sが安定する。したがって、外胴部10からカッター20が引き抜かれた状態においても切羽Sの崩落を防ぐことができ、トンネル工事の安全性を高めることができる。
【0063】
また、開口13が開放された状態で、開口13と切羽Sとの間に充填材が供給されると共に開口13と切羽Sとの間の泥土が排出される。そのため、開口13と切羽Sとの間の泥土が充填材に置き換えられる。したがって、切羽Sに作用する圧力を維持することができ、切羽Sを安定させることができる。
【0064】
また、カッター20を外胴部10から取り外して別の外胴部10に装着し、別の分岐トンネルTbを掘進する。そのため、カッター20を転用して複数の分岐トンネルTbを構築することができ、トンネルTの構築費用を削減することができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0066】
シールド掘進機100では、切羽Sと開口13との間の泥土を充填材に置き換え、その後、切羽Sと開口13との間の充填材をコンクリート材料に置き換えている。この形態に限られず、切羽Sと開口13との間に充填材を供給することなくコンクリート材料を供給してもよい。
【0067】
また、コンクリート材料に代えて、充填材を切羽Sと開口13との間に供給した状態でカッター20を外胴部10から引き抜いてもよい。この場合には、切羽Sが充填材の圧力により支えられ、切羽Sが安定する。したがって、外胴部10からカッター20が引き抜かれた状態においても切羽Sの崩落を防ぐことができ、トンネル工事の安全性を高めることができる。
【0068】
また、シールド掘進機100では、分岐トンネルTbを掘進する際にも充填材ポンプ70が充填材導管71を通じて隔壁12の充填材孔72に接続されているが、充填材ポンプ70を、充填材を供給する際に隔壁12の充填材孔72に接続してもよい。同様に、コンクリートポンプ80を、コンクリート材料を供給する際に隔壁12のコンクリート孔82に接続してもよい。
【0069】
また、シールド掘進機100では、充填材は、充填材導管71を通じて供給されると共に排出されるが、充填材を供給するための導管と排出するための導管とを別々に設けてもよい。
【0070】
また、ガイド部材40は、カッター20及び駆動部30と共に外胴部10から引き抜かれなくてもよい。すなわち、カッター20を外胴部10から引き抜いて回収する際に、ガイド部材40を外胴部10に残しておいてもよい。
【符号の説明】
【0071】
100・・・シールド掘進機
10・・・外胴部
13・・・開口
20・・・カッター(掘削部)
50・・・スクリュコンベア(泥土排出部)
60・・・シャッター(遮蔽部)
70・・・充填材ポンプ(充填材供給部)
80・・・コンクリートポンプ(コンクリート材料供給部)
T・・・トンネル
Ta・・・本線トンネル(地下空洞)
Tb・・・分岐トンネル
Tb1・・・第1分岐トンネル
Tb2・・・第2分岐トンネル
S・・・切羽