(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
F21S 41/148 20180101AFI20220708BHJP
F21S 41/151 20180101ALI20220708BHJP
F21S 41/663 20180101ALI20220708BHJP
F21V 3/12 20180101ALI20220708BHJP
F21V 19/00 20060101ALI20220708BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20220708BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20220708BHJP
F21W 102/13 20180101ALN20220708BHJP
F21W 102/165 20180101ALN20220708BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20220708BHJP
【FI】
F21S41/148
F21S41/151
F21S41/663
F21V3/12
F21V19/00 170
F21V19/00 150
H01L33/00 L
H01L33/00 H
H01L33/50
F21W102:13
F21W102:165
F21Y115:10 300
(21)【出願番号】P 2018122030
(22)【出願日】2018-06-27
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】塚本 広徳
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 一利
【審査官】竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-197439(JP,A)
【文献】特表2016-510177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/148
F21S 41/151
F21S 41/663
F21V 3/12
F21V 19/00
H01L 33/00
H01L 33/50
F21W 102/13
F21W 102/165
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置される発光ダイオードチップと、
前記発光ダイオードチップの発光面上に配置され、前記発光面から出射する光が透過する蛍光体と、
を有する光源を備え、
1つの前記基板上に1つの前記発光ダイオードチップが配置され、
前記蛍光体は、前記発光面からの光が透過して出射する出射面を有し、
前記出射面の第1方向は、前記出射面から出射する光による配光パターンの上下方向に対応し、
前記出射面の前記第1方向に垂直な第2方向は、前記配光パターンの上下方向よりも左右方向の広がりに対応し、
前記出射面の前記第1方向の大きさは前記出射面の前記第2方向の大きさ
及び前記発光面の前記第1方向の大きさより小さ
く、
前記出射面の前記第2方向の大きさは前記発光面の前記第2方向の大きさより大きい
ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
複数の前記光源を備え、
複数の前記光源が前記第2方向に沿って並べられる
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
それぞれの前記光源が個別に点灯または消灯する
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用前照灯。
【請求項4】
前記発光ダイオードチップの前記発光面は正方形である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項5】
前記光源の正面視において、前記発光ダイオードチップの前記発光面の中心と前記蛍光体の前記出射面の中心とが重なる
ことを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用ヘッドライトに代表される車両用前照灯の光源として、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を用いるものが主流である。LEDを用いることによって、発光部分での発熱抑制や省電力等の効果を期待することができる。
【0003】
下記特許文献1には、LEDを用いた発光部と発光部の発光面を画定する枠体と光学部材とを有する発光モジュールを備える車両用前照灯が開示されている。この光学部材は、発光部の発光面からの光によって発光面の形状を利用した像を投影する。この光学部材を介して発光面からの光が投影されることによって、ロービーム用配光パターンの少なくとも一部が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の車両用前照灯では、LEDを用いた発光部の発光面が正方形とされる。これは、LEDの発光面が一般的には正方形であり、LEDが出射する光を最大限有効に利用するためにはLEDを覆う蛍光体も正面視において正方形となるように形成されることが好ましいためであると考えられる。特許文献1の車両用前照灯において、発光面の正方形を構成する互いに直交する辺のうち一方の辺に平行な方向の発光面の大きさは、当該発光面からの光による配光パターンの上下方向の広がりに主に寄与する。また、発光面の正方形を構成する互いに直交する辺のうち他方の辺に平行な方向の発光面の大きさは、当該発光面からの光による配光パターンの左右方向の広がりに主に寄与する。
【0006】
ところで、光源が出射する光をリフレクタで反射させたり投影レンズで屈折させたりして所望の配光パターンを形成する場合において、正方形である光源の発光面の上記一方の辺の大きさが大きい場合、光源から出射する光は意図しない方向へと照射され得る。より具体的には、リフレクタや投影レンズは光源の中心から出射する光の照射方向が所定の方向となるように設計されており、光源の端から出射される光はリフレクタや投影レンズによって意図しない方向へ照射される場合がある。そのため、配光パターンにぼけが生じる場合がある。なお、配光パターンのカットラインが不明確になることや歩行者を眩惑させること等を抑制する観点から、車両用前照灯の配光パターンにおいて上下方向のぼけは特に抑制されることが好ましい。
【0007】
そこで、本発明は、配光パターンのぼけを抑制し得る車両用前照灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の車両用前照灯は、基板と、前記基板上に配置される発光ダイオードチップと、前記発光ダイオードチップの発光面上に配置され、前記発光面から出射する光が透過する蛍光体と、を有する光源を備え、1つの前記基板上に1つの前記発光ダイオードチップが配置され、前記蛍光体は、前記発光面からの光が透過して出射する出射面を有し、前記出射面の第1方向は、前記出射面から出射する光による配光パターンの上下方向に対応し、前記出射面の前記第1方向に垂直な第2方向は、前記配光パターンの上下方向よりも左右方向の広がりに対応し、前記出射面の前記第1方向の大きさは前記出射面の前記第2方向の大きさより小さいことを特徴とする。
【0009】
上記車両用前照灯の光源では、発光ダイオードチップからの光が蛍光体を透過し、蛍光体の出射面から出射する。よって、蛍光体の出射面は、光源の発光面と言える。光源からの光による配光パターンの上下方向の広がりに対応する光源の発光面の第1方向の大きさは、配光パターンの左右方向の広がりに対応する光源の発光面の第2方向の大きさより小さい。よって、光源から出射する光による配光パターンにおいて、上下方向への意図しない光の広がりを抑制しつつ、左右方向への十分な光の広がりを確保し得る。上下方向への意図しない光の広がりが抑制されることによって、配光パターンのぼけが抑制され得る。
【0010】
また、複数の前記光源を備え、複数の前記光源が前記第2方向に沿って並べられることが好ましい。
【0011】
複数の光源が第2方向に沿って並べられることによって、上下方向への意図しない光の広がりを抑制しつつ左右方向に所定の広がりを有する配光パターンを形成し易くなる。また、それぞれの光源の発光面の第2方向の大きさは第1方向の大きさより大きいため、所定の範囲において複数の光源が第2方向に沿って並べられる場合、光源の発光面の面積に対する互いに隣り合う光源の発光面同士の間隔の割合は、光源の発光面が正方形である場合に比べて小さくなる。そのため、互いに隣り合う光源から出射する光は互いに重なり易くなり、配光パターンにムラが生じることが抑制され得る。
【0012】
また、それぞれの前記光源が個別に点灯または消灯することが好ましい。
【0013】
それぞれの光源が個別に点灯または消灯することによって、ADB(Adaptive Driving Beam:配光可変ヘッドランプ)等に好適な車両用前照灯とすることができる。
【0014】
また、前記発光ダイオードチップの前記発光面は正方形であることが好ましい。
【0015】
発光ダイオードチップの発光面が正方形とされることによって、一般的な車両用前照灯に使用される発光ダイオードチップを利用し得る。
【0016】
また、前記出射面の前記第2方向の大きさは前記発光面の前記第2方向の大きさより大きく、前記出射面の前記第1方向の大きさが前記発光面の前記第1方向の大きさより小さいことが好ましい。
【0017】
蛍光体の出射面の第2方向の大きさが発光ダイオードチップの発光面の第2方向の大きさより大きく、蛍光体の出射面の第1方向の大きさが発光ダイオードチップの発光面の第1方向の大きさより小さいことによって、光源から出射する光による配光パターンにおいて、左右方向への十分な光の広がりを確保しつつ、上下方向への光の広がりを抑制し易くなる。
【0018】
また、前記光源の正面視において、前記発光ダイオードチップの前記発光面の中心と前記蛍光体の前記出射面の中心とが重なることが好ましい。
【0019】
光源の光軸に沿って光源の発光面を見る場合において、発光ダイオードチップの発光面の中心と蛍光体の出射面の中心とが重なるように発光ダイオードチップ及び蛍光体が配置されることによって、発光ダイオードチップが発する光は蛍光体に入射して透過し易くなる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、配光パターンのぼけを抑制し得る車両用前照灯が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態における車両用前照灯を備える車両の概略を示す正面図である。
【
図2】
図1のII-II線における1つの灯具の水平方向の断面図である。
【
図3】
図1のIII-III線における1つの灯具の鉛直方向の断面図である。
【
図4】
図2に示す光源を拡大して示す平面図である。
【
図5】
図4に示すV-V線における光源の鉛直方向の断面図である。
【
図6】
図6(A)はロービームの配光パターンを示し、
図6(B)はハイビームの配光パターンを示す。
【
図7】本発明の第2実施形態における灯具を
図3と同様に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る車両用前照灯を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における車両用前照灯を備える車両の概略を示す正面図である。
図1に示すように車両100は、前方の左右方向のそれぞれに一対の車両用前照灯1を備える。車両100に備わる一対の車両用前照灯1は、互いに左右方向に対称な形状とされる。本実施形態の車両用前照灯1は、複数の灯具1a,1b,1cが互いに横並びに配置されており、灯具1aが車両100の最も外側に配置され、灯具1cが車両100の最も中心側に配置され、灯具1bが灯具1aと灯具1cとの間に配置される。
【0024】
図2は
図1のII-II線に平行な水平断面を概略的に示す図であり、
図3は
図1のIII-III線に平行な鉛直断面を概略的に示す図である。すなわち、
図2は灯具1aの上部における水平方向の断面図であり、
図3は灯具1aの左右方向の略中央における鉛直方向の断面図である。
図2、
図3に示すように車両用前照灯1の一部である灯具1aは、筐体10と、当該筐体10内に収容される灯具ユニットLUaとを備える。
【0025】
筐体10は、ランプハウジング11、フロントカバー12及びバックカバー13を主な構成として備える。ランプハウジング11の前方は開口しており、当該開口を塞ぐようにフロントカバー12がランプハウジング11に固定されている。また、ランプハウジング11の後方には前方よりも小さな開口が形成されており、当該開口を塞ぐようにバックカバー13がランプハウジング11に固定されている。
【0026】
ランプハウジング11と、当該ランプハウジング11の前方の開口を塞ぐフロントカバー12と、当該ランプハウジング11の後方の開口を塞ぐバックカバー13とによって形成される空間は灯室LRであり、この灯室LR内に灯具ユニットLUaが収容されている。
【0027】
灯具ユニットLUaは、リフレクタ20、支持部材30、光源支持基板40、及び光源41を主な構成として備える。
【0028】
支持部材30は金属製の部材であり、トッププレート31と、バックプレート32と、係止部33とを有する。トッププレート31は概ね水平に延在する板状の金属部材であり、バックプレート32は概ね鉛直に延在する板状の金属部材である。トッププレート31の後端とバックプレート32の上端は互いに接続されている。また、バックプレート32の上端近傍には、係止部33が接続されている。係止部33はバックプレート32から後方に向かって延在しており、係止部33には後方側に開口するねじ孔が形成されている。このねじ孔にはランプハウジング11の外側からねじ35が螺入され、係止部33がランプハウジング11に固定されている。また、バックプレート32の下方側にもねじ孔が形成されており、このねじ孔にはランプハウジング11の外側からねじ34が螺入されバックプレート32はランプハウジング11に固定されている。こうしてバックプレート32は、概ね鉛直な状態で灯室LR内に固定され、バックプレート32に接続されるトッププレート31も灯室LR内に固定されている。なお、これらのねじ34,35が調整されることで、バックプレート32の角度を微調整することができ、これに伴いトッププレート31の角度を微調整することができる。
【0029】
リフレクタ20は、トッププレート31の下面に固定されている。リフレクタ20はリフレクタ本体部24及びめっき部23を有する。リフレクタ本体部24は樹脂から成る。めっき部23は、リフレクタ本体部24の前方側の面上において、アルミニウム等の金属や金属酸化物によって構成される薄膜である。このめっき部23の表面は、光の反射面23rとされる。反射面23rは、例えば、開口方向が前方側とされる放物線を基調とする自由曲面から成る凹状の形状とされる。より具体的には、反射面23rの鉛直方向の断面における形状は、概ね放物線の中心軸を水平にする場合の頂点よりも下側の形状とされ、反射面23rの水平方向の断面における形状は、概ね放物線の頂点を含む形状とされる。ただし、反射面23rの鉛直方向の断面における放物線と、水平方向の断面における放物線とは互いに異なる放物線とされても良い。また、水平方向の断面における反射面23rの形状は、放物線を基調としなくても良く、例えば楕円の一部を基調とする形状や他の凹状の形状とされても良い。
【0030】
また、トッププレート31の下面には、光源支持基板40が配置され、光源支持基板40には光源41が実装される。本実施形態の灯具ユニットLUaは、左右方向に並んで配置される2つの光源41を備える。ただし、光源41の数は特に限定されず、1つでも3つ以上でも良い。本実施形態の光源41は、ロービームまたはハイビームの一部となる光を出射する。
【0031】
図4は、
図2に示す光源41を拡大して示す平面図であり、
図5は、
図4に示すV-V線における光源41の鉛直方向の断面図である。
図4及び
図5に示すように、本実施形態の光源41は、基板42、基板42上に配置されるLEDチップ43、LEDチップ43の発光面43L上に配置される蛍光体44、保護素子45、反射材46、封止樹脂47、端子51,52、及びグランド端子53を有する。
【0032】
基板42は、LEDチップ43と及びLEDチップ43を過電流から保護する保護素子45とに電気的に接続される端子51,52及びグランド端子53が一体となった基板である。1つの基板42上には、1つのLEDチップ43が配置される。
【0033】
LEDチップ43は、金バンプ54を介して端子51に電気的に接続され、金バンプ56を介してグランド端子53に電気的に接続される。保護素子45は、金バンプ55を介して端子52に電気的に接続され、金バンプ57を介してグランド端子53に電気的に接続される。また、端子51と端子52とは、不図示の回路等によって電気的に並列に接続されている。LEDチップ43は、端子51を介して給電され、発光する。また、LEDチップ43は反射材46に囲われており、LEDチップ43が発する光は効率良く蛍光体44に入射し得る。光源41において、後述する蛍光体44の出射面41Lを除いて、基板42上の部材は封止樹脂47によって覆われている。封止樹脂47は、例えば白色のシリコーン樹脂からなる。
【0034】
LEDチップ43は一つの発光面43Lを有し、発光面43Lは1つの蛍光体44によって覆われる。発光面43Lから出射する光の少なくとも一部は、蛍光体44に入射し、蛍光体44の出射面41Lから出射する。よって、蛍光体44の出射面41Lは、光源41の発光面である。LEDチップ43から出射する光が上記のように蛍光体44を透過することによって、光源41は所望の色の光を出射する。
【0035】
蛍光体44は上記のようにLEDチップ43の発光面43Lを覆い、蛍光体44のLEDチップ43側とは反対側の面は、発光面43Lからの光が出射する出射面41Lとされる。
図4に示すように、蛍光体44の出射面41L、すなわち光源41の発光面は長方形である。なお、
図4において、蛍光体44に隠されているLEDチップ43の発光面43Lが破線で示されている。
図4に表れる光源41の正面視において、LEDチップ43の発光面43Lの中心と蛍光体44の出射面41Lの中心とが重なる。また、
図4に示すように、蛍光体44の出射面41Lの左右方向の大きさはLEDチップ43の発光面43Lの左右方向の大きさより大きく、蛍光体44の出射面41Lの上下方向の大きさはLEDチップ43の発光面43Lの上下方向の大きさより小さい。
【0036】
蛍光体44の出射面41Lは、第1方向の大きさd1が第2方向の大きさd2より小さい長方形である。第1方向の大きさd1は、例えば0.95mmとされ、第2方向の大きさd2は、例えば1.15mmとされる。また、互いに隣り合う蛍光体44の出射面41L同士の間隔dsは、例えば0.6mmとされる。
【0037】
このような構成の光源41の発光面の第1方向の大きさd1は、光源41からの光による配光パターンの上下方向の広がりに対応する。すなわち、光源41の発光面の第2方向の大きさd2を変えずに第1方向の大きさd1がより大きくされる場合、光源41からの光による配光パターンは、左右方向よりも上下方向により広がる。
図3に示すように、光源41の発光面の中心から出射する光L1は、リフレクタ20の反射面23rによって反射され、所望の位置に照射される。光源41の発光面の第1方向の一方の端である発光面の前方端から出射する光Lcは、リフレクタ20の反射面23rによって反射され、光L1が照射される位置よりも上方に照射される。光源41の発光面の第1方向の他方の端である発光面の後方端から出射する光Ldは、リフレクタ20の反射面23rによって反射され、光L1が照射される位置よりも下方に照射される。このように、光源41の発光面の第1方向の大きさd1が大きくなる程、光Lcが照射される位置と光Ldが照射される位置との差Bが大きくなり、配光パターンにぼけが生じ易くなる。
【0038】
光源41の発光面の第2方向の大きさd2は、光源41からの光による配光パターンの左右方向の広がりに対応する。すなわち、光源41の発光面の第1方向の大きさd1の大きさを変えずに第2方向の大きさd2がより大きくされる場合、光源41からの光による配光パターンは、上下方向よりも左右方向により広がる。
図2に示すように、光源41の発光面の第2方向の一方の端である左端から出射する光Laは、リフレクタ20の反射面23rによって反射され、光源41の発光面の中心から出射する光よりも左方に照射される。光源41の発光面の第2方向の他方の端である右端から出射する光Lbは、リフレクタ20の反射面23rによって反射され、光源41の発光面の中心から出射する光よりも左方に照射される。
【0039】
上記のように、本実施形態の光源41において、光源41の発光面の第1方向は車両100の前後方向であり、光源41の発光面の第2方向は車両100の左右方向である。
【0040】
上記のような光源41は、それぞれ光源支持基板40に実装され、光源支持基板40に設けられる不図示の発光制御回路に接続されている。また、それぞれの光源41は、光源支持基板40に設けられる発光制御回路からの給電により光を出射することができる。よって、それぞれの光源41は、発光制御回路によって点灯または消灯の制御がなされる。
【0041】
次に本実施形態の車両用前照灯1の動作及び作用効果について説明する。
【0042】
光源41の位置や反射面23rの形状等が調整されることによって、本実施形態の灯具1aは、ロービーム用の灯具またはハイビーム用の灯具とされる。
【0043】
灯具1aがロービーム用の灯具とされる場合、光源41からの光L1により、
図6(A)に示すロービームの配光パターンの一部が形成される。
図3に示すように、光源41から出射する光L1の多くは反射面23rで反射され、光L1は反射面23rで反射された後にロービームのカットラインより下方に照射される。なお、この場合、車両100の左右に備えられる灯具1aによって、ロービームの配光パターンの少なくとも一部が形成される。
【0044】
一方、灯具1aがハイビーム用の灯具とされる場合、光源41からの光L1により、
図6(B)に示すハイビームの配光パターンの一部が形成される。
図3に示すように、光源41から出射する光L1の多くは反射面23rで反射され、ハイビームの配光パターンの一部が形成される。なお、この場合、車両100の左右に備えられる灯具1aによって、ハイビームの配光パターンの少なくとも一部が形成される。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の車両用前照灯1は、基板42と、基板42上に配置されるLEDチップ43と、LEDチップ43の発光面43L上に配置され、発光面43Lから出射する光が透過する蛍光体44と、を有する光源41を備える。1つの基板42上には、1つのLEDチップ43が配置される。また、蛍光体44は、LEDチップ43の発光面43Lからの光が透過して出射する出射面41Lを有し、出射面41Lの第1方向は、出射面41Lから出射する光による配光パターンの上下方向に対応し、出射面41Lの第1方向に垂直な第2方向は、配光パターンの上下方向よりも左右方向の広がりに対応し、出射面41Lの第1方向の大きさd1は出射面41Lの第2方向の大きさd2より小さい。
【0046】
本実施形態の車両用前照灯1では、LEDチップ43からの光が蛍光体44を透過し、蛍光体44の出射面41Lから出射する。よって、蛍光体44の出射面41Lは、光源41の発光面と言える。光源41からの光による配光パターンの上下方向の広がりに対応する光源41の発光面の第1方向の大きさd1は、配光パターンの左右方向の広がりに対応する光源41の発光面の第2方向の大きさd2より小さい。よって、光源41から出射する光による配光パターンにおいて、上下方向への意図しない光の広がりを抑制しつつ、左右方向への十分な光の広がりを確保し得る。上下方向への意図しない光の広がりが抑制されることによって、配光パターンのぼけが抑制され得る。
【0047】
また、1つの基板42上に1つのLEDチップ43が配置されることによって、複数のLEDチップ43を用いる場合に互いに隣り合うLEDチップ43間における熱の伝達が抑制され得る。さらに、1つの基板42上に1つのLEDチップ43が配置されることによって、複数のLEDチップ43を用いる場合にそれぞれのLEDチップ43の設置場所の自由度が増し、所望の配光パターンを形成し易くなる。
【0048】
また、本実施形態の車両用前照灯1では、灯具1aが複数の光源41を備え、複数の光源41が第2方向に沿って並べられる。複数の光源41が第2方向に沿って並べられることによって、上下方向への意図しない光の広がりを抑制しつつ左右方向に所定の広がりを有する配光パターンを形成し易くなる。また、それぞれの光源41の発光面の第2方向の大きさd2は第1方向の大きさd1より大きいため、所定の範囲において複数の光源41が第2方向に沿って並べられる場合、光源41の発光面の面積に対する互いに隣り合う光源41の発光面同士の間隔dsの割合は、光源41の発光面が正方形である場合に比べて小さくなる。そのため、互いに隣り合う光源41から出射する光は互いに重なり易くなり、配光パターンにムラが生じることが抑制され得る。
【0049】
また、本実施形態の車両用前照灯1において、LEDチップ43の発光面43Lは正方形である。LEDチップ43の発光面43Lが正方形とされることによって、一般的な車両用前照灯に使用されるLEDチップを利用し得る。
【0050】
また、光源41の正面視において、LEDチップ43の発光面43Lの中心と蛍光体44の出射面41Lの中心とが重なる。光源41の光軸に沿って光源41の発光面を見る場合において、LEDチップ43の発光面43Lの中心と蛍光体44の出射面41Lの中心とが重なるようにLEDチップ43及び蛍光体44が配置されることによって、LEDチップ43が発する光は蛍光体44に入射して透過し易くなる。また、蛍光体44の出射面41Lの第2方向の大きさd2はLEDチップ43の発光面43Lの第2方向の大きさより大きく、出射面41Lの第1方向の大きさd1は発光面43Lの第1方向の大きさより小さい。そのため、光源41から出射する光による配光パターンにおいて、左右方向への十分な光の広がりを確保しつつ、上下方向への光の広がりを抑制し易くなる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一または同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0052】
図7は、本発明の第2実施形態における灯具の鉛直方向の断面を概略的に示す図である。すなわち、
図7は、
図3と同様の視点で本実施形態にかかる灯具1aの断面を示す図である。
【0053】
本実施形態の灯具1aが備える灯具ユニットLUaは、プロジェクタ型の灯具ユニットである点において、上記第1実施形態の灯具ユニットLUaと主に異なる。また、本実施形態の灯具1b及び灯具1cは、それぞれ灯具1aと同じ構成とされても良く、異なる構成とされても良い。
【0054】
本実施形態の灯具ユニットLUaは、投影レンズ60、レンズホルダ61、光源41、ベース部材62、回動機構63を備える。
【0055】
投影レンズ60は、前面が凸面で後面が平面の平凸非球面レンズである。投影レンズ60は、後側焦点を含む焦点面である後側焦点面上に形成される光源像を、反転像として灯具1aの前方の仮想鉛直上に投影する。また、投影レンズ60は外周部にフランジを有しており、このフランジがレンズホルダ61に固定されている。
【0056】
光源41は、
図8には1つのみ表れているが、複数備えられる。
図8は、本実施形態の灯具ユニットLUaが備える複数の光源41を正面、すなわち投影レンズ60側から見る図である。
図8に示すように、本実施形態の灯具ユニットLUaは、7つの光源41を備える。ただし、光源41の数は特に限定されない。
【0057】
複数の光源41は、投影レンズ60の後側焦点よりも後方において、左右方向に並列して配置される。本実施形態において、複数の光源41は、投影レンズ60の光軸と重なる位置を中心にして左右方向に等間隔で配置される。これらの光源41から出射して投影レンズ60へ向かう光は、投影レンズ60の後側焦点面をある程度の拡がりをもって通過する。このとき、互いに隣り合う光源41から出射する光は、互いに一部が重なる。
【0058】
また、本実施形態の複数の光源41は、個別に明るさの調整や点灯または消灯の制御が成されるように構成されている。例えば、複数の光源41はそれぞれ不図示の電子制御ユニット(ECU)に接続されており、この電子制御ユニットからの信号によって、それぞれの光源41は、車両の走行状況に応じて明るさの調整や点灯または消灯の制御が個別に行われる。
【0059】
ベース部材62は、レンズホルダ61および光源支持基板40を支持する部材である。また、ベース部材62は回動機構63に支持される。
【0060】
回動機構63は、ベース部材62を回動する機構を有する部材である。ベース部材62が回動することによって光源41及び投影レンズ60も回動するため、灯具ユニットLUaからの光の照射方向が変更される。また、回動機構63は不図示のECU接続されており、車両の走行状況に応じたECUからの信号によって回動機構63による上記回動が行われ、灯具ユニットLUaからの光の照射方向が調整される。
【0061】
次に本実施形態の車両用前照灯1の動作及び作用効果について説明する。
【0062】
光源41の位置や投影レンズ60の形状等が調整されることによって、本実施形態の灯具1aは、ロービーム用の灯具またはハイビーム用の灯具とされる。すなわち、
図8に示すように、光源41から出射する光L1は、投影レンズ60を透過することで照射方向を調整され、
図6(A)に示すロービームの配光パターンの一部、または、
図6(B)に示すハイビームの配光パターンの一部を形成する。
【0063】
このように光源41からの光が投影レンズ60を透過して照射される場合においても、上記第1実施形態のようにリフレクタが用いられる場合と同様に、光源41の第1方向の大きさd1が大きくなると配光パターンのぼけが生じ易くなる。本実施形態の灯具ユニットLUaでも、配光パターンの上下方向の広がりに対応する光源41の発光面の第1方向の大きさd1は、配光パターンの左右方向の広がりに対応する光源41の発光面の第2方向の大きさd2より小さい。よって、光源41から出射する光L1による配光パターンにおいて、上下方向への意図しない光の広がりを抑制しつつ、左右方向への十分な光の広がりを確保し得る。上下方向への意図しない光の広がりが抑制されることによって、配光パターンのぼけが抑制され得る。
【0064】
また、本実施形態において、それぞれの光源41は、上記のように不図示のECUからの信号によって、明るさの調整や点灯または消灯の制御が個別に行われる。よって、本実施形態の灯具1aを備える車両用前照灯1は、ADB(Adaptive Driving Beam:配光可変ヘッドランプ)等に好適である。
【0065】
以上、本発明について実施形態を例に説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0066】
例えば、光源41の数及び配置は特に限定されない。光源41の数は、1つであっても複数であってもよい。光源41の数及び配置は、灯具1aに求められる機能によって適宜選択され得る。また、1つの灯具1aがハイビーム用の灯具及びロービームの灯具を兼ねるように構成されてもよい。
【0067】
また、LEDチップ43の発光面43Lの正面視における形状は正方形に限定されない。例えば、LEDチップ43の発光面43Lの正面視における形状は、出射面41Lと同じ形状や出射面41Lの相似形であってもよい。
【0068】
また、灯具の数は特に限定されない。灯具が複数備えられる場合、各灯具の位置は特に限定されない。したがって、例えば、上記実施形態において、灯具1aが車両100の最も中心側に配置されても良い。
【0069】
また、上記第1実施形態では、光源41の下方にリフレクタ20が配置される形態を例示して説明したが、リフレクタ20は、光源41の上方に設けられてもよい。
【0070】
また、本発明は、上記実施形態に限定されず、リフレクタまたはレンズを通して光を照射するいずれの車両用前照灯にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上説明したように、本発明によれば、配光パターンのぼけを抑制し得る車両用前照灯を提供することができる。当該車両用前照灯は、自動車等の車両用前照灯の分野などにおいて利用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1・・・車両用前照灯
1a,1b,1c・・・灯具
10・・・筐体
20・・・リフレクタ
41・・・光源
41L・・・出射面
42・・・基板
43・・・LEDチップ
43L・・・発光面
44・・・蛍光体
45・・・保護素子
51,52・・・端子
53・・・グランド端子
60・・・投影レンズ
LUa・・・灯具ユニット